(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】紫外線硬化型ニス組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/14 20060101AFI20240501BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240501BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240501BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240501BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240501BHJP
C08G 59/02 20060101ALI20240501BHJP
C08F 299/06 20060101ALI20240501BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C09D175/14
C09D7/65
C09D7/61
C09D5/02
C09D163/00
C08G59/02
C08F299/06
C08L63/00 Z
(21)【出願番号】P 2023562526
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2023023918
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022105333
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】鑓水 清隆
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02657308(EP,A1)
【文献】特開2018-171755(JP,A)
【文献】特開2010-064296(JP,A)
【文献】特開2021-115701(JP,A)
【文献】特開2019-209499(JP,A)
【文献】特開2002-327149(JP,A)
【文献】特許第7202495(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08G 59/02
C08F 299/06
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)、
ウレタン樹脂ビーズ及び/又は
二酸化ケイ素ビーズを含むフィラー(C)、ポリエチレンワックス(D)、及びシリコーン(E)を含有する紫外線硬化型ニス組成物であって、
前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が0.6以下で
あり、
前記動摩擦係数は、荷重を検出する荷重検出センサーを用いて、測定試料に手が接触した際におけるXYZ方向の荷重を検出する荷重算出手段と、測定試料に掛かる荷重位置の移動速度を算出する移動状態算出手段とを有する測定装置を用い、測定試料をヒトが速度と荷重を変えながら手を動かした際に計測される水平力と垂直力から、水平力/垂直力を算出することにより求められ、
前記動摩擦係数は、前記測定装置を用いて計測される手の速度と荷重の測定結果の分類をもとに、所望のデータ数が確保された摩擦係数の値を抽出することにより求められる、紫外線硬化型ニス組成物。
【請求項2】
前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が、測定速度を30mm/sから60mm/sまで速度を上昇させた際の上昇率が0.05以下である、請求項1に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
【請求項3】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、及び
ウレタン樹脂ビーズ及び/又は
二酸化ケイ素ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部を含有する、請求項1に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
【請求項4】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、
ウレタン樹脂ビーズ及び/又は
二酸化ケイ素ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部、ポリエチレンワックス(D)0.2~2質量部、及びシリコーン(E)0.1~1質量部を含有する、請求項3に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
【請求項5】
さらに光重合開始剤1~5質量部、及び光重合抑制剤0.1~1質量部を含有する、請求項3に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤1~5質量部、及び光重合抑制剤0.1~1質量部を含有する、請求項4に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の紫外線硬化型ニス組成物が塗工乾燥された積層フィルムを有する積層体。
【請求項8】
前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面の平均粗さ(Ra)が2.50μm以下である、請求項7に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品の表面にコーティングされ、表面層を形成することができる紫外線硬化型ニス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品には、キズや汚れを防止する表面保護、あるいは肌触りの心地よさなどを目的としてコーティング剤が塗布され、表面層が形成される。
【0003】
ところで、製品に新しい価値を付加する感性価値への関心が高まり、多くの産業において感性価値創造の取り組みが活発になっている。製品に付加する価値として、接触知覚における手触り、肌触りの良さが重要な要件として注目されている。
例えば、紙等の印刷物表面に塗布することにより、その表面にベルベット調若しくはスエード調のしっとりしたソフトな手触り感を付与することができる水性紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面に対し、各個人が求める手触り、肌触り感は様々である。
内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面に対し、乾湿感の触感で評価した場合、例えば、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さを好む人もいる。
ここで、しっとりといった湿り気を感じる心地良さより、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さを好む人は、それ相当数存在する。
また、表面が乾燥している状態の方が、ホコリを払いやすく、ホコリに付着した菌やウイルスを取り除けたり、そもそも汚れが付きにくいといったメリットもある。
そこで、これらの乾燥感のある心地良さを好む人々のニーズに応えるために、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの分野において、物品表面に、乾燥感の心地良さの手触り、肌触り感を与えることができる表面層を形成することができる材料の提供が望まれている。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の組成物は、しっとりしたソフトな手触り感を付与する、湿り気を感じる心地良さを好む人々のニーズに応えるためのものであり、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さを好む人々のニーズに沿うものではない。
また、特許文献1に記載の組成物は、摩擦子を有する装置を用いて計測された動摩擦係数の値を用いて規定されている。しかし、摩擦子を有する装置を使った摩擦計測は、摩擦測定自体にはJIS規格があるものの、摩擦子については規格がないため、測定者が選択した摩擦子によって摩擦係数の値は大きく変わる。そのため、摩擦係数の値と触感との相関が十分であるとはいえない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面に、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さの手触り、肌触り感を与えることができる表面層を形成することができる材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面にコーティングするための表面層を形成する材料として、特定の成分を含有する紫外線硬化型ニス組成物であって、ヒトの手で計測することにより得られた動摩擦係数を用いて規定された紫外線硬化型ニス組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1] ウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)、ポリエチレンワックス(D)、及びシリコーン(E)を含有する紫外線硬化型ニス組成物であって、
前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が0.6以下である、紫外線硬化型ニス組成物。
[2] 前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が、測定速度を30mm/sから60mm/sまで速度を上昇させた際の上昇率が0.05以下である、[1]に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
[3] ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部を含有する、[1]に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
[4] ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部、ポリエチレンワックス(D)0.2~2質量部、及びシリコーン(E)0.1~1質量部を含有する、[3]に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
[5] さらに光重合開始剤1~5質量部、光重合抑制剤0.1~1質量部を含有する、[3]に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
[6] さらに光重合開始剤1~5質量部、光重合抑制剤0.1~1質量部を含有する、[4]に記載の紫外線硬化型ニス組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の紫外線硬化型ニス組成物が塗工乾燥された積層フィルムを有する積層体。
[8] 前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面の平均粗さ(Ra)が2.50μm以下である、[7]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面に、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さの手触り、肌触り感を与えることができる表面層を形成することができる材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明で用いる触感検出装置の側面からみた構成図の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明で用いる触感検出装置の上面からみた構成図の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明で用いる触感検出装置の上面からみた写真である。
【
図4】摩擦係数を速度・荷重の各区分毎に分類したデータマップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0013】
(紫外線硬化型ニス組成物)
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)、ポリエチレンワックス(D)、及びシリコーン(E)を含有する。
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、該紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が0.6以下である。
【0014】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)>
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、塗膜に柔軟性を付与し、フィラーの特性を維持するための成分として有効である。ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、ポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)、及び水酸基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)を反応させて得られるものを用いることができる。
【0015】
なお、本発明において、「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、ウレタンアクリレート及び/又はウレタンメタクリレートを示し、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物及び/又はアクリル化合物を示し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示し、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を示し、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を示す。
【0016】
ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。ポリオール(a1)は、被着体である基材の種類に応じて適宜決定されるが、基材として需要が高まっているポリカーボネート基材が使用される場合には、ポリカーボネートポリオールを用いることが密着性の点から好ましい。
【0017】
ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアナートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、密着性を一層向上できる点から、脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びジイソシアナートメチルシクロヘキサンからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0018】
イソシアネート基又は水酸基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)中に(メタ)アクリロイル基を導入する目的で用いるものである。
【0019】
また、(メタ)アクリル化合物(a3)として用いることができるイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、原料入手の容易性の点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることが好ましく、硬化性の点から、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル化合物(a3)として用いることができる水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、原料入手の容易性、硬化性及び密着性の点から、水酸基を有するアクリル酸(メタ)アルキルエステルを用いることが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び/又は4-ヒドロキシブチルアクリレートを用いることがより好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル化合物(a3)としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物を用いる場合のウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法としては、例えば、無溶剤下で、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを仕込み、反応させることによって水酸基を有するウレタンプレポリマーを得、次いで、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)を供給し、混合、反応させることによって製造する方法等が挙げられる。上記反応は、例えば20~120℃の条件下で30分~24時間行うことが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル化合物(a3)として水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を用いる場合のウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法としては、例えば、無溶剤下で、ポリオール(a1)と(メタ)アクリル化合物(a3)とを反応系中に仕込んだ後に、ポリイソシアネート(a2)を供給し、混合、反応させることによって製造する方法;無溶剤下で、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させることによってイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得、次いで、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)を供給し、混合、反応させることによって製造する方法等が挙げられる。上記反応は、例えば20~120℃の条件下で30分~24時間行うことが好ましい。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際には、必要に応じて重合禁止剤、ウレタン化触媒等を用いてもよい。
【0024】
重合禁止剤としては、例えば、3,5-ビスターシャリーブチル-4-ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、パラターシャリーブチルカテコールメトキシフェノール、2,6-ジターシャリーブチルクレゾール、フェノチアジン、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジフェニルアミン、ジニトロベンゼン等を用いることができる。これらの重合禁止剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等の含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩;ジブチルチンラウレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物などを用いることができる。これらのウレタン化触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際には、最後に、ウレタン(メタ)アクリレート(A)に残存するイソシアネート基を失活させることを目的として、メタノール等のアルコールを添加してもよい。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量としては、柔軟性及び硬化収縮抑制の点から、500~50,000の範囲であることが好ましく、3,000~40,000の範囲であることより好ましい。なお、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0028】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgelG5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成する。
【0029】
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-500」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-1」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-2」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-4」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-10」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-20」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-40」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-80」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-128」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-288」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-550」
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、架橋密度を低下させ、硬化収縮を一層抑制できる点から、(メタ)アクリロイル基を2個有する、いわゆる2官能ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)のガラス転移点は、30~60℃の範囲であることが塗膜の手触り感の観点から好ましい。
【0032】
<エポキシ樹脂(B)>
エポキシ樹脂(B)としては、一般的に市販されているエピ-ビス型、ノボラック型、β-メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ポリグリコールエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。この中でも塗膜の傷付き性が良好なことから、エピ-ビス型のエポキシ樹脂が好適に使用される。
【0033】
エポキシ樹脂(B)の市販品としては、ビスフェノールA(BPA)タイプのものは、エピコート(EPIKOAT)1001、エピコート(EPIKOAT)1004、EPICLON N-865、EPICLON N-870等が挙げられる。
また変性ノボラック型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂(C-1)の例として、DIC(株)社製のEPICLON N-730、EPICLON N-740、EPICLON N-770等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695、旭化成エポキシ(株)社のAER ECN-1273、同社製AER ECN-1299等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
更にビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂であれば、特に衛生面や食品用途で、未反応ビスフェノールAが溶出しないことから好ましい。なお、ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂とは、ビスフェノールA骨格由来の構造を含まないエポキシ樹脂を意味する。
【0034】
エポキシ樹脂(B)としては、架橋を促進させ、傷付き性を維持する観点から、2官能エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0035】
<フィラー(C)>
フィラー(C)としては、無機フィラーであっても、有機フィラー又は樹脂ビーズであってもよい。これらは、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いることもできる。
フィラー(C)の平均粒子径は、特に限定はないが、例えば、10μm以下が好ましく、例えば、0.1~10μmの範囲が好ましく、0.8~6μmの範囲がより好ましい。粒子径が小さくなると、フィラーが塗膜に埋もれ、良好な手触り感が得られず、粒子径が大きくなると、耐摩擦性不良、製品安定性(沈降)、塗工ムラなどが問題となるからである。
【0036】
<<有機フィラー(樹脂ビーズ)>>
有機フィラーまたは樹脂ビーズとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は尿素系樹脂から選択される有機フィラーまたは樹脂ビーズが挙げられる。
中でも、ウレタン樹脂ビーズとシリカ(二酸化ケイ素)が、手触り感の観点から好ましい。
【0037】
本発明に使用するウレタン樹脂ビーズは、ウレタン樹脂をビーズ状に成形したものであり、その平均粒子径は2~10μmの範囲である。この理由はビーズが塗膜表面へ露出した際、人が手で触った際に本発明の目的とする所望の触感が感じられやすい粒子径範囲であるからである。更に、5~8μmの範囲であれば、手触り感の観点からより好ましい。
また、ウレタン樹脂ビーズのガラス転移点は-80~0℃の範囲であることが好ましい。この理由はビーズが塗膜表面に露出した際、人が手で触った際に乾燥した心地よさを感じやすいガラス転移点であるからである。更に-60~-20℃の範囲であれば、ビーズが塗膜表面に露出した際にブロッキングなどを発生し難く、好適に使用できる。
尚、ガラス転移点(Tg)は、例えば、メトラートレド社製[DSC822e]を用い、窒素雰囲気下、アルミニウムパンに測定対象を約7mgを入れ圧着・密閉状態とした後、-100~+150℃の範囲を10℃/分の昇温速度で走査した時の熱流曲線の変曲点から求めることができる。
【0038】
<<無機フィラー>>
無機フィラーとしては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、及びケイ酸微粉末から選択される無機フィラーが挙げられる。
【0039】
<ポリエチレンワックス(D)>
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、ポリエチレンワックスを含有する。
塗膜の滑性、傷付き性、手触り感の観点からは、ポリエチレンワックスが好適に使用される。
ポリエチレンワックスの平均粒子径は、例えば、2~8μmの範囲であることが好ましい。ポリエチレンワックスの平均粒子径が2μm以上であれば、塗膜表面に浮上するポリエチレンワックスの面積が少なくなり、十分な傷つき性・滑性を得ることができないという問題を防止することができる。一方、ポリエチレンワックスの平均粒子径が8μm以下であれば、塗膜面の凹凸が際立ち、外観不良を引き起こす恐れがあるという問題を防止することができる。
【0040】
<シリコーン(E)>
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、シリコーン(ポリシロキサン)を含有する。
シリコーンとしては、例えばメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体等の各種シリコーン油を挙げることができる。中でも、メチルハイドロゲンポリシロキサンやメチルポリシロキサンが好ましい。
【0041】
<その他の成分>
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、紫外線で硬化させるために光重合開始剤を添加させる必要がある。また、本発明では、光重合抑制剤を含有させることも重要である。
【0042】
本発明に使用できる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等の水素引き抜き型の光重合開始剤等が挙げられ、これらは単独で使用しても二種類以上を併用してもよい。
【0043】
光重合抑制剤は、塗料を貯蔵・保管している際や塗工作業の際に塗液中での重合反応を進ませない目的で添加させる。この成分としては、例えば、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(MEHQ)、3,5ジブチル4-ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等を適量、配合することができる。
【0044】
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、無溶剤であっても塗工に適した低粘度を示すものであるが、必要に応じて有機溶剤を添加してもよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、トルエン、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類が挙げられ、これらは単独で使用しても二種類以上を併用してもよい。
また、本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、その他必要に応じて、レベリング剤、チクソ性付与剤、上記以外のワックス、乾燥材、増粘剤、垂れ止め剤、可塑剤、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料等の各種の添加剤を含有していてもよい。
【0045】
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、上述した各成分を適宜所望の割合で混合する。混合割合は、特に制限はないが、例えば、紫外線硬化型ニス組成物に対して、ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、50~90質量部含有することが好ましく、70~85質量部含有することがより好ましい。また、紫外線硬化型ニス組成物に対して、エポキシ樹脂(B)は、1~10質量部含有することが好ましく、5~7質量部含有することがより好ましい。また、紫外線硬化型ニス組成物に対して、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)は、5~30質量部含有することが好ましく、9~12質量部含有することがより好ましい。また、紫外線硬化型ニス組成物に対して、ポリエチレンワックス(D)は、0.2~2質量部含有することが好ましく、0.4~1質量部含有することがより好ましい。また、紫外線硬化型ニス組成物に対して、シリコーン(E)は、0.1~1質量部含有することが好ましく、0.1~0.5質量部含有することがより好ましい。
さらに、本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、光重合開始剤及び光重合抑制剤を含有してもよい。紫外線硬化型ニス組成物に対して、光重合開始剤は、1~5質量部含有することが好ましく、1.5~3.5質量部含有することがより好ましい。また、紫外線硬化型ニス組成物に対して、光重合抑制剤は、0.1~1質量部含有することが好ましく、0.1~0.5質量部含有することがより好ましい。
【0046】
紫外線硬化型ニス組成物の各成分の混合割合の好ましい実施態様として、ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、及び樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部の割合で混合する紫外線硬化型ニス組成物が挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部、ポリエチレンワックス(D)0.2~2質量部、及びシリコーン(E)0.1~1質量部の割合で混合する紫外線硬化型ニス組成物が挙げられる。
さらに、本発明の紫外線硬化型ニス組成物が光重合開始剤及び光重合抑制剤を含有している場合、紫外線硬化型ニス組成物の各成分の混合割合の好ましい実施態様として、ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部、光重合開始剤1~5質量部、及び光重合抑制剤0.1~1質量部の割合で混合する紫外線硬化型ニス組成物が挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)50~90質量部、エポキシ樹脂(B)1~10質量部、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)5~30質量部、ポリエチレンワックス(D)0.2~2質量部、シリコーン(E)0.1~1質量部、光重合開始剤1~5質量部、及び光重合抑制剤0.1~1質量部の割合で混合する紫外線硬化型ニス組成物が挙げられる。
【0047】
<紫外線硬化型ニス組成物の特性>
本発明の紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数は、0.6以下である。より具体的には、測定速度50mm/sにおける動摩擦係数が0.6以下である。
また、本発明の紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が、測定速度を30mm/sから60mm/sまで速度を上昇させた際の上昇率が0.065以下が好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
これにより、本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さの手触り、肌触り感を与えることができる表面層を形成することができる。
【0048】
<<動摩擦係数>>
本発明では、動摩擦係数は、摩擦子を有する装置を用いて計測するのではなく、ヒトの手で触れて直接計測することにより求める。これにより、人間の指の動きによる触感などを考慮して測定試料から受ける触感を数値化して評価することができるため、よりヒトの触感との相関がよい摩擦データを得ることができる。
尚、従来のヒトの手で触れて動摩擦係数を計測する方法は、ヒトの触感との相関がよい摩擦データが得られる可能性が高いという利点がある反面、速度や荷重のコントロールができず、乱雑な摩擦データが得られる可能性もあり、系統だてた摩擦評価が難しいという一面もあった。
しかし、本発明では、下記に記載の測定方法を用いることにより、ヒトの手で触れて直接、動摩擦係数を計測する場合であっても、乱雑な摩擦データから安定した摩擦データを抽出することができ、ヒトの触感との相関がよい摩擦データの結果を得ることができる。
【0049】
<<<動摩擦係数の測定装置(触感検出装置)>>>
動摩擦係数の測定方法で用いる測定装置(触感検出装置)としては、測定試料を載置するプレートと、該プレートに掛かる荷重を検出する複数の荷重検出センサーと、該荷重検出センサーを用いて、指が測定試料に接触した際におけるXYZ方向の荷重を検出する荷重算出手段と、複数の荷重検出センサーに掛かる荷重から測定試料に掛かる荷重位置の移動速度を算出する移動状態算出手段とを有する測定装置を用いることができ、例えば、特開2019-144213等に記載の測定装置を用いることができる。
測定装置のより好ましい実施態様として、
図1~
図3で示すような触感検出装置1が挙げられる。
触感検出装置1は、測定試料4の触感を数値化して評価できるようにしたものであって、
図1や
図2に示すように、測定試料4を載置するための平面状のプレート2と、そのプレート2の四隅近傍に設けられた荷重検出センサー3とを備えて構成される。そして、特徴的に、そのプレート2に載置・固定された測定試料4を指で押圧させながらなぞるように移動させる際に、そのプレート2の鉛直方向下向きの荷重とプレート2の平面方向に沿った荷重を検出し、また、四隅近傍に設けられた荷重検出センサー3から指の押圧部分であるCOP(圧中心点:center of pressure)を求める。そして、そのCOPの移動時間から指の移動速度などを検出し、その、鉛直下方向の荷重やプレート2の平面方向の荷重や移動速度などから、動摩擦係数などを算出して触感を数値化する。
なお、
図1及び
図2中、符号41はプレート2に測定試料4を固定する固定具を示す。
また、
図1及び
図2で示される触感検出装置の上面からみると、
図3で示す写真のようになる。
動摩擦係数の測定方法で用いる測定装置として、市販品を用いることもでき、例えば、株式会社テック技販社販売の触覚フォースプレートTF-2020を用いることもできる。
【0050】
<<<動摩擦係数の測定方法>>>
(1)上述した測定装置を用いて、例えば、右手の人差し指で、測定試料4の上をなぞるように、指長手方向と垂直方向の一方向に滑らせて摩擦試験を行い摩擦係数を測定する。
・測定装置:例えば、株式会社テック技販社の触覚フォースプレートTF-2020-GVSを用いる
・測定者:例えば、20~50代の男女10人を対象とする(尚、実験結果は、測定者の平均値を使用)
・測定試料をプレートの上に置き、左から右へ速度と荷重を変えながら人差し指でなぞる。これを例えば、30秒間繰り返す。
・測定装置を用い、触れた位置の座標と水平力、垂直力を1000Hzでモニターする。データは例えば、30s×1000Hz=30000点となる。摩擦係数は水平力/垂直力で算出でき、座標から速度が算出できる。
・得られたデータから、例えば、50データ分(0.05s間)の窓で垂直荷重の平均値、摩擦係数の平均値、速度の時間依存性を算出してデータ1とする。
(2)データ1から以下のデータを除外してデータ2とする。いらないデータを取り除く前処理に相当する。
・摩擦係数が0、垂直荷重が一定値以下(20g)、速度が一定値以上(400mm/s)、単位時間あたりの摩擦係数の変化率(2.0/s)のデータ等を除く。
(3)データ2を速度と垂直荷重のある間隔ごとにグルーピングする。そのグルーピングしたデータの数と摩擦係数の平均値を算出してデータ3とする。
・例えば、速度は5~15、15~25、・・・・395~405mm/s(10mm/s間隔)とし、荷重は、12.5~37.5、37.5~62.5・・・・・・387.5~412.5(25g間隔)とする。但し、上記区分において、「~15」と「15~」の場合、15は両方に分類されるのではなく、一方のみに分類されるようにする。例えば、「~15」を15未満にし、「15~」は15以上のように解することにより、15は、「15~」の方にのみ区分されるようにする。
(4)グルーピング結果をもとに、摩擦係数の平均値を求める。
例えば、データ3で、データの数が十分(たとえば200以上)ならばその摩擦係数は信頼できる。一回の測定で荷重と速度を変えた摩擦係数が手に入る。必要に応じ、荷重vs速度の摩擦係数のマップ化を行う。例えば、データ3の結果の摩擦係数のデータマップを
図4に示す。
(5)得られたデータをマップ化することで、(a)速度・垂直荷重が揃った統計的な動摩擦係数が入手でき、(b)速度・垂直荷重に対する動摩擦係数の変化率から触感に関係付けることができ、(c)速度・垂直荷重が異なる動摩擦係数マップからデータの信頼性を評価することができる。
このように、データ3を速度と荷重の軸で整理することで、乱雑な摩擦データから安定した摩擦データを抽出することができる。本発明では、このようにヒトが触れて測った動摩擦係数を、動かした手の速度と押し込んだ荷重で分類してマップ化することにより、触感と非常によく相関する動摩擦係数の結果を得ることができる。
例えば、
図4の結果から、動摩擦係数は、垂直荷重が175~225g、速度が20~100mm/sの間で求めることができる。より好ましくは、垂直荷重200g、速度50mm/sにおける動摩擦係数の平均値(0.52)を、計測結果として得ることができる。
【0051】
<<<動摩擦係数上昇率の計測方法>>>
上記の方法で求めた動摩擦係数のマップより、垂直荷重200g、速度30mm/sにおける動摩擦係数(FC30)と垂直荷重200g、速度60mm/s(FC60)の動摩擦係数を求め、以下の式により動摩擦係数上昇率を算出した。
【0052】
【数1】
動摩擦係数上昇率が0以上であるということは、速度を上げると動摩擦係数が増加して、より抵抗を感じるということである。一方、動摩擦係数上昇率が0以下であるということは、速度を上げると動摩擦係数が低下して、抵抗を感じずに滑ることができるということである。
【0053】
(積層フィルム)
本発明の紫外線硬化型ニス組成物を用いて、基材上、あるいは物品の表面上に該紫外線硬化型ニス組成物をコーティングすることにより表面層(積層フィルムともいう)を形成することができる。
紫外線硬化型ニス組成物の塗布方法としては、例えば、バーコーター塗工、ロールコーター塗工、スプレー塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
紫外線硬化型ニス組成物の塗布量としては、基材にダイレクトで塗工する塗料の場合、固形分で5~20g/m2、好ましくは、8~15g/m2の塗工条件で使用するとよい。また、フィルム用のオーバープリントニスとして使用する場合には、3~12g/m2、好ましくは、5~10g/m2の塗工条件で使用するとよい。
【0054】
紫外線硬化型組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射によって硬化を進行させることができる。
紫外線等のエネルギー線の照射エネルギーとしては、紫外線硬化性の点から、0.1~10J/cm2の範囲であることが好ましく、0.2~5J/cm2の範囲がより好ましく、0.25~3J/cm2の範囲が更に好ましい。
紫外線等のエネルギー線の照度としては、接着性及び硬化性の点から、0.001~2W/cm2の範囲であることが好ましく、0.01~1.5W/cm2の範囲がより好ましく、0.05~1W/cm2の範囲が更に好ましい。
紫外線の発生源としては、例えば、キセノンランプ、キセノン-水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LED等の公知のランプを用いることができる。なお、紫外線の照射エネルギー及び照度は、UVチェッカー;UV Power PucK(II)(Electronic Instrumentation and Technology社製)を用いて320~390nmの波長域において測定した値を基準とする。
【0055】
(積層体)
また、本発明は、上記本発明の紫外線硬化型ニス組成物を用いて形成された表面層(積層フィルム)を有する積層体を提供する。
本発明の積層体は、本発明の紫外線硬化型ニス組成物が塗工乾燥された積層フィルムを有する。
紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面の平均粗さ(Ra)は、2.50μm以下であることが好ましく、0.20~2.00μmの範囲内であることがより好ましい。
乾燥塗工面の平均粗さ(Ra)が、0.20μm以上であると、心地良い手触り感が感じ取れ易くすることができ、平均粗さ(Ra)が、2.00μm以下であると、指に引っ掛かりのない手触り感を感じ取れ易くすることができる。
乾燥塗工面の平均粗さ(Ra)は、接触式粗さ計を用いて、JIS B0601及びJIS B0633に準拠して測定することができる。接触式粗さ計としては例えば市販の装置として東京精密社製のSURFCOM NEXを使用することができる。
【0056】
<積層体の用途>
本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品の表面におけるコーティング剤として好適に使用することができる。
従って、本発明の紫外線硬化型ニス組成物で形成された表面層(積層フィルム)を有する積層体は、内装建材、家電、精密機器、電子機器等の各物品に適用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
下記表1及び表2に示した割合(表中の数字は固形分質量比率を示す)で下記の原料を配合、分散撹拌機にて回転数:3000rpm、時間:3分間撹拌し、実施例及び比較例のニス組成物サンプルを作製した。
【0058】
・ウレタンアクリレート(A):DIC株式会社製ルクシディア(Tg:50℃)
・2官能エポキシ樹脂(B):DIC株式会社製エピクロン
・フィラー(C)
・ウレタン樹脂ビーズ:根上工業社製アートパール 粒子径:15μm
・アクリル樹脂ビーズ:根上工業社製アートパール 粒子径:10μm
・ナイロン樹脂ビーズ:アルケマ社製オルガゾール 粒子径:30μm
・二酸化ケイ素ビーズ:富士シリシア社製サイリシア 粒子径:4μm
・ポリエチレンワックス:クラリアント社 セリダスト 粒子径:8μm
・シリコーン:信越化学工業社製 KFシリーズ
・光ラジカル重合開始剤:株式会社ADEKA製アデカアークルズ
・光重合抑制剤 :東京化成工業社製光重合抑制剤
【0059】
(測定試料の作製)
実施例1~6、参考例7、参考例8、及び比較例1~5に示す混合比率のニス組成物を、東洋紡社製厚さ50μmのPETフィルムE-5102に乾燥塗膜量が4~6g/m2になるようにバーコーターにて塗布し、100℃/5秒間乾燥加熱して溶剤(メチルエチルケトン)分を揮発させた後、フュージョンUVシステムズ社製UV照射装置にて積算光量300mJ/cm2にて処理した。
【0060】
上記のように調製された紫外線硬化型ニス組成物からなる積層フィルムを以下に示す方法により、動摩擦係数の測定及び手触り感を確認した。
【0061】
(動摩擦係数の測定)
株式会社テック技販社の触覚フォースプレートTF-2020-GVSの装置を用いて、ヒトが手で触れて計測した際の動摩擦係数を求めた。荷重vs速度の摩擦係数のマップ化を行い、安定した摩擦データを抽出することにより、動摩擦係数を計測した。
【0062】
(手触り(乾湿感の評価))
本発明のニス組成物の塗膜面の手触り感の評価として、被験者によるアンケート調査を行った。被験者は塗工面を手、指で触り、その「指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さ」を感じた被験者の割合を集計し、これを評価基準とした。
<評価基準>
◎:乾燥感のある心地良さを強く感じる
〇:乾燥感のある心地良さを感じる
△:乾燥感のある心地良さを僅かに感じる
×:乾燥感のある心地良さを感じない
【0063】
表1に実施例1~6、参考例7、参考例8、表2に比較例1~5の紫外線硬化型ニス組成物の組成、及び評価結果を示す。
【0064】
【0065】
【0066】
上記実施例の結果から明らかなように、本発明の紫外線硬化型ニス組成物は、物品表面に、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さの手触り、肌触り感を与えることができる表面層を形成することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の紫外線硬化型ニス組成物を用い、内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面にコーティングすると、乾燥感の心地良さの手触り、肌触り感を与えるだけでなく、例えば、内装建材(キッチン、洗面台、家具、壁材など)や、家電(テレビ筐体、冷蔵庫、炊飯器、加湿器)や、精密機器(カメラ、時計、その他OA機器)や、電子機器(PC、スマホ、タブレット)には、ほこりを手で簡単に払える効果を付与することができる。また、飲料向け缶には、涼を感じる手触り、肌触り感を与える効果がある。
このように、本発明の紫外線硬化型ニス組成物を用いた積層フィルムは、広範な用途に幅広く展開され得る。
【符号の説明】
【0068】
1・・・触感検出装置
2・・・プレート
3・・・荷重検出センサー
4・・・測定試料
41・・・固定具
【要約】
内装建材、家電、精密機器、電子機器などの物品表面に、指にひっかかりのない乾燥感のある心地良さの手触り、肌触り感を与えることができる表面層を形成することができる材料を提供する。
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)、樹脂ビーズ及び/又は無機ビーズを含むフィラー(C)、ポリエチレンワックス(D)、及びシリコーン(E)を含有する紫外線硬化型ニス組成物であって、
前記紫外線硬化型ニス組成物を塗工した後の乾燥塗工面をヒトが手で触れて計測した動摩擦係数が0.6以下である、紫外線硬化型ニス組成物である。