IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許7480802ガラス繊維及びその製造方法、ならびにガラスクロス、基板用プリプレグ及びプリント配線基板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ガラス繊維及びその製造方法、ならびにガラスクロス、基板用プリプレグ及びプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20240501BHJP
   C03C 25/321 20180101ALI20240501BHJP
   C03C 25/50 20060101ALI20240501BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240501BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20240501BHJP
   D06C 7/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H05K1/03 610T
C03C25/321
C03C25/50
C08J5/24 CER
H05K1/03 610R
D06M13/513
D06C7/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022067607
(22)【出願日】2022-04-15
(65)【公開番号】P2023068608
(43)【公開日】2023-05-17
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021179596
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸川 肇
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】野村 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】浦中 宗聖
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-063320(JP,A)
【文献】特開2004-099377(JP,A)
【文献】国際公開第2022/215287(WO,A1)
【文献】特開2018-127747(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049526(WO,A1)
【文献】特開2011-068549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
C03C 25/00-27/00
D03D 1/00-27/18
H01K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2組成量が55質量%以上であるガラス繊維をシラン処理した、シラン処理ガラス繊維であって、揮発分が0.2質量%以下、シランカップリング剤の付着量が0.02~0.1質量%、10GHzでの誘電正接が0.0017以下であるシラン処理ガラス繊維。
【請求項2】
前記シラン処理ガラス繊維の40GHzにおける誘電正接が、0.0021以下である請求項1記載のシラン処理ガラス繊維。
【請求項3】
前記ガラス繊維がSiO2組成量95質量%以上のQガラスである請求項1記載のシラン処理ガラス繊維。
【請求項4】
引張強度が、0.07~0.24GPaである、請求項1記載のシラン処理ガラス繊維。
【請求項5】
揮発分が0.02~0.05質量%である、請求項1記載のシラン処理ガラス繊維。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載のガラス繊維を含有するプリント基板用プリプレグ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項記載のガラス繊維を用いたプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電正接に優れるガラス繊維及びその製造方法、このガラス繊維を用いたガラスクロス、基板用プリプレグ及びプリント配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン等の情報端末の高性能化、高速通信化に伴い、使用されるプリント配線板において、高密度化、極薄化とともに、低誘電化、低誘電正接化が著しく進行している。このプリント配線板の絶縁材料としては、ガラスクロスをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(以下、「マトリックス樹脂」という。)に含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されている。基板における信号の伝送ロスは、Ed wardA.Wolff式:伝送損失∝√ε×tanδ、が示すように、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)が小さい材料ほど改善されることが知られており、特に上記の式より、伝送損失に対しては誘電正接の寄与が大きいことが知られている。そのため、ガラスクロスにおいては低い誘電正接が求められ、Dガラス、NEガラス、Lガラス、Qガラス等の誘電特性が向上されたガラスクロスが提案されている(特許文献1~4)。しかしながら、今後の5G通信用用途等において十分な伝送速度性能を達成する観点から、これら低誘電率・低誘電正接に優れる低誘電特性ガラスクロスでもなお改善の必要性がある。
【0003】
通常、ガラスクロスは巻取時や製織時等の機械的な磨耗による毛羽や糸切れの発生を防止するため、ガラス繊維束の紡糸時や整経時にサイズ剤で被覆処理が施される。ところが、ガラスクロス製造の最終工程では積層板に使用されるマトリックス樹脂との接着性を高める目的でシラン処理が施されるため、サイズ剤がガラスクロス上に残っていると、シランカップリング剤とガラスクロスとの接着性が悪化する。そのため、通常、シラン処理前に加熱分解処理、いわゆるヒートクリーニング処理によってサイズ剤を完全に除去することが行われている。
【0004】
ヒートクリーニング後にサイズ剤がガラスクロスに残存する場合、ガラスクロスへのシランカップリング剤処理が不十分になり、樹脂との接着不良や、残存したサイズ剤によって誘電特性が悪化するため、ヒートクリーニング処理は重要であるものの、ヒートクリーニング工程のガラスクロスの誘電正接への影響についての検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-170483号公報
【文献】特開2009-263569号公報
【文献】特開2009-19150号公報
【文献】特開2006-282401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス本来の低誘電正接を有するヒートクリーニングされたガラス繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
既存のヒートクリーニング工程ではガス炉が用いられており、都市ガス等の燃焼を熱源としていることから、生成物として大量の二酸化炭素と水が生じる。ガラスクロスは50%以上がSiO2でありガラスは表面のSi-OH基は活性が強い。特に高温雰囲気では水分を水素結合で取り込み、Si-O-Si結合を開裂させることでSi-OH基が生じると考えられる(SiO2+H2O→Si-OH)。
【0008】
本発明者らは、Si-OH基を減少させることでガラス繊維の誘電正接が減少しており、Si-OH基と誘電正接は相関があるとの知見を見出した。ガラス組成中のSiO2の割合が55質量%以上だと、ヒートクリーニング工程での水分によるSi-O-Si結合の開裂によって誘電正接が上昇していると考えられる。特にSiO2の割合が95質量%以上のガラス繊維ではこの傾向が顕著になることを見出した。本発明者らはこのような事情を見出し、鋭意検討を重ねた結果、ヒートクリーニング工程において水分を発生させない発熱機構を持った加熱炉を用いることで、誘電正接の悪化を抑制しつつ、サイズ剤を除去することで、低誘電正接を有するガラス本来の誘電正接を有したガラス繊維を提供できることを見出した。これをシラン処理したシラン処理ガラス繊維も、低誘電正接を有するシラン処理ガラス繊維であった。
【0009】
従って、本発明は下記発明を提供する。
1.サイズ剤をヒートクリーニングした、SiO2組成量が55質量%以上であるガラス繊維であって、10GHzでの誘電正接が0.0016以下、サイズ剤由来の残存炭素含有量が0.1質量%以下であるガラス繊維。
2.前記ガラス繊維の40GHzにおける誘電正接が、0.0020以下である1記載のガラス繊維。
3.前記ガラス繊維がSiO2組成量95質量%以上のQガラスである1記載のガラス繊維。
4.前記ガラス繊維のSi-OH含有量が10,000ppm以下である1記載のガラス繊維。
5.1記載のガラス繊維をシラン処理した、シラン処理ガラス繊維。
6.揮発分が0.5質量%以下である5記載のシラン処理ガラス繊維。
7.ガラス繊維に対するシランカップリング剤の付着量が0.02~0.5質量%である、6記載のシラン処理ガラス繊維。
8.シラン処理前に対するシラン処理後の10GHzでの誘電正接が2倍以下である、5記載のシラン処理ガラス繊維。
9.シラン処理前に対するシラン処理後の40GHzでの誘電正接が2倍以下である、5記載のシラン処理ガラス繊維。
10.1~9のいずれかに記載のガラス繊維を含有するプリント基板用プリプレグ。
11.1~9のいずれかに記載のガラス繊維を用いたプリント配線基板。
12.サイズ剤処理された、SiO2組成量が55質量%以上のガラス繊維を、単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.12L以下であり、300~600℃に加熱された気体により、ヒートクリーニングする工程を含む、1~9のいずれかに記載のガラス繊維を製造する製造方法。
13.ヒートクリーニングする工程前後において、10GHzの誘電正接の変化比が0.7~1.3である12記載の製造方法。
14.ヒートクリーニングする工程前後において、40GHzの誘電正接の変化比が0.7~1.3である12記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低誘電正接を有するサイズ剤をヒートクリーニングしたガラス繊維を得ることができ、今後増えていく5G等の高速通信等に用いられる基板の伝送損失を抑えることができるという著大な効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のガラス繊維は、サイズ剤をヒートクリーニングした、SiO2組成量が55質量%以上であるガラス繊維であって、10GHzでの誘電正接が0.0016以下、サイズ剤由来の残存炭素含有量が0.1質量%以下であるガラス繊維である。なお、ガラス繊維とは、フィラメント、ストランド、チョップドストランド、ヤーン、平織りクロス、朱子織クロス、扁平クロス、不織布等のガラスクロスも含むものをいう。
【0012】
本発明の本発明のガラス繊維は、ガラスをサイズ剤で被覆処理した後、ヒートクリーニングによりサイズ剤を除去したものである。サイズ剤で被覆処理前のガラス及びヒートクリーニング処理されたガラス繊維は、SiO2が55質量%以上のものであり、95質量%以上のQガラスが好ましく、99.9質量%以上のQガラスがより好ましい。
【0013】
本発明のヒートクリーニング処理されたガラス繊維中の10GHzでの誘電正接、後述するシラン処理する場合、シラン処理する前の10GHzでの誘電正接は、0.0016以下であり、0.0010以下が好ましく、0.0008以下がより好ましい。また、40GHzでの誘電正接は0.0020以下が好ましく、0.0018以下がより好ましく、0.0015以下がさらに好ましい。誘電正接の測定方法は後述する実施例の記載に基づくものである。
【0014】
本発明のヒートクリーニング処理されたガラス繊維中の、サイズ剤由来の残存炭素含有量の炭素含有量、後述するシラン処理する場合、シラン処理する前の炭素含有量は、0.1質量%以下であり、0.06質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましく、0質量%でもよい。なお、サイズ剤由来残存炭素量の測定方法は、炭素分析装置を用いた後述する実施例の記載に基づくものである。サイズ剤由来の残存炭素含有量を0.1%にする方法としては水洗によるサイズ剤の除去やヒートクリーニングによる除去が挙げられるが、毛羽の発生を抑え均一にサイズ剤を除去する観点から、ヒートクリーニングによる方法が好ましい。
【0015】
本発明のヒートクリーニング処理されたガラス繊維中のSi-OH含有量は、10,000ppm(質量)以下が好ましく、8,500ppm以下がより好ましく、7,500ppm以下がさらに好ましく、0ppmでもよい。なお、ガラス繊維中のSi-OH含有量の測定方法は、後述する実施例の記載に基づくものである。
【0016】
[ガラス繊維の製造方法]
ガラスフィラメントの製造方法としては特に限定はされないが、規定のガラス組成インゴットを加熱延伸する方法や熔融して熔融ガラスとした後、ブッシングによって糸状に成形する方法が挙げられる。特にSiO2の割合が95質量%以上になると溶融する温度が高くなり、ブッシングによる延伸が難しくなるので酸水素バーナーによる加熱延伸が好まれる。
【0017】
延伸されたガラスフィラメントの表面に集束剤を塗布し、束ねることによりガラスストランドを形成できる。集束剤は澱粉を主原料とし、機能性付与のため、柔軟剤や潤滑剤を配合することができ、集束剤組成物は一般にサイズ剤と呼称される。サイズ剤処理は公知の方法を用いることができ、サイズ剤の種類、サイズ剤処理の方法は特に限定されず、毛羽、糸切れが生じにくい方法を適宜選定する。サイズ剤処理により、毛羽、糸切れが軽減される。処理方法としては、浸漬法、ローラー式又はベルト式のアプリケーター、噴霧法等が挙げられる。得られたガラスストランドに撚りをかけることでガラスヤーンが得られる。撚りの頻度としては、25mmあたり0.1~5.0回が好ましい。
【0018】
ガラスクロスはガラスヤーンを製織することで得られる。ガラスクロスは、特に限定されないが、目付量が10~100g/m3のものが好適に用いられる。製織方法は、特に限定はされないが、例えば、エアージェット織機、ウォータージェット織機、レピア織機、シャトル織機等による製織方法が挙げられる。エアージェット織機等で製織を行う場合は、さらに潤滑性を得るために、PVA(ポリビニルアルコール)や澱粉を二次サイズ剤として付着させることができる。
【0019】
[ガラス繊維のヒートクリーニング方法]
上記のようなヒートクリーニング処理されたガラス繊維を得る製造方法としては、サイズ剤処理されたガラス繊維を、単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.12L以下であり、300~600℃に加熱された気体により、ヒートクリーニングする工程を含むものが挙げられる。
【0020】
単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.12L以下であり、300~600℃に加熱された気体により、ヒートクリーニングする具体的方法は特に限定されない。単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量は0.12L以下であり、0.10L未満が好ましい。温度は300~600℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。このような範囲であれば長時間加熱する必要がなく、十分にサイズ剤を除去できる。温度が600℃を超えると強度に影響を及ぼすおそれがある。つまり、温度の調整により、ガラス本来の低誘電正接を有すると共に、強度に優れたガラス繊維が得られる。ヒートクリーニング時間に関して時間は加熱温度によって異なり、5~100時間が好ましく、12~72時間がより好ましく、30~72時間がさらに好ましい。また加熱炉の酸素が不足し、サイズ剤が炭化して黒変する場合は必要に応じてダンパの開閉等によって酸素を取り込んでもよい。
【0021】
単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.12L以下となるような発熱機構を有する装置としては、このような発熱機構を有していれば、特に限定されず、電気炉、マッフル炉、レーザー加熱等で、上記が可能な発熱機構を有する加熱炉を含む装置が挙げられる。特に、電気炉は燃焼を伴わないため、気体中の水の量を0.12L以下、0.1L未満、0.10L未満、0Lとすることができる。例えば、都市ガスを燃焼源としたガス炉を用いた場合、単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.16Lとなる。
【0022】
ヒートクリーニングする工程前後において、10GHz及び40GHzでの誘電正接の変化比は、0.7~1.3が好ましく、0.9~1.1がより好ましい。なお、10GHz及び40GHzでの誘電正接の変化比は後述する実施例の記載に基づくものである。
【0023】
ヒートクリーニングする工程後、シラン処理する前のガラス繊維の引張強度は、JISR 3420の引張強さの測定方法において、0.05GPa以上が好ましく、0.1GPa以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、0.5GPa以下とすることもできる。
【0024】
[シラン処理ガラス繊維]
本発明のヒートクリーニング処理されたガラス繊維は、シラン処理をしたシラン処理ガラス繊維とすることができる。シラン処理液に関しては特に限定はされないが、生産性や環境負荷の観点から、シランカップリング剤を0.05~1質量%に分散させた水溶液が好適である。シランカップリング剤の種類に応じて、pHを調整して分散させることができる。pHの調整方法としては特に限定されないが使用するシランカップリング剤に合わせて酢酸やアンモニアによる調整が好ましい。
【0025】
シランカップリング剤としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルビニルエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、1,4-ビス(メトキシジメチルシリル)ベンゼン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリスエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のアルコキシシラン化合物が挙げられ、1種あるいは2種以上混合して使用してもよい。その中でも、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。シランカップリング剤はこれらに限定されるものではなく、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
シラン処理液の塗布方法に関して特に限定はされないが、シラン処理液中にガラス繊維を浸透させる方法、ロールコートによる処理等が挙げられる。シラン処理液の乾燥方法としては、特に制限されないが、熱風乾燥、赤外線、ホットロールによる乾燥方法が挙げられる。乾燥温度に関しては、例えば80~180℃から適宜選定され、より水分を蒸発させ、シランカップリング剤とガラス繊維表面のSi-OH基を反応させる点から、90~150℃が好ましい。このような範囲であれば、ガラス繊維の表面にシランカップリング剤が分散し、シランカップリング剤とガラス繊維表面のSi-OH基が好ましく反応する。80℃未満だと、シラン処理液の水が蒸発しないだけでなく、シランカップリング剤とガラス繊維表面のSi-OH基が反応せず誘電正接の悪化に加え、プリント配線板とした際にアウトガスとして水やアルコールが生じて膨れとなって信頼性に悪影響を与えるおそれがある。ここでいうアルコールとは、シランカップリング剤由来のものであり主にメタノールやエタノールである。180℃を超えると、急速にシランカップリング剤とガラス繊維表面のSi-OH基とが反応することによってガラス繊維に均一にシラン処理が行えないだけではなく、シランカップリング剤の炭化水素が急速に酸化されて誘電正接に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
乾燥時間に関してはシラン処理液の濃度によって適宜変更できるが30秒~30分が好ましく、1~10分がより好まし。このような範囲であればシラン処理液の水分を除去し、シランカップリング剤とガラス繊維表面のSi-OH基が好ましく反応する。
【0028】
シラン処理ガラス繊維の水やアルコールの揮発分は0.5質量以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%が特に好ましい。このような揮発分にするためには、シラン処理後の乾燥工程を調整すればよい。なお、揮発分の測定方法は、実施例に記載の方法である。特に、SiO2の割合が95質量%以上のガラス本来の誘電正接はガラスに含まれるSi-OH量にもよるが、10GHzで1.0×10-4オーダーであり、合成石英等よりSi-OH量の少ないものは1.0×10-5オーダーのものも存在する。また、SiO2の割合が高いガラス繊維に関しては、誘電正接がSi-OH基の量によって顕著に影響を受け、後工程のシラン処理での適切量のシランカップリング剤での処理を行わなければ、過剰量のカップリング剤によるSi-OH基、SiOMe基やSiOEt基自体が誘電正接に悪影響を与えるだけでなく、それらの官能基が生じる水やアルコールが、ガラス繊維の誘電正接及び信頼性に大きな影響を与えることを見出した。すなわち、シラン処理後のガラス繊維を乾燥させた際に生じる水やアルコールの揮発分の発生量を、ガラス繊維に対して0.5質量%以下にすることで、ガラス本来の誘電正接をより有したまま、シラン処理ガラス繊維を提供できることを見出した。
【0029】
シラン処理後のシランカップリング剤の付着量は、ガラス繊維に対して0.01~0.5質量%が好ましく、0.02~0.4質量%がより好ましい。このような範囲であれば、プリント配線板とした際に樹脂との密着性がより良好で、信頼性もより向上する。0.5質量%以上付着させるとガラス繊維表面のSi-OHに対してシランカップリング剤が過剰になり、誘電正接が悪化するだけではなくガラスクロスから柔軟性が失われてしまう。また過剰量のシランカップリング剤には未反応のものも含まれ、アルコールをアウトガスとして発生させるため好ましくない。シランカップリング剤の付着量に関してはJISR3420に記載の強熱減量によって測定ができる。
【0030】
上記のようにして得られたシラン処理ガラス繊維の誘電正接(10GHz,40GHz)はシラン処理前と比較して2倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましく、1.3倍以下がさらに好ましい。特に単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.12L以下となるような発熱機構を有する装置でヒートクリーニングして得られた95質量%以上のQガラス繊維は誘電正接が非常に低いため、シラン処理での影響を受けやすく、上記の範囲であれば本来のガラスの誘電正接を持ったガラス繊維の誘電正接を悪化させずにシラン処理が行える。
【0031】
[プリント基板用プリプレグ]
本発明のガラス繊維は低誘電正接であるため、これを用いることにより、より誘電特性が向上したプリント基板用プリプレグが得られる。プリプレグの製造方法としては、特に限定されず、一般的なガラスクロス含有基板やフィルム、プリプレグ等の製造方法を適用することができる。
【0032】
[プリント基板]
本発明のガラス繊維は低誘電正接であるため、これを用いることにより、より誘電特性が向上したプリント基板が得られる。10GHz以上の電気信号を伝送する回路を有する電子部品に好適に用いることができるものである。プリント基板の製造方法としては特に限定されず、一般的なプリント基板の製造方法を適用することができる。
【実施例
【0033】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]
[工程1-1]
澱粉3.0質量%、牛脂0.5質量%、乳化剤0.1質量%、残りが水からなるガラス繊維用集束剤を調製し、SiO2の含有量が60質量%のガラスインゴットを加熱延伸して、直径5.3μmの石英ガラスフィラメントからなるガラス繊維を作製し、ガラス繊維集束剤をアプリケーターにて塗布した後に集束機により集束し、巻き取ってガラスフィラメント本数200本のガラスストランドを作製した。巻き取ったガラスストランドに24T/mの撚りを掛け、ガラスヤーンを作製した。
【0035】
得られたガラスヤーンに二次集束剤としてPVA(ポリビニルアルコール)1.5質量%、澱粉1.5質量%からなる水溶液を塗布した後に、エアージェット織機を用いて、IPC規格1078ガラスクロスを製造した。サイズ剤が付着したSiO2の含有量が60質量%であるガラスクロスを、単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.1L未満、実質的に0Lであるヤマト科学社製電気炉FO-610を用いて400℃・72時間加熱してヒートクリーニング処理し、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
【0036】
[工程1-2]
工程1-1で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、KBM-503(信越化学工業製 商品名:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)の付着量が0.1質量%となるように、KBM-503が0.2質量%含まれたシラン処理水溶液を調製し、得られたヒートクリーニング後のガラスクロスを含侵し、ヤマト社製送風定温恒温器DKN602で110℃・10分乾燥させ、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0037】
[実施例2]
[工程2-1]
SiO2が99.9質量%以上の石英ガラスインゴット原料として用いて工程1-1と同様にガラスクロスを製織し、ヤマト科学社製電気炉FO-610を用いて400℃・72時間加熱してヒートクリーニング処理してヒートクリーニング処理ガラスクロスを得た。
【0038】
[工程2-2]
工程-1で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0040】
[実施例3-2]
工程3-1で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0041】
[実施例4]
[工程4-1]
ヒートクリーニング処理を、300℃・72時間にする以外は、工程2-1と同様の方法で、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
【0042】
[工程4-2]
実施例4-1で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0043】
[実施例5]
[工程5-1]
ヒートクリーニング処理を、450℃・72時間にする以外は、工程2-1と同様の方法で、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
【0044】
[実施例5-2]
工程5-1で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0045】
[実施例6]
[工程6-1]
ヒートクリーニング処理を、600℃・72時間にする以外は、工程2-1と同様の方法で、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
【0046】
[実施例6-2]
工程6-1で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0047】
[実施例7]
工程2-1で得られたヒートクリーニング処理ガラスクロスを、KBM-503の付着量が0.1質量%となるように、KBM-503が0.2質量%含まれたシラン処理水溶液を調整し、得られたヒートクリーニング後のガラスクロスを含侵し、ヤマト社製送風定温恒温器DKN602で110℃・30秒乾燥させ、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0048】
[実施例8]
工程2-1で得られたヒートクリーニング処理ガラスクロスをKBM-503の付着量が0.02質量%となるように、KBM-503が0.05質量%含まれたシラン処理水溶液を調整し、得られたヒートクリーニング後のガラスクロスを含侵し、ヤマト社製送風定温恒温器DKN602で110℃・10分乾燥させ、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0049】
[実施例9]
工程2-1で得られたヒートクリーニング処理ガラスクロスをKBM-503の付着量が0.4質量%となるように、KBM-503が1質量%含まれたシラン処理水溶液を調整し、得られたヒートクリーニング後のガラスクロスを含侵し、ヤマト社製送風定温恒温器DKN602で110℃・10分乾燥させ、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0050】
[比較例1]
澱粉を3.0質量%、牛脂を0.5質量%、乳化剤を0.1質量%、残りが水からなるガラス繊維用集束剤を調整し、SiO2の含有量が53質量%のガラスインゴットを加熱延伸して、直径5.3μmの石英ガラスフィラメントからなるガラス繊維を作製し、ガラス繊維集束剤をアプリケーターにて塗布した後に集束機により集束し、巻き取ってガラスフィラメント本数200本のガラスストランドを作製した。巻き取ったガラスストランドに24T/mの撚りを掛け、ガラスヤーンを作製した。得られたガラスヤーンに二次集束剤としてPVA1.5質量%、澱粉1.5質量%からなる水溶液を塗布した後に、エアージェット織機を用いて、IPC規格1078ガラスクロスを製造した。サイズ剤が付着したSiO2の含有量が53質量%であるガラスクロスを、単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が0.1L未満、実質的に0Lであるヤマト科学社製電気炉FO-610を用いて400℃・72時間加熱して、ヒートクリーニング処理し、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
【0051】
[比較例2]
ヒートクリーニング処理を、200℃・72時間にする以外は、工程2-1と同様の方法で、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
上記で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0052】
[比較例3]
SiO2が99.9質量%以上の石英ガラスインゴット原料として用いて工程2-1と同様にガラスクロスを製織し、加熱炉を単位発熱量(1,000kcal)当たりに生じる水の量が12L以上である加熱炉(美濃窯業株式会社製ガス炉 7m3ファイバースーペリオキルン)に変更し、400℃・72時間でヒートクリーニング処理し、ヒートクリーニング処理ガラス繊維を得た。
上記で得られたヒートクリーニング処理ガラス繊維を、工程1-2と同様の方法で処理し、シラン処理ガラス繊維を得た。
【0053】
[洗浄クロス(参考例1対応)]
実施例1で用いたヒートクリーニング前のサイズ剤が付着しているガラスクロスを鈴木油脂工業社製 アルカリ電解水 S-2665で60℃・2時間洗浄し、付着したサイズ剤を除去した後にガラスクロスを100℃・30分乾燥させてサイズ剤洗浄ガラスクロスを得た。
【0054】
[洗浄クロス(参考例2対応)]
実施例2で用いたヒートクリーニング前のサイズ剤が付着しているガラスクロスを鈴木油脂工業社製 アルカリ電解水 S-2665で60℃・2時間洗浄し、付着したサイズ剤を除去した後にガラスクロスを100℃・30分乾燥させてサイズ剤洗浄ガラスクロスを得た。
【0055】
上記参考例1,2によるアルカリ電解水によるサイズ剤の除去は、加熱によるSi-O-Si結合の開裂が起こらないため、ヒートクリーニング前のガラスクロスの誘電正接を測定することができ、本発明でのヒートクリーニングによる誘電正接の変化量を評価できる。
【0056】
上記で得られたヒートクリーニング処理前後のガラスクロス、シラン処理前後、及び洗浄クロスについて、下記方法で評価を行った。結果を下記表に記載する。
【0057】
1.誘電正接の測定
ガラスクロスの誘電正接を、誘電率測定用SPDR(Split post dielectric resonators)誘電体共振器周波数10GHz(キーサイト・テクノロジー株式会社製)を用いて測定した。なお、ガラスクロスの厚みは理論膜厚を用いて測定しており、ガラスクロスの理論膜厚は
理論膜厚t(m)=目付量(g/m2)/比重(g/cm3
から算出した。
【0058】
2.誘電正接比
以下の式に基づき、サイズ剤除去前後の誘電正接変化を計算した。
誘電正接比=実施例及び比較例の誘電正接/(SiO2量が同じ洗浄クロスの誘電正接)
【0059】
3.サイズ剤由来残存炭素量の測定
1,000℃、2時間空焼きした磁製るつぼに、ヒートクリーニング後のガラス繊維を100mg秤量し、助燃剤としてタングステン1.0gとスズコートされた銅1.5gを添加し、LECO社製炭素硫黄分析装置CS774を用いて2.2kWで燃焼した際のガス量から残存炭素量を測定した。この測定方法の結果を「サイズ剤由来残存炭素量」とする。
【0060】
4.シラノール基(Si-OH)含有量の測定
Qガラス繊維のシラノール含有量は、以下の方法によって測定・計算した値をいう。
あらかじめシラノール量が既知の板状Qガラスの誘電正接をガラスクロスと同様に測定して、以下のシラノール量と誘電正接の関係式を求めた。
誘電正接(10GHz)=9.04×10-8×シラノール量(ppm)+5.26×10-5
得られた関係式を用いてガラスクロスの誘電正接からシラノール量を算出した。なお残存炭素量が0.1質量%より多い場合、アルカリ電解水によって残存炭素を0.1質量%以下にした後の誘電正接からシラノール量を算出した。
【0061】
5.シラン処理ガラスクロスの揮発分測定方法
シラン処理されたガラスクロスを150℃・1時間乾燥させ質量変化を測定した。
揮発分(%)=((加熱前のシラン処理ガラスクロス-加熱後のシラン処理ガラスクロス)/加熱前のシラン処理ガラスクロス)×100
【0062】
6.シランカップリング剤の付着量
JISR3420に記載の強熱減量の方法に従って測定を行った。
【0063】
7.引張強度
シラン処理前と処理後のガラスクロスについて、島津製作所社製オートグラフ、AGS-Xを用いて、JISR 3420の引張強さの測定方法にしたがって測定した。結果を、強度(GPa)=(強度(N/25mm)/25)/理論膜厚(μm)で記載する。
【0064】
8.信頼性評価
SLK-3000(商品名;信越化学工業(株)製)を100質量部、ジクミルパーオキシド(商品名:パークミルD、日油製)を2質量部加え、溶剤としてトルエンに入れ、攪拌機で予備混合して樹脂ワニスを調製した。
作製した樹脂ワニスに実施例及び比較例で得られたシラン処理ガラスクロスを含侵させ、110℃で10分間乾燥させることでプリプレグを作製した。その際、付着量は55質量%になるように調整した。その後、作製したプリプレグを3枚積層して真空減圧プレス機を用い150℃で1時間、さらに180℃で2時間のステップキュアを行うことで硬化させた。得られた基板を1時間イオン交換水にて1時間煮沸後に、260℃のはんだ浴に30秒浸漬させて、膨れの生じなかったものを「〇」、膨れの生じたものを「×」として判断した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表1に示したように、本発明のヒートクリーニング方法では、SiO2の含有量が55質量%以上のヒートクリーニング処理ガラスクロスは、誘電正接は10GHzで0.0016以下であり、40GHzで0.0020以下であり、洗浄クロスと比較して0.7~1.3倍である。一方、SiO2の含有量が55質量%以上のガラスクロスであっても比較例2,3では誘電正接比は10GHzで4.6、2.4であり、高速通信用基板材料としては不十分である。比較例2ではサイズ剤が燃焼せずに酸化してしまったため大幅に誘電正接が悪化した。
【0069】
また実施例2で得られたヒートクリーニング処理ガラスクロスに対してシラン処理を行った結果、得られたシラン処理ガラスクロスの誘電正接を悪化させずに基板とした際に信頼性のあるシラン処理ガラスクロスとすることができた。