(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ブラシ摩耗監視装置及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20240501BHJP
H01R 39/58 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H02K13/00 X
H01R39/58
(21)【出願番号】P 2020047152
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩生
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-127859(JP,A)
【文献】特開2010-207971(JP,A)
【文献】特開昭57-101549(JP,A)
【文献】実開昭57-047871(JP,U)
【文献】特開2017-177250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00-13/14
H01R 39/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するスリップリングに給電ブラシを接触させて電力の受け渡しを行う回転電機における前記給電ブラシの摩耗量を監視するブラシ摩耗監視装置において、
前記給電ブラシが挿入され、観測穴を有する円筒形のブラシソケットと、
前記観測穴を介して前記給電ブラシの近傍から反射する光の色、光量の変化を検出する光ファイバと、
前記光ファイバで検出した出力から前記給電ブラシの摩耗限界を判定する手段と、
を備え
、
前記光ファイバは、ファイバ穴に取り付けられ、
前記ファイバ穴は、ファイバヘッドの先端位置から前記ブラシソケットの間に外部に通じるパージエア流路が設けられたことを特徴とするブラシ摩耗監視装置。
【請求項2】
前記摩耗限界を判定する手段による判定は、前記光ファイバで検出した出力が入力される画像処理装置で得られる画像に基づいて行われることを特徴とする請求項1に記載のブラシ摩耗監視装置。
【請求項3】
前記摩耗限界を判定する手段は、前記画像から前記給電ブラシの各状態の違いを数値化して摩耗限界値を求め、前記給電ブラシの交換必要性を判定することを特徴とする請求項2に記載のブラシ摩耗監視装置。
【請求項4】
前記交換必要性は、前記画像、あるいは前記摩耗限界値と前記給電ブラシの使用実績との相関から決定されることを特徴とする請求項3に記載のブラシ摩耗監視装置。
【請求項5】
前記交換必要性は、前記使用実績に基づいて管理者へ報知されることを特徴とする請求項4に記載のブラシ摩耗監視装置。
【請求項6】
前記光ファイバは先端のファイバヘッドが前記回転電機の軸方向のファイバ穴に取り付けられ、前記ブラシソケットは前記回転電機の軸と垂直方向のブラシ穴に取り付けられたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のブラシ摩耗監視装置。
【請求項7】
前記回転電機は超音波スピンドルとされ、前記光ファイバで検出した前記出力から前記超音波スピンドルの機能に対する異常の兆候を検出することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のブラシ摩耗監視装置。
【請求項8】
回転するスリップリングに給電ブラシを接触させて電力の受け渡しを行う回転電機において、
前記給電ブラシが挿入され、観測穴を有する円筒形のブラシソケットと、前記観測穴を介して前記給電ブラシの近傍から反射する光の色、光量の変化を検出する光ファイバと、前記光ファイバで検出した出力から前記給電ブラシの摩耗限界を判定する手段と、を有するブラシ摩耗監視装置を備え
、
前記ブラシ摩耗監視装置において、前記光ファイバは、ファイバ穴に取り付けられ、
前記ファイバ穴は、ファイバヘッドの先端位置から前記ブラシソケットの間に外部に通じるパージエア流路が設けられたことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するスリップリングに給電ブラシを接触させて電力の受け渡しを行う電動機などの回転電機における給電ブラシの摩耗量を監視するブラシ摩耗監視装置及び回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機などの回転電機は、回転側にスリップリングを設けると共に固定側に給電ブラシを設け、回転するスリップリングに給電ブラシを接触させて電力の受け渡しを行うものがある。この回転電機は、常時給電ブラシに押圧力を掛けて給電ブラシをスリップリングに接触させており、カーボンなどから形成されている給電ブラシが摩耗する。そのため給電ブラシは、スリップリングに接触しなくなり、機能が停止する異常を起こす。それを避けるためには、給電ブラシを外して目視確認する定期的な点検が必要になる。
【0003】
また、半導体用途のセラミックスなどの高脆材、各種電子機器における表示装置の保護用板ガラスなどは、超音波スピンドルを用いて微細・高精度の切削・研削加工が行われることが多い。超音波スピンドルは、ツール先端にZ軸方向の超音波振動を与えて加工し、特にダイヤモンド電着ツールを使用した細穴加工、深穴加工に効果的である。
【0004】
また、超音波スピンドルは、主軸回転数が例えば、常用最大回転数15000min-1と大きいこと、40kHzの超音波振動を与えること、から回転電極に用いる給電ブラシの摩耗限界(寿命)を事前に検知することが重要である。
【0005】
例えば、特許文献1は、ブラシの摩耗量をオンラインで監視するため、ブラシに押圧力を付与するブラシ押し金具の回転動作に応動して出力信号を発生する可変抵抗器が設け、ブラシの摩耗量に応じて変化する出力電圧を分析することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2は、回転電機の集電用ブラシの摩耗量を非接触で、かつリアルタイムに計測するため、ブラシの摩耗による長さの変位量Lをブラシ保持装置の一部を構成するばね支え具内に組み込んだ光ファイバで検出し、その出力信号を変換回路により電気出力に変換して表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-189757号公報
【文献】特開平5-74537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術において、特許文献1は、ブラシ押し金具、可変抵抗器の構成が複雑であり、ブラシ摩耗監視装置の無い従来の超音波スピンドルに適用するには変更点が多く、寸法的にもコンパクトに組み込むことが困難である。
【0009】
また、特許文献2は、単にブラシの摩耗による長さの変位量Lを光ファイバで検出するだけなので、ブラシ加圧ばねの一部、及び上記ブラシの一部に設けた光反射部材を設けるなどの工夫が必須となり精度が十分でなく、超音波スピンドルに後付けで搭載することも難しい。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ブラシ摩耗監視装置の無い従来の回転電機に対して大きな変更を必要とせず、構成が簡単で高精度な回転電機のブラシ摩耗監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、回転するスリップリングに給電ブラシを接触させて電力の受け渡しを行う回転電機における前記給電ブラシの摩耗量を監視するブラシ摩耗監視装置において、前記給電ブラシが挿入され、観測穴を有する円筒形のブラシソケットと、前記観測穴を介して前記給電ブラシの近傍から反射する光の色、光量の変化を検出する光ファイバと、前記光ファイバで検出した出力から前記給電ブラシの摩耗限界を判定する手段と、を備えたものである。
【0012】
また、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記給電ブラシの摩耗限界を判定する手段による判定は、前記光ファイバで検出した出力が入力される画像処理装置で得られる画像に基づいて行われることが望ましい。
【0013】
さらに、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記摩耗限界を判定する手段は、前記画像から前記給電ブラシの各状態の違いを数値化して摩耗限界値を求め、前記給電ブラシの交換必要性を判定することが望ましい。
【0014】
さらに、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記交換必要性は、前記画像、あるいは前記摩耗限界値と前記給電ブラシの使用実績との相関から摩耗限界値を決定することが望ましい。
【0015】
さらに、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記給電ブラシの交換必要性は、前記使用実績等に基づいて管理者へ報知されることが望ましい。
【0016】
さらに、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記光ファイバは先端のファイバヘッドが前記回転電機の軸方向のファイバ穴に取り付けられ、前記ブラシソケットは前記回転電機の軸と垂直方向のブラシ穴に取り付けられたことが望ましい。
【0017】
さらに、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記ファイバ穴は、前記ファイバヘッドの先端位置から前記ブラシソケットの間に外部に通じるパージエア流路が設けられたことが望ましい。
【0018】
さらに、上記の回転電機のブラシ摩耗監視装置において、前記回転電機は超音波スピンドルとされ、前記光ファイバで検出した前記出力から前記超音波スピンドルの機能に対する異常の兆候を検出することが望ましい。
【0019】
また、本発明は、回転するスリップリングに給電ブラシを接触させて電力の受け渡しを行う回転電機において、前記給電ブラシが挿入され、観測穴を有する円筒形のブラシソケットと、前記観測穴を介して前記給電ブラシの近傍から反射する光の色、光量の変化を検出する光ファイバと、前記光ファイバで検出した出力から前記給電ブラシの摩耗限界を判定する手段と、を有するブラシ摩耗監視装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、給電ブラシが挿入される円筒形のブラシソケットに観測穴を設け、観測穴を介して給電ブラシの近傍から反射する光の色、光量の変化を光ファイバで検出し、給電ブラシの摩耗限界を判定するので、従来の回転電機に対して大きな変更を必要とせず、構成が簡単で高精度な回転電機のブラシ摩耗監視装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による超音波スピンドルの主要部を示す断面図
【
図2】一実施形態による超音波スピンドルの外観を示す斜視図
【
図3】
図1のAで示したブラシ部の拡大断面図(給電ブラシ1が新品状態)
【
図5】給電ブラシ1が使用可能状態のブラシ部の拡大断面図
【
図6】給電ブラシ1の寿命が来た状態のブラシ部の拡大断面図
【
図7】観測穴18、ファイバヘッド2-1、光ファイバ2を介して画像処理装置(図示せず)で得られた画像
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、一実施形態による超音波スピンドル(回転電機)の主要部を示す断面図、
図2は、外観を示す斜視図、
図3は、
図1のAで示したブラシ部の拡大断面図である。
図4はブラシ部の斜視図である。超音波スピンドルは、回転するスリップリング19に給電ブラシ1を接触させて電力の受け渡しを行う回転電機である。ブラシ摩耗監視装置は、給電ブラシ1の摩耗量を監視する。
【0023】
超音波スピンドルは、先端側に工具7を有する主軸3が超音波振動しながら回転する。主軸3は、加振部5、締め付けねじ12などを有している。主軸3は円柱状であり、外周は研磨加工され、先端側にチャック6が固定されている。主軸3の材質は、例えば軸受鋼、ステンレス鋼やチタン合金である。
【0024】
工具7は、チャック6に焼き嵌めにより固定して取り付けられるので、支持剛性が高く、高精度に固定することができバランス性も良い。工具7は、エンドミルなどが用いられるが、材質としては、超硬、コーティング超硬、焼結及び単結晶ダイヤモンド、研削砥石などが好適である。
【0025】
主軸3は、先端側が軸受10を介して、駆動側が軸受11を介してハウジング4に支持されている。軸受10と軸受11は、ハウジング4に保持固定されている。主軸3を回転する駆動装置8は、駆動軸8aが締め付けねじ12を介して軸線上に接続されている。駆動装置8は、高速回転用の装置であれば任意であるが、例えば高周波モータやACサーボモータなどが使用される。駆動装置8は、ハウジング4と係合するハウジング蓋9によって取り付けられている。
【0026】
加振部5は、主軸3を超音波振動させる。加振部5は、一対の圧電素子50と、電極板51を有する。
図1は、圧電素子50と電極板51とを交互にサンドイッチ構造とした複数枚ものからなっている。
【0027】
給電ブラシ1は、ハウジング蓋9に取り付けられ、超音波を発振するための超音波発振器(図示せず)が接続されている。ハウジング蓋9は、ハウジング4の一部とされていても良く、給電ブラシ1は、ハウジング4に設けても良い。超音波発振器(図示せず)は、給電ブラシ1から電極板51に給電を行い、圧電素子50を駆動させて、主軸3を超音波振動させる。圧電素子50への給電は、給電ブラシ1から電極板51から行い、主軸3、軸受10と軸受11、ハウジング4を介してアースされる。
【0028】
主軸3は、駆動装置8の駆動によって、高速で回転すると共に超音波発振装置からの給電により、電極板51を介して圧電素子50は軸方向、ねじれ方向あるいは曲げ方向に振動する。そして、主軸3の動きは工具7へ伝達される。
【0029】
光ファイバ2は、先端のファイバヘッド2-1が給電ブラシ1に直交するように、ハウジング蓋9に設けた超音波スピンドルの軸方向のファイバ穴9-1に取り付けられる。なお、
図2は、給電ブラシ1及び光ファイバ2を180°の位置関係で2組設けた例を示し、
図1では片側を省略している。
【0030】
光ファイバ2は、可視光線、赤外線などの光を投光部から発射する光電センサ(図示せず)、画像処理装置(図示せず)等に接続される。そして、光ファイバ2は、検出物体である給電ブラシ1近傍から反射する光の色、光量の変化を検出し、検出した出力を画像処理装置(図示せず)に入力する。
【0031】
給電ブラシ1は、円筒形のブラシソケット17に挿入される。ブラシソケット17は、ハウジング蓋9に設けたブラシ穴9-2に取り付けられる。ブラシソケット17の取り付けられる方向、ブラシ穴9-2の方向は、超音波スピンドルの軸と垂直方向となっている。給電ブラシ1の中心方向となる一端は、主軸3、電極板51と一体回転するスリップリング19に当接する。ブラシソケット17は、給電ブラシ1の外周方向となる他端近傍に観測穴18を有する。
【0032】
観測穴18は、光ファイバ2の方向へ空隙となっているので、光ファイバ2は、観測穴18を介して給電ブラシ1近傍から反射する光の色、光量の変化が検出できる。光ファイバ2は、先端のファイバヘッド2-1がファイバ穴9-1においてBの位置まで挿入される。
【0033】
ファイバ穴9-1は、ファイバヘッド2-1の先端位置であるBの位置からブラシソケット17の間に外部に通じるパージエア流路16が設けられる。パージエア流路16は、継手15を介して圧縮空気が供給される。パージエア流路16の位置は、ファイバヘッド2-1近傍が望ましく、圧縮空気を吹き付けて粉塵等を除去し、ファイバヘッド2-1をクリーニングすると共に、給電ブラシ1側の汚れも抑制できる。
【0034】
光ファイバ2は、例えば、中心のコアと屈折率の異なるクラッドから構成され、コアに光が入射すると、クラッドとの境界面で全反射を繰り返しながら光が進む。そして、光ファイバ2内を通ってファイバヘッド2-1から出た光が広がり、検出物体である給電ブラシ1近傍に照射される。
【0035】
コアはアクリル系の樹脂で0.1~1mm径の単一あるいは複数本で作られており、ポリエチレンなどで被覆されている。また、光ファイバ2は、外観上1本に見える反射型が好ましく、平行型、同軸型、分割型であれば良い。
【0036】
図5は、給電ブラシ1が使用可能状態のブラシ部の拡大断面図、
図6は、同様に給電ブラシ1の寿命が来た状態を示すブラシ部の拡大断面図である。
図3は、給電ブラシ1が新品の状態である。
図7は、観測穴18、ファイバヘッド2-1、光ファイバ2を介して画像処理装置(図示せず)で得られた画像の一例である。
図3は、給電ブラシ1が全く摩耗していない状態なので、例えば、給電ブラシ1の外周方向となる端部がCで示した位置にある。
【0037】
図5は、使用中であるので、給電ブラシ1はやや消耗して給電ブラシ1の外周方向となる端部Cが中心方向に寄っている。
図6は、給電ブラシ1が摩耗限界である寿命に達した状態であり、給電ブラシ1が観測穴18から観測されなくなっている。なお、給電ブラシ1は、常にスリップリング19方向へ、ブラシ加圧ばね(図示せず)等により押し付けられている。
【0038】
画像処理装置(図示せず)で得られる画像は、
図7で示すように、
図3の給電ブラシ1が新品であり全く摩耗していない状態が(a)、
図5の使用中の状態が(b)、
図6の寿命に達した状態が(c)のようになる。細かいハッチング部分は、給電ブラシ1であり、光ファイバ2、あるいはファイバヘッド2-1のピント面は、給電ブラシ1の反射面と一致させている。その他の粗いハッチング部分は、ブラシソケット17の内周等であり、光ファイバ2、あるいはファイバヘッド2-1の被写界深度から外れるように設定することが好ましい。
【0039】
ブラシ摩耗監視装置は、給電ブラシ1の各状態に基づいて給電ブラシ1の摩耗量を監視する。給電ブラシ1の各状態は、光ファイバ2で検出した出力から、単に給電ブラシ1の位置を求めるでは無く、その出力から摩耗限界を判定する手段によって行われる。例えば、摩耗限界の判定は、画像処理装置(図示せず)で得られた画像から色(RGB)、光量、ピント面等から給電ブラシ1の各状態の違いを求めて行われる。
【0040】
得られた給電ブラシ1の各状態の違いは、数値化して給電ブラシ1の摩耗限界値を求めることが好ましい。そして、画像処理装置(図示せず)は、摩耗限界値から給電ブラシ1の摩耗限界を判定し、その交換必要性を判定する。また、交換必要性は、画像、あるいは摩耗限界値と給電ブラシ1の実位置、あるいは使用実績等との相関から摩耗限界値を決定する。
【0041】
給電ブラシ1の摩耗は、給電ブラシ1がカーボンなどから形成されているので、避けることができない。しかし、画像に基づくブラシ摩耗監視装置は、給電ブラシ1がスリップリング19に十分接触しなくなり、超音波スピンドルの機能に対する異常の兆候を検出することができる。例えば、光ファイバ2による検出は、給電ブラシ1が観測穴18を通り過ぎることによる変化、あるいは領域内の材質・ピントなどの変化を感知できる。したがって、画像に基づくブラシ摩耗監視装置は、給電ブラシ1の状態を間接的に判定できる。
【0042】
特に、超音波スピンドルに画像に基づくブラシ摩耗監視装置を適用することは、主軸回転数が常用最大回転数15000min-1と大きいこと、40kHzの超音波振動を与えること、から単に給電ブラシ1の摩耗限界を検知するのでは無く、異常の兆候を検出できる点で有利となる。
【0043】
一実施形態によるブラシ摩耗監視装置は、給電ブラシ1に起因して付随して発生する超音波スピンドルの故障を未然に防ぐことが可能となる。また、給電ブラシ1の交換必要性は、給電ブラシ1の使用実績等に基づいて管理者へ報知されるので、給電ブラシ1の点検は、管理者が定期的に給電ブラシ1を外して目視確認することが不要となる。
【0044】
一実施形態によるブラシ摩耗監視装置は、従来の超音波スピンドルに対してハウジング蓋9のファイバ穴9-1、ブラシソケット17の観測穴18を設けるだけで良いので、光ファイバ2及び摩耗検出機能を後付で搭載することが容易となる。特に、ハウジング4及びそれと係合するハウジング蓋9は、従来の超音波スピンドルと形状的な違いは無い。
【0045】
そして、超音波スピンドルは、特に部品増設を必要としない。また、給電ブラシ1、ブラシソケット17は、摩耗検出機能の有無によって変える必要が無く同一形状で良い。したがって、従来の超音波スピンドルと互換性があり、給電ブラシ1の変更に伴うコスト上昇も無く、機能自体の同一性が保証される。
【0046】
さらに、光ファイバ2は、超音波スピンドルの軸方向へ取り付けられるので、縦横にはみ出すことも無く、省スペースであり、従来通りの使用が可能である。以上により、回転電極に用いる給電ブラシ1の摩耗限界(寿命)は、事前に検知され、煩わしい点検や予期せず寿命になった際のエラーを回避することが可能となる。また、一実施形態によるブラシ摩耗監視装置は、本機能を搭載していない従来の超音波スピンドルに対し、置き換えが容易である。
【符号の説明】
【0047】
1…給電ブラシ
2…光ファイバ
2-1…ファイバヘッド
3…主軸
4…ハウジング
5…加振部
6…チャック
7…工具
8…駆動装置
8a…駆動軸
9…ハウジング蓋
9-1…ファイバ穴
9-2…ブラシ穴
10、11…軸受
12…締め付けねじ
15…継手
16…パージエア流路
17…ブラシソケット
18…観測穴
19…スリップリング
50…圧電素子
51…電極板