(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】プリプレグ用樹脂組成物、プリプレグ及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20240501BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240501BHJP
C08G 18/34 20060101ALI20240501BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240501BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240501BHJP
C08F 299/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C08J5/24 CFF
C08G18/32 003
C08G18/34
C08G18/42 069
C08G18/79 040
C08G18/79 070
C08F299/06
(21)【出願番号】P 2023559058
(86)(22)【出願日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2023010216
(87)【国際公開番号】W WO2023199692
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022066885
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】新地 智昭
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/006163(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/131566(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065210(WO,A1)
【文献】特開2020-139000(JP,A)
【文献】特開平09-169862(JP,A)
【文献】特開2004-238755(JP,A)
【文献】特開2004-231848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04-5/10
C08J 5/24
C08G 18/32
C08G 18/34
C08G 18/42
C08G 18/79
C08F 299/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(a1)と、ポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、ポリエステル樹脂(C)、及び前記ポリエステル樹脂(C)以外の熱可塑性樹脂(D)を必須成分とするプリプレグ用樹脂組成物であって
、
前記ポリイソシアネート(a1)が、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートから選ばれる1種以上のポリイソシアネートであり、前記ポリエステル樹脂(C)が、ラクトン(c1)及びポリアルキレンエーテルポリオール(c2)を必須原料とするものであ
り、
前記プリプレグ用樹脂組成物中の前記ポリエステル樹脂(C)の割合が2.5~6質量%であり、前記熱可塑性樹脂(D)の割合が1~25質量%であり、
前記ポリエステル樹脂(C)と前記熱可塑性樹脂(D)との質量比(C/D)が、3/2~1/3であることを特徴とするプリプレグ用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(D)が、熱可塑性ウレタン樹脂を含むものである請求項
1記載のプリプレグ用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2項記載のプリプレグ用樹脂組成物及び強化繊維(E)を含有することを特徴とするプリプレグ。
【請求項4】
請求項
3記載のプリプレグの硬化物であることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性及び成形性に優れ、耐熱性等の各種物性に優れる成形品が得られるプリプレグ及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維にて強化した繊維強化樹脂複合材料は、軽量でありながら耐熱性や機械強度に優れる特徴が注目され、自動車や航空機の筐体或いは各種部材をはじめ、様々な構造体用途での利用が拡大している。この繊維強化樹脂複合材料の成形方法としては、例えば、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれる中間材料を用いて、オートクレーブ成形、プレス成形により、硬化、成形させる方法が用いられる。
【0003】
プリプレグ用の樹脂としては、通常、常温での安定性と加熱等による硬化性を兼ね備えた樹脂であることが必要であるため、一般にはエポキシ樹脂組成物を始めとする熱硬化性樹脂が多用されてきた。しかしながら、エポキシ樹脂を用いたプリプレグは、常温で硬化が進行してしまうため、冷蔵保管を必要とする問題がある。
【0004】
この問題を解決するため、高い生産性と常温での安定性を実現できる成形材料の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。この成形材料は、特定構造を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物と強化繊維からなるものであるが、プリプレグに要求される、成形性が不十分であった。
【0005】
これに対し、特定のウレタン(メタ)アクリレート、重合開始剤、及び熱可塑性樹脂を必須原料とするプリプレグ用樹脂組成物提案されている。(例えば、特許文献2参照。)。この樹脂組成物から得られるプリプレグは成形性に優れ、その成形品は耐衝撃性等の各種物性に優れるが、用途によっては、より高度のバランスで耐衝撃性及び耐熱性を両立させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-29133号公報
【文献】国際公開第2017/163899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高度のバランスで耐衝撃性及び耐熱性を両立した成形品が得られるプリプレグ用樹脂組成物、プリプレグ及びその成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定のウレタン(メタ)アクリレート、重合開始剤、特定のポリエステル樹脂、及び熱可塑性樹脂を必須原料とするプリプレグ用樹脂組成物、及びプリプレグが、耐衝撃性及び耐熱性に優れる成形品を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、 ポリイソシアネート(a1)と、ポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、ポリエステル樹脂(C)、及び前記ポリエステル樹脂(C)以外の熱可塑性樹脂(D)を必須成分とするプリプレグ用樹脂組成物であって、前記ポリイソシアネート(a1)が、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートから選ばれる1種以上のポリイソシアネートであり、前記ポリエステル樹脂(C)が、ラクトン(c1)及びポリアルキレンエーテルポリオール(c2)を必須原料とするものであることを特徴とするプリプレグ用樹脂組成物、プリプレグ及びその成形品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプリプレグ用樹脂組成物及びプリプレグから得られる成形品は、耐衝撃性及び耐熱性等に優れることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプリプレグ用樹脂組成物は、ポリイソシアネート(a1)と、ポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、ポリエステル樹脂(C)、及び前記ポリエステル樹脂(C)以外の熱可塑性樹脂(D)を必須成分とするプリプレグ用樹脂組成物であって、前記ポリイソシアネート(a1)が、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートから選ばれる1種以上のポリイソシアネートであり、前記ポリエステル樹脂(C)が、ラクトン(c1)を必須原料とするものである。
【0012】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリイソシアネート(a1)と、ポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物である。
【0013】
前記ポリイソシアネート(a1)は、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートから選ばれる1種以上のポリイソシアネートであるが、成形品の耐熱性がより向上することから、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含むことが好ましい
【0014】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のイソシアネート原料としては、前記ポリイソシアネート(a1)以外のその他のポリイソシアネートを併用することができる。その他のポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、ウレタンイミン変性体、ジエチレングリコールやジプロピレングリコール等の数平均分子量1,000以下のポリオールで変性したポリオール変性体、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、アダクト体、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートなどを用いることができる。
【0015】
前記ポリイソシアネート(a1)は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のイソシアネート原料中、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0016】
前記ポリオール(a2)としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアルキレンポリオール等を使用することができる。これらのポリオール(a2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。前記ポリオール(a2)の水酸基当量は140~250g/eqの範囲であることが好ましい。また、前記ポリオール(a2)はビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、水酸基当量が140~180g/eqの範囲であるものと、水酸基当量が180~250g/eqの範囲であるものとを併用することが好ましい。この時両者の質量比は40/60~60/40の範囲であることが好ましい。前記ポリオール(a2)の総質量に対する前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の割合は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0017】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)は、プリプレグ用樹脂組成物中、5~50質量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料となる、イソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO)と水酸基を有する化合物の水酸基(OH)とのモル比(NCO/OH)は、0.7~1.5が好ましく、0.8~1.3がより好ましく、0.8~1.0がさらに好ましい。
【0020】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量としては、成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、プリプレグ用樹脂組成物中の60~95質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましい。
【0021】
前記重合開始剤(B)としては、特に限定されないが、有機過酸化物が好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物、パーオキシケタール等が挙げられ、成形条件に応じて適宜選択できる。なお、これらの重合開始剤(B)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0022】
また、これらの中でも、成形時間を短縮する目的で10時間半減期を得るための温度が70℃以上100℃以下の重合開始剤を使用するのが好ましい。70℃以上100℃以下であればプリプレグの常温でのライフが長く、また加熱により短時間(5分以内)で硬化ができるため好ましく、本発明のプリプレグと組み合わせることで硬化性と成形性がより優れる。このような重合開始剤としては、例えば、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジーtert-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、t-アミルパーオキシトリメチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0023】
前記重合開始剤(B)の含有量としては、硬化特性と保存安定性が共に優れることから、プリプレグ用樹脂組成物中の0.3~3質量%の範囲が好ましい。
【0024】
前記ポリエステル樹脂(C)は、前記ラクトン(c1)及び前記ポリアルキレンエーテルポリオール(c2)を必須原料として反応させたものである。
【0025】
前記ポリエステル樹脂(C)が、ラクトン由来のポリエステル構造及び末端にポリアルキレンエーテル構造を有することから、耐衝撃性及び耐熱性のバランスに優れる成形品が得られる。
【0026】
前記ラクトン(c1)としては、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられるが、より耐衝撃性及び耐熱性のバランスに優れる成形品が得られることから、ε-カプロラクトンがより好ましい。
【0027】
前記ポリアルキレンエーテルポリオール(c2)は、オキシアルキレン単位を繰り返し単位とするポリオールであるが、より耐衝撃性及び耐熱性のバランスに優れる成形品が得られることから、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の炭素原子数2~4のオキシアルキレン単位を有するものが好ましい。
【0028】
前記ポリアルキレンエーテルポリオール(c2)の数平均分子量としては、より耐衝撃性及び耐熱性のバランスに優れる成形品が得られることから、700~4,000が好ましく、1,000~3,500が好ましい。
【0029】
本発明の平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0030】
前記ポリエステル樹脂(C)には、前記ラクトン(c1)及び前記ポリアルキレンエーテルポリオール(c2)以外のその他の原料を使用することもできる。前記ポリエステル樹脂(C)の原料に占める前記ラクトン(c1)及び前記ポリアルキレンエーテルポリオール(c2)の合計質量の割合は70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0031】
前記ポリエステル樹脂(C)の数平均分子量は、成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、3,000~15,000が好ましく、5,000~12,000がより好ましい。
【0032】
前記ポリエステル樹脂(C)の水酸基価は、成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、5~30mgKOH/gが好ましく、10~20mgKOH/gがより好ましい。
【0033】
前記ポリエステル樹脂(C)の含有量としては、得られる成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、プリプレグ用樹脂組成物中、2.5~8質量%が好ましく、2.5~6質量%がより好ましく、4~6質量%が特に好ましい。
【0034】
前記熱可塑性樹脂(D)としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂及びこれらを共重合等により変性させたもの等が挙げられるが、これらの中でも、成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、熱可塑性ポリウレタン樹脂が好ましく、ポリアルキレンエーテルポリオールを必須原料とする熱可塑性ポリウレタンがより好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
また、前記熱可塑樹脂(D)は、粒子状で添加して用いることも、溶融して混合して用いることもできる。粒子状の熱可塑性樹脂を用いる場合は、繊維への分散性の観点から、粒子系は30μm以下が好ましく、20μmがより好ましい。
【0036】
前記熱可塑樹脂(D)の重量平均分子量は、成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、5,000~500,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましく、30,000~80,000がさらに好ましく、40,000~65,000が最も好ましい。
【0037】
前記熱可塑性樹脂(D)の含有量としては、得られる成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、プリプレグ用樹脂組成物中、1~25質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0038】
また前記ポリエステル樹脂(C)と前記熱可塑性樹脂(D)の質量比(C/D)としては、得られる成形品の耐衝撃性及び耐熱性のバランスがより向上することから、3/2~1/3が好ましく、1/1~1/2がより好ましい。
【0039】
また、本発明のプリプレグ用樹脂組成物の原料として、必要に応じて、エチレン性不飽和単量体を使用してもよい。これらのエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0040】
これらの中でも、作業環境時の臭気及び危険物の取り扱い上、成形体の機械強度及び耐熱性から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,12ドデカンジオールジメタクリレート、水素添加ビスフェノールAジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、イソソルバイドのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、水素添加ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリメタクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のヘキサメタクリレート等が挙げられる。硬化性、耐熱性、強度物性のバランスから、分子量は、320~2,000が好ましく、(メタ)アクリル基当量は、150~1,000が好ましく、150~500がより好ましい。同様に、硬化性、耐熱性、強度物性のバランスから、官能基数は、2~4が好ましく、2がより好ましい。
【0041】
本発明のプリプレグ用樹脂組成物中の前記エチレン性不飽和単量体の含有量は、作業性(タック性)と耐熱性、硬化性のバランスから、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0042】
本発明のプリプレグ用樹脂組成物の成分としては、上記した以外のものを使用してもよく、例えば、熱硬化性樹脂、重合禁止剤、硬化促進剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、補強材、光硬化剤等を含有することができる。
【0043】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。また、これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0044】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸類、バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物が挙げられる。またアミン類として、N,N-ジメチルアミノ-p-ベンズアルデヒド、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、ジエタノールアニリン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0046】
前記充填剤としては、無機化合物、有機化合物があり、成形品の強度、弾性率、衝撃強度、疲労耐久性等の物性を調整するために使用できる。
【0047】
前記無機化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、石こう、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉等が挙げられる。
【0048】
前記有機化合物としては、セルロース、キチン等の天然多糖類粉末や、合成樹脂粉末等があり、合成樹脂粉末としては、硬質樹脂、軟質ゴム、エラストマーまたは重合体(共重合体)などから構成される有機物の粉体やコアシェル型などの多層構造を有する粒子を使用できる。具体的には、アクリル粒子、ポリアミド粒子、ブタジエンゴムおよび/またはアクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等からなる粒子、ポリイミド樹脂粉末、フッ素樹脂粉末、フェノール樹脂粉末などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0049】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。好ましくは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等が挙げられる。これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0050】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物など、アクリル樹脂系微粒子などが挙げられ、本発明のプリプレグの取り扱い性によって適宜選択できる。これらの増粘剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0051】
本発明のプリプレグは、前記プリプレグ用樹脂組成物及び前記強化繊維(E)を含有するものであるが、前記強化繊維(E)としては、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維、バサルト繊維、亜麻繊維等の天然繊維などが挙げられるが、より高強度、高弾性の成形品が得られることから、炭素繊維又はガラス繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維(E)は単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0052】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できるが、これらの中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0053】
前記強化繊維(E)の形状としては特に制限はなく、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウや、強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物又は短く裁断した強化繊維、または、短く裁断した強化繊維からなる不織布や紙等が挙げられるが、強化繊維として一方向材を用い、積層させ成形することで高い機械物性が得られるため好ましい。
【0054】
短く裁断した強化繊維を用いる場合は、成形時の金型内流動性、成形品の外観がより向上することから、 2.5~50mmにカットした炭素繊維を用いることが好ましい。
【0055】
織物の場合は、平織、綾織、朱子織、若しくはノン・クリンプト・ファブリックに代表される、繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシート、等が挙げられる。
【0056】
強化繊維の目付け(繊維1m2当たりの重さ)としては特に制限されるものではないが、10g/m2~650g/m2が好ましい。10g/m2以上の目付けになると繊維幅のムラが少なく機械物性が良好になるので好ましい。650g/m2以下の目付けであれば樹脂の含浸が良好になるので好ましい。この目付けは、更には50~500g/m2がより好ましく、50~300g/m2が特に好ましい。
【0057】
本発明のプリプレグ中の、前記強化繊維(E)の含有率は、得られる成形品の機械強度がより向上することから、20~85質量%の範囲が好ましく、40~80質量%の範囲がより好ましい。
【0058】
本発明のプリプレグは、例えば、プラネタリーミキサー、ニーダーなどの公知の混合機を用いて、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)、重合開始剤(B)、ポリエステル樹脂(C)、及び熱可塑性樹脂(D)を混合した樹脂溶液に前記強化繊維(E)を含浸させ、さらに、上面から離型PETフィルムではさみこみ、圧延機によって圧延し、シートを得る工程1、これを常温~50℃で静置し、前記ポリイソシアネート(a1)の有するイソシアネート基と、前記ポリオール(a2)及び前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)の有する水酸基とを反応させる工程2により得られる。また、工程1において、繊維への含浸性を害しない範囲で、前記ポリイソシアネート(a1)、前記ポリオール(a2)、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)を、あらかじめ一部反応させたものを用いることもできる。
【0059】
本発明のプリプレグの厚みは、0.02~1.0mmであることが好ましい。0.02mm以上の厚みになると積層するための取り扱いが容易となるので好ましく、1mm以下の厚みであれば樹脂の含浸が良好になるので好ましい。更には0.05~0.5mmがより好ましい。
【0060】
上記で得られたプリプレグから成形品を得る方法としては、例えば、プリプレグから前記離型PETフィルムから剥離し、プリプレグを8~16枚積層した後、予め110℃~160℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、プリプレグを賦型させ、0.1~10MPaの成形圧力を保持することによって、プリプレグを硬化させ、その後成形品を取り出し成形品を得る方法が用いられる。この場合シェアエッジを有する金型内で金型温度120℃~160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1~2分間という規定の時間、1~8MPaの成形圧力を保持し、加熱圧縮成形する製造方法が好ましい。
【0061】
本発明のプリプレグから得られる成形品は、層間せん断強度、耐熱性等に優れることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、水酸基価は、樹脂試料1gをJIS K-0070の規定の方法に基づきアセチル化剤を用いて、規定温度及び時間で反応させた時に生成した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を測定したものである。また、平均分子量は下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0063】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0064】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0065】
(合成例1:ポリエステル樹脂(C-1)の合成)
反応装置にポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社「PTMG3000」)を300質量部と、ε―カプロラクトン(ダイセル株式会社製「プラクセルM」)を600質量部仕込み、昇温と攪拌を開始した。次いで、内温を190℃に上昇した後、チタン酸イソプロピル(TiPT)を0.009質量部仕込み、190℃で10時間反応させポリエステル樹脂(C-1)を合成した。このポリエステル樹脂(C-1)の水酸基価は13.8、数平均分子量は8,130であった。
【0066】
(合成例2:熱可塑性樹脂(D-1)の合成)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製「PTMG1000」)71部と1,4-ブタンジオール3質量部と、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート26質量部とを混合し、バットに流延し、90℃24時間の条件で反応させ、熱可塑性樹脂(D-1)を作製した。この熱可塑性樹脂(D-1)の重量平均分子量は、50,000であった。
【0067】
(合成例3:熱可塑性樹脂(D-2)の合成)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製「PTMG1000」)74部と1,4-ブタンジオール2質量部と、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート24質量部とを混合し、バットに流延し、90℃24時間の条件で反応させ、熱可塑性樹脂(D-2)を作製した。この熱可塑性樹脂(D-2)の重量平均分子量は、100,000であった。
【0068】
(実施例1:プリプレグ用樹脂組成物(1)の製造及び評価)
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」)20質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)20質量部と、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)27質量部と、ニューポールBPE-20(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;164g/eq)10質量部と、ニューポールBPE-40(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;204g/eq)12質量部と、重合開始剤(化薬ヌーリオン株式会社「トリゴノックス122-C80」、有機過酸化物)1質量部、ポリエステル樹脂(C-1) 4質量部、熱可塑性樹脂(D-1)6質量部を混合し、プリプレグ用樹脂組成物(1)を得た。
【0069】
[耐衝撃性の評価]
離型剤を塗った2枚のガラス板の間に厚さ4mmのスペーサーを入れた注型用の型にプリプレグ用樹脂組成物(1)を流し込み、45℃48時間の条件にてエージングさせることで厚さ4mmのBステージ化樹脂組成物(1)を得た。得られた厚さ4mmのBステージ化樹脂組成物(1)を150℃30分の条件で硬化させて硬化物(1)を得た。得られた硬化物(1)を幅8.4mm、長さ40mmの試験片を切り出した。この試験片中央の幅方向に4mmの切り込みを入れた後、ASTM D-5045-99に従って切り込みの反対方向から荷重をかけて破壊試験を行った。この際の試験片寸法と破壊荷重、亀裂長さから破壊靭性K1Cを計算し、下記の基準に従い評価した。
○:1.85MPa・m0.5以上
×:1.85MPa・m0.5未満
【0070】
[耐熱性の評価]
<ガラス転移温度Tgの測定>
離型剤を塗った2枚のガラス板の間に厚さ2mmのスペーサーを入れた注型用の型にプリプレグ用樹脂組成物(1)を流し込み、45℃48時間の条件にてエージングさせることで厚さ2mmのBステージ化樹脂組成物(1)を得た。得られた厚さ2mmのBステージ化樹脂組成物(1)を150℃30分の条件で硬化させて硬化物(1)を得た。得られた硬化物を、幅10mm、長さ56mmの試験片を切り出し、この試験片について、DMA(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製「RSA-G2」)を用い、測定周波数1Hz、昇温速度3℃/分、硬化物の両持ち曲げによる動的粘弾性を測定した。得られた貯蔵弾性率のチャートのガラス領域の近似直線と転移領域の接線の交点をガラス転移温度とし、下記の基準に従い耐熱性を評価した。
○:ガラス転移温度が120℃以上
×:ガラス転移温度が120℃未満
【0071】
[プリプレグの作製]
プリプレグ用樹脂組成物(1)を離型処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布した後、炭素繊維(東レ社製「T-700-12K-50C」)を炭素繊維含有量が50質量%となるように含浸させ、同じフィルムをかぶせた後、45℃48時間の条件にて、エージングさせることでプリプレグ(1)を作製した。
【0072】
[成形品の作製]
プリプレグ(1)を12枚積層し、プレート状金型を用いて加熱加圧成型することにより、成形品(1)を得た。加熱加圧条件としては、金型温度140℃で、型閉圧力4MPaで5分間保持し、型開後に取り出して常温下で放置冷却した。
【0073】
[成形性の評価]
上記で得られた成形品(1)の表面を下記の基準に従い評価した。
○:膨れ、及び、未硬化部分なし
×:膨れ、または、未硬化部分あり
【0074】
(実施例2:プリプレグ用樹脂組成物(2)の製造及び評価)
実施例1で使用したポリエステル樹脂(C-1)4質量部を6質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ用樹脂組成物(2)を得て、各評価を実施した。
【0075】
(比較例1:プリプレグ用樹脂組成物(R1)の製造及び評価)
実施例1で使用したポリエステル樹脂(C-1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ用樹脂組成物(2)を得て、各評価を実施した。
【0076】
(比較例2:プリプレグ用樹脂組成物(R2)の製造及び評価)
実施例1で使用したポリエステル樹脂(C-1)を使用せず、熱可塑性樹脂(D-1)6質量部を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ用樹脂組成物(R2)を得て、各評価を実施した。
【0077】
(比較例3:プリプレグ用樹脂組成物(R3)の製造及び評価)
実施例1で使用したポリエステル樹脂(C-1)を使用せず、熱可塑性樹脂(D-1)6質量部を熱可塑性樹脂(D-2)6質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ用樹脂組成物(R3)を得て、各評価を実施した。
【0078】
上記で得たプリプレグ用樹脂組成物(1)~(2)及び(R1)~(R3)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
本発明のプリプレグ用樹脂組成物の硬化物は耐衝撃性及び耐熱性に優れ、該組成物を用いたプリプレグは成形性に優れることが確認された。
【0081】
一方、比較例1~3は本発明の必須成分であるポリエステル樹脂(C)を用いなかった例であるが、耐衝撃性が不十分であることが確認された。