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特許7480782アクリルゴム、アクリルゴム組成物、およびゴム架橋物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】アクリルゴム、アクリルゴム組成物、およびゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/12 20060101AFI20240501BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20240501BHJP
   C08K 5/46 20060101ALI20240501BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20240501BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20240501BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C08F220/12
C08L33/08
C08K5/46
C08K5/41
C08K5/3417
C09K3/10 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021527707
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024912
(87)【国際公開番号】W WO2020262495
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019122124
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 文明
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/099113(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188527(WO,A1)
【文献】特開2018-032623(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002936(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/093444(WO,A1)
【文献】特開2008-214418(JP,A)
【文献】特開2015-137323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F220/00-220/70
C08K 3/00- 13/08
C08L 33/00- 33/16
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸エチル単位(a)20~35重量%、
アクリル酸エチル単位(b)0~20重量%、
アクリル酸n-ブチル単位(c)50~75重量%、および
カルボキシル基含有単量体単位(d)0.5~4重量%
を含有するアクリルゴム。
【請求項2】
アクリル酸2-メトキシエチル単位(e)0.01~10重量%をさらに含有する請求項1に記載のアクリルゴム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクリルゴムと、老化防止剤とを含有するアクリルゴム組成物であって、
前記老化防止剤が、下記一般式(1)~(4)で表される化合物のうち、少なくとも1種であり、
前記老化防止剤の含有量が、前記アクリルゴム100重量部に対して、0.1~5重量部であるアクリルゴム組成物。
【化25】
(上記一般式(1)中、Yは化学的な単結合、-S(=O)-、または-SO-を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-を表す。XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR(R)、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR(R)、または、-O-C(=O)-NR(R)を表す。ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1~20の有機基を表す。nおよびmはそれぞれ独立して、0~2の整数を表し、nおよびmのいずれか一方は0でない。また、nおよび/またはmが2のとき、2個のR同士および2個のR同士は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【化26】
(上記一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR(R)、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR(R)、または、-O-C(=O)-NR(R)を表す。ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1~20の有機基を表す。pおよびqはそれぞれ独立して、0または1であり、pおよびqの少なくとも一方は1である。)
【化27】
(上記一般式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~30の置換基を有してもよい芳香族基を表す。R、R、およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR1a、-O-C(=O)-R1a、-C(=O)-OR1a、-O-C(=O)-OR1a、-NR1b-C(=O)-R1a、-C(=O)-NR1a1c、または-O-C(=O)-NR1a1cを表す。R1aおよびR1cは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1bは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。R1aおよびR1cを構成する炭素数1~30の有機基としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-O-C(=O)-R1e、-C(=O)-OR1e、-NR1b-C(=O)-R1e、-C(=O)-NR1e1f、または-O-C(=O)-NR1e1fを表す。R1eおよびR1fは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1eおよびR1fを構成する炭素数1~30の有機基は、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1bおよびR1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【化28】
(上記一般式(4)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状イミド構造を有する有機基を表す。)
【請求項4】
前記老化防止剤の含有量が、前記アクリルゴム100重量部に対し、0.3~3.5重量部である請求項3に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(9)で表される化合物である請求項3または4に記載のアクリルゴム組成物。
【化29】
(上記一般式(9)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-を表す。)
【請求項6】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(13)で表される化合物である請求項3~5のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【化30】
(上記一般式(13)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。)
【請求項7】
前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(14)で表される化合物である請求項3~6のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【化31】
(上記一般式(14)中、R11~R19は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基である。R1eは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1eを構成する炭素数1~30の有機基は、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(4)で表される化合物が、下記一般式(24)で表される化合物である請求項3~7のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【化32】
(上記一般式(24)中、R32~R39は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数~30のアルケニル基、-OR44、-O-C(=O)-R44、-C(=O)-OR44、-C(=O)-NR44(R45)、-NR44-C(=O)-R45、-CN、-SR44、-S-(=O)-R44、または、-S(=O)-R44を表し、R44、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。また、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基を表す。)
【請求項9】
前記アクリルゴム100重量部に対し、0.05~20重量部の架橋剤をさらに含有する請求項3~8のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のアクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項11】
ホース材またはシール材である請求項10に記載のゴム架橋物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム、そのアクリルゴムを含んでなるアクリルゴム組成物、およびそのゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸アルキルエステルまたはこれとアクリル酸アルコキシアルキルエステルを重合して得られるアクリルゴムは、使用環境に準じた耐寒性を有し、耐油性、特に高温下での耐油性に優れるゴムとして知られている。そのためアクリルゴムは、自動車用のホース、オイルシール、Oリングや装置・機械内蔵コンベアベルト等として需要が増大している。近年、内燃機関の高出力化や排気ガス対策などにより内燃機関周囲の熱的環境条件が過酷化したこと、およびエンジンオイルが高温条件下で長期間交換されることなく使用され、熱、空気、水分、排気ガス等との接触により劣化が進行すること等から、ゴム部品のさらなる性能の向上が求められている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、特定のアクリル酸エステルに由来する構成単位と、特定のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、カルボキシ基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位とをそれぞれ特定割合で含有するアクリル共重合体が開示されている。この特許文献1によれば、常態物性、長期高温下での耐熱性に優れ、耐寒性などを損なわない架橋物を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/101146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が検討したところ、特許文献1に開示されているアクリル共重合体は、劣化エンジンオイルに対する耐性について十分ではなく、改善の余地があることがわかった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、耐熱性、耐油性、耐寒性、および耐劣化エンジンオイル性にバランスよく優れたゴム架橋物を与えることのできるアクリルゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムを構成する単量体単位として特定の単量体単位を使用し、かつ、これら特定の単量体単位を特定の割合で含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、メタクリル酸エチル単位(a)20~35重量%、アクリル酸エチル単位(b)0~20重量%、アクリル酸n-ブチル単位(c)50~75重量%、およびカルボキシル基含有単量体単位(d)0.5~4重量%を含有するアクリルゴムが提供される。
【0008】
本発明のアクリルゴムは、アクリル酸2-メトキシエチル単位(e)0.01~10重量%をさらに含有することが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記のアクリルゴムと、老化防止剤とを含有するアクリルゴム組成物であって、前記老化防止剤が、下記一般式(1)~(4)で表される化合物のうち、少なくとも1種であり、前記老化防止剤の含有量が、前記アクリルゴム100重量部に対して、0.1~5重量部であるアクリルゴム組成物が提供される。
【化1】
(上記一般式(1)中、Yは化学的な単結合、-S(=O)-、または-SO-を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-を表す。XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR(R)、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR(R)、または、-O-C(=O)-NR(R)を表す。ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1~20の有機基を表す。nおよびmはそれぞれ独立して、0~2の整数を表し、nおよびmのいずれか一方は0でない。また、nおよび/またはmが2のとき、2個のR同士および2個のR同士は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【化2】
(上記一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR(R)、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR(R)、または、-O-C(=O)-NR(R)を表す。ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1~20の有機基を表す。pおよびqはそれぞれ独立して、0または1であり、pおよびqの少なくとも一方は1である。)
【化3】
(上記一般式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~30の置換基を有してもよい芳香族基を表す。R、R、およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR1a、-O-C(=O)-R1a、-C(=O)-OR1a、-O-C(=O)-OR1a、-NR1b-C(=O)-R1a、-C(=O)-NR1a1c、または-O-C(=O)-NR1a1cを表す。R1aおよびR1cは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1bは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。R1aおよびR1cを構成する炭素数1~30の有機基としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-O-C(=O)-R1e、-C(=O)-OR1e、-NR1b-C(=O)-R1e、-C(=O)-NR1e1f、または-O-C(=O)-NR1e1fを表す。R1eおよびR1fは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1eおよびR1fを構成する炭素数1~30の有機基は、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1bおよびR1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【化4】
(上記一般式(4)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状イミド構造を有する有機基を表す。)
【0010】
本発明のアクリルゴム組成物は、前記老化防止剤の含有量が、前記アクリルゴム100重量部に対し、0.3~3.5重量部であることが好ましい。
本発明のアクリルゴム組成物において、前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(9)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】
(上記一般式(9)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-を表す。)
本発明のアクリルゴム組成物において、前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(13)で表される化合物であることが好ましい。
【化6】
(上記一般式(13)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。)
本発明のアクリルゴム組成物において、前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(14)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
(上記一般式(14)中、R11~R19は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基である。R1eは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1eを構成する炭素数1~30の有機基は、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
本発明のアクリルゴム組成物において、前記一般式(4)で表される化合物が、下記一般式(24)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
(上記一般式(24)中、R32~R39は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-OR44、-O-C(=O)-R44、-C(=O)-OR44、-C(=O)-NR44(R45)、-NR44-C(=O)-R45、-CN、-SR44、-S-(=O)-R44、または、-S(=O)-R44を表し、R44、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。また、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基を表す。)
本発明のアクリルゴム組成物は、前記アクリルゴム100重量部に対し、0.05~20重量部の架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記のアクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【0012】
本発明のゴム架橋物は、ホース材またはシール材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性、耐油性、耐寒性、および耐劣化エンジンオイル性にバランスよく優れたゴム架橋物を与えることのできるアクリルゴム、そのアクリルゴムからなるアクリルゴム組成物、および該アクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<アクリルゴム>
本発明のアクリルゴムは、メタクリル酸エチル単位(a)20~35重量%、アクリル酸エチル単位(b)0~20重量%、アクリル酸n-ブチル単位(c)50~75重量%、およびカルボキシル基含有単量体単位(d)0.5~4重量%を含有するアクリルゴムである。
【0015】
本発明のアクリルゴム中における、メタクリル酸エチル単位(a)の含有量は、20~35重量%であり、好ましくは20~34重量%であり、より好ましくは20.5~32重量%であり、さらに好ましくは21~30重量%である。メタクリル酸エチル単位(a)の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物は、耐熱性および耐劣化エンジンオイル性に劣るものとなり、一方、メタクリル酸エチル単位(a)の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物は、耐寒性に劣るものとなる。
【0016】
本発明のアクリルゴム中における、アクリル酸エチル単位(b)の含有量は、0~20重量%であり、好ましくは1~19.5重量%であり、より好ましくは3~19重量%であり、さらに好ましくは5~18.5重量%であるアクリル酸エチル単位(b)の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物は、耐劣化エンジンオイル性に劣るものとなる。
【0017】
本発明のアクリルゴム中における、アクリル酸n-ブチル単位(c)の含有量は、50~75重量%であり、好ましくは51~72重量%であり、より好ましくは52~70重量%であり、さらに好ましくは53~67重量%である。アクリル酸n-ブチル単位(c)の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物は、耐寒性や耐劣化エンジンオイル性に劣るものとなり、一方、アクリル酸n-ブチル単位(c)の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物は、耐熱性および耐油性に劣るものとなる。
【0018】
カルボキシル基含有単量体単位(d)を形成するカルボキシル基含有単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸としては、たとえば、炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含有させることにより、アクリルゴムを、カルボキシル基を架橋点として持つものとすることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性をより高めることができ好ましい。
【0019】
炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。
炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、たとえば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルとしては、たとえば、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
【0020】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルがより好ましく、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが特に好ましい。好ましい具体的としては、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどが挙げられ、マレイン酸モノn-ブチルが特に好ましい。これらのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0021】
カルボキシル基含有単量体単位(d)の含有量は、0.5~4重量%であり、好ましくは0.6~3.5重量%であり、より好ましくは0.7~3.0重量%である。カルボキシル基含有単量体単位(d)の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物は、耐圧縮永久歪み性に劣るものとなり、一方、カルボキシル基含有単量体単位(d)の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物は、耐熱性および耐加水分解性に劣るものとなる。
【0022】
また、本発明のアクリルゴムは、メタクリル酸エチル単位(a)、アクリル酸エチル単位(b)、アクリル酸n-ブチル単位(c)、およびカルボキシル基含有単量体単位(d)に加えて、アクリル酸2-メトキシエチル単位(e)をさらに含有するものであることが好ましい。アクリル酸2-メトキシエチル単位(e)をさらに含有することで、得られるゴム架橋物の耐寒性をより高めることができる。
【0023】
アクリル酸2-メトキシエチル単位(e)の含有量は、0.01~10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~9重量%であり、さらに好ましくは1~8重量%である。アクリル酸2-メトキシエチル単位(e)の含有量が上記範囲内であれば、得られるゴム架橋物は、耐寒性および耐油性により優れるものとなる。
【0024】
また、本発明のアクリルゴムは、メタクリル酸エチル単位(a)、アクリル酸エチル単位(b)、アクリル酸n-ブチル単位(c)、およびカルボキシル基含有単量体単位(d)、ならびに任意のアクリル酸2-メトキシエチル単位(e)に加えて、必要に応じて、共重合可能なその他の単量体単位を有していてもよい。
【0025】
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、たとえば、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-メトキシエチル以外の(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有単量体以外の架橋性単量体、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する単量体(以下、「多官能(メタ)アクリル単量体」ということがある。)、オレフィン系単量体、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、ビニルエステル化合物およびビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0026】
メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-メトキシエチル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、たとえば、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n-ブチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、ならびにアクリル酸2-メトキシエチル以外の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
【0027】
メタクリル酸エチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n-ブチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1~8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、およびメタクリル酸n-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸n-ブチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0028】
アクリル酸2-メトキシエチル以外の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、メタクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、およびメタクリル酸2-メトキシエチルが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0029】
カルボキシル基含有単量体以外の架橋性単量体としては、特に限定されないが、たとえば、エポキシ基を有する単量体;ハロゲン原子を有する単量体;ジエン単量体;などが挙げられる。これらの架橋性単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0030】
エポキシ基を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有エーテルなどが挙げられる。
【0031】
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
エポキシ基含有エーテルの具体例としては、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジルおよびアリルグリシジルエーテルが好ましい。これらエポキシ基を有する単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0032】
ハロゲン原子を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体、およびハロゲン化ビニル化合物などが挙げられる。
【0033】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、および3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、および2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、およびp-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニル化合物の具体例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリルなどが挙げられる。
【0034】
これらの中でも、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、およびハロゲン含有不飽和エーテルが好ましく、クロロ酢酸ビニル、および2-クロロエチルビニルエーテルがより好ましく、クロロ酢酸ビニルがさらに好ましい。これらハロゲン原子を有する単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0035】
ジエン単量体としては、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体が挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびピペリレンなどを挙げることができる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、および(メタ)アクリル酸2-ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
【0036】
また、上述したエポキシ基を有する単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ジエン単量体以外に、カルボキシル基含有単量体以外の架橋性単量体として、必要に応じて、その他の架橋性単量体を用いてもよい。
【0037】
上述したエポキシ基を有する単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ジエン単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0038】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリル単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、および1-オクテンなどが挙げられる。
α、β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、炭素数4~12のα、β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルコールとのジエステルが挙げられる。ジエステルの2つの有機基は同一であっても、異なっていてもよい。α、β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジn-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシル、マレイン酸ジベンジル、マレイン酸ジフェニルなどのマレイン酸ジエステル;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジn-ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル、フマル酸ジベンジル、フマル酸ジフェニルなどのフマル酸ジエステル;シトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、シトラコン酸ジプロピル、シトラコン酸ジn-ブチル、シトラコン酸ジベンジル、シトラコン酸ジフェニルなどのシトラコン酸ジエステル;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジn-ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、イタコン酸ジベンジル、イタコン酸ジフェニルなどのイタコン酸ジエステル;メサコン酸ジメチル、メサコン酸ジエチル、メサコン酸ジプロピル、メサコン酸ジn-ブチル、メサコン酸ジベンジル、メサコン酸ジフェニルなどのメサコン酸ジエステル;2-ペンテン二酸ジメチル、2-ペンテン二酸ジエチル、2-ペンテン二酸ジプロピル、2-ペンテン二酸ジn-ブチル、2-ペンテン二酸ジベンジル、2-ペンテン二酸ジフェニルなどの2-ペンテン二酸ジエステル;アセチレンジカルボン酸ジシクロヘキシルなどが挙げられる。
ビニルエステル化合物の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、および桂皮酸ビニルなどが挙げられる。
ビニルエーテル化合物の具体例としては、エチルビニルエーテル、およびn-ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルがより好ましい。
【0040】
これら共重合可能な他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリルゴム中の共重合可能な他の単量体単位の含有量は、通常29.5重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下であり、特に、0重量%以下であることが好ましい。すなわち、本発明のアクリルゴムは、実質的に、メタクリル酸エチル単位(a)、アクリル酸エチル単位(b)、アクリル酸n-ブチル単位(c)、およびカルボキシル基含有単量体単位(d)のみからなるものであるか、あるいは、実質的に、これら各単量体単位(a)~(d)およびアクリル酸2-メトキシエチル単位(e)のみからなるものであることが好ましい。
【0041】
本発明のアクリルゴムは、上記単量体を重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0042】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は、通常、0~70℃、好ましくは5~50℃の温度範囲で行われる。上記の単量体は必ずしも反応の当初から全種、全量が反応の場に供給されていなくてもよく、共重合反応性比、反応転化率などを考慮して反応時間の全体にわたって連続的または断続的に添加され、または、途中ないし後半に一括もしくは分割で導入されてもよい。また、重合反応における上記各単量体の仕込み割合は、各単量体の反応性によって調整すればよいが、重合反応は、ほぼ定量的に進行することが多いため、このような事情等を考慮して、製造したいアクリルゴムの単量体単位組成に合わせて、仕込み割合を決定すればよい。重合後、凝固、乾燥を経て、固形のアクリルゴムが得られる。
【0043】
本発明のアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは50,000~5,000,000、より好ましくは100,000~4,000,000、さらに好ましくは150,000~3,500,000である。アクリルゴムの重量平均分子量は、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって、ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0044】
本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)(ポリマームーニー)は、特に限定されないが、好ましくは10~80、より好ましくは20~70、さらに好ましくは25~60である。
【0045】
<アクリルゴム組成物>
本発明のアクリルゴム組成物は、上記アクリルゴムと、老化防止剤とを含有するものである。
【0046】
老化防止剤としては、特に限定されないが、得られるゴム架橋物を耐熱性により優れたものとすることができるという観点より、下記一般式(1)~(4)で表される化合物のうち、少なくとも1種であることが好ましい。以下、下記一般式(1)~(4)で表される化合物の詳細について、説明する。
【0047】
(一般式(1)で表される化合物)
【化9】
【0048】
上記一般式(1)中、Yは化学的な単結合、-S(=O)-、または-SO-を表し、好ましくは-S(=O)-、および-SO-であり、より好ましくは-SO-である。
【0049】
上記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。
およびRを構成する炭素数1~30の有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3~30のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等の炭素数6~30のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等の炭素数1~30のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0050】
また、上述したRおよびRを構成する有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基の位置としては、任意の位置とすることができる。
【0051】
前記有機基の置換基としては、該有機基がアルキル基である場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基等の、置換基を有していてもよいフェニル基;等が挙げられる。
前記有機基がシクロアルキル基およびアリール基である場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基;等が挙げられる。
また、前記有機基がアルコキシ基の場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。
【0052】
なお、RおよびRを構成する有機基が、置換基を有する場合、有機基の炭素数には、該置換基の炭素数を含まないものとする。すなわち、RおよびRを構成する有機基は、置換基に含有される炭素原子を除いた炭素原子の数が、1~30の範囲にあればよい。たとえば、RおよびRを構成する有機基が、メトキシエチル基である場合には、該有機基の炭素数は2となる。すなわち、この場合においては、メトキシ基は置換基であるため、該有機基の炭素数は、置換基であるメトキシ基の炭素数を除いたものとなる。
【0053】
上記一般式(1)中、RおよびRとしては、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐の炭素数1~20のアルキル基、および、置換基を有していてもよいフェニル基並びに置換基を有していてもよいナフチル基が好ましく、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐の炭素数2~8のアルキル基および置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましい。
このようなRおよびRを構成する有機基の好ましい具体例としては、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、t-ブチル基、フェニル基、または4-メチルフェニル基などが挙げられ、これらのなかでも、α,α-ジメチルベンジル基、または4-メチルフェニル基が特に好ましい。なお、これらは、それぞれ独立したものとすることができる。
【0054】
上記一般式(1)中、ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-であり、化学的な単結合が好ましい。
【0055】
上記一般式(1)中、XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR(R)、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR(R)、または、-O-C(=O)-NR(R)を表す。
【0056】
、Xを構成するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0057】
炭素数1~10のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。
【0058】
、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基を表し、R、RおよびRのすべてが水素原子であることが好ましい。
【0059】
、RおよびRを構成する置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基の炭素数1~20の有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3~20のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等の炭素数6~20のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0060】
、RおよびRを構成する有機基の置換基としては、上述したRおよびRを構成する有機基の置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0061】
これらの中でも、X、Xとしては、入手容易性等の観点から、ともに水素原子であることが好ましい。
【0062】
上記一般式(1)中、nおよびmはそれぞれ独立して、0~2の整数を表し、nおよびmのいずれか一方は0でない。nおよびmはそれぞれ独立して、0または1である(nおよびmのいずれか一方は0でない)ことが好ましく、nおよびmが1であることがさらに好ましい。
また、nおよび/またはmが2のとき、2個のR同士および2個のR同士は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0063】
一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(5)~(12)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【化10】
(上記一般式(5)~(12)中、R、R、ZおよびZは上記一般式(1)と同じ。)
【0064】
上記一般式(5)~(12)で表される化合物のなかでも、上記式(5)、(9)、(10)で表される化合物がより好ましく、上記一般式(9)、(10)で表される化合物がさらに好ましく、上記一般式(9)で表される化合物が特に好ましい。
また、上記式(5)~(12)中、-Z-R、-Z-Rがそれぞれ独立して、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、t-ブチル基、フェニルスルホニル基、または4-メチルフェニルスルホニル基である化合物がさらに好ましく、α,α-ジメチルベンジル基である化合物が特に好ましい。
【0065】
上記一般式(1)で表される化合物は、たとえば、国際公開第2011/093443号に記載の方法にしたがって合成することができる。たとえば、上記一般式(1)で表される化合物のうち、Yが-S(=O)-である化合物および-SO-である化合物は、公知のフェノチアジン系化合物の製造方法を適用することによって、上記一般式(1)中、YがSである化合物を得て、次いで、得られた化合物を酸化することにより製造することができる。また、上記一般式(1)で表される化合物のうち、Yが単結合である化合物は、公知のカルバゾール系化合物の製造方法を適用することによって、製造することができる。
【0066】
(一般式(2)で表される化合物)
【化11】
【0067】
上記一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表し、置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族基又は環状脂肪族基が好ましい。
炭素数1~30の芳香族基としては、特に限定されないが、たとえば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アントラニル基などの芳香族炭化水素基や、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジル基、チアゾリル基などの芳香族複素環基が挙げられる。
炭素数1~30の環状脂肪族基としては、特に限定されないが、たとえば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。なかでも、RおよびRとしては、それぞれ独立して、フェニル基および4-メチルフェニル基が好ましい。
また、上述したRおよびRを構成する有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基の位置としては、任意の位置とすることができる。このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基などの炭素数1~10のアルキル基;などが挙げられる。
また、上記一般式(2)において、RおよびRを構成する有機基が、置換基を有する場合、有機基の炭素数には、該置換基の炭素数を含まないものとする。
【0068】
上記一般式(2)中の、XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などの置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、NR(R)-、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR(R)、または-O-C(=O)-NR(R)を表す。ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基を表し、複数個のXおよび複数個のXは全てそれぞれ独立して、異なる置換基が可能である。XおよびXとしては、すべて水素原子が好ましい。
およびXの置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基の置換基としては、RおよびRの置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基の置換基として例示したのと同じのものが挙げられる。
【0069】
本発明においては、上記一般式(2)で表される化合物としては、RおよびRが、それぞれ独立して、炭素数1~30の、置換基を有していてもよい芳香族基または環状脂肪族基を表し、XおよびXが、水素原子を表し、pおよびqが、1を表す化合物を選択することが好ましく、下記一般式(13)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0070】
【化12】
(上記一般式(13)中、R、およびRは、上記一般式(2)と同様である。)
【0071】
上記一般式(2)で表される化合物は、公知の製造方法を適用することにより製造することができる。たとえば、国際公開第2011/058918号に記載の反応方法を用いて合成することができる。
【0072】
(一般式(3)で表される化合物)
【化13】
【0073】
上記一般式(3)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~30の置換基を有してもよい芳香族基を表す。R、R、およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR1a、-O-C(=O)-R1a、-C(=O)-OR1a、-O-C(=O)-OR1a、-NR1b-C(=O)-R1a、-C(=O)-NR1a1c、または-O-C(=O)-NR1a1cを表す。R1aおよびR1cは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1bは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。R1aおよびR1cを構成する炭素数1~30の有機基としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0074】
上記一般式(3)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-O-C(=O)-R1e、-C(=O)-OR1e、-NR1b-C(=O)-R1e、-C(=O)-NR1e1f、または-O-C(=O)-NR1e1fを表す。R1eおよびR1fは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1eおよびR1fを構成する炭素数1~30の有機基は、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1bおよびR1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0075】
上記一般式(3)で表される化合物の、好ましい態様としては、Aは、炭素数1~30の置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Aは、炭素数1~30の置換基を有していてもよいフェニル基であり、R、R、およびR10は、水素原子であり、Rは、-O-C(=O)-R1e、-C(=O)-OR1e、-NR1b-C(=O)-R1e、-C(=O)-NR1e1f、または-O-C(=O)-NR1e1fであり、R1bは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、R1eおよびR1fは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基である化合物を選択することができる。
【0076】
上記一般式(3)で表される化合物の、上述した好ましい態様の中でも、より好ましい態様としては、上記一般式(3)において、Rが、-C(=O)-OR1eであり、R1eは、炭素数1~18の置換基を有していてもよいフェニル基または炭素数1~18の置換基を有していてもよいナフチル基であるジアリールアミン化合物を選択することができる。
【0077】
上記一般式(3)で表される化合物の、上述したより好ましい態様の中でも、さらに好ましい態様としては、上記一般式(3)において、Rは、-C(=O)-OR1eであり、R1eは、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数4~30の芳香族基であり、R1eを構成する置換基としては、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~20のアラルキル基、炭素数6~30の芳香族基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR’’-C(=O)-R、-C(=O)-NRR’、-O-C(=O)-NRR’、-SR、-S(=O)-R、または-S(=O)-Rであり、R、R’、およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、またはフェニル基であり、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族基であり、AおよびAを構成する置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基であるジアリールアミン化合物、すなわち、下記一般式(14)で表される、4位にエステル基を有するフタルイミド基含有ジアリールアミン化合物を選択することができる。
【0078】
【化14】
【0079】
上記一般式(14)中、R11~R19は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基である。
【0080】
さらに、具体的に、上記一般式(3)で表されるジアリールアミン化合物について説明する。
【0081】
上記一般式(3)中、Rとしては、-C(=O)-OR1eで表されるエステル基であることが、化合物の製造が容易であることから好ましい。ここで、R1eは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基であり、R1eを構成する炭素数1~30の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキルアリール基、アルコキシ基など多くの脂肪族基や芳香族基が選択できるが、耐熱性の観点から、芳香族基、特に、フェニル基またはナフチル基を選択することが好ましい。
【0082】
さらに、上記一般式(3)中、Rが、-C(=O)-OR1eであり、かつ、R1eが、置換基を有していてもよい炭素数1~20の芳香族基であると、老化防止剤として使用する場合、より耐熱性向上の効果が得られるため、特に好ましい。Rが、-C(=O)-OR1eであり、かつ、R1eが、炭素数1~18の置換基を有していてもよいフェニル基または炭素数1~18の置換基を有していてもよいナフチル基であるエステル構造であると、さらに優れた耐熱性向上の効果が得られるため、最も好ましい。
【0083】
上記一般式(3)で表される化合物は、公知の製造方法を適用することにより製造することができる。たとえば、特許第5732673号公報に記載の反応方法を用いて合成することができる。
【0084】
(一般式(4)で表される化合物)
【化15】
【0085】
上記一般式(4)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状イミド構造を有する有機基を表す。
【0086】
上記一般式(4)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基であり、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニレン基であり、さらに好ましくは1,4-フェニレン基であり、特に、より優れた老化防止作用を奏するという点より、AおよびAのいずれも、1,4-フェニレン基であることが特に好ましい。なお、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基;等が挙げられる。
【0087】
また、上記一般式(4)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状イミド構造を有する有機基であり、下記一般式(15)または(16)で表される有機基であることが好ましい。
【0088】
【化16】
【0089】
上記一般式(15)中、Dは、置換基を有していてもよい炭素数6~18の環を表し、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~10の環を表し、Dは、単環あるいは多環のいずれであってもよい。この場合における、置換基としては、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-O-R20、-O-C(=O)-R20、-C(=O)-O-R20、-C(=O)-NR20(R21)、-NR20-C(=O)-R21、-CN、-SR20、-S-(=O)-R20、または、-S(=O)-R20などが挙げられる。なお、R20、R21は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。また、rは0または1を表し、好ましくは0である。また、R1gは、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-O-R20、-O-C(=O)-R20、-C(=O)-O-R20、-C(=O)-NR20(R21)、-NR20-C(=O)-R21、-CN、-SR20、-S-(=O)-R20、または、-S(=O)-R20などが挙げられる。なお、R20、R21は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。
【0090】
上記一般式(16)中、R22、R23、およびR1hはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-O-R20、-O-C(=O)-R20、-C(=O)-O-R20、-C(=O)-NR20(R21)、-NR20-C(=O)-R21、-CN、-SR20、-S-(=O)-R20、または、-S(=O)-R20などが挙げられる。なお、R20、R21は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。また、上述したR22、R23、およびR1hを構成する有機基は、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合における、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基等の、置換基を有していてもよいフェニル基;等が挙げられる。また、sは0または1を表し、好ましくは0である。
【0091】
およびAを構成する、上記一般式(15)または(16)で表される有機基の中でも、より優れた老化防止作用を奏するという点より、下記一般式(17)~(22)で表される有機基のいずれかであることが好ましい。
【0092】
【化17】
【0093】
上記一般式(17)~(22)中、R24~R29は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-O-R30、-O-C(=O)-R30、-C(=O)-O-R30、-C(=O)-NR30(R31)、-NR30-C(=O)-R31、-CN、-SR30、-S-(=O)-R30、または、-S(=O)-R30を表し、R30、R31は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。R24~R29は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~30のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であることが特に好ましい。なお、R24~R29が複数存在する場合、それらは同一であっても、相異なっていてもよい。
【0094】
上記一般式(17)~(22)で表される有機基の中でも、老化防止作用をより高めることができるという観点より、上記一般式(17)、(18)、(20)または(21)で表される有機基がより好ましく、上記一般式(17)、(18)、または(21)で表される有機基がさらに好ましく、上記一般式(18)で表される有機基が特に好ましい。
【0095】
上記一般式(4)で表される化合物としては、下記一般式(23)~(26)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【0096】
【化18】
【0097】
上記一般式(23)~(26)中、R32~R43は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-OR44、-O-C(=O)-R44、-C(=O)-OR44、-C(=O)-NR44(R45)、-NR44-C(=O)-R45、-CN、-SR44、-S-(=O)-R44、または、-S(=O)-R44を表し、R44、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。R32~R43は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~30のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であることが特に好ましい。また、AおよびAは、上記一般式(4)と同じである。
【0098】
上記一般式(23)~(26)で表される化合物の中でも、老化防止作用をより高めることができるという観点より、上記一般式(24)で表される化合物が特に好ましい。
【0099】
上記一般式(4)で表される化合物は、公知の製造方法を適用することにより製造することができる。たとえば、国際公開第2018/159459号記載の反応方法を用いて合成することができる。
【0100】
また、本発明のアクリルゴム組成物は、老化防止剤として、上記一般式(1)~(4)で表される化合物に加えて、上記一般式(1)~(4)で表される化合物以外のその他の老化防止剤をさらに含有していてもよい。その他の老化防止剤としては、特に限定されないが、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-secブチルフェノール、2-(1-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、スチレン化フェノール、アルキル化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-α-メチルベンジル-p-クレゾール)、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン等のビス、トリス、またはポリフェノール系老化防止剤;4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-o-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド等のチオビスフェノール系老化防止剤:などのフェノール系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、オクチレイテッド・ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミン、p-イソプロポキシ・ジフェニルアミン、ビス(フェニル・イソプロピリデン)-4,4-ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル・エチレンジアミン、N,N’-ジフェニル・プロピレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニルジアミン、N-シクロへキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N,N’―ビス(1-メチルへプチル)―p-フェニレンジアミン、N,N-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、4-(α-フェニルエチル)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α-フェニルエチル)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(4-メチルフェニル)スルフォニル)ジフェニルアミン等の芳香族第二級アミン化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジアルキルジチオカルバミン酸ニッケル;等を用いることができる。
【0101】
本発明のアクリルゴム組成物中における、老化防止剤の含有量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.1~5.0重量部であり、より好ましくは0.3~3.5重量部、さらに好ましくは0.4~3重量部、特に好ましくは0.9~2.8重量部である。老化防止剤の含有量が上記範囲であれば、得られるゴム架橋物の耐熱性をより優れたものとすることができる。
【0102】
また、本発明のアクリルゴム組成物は、さらに架橋剤を含有していてもよい。本発明のアクリルゴム組成物に、架橋剤を含有させることにより、架橋可能なもの(架橋性アクリルゴム組成物)とすることができ、加熱等により架橋反応させることで、ゴム架橋物とすることができる。
【0103】
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、ジアミン化合物などの多価アミン化合物、およびその炭酸塩;硫黄;硫黄供与体;トリアジンチオール化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;などの従来公知の架橋剤を用いることができ、たとえば、アクリルゴムの架橋性単量体単位の有無や、架橋性単量体単位の種類に応じて適宜選択すればよい。これらの架橋剤は、1種、または2種以上を併せて使用することができる。
【0104】
多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4~30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物、およびその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物などが挙げられる。一方、グアニジン化合物のように非共役の窒素-炭素二重結合を有するものは含まれない。
【0105】
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、たとえば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0106】
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、4,4’-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、および1,3,5-ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0107】
硫黄供与体としては、たとえば、ジペンタメチレンチウラムヘキササルファイド、トリエチルチウラムジサルファイドなどが挙げられる。
トリアジンチオール化合物としては、たとえば、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、および6-オクチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールなどが挙げられるが、これらの中でも、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールが好ましい。
【0108】
カルボン酸アンモニウム塩としては、たとえば、安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウムなどが挙げられる。
ジチオカルバミン酸金属塩としては、たとえば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛などが挙げられる。
多価カルボン酸としては、たとえば、テトラデカン二酸などが挙げられる。
四級オニウム塩としては、たとえば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、たとえば、2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。
イソシアヌル酸化合物としては、たとえば、イソシアヌル酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0109】
本発明のアクリルゴム組成物中に、架橋剤を配合する場合における、その配合量は、アクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部であり、より好ましくは0.1~15重量部、さらに好ましくは0.3~12重量部である。架橋剤の含有量が上記範囲内であると、架橋が十分に行われ、ゴム架橋物とした場合に、得られるゴム架橋物を機械的特性に優れたものとすることができる。
【0110】
また、本発明のアクリルゴム組成物には、上記各成分以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、たとえば、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材;架橋促進剤;光安定剤;可塑剤;加工助剤;滑剤;粘着剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;シランカップリング剤;架橋遅延剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0111】
本発明のアクリルゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)(コンパウンドムーニー)は、特に限定されないが、好ましくは20~100、より好ましくは30~90、さらに好ましくは35~80である。アクリルゴム組成物のムーニー粘度が上記範囲であると、アクリルゴム組成物の加工性を向上させることができ、かつ、得られるアクリルゴム架橋物の引張強度をより高めることができる。
【0112】
<アクリルゴム組成物の調製方法>
本発明のアクリルゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、アクリルゴムと、老化防止剤とを、必要に応じて添加される各種配合剤とともに混合する方法が好適である。
【0113】
混合方法は特に限定されないが、ロール、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ、スクリューミキサ等の混練機を用いて混練する方法などが挙げられる。また、混合は、溶媒中で行ってもよい。
【0114】
また、架橋剤を配合する場合には、架橋剤および熱に不安定な架橋助剤などを除いた各成分を、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で混練し、ロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な架橋助剤などを加えて、二次混練することにより調製できる。
【0115】
以上のようにして、本発明のアクリルゴム組成物を得ることができる。本発明のアクリルゴム組成物は、アクリルゴムと、老化防止剤とを含有するものであり、とくに、老化防止剤として、上記一般式(1)~(4)で表される化合物のうち、少なくとも1種である老化防止剤を用いることにより、得られるゴム架橋物の耐熱性の向上効果をより高めることができる。
【0116】
また、本発明のアクリルゴム組成物に、架橋剤を配合する場合には、これを架橋することによりゴム架橋物を得ることができる。
ゴム架橋物は、架橋剤を配合したアクリルゴム組成物を成形し、架橋することにより製造される。アクリルゴム組成物の成形および架橋方法としては、特に限定されないが、たとえば、一軸や多軸の押出機を使用して、架橋性ゴム組成物を押し出して成形体とした後、加熱して架橋する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型により成形し、成形と同時に成形時の加熱で架橋する方法;などが挙げられる。これらの方法のうちでも、押出機または射出成形機を用いる方法が好ましく、押出機を用いる方法が特に好ましい。成形と架橋を同時に行うか、あるいは、成形後に架橋するかは特に限定されず、成形方法、加硫方法、成形体の大きさなどに応じて選択すればよい。
【0117】
アクリルゴム組成物を成形、架橋する際における、成形温度は好ましくは15~220℃、より好ましくは20~200℃である。また、架橋温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃~250℃である。架橋時間は、1分~5時間の範囲で任意に選択すればよい。加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0118】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋を行う際における、加熱温度は、好ましくは100~220℃、より好ましくは130~210℃であり、加熱時間は、好ましくは30分~10時間、より好ましくは1~5時間である。
【0119】
このようにして得られるゴム架橋物は、上述した本発明のアクリルゴムを含有するアクリルゴム組成物を用いて得られるものであることから、耐熱性、耐油性、耐寒性、および耐劣化エンジンオイル性にバランスよく優れたゴム架橋物である。そのため、このようにして得られるゴム架橋物は、その特性を活かして、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シールなどの各種シール;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジエーターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローライン、トランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、ターボインタークーラーホース、ディーゼルターボチャージャーホースなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;などとして好適に用いられ、シール材またはホース材として特に好適に用いられる。
【実施例
【0120】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定した。
【0121】
<ムーニー粘度(ML1+4,100℃)>
測定温度100℃におけるアクリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)をJIS K6300に従って測定した。
【0122】
<常態物性(引張強度、伸び、硬さ)>
実施例および比較例で得られたアクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら、170℃で20分間プレスすることによりシート状のゴム架橋物を得た。得られたシート状のゴム架橋物を、ギヤー式オーブンに入れ、170℃で4時間熱処理を行った。次いで、シート状のゴム架橋物をダンベル型3号形で打ち抜いて試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K6251に従い、引張強さ(MPa)および伸び(%)を測定した。また、この試験片について、JIS K6253に従い、デュロメーター硬さ試験機(タイプA)を用いて硬さを測定した。
【0123】
<耐熱老化試験>
上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、ギヤー式オーブン中で、温度200℃の環境下に336時間置いた後、伸び(加熱後の残存伸び)を測定し、得られた測定結果から、下記式に従って伸び変化率ΔE(%)を算出した。伸びは、JIS K6251に従って測定した。伸び変化率ΔE(%)の絶対値が小さい方が、耐熱老化性に優れる。
伸び変化率ΔE(%)=100×{(加熱後の残存伸び(%)-加熱前における伸び(%))/加熱前における伸び(%)}
【0124】
<耐寒性試験>
耐寒性試験として、JIS K6261に準じて低温弾性回復試験(TR試験)を行った。具体的には、試験片として、上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を打ち抜くことにより、両端のつかみ部が6.5mmの正方形で、つかみ間の平行部分が、長さ100.0±0.2mm、幅2.0±0.2mm、厚さ2.0±0.2mmの耐寒性試験用の試験片を作製した。そして、作製した寒性試験用の試験片を凍結させ、温度を連続的に上昇させることによって伸長されていた試験片の回復性を測定し、回復率が10%になる温度(以下、TR10という)を求めた。TR10の値が低い方が、耐寒性に優れる。
【0125】
<耐油性試験>
耐油性試験は、JIS K6258に準じて行った。具体的には、上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を打ち抜くことにより、縦30mm、横20mm、厚さ2.0±0.2mmの耐油性試験用の試験片を作製した。この試験片を内容積250ccのガラス製のチューブに入れ、そこに、試験用液体を200cc入れて、試験片が全て液中に浸漬されるように設置した。ガラス製のチューブを加熱槽に入れ、150℃で、72時間、加熱を行った。試験用液体としては、エンジンオイル(商品名「Mobil5W-30」、エクソンモービル社製)を用いた。加熱後、試験片を取出し、試験用液体を拭き取った後、試験片の体積を測定し、得られた測定結果から、下記式に従って、体積変化率ΔV(%)を算出した。体積変化率ΔV(%)の絶対値が小さい方が、耐油性に優れる。
体積変化率ΔV(%)={(試験用液体浸漬後の試験片の体積-試験用液体浸漬前の試験片の体積)/試験用液体浸漬前の試験片の体積}×100
【0126】
<耐劣化エンジンオイル浸漬試験>
上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、内容積250ccのガラス製のチューブに入れ、そこに、試験用液体を200cc入れて、試験片が全て液中に浸漬されるように設置した。ガラス製のチューブをオートクレーブに入れて、加熱槽に入れ、160℃で、168時間、加熱を行った。試験用液体(劣化エンジンオイル)としては、エンジンオイル(商品名「Mobil10W-40SM/CF」、エクソンモービル社製)197.7gに対して、純度95%の硫酸0.1g、純度50%の硝酸1.2g、純度99.7%の酢酸1.0gおよび純度98%のギ酸0.04gの割合で混合して作製した。なお、試験用液体中の酸濃度は、それぞれ、硫酸500ppm、硝酸3,000ppm、酢酸5,000ppmおよびギ酸200ppmである。加熱後、容器から試験片を取り出し、付着した試験用液体をよく拭き取ってから、室温条件で放冷した後、硬さを測定し、得られた結果と、上記方法にしたがって測定した試験用液体浸漬前の硬さの測定値とを対比することにより、劣化エンジンオイル試験の評価を行った。硬さ変化は、エンジンオイルに浸漬する前の試験片の硬さの測定値(常態物性の測定値)に対する浸漬後の試験片の硬さの測定値の差である。硬さ変化(硬さの測定値の差)が小さい程、劣化が進行しにくく、耐劣化エンジンオイル性に優れる。
【0127】
[製造例1:式(A)で表される老化防止剤]
【化19】
まず、温度計を備えた3つ口反応器に窒素気流中、フェノチアジン50.0g(250.92mmol)を加えて、トルエン200mlに溶解させた。次いで、この溶液にα-メチルスチレン59.31g(501.83mmol)とp-トルエンスルホン酸1水和物1.19g(6.27mmol)とを加えて80℃にて1時間反応させた。その後、反応液を室温に戻して酢酸48ml、30%過酸化水素水85.34g(752.7mmol)を加えて、さらに80℃にて2時間反応させた。反応液を室温に戻した後、メタノール630mlに投入した。析出した結晶をろ過し、320mlのメタノールでリンスすることで、白色結晶の化合物として上記式(A)で表される老化防止剤を85.7g、収率73%で得た。構造はH-NMRで同定した。H-NMR(500MHz、DMSO-d6、TMS、δppm):1.67(s,12H),7.15-7.32(m,12H),7.43(dd,2H,J=9.0,2.0Hz),7.68(d,2H,J=1.5Hz),10.84(s,1H)
【0128】
[製造例2:式(B)で表される老化防止剤]
【化20】
【0129】
ステップ1:式(B-1)で表される中間体の合成
【化21】
【0130】
2つ口反応器に窒素気流中、ビス(4-ヨードフェニル)アミン15.00g(35.63mmol)、p-トルエンチオール9.29g(74.82mmol)をトルエン300mlに溶解させた。この溶液にナトリウムtert-ブトキシド17.12g(178.1mmol)、[1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物0.73g(0.89mmol)を加え、80℃にて4時間反応させた。その後、反応液を室温に戻して蒸留水1000ml、飽和食塩水500mlを加え、酢酸エチル500mlで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:テトラヒドロフラン=4:1)により精製することで、上記式(B-1)で表される中間体を8.84g、収率60%で得た。構造はH-NMRで同定した。H-NMR(500MHz、CDCl、TMS、δppm):δ2.31(s,6H),5.78(s,1H),7.00(d,4H,J=8.5Hz),7.08(d,4H,J=8.0Hz),7.18(d,4H,J=8.0Hz),7.30(d,4H,J=8.5Hz)。
【0131】
ステップ2:式(B)で表される老化防止剤の合成
2つ口反応器に上記式(B-1)で表される中間体8.00g(19.34mmol)を加えて、THF50mlに溶解させた。この溶液に酢酸150mlと30%過酸化水素水11.08g(96.71mmol)を加えて80℃にて2時間反応させた。その後、反応液を室温に戻して蒸留水500ml、飽和食塩水500mlを加え、酢酸エチル500mlで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:テトラヒドロフラン=1:1)により精製することで、融点が225℃である上記式(B)で表される老化防止剤を8.35g、収率90%で得た。構造はH-NMRで同定した。H-NMR(500MHz、DMSO-d6、TMS、δppm):δ2.36(s,6H),7.26(d,4H,J=9.0Hz),7.40(d,4H,J=8.0Hz),7.78-7.80(m,8H),9.44(s、1H)。
【0132】
[製造例3:式(C)で表される老化防止剤]
【化22】
【0133】
ステップ1:式(C-1)で表される中間体の合成
【化23】
【0134】
冷却器、温度計を備えた4つ口反応器に窒素気流中、無水トリメリット酸80g(0.42mol)、および4-アミノジフェニルアミン76.7g(0.42mol)を、酢酸1リットルに溶解した。この溶液をオイルバスにて10時間加熱還流下にて反応を行った。反応終了後、反応液を水2リットルに投入し、固体を析出させた。その後、析出した固体を吸引ろ過した。ろ物を水、メタノールの順で洗浄した後、真空乾燥機で乾燥させ、黄緑色固体として上記式(C-1)で表される中間体を138.5g得た(収率:92%)。構造はH-NMRで同定した。H-NMR(500MHz、THF-d8、TMS、δppm):6.97(t、1H、J=7.0Hz)、7.24-7.28(m、4H)、7.33-7.36(m、2H)、7.40-7.42(m、2H)、7.68(s、1H)、8.11(d、1H、J=8.5Hz)、8.56-8.58(m、2H)、12.20(bs、1H)。
【0135】
ステップ2:上記式(C)で表される老化防止剤の合成
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に窒素気流中、上記式(C-1)で表される中間体10g(0.028mol)、4-ヒドロキシビフェニル5.7g(0.033mol)、およびN,N-ジメチル-4-アミノピリジン400mg(0.0033mol)をN-メチルピロリドン150mlに溶解した。この溶液に室温下にて、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)6.4g(0.033mol)を加えた。その後、室温下にて14時間反応を行った。反応終了後、反応液を水に投入し、固体を析出させた。析出した固体を吸引ろ過した。得られた固体をN-メチルピロリドン100mlに再度溶解させ、メタノール1リットルに徐々に投入し固体を析出させた。析出した固体を吸引ろ過し、ろ物をメタノールで洗浄した。さらに再度、得られた固体をN-メチルピロリドン100mlに溶解させ、メタノール1リットルに徐々に投入し固体を析出させた。析出した固体を吸引ろ過し、ろ物をメタノールで洗浄した。得られたろ物を真空乾燥機で乾燥させ、黄色固体として上記式(C)で表される老化防止剤を12.1g得た(収率:85%)。構造はH-NMRで同定した。H-NMR(500MHz、DMF-d7、TMS、δppm):6.92(t、1H、J=7.5Hz)、7.25(d、2H、J=7.5Hz)、7.29-7.33(m、4H)、7.41-7.44(m、3H)、7.52(t、2H、J=8.0Hz)、7.57(d、2H、J=9.0Hz)、7.77(dd、2H、J=1.0Hz、8.5Hz)、7.87(d、2H、J=11.5Hz)、8.22(d、1H、J=13.5Hz)、8.49(s、1H)、8.58-8.59(m、1H)、8.71(dd、1H、J=1.5Hz、7.5Hz)。
【0136】
[製造例4:式(D)で表される老化防止剤]
【化24】
還流冷却器を備えた500ccの4つ口フラスコに、4,4’-ジアミノジフェニルアミン硫酸塩水和物15.00g、無水フタル酸16.46g、酢酸140cc、およびN-メチルピロリジノン70ccを仕込み、125℃で2.5時間加熱した。加熱終了後、反応液を室温に戻し、メタノール140ccを添加して析出物を濾別した。得られた析出物をメタノール120ccで洗浄した後、N-メチルピロリジノン140ccに懸濁させ、100℃に昇温し溶解させた。この溶液を室温に冷却後、メタノール280ccを添加して析出物を濾別し、得られた析出物をメタノール130ccで洗浄して減圧乾燥させることで、上記式(D)で表される老化防止剤を18.53g、収率80%で得た。構造はH-NMRにより同定した。H-NMR(500MHz、DMSO-d6、TMS、δppm):δ 7.25(dd、J=2.0、6.5Hz、4H)、7.31(dd、J=2.0、6.5Hz、4H)、7.90(dd、J=3.0、5.5Hz、4H)、7.96(dd、J=3.0、5.5Hz、4H)、8.65(s、1H)。
【0137】
[実施例1]
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸n-ブチル70.5部、アクリル酸エチル6部、メタクリル酸エチル22部およびマレイン酸モノn-ブチル1.5部を仕込み、減圧脱気および窒素置換を2度行って酸素を十分に除去した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。次いで、得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴム(α-1)を得た。
【0138】
[実施例2~11]
重合に用いる単量体の種類、および使用量を変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に示す単量体組成を有するアクリルゴム(α-2)~(α-11)を製造した。
【0139】
[比較例1~10]
重合に用いる単量体の種類、および使用量を変更した以外は、実施例1と同様にして、表2に示す単量体組成を有するアクリルゴム(α-12)~(α-21)を製造した。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
[実施例12]
バンバリーミキサーを用いて、上記実施例1で得られたアクリルゴム(α-1)100部に、FEFカーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製、充填剤、「シースト」は登録商標)60部、ステアリン酸(商品名「ステアリン酸さくら」、日油株式会社製、滑剤)1部、エステル系ワックス(商品名「グレッグG-8205」、大日本インキ化学工業社製、滑剤)1部、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤、「ノクラック」は登録商標)2部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(商品名「BAPP」、和歌山精化工業社製、架橋剤)1部、および1,3-ジ-o-トリルグアニジン(商品名「ノクセラーDT」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤、「ノクセラー」は登録商標)2部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。得られたアクリルゴム組成物について、上述した方法によりムーニー粘度(ML1+4,100℃)を測定した。また、得られたアクリルゴム組成物を用いて上述した方法によりゴム架橋物の試験片を得て、常態物性(引張強さ、伸び、硬さ)、耐熱老化試験、耐寒性試験、耐油性試験、および耐劣化エンジンオイル浸漬試験の各評価を行った。結果を表3に示す。
【0143】
[実施例13]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例1で得られた式(A)で表される老化防止剤1.5部を使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0144】
[実施例14~17]
アクリルゴム(α-1)に代えて、実施例2~5で得られたアクリルゴム(α-2)~(α-5)をそれぞれ使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0145】
[実施例18]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例1で得られた式(A)で表される老化防止剤1.5部を使用した以外は、実施例17と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0146】
[実施例19~22]
アクリルゴム(α-1)に代えて、実施例6~9で得られたアクリルゴム(α-6)~(α-9)をそれぞれ使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0147】
[実施例23~25]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例1で得られた式(A)で表される老化防止剤を、それぞれ0.5部(実施例23)、1.5部(実施例24)および2.5部(実施例25)使用した以外は、実施例22と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0148】
[実施例26]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例2で得られた式(B)で表される老化防止剤2.5部を使用した以外は、実施例22と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0149】
[実施例27]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例3で得られた式(C)で表される老化防止剤2.5部を使用した以外は、実施例22と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0150】
[実施例28]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例4で得られた式(D)で表される老化防止剤2.5部を使用した以外は、実施例22と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0151】
[実施例29,30]
アクリルゴム(α-1)に代えて、実施例10,11で得られたアクリルゴム(α-10)、(α-11)をそれぞれ使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0152】
[比較例11~17]
アクリルゴム(α-1)に代えて、比較例1~7で得られたアクリルゴム(α-12)~(α-18)をそれぞれ使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0153】
[比較例18]
アクリルゴム(α-1)に代えて、比較例8で得られたアクリルゴム(α-19)を使用したこと、エステル系ワックスを配合しなかったこと、ならびに、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(架橋剤)1部および1,3-ジ-o-トリルグアニジン(架橋促進剤)2部に代えて、安息香酸アンモニウム(商品名「バルノックAB-S」、大内新興化学工業社製、架橋剤、「バルノック」は登録商標)1.1部を使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0154】
[比較例19,20]
アクリルゴム(α-1)に代えて、比較例9,10で得られたアクリルゴム(α-20)、(α-21)をそれぞれ使用した以外は、実施例12と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0155】
[比較例21]
4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2部に代えて、製造例1で得られた式(A)で表される老化防止剤1.5部を使用した以外は、比較例20と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
表3に示すように、メタクリル酸エチル単位(a)20~35重量%、アクリル酸エチル単位(b)0~20重量%、アクリル酸n-ブチル単位(c)50~75重量%、およびカルボキシル基含有単量体単位(d)0.5~4重量%を含有するアクリルゴムによれば、これを用いて得られるゴム架橋物は、耐熱性、耐油性、耐寒性、および耐劣化エンジンオイル性にバランスよく優れたものであった(実施例12~30)。
【0159】
一方、表4に示すように、アクリル酸エチル単位の含有割合が多いアクリルゴムでは、得られるゴム架橋物は、耐劣化エンジンオイル性に劣るものであった(比較例11,14,19~21)。アクリル酸n-ブチル単位の含有割合が少ないアクリルゴムでは、得られるゴム架橋物は、耐寒性に劣るものであった(比較例12)。アクリル酸n-ブチル単位の含有割合が多いアクリルゴムでは、得られるゴム架橋物は、耐熱性および耐油性に劣るものであった(比較例13)。メタクリル酸エチル単位の含有割合が少ない、もしくはメタクリル酸エチル単位を含有しないアクリルゴムでは、得られるゴム架橋物は、耐熱性、耐寒性、および耐劣化エンジンオイル性のバランスに劣るものであった(比較例14,16~21)。メタクリル酸エチル単位の含有割合が多いアクリルゴムでは、得られるゴム架橋物は、耐寒性に劣るものであった(比較例15)。カルボキシル基含有単量体単位を含有しないアクリルゴムでは、得られるゴム架橋物は、耐熱性および耐油性に劣るものであった(比較例18)。