(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】自動測定装置および自動測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/02 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G01B5/02
(21)【出願番号】P 2022103853
(22)【出願日】2022-06-28
(62)【分割の表示】P 2020093046の分割
【原出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】山地 政吏
(72)【発明者】
【氏名】盛本 秀之
(72)【発明者】
【氏名】空田 寿磨
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特許第2868751(JP,B1)
【文献】特開平1-177954(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109297379(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102135404(CN,A)
【文献】特開昭61-26801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
G01B 3/18-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定要素に対して変位可能に設けられていてワークに対して接離するように進退する可動要素と、前記可動要素の変位を検出する変位検出部と、を有する測定器と、
動力によって前記可動要素の進退を自動化する自動操作部と、を備え、
ワークの寸法を測定するための測定器を用いてワークを自動的に測定する自動測定装置であって、
前記自動操作部は、
前記可動要素と前記ワークとが接触するように前記可動要素を前進させ、
続いて、予め決められた分前記可動要素を後退させ、
その後、前記ワークと前記可動要素との間に所定の測定圧が発生するように前記可動要素を再前進させる
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動測定装置において、
当該自動測定装置は、
前記ワークと前記可動要素とが当接したときに前記測定器に予め設定された所定の測定圧以下の圧力で前記ワークと前記測定器とが相対的な位置および姿勢を変更して前記ワークと前記可動要素との互いの当接面が密接するように前記ワークおよび前記測定器の少なくとも一方を保持する保持部を備える
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の自動測定装置において、
前記測定器は、
元来は手動操作用であって手動回転操作または手動押引操作によって前記可動要素を進退させる操作部を有し、
前記自動操作部は、
前記操作部に着脱可能であって、前記操作部を動力によって操作して前記可動要素の進退を自動化する
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれかに記載の自動測定装置において、
前記自動操作部から前記可動要素に動力が伝達される経路中には、予め設定された負荷が前記可動要素にかかったときに前記可動要素から前記ワークに対して所定負荷以上の力が掛からないようにする定圧機構が設けられている
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項5】
固定要素に対して変位可能に設けられていてワークに対して接離するように進退する可動要素と、前記可動要素の変位を検出する変位検出部と、を有する測定器と、
動力によって前記可動要素の進退を自動化する自動操作部と、を備え、
ワークの寸法を測定するための測定器を用いてワークを自動的に測定する自動測定装置の制御方法であって、
第一の前進工程として、前記可動要素と前記ワークとが接触するように前記可動要素を前進させ、
続いて、第一の後退工程として、予め決められた分前記可動要素を後退させ、
その後、前記ワークと前記可動要素との間に所定の測定圧が発生するように前記可動要素を再前進させる
ことを特徴とする自動測定装置の制御方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の自動測定装置の制御方法において、
前記自動操作部から前記可動要素に動力が伝達される経路中には、予め設定された負荷が前記可動要素にかかったときに前記可動要素から前記ワークに対して所定負荷以上の力が掛からないようにする定圧機構が設けられ、
前記ワークと前記可動要素との間に所定の測定圧が発生するように前記可動要素を再前進させる工程は、
前記第一の後退工程で前記可動要素を後退させた分に相当する分前記可動要素を前進させる第二の前進工程と、
続けて、前記定圧機構が作動するように前記自動操作部から前記可動要素に向けて動力を作用させる測定面接触工程と、を有する
ことを特徴とする自動測定装置の制御方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の自動測定装置の制御方法において、
前記測定面接触工程の後に、再度、前記定圧機構が作動するように前記自動操作部から前記可動要素に向けて動力を作用させる測定圧印加工程を有する
ことを特徴とする自動測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの寸法を測定するための小型の測定器を用いてワークを自動的に測定する自動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの寸法を測定する測定器(測定工具)としてマイクロメータやノギスが知られている。これら接触式の測定器(測定工具)は、その使い易さ、測定の安定性、比較的安価である等の利点があり、広く利用されている。
ただ、ワークと可動要素(スピンドルや測定ジョー)とを適切に密着させ、さらに、常に同じ測定圧を掛けながら測定しなければならないため、どうしても人手による手動測定ということになる。そのため、このような接触式の測定工具による測定には人手と時間が掛かる。
【0003】
手動測定の代替手段として、生産現場において、エアマイクロメータやレーザースキャンマイクロメータ等の非接触式測定機器を用いるものが提案されている(特開平8-14871)。しかしながら、エアマイクロメータやレーザースキャンマイクロメータは、それ自体が極めて高価であり、また、メンテナンスがやや難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-89903
【文献】特開2019-100904
【文献】特開平8-14871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接触式測定を自動化するにあたって、これまでにもモータ動力を使用するような種々の提案はあるものの広く一般に普及するほど実用化に成功した事例はなかった(特開平10-89903)。
また、三次元測定機(CMM)等を利用すれば接触式測定の自動化はもちろんできるが(特開2019-100904)、数千万円から数億円の投資が必要なのであり、マイクロメータやノギスで行なっているような測定の代替に採用するのは妥当とは言えない。
【0006】
本発明の目的は、安価で使い勝手がよい接触式の測定器を自動化する自動測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動測定装置は、
ワークの寸法を測定するための測定器を用いてワークを自動的に測定する自動測定装置であって、
前記測定器と、
前記測定器を支持する測定器支持台部と、
前記ワークを前記測定器の測定領域内に保持するワーク保持台部と、
を具備し、
前記測定器は、
固定要素と、
前記固定要素に対して変位可能に設けられていて、前記ワークに対して接離するように進退する可動要素と、
前記可動要素の変位を検出する変位検出部と、
を有し、
前記測定器支持台部は、
前記測定器の前記固定要素を保持する測定器保持部と、
前記測定器に着脱可能であって、モータの動力によって前記可動要素の進退を自動化する自動操作部と、を有する
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持台部に保持された前記ワークと、
前記測定器保持部に保持された前記測定器と、の少なくとも一方は、
前記ワークと前記可動要素とが当接したときに、前記測定器に予め設定された所定測定圧以下の圧力でその位置および姿勢を変更して、前記ワークおよび前記可動要素の互いの当接面が密接するように保持されている
ことが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持台部は、前記ワークが載置されるワーク載置台である
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持台部は、前記ワークを把持するワーク把持手段を有し、
前記ワーク把持手段および前記測定器保持部のうち一方は他方に対する相対変位を許容するように設けられている
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記測定器は、
元来は手動操作用であって手動回転操作または手動押引操作によって前記可動要素を進退させる操作部を有し、
前記自動操作部は、
前記操作部に着脱可能であって、前記操作部をモータの動力によって操作して前記可動要素の進退を自動化する
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記測定器はマイクロメータであって、
前記マイクロメータは、
U字の一端の内側にアンビルを有する前記固定要素としてのU字形フレームと、
前記U字形フレームの他端側に設けられ、前記アンビルに対して軸方向進退可能に設けられた前記可動要素としてのスピンドルと、
を有し、
前記自動操作部は、
モータと、
前記モータの出力軸と前記スピンドルとを直接的または間接的に連結して前記モータの動力を前記スピンドルの進退に変換する動力伝達部と、を有する
ことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、
前記自動操作部は、前記モータの回転子の回転軸が前記スピンドルの中心軸と同一直線上となるように前記スピンドルの中心軸に直交する方向において位置変更できるように設けられている
ことが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態では、
前記マイクロメータは、
前記U字形フレームの他端側において前記スピンドルの他端に配置され、元来は指で回転操作するためのシンブルを有し、
前記動力伝達部は、
前記シンブルに外嵌する固着環と、
前記モータの回転子の回転軸と同期して回転ように設けられた回転板と、
前記スピンドルの中心軸と平行に配置され、かつ、一端が前記固着環に固定され、他端が前記回転板に固定されており、前記スピンドルの中心軸を回転の中心として回転して前記回転板の回転を前記固着環に伝える伝達リンク棒と、を備える
ことが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態では、
前記シンブルと前記スピンドルとの間には、
前記スピンドルに予め設定された負荷がかかったときに、前記シンブルと前記スピンドルとの係合を解除して前記シンブルを前記スピンドルに対して空転させる定圧機構が設けられている
ことが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態では、
前記自動操作部は、前記モータの回転を制御するモータ制御器を有し、
前記モータ制御器は、前記モータのトルク検知機能を有し、
前記モータ制御器は、
モータ回転数の制御モードとして、
高速回転である高速回転モードと、
前記高速回転モードの回転速さよりも低速である低速回転モードと、を有しており、
前記スピンドルを前進させる方向のモータ回転方向を順回転とし、
前記スピンドルを後退させる方向のモータ回転方向を逆回転とするとき、
前記モータ制御器は、
前記高速回転モードの順回転で前記スピンドルを前進させ、
前記トルク検知機能によって前記スピンドルと前記ワークとの当接を検知したとき、予め決められた第1回転数分だけ前記高速回転モードの逆回転で前記スピンドルを後退させ、
次に、前記第1回転数分だけ低速回転モードの順回転で前記スピンドルを前進させ、続けて、さらに予め決められた第2回転数分だけ低速回転モードの順回転で前記モータを駆動させ、
その後、予め決められた第3回転数分だけ前記高速回転モードの順回転で前記モータを駆動させる
ことが好ましい。
【0017】
本発明の自動測定システムは、
前記自動測定装置と、
前記ワークをピックアップして次々に前記ワーク保持台部に搬送するワーク搬送手段と、を備える
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の測定自動化装置は、
可動要素をワークに接触させてワークの寸法を測定するための測定器を自動化する測定自動化装置であって、
前記測定器を支持する測定器支持台部と、
前記ワークを前記測定器の測定領域内に保持するワーク保持台部と、を具備し、
前記測定器支持台部は、
前記測定器の固定要素を保持する測定器保持部と、
前記測定器に着脱可能であって、モータの動力によって前記可動要素の進退を自動化する自動操作部と、を有する
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】自動マイクロメータ装置による測定動作を説明するためのフローチャート。
【
図4】自動マイクロメータ装置による測定動作を説明するためのフローチャート。
【
図5】スピンドルが前進する様子を例示する図である。
【
図6】スピンドルとアンビルとでワークを挟んだ状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、自動測定システム100の全体構成図である。
例えば、工作機械(例えばNC旋盤)で加工されたワークW(例えば部品)がベルトコンベア110で運ばれてくる。
ワークWは、前処理用のストッカー120に移される。前処理として、例えば、エアブローによって脱油や脱塵を施してもよい。前処理されたワークWは、例えばロボットアーム130によって自動測定装置200の測定領域内に運ばれる。ロボットアーム130は、例えば多関節型のロボットアーム130であって、その先端にワークWを把持するためのロボットハンド140と、画像認識用のカメラ150と、を有する。
ロボットアーム130は、画像認識によってワークWを認識し、ロボットハンド140でワークWを掴み、ワークWを自動測定装置200の測定領域に運ぶ。ここでは、ロボットハンド140は、ワークWの向き(姿勢)を予め設定された向き(姿勢)にして測定領域に置き、一旦ワークWを離すとする。
【0021】
なお、より簡易なシステムとしては、ワークWのピックアップや運搬を人が手動で行なってもよい。
【0022】
このように測定領域に運ばれてきたワークWは自動測定装置200によってその寸法が測定される。
自動測定装置200は、小型の測定器(小型の測定工具)としてのマイクロメータ300を自動化した自動測定装置200である。
本実施形態の自動測定装置200を、自動マイクロメータ装置200と称することにする。
図2は、自動マイクロメータ装置200の外観図である。
自動マイクロメータ装置200は、マイクロメータ300と、測定器支持台部400と、ワーク保持台部460と、を備えている。
【0023】
マイクロメータ300は、元来、手動で操作する小型の測定器であり、本実施形態のマイクロメータ300としては、現在市販されているマイクロメータ300を利用すればよい。
簡単にマイクロメータ300の構成を説明しておく。
マイクロメータ300は、U字形フレーム(固定要素)310と、スピンドル(可動要素)330と、シンブル部340と、変位検出部350と、を有する。
【0024】
U字形フレーム310は、U字の一端の内側にアンビル320を有する。
スピンドル330は、U字形フレーム310の他端側に設けられ、アンビル320に対して軸方向進退可能に設けられている。
スピンドル330の一端側端面には、ワークWに当接するための測定面が設けられている。同じく、アンビル320の他端側端面にもワークWに当接するための測定面が設けられている。測定面は、平坦面に加工され、例えば、超硬合金材やセラミックで形成されている。
スピンドル330は、シンブル部340の回転操作によって軸方向進退するように送り移動されるものである。
【0025】
なお、スピンドル330の送り方式としては、スピンドル330自体が回転する回転送り式と、スピンドル330自体は回転しない直動送り式と、がある。
回転送り式では、スピンドル330自体に雄ネジを設けておいて、U字形フレーム310側に雌ネジを設けておく。シンブルとスピンドル330とが一体回転するように両者を係合させておき、シンブルの回転操作によってスピンドル330を回転させる。すると、スピンドル330がネジ送りによって進退する。
直動送り式では、シンブル340の内側に送りネジを切っておいて、スピンドル330には前記送りネジに係合するピンを設けておく。スピンドル330を回り止めした状態でシンブル340を回転させると、ピンと送りネジとの係合によってスピンドル330が送られる。
本実施形態に採用するマイクロメータ300のタイプとしては、回転送り式でも直動送り式でもよい。
【0026】
シンブル部340は、U字形フレーム310の他端側においてスピンドル330の他端に配置されている。
シンブル部340は、回転操作によってスピンドル330を進退させる操作部である。
ここで、本実施形態に採用するマイクロメータ300としては、シンブル部340とスピンドル330との間に定圧機構を有するタイプが好ましい。
定圧機構は、予め設定された負荷がスピンドル330にかかったときに、シンブルとスピンドル330との係合を解除してシンブルをスピンドル330に対して空転させるものである。
測定時に定圧機構を常に同じように適正に作動させることにより測定時の測定圧を一定にし、測定精度(繰り返し精度)を高く保つことができる。
定圧機構は市販のマイクロメータ300にも組み込まれており、例えば、特許3115555、特許3724995、特許5426459、特許5270223にも開示されている。定圧機構としては、シンブルとスピンドル330との間に所定負荷以上の力が掛かったときに滑りが生じるようにしたラチェット機構や、シンブルの外スリーブと内スリーブとの間に所定負荷以上で滑りが生じるように介装した板バネ等で構成できる。
【0027】
さらに、本実施形態に採用するマイクロメータ300としては、スピンドル330にかかる負荷を検出する測定圧検出機構を有することが好ましい。
例えば、特許3751540、特許4806545、特開2019-190916に測定圧検出機構が開示されている。
測定圧検出機構としては、歪みゲージ等でスピンドル330にかかる負荷を直接または間接的に検出してもよいし、前記定圧機構が作動したことでスピンドル330に掛かる負荷が所定値になったことを検出するようにしてもよい。測定圧検出機構は、所定測定圧を検出したときには信号(測定圧信号)を出力する。例えば、変位検出部350は、測定圧検出機構で所定測定圧が検出されたことを受けて、測定値(変位量)のサンプリング(ラッチ)を行なう。
【0028】
変位検出部350は、スピンドル330の変位量(あるいは位置)を検出する。変位検出部350は、ロータリエンコーダやリニアエンコーダによって構成される。
【0029】
なお、変位検出部350としては、エンコーダではなく、アナログ式(目盛式)でもよい。この場合、自動化するにあたっては、目盛をデジタルカメラ等で読み取って、画像解析(画像認識)で測定値を読み取るようにしてもよい。
この場合、アナログ式目盛、デジタルカメラおよび画像認識部(画像解析部)によって変位検出部が構成されているとしてもよい。
【0030】
さらに、U字形フレーム310のおもて面には測定値を表示する表示パネル部311や操作用のスイッチが設けられている。また、U字形フレーム310内に内蔵された電気回路部の機能として、有線または無線通信で測定値を外部出力する測定値出力機能が搭載されている。
【0031】
次に、測定器支持台部400を説明する。
測定器支持台部400は、基枠体410と、測定器保持部420と、自動操作部440と、を有する。
【0032】
基枠体410は、全体的には矩形の枠体である。
説明のために
図2中に示すように互いに直交するXYZの座標軸をとる。
基枠体410を構成する4辺のうち、X軸方向に平行な二辺を第1長辺部411と第2長辺部412とし、Y軸方向に平行な二辺を第1短辺部413と第2短辺部414とする。
【0033】
第1、第2長辺部411、412および第1、第2短辺部413、414は、例えば、長さを調整できるように伸縮可能になっているとよい。これにより、マイクロメータ300やワークWのサイズに応じて基枠体410の大きさを調整できる。
【0034】
第1長辺部411には測定器保持部420が設置され、第2短辺部414には自動操作部440が設置され、第2長辺部412にはワーク保持台部460が設置される。
このとき、測定器保持部420の設置位置をX軸方向に沿って調整できるように第1長辺部411はレールを有している。同じく、自動操作部440の設置位置をY軸方向に沿って調整できるように第2短辺部414はレールを有している。ワーク保持台部460の設置位置をX軸方向に沿って調整できるように第2長辺部412はレールを有している。
【0035】
測定器保持部420は、第1長辺部411に固定的に取り付けられている。
測定器保持部420は、押え板である。
押え板は、マイクロメータ300(測定器)を基枠体410に取り付けるように第1長辺部411と押え板との間にマイクロメータ(測定器)300のU字形フレーム(固定要素)310を挟み込む。マイクロメータ300の向きとしては、スピンドル330の進退方向(軸方向)がX軸と平行、U字形フレーム310の一端側(アンビル320側)が第1短辺部413側、U字形フレーム310の他端側(シンブル側)が第2短辺部414側、であるとする。
【0036】
自動操作部440は、モータ442の動力によってスピンドル330(可動要素)の進退を自動制御する。
自動操作部440は、モータハウジング441と、モータ442と、動力伝達部450と、モータ制御器443と、を備える。
【0037】
モータハウジング441は、モータ442とモータ制御器443とを収納している。
モータハウジング441は、マイクロメータ300のスピンドル330(あるいはシンブル部340)の中心線の延長線上に配置されている。つまり、自動操作部440は、モータ442の回転子の回転軸がスピンドル330(あるいはシンブル部340)の中心軸と同一直線上となるように設置されている。必要に応じて、モータハウジング441の位置を第2短辺部414のレールに沿って移動させて位置を調整するとよい。
【0038】
モータ442としては、回転子の回転を出力軸に取り出す通常の電動モータでよい。
ただし、モータ442は、制御パルスで正回転および逆回転の回転角(回転数)をある程度制御できることが好ましい。また、モータ442は、トルク検出機能を有していることが好ましい。(モータ442のトルク検出自体は、例えば印加電流(印加電圧)の増減からトルクを求めるなど種々の方式が知られている。)モータ442としては、例えばステッピングモータを採用できる。(もちろんサーボモータや同期モータでもよいのであってモータ442の構造や駆動方式は特段限定されない。)
【0039】
動力伝達部450は、シンブル部340に外嵌する固着環451と、モータ442の回転子の回転軸と同期して回転するように設けられた回転板452と、固着環451と回転板452とを繋ぐ伝達リンク棒453と、を備える。
伝達リンク棒453は、その一端が固着環451に固定され、他端が回転板452に固定されている。伝達リンク棒453は、スピンドル330の中心軸と平行である。回転板452がモータ442によって回転すると、その回転は伝達リンク棒453によって固着環451に伝達され、固着環451が回転板452と同期して回転する。
【0040】
モータ制御器443は、モータ442の回転駆動を制御して、スピンドル330の進退を制御する。モータ制御器443によるモータ442制御については後述する。
【0041】
次に、ワーク保持台部460を説明する。
ワーク保持台部460は、マイクロメータ300(測定器)の測定領域に測定対象であるワークWを保持する。
ワーク保持台部460は、支持支柱461と、ワーク載置板462と、を有する。
支持支柱461は、第1長辺部411に取り付けられている。
ワーク載置板462は、XY面に平行な面を有するL形の板体であって、支持支柱461に固定されている。ワーク保持台部460で保持したワークWがマイクロメータ(測定器)300の測定領域に入るように、支持支柱461の位置を第2長辺部412に沿って調整し、さらに、ワークWの測定対象箇所(測定対象部位)がアンビル320とスピンドル330とに挟まれるようにワーク載置板462の高さ(Z軸方向位置)を調整するとよい。
【0042】
ワーク載置板462のワークWを載せる面は、平坦面であるからこの載置面に載せられて保持されているワークWはスピンドル330から押されると容易にその位置および姿勢を変更する。つまり、ワークWにスピンドル330が当たると、ワークWはアンビル320側に向けて押され、載置面上を滑ってアンビル320に当たるところまで移動する。そして、ワークWがアンビル320と当たるとワークWの移動は規制されるから、ワークWはアンビル320とスピンドル330とで挟み込まれる。このとき、アンビル320の測定面とワークWの接触面とが密着し、かつ、スピンドル330の測定面とワークWの接触面とが密着するようにワークWはその姿勢を変更する。このようにワークWが固定されず、載置面上である程度は動きを許容されるようになっていることで、アンビル320とスピンドル330とでワークWの測定対象部位を隙間無くピッタリ挟み込むことができるようになっている。
【0043】
ワーク載置板462のワークW載置面は、摩擦が小さすぎると、ロボットハンド140や人の手でワークWを載置したときにワークWが滑って落下したり、載置したときの向きや姿勢からずれてしまったりすることが懸念されるので、ワークWとの間にある程度の摩擦を生むように凹凸加工されているとよい。ワークWが載置面に載った状態において、設定された測定圧以下の力(例えば1N~5N程度)がワークWに作用したとき、ワークWがその位置および姿勢を変えられるようになっているとよい。
【0044】
(動作説明)
自動マイクロメータ装置200の動作を説明する。
図3、
図4は、自動マイクロメータ装置200による測定動作を説明するためのフローチャートである。
ロボットアーム130によってワークWがワーク載置板462にセットされたことを検知すると(ST110:YES)、モータ制御器443は、予め設定された(プログラムされた)モータ駆動制御を実行する。
まず、モータ制御器443は、モータ442を比較的高速で順回転させてスピンドル330をアンビル320に向けて前進させる(ST120)。このときのモータ442の回転速さは、例えば、180rpmである。(あるいは100rpm~200rpm程度である。)
例えば
図5は、スピンドル330が前進する様子を例示する図である。
【0045】
ST120では、測定時間を短縮するという観点ではできる限り回転速度を高くするのがよいと考えられる。ただし、回転速度を高くしすぎると、スピンドル330がワークWに当たったときにワークWを損傷する恐れがある。また、回転速度を高くしすぎると動力伝達部450に生じる遠心力が高くなり、モータトルクが大きくなる。すると、トルクの大きさでスピンドル330(アンビル320)とワークWとの接触を検知するという構成の都合上、トルク検出機能がスピンドル330(アンビル320)とワークWとの接触を誤検出するという問題もある。したがって、スピンドル330とワークWに当たったことを検知するためのトルク閾値をまずは設定しておいて、このトルク閾値を超えない速さでモータを回転させるのがよいと考えられる。
【0046】
スピンドル330がアンビル320に向かって前進していくと、スピンドル330がワークWに当たる。ワークWはワーク載置板462に載った状態で固定されているわけではないので、そのままスピンドル330に押されて移動し、ワークWがアンビル320に接触する。
図6は、アンビル320とスピンドル330とでワークWを挟んだ状態を例示した図である。
アンビル320とスピンドル330とでワークWを挟んだ瞬間、モータトルクが増大し、トルク検出機能によりモータ制御器443はスピンドル330がワークWに接触したこと、言い換えると、アンビル320とスピンドル330とがワークWに接触したことを検知する(ST130:YES)。
【0047】
モータ制御器443は、スピンドル330がワークWに接触したことを検知したら、即座にモータ442を比較的高速で所定回転数だけ逆回転させてスピンドル330を後退させる(ST140)。
逆回転の回転速さは例えば180rpmである。また、逆回転の回転数は例えば0.5回転である。なお、この回転速さ(180rpm)は例示であって、前進時(ST120)の回転速さと逆転時の回転速さ(ST140)とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
ここでは、「停止」や「減速」ではなく、比較的高速の逆回転でスピンドル330を一旦後退させるのがよい。
第1の理由としては、スピンドル330がワークWに食い込むのを確実に回避するためである。単なる停止よりも一旦後退させる制御信号を送った方が食い込みを確実に回避できる。また、測定圧を発生させる際に定圧機構を作動させることになるが、スピンドル330を常に同じ速度で前進させながら定圧機構を作動させるためには、スピンドル330の作動距離を確保しておく必要がある。そこで、ワークWに測定圧を掛ける動作を常に同じにできるように、一旦スピンドル330をステップバックさせておくとよいと考えるのである。
【0049】
次に、比較的低速でモータ442を順回転させてスピンドル330をアンビル320に向けて前進させる(ST150、ST160)。
低速前進工程(ST150)として、比較的低速でモータ442を順回転させる。その回転数は、先に後退(ST140)した分と同じだけの回転数である。ここでは、例えば、9rpmで0.5回転とする。これでワークWをゆっくりと押しながらワークWとアンビル320との接触およびワークWとスピンドル330との接触を確実にする。
【0050】
続けて、測定面接触工程(ST160)として、比較的低速でモータ442を順回転させる(ST160)。その回転数は、例えば、ワークWがアンビル320とスピンドル330に接触してから定圧機構が作動するまでに相当するシンブル回転量(スピンドル330回転量)に相当するものとする。ここでは、例えば、9rpmで0.5回転とする。(これはST150と同じであるが、回転速度や回転数は適宜変更してもよい。)
ここで、一度、ゆっくりと定圧機構を作動させることにより、ワークWとアンビル320との接触面、および、ワークWとスピンドル330との接触面を確実になじませる(密接させる)。
【0051】
いま、この状態でアンビル320とスピンドル330との間にワークWをしっかりと挟んでいる。そこで、測定圧印加工程(ST170)として、比較的高速でモータ442を順方向に回転駆動させる。例えば、180rpmで3回転させる。このとき定圧機構が再度作動し、所定の測定圧がかかる。
【0052】
なお、本ステップ(ST170)のモータ回転速さはもっと高速にしてもよい(例えば、150rpm-250rpm)。前ステップ(ST160)でなじませが完了しており、スピンドル330(アンビル320)とワークWとの接触面がしっかりなじんでいる。したがって、スピンドル330(アンビル320)とワークWとの食い込みは発生しにくいと考えられる。
また、スピンドル330(アンビル320)とワークWとはすでに接触しているのであるから、トルク検出機能でスピンドル330(アンビル320)とワークWとの接触を誤検出するというような制限はない。
また、本ステップ(ST170)の回転数は、定圧機構を作動させるのに必要な回転数であり、1.5回転~3.5回転程度でよく、これは使用するマイクロメータの(定圧機構の)仕様にもよる。
【0053】
マイクロメータ300は、測定圧印加工程(ST170)で定圧機構が作動した瞬間に測定値をサンプリングする(ST180)。サンプリングした測定値(測定データ)は、有線あるいは無線通信で外部出力され(ST190)、測定データは外部のPC(パソコン)やデータ処理装置で収集され処理される。
【0054】
ここまでで1つの測定値を取得できたので、モータ制御器443はモータ442を比較的高速で逆回転させて、スピンドル330を後退させる。この測定動作をワークWを交換しながら続ける。
【0055】
このような本実施形態の自動測定システム100によれば、ワークWの測定作業がほぼ自動化される。
本実施形態の自動マイクロメータ装置200は、接触式の小型の測定器(小型の測定工具)であるマイクロメータ300を自動化するものである。マイクロメータ300は一般的な工場には既にあると期待できるものなので、測定器支持台部400と、ワーク保持台部460と、自動操作部440と、を用意するだけでマイクロメータ300の自動化を実現できる。すなわち、自動測定の導入に要する費用を極めて低廉にすることができ、人手不足の解消に資するところ大である。
【0056】
マイクロメータ300は接触式であるので、測定安定性が極めて高い。また、マイクロメータ300の歴史は長く、世の中にも広く普及しており、測定作業者にとって最も馴染みがある測定器といってよい。したがって、作業者はマイクロメータ300の校正作業など必要な取り扱いに十分に習熟しており、改めて難しい作業手順を覚えたり、訓練したりする必要はほぼないのである。
【0057】
これまでにも自動測定装置は種々提案されてきたが、その多くは非接触式の測定工具を用いるものであった。例えば、エアマイクロメータやレーザースキャンマイクロメータ等を用いるものが多かった。しかし、このような非接触式測定機器は極めて高価であり、また、メンテナンスがやや難しい。この点、マイクロメータ300を自動化できる本実施形態の自動マイクロメータ装置200は安価でかつ扱いやすいという利点がある。
【0058】
これまで接触式の小型の測定器(小型の測定工具)の代表であるマイクロメータ300の自動化が難しかった理由の1つは、ワークWを両側から正しく挟んで接触面(測定面)をなじませることが難しかった点にある。
この点、本実施形態では、ワークWとマイクロメータ300とは相対位置を固定せず、測定圧以下の力で位置および姿勢を変更できるようにしている。
また、マイクロメータ300に備わっている定圧機構とモータ442に備わっているトルク検出機構とを総合的に利用し、スピンドル330の前進と後退を数段階で行ない、特に、測定面(接触面)をしっかりなじませる(密着させる)工程(ST160)と、所定の測定圧を掛ける工程(ST170)と、を行なっている。
通常、手動でシンブルを回転させる際は、一定の速さで回転させて、そのまま一定の回転で定圧をかけて測定するものであり、バックしたり、定圧機構をゆっくりと高速との二段階で作動させたりするようなことはないが、条件を変えた繰り返しの実験により手動操作とは違う制御工程を工夫したことで自動測定でも安定した測定値を得られるようになった。
これによりマイクロメータ300の自動化が実現できた。また、モータ制御によって常に同じ動きでワークWを測定することができるようになるので、作業者ごとの習熟度や動きの癖で測定値に差が生じるような問題も解消されることとなった。
【0059】
本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態ではワークWをワーク載置板462に載置するとしたが、ワークWがグリップ(把持)されていてもよい。この場合、ワーク把持手段が例えば平行板バネのような平行移動を許容するフローティング継手を介してワーク保持台部460に取り付けられて支持されていてもよい。あるいは、ワーク把持手段がロボットアームであってもよい。(この場合、ワーク把持手段であるロボットアームまたはロボットハンドが例えば平行板バネのような平行移動を許容するフローティング継手を有していてもよい。)
もちろん、測定器支持台部400の方が平行移動を許容するようになっていてもよいのであり、この場合、測定器保持部420の方がフローティング継手を介して基枠体410に取り付けられていてもよい。
許容すべき平行移動方向は、少なくとも、スピンドル330の進退方向(スピンドル330の軸方向)と平行な方向である。
スピンドル(アンビル)とワークとの接触面がなじむためにわずかに回転の自由度も必要になるような場合には、回転軸を持たせてもよいし、例えば板バネの弾性等で向き(姿勢)の変更を許容するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態の動作例としては、ワークWを測定する動作を例にしたが、基点の設定や、ゲージブロックを使用した校正も同じ動作で行えることはもちろんである。
【符号の説明】
【0061】
100…自動測定システム、110…ベルトコンベア、120…ストッカー、130…多関節型のロボットアーム、140…ロボットハンド、150…カメラ、200…自動マイクロメータ装置(自動測定装置)、300…マイクロメータ(測定器)、310…U字形フレーム(固定要素)、320…アンビル、330…スピンドル(可動要素)、340…シンブル部、350…変位検出部、400…測定器支持台部、410…基枠体、411…第1長辺部、412…第2長辺部、413…第1短辺部、414…第2短辺部、420…測定器保持部、440…自動操作部、441…モータハウジング、442…モータ、443…モータ制御器、450…動力伝達部、451…固着環、452…回転板、453…伝達リンク棒、460…ワーク保持台部、461…支持支柱、462…ワーク載置板。