(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】気化装置、成膜装置、濃度制御機構用プログラム、及び、濃度制御方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20240501BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20240501BHJP
G05D 21/00 20060101ALI20240501BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C23C16/448
G05B11/36 N
G05D21/00 A
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2020022006
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019023441
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150572(JP,A)
【文献】特開2014-224307(JP,A)
【文献】特開2006-222133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
G05B 11/36
G05D 21/00
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は固体の材料を貯留する気化タンクと、前記気化タンクにキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記材料が気化して前記気化タンクから導出された材料ガスが流れる材料ガス導出路と、前記材料ガス導出路に設けられた濃度モニタと、前記材料ガス導出路から導出された材料ガスの濃度を制御する流体制御機器を備える濃度制御機構とを具備し、前記材料ガスの供給と停止とを繰り返す気化装置であって、
前記濃度制御機構が、
前記濃度モニタからの出力信号に基づいて前記材料ガスの実濃度を算出する濃度算出部と、
前記材料ガスが供給される供給期間において、前記濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値が予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行う濃度制御部と、
前記濃度制御部が前記第1制御を開始した後における前記実濃度の
変化率に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替える制御切替部とを具備していることを特徴とする気化装置。
【請求項2】
前記材料ガス導出路に合流して当該材料ガス導出路に希釈ガスを供給する希釈ガス供給路をさらに具備するものであり、
前記濃度制御機構が、前記流体制御機器として、前記キャリアガス供給路に設けられた第1流量制御機器と前記希釈ガス供給路に設けられた第2流量制御機器とを備えるものであり、
前記濃度制御部が、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記第1流量制御機器を流れる流量及び前記第2流量制御機器を流れる流量がそれぞれ予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、前記第1流量制御機器を流れる流量又は前記第2流量制御機器を流れる流量の少なくとも一方を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うものである請求項1記載の気化装置。
【請求項3】
前記濃度制御機構が、前記流体制御機器として、前記キャリアガス供給路に設けられた流量制御機器と前記材料ガス導出路における前記濃度モニタよりも下流側に設けられた圧力制御機器とを備えるものであり、
前記濃度制御部が、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記流量制御機器を流れる流量及び前記圧力制御機器の上流側の圧力がそれぞれ予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、前記流量制御機器を流れる流量又は前記圧力制御機器の上流側の圧力の少なくとも一方を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うものである請求項1記載の気化装置。
【請求項4】
前記制御切替部が、前記第1制御開始後の経過時間に対する前記実濃度の変化率に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものである請求項1記載の気化装置。
【請求項5】
前記制御切替部が、前記実濃度の変化率が閾値以下になった場合に、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものである請求項4記載の気化装置。
【請求項6】
前記制御切替部が、前記実濃度の変化率が閾値以下になる前に、前記経過時間が予め定められた設定時間を越えた場合に、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものである請求項5記載の気化装置。
【請求項7】
前記濃度制御部の前記第1制御開始後における前記実濃度の経時変化に基づいて閾値を設定する閾値設定部をさらに具備している請求項5記載の気化装置。
【請求項8】
前記閾値設定部が、前記第1制御開始後における前記実濃度の変化率の最大値、又は、当該第1制御開始後に所定時間経過した時点における前記実濃度の変化率に基づいて閾値を設定するものである請求項7記載の気化装置。
【請求項9】
前記閾値設定部が、前記供給期間毎に、当該供給期間の前記第1制御開始後における前記実濃度の経時変化に基づいて閾値を設定し直すものである請求項7記載の気化装置。
【請求項10】
前記制御切替部が、前記第1制御開始後に所定の遅延時間を設け、当該遅延時間後における前記実濃度の経時変化に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものである請求項1記載の気化装置。
【請求項11】
前記実濃度が予め定められた目標値となるように定めた設定値に1以上のオーバーシュートゲインを乗じた値を前記初期設定値として設定する初期値設定部をさらに備えた請求項1記載の気化装置。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれかに記載の気化装置と、
前記材料ガスが供給されるチャンバとを具備する成膜装置。
【請求項13】
液体又は固体の材料を貯留する気化タンクと、前記気化タンクにキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記材料が気化して前記気化タンクから導出された材料ガスが流れる材料ガス導出路と、前記材料ガス導出路に設けられた濃度モニタと、前記材料ガス導出路から導出された材料ガスの濃度を制御する流体制御機器を備える濃度制御機構とを具備し、前記材料ガスの供給と停止とを繰り返す気化装置に用いられる濃度制御機構用プログラムであって、
前記濃度制御機構用プログラムが、
前記濃度モニタからの出力信号に基づいて前記材料ガスの実濃度を算出する濃度算出部と、
前記材料ガスが供給される供給期間において、前記濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値を予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行う濃度制御部と、
前記濃度制御部が前記第1制御を開始した後における前記実濃度の
変化率に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替える制御切替部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする濃度制御機構用プログラム。
【請求項14】
液体又は固体の材料を貯留する気化タンクと、前記気化タンクにキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記材料が気化して前記気化タンクから導出された材料ガスが流れる材料ガス導出路と、前記材料ガス導出路に設けられた濃度モニタと、前記材料ガス導出路から導出された材料ガスの濃度を制御する流体制御機器を備える濃度制御機構とを具備し、前記材料ガスの供給と停止とを繰り返す気化装置に用いられる濃度制御方法であって、
前記濃度モニタからの出力信号に基づいて前記材料ガスの実濃度を算出するステップと、
前記材料ガスが供給される供給期間において、前記濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値を予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うステップと、
前記第1制御を開始した後における前記実濃度の
変化率に基づいて、制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるステップとを備えることを特徴とする濃度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化装置、成膜装置、濃度制御機構用プログラム、及び、濃度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセス等における成膜装置のチャンバに対し、液体又は固体の材料を気化してなる材料ガスを供給する気化装置として、特許文献1には、材料を貯留する気化タンクにキャリアガスを間欠的に供給することで、その材料が気化してなる材料ガスを気化タンクから間欠的に導出し、導出された材料ガスを希釈ガスで希釈してなる混合ガスをチャンバへ供給するものが記載されている。
【0003】
なお、前記従来の気化装置においては、材料ガスの供給期間とその供給を停止する停止期間とが繰り返され、供給期間開始直後から混合ガスに含まれる材料ガスの実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御を行うように構成されている。
【0004】
しかし、前記従来の気化装置のように供給期間開始直後からフィードバック制御を行うと、制御対象となる流体制御機器(具体的には、流量制御機器、圧力制御機器等)や気化タンクと濃度モニタとの間の距離による時間遅れが原因となり、供給期間開始直後に材料ガスの濃度が大きくオーバーシュートするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、供給期間開始直後における材料ガスの濃度のオーバーシュートを抑制することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る濃度制御装置は、液体又は固体の材料を貯留する気化タンクと、前記気化タンクにキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記材料が気化して前記気化タンクから導出された材料ガスが流れる材料ガス導出路と、前記材料ガス導出路に設けられた濃度モニタと、前記材料ガス導出路から導出された材料ガスの濃度を制御する流体制御機器を備える濃度制御機構とを具備し、前記材料ガスの供給と停止とを繰り返す気化装置であって、前記濃度制御機構が、前記濃度モニタからの出力信号に基づいて前記材料ガスの実濃度を算出する濃度算出部と、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値を予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行う濃度制御部と、前記濃度制御部が前記第1制御を開始した後における前記実濃度の経時変化に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替える制御切替部とを具備していることを特徴とするものである。
【0008】
このようなものであれば、材料ガスが供給される供給期間において、濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値が予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行い、かつ、当該第1制御開始後における実濃度の経時変化に基づき第1制御から第2制御へ切り替えるように構成したので、従来の気化装置のように供給期間開始直後からフィードバック制御を行う場合に比べて、供給期間開始直後のオーバーシュートが抑制される。なお、制御値は、流体制御機器の制御対象の値であり、流体制御機器が流量制御機器であった場合には流量を示し、流体制御機器が圧力制御機器であった場合には圧力を示している。また、初期設定値とは、供給期間開始時における流体制御機器の設定値を示している。
【0009】
具体的な実施態様としては、希釈式(流量式)と圧力式とに分類できる。そして、希釈式の実施態様としては、前記材料ガス導出路に合流して当該材料ガス導出路に希釈ガスを供給する希釈ガス供給路をさらに具備するものであり、前記濃度制御機構が、前記流体制御機器として、前記キャリアガス供給路に設けられた第1流量制御機器と前記希釈ガス供給路に設けられた第2流量制御機器とを備えるものであり、前記濃度制御部が、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記第1流量制御機器を流れる流量及び前記第2流量制御機器を流れる流量がそれぞれ予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、前記第1流量制御機器を流れる流量又は前記第2流量制御機器を流れる流量の少なくとも一方を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うものが挙げられる。
【0010】
また、圧力式の実施態様としては、前記濃度制御機構が、前記流体制御機器として、前記キャリアガス供給路に設けられた流量制御機器と前記材料ガス導出路における前記濃度モニタよりも下流側に設けられた圧力制御機器とを備えるものであり、前記濃度制御部が、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記流量制御機器を流れる流量及び前記圧力制御機器の上流側の圧力がそれぞれ予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、前記流量制御機器を流れる流量又は前記圧力制御機器の上流側の圧力の少なくとも一方を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うものが挙げられる。
【0011】
そして、前記制御切替部の具体的な態様としては、前記制御切替部が、前記第1制御開始後の経過時間に対する前記実濃度の変化率に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものが挙げられる。また、より具体的な実施態様としては、前記制御切替部が、前記第1制御開始後の経過時間に対する前記実濃度の変化率が閾値以下になった場合に、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものが挙げられる。
【0012】
また、前記制御切替部が、前記実濃度の変化率が閾値以下になる前に、前記経過時間が予め定められた設定時間を越えた場合に、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるものであってもよい。
【0013】
このようなものであれば、何等かの要因により、実濃度の変化率が閾値以下にならない場合であっても、経過時間が設定時間を越えると強制的に第1制御から第2制御へ切り替えられるため、材料ガスの濃度制御を行うことができる。
【0014】
なお、前記第1制御開始後における前記実濃度の経時変化に基づいて閾値を設定する閾値設定部をさらに具備しているものであってもよい。具体的には、前記閾値設定部が、前記第1制御開始後の経過時間に対する前記実濃度の変化率の最大値、又は、当該第1制御開始時点から所定時間経過後における前記実濃度の変化率に基づいて閾値を設定するものが挙げられる。
【0015】
このようなものであれば、供給する材料等の違いにより実濃度の経時変化が異なる場合においても、適切なタイミングで第1制御から第2制御へ切り替えることができる。
【0016】
この場合、前記閾値設定部が、前記供給期間毎に、当該供給期間の前記第1制御開始後における前記実濃度の経時変化に基づいて閾値を設定し直すものであってもよい。
【0017】
このようなものであれば、各供給期間における流体制御機器の初期設定値を、前回の供給期間で得た実濃度の経時変化を示す濃度変化データに基づいて設定する場合であっても、供給期間毎に閾値を設定し直すことができる。これにより、各供給期間において適切なタイミングで第1制御から第2制御へ切り替えることができる。
【0018】
また、第1制御開始直後は、経過時間に対する実濃度の変化が不安定になる。そこで、前記制御切替部が、前記第1制御開始後に所定の遅延時間を設け、当該遅延時間後における実濃度の経時変化に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるようにしてもよい。このようなものであれば、経過時間に対する実濃度の変化が不安定な期間に生じ易くなる誤判定を抑制できる。
【0019】
実濃度が目標値に対してアンダーシュートする量を抑制できるようにするには、前記実濃度が予め定められた目標値となるように定めた設定値に1以上のオーバーシュートゲインを乗じた値を前記初期設定値として設定する初期値設定部をさらに備えたものであればよい。
【0020】
また、本発明に係る成膜装置は、前記気化装置と、前記材料ガスが供給されるチャンバとを具備する成膜装置とを備えるものである。
【0021】
また、本発明に係る濃度制御機構用プログラムは、液体又は固体の材料を貯留する気化タンクと、前記気化タンクにキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記材料が気化して前記気化タンクから導出された材料ガスが流れる材料ガス導出路と、前記材料ガス導出路に設けられた濃度モニタと、前記材料ガス導出路から導出された材料ガスの濃度を制御する流体制御機器を備える濃度制御機構とを具備し、前記材料ガスの供給と停止とを繰り返す気化装置に用いられる濃度制御機構用プログラムであって、前記濃度モニタからの出力信号に基づいて前記材料ガスの実濃度を算出する濃度算出部と、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値を予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行う濃度制御部と、前記濃度制御部が前記第1制御を開始した後における前記実濃度の経時変化に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替える制御切替部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするものである。なお、濃度制御機構用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、BD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【0022】
また、本発明に係る濃度制御方法は、液体又は固体の材料を貯留する気化タンクと、前記気化タンクにキャリアガスを供給するキャリアガス供給路と、前記材料が気化して前記気化タンクから導出された材料ガスが流れる材料ガス導出路と、前記材料ガス導出路に設けられた濃度モニタと、前記材料ガス導出路から導出された材料ガスの濃度を制御する流体制御機器を備える濃度制御機構とを具備し、前記材料ガスの供給と停止とを繰り返す気化装置に用いられる濃度制御方法であって、前記濃度モニタからの出力信号に基づいて前記材料ガスの実濃度を算出するステップと、前記材料ガスが供給される供給期間において、前記濃度制御機構を構成する流体制御機器の制御値を予め定められた初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、当該流体制御機器を制御することによって前記実濃度が予め定められた目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うステップと、前記濃度制御部が前記第1制御を開始した後における前記実濃度の経時変化に基づいて、前記濃度制御部の制御状態を前記第1制御から前記第2制御へ切り替えるステップとを備えることを特徴とするものである。
【0023】
このように構成した濃度制御装置によれば、供給期間開始直後における材料ガスの濃度のオーバーシュートを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る気化装置を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る気化装置における濃度制御機構の機能を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る気化装置によって材料ガスの供給と停止とを繰り返した場合における実濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図4】実施形態に係る気化装置によって予備制御を行った場合における実濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図5】実施形態に係る気化装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る気化装置の変形例における実濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図7】その他の実施形態に係る気化装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る気化装置を図面に基づいて説明する。
【0026】
本発明に係る気化装置は、例えば半導体製造ライン等に組み込まれて半導体製造プロセスに用いられるチャンバに所定濃度のガスを供給するためのものである。なお、気化装置は、チャンバと共に半導体製造等に用いられる成膜装置を構成している。
【0027】
本実施形態に係る気化装置100は、所謂希釈式(流量式)のものであり、
図1に示すように、液体又は固体の材料を貯留する気化タンク10と、気化タンク10にキャリアガスを供給するキャリアガス供給路L1と、材料が気化した材料ガスを気化タンク10から導出する材料ガス導出路L2と、材料ガスを希釈する希釈ガスを材料ガス導出路L2に供給する希釈ガス供給路L3と、チャンバCHへの材料ガスの供給とその停止とを切り替えるための切替機構20と、チャンバCHに供給される材料ガスの濃度を制御する濃度制御機構30と、を具備している。
【0028】
前記キャリアガス供給路L1には、キャリアガスの流量を制御する第1流量制御機器MFC1が設けられている。当該第1流量制御機器MFC1は、例えば、熱式の流量センサと、ピエゾバルブ等の流量調整弁と、CPUやメモリ等を備えた制御回路とを具備したマスフローコントローラである。制御回路は、後述する制御部Cにより設定される設定流量と流量センサで測定される測定流量の偏差に基づいて、流量調整弁の開度を流量フィードバック制御する。
【0029】
前記材料ガス導出路L2には、希釈ガス供給路L3との合流点よりも下流側に濃度モニタ40が設けられている。なお、濃度モニタ40は、材料ガスを希釈ガスで希釈してなる混合ガスに含まれる材料ガスの実濃度を測定するものである。本実施形態の濃度モニタ40は、混合ガスに含まれる材料ガスの実濃度(vol%)が、混合ガスの圧力(全圧)に対する混合ガスに含まれる材料ガスの圧力(分圧)の比率で表されることを利用したものであり、具体的には、全圧を測定する圧力計41と、分圧を測定する例えば非分散型赤外吸収法を用いた分圧計42とを備えている。
【0030】
前記希釈ガス供給路L3には、希釈ガスの流量を制御する第2流量制御機器MFC2が設けられている。当該第2流量制御機器MFC2は、第1流量制御機器MFC1と同様、例えば、熱式の流量センサと、ピエゾバルブ等の流量調整弁と、CPUやメモリ等を備えた制御回路とを具備したマスフローコントローラである。制御回路は、後述する制御部Cにより設定される設定流量と流量センサで測定される測定流量の偏差に基づいて、流量調整弁の開度を流量フィードバック制御する。
【0031】
前記切替機構20は、バルブ切替信号を受け付けて開閉する複数のバルブV1~V3を有している。そして、例えば、ユーザが、切替機構20のバルブV1~V3を予め設定したタイミングで開閉することにより、気化タンク10へのキャリアガスの供給と停止とが繰り返されるようになっている。これにより、材料ガスが気化タンク10から間欠的に導出されてチャンバCHに間欠的に供給される。すなわち、本実施形態の気化装置100では、材料ガス(具体的には、混合ガス)をチャンバCHへ供給する供給期間と、その供給を停止する停止期間とが交互に繰り返されるように構成されている。
【0032】
具体的には、前記切替機構20は、キャリアガス供給路L1及び材料ガス導出路L2を接続する迂回流路L4と、キャリアガス供給路L1における迂回流路L4との接続箇所よりも下流側に設けられた第1バルブV1と、材料ガス導出路L2における迂回流路L4との接続箇所よりも上流側に設けられた第2バルブV2と、迂回流路L4に設けられた第3バルブV3と、を備えている。
【0033】
そして、前記気化装置100は、切替機構20の第1バルブV1及び第2バルブV2を開くと共に第3バルブV3を閉じることによって供給期間となり、切替機構20の第1バルブV1及び第2バルブV2を閉じると共に第3バルブV3を開くことによって停止期間となるように構成されている。
【0034】
前記濃度制御機構30は、前記第1流量制御機器MFC1と、前記第2流量制御機器MFC2と、第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2を制御する制御部Cと、を備えている。すなわち、本実施形態の流体制御機器は、第1流量制御機器MFC1、及び、前記第2流量制御機器MFC2である。
【0035】
前記制御部Cは、具体的には、CPU、メモリ、ADコンバータ、DAコンバータ、入力手段等を有したコンピュータであり、前記メモリに格納されたプログラムをCPUによって実行することによって、
図2に示すように、濃度算出部C1、目標値記憶部C2、期間判定部C3、濃度制御部C4、濃度変化データ記憶部C5、制御切替部C6、閾値設定部C7、閾値記憶部C8、設定時間記憶部C9、初期値設定部C10、初期値記憶部C11等としての機能を発揮するように構成されている。
【0036】
前記濃度算出部C1は、濃度モニタ40から出力された出力信号に基づいて混合ガスに含まれる材料ガスの実濃度を算出するものである。具体的には、圧力計41及び分圧計42のそれぞれから出力信号を取得し、圧力計41により検出された全圧に対する分圧計42により検出された分圧の比率を、混合ガスに含まれる材料ガスの実濃度(vol%)として算出する。
【0037】
前記目標値記憶部C2は、例えば、キーボード等の入力手段によるユーザの入力操作や他機器から送信された、材料ガスの供給先(チャンバCH)へ供給する材料ガスの目標濃度を示す目標値信号を受け付けて記憶するものである。
【0038】
前記期間判定部C3は、バルブ開閉信号を受け付けて供給期間であるか否かを判定するものである。
【0039】
前記濃度制御部C4は、
図3に示すように、期間判定部C3が供給期間と判定した場合に、後述する初期値記憶部C11に記憶された初期設定値を取得し、第1流量制御機器MFC1を流れる流量及び第2流量制御機器MFC2を流れる流量がそれぞれ初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、濃度算出部C1から出力される実濃度信号と、目標値記憶部C2に記憶された目標値信号を取得し、第1流量制御機器MFC1又は第2流量制御機器MFC2の少なくとも一方を制御することによって実濃度が目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うものである。なお、フィードバック制御は、具体的にはPID制御である。ここで、第1制御が行われている間は、マスフローコントローラである第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2の設定流量は例えば一定流量値に保たれた初期設定値に固定され、濃度算出部C1で算出される実濃度は各設定流量に対してほぼリアルタイムではフィードバックされない。これに対して第2制御では実濃度が各設定流量に対してほぼリアルタイムでフォードバックされ、逐次設定流量が変更される。言い換えると、第1制御では第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2に対する濃度フィードバックループが切られており、第2制御では第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2に対する濃度フィードバックループが形成される。
【0040】
前記濃度変化データ記憶部C5は、濃度制御部C4が第1制御を開始した後に濃度算出部C1から出力される実濃度信号を取得し、当該第1制御開始後における実濃度の経時変化を示す濃度変化データを記憶するものである。
【0041】
前記制御切替部C6は、濃度変化データ記憶部C5に記憶された濃度変化データに基づいて、濃度制御部C4の制御状態を第1制御から第2制御へ切り替えるものである。具体的には、本実施形態の制御切替部C6は、第1制御開始後の経過時間に対する実濃度の変化率が閾値以下になった場合に、濃度制御部C4の制御状態を第1制御から第2制御へ切り替える。より具体的には、本実施形態の制御切替部C6は、第1制御開始後の経過時間が設定時間を越える前に、実濃度の変化率が閾値以下になった場合、或いは、実濃度の変化率が閾値以下になる前に、当該経過時間が設定時間以上になった場合、に濃度制御部C4の制御状態を第1制御から第2制御に切り替えるように当該濃度制御部C4へ切替信号を出力するように構成されている。
【0042】
前記閾値は、閾値設定部C7によって設定され、閾値記憶部C8に記憶される。具体的には、閾値設定部C7は、濃度制御部C4が第1制御を行った場合に得られる濃度変化データに基づいて閾値を設定するものである。なお、本実施形態の閾値設定部C7は、期間判定部C3が供給期間と判定した場合に、その供給期間で得られる濃度変化データに基づいて閾値を設定するものである。すなわち、当該閾値設定部C7は、供給期間毎に閾値を設定するようになっている。より具体的には、当該閾値設定部C7は、期間判定部C3が供給期間と判定した場合に、その供給期間で得られる濃度変化データを濃度変化データ記憶部C5から随時(リアルタイムで)取得し、当該濃度変化データに基づいて閾値を設定するようになっている。
【0043】
次に、前記閾値設定部C7による閾値の設定手法を例示する。
【0044】
第1の手法としては、前記閾値設定部C7は、取得した濃度変化データによって第1制御開始時点から所定時間経過時における実濃度の変化率を算出し、当該実濃度の変化率に基づいて閾値を算出して設定する。具体的には、閾値設定部C7は、取得した濃度変化データによって第1制御開始後、所定期間の実濃度の変化率を随時算出し、第1制御開始時点から所定時間経過時に対応する期間の実濃度の変化率に基づいて閾値を算出して設定する。より具体的には、第1制御開始時点から最初の期間の実濃度の変化率に基づいて閾値を算出して設定する。この場合、閾値設定部C7は、前記実濃度の変化率の1/N(Nは、1よりも大きい任意の数値)となる値を閾値に設定する。ここで、前記所定期間は、例えば、制御周期が1秒であり、5秒間の変化率を算出する場合、0~5秒、1~6秒、2~7秒・・・のように、一部が重なるような期間であってもよい。
【0045】
第2の手法としては、前記閾値設定部C7は、取得した濃度変化データによって第1制御開始後における実濃度の変化率の最大値を算出し、当該実濃度の変化率の最大値に基づいて閾値を算出して設定する。具体的には、閾値設定部C7は、取得した濃度変化データによって第1制御開始後、所定時間の実濃度の変化率を随時算出し、その中から選定した実濃度の変化率の最大値に基づいて閾値を算出して設定する。例えば、閾値設定部C7は、所定期間に実濃度の変化率を随時算出し、そのピーク値を更新しながら記憶することによって最大値を選定するようにすればよい。この場合、閾値設定部C7は、前記実濃度の変化率の最大値の1/N(Nは、1よりも大きい任意の数値)となる値を閾値に設定する。
【0046】
ここで、前記実濃度の変化率についてさらに詳述すると、
図3(a)に示すグラフの一部を拡大した
図3(b)に示すように、当該実濃度の変化率は、所定期間ΔTの始点及び終点における実濃度を結ぶ直線Xの傾きであり、実濃度をf(t)、経過時間をtとした場合に、(f(t)-f(t-ΔT))/ΔTによって算出される値である。すなわち、実濃度の変化率は、単位時間に対する実濃度の変化量ということもできる。また、実濃度の変化率は、所定期間の始点と終点を結ぶ直線の代わりに、所定期間の濃度変化データに対して、最小二乗フィッティングにより近似直線を求め、その近似直線の傾きから算出してもよい。
【0047】
すなわち、本実施形態においては、1回の供給期間内で、当該供給期間の第1制御で得られる濃度変化データから閾値を設定し、当該閾値を利用して当該供給期間の第1制御を第2制御へ切り替えるように構成されている。
【0048】
なお、本実施形態においては、閾値設定部C7を設けることにより、供給期間毎に閾値を設定し直しているが、閾値設定部C7を設けず、閾値記憶部C8に予め定められた閾値を記憶しておき、いずれの供給期間においても当該閾値に用いて制御するようにしてもよい。
【0049】
この場合、前記閾値は、気化装置100を出荷する前に第1流量制御機器MFC1を流れる流量及び第2流量制御機器MFC2を流れる流量が予め定められた予備設定値になるように制御する予備制御を行って得られた予備濃度変化データ(
図4参照)から前記いずれかの手法を用いて事前に算出すればよい。また、気化装置100を製造ライン等に組み込んだ後に前記予備制御を行って得られた予備濃度変化データから算出してもよい。また、気化装置100によってチャンバCHに対して材料ガスを供給する1回目の供給期間を利用して予備制御を行って得られた予備濃度変化データから算出してもよい。なお、予備設定値は、
図4に示すように、第1流量制御機器MFC1を流れる流量及び第2流量制御機器MFC2を流れる流量を予備設定値になるように制御した場合に、実濃度のピークが目標値又は目標値近傍に到達するように設定することが好ましい。なお、前記第1の手法又は前記第2の手法におけるNの値は、前記予備濃度変化データに基づいて定めることができる。
【0050】
前記設定時間は、設定時間記憶部C9に記憶されている。なお、設定時間記憶部C9は、例えば、キーボード等の入力手段によるユーザの入力操作や他機器から送信された設定時間信号を受け付けて記憶するようになっている。なお、設定時間は、前記予備濃度変化データにおける実濃度がピークに達する時間に適切なマージンを加えた時間とすることが好ましい。
【0051】
前記初期値設定部C10は、期間判定部C3が停止期間と判定した場合に、濃度変化データ記憶部C5に記憶された前回の供給期間で得た濃度変化データを取得し、当該濃度変化データに基づいて次回の供給期間の第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2の初期設定値を算出して設定するものである。なお、初期設定値は、第1流量制御機器MFC1と第2流量制御機器MFC2とで同一の値であってもよく、異なる値であってもよい。具体的には初期設定値は第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2に設定される設定流量Qc、Qdでキャリアガス及び希釈ガスの流量が一定に保たれた場合に、濃度モニタ40で測定される実濃度が目標値記憶部C2に記憶されている目標濃度となるように設定される。例えば第1制御終了時点における実濃度が目標濃度よりも大きい場合には、次回の供給期間に使用されるキャリアガスの設定流量Qcは今回の値よりも小さい値に設定される。逆に第1制御終了時点における実濃度が目標濃度よりも小さい場合には、次回の供給期間に使用されるキャリガスガスの設定流量Qdは今回の値よりも大きい値に設定される。
【0052】
前記初期値記憶部C11は、初期値設定部C10から初期設定値信号を受け付けて記憶するものである。具体的には、初期値記憶部C11は、初期値設定部C10から初期設定値信号を受け付ける毎に、当該初期設定値を上書きして記憶するようになっている。ここで、初期値設定部C10は、前回の供給期間で得た濃度変化データに基づいて初期設定値を設定しているため、最初の供給期間については初期設定値を設定できない。このため、初期値記憶部C11には、事前に最初の供給期間に用いる第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2の最初期設定値が記憶されている。なお、最初期設定値は、前記予備濃度変化データに基づいて設定することができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、初期値設定部C10を設けることにより、供給期間毎に初期設定値を設定し直しているが、初期値設定部C10を設けず、初期値記憶部C11に予め定められた初期設定値(例えば、最初期設定値)を記憶しておき、いずれの供給期間においても当該初期設定値に用いて制御するようにしてもよい。
【0054】
【0055】
先ず、気化装置100の動作が開始されると、期間判定部C3は、供給期間であるか否かを判断する。本実施形態では、期間判定部C3は、バルブ切替信号を取得し、当該信号に基づいて供給期間が否かを判定する(ステップS1)。
【0056】
そして、期間判定部C3が供給期間でないと判定した場合、言い換えれば、停止期間と判定した場合には、初期値設定部C10は、濃度変化データ記憶部C5に当該停止期間の直前の供給期間における濃度変化データが記憶されている場合には、当該濃度変化データに基づいて新たな初期設定値を設定して初期値記憶部C11に記憶する。そして、濃度制御部C4は、初期値記憶部C11に記憶された最新の初期設定値を第1流量制御機器MFC1の設定値及び第2流量制御機器MFC2の設定値に設定する(ステップS2)。
【0057】
一方、期間判定部C3が供給期間であると判定した場合には、濃度制御部C4は、制御状態が第2制御であるか否かを判断する(ステップS3)。そして、濃度制御部C4は、制御状態が第2制御でないと判断した場合に、第1流量制御機器MFC1を流れる流量及び第2流量制御機器MFC2を流れる流量が設定された初期設定値になるように制御する第1制御を行う(ステップS4)。
【0058】
そして、濃度制御部C4によって第1制御が開始されると、濃度変化データ記憶部C5は、第1制御開始後の実濃度の経時変化を示す濃度変化データを逐次記憶する。また、閾値設定部C7は、濃度変化データ記憶部C5に随時記憶される濃度変化データに基づいて閾値を設定して閾値記憶部C8に記憶する。さらに、制御切替部C6は、濃度変化データ記憶部C5に逐次記憶される濃度変化データを参照し、第1制御開始後の経過時間に対する実濃度の変化率が閾値設定部C7で設定された閾値以下か否かを判断し(ステップS5)、続いて、当該経過時間が設定時間以上か否かを判断する(ステップS6)。
【0059】
すなわち、本実施形態においては、供給期間毎に、閾値設定部C7が、その供給期間で得られる濃度変化データに基づき閾値を設定すると共に、制御切替部C6が、その供給期間で得られる濃度変化データと当該閾値とを用いて切替タイミングを判断するように構成されている。
【0060】
そして、制御切替部C6は、実濃度の変化率が閾値以下になったと判断した場合、或いは、経過時間が設定時間以上になったと判断した場合に、濃度制御部C4へ制御状態切替信号を送信する。これにより、濃度制御部C4は、制御状態を第1制御から第2制御へ切り替えて当該第2制御を開始する(ステップS7)。
【0061】
なお、濃度制御部C4は、ステップS3において制御状態が第2制御であると判断した場合に、そのまま第2制御を継続する(ステップS8)。
【0062】
その後は、気化装置100は、制御終了信号を受け付けたか否かを判断し(ステップS9)、制御終了信号を受け付けるまではS1~S8を繰り返し、制御終了信号を受け付けた場合は動作を終了する。
【0063】
このように構成された本実施形態に係る気化装置100によれば、供給期間開始直後は、第1流量制御機器MFC1に流れる流量及び第2流量制御機器MFC2に流れる流量を初期設定値に維持する第1制御を行って実濃度を上昇させ、ある程度実濃度が上昇した後に第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2を制御して実濃度が目標濃度に近づくようにフィードバック制御する第2制御に切り替えられるため、供給期間開始直後における材料ガスの濃度のオーバーシュートを抑制できる。
【0064】
本実施形態の変形例について説明する。第1制御において第1流量制御機器MFC1に設定される初期設定値Qcについては、
図3及び
図4のグラフに示されるように第1制御終了時点において濃度モニタ40で測定される実濃度が目標値とほぼ一致するように定められていたが、実濃度が目標値から許容量だけオーバーシュートするように設定されてもよい。すなわち、実濃度が目標値となるキャリアガスの設定流量Qcに対してオーバーシュートゲインGoを乗じた値を初期設定値として第1流量制御機器MFCに設定されるように初期値設定部C10を構成してもよい。ここで、オーバーシュートゲインGoは例えば1.1~1.2等の値として設定される。このようにすれば、
図6のグラフに示すようにオーバーシュート後に発生するアンダーシュートを抑制し、実濃度が目標値を一度上回った後はその値をほぼ下回らないようにできる。
【0065】
<その他の実施形態> 前記実施形態に係る気化装置100は、希釈式(流量式)のものであるが、圧力式のものであってもよい。具体的には、圧力式の気化装置100は、
図7に示すように、前記実施形態に係る希釈式の気化装置100と比べて、希釈ガス供給路L3を具備しておらず、代わりに材料ガス導出路L2の濃度モニタ40よりも下流側に圧力制御機器PVを具備している。すなわち、本実施形態の流体制御機器は、流量制御機器MFC1及び圧力制御機器PVである。
【0066】
前記圧力式の気化装置100においては、初期値記憶部C11に第1流量制御機器MFC1を流れる流量及び圧力制御機器PVの上流側の圧力の初期設定値を記憶し、濃度制御部C4が、供給期間において、圧力制御機器PVの上流側の圧力(具体的には、圧力計41の圧力)及び第1流量制御機器MFC1を流れる流量が初期設定値になるように制御する第1制御を行った後、第1流量制御機器MFC1又は圧力制御機器PVの少なくとも一方を制御することによって実濃度が目標値に近づくようにフィードバック制御する第2制御を行うように構成すればよい。なお、圧力制御機器PVは、具体的には圧力制御弁であり、濃度制御部C4は当該圧力制御弁の弁開度を制御するように構成すればよい。
【0067】
なお、圧力式の気化装置100においても、供給期間開始直後から実濃度が目標値に近づくようにフィードバック制御を行うと、気化タンクに流れ込むキャリアガスの流量に依存して生じる気化タンクの全圧変化の時間遅れ等が原因となり、供給期間開始直後に材料ガスの濃度が大きくオーバーシュートするという問題がある。しかし、本発明に係る圧力式の気化装置100によれば、供給期間開始直後の材料ガスの濃度のオーバーシュートを抑制できる。
【0068】
また、前記実施形態においては、第1制御開始後の経過時間に対する実濃度の変化率に基づいて、第1制御から第2制御への切替タイミングを判断しているが、当該実濃度の変化率の変化率(実濃度波形の二次微分)に基づいて、第1制御から第2制御への切替タイミングを判断するように構成してもよい。
【0069】
また、第1制御開始直後、言い換えれば、供給期間開始直後は、経過時間に対する実濃度の変化が不安定になる。このため、制御切替部C6が、第1制御開始後に遅延時間を設け、当該遅延時間後の経過時間に対する実濃度の変化率が閾値以下か否かを判定するように構成すればよい。このようなものであれば、経過時間に対する実濃度の変化が不安定な期間に生じ易い誤判定の発生を抑制できる。
【0070】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
100 気化装置
10 気化タンク
L1 キャリアガス供給路
L2 材料ガス導出路
L3 希釈ガス供給路
20 切替機構
30 濃度制御機構
MFC1 第1流量制御機器
MFC2 第2流量制御機器
C 制御部
C1 濃度算出部
C2 目標値記憶部
C3 期間判定部
C4 濃度制御部
C5 濃度変化データ記憶部
C6 制御切替部
C7 閾値設定部
C8 閾値記憶部
C9 設定時間記憶部
C10 初期値設定部
C11 初期値記憶部
40 濃度モニタ
PV 圧力制御機器