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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】粘着剤及び液晶セル
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/07 20060101AFI20240501BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20240501BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240501BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20240501BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240501BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240501BHJP
   B60J 7/043 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J7/38
G02F1/1339 505
G02F1/1337 520
G02F1/13 505
B60J7/043
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022574207
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2021008411
(87)【国際公開番号】W WO2022005244
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0081286
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウーン
(72)【発明者】
【氏名】ギム、ミン ジュン
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-517800(JP,A)
【文献】特開2007-197659(JP,A)
【文献】特表2018-507443(JP,A)
【文献】特表2020-517987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/1334
G02F 1/1339 - 1/1341
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率が700kPa以上であり、下記式1で定義されるゲル分率が35%以上である、粘着剤であって、
[式1]
G(%)=B/A×100
式1において、Aは前記粘着剤の初期質量(g)であり、Bは前記粘着剤を60℃で24時間溶媒に浸漬した後、150℃で30分間乾燥した後の、不溶解分の質量(g)であり、
付加硬化型シリコーン系粘着剤である、粘着剤
【請求項2】
前記粘着剤の25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率は、700kPa~2000kPaの範囲内である、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
前記粘着剤のゲル分率は、35%~50%の範囲内である、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記粘着剤は、液晶配向性粘着剤である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項5】
上部基材フィルム及び上部基材フィルムの一面に形成された請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤の層を含む上部基板、下部基材フィルム及び下部基材フィルムの一面に形成されたスペーサを含む下部基板、及び前記上部基板と前記下部基板の間に液晶層を含む、液晶セル。
【請求項6】
前記上部基材フィルム及び前記下部基材フィルムは、それぞれポリマーフィルムである、請求項に記載の液晶セル。
【請求項7】
前記上部基板の前記粘着剤の層と前記下部基板の前記スペーサが付着した状態で存在する、請求項またはに記載の液晶セル。
【請求項8】
前記下部基板は、前記スペーサ上に形成された下部配向膜をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項9】
前記上部基板は、前記上部基材フィルム上に形成された上部電極層をさらに含み、前記下部基板は、前記下部基材フィルム上に形成された下部電極層をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項10】
前記スペーサは、硬化性樹脂を含む、請求項からのいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項11】
前記スペーサは、隔壁形状を有する、請求項から10のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項12】
前記スペーサの線幅は、5μm~50μmの範囲内であり、前記スペーサの高さは、3μm~20μmの範囲内である、請求項から11のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項13】
前記上部基板と前記下部基板は前記スペーサによって間隔を維持し、前記上部基板と前記下部基板の間に前記スペーサが存在しない領域に前記液晶層が存在する、請求項から12のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項14】
請求項から13のいずれか一項に記載の液晶セルを含む、サンルーフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、粘着剤及び液晶セルに関する。
【0002】
本出願は、2020年7月2日付で韓国特許出願第10-2020-0081286号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
フレキシブル基板を使用する液晶フィルムセルの長期安定性、大面積拡張性のためには、上部基板と下部基板のセルギャップの維持と上部基板と下部基板間の接着力を付与することが重要である。
【0004】
非特許文献1(「Tight Bonding of Two Plastic Substrates for Flexible LCDs」SID Symposium Digest,38,pp.653-656(2007))は、一方の基板にセルギャップの高さの柱状または壁状の有機膜パターンを形成し、接着剤を用いて反対側の基板に固定させる技術が開示されている。しかし、このような技術は、接着剤が柱面または壁面のみに位置しなければならないが、柱面または壁面に接着剤をマイクロスタンピング(Micro Stamping)する技術は、工程難易度が高く、接着剤の厚さ及び面積のコントロールが難しく、上下部基板の合着時に接着剤が外部へ押し出される可能性が高く、接着剤が配向膜または液晶内を汚染するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶セルのセルギャップを維持し、上部基板と下部基板の付着力を確保するため、下部基板にスペーサと配向膜を形成し、上部基板に液晶配向力と付着力の両方を有する粘着剤を形成した後、合着することが考慮できる。このような液晶セルの場合、合着のためのラミネーション時、または後工程としてオートクレーブ(autoclave)を行うときに粘着剤の押さえや押しの不良が発生し、これは液晶セルの電気光学特性と外観均一性の低下を引き起こす。
【0006】
本出願は、セルギャップが適切に維持され、上部基板と下部基板の優れた付着力によりフレキシブル素子への具現に有利であり、粘着剤の押さえや押しなどの不良を最小化し、優れた電気光学特性と外観均一性を有する液晶セルを提供できる粘着剤及び前記粘着剤を含む液晶セルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、粘着剤に関する。前記粘着剤は、25℃の温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率が700kPa以上であってもよい。前記粘着剤は、ゲル分率が35%以上であってもよい。本出願の粘着剤は、所定範囲の貯蔵弾性率とゲル分率を有することにより、液晶セルの製造に適用されても粘着剤の押さえや押しなどの不良を最小化できる。
【0008】
前記粘着剤は、光学的に透明であってもよい。前記粘着剤は、可視光領域、例えば、380nm~780nmの波長に対する平均透過度が80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上であってもよい。
【0009】
粘着剤の25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率は、例えば、700kPa~2,000kPaの範囲内であってもよい。前記貯蔵弾性率は、具体的に700kPa以上または750kPa以上であってもよく、2,000kPa以下、1,800kPa以下、1,600kPa以下、1,400kPa以下または1,200kPa以下であってもよい。粘着剤の貯蔵弾性率が前記範囲内の場合、付着力を確保しつつ液晶セルの製造に使用されるとき、粘着剤の押さえや押しなどの不良を最小化することにより、優れた電気光学特性と外観均一性を確保しうる。
【0010】
粘着剤のゲル分率G(%)は、下記式1で定義されてもよい。粘着剤のゲル分率は、例えば、35%~50%であってもよい。前記ゲル分率は、具体的に50%以下、45%以下、または40%以下であってもよい。粘着剤のゲル分率が前記範囲内の場合、付着力を確保しつつ液晶セルの製造に使用されるとき、粘着剤の押さえや押しなどの不良を最小化することにより、優れた電気光学特性と外観均一性を確保しうる。
【0011】
[式1]
G(%)=B/A×100
【0012】
式1において、Aは、粘着剤の初期質量(g)であり、Bは、粘着剤を60℃で24時間溶媒に浸漬した後、150℃で30分間乾燥した後の不溶解分の質量(g)である。粘着剤の初期質量は、粘着剤で硬化した後に溶媒に浸漬することなく常温ですぐに測定された質量を意味しうる。本明細書において常温とは、例えば、20℃~30℃の範囲内の温度または約25℃の温度を意味しうる。
【0013】
粘着剤の貯蔵弾性率及び/又はゲル分率を制御する方法は公知であり、本出願において貯蔵弾性率及び/又はゲル分率を制御する方法は特に制限されるものではない。粘着剤を提供するための硬化温度は、例えば、約140℃~180℃の範囲内であってもよい。粘着剤を提供するための硬化時間は、例えば、3分~15分であってもよい。また、粘着剤を提供するために硬化のための触媒が使用されてもよい。前記触媒としては、例えば、白金系触媒を使用してもよい。前記触媒は、粘着性樹脂100重量部に対して0.2重量部~2重量部の範囲内で使用されてもよい。このような硬化条件は、本出願の粘着剤を提供するための例示的な硬化条件であり、本出願の範囲は、これに制限されるものではない。
【0014】
粘着剤の厚さは、例えば、3μm~15μmの範囲内であってもよい。粘着剤の厚みが前記範囲内の場合、上部基板と下部基板との付着力を確保しつつ液晶セルの製造に使用されるとき、粘着剤の押さえや押しなどの不良を最小化するのに有利である。
【0015】
粘着剤は、液晶配向性粘着剤であってもよい。粘着剤は、例えば、垂直配向性粘着剤であるか、または水平配向性粘着剤であってもよい。本明細書において、「垂直配向性粘着剤」とは、隣接する液晶化合物に対して垂直配向力を付与するとともに、上部基板と下部基板を接着させることができる付着力を有する粘着剤を意味しうる。本明細書において、「水平配向性粘着剤」とは、隣接する液晶化合物に対して水平配向力を付与するとともに、上部基板と下部基板を接着させることができる付着力を有する粘着剤を意味しうる。垂直配向性粘着剤に対する隣接する液晶化合物のプレチルト角は、80度~90度、85度~90度、または約87度~90度の範囲内であってもよく、水平配向性粘着剤に対する隣接する液晶化合物のプレチルト角は、0度~10度、0度~5度、または0度~3度の範囲内であってもよい。本出願の一実施例によれば、前記粘着剤としては、垂直配向性粘着剤を使用してもよい。
【0016】
本明細書においてプレチルト角とは、電圧が印加されていない状態で液晶化合物の方向子が液晶配向性粘着剤または配向膜と水平な面に対してなす角度を意味しうる。本明細書において液晶化合物の方向子とは、液晶層の光軸(Optical axis)または遅相軸(Slow axis)を意味しうる。または、液晶化合物の方向子とは、液晶化合物が棒(rod)状である場合は長軸方向を意味し、液晶化合物が円板(discotic)状である場合は円板平面の法線方向と平行な軸を意味しうる。液晶層内に方向子が互いに異なる複数の液晶化合物が存在する場合、前記方向子は、ベクトルの和であってもよい。
【0017】
粘着剤としては、業界でいわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)として公知された様々な類型の粘着剤を適宜使用してもよい。前記粘着剤は、付着対象が合着する前に硬化するという点で、付着対象が合着した後に硬化するOCR(Optically Clear Resin)タイプの粘着剤と異なってもよい。前記粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系またはウレタン系粘着剤が適用されてもよい。
【0018】
粘着剤は、粘着性樹脂の硬化物を含んでもよい。一例において、粘着剤は、シリコーン系粘着剤であってもよい。シリコーン系粘着剤は、粘着性樹脂として硬化性シリコーン化合物の硬化物を含んでもよい。
【0019】
硬化性シリコーン化合物の種類は、特に制限されず、例えば、加熱硬化性シリコーン化合物または紫外線硬化型シリコーン化合物を使用してもよい。前記硬化性シリコーン化合物は、粘着性樹脂と呼ぶこともできる。
【0020】
一例において、硬化性シリコーン化合物は、付加硬化型シリコーン化合物であってもよい。
【0021】
具体的に、前記付加硬化型シリコーン化合物としては、(1)分子中に2つ以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン及び(2)分子中に2つ以上のケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。前記のようなシリコーン化合物は、例えば、後述する触媒の存在下で、付加反応により硬化物を形成してもよい。
【0022】
本出願で使用できる前記(1)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R1SiO1/2で表されるシロキサン単位とR1R2SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1R2SiO2/2で表されるシロキサン単位と、R1SiO3/2で表されるシロキサン単位またはR2SiO3/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体及び前記のうちの2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0023】
前記において、R1はアルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基またはフェネンチル基などのアラルキル基、クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。
【0024】
また、前記においてR2はアルケニル基であり、具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などであってもよい。
【0025】
本発明で使用できる前記(2)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R1SiO1/2で表されるシロキサン単位とR1HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1HSiO2/2で表されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体及び前記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記において、R1は、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基、ベンジル基またはフェネンチル基などのアラルキル基、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。
【0026】
粘着剤が垂直配向性粘着剤の場合、粘着剤の表面エネルギーは、16mN/m以下であってもよい。前記表面エネルギーの下限は、例えば、5mN/m以上であってもよい。粘着剤が水平配向性粘着剤の場合、表面エネルギーは、16mN/m超過であってもよい。前記表面エネルギーの上限は、例えば、50mN/m以下であってもよい。
【0027】
表面エネルギーは、ドロップシェイプアナライザー(Drop Shape Analyzer、KRUSS社のDSA100製品)を用いて測定しうる。具体的に粘着剤の表面に表面張力(surface tension)が公知の脱イオン化水を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返し、得られた5つの接触角数値の平均値を求め、同様に、表面張力が公知のジヨードメタン(diiodomethane)を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返し、得られた5つの接触角数値の平均値を求める。その後、求められた脱イオン化水とジヨードメタンに対する接触角の平均値を用いて、Owens-Wendt-Rabel-Kaelble方法により溶媒の表面張力に関する数値(Strom値)を代入して表面エネルギーを求めた。サンプルの表面エネルギー(γsurface)は、無極性分子間の分散力と極性分子間の相互作用力が考慮され(γsurface=γdispersion+γpolar)計算できるが、前記表面エネルギーγsurfaceでpolar term(γolar)の割合をその表面の極性(polarity)として定義できる。
【0028】
本出願は、さらに前記粘着剤の層(粘着剤層)を含む液晶セルに関する。図1は、本出願の液晶セルを例示的に示す。本出願の液晶セルは、上部基材フィルム101及び上部基材フィルムの一面に形成された粘着剤層102を含む上部基板、下部基材フィルム201及び下部基材フィルム201の一面に形成されたスペーサSを含む下部基板及び上部基板と下部基板の間に液晶層300を含んでもよい。以下、粘着剤に対して特に言及のない限り、前記粘着剤に関する説明が適用されてもよい。
【0029】
上部基板と下部基板は、前記粘着剤層によって付着していてもよい。具体的に、上部基板の粘着剤層と下部基板のスペーサが付着していてもよい。下部基板のスペーサ上に下部配向膜が形成されている場合、下部配向膜のスペーサに対応する領域が上部基板の粘着剤層と付着していてもよい。
【0030】
上部基材フィルム及び/又は下部基材フィルムとしては、例えば、ガラスフィルム、結晶性又は非結晶性シリコーンフィルム、石英又はITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機系フィルムやポリマーフィルムなどを使用してもよく、フレキシブル素子の具現の側面でポリマーフィルムを使用してもよい。
【0031】
一例において、上部基材フィルム及び下部基材フィルムは、それぞれポリマーフィルムであってもよい。ポリマーフィルムとしては、TAC(triacetyl cellulose)、ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer)、PMMA(poly(methyl methacrylate);PC(polycarbonate);PE(polyethylene);PP(polypropylene);PVA(polyvinyl alcohol);DAC(diacetyl cellulose);Pac(Polyacrylate);PES(poly ether sulfone);PEEK(polyetheretherketon);PPS(polyphenylsulfone),PEI(polyetherimide);PEN(polyethylenemaphthatlate);PET(polyethyleneterephtalate);PI(polyimide);PSF(polysulfone);PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂などを使用してもよいが、これに制限されるものではない。基板には、必要に応じて金、銀、二酸化ケイ素または一酸化ケイ素などのケイ素化合物のコーティング層や、反射防止層などのコーティング層が存在してもよい。
【0032】
下部基板は、スペーサS上に形成された下部配向膜202をさらに含んでもよい。前記下部配向膜と液晶層は接していてもよい。下部配向膜は、垂直配向膜または水平配向膜であってもよい。本明細書において「水平配向膜」とは、隣接する液晶層内に存在する液晶化合物に対する水平配向力を付与する配向性物質を含む層を意味しうる。本明細書において「垂直配向膜」とは、隣接する液晶層内に存在する液晶化合物に対する垂直配向力を付与する配向性物質を含む層を意味しうる。垂直配向膜に対する隣接する液晶化合物のプレチルト角は、80度~90度、85度~90度、または約87度~90度の範囲内であってもよく、水平配向膜に対する隣接する液晶化合物のプレチルト角は、0度~10度、0度~5度、または0度~3度の範囲内であってもよい。下部配向膜は、粘着剤層とは異なり、上部基板と下部基板を接着させる接着力を持っていなくてもよい。一例において、下部配向膜は、図1の液晶セルの状態で上部基板に対する剥離力が0に近い場合がある。
【0033】
下部配向膜は、ラビング配向膜または光配向膜であってもよい。配向膜の配向方向は、ラビング配向膜の場合はラビング方向、光配向膜の場合は照射される偏光の方向であってもよいが、このような配向方向は、吸収型線形偏光子を用いた検出方式で確認しうる。具体的に液晶層に含まれる液晶化合物を水平配向させた状態で前記液晶層の一面に吸収型線形偏光子を配置し、前記偏光子を360度回転させながら透過率を測定することにより、配向方向を確認しうる。前記状態で液晶層または吸収型線形偏光子側に光を照射しながら他側で輝度(透過率)を測定する場合、前記吸収軸または透過軸と液晶配向膜の配向方向が一致する場合に透過率が低くなる傾向を示すが、適用された液晶化合物の屈折率異方性などを反映した模写(simulation)を通じて配向方向を確認しうる。液晶層のモードによって配向方向を確認する方式は公知であり、本出願では、このような公知の方式で配向膜の配向方向を確認しうる。
【0034】
下部配向膜として、ポリイミド(polyimide)化合物、ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol))化合物、ポリアミック酸(poly(amic acid))化合物、ポリスチレン(polystylene)化合物、ポリアミド(polyamide)化合物及びポリオキシエチレン(polyoxyethylene)化合物などのようにラビング配向により配向能を示すもので公知の物質であるが、ポリイミド(polyimide)化合物、ポリアミック酸(polyamic acid)化合物、ポリノルボルネン(polynorbornene)化合物、フェニルマレイミド共重合体(phenylmaleimide copolymer)化合物、ポリビニルシンナメート(polyvinylcinamate)化合物、ポリアゾベンゼン(polyazobenzene)化合物、ポリエチレンイミン(polyethyleneimide)化合物、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)化合物、ポリアミド(polyimide)化合物、ポリエチレン(polyethylene)化合物、ポリスチレン(polystylene)化合物、ポリフェニレンフタルアミド(polyphenylenephthalamide)化合物、ポリエステル(polyester)化合物、CMPI(chloromethylated polyimide)化合物、PVCI(polyvinylcinnamate)化合物及びポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)化合物などのように光照射によって配向能を示すことができるもので公知の物質からなる群から選ばれる1つ以上を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0035】
液晶層は、液晶化合物を含んでもよい。液晶化合物としては、外部信号の印加によってその配向方向が変更できるものであれば、あらゆる種類の液晶化合物を使用してもよい。例えば、液晶化合物としては、スメクティック(smectic)液晶化合物、ネマティック(nematic)液晶化合物またはコレステリック(cholesteric)液晶化合物などを使用してもよい。また、外部作用の印加によってその配向方向が変更されることができるように、液晶化合物は、例えば、重合性基または架橋性基を有していない化合物であってもよい。本明細書において用語の「外部作用」とは、液晶層内に含まれる物質の挙動に影響を及ぼし得る外部に全ての要因、例えば、外部電圧などを意味しうる。したがって、外部作用のない状態とは、外部電圧などが印加されていない状態を意味しうる。
【0036】
液晶層は、誘電率異方性が正の液晶化合物を含むか、または液晶層は、上述した誘電率異方性を示すことができる。誘電率異方性の絶対値は、本出願の目的を考慮して適宜選ばれてもよい。用語の「誘電率異方性(Δε)」とは、水平誘電率(ε//)と垂直誘電率(ε⊥)の差(ε//-ε⊥)を意味しうる。本明細書において用語の水平誘電率(ε//)とは、液晶化合物の方向子と印加電圧による電場の方向が実質的に水平になるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し、垂直誘電率(ε⊥)は、液晶化合物の方向子と印加電圧による電場の方向が実質的に垂直になるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味する。
【0037】
液晶層は、屈折率異方性(Δn)が約0.05~0.1の範囲内である液晶化合物を含むか、または液晶層が上述した屈折率異方性を示すことができる。本出願において用語の屈折率異方性(Δn)は、異常屈折率(ne,extraordinary refractive index)と正常屈折率(no,ordinary refractive index)の差(ne-no)であり、これはAbbe屈折計を用いて確認しうる。
【0038】
液晶層は、二色性染料をさらに含んでもよい。液晶層が二色性染料を含む場合、光透過特性を制御するのに有利となり得る。液晶層が二色性染料を含む場合、液晶層はゲストホスト液晶層(Guest host liquid crystal layer)と呼ばれることもある。本明細書において用語の「染料」とは、可視光領域、例えば、400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部又は全範囲内の光を集中的に吸収及び/又は変形させることができる物質を意味し得、用語の「二色性染料」とは、前記可視光領域の少なくとも一部または全範囲で光の異方性吸収が可能な材料を意味しうる。このような染料としては、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などであると公知されているが、これに制限されるものではない。
【0039】
液晶層は、キラル剤をさらに含んでもよい。液晶層がキラル剤を含む場合、ツイスト配向状態を具現しうる。液晶層に含まれてもよいキラル剤(chiral agentまたはchiral dopant)としては、液晶性、例えば、ネマティック規則性を損なうことなく、所望の回転(twisting)を誘導できるものであれば、特に制限されることなく使用されてもよい。液晶化合物に回転を誘導するためのキラル剤は、分子構造中にキラリティー(chirality)を少なくとも含む必要がある。キラル剤としては、例えば、1個または2個以上の非対称炭素(asymmetric carbon)を有する化合物、キラルアミン又はキラルスルホキシドなどのヘテロ原子上に非対称点(asymmetric point)のある化合物又はクムレン(cumulene)またはビナフトール(binaphthol)などの軸不斉(を有する光学活性である部位(axially asymmetric、optically active site)を有する化合物が挙げられる。キラル剤は、例えば、分子量が1,500以下の低分子化合物であってもよい。キラル剤としては、市販のキラルネマティック液晶、例えば、Merck社の市販のキラルドーパント液晶S-811やBASF社のLC756などを使用してもよい。
【0040】
上部基板は、上部基材フィルム101上に形成された上部電極層103をさらに含んでもよい。上部電極層103は、上部基材フィルム101と粘着剤層102の間に配置されてもよい。下部基板は、下部基材フィルム201上に形成された下部電極層203をさらに含んでもよい。下部電極層203は、下部基材フィルム201とスペーサSの間に配置されてもよい。上部電極層と下部電極層は、液晶層内に含まれている物質が入射する光を透過または遮断させるように、外部作用、例えば、電界の印加を付与する役割を果たすことができる。
【0041】
一例において、上部電極層及び/又は下部電極層は、導電性高分子、導電性金属、導電性ナノワイヤまたはITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物などを含んでもよいが、これに制限されるものではない。上部電極層及び/又は下部電極層は、例えば、前記導電性高分子、導電性金属、導電性ナノワイヤ又はITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物を蒸着して形成したものであってもよい。
【0042】
スペーサは、下部基材フィルム上に形成されてもよい。下部基板が下部基材フィルム上に下部電極層をさらに含む場合、前記スペーサは、下部電極層上に形成されてもよい。このとき、スペーサの下面部は、下部電極層に直接接していてもよい。下部基板が下部配向膜を含む場合、前記スペーサは、下部基材フィルムと下部配向膜の間に配置されてもよい。このとき、スペーサの上面部及び側面部は、下部配向膜と接していてもよい。
【0043】
スペーサは、上部基板と下部基板の間の間隔を維持することができる。上部基板と下部基板の間にスペーサが存在しない領域に液晶層が存在してもよい。
【0044】
スペーサは、隔壁(partition wall)形状を有してもよい。隔壁は、下部基板と上部基板の間の空間を2つ以上の空間に区画しうる。本明細書において隔壁によって区画された空間を非隔壁部と呼ぶこともある。非隔壁部には隔壁が存在しないため、下部に存在する他のフィルムや他の層が露出されていてもよい。例えば、非隔壁部には下部電極層が露出されていてもよい。下部配向膜は、隔壁部と、隔壁部の間の非隔壁部に露出された下部電極層を覆っていてもよい。上部基板と下部基板が合着された液晶セルにおいて、下部基板の隔壁の上部に存在する下部配向膜と上部基板の粘着剤が互いに接していてもよい。
【0045】
非隔壁部に対応する領域には、液晶化合物及び前述した添加剤、例えば、二色性染料、キラル剤などが存在してもよい。非隔壁部の形状は特に制限されず、例えば、円、楕円、その他の多角形状の多面を有するように制限なく適用されてもよい。本出願の一実施例によれば、隔壁層は、例えば、四角形状を有してもよい。
【0046】
隔壁は、硬化性樹脂を含んでもよい。硬化性樹脂の種類は特に制限されず、例えば、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂、例えば、紫外線硬化性樹脂を使用してもよい。
【0047】
熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ケイ素樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂またはメラミン樹脂などを使用してもよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
紫外線硬化性樹脂としては、代表的にはアクリル重合体、例えば、ポリエステルアクリレート重合体、ポリスチレンアクリレート重合体、エポキシアクリレート重合体、ポリウレタンアクリレート重合体またはポリブタジエンアクリレート重合体、シリコーンアクリレート重合体またはアルキルアクリレート重合体などを使用してもよいが、これに制限されるものではない。
【0049】
本出願の一実施例によれば、隔壁部は、アクリル重合体、より具体的にポリエステル系アクリレート重合体を使用して形成されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0050】
一例において、隔壁形状のスペーサは、フォトリソグラフィによるパターニングによって形成されてもよい。フォトリソグラフィ工程は、硬化性樹脂組成物を下部基板上に塗布した後、パターンマスクを介して紫外線を照射する工程を含んでもよい。パターンマスクは、紫外線透過領域と紫外線遮断領域にパターニングされていてもよい。フォトリソグラフィ工程は、紫外線が照射された硬化性樹脂組成物をウォッシング(washing)する工程をさらに含んでもよい。紫外線が照射された領域は硬化し、紫外線が照射されていない領域は液状に残っているので、ウォッシング工程を通じて除去することにより、隔壁形状にパターニングを行うことができる。フォトリソグラフィ工程において、紫外線照射後、樹脂組成物とパターンマスクを容易に分離するためにパターンマスクに離型処理を行うか、または離型紙を樹脂組成物の層とパターンマスクの間に位置させることもできる。
【0051】
隔壁部(スペーサ)の幅(線幅)、間隔(ピッチ)、厚さ、及び上部基板または下部基板に対する面積比率は、本出願の目的を損なわない範囲内で適宜選ばれてもよい。例えば、隔壁部の幅(線幅)は、1μm~500μmの範囲、または5μm~50μmの範囲内であってもよい。隔壁部の間隔(ピッチ)は、10μm~5000μmの範囲、または100μm~3000μmの範囲、または100μm~1000μmの範囲内であってもよい。隔壁部の厚さは、所望のセルギャップを考慮して適宜選ばれてもよい。隔壁部の厚さは、例えば、1μm~30μmまたは3μm~20μmの範囲であってもよい。隔壁部の面積は、上部基板または下部基板の全面積100%に対して、約0.1%~50%の範囲内であってもよい。前記面積は、上部基板と下部基板の接着力に関連しており、隔壁部の上部基板または下部基板の全面積100%に対して、約10%~20%の範囲内であってもよい。
【0052】
液晶セルの駆動モードは、必要に応じて適宜選ばれてもよい。液晶セルの駆動モードとしては、例えば、ECB(Electrically controlled birefringence)モード、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、RTN(Reverse Twisted Nematic)モード、RSTN(Reverse Super Twisted Nematic)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、Twisted HAN(Twisted Hybrid Aligned Nematic)モード、Super twisted HAN(Super Twisted Hybrid Aligned Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、VA(vertical alignment)モードなどがある。所望の液晶セルの駆動モードによって、液晶の種類、配向膜の種類、添加剤の種類などが適宜選ばれてもよい。
【0053】
液晶セルは、印加される電圧に応じて液晶層の配向状態を切り替えることができる。一例において、液晶セルに電圧が印加されていない状態で、液晶層は第1の配向状態を有してもよく、液晶セルに電圧が印加された状態で、液晶層は第1の配向状態と異なる第2の配向状態を有してもよい。第1配向状態及び/又は第2配向状態としては、水平配向状態、垂直配向状態、ツイスト配向状態、傾斜配向状態、ハイブリッド配向状態などが挙げられる。
【0054】
本明細書において「水平配向状態」とは、液晶層内の液晶化合物の方向子が前記液晶層の平面に対して略平行に配列された状態であり、例えば、前記液晶層の平面に対して前記方向子がなす角度は、例えば、約-10度~10度または-5度~5度の範囲内であるか、または約0度をなすことができる。
【0055】
本明細書において「垂直配向状態」とは、液晶層内の液晶化合物の方向子が液晶層の平面に対して略垂直に配列された状態であり、例えば、液晶層の平面に対して前記方向子がなす角度は、例えば、約80度~100度または85度~95度の範囲内であるか、または約90度をなすことができる。
【0056】
本明細書において「ツイスト配向状態」とは、液晶層内で液晶化合物の方向子が仮想のらせん軸に沿って捩れながら層をなして配向した螺旋状の構造を意味しうる。前記ツイスト配向状態は、垂直、水平または傾斜配向状態で具現できるが、すなわち、垂直ツイスト配向モードは、個々の液晶化合物が垂直配向された状態でらせん軸に沿って捩れながら層をなす状態であり、水平ツイスト配向モードは、個々の液晶化合物が水平配向された状態でらせん軸に沿って捩れながら層をなす状態であり、傾斜ツイスト配向モードは、個々の液晶化合物が傾斜配向された状態でらせん軸に沿って捩れながら層をなす状態である。
【0057】
本明細書において「ハイブリッド配向状態」とは、液晶層内の液晶化合物の方向子が液晶層の平面に対してなす角度であるチルト角が液晶層の厚み方向に沿って漸進的に増加するか、または減少する配向状態を意味しうる。
【0058】
本出願は、前記液晶セル及び他の光学部材をさらに含む光学素子に関する。前記他の光学部材は、偏光子または液晶セル以外の液晶セルが挙げられる。前記偏光子としては、反射型または吸収型偏光子などが挙げられ、円偏光子、楕円偏光子または線偏光子などが挙げられる。前記偏光子は、液晶セルの片面に存在するか、または液晶セルの両面に存在してもよい。前記液晶セル以外の液晶セルとしては、前記液晶セルと同一または異なる液晶セルは、重畳してダブルセルを具現しうる。
【0059】
前記光学素子は、その他の構成として、ハードコート層、反射防止層、NIR(Near-Infrared)遮断(cut)機能の染料を含む層、位相差フィルムなどの公知の構成をさらに含んでもよい。
【0060】
本出願の液晶セルは、セルギャップが適切に維持され、上部基板と下部基板の優れた接着力によりフレキシブル素子への具現に有利であり、粘着剤の押しや押されなどの不良を最小化し、優れた電気光学特性と外観均一性を持つことができる。
【0061】
本出願は、さらに液晶セルの用途に関する。前記液晶セルは、例えば、サングラスやAR(Argumented Reality)またはVR(Virtual Reality)用アイウェア(eyewear)などのアイウェア類、建物の外壁や車両用サンルーフなどに使用されてもよい。一例において、本出願は、前記液晶セルを含むサンルーフに関する。前記サンルーフは、車両用サンルーフであってもよい。本出願は、さらに少なくとも1つ以上の開口部が形成されている車体及び前記開口部に取り付けられた前記液晶セルまたは前記サンルーフを含む車両に関する。
【0062】
本出願の液晶セルは、光変調装置に含まれて使用されてもよい。光変調装置としては、スマートウインドウ、ウインドウ保護膜、フレキシブルディスプレイ素子、3D映像表示用アクティブリターダ(active retarder)または視野角調整フィルムなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。前記のような光変調装置を構成する方式は特に制限されず、前記液晶セルが使用される限り、通常の方式が適用されてもよい。
【発明の効果】
【0063】
本出願は、セルギャップが適切に維持され、上部基板と下部基板の優れた接着力によりフレキシブル素子への具現に有利であり、粘着剤の押さえや押しなどの不良を最小化し、優れた電気光学特性と外観均一性を有する液晶セルを提供できる粘着剤及び前記粘着剤を含む液晶セルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本出願の液晶セルを例示的に示す。
図2】実施例1の電圧印加の有無による顕微鏡イメージである。
図3】実施例2の電圧印加の有無による顕微鏡イメージである。
図4】比較例1の電圧印加の有無による顕微鏡イメージである。
図5】比較例2の電圧印加の有無による顕微鏡イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本出願による実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0066】
測定例1.貯蔵弾性率測定
粘着剤の貯蔵弾性率は、TA社のARES G2、Rheometerを用いて測定した。実施例及び比較例に記載されたように、フッ素離型フィルム上に粘着剤層を形成した後、フッ素離型フィルムを剥離して粘着剤層を得る。横×縦の面積が5mm×5mmの粘着剤層を1000μm厚さで積層した後、厚さ8mmのAl plate上に載置して貯蔵弾性率を測定した。25℃の温度及び6rad/sec(約1Hz)のfrequency sweep条件で貯蔵弾性率値を記録した。
【0067】
測定例2.ゲル分率測定
実施例及び比較例に記載されたように、フッ素離型フィルム上に粘着剤層を形成した後、フッ素離型フィルムを剥離して粘着剤層を得る。粘着剤層を得た後、すぐに常温25℃で粘着剤の初期質量(g)Aを測定した。また、粘着剤層を得た後、粘着剤層を60℃で24時間トルエン溶媒に浸漬した後、乾燥オーブンを用いて150℃で30分間乾燥した後、不溶解分の質量(g)Bを測定した。ゲル分率は、下記式1のように計算した。
【0068】
[式1]
B/A×100
【0069】
測定例3.透過度測定
実施例及び比較例で製造した液晶セルの下部基板の一面に下部偏光子を貼り付け、液晶セルの上部基板の一面に上部偏光子を貼り付けた。上部偏光子と下部偏光子は、すべて単体透過度が約45%であり、OCA(LGC社、V310)を介して液晶セルに取り付けた。前記サンプルにおいて下部偏光子の吸収軸は下部基板の配向方向(ラビング方向)と平行であり、上部偏光子は、下部偏光子と吸収軸が約90度をなす。
【0070】
前記光学素子に対して液晶セルに電圧が印加されていない状態での透過度と60V電圧が印加された状態での透過度をヘイズメーター(NDH-5000SP、セスコ社)を用いて測定した。
【0071】
実施例1
上部基板の作製
OCAタイプの粘着性樹脂(JP3700,ShinEtsu社)を固形分の濃度が25wt%となるようにトルエン溶媒に混合し、前記粘着性樹脂100重量部に対して白金触媒(CAT-PL-56,ShinEtsu社)1重量部を添加して粘着剤組成物を製造した。
【0072】
フッ素離型フィルム(FSC6、Nippa社)上に前記粘着剤組成物をバーコートでコーティングした後、140℃温度で5分間加熱することにより、最終厚さ約10μmの粘着剤を形成した。前記加熱により、溶媒の乾燥と触媒作用による硬化反応が同時に起こる。前記粘着剤層をPET-ITOフィルムのITO層上に合紙して上部基板を製造した。前記PET-ITOフィルムは、高延伸PET(polyethyleneterephtalate)フィルム(OCF、SKC社)上にITO(Indium Tin Oxide)層が約30nm厚さで蒸着されたフィルムであり、総厚は、約145μmである。前記製造された上部基板は、PETフィルム/ITO層/粘着剤層/離型フィルムの順に積層された構造を有する。
【0073】
下部基板の作製
上部基板で使用したものと同じPET-ITOフィルムのITO層上にアクリル系樹脂組成物(商品名:KAD-03、メーカー:ミニュータテック)をコーティングした後、フォトリソグラフィ方式で四角形状にパターニングすることにより、隔壁形状のスペーサを形成した。隔壁形状の高さは8μmであり、ピッチ(四角形の対向する2面の間隔)は350μmであり、線幅は15μmである。次に、スペーサ上に垂直配向膜(5661LB3、Nissan社)を約300nmでコーティングした後、ラビング布でラビング処理して下部基板を製造した。
【0074】
液晶セルの合着
上部基板からフッ素離型フィルムを剥離した。下部基板の配向膜上に液晶組成物をコーティングした後、上部基板にラミネーションして液晶セルを合着した。前記液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)が0.094であり、負の誘電率異方性を有する液晶化合物(SHN-7002XX T12、JNC社)とカイラル添加剤(S811、Merck)の混合物である。製造された液晶セルは、セルギャップが8μmのReverse TNモード液晶セルであり、カイラルピッチは、20μmである。
【0075】
実施例2
実施例1で粘着剤の硬化条件を140℃温度及び3分に変更したことを除いては、実施例1と同様に液晶セルを作製した。
【0076】
比較例1
実施例1で粘着剤の硬化条件を140℃温度及び1分に変更したことを除いては、実施例1と同様に液晶セルを作製した。
【0077】
比較例2
実施例1で粘着剤の硬化条件を130℃温度及び3分に変更したことを除いては、実施例1と同様に液晶セルを作製した。
【0078】
下記表1は、実施例1、2及び比較例1、2の粘着剤の貯蔵弾性率及びゲル分率値と、液晶セルの電圧印加の有無による透過度値を示す。図2図5は、それぞれ実施例1、2及び比較例1、2の光学顕微鏡イメージである(100倍率)。図2図5において、左側イメージは0Vのイメージであり、右側イメージは60V電圧印加時のイメージである。
【0079】
表1に示すように、実施例1、2が比較例1、2に比べて0Vでより低い透過度を示し、60Vでより高い透過度を示すので、透過度可変特性に優れていると言える。
【0080】
比較例1、2の場合、隔壁側に粘着剤が押されながら液晶のない領域が生じ、電圧on状態で駆動されず、ダーク状態で存在する。これにより、液晶セルは、電圧on状態で透過度及び均一性が低下する。また、比較例1、2の場合、隔壁が移動しながら粘着剤の表面にダメージが発生し、電圧off状態で液晶配向の異常による光漏れが発生する。これにより、液晶セルは、電圧off状態で透過度が増加する。
【0081】
【表1】
【符号の説明】
【0082】
101:上部基材フィルム
201:下部基材フィルム
102:粘着剤層
202:下部配向膜
103:上部電極層
203:下部電極層
S:スペーサ
300:液晶層
図1
図2
図3
図4
図5