(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】チャックテーブルの検査方法
(51)【国際特許分類】
B24B 55/00 20060101AFI20240501BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240501BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240501BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20240501BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240501BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B24B55/00
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B23Q3/08 A
B23Q17/00 A
H01L21/304 631
H01L21/304 622H
(21)【出願番号】P 2020046290
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 敬二
(72)【発明者】
【氏名】劉 宜忻
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-188836(JP,A)
【文献】特開2014-072251(JP,A)
【文献】特開2018-114563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/00
B24B 41/06
B24B 7/04
B23Q 3/08
B23Q 17/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラス板の上面である保持面を吸引源に連通させ、該保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段とを備えた加工装置に用いられる該チャックテーブルの該保持面の吸引力が低下しているか否か検査するチャックテーブルの検査方法であって、
該保持面とエア供給源とを連通させ
、該保持面と該エア供給源とをつないでいる配管内の
時間の経過とともに上昇する圧力値の一次曲線の傾きの大きさに基づいて、該保持面の吸引力が低下しているか否かを判断する判断工程、を含む、
チャックテーブルの検査方法。
【請求項2】
該チャックテーブルを、該保持面の中心を軸に回転させ、該保持面上の水を除去する第1水除去工程と、
該保持面を該吸引源に連通させ、該保持面と該吸引源との間の水を除去する第2水除去工程とを、該判断工程の前に実施する、
請求項1記載のチャックテーブルの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、チャックテーブルの保持面によって保持された被加工物を、砥石によって研削する。チャックテーブルは、上面を保持面とするポーラス板と、保持面を露出させるようにポーラス板を収容する枠体と、を備えている。
【0003】
保持面は、吸引源に連通されることによって被加工物を吸引保持し、研削加工中も被加工物を吸引し続けている。そのため、保持面と被加工物との僅かな隙間を介して、保持面からポーラス板内に、研削水、および、研削加工中に排出される細かな研削屑が、吸い込まれる。
【0004】
特許文献1に開示の技術では、保持面から被加工物を取り外した後、ポーラス板内に吸い込まれた研削屑を、その保持面から噴き出させている。これによって、保持面の吸引力の低下を遅延させている(すなわち、吸引力を延命させている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ポーラス板内に進入した研削屑を、保持面から噴出させることが困難なことがある。この場合、ポーラス板の内部に残った研削屑が、保持面の吸引力を低下させる。
【0007】
このように吸引力が低下している保持面を、吸引源に連通させると、保持面と吸引源とをつないでいる配管内の圧力は、保持面が被加工物を吸引保持しているかのような、負圧値を示す。そのため、配管内の圧力を用いるだけでは、保持面の吸引力が低下しているのか、あるいは、保持面によって被加工物を吸引保持しているのかを、区別することが困難である。つまり、保持面を吸引源に連通させた状態で、配管内の圧力値に基づいて保持面の吸引力の低下を検知することは、困難である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、被加工物を吸引保持するための保持面の吸引力が低下しているか否かを、容易に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチャックテーブルの検査方法(本検査方法)は、ポーラス板の上面である保持面を吸引源に連通させ、該保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段とを備えた加工装置に用いられる該チャックテーブルの該保持面の吸引力が低下しているか否か検査するチャックテーブルの検査方法であって、該保持面とエア供給源とを連通させ、該保持面と該エア供給源とをつないでいる配管内の時間の経過とともに上昇する圧力値の一次曲線の傾きの大きさに基づいて、該保持面の吸引力が低下しているか否かを判断する判断工程、を含む。
【0010】
本検査方法では、該チャックテーブルを、該保持面の中心を軸に回転させ、該保持面上の水を除去する第1水除去工程と、該保持面を該吸引源に連通させ、該保持面と該吸引源との間の水を除去する第2水除去工程とを、該判断工程の前に実施してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本検査方法では、判断工程において、保持面とエア供給源とを連通することにより保持面からエアを噴出させた状態で、保持面とエア供給源との間の配管の圧力値の時間変化を取得し、この時間変化に基づいて、保持面の吸引力が低下しているか否かを検査している。
本検査方法では、被加工物が保持面に載置されている場合には、保持面からのエアの噴出により、被加工物が保持面から離れる(浮き上がる)ため、保持面が塞がれず、エアの流路が確保される。したがって、本検査方法では、保持面に吸引力を伝達して配管内の圧力値を調べる方法とは異なり、被加工物が保持面に載置されていても、検出された圧力値に基づいて、保持面の吸引力が低下しているか否かを、容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】エア配管内の圧力値と、保持面とエア供給源との連通からの経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す加工装置1は、保持面302によってウェーハ100を保持するチャックテーブル30、保持面302に保持されたウェーハ100を加工する加工手段10、および、これら加工手段10およびチャックテーブル30を制御する制御部50を備えている。
【0014】
図1に示すウェーハ100は、被加工物の一例であり、たとえば、円形の半導体ウェーハである。ウェーハ100の表面101には、図示しないデバイスが形成されている。ウェーハ100の表面101は、
図1においては下方を向いており、保護テープ105が貼着されることによって保護されている。ウェーハ100の裏面104は、研削処理が施される被加工面となる。
【0015】
加工手段10は、Z軸方向に沿って延びるスピンドル11、スピンドル11の下端に接続されたホイールマウント13、および、ホイールマウント13の下面に着脱可能に装着された研削ホイール15を備える。
【0016】
ホイールマウント13は、円板状に形成されており、スピンドル11の下端(先端)に固定されて、スピンドル11の回転により回転される。ホイールマウント13は、研削ホイール15を支持している。
【0017】
研削ホイール15は、ホイールマウント13と略同径を有するように形成されている。研削ホイール15は、アルミニウム合金等の金属材料から形成された円環状のホイール基台(環状基台)16を含む。ホイール基台16の下面には、全周にわたって、略直方体形状の複数の研削砥石17が、環状に配置および固定されている。研削砥石17は、スピンドル11の回転により回転され、チャックテーブル30の保持面302に保持されたウェーハ100を研削する。研削砥石17は、加工具の一例である。
【0018】
また、加工手段10は、図示しない加工水供給機構を備えている。研削砥石17によってウェーハ100の裏面104が研削される際には、裏面104に研削水が供給される。
【0019】
チャックテーブル30は、ウェーハ100を保持するための円板形状のテーブルである。チャックテーブル30は、円形板状のポーラス板300、および、ポーラス板300を支持する枠体301を備える。チャックテーブル30のポーラス板300は、吸引源37に連通されることが可能である。吸引源37からの吸引力が、ポーラス板300の上面である保持面302に伝達されることで、チャックテーブル30は、保持面302によってウェーハ100を吸引保持することができる。
【0020】
このように、チャックテーブル30は、ポーラス板300の上面である保持面302を吸引源37に連通させ、保持面302によってウェーハ100を吸引保持するものである。
チャックテーブル30は、回転手段32によって回転可能となっている。回転手段32は、例えば、プーリ機構であり、駆動源となるモータ321、モータ321のシャフト取り付けられた主動プーリ322、主動プーリ322に対して無端ベルト323を介して接続されている従動プーリ324、および、従動プーリ324を支持する回転軸320を備えている。
【0021】
回転軸320は、チャックテーブル30の下面における保持面302の中心の直下に接続されており、チャックテーブル30の保持面302に対して垂直に延在している。モータ321が主動プーリ322を回転駆動することで、主動プーリ322の回転に伴って無端ベルト323が回動する。無端ベルト323が回動することで、従動プーリ324および回転軸320が回転する。これにより、チャックテーブル30が、保持面302の中心を軸に回転される。
【0022】
また、加工装置1は、流体流通機構40を備えている。流体流通機構40は、チャックテーブル30の保持面302に対して、流体であるエアあるいは水を供給する、あるいは、保持面302を吸引するための機構である。
【0023】
流体流通機構40は、吸引溝303、吸引溝303に連通されている吸引流路370、回転軸320を覆うロータリージョイント373、および、吸引流路370に連通されている吸引配管374を備えている。
【0024】
吸引溝303は、ポーラス板300の下面に接するように、チャックテーブル30における枠体301の凹部の底面に設けられている。吸引溝303は、チャックテーブル30の中心を中心として、同心円状に形成されている。
【0025】
吸引流路370は、吸引溝303の底面から、枠体301の下面、さらに該下面から回転軸320およびロータリージョイント373を通過するように延びている。ロータリージョイント373は、回転軸320を囲繞するように配設さている。ロータリージョイント373は、吸引源37が生み出す吸引力を回転軸320側に移送する。
【0026】
吸引流路370は、ロータリージョイント373の外部で、吸引配管374に接続されている。吸引配管374は、チャックテーブル30の保持面302と吸引源37とを連通するための配管である。吸引配管374の一端側は、吸引流路370に連通されている。吸引配管374の他端側には、吸引源37が接続されている。この吸引源37は、たとえば、エジェクター機構あるいは真空発生装置等を備え、チャックテーブル30の保持面302に吸引力を与えるために用いられる。
【0027】
また、吸引配管374には、吸引源37から吸引流路370側に向かって順に、吸引開閉弁377および吸引流量調整弁376が配設されている。吸引開閉弁377は、吸引配管374と吸引源37との連通状態を切り換える。吸引流量調整弁376は、たとえば比例制御電磁弁であり、入力される電流量を変えることで、吸引源37から保持面302に伝達される吸引力を、0%~100%の間で自由に調整可能である。
【0028】
また、吸引配管374には、三方管375を介して、エア配管491が連通されている。エア配管491は、チャックテーブル30の保持面302とエア供給源49とを連通するための配管である。
【0029】
エア配管491の一端側は、三方管375および吸引配管374を介して、吸引流路370に連通されている。エア配管491の他端側には、エア供給源49が接続されている。エア供給源49は、コンプレッサー等を備え、チャックテーブル30の保持面302にエアを供給するために用いられる。
【0030】
また、エア配管491には、エア供給源49から吸引流路370側に向かって順に、エア供給開閉弁495およびエア調整部493が配設されている。エア供給開閉弁495は、エア配管491とエア供給源49との連通状態を切り換える。エア調整部493は、たとえば比例制御電磁弁であり、入力される電流量を変えることで、エア供給源49から保持面302に送られるエア流量を、0%~100%の間で自由に調整可能である。
【0031】
また、エア配管491における三方管375と三方管492との間には、圧力センサ497が設けられている。圧力センサ497は、チャックテーブル30の保持面302とエア供給源49とをつないでいる配管であるエア配管491の圧力値(負圧値)を検出するものである。
【0032】
さらに、エア配管491には、三方管492を介して、水配管481が連通されている。水配管481は、チャックテーブル30の保持面302と水供給源48とを連通するための配管である。
【0033】
水供給源48の一端側は、三方管492、エア配管491、三方管375、および吸引配管374を介して、吸引流路370に連通されている。三方管492の他端側には、水供給源48が接続されている。水供給源48は、ポンプ等を備え、チャックテーブル30の保持面302に水(洗浄水)を供給するために用いられる。
【0034】
また、水配管481には、水供給源48から吸引流路370側に向かって順に、水供給開閉弁485および水調整部483が配設されている。水供給開閉弁485は、水配管481と水供給源48との連通状態を切り換える。水調整部483は、たとえば比例制御電磁弁であり、入力される電流量を変えることで、水供給源48から保持面302に送られる水流量を、0%~100%の間で自由に調整可能である。
【0035】
制御部50は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部50は、加工装置1の上述した各部材を制御して、ウェーハ100に対する研削処理を実行する。また、制御部50は、流体流通機構40の各部材を制御して、保持面302に伝達される吸引力、保持面302に供給されるエアおよび水の量を調整する。さらに、制御部50は、圧力センサ497の検出結果に基づいて、チャックテーブル30の検査を実施する。
【0036】
以下に、加工装置1におけるチャックテーブル30の検査方法について説明する。
チャックテーブル30のポーラス板300に研削屑が多く残っていると、保持面302を吸引源37に連通させたときに生じる、保持面302におけるウェーハ100を吸引する力である吸引力が低下する。そして、本実施形態にかかるチャックテーブル30の検査方法は、保持面302の吸引力が低下しているか否かを検査するための方法である。
この方法は、第1水除去工程、第2水除去工程および判断工程を含む。
【0037】
(第1水除去工程)
この工程では、制御部50は、まず、吸引開閉弁377、水供給開閉弁485および水供給源48の全てを閉じる。そして、制御部50は、ウェーハ100を保持していない状態のチャックテーブル30を回転させる。
【0038】
すなわち、制御部50は、
図2に示すように、回転手段32のモータ321を駆動して、主動プーリ322を矢印501に示すように回転させる。これに伴い、主動プーリ322に無端ベルト323を介して連結されている従動プーリ324、および、従動プーリ324を支持している回転軸320も、矢印503に示すように回転する。
【0039】
これにより、チャックテーブル30が、保持面302の中心を軸に回転される。そして、この回転により、チャックテーブル30の保持面302に付着していた水分が、遠心力で飛ばされて、水滴400となって保持面302上から除去される。なお、この水分には、たとえば、加工手段10の加工水、および、水供給源48からの洗浄水が含まれる。
【0040】
チャックテーブル30の回転を開始してから所定時間の経過後、制御部50は、チャックテーブル30の回転を停止し、次の第2水除去工程を実施する。
【0041】
(第2水除去工程)
この工程では、制御部50は、チャックテーブル30の保持面302を吸引源37に連通させ、保持面302と吸引源37との間の水を除去する。
【0042】
すなわち、制御部50は、吸引開閉弁377を開けるとともに、吸引流量調整弁376に所定量の電流を流して、保持面302を吸引源37に連通させる。これにより、保持面302に、所定の吸引力を伝達する。これにより、保持面302と吸引開閉弁377との間に配置されている吸引溝303、吸引流路370および吸引配管374内に滞留していた水が、吸引源37によって吸引されて除去される。
【0043】
保持面302を吸引源37に連通させてから所定時間の経過後、制御部50は、吸引開閉弁377を閉じて、次の判断工程を実施する。
【0044】
(判断工程)
この工程では、制御部50は、チャックテーブル30の保持面302をエア供給源49に連通させ、連通から所定時間間隔が経過した際に変化した、保持面302とエア供給源49とをつないでいる配管であるエア配管491内の圧力値(陽圧値)に応じて、保持面302の吸引力が低下しているか否かを判断する。
【0045】
すなわち、制御部50は、エア供給開閉弁495を開けるとともに、エア調整部493に所定量の電流を流して、保持面302をエア供給源49に連通させる。これにより、制御部50は、
図3において矢印505に示すように、保持面302に、所定量のエアを供給する。その結果、保持面302からエアが噴出される。
なお、エア調整部493は、エアの流量が調整可能であればよくて、ニードルバルブでもよい。
【0046】
その後、制御部50は、保持面302とエア供給源49との連通から所定時間間隔(たとえば、200msecから400msecの間)にわたって、圧力センサ497によって検出される、エア配管491内の圧力値(陽圧値)を取得する。そして、制御部50は、
図4に示すように、エア配管491内の圧力値Pと、保持面302とエア供給源49との連通からの経過時間tとの関係を示すグラフを作成する。
【0047】
図4に示す第1の例E1では、エア配管491内の圧力値Pは、時間tの経過とともに、角度θ1の傾きを有する一次曲線にほぼ沿うように、上昇してゆく。そして、この第1の例E1では、400msec後の圧力値P1が、所定の閾値P0以下である。この場合、制御部50は、エア配管491内の圧力値Pの時間変化が小さいため、チャックテーブル30のポーラス板300内に蓄積されている研削屑が少なく、保持面302の吸引力の低下が小さい、すなわち、保持面302の吸引力が低下していない、と判断する。
【0048】
一方、
図4に示す第2の例E2では、エア配管491内の圧力値Pは、時間tの経過とともに、角度θ1よりも大きい角度θ2の傾きを有する一次曲線にほぼ沿うように、上昇してゆく。そして、この第2の例E2では、400msec後の圧力値P2が、閾値P0よりも大きい。この場合、制御部50は、エア配管491内の圧力値Pの時間変化が大きいため、ポーラス板300内に多くの研削屑が残存しており、保持面302の吸引力の低下が大きい、すなわち、保持面302の吸引力が低下している、と判断する。
なお、実施例では、保持面302は、直径294mmで、保持面302から噴出するエア流量が、2.0L/minで、その際の角度θ1は、12.4°であった。
また、閾値を角度にしてもよい。その際は、
図4に示すように角度θ3を閾値とする。
【0049】
制御部50は、このように保持面302の吸引力が低下しているか否かを判断し、判断結果を、加工装置1に設けられている表示パネルなどの表示部材(図示せず)を用いて作業者に向けて表示する。その後、制御部50は、エア供給開閉弁495を閉じて、検査を終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態では、判断工程において、保持面302とエア供給源49とを連通することにより保持面302からエアを噴出させた状態で、保持面302とエア供給源49との間の配管であるエア配管491の圧力値(負圧値)の時間変化を取得し、この時間変化に基づいて、保持面302の吸引力が低下しているか否かを検査している。
【0051】
本実施形態では、ウェーハ100が保持面302に載置されている場合には、保持面302からのエアの噴出により、ウェーハ100が保持面302から離れる(浮き上がる)ため、保持面302が塞がれず、エアの流路が確保される。
したがって、保持面302に吸引力を伝達して配管内の圧力値を調べる方法とは異なり、ウェーハ100が保持面302に載置されていても、検出された圧力値に基づいて、保持面302の吸引力が低下しているか否かを、容易に判断することができる。
【0052】
また、本実施形態では、保持面302からエアを噴き出す判断工程を実施する前に、第1水除去工程および第2水除去工程を実施している。このため、保持面302上および保持面302と吸引源37との間に水(加工水あるいは洗浄水)が溜まっていても、これらから水を除去することができる。このため、保持面302の吸引力が低下しているか否かを、より精度よく判断することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、制御部50は、保持面302とエア供給源49との連通から所定時間経過後(400msec後)の圧力値Pが、閾値P0よりも大きいか否かに基づいて、保持面302の吸引力が低下しているか否かを判断している。これに代えて、制御部50は、時間tの経過とともに上昇する圧力値Pの近似曲線(一次曲線)の傾き(上述した角度θ1およびθ2)の大きさに基づいて、保持面302の吸引力が低下しているか否かを判断してもよい。たとえば、制御部50は、この傾きが所定の閾値よりも大きい場合に、保持面302の吸引力が低下していると判断してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、判断工程において、保持面302からエアが吹き出すため、保持面302にウェーハ100が載置されている場合、ウェーハ100が飛ばされて損傷する可能性がある。そこで、作業者は、チャックテーブル30の検査を実施する前に、保持面302にウェーハ100が載置されていないことを確認することが好ましい。これにより、保持面302にウェーハ100が載置されたまま検査が実施されて、ウェーハ100が損傷することを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、判断工程の前に、第1水除去工程および第2水除去工程を実施している。これに限らず、第1水除去工程および第2水除去工程は、実施されなくてもよい。特に、加工装置1が数日間にわたって使用されていなかった場合など、チャックテーブル30および流体流通機構40が乾燥している状態にある場合には、判断工程を実行するだけでも、チャックテーブル30の検査を良好に実施することができる。
【0056】
また、本実施形態では、加工手段として、加工具としての研削砥石17を有する研削装置を示している。これに代えて、加工手段は、加工具としての研磨パッドを備えた研磨装置であってもよい。この場合、判断工程において、研磨パッドの直下で、保持面302の吸引力の検査を実施すること可能である。また、第2水除去工程および第2水除去工程では、研磨に用いられるスラリーを除去することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:加工装置、
10:加工手段、17:研削砥石、
32:回転手段、
37:吸引源、48:水供給源、49:エア供給源、
50:制御部、
30:チャックテーブル、300:ポーラス板、301:枠体、302:保持面、
320:回転軸、321:モータ、322:主動プーリ、
323:無端ベルト、324:従動プーリ、
40:流体流通機構、
303:吸引溝、370:吸引流路、373:ロータリージョイント、
374:吸引配管、376:吸引流量調整弁、377:吸引開閉弁、
481:水配管、483:水調整部、485:水供給開閉弁、
491:エア配管、493:エア調整部、495:エア供給開閉弁、
497:圧力センサ、
100:ウェーハ、101:表面、104:裏面、105:保護テープ、