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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】板厚の測定装置及び板厚の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/06 20060101AFI20240501BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01B5/06
B23Q17/20 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023124671
(22)【出願日】2023-07-31
(62)【分割の表示】P 2022154426の分割
【原出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2023129725
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】戸ヶ崎 満俊
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-30044(JP,A)
【文献】特表平11-504120(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135390(WO,A1)
【文献】実開昭58-148614(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/06
B23Q 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの一方向の側面に向かい合って接触する一対のコンタクトを有する一対のセンサを備え、
前記ワークの傾斜角度と、前記一対のセンサにより測定点で測定した測定値、及び前記測定点における前記一対のコンクタクトの接触位置の違いに起因する前記一方向の誤差に基づいて算出する前記測定点での前記ワークの厚さと、に基づいて、前記ワークの真の厚さを算出する、ことを特徴とする板厚の測定装置。
【請求項2】
前記傾斜角度は、前記一対のセンサによって測定される前記ワークにおける異なる少なくとも2つの測定点の内の2つの測定点間の前記一方向に交差する他方向の距離と、前記一対のセンサの内のいずれかの1つのセンサによる前記2つの測定点での前記一方向における差分に相当する押し込み量とに基づいて算出する、ことを特徴とする、請求項1に記載の板厚の測定装置。
【請求項3】
前記一対のセンサを前記他方向に移動させて、前記異なる少なくとも2つの測定点で前記ワークの厚さを測定する、ことを特徴とする請求項2に記載の板厚の測定装置。
【請求項4】
前記他方向の距離を置いて固定された2組の前記一対のセンサを備え、
2組の前記一対のセンサにより前記異なる少なくとも2つの測定点で前記ワークの厚さを測定する、ことを特徴とする請求項2に記載の板厚の測定装置。
【請求項5】
ワークの一方向の側面に向かい合って接触する一対のコンタクトを有する一対のセンサを備える板厚の測定装置に適用される板厚の測定方法であって、
前記ワークの傾斜角度と、前記一対のセンサにより測定点で測定した測定値、及び前記測定点における前記一対のコンクタクトの接触位置の違いに起因する前記一方向の誤差に基づいて算出する前記測定点での前記ワークの厚さと、に基づいて、前記ワークの真の厚さを算出する、ことを特徴とする板厚の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械により加工された部品の厚さを高精度に測定することができる板厚の測定装置及び板厚の測定方法に係り、特に金属部品の加工を行う刃物工具を自動的に交換して加工を行うマシニングセンタ等の工作機械に組み込まれ、加工された部品の厚さを高精度に測定する板厚の測定装置及び板厚の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の工作機械は、例えば、フライス・エンドミル・ドリル・中ぐり・タップ等を行う刃物工具を自動的に交換し、部品加工を行うマシニングセンタが採用され、このマシニングセンタにおいては加工過程において加工精度を確認するために加工部品の寸法、例えば幅や厚みを高精度に測定する必要があり、この加工部品の厚さを測定する技術が記載された文献としては下記の特許文献1が挙げられる。
【0003】
この特許文献1には、工作機械の主軸に選択的に取り付けられる交換式工具のテーパーシャンクと同形状のテーパーシャンクと、このテーパーシャンクに設けられ、その先端の超音波プローブを工作物Wの表面に接触させながら超音波を発信し、その反響音波を検知して工作物Wの厚さを計測する超音波板厚計測部を具備し、薄板等の工作物の板厚を精度良く計測する超音波板厚計測装置技術が記載されている。
【0004】
また、加工部品の外形に接して加工部品の外形状を測定するタッチプローブが記載された文献としては下記の特許文献2及び特許文献3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-75584号公報
【文献】特開2011-136390号公報
【文献】特開2010-71775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載された技術は、工作物の表面に接触しながら超音波を発信し、その反響音波を検知して工作物の厚さを計測する超音波プローブを使用しているため、厚さ計測時に超音波プローブと工作物の表面との間における接触状態を向上させる接触媒質を使用しなければならないと共に、反響音波を検知して工作物の厚さを計測するため、テーブル上に搭載したワークの平面方向の寸法である厚さ(幅ともいう)を測定できないという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術は、1本のタッチプローブを用いて加工部品の外形状を測定する効果に留まり、特許文献3に記載された技術は、2本のタッチプローブ接触子が略同時に駒に圧接及び当接して同時に位置補正及び確認することができる効果に留まる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、工作機械に組み込まれ、加工された部品の厚さや隙間を高精度に測定することができる板厚の測定装置及び板厚の測定方法を提供することを目的とし、特にワークが斜めに設置された場合であっても加工された部品の厚さや隙間を高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0010】
[1] ワークの一方向の側面に向かい合って接触する一対のコンタクトを有する一対のセンサを備え、上記ワークの傾斜角度と、上記一対のセンサにより測定点で測定した測定値、及び上記測定点における上記一対のコンクタクトの接触位置の違いに起因する上記一方向の誤差に基づいて算出する上記測定点での上記ワークの厚さと、に基づいて、上記ワークの真の厚さを算出する、ことを特徴とする板厚の測定装置。
[2] 上記傾斜角度は、上記一対のセンサによって測定される上記ワークにおける異なる少なくとも2つの測定点の内の2つの測定点間の上記一方向に交差する他方向の距離と、上記一対のセンサの内のいずれかの1つのセンサによる上記2つの測定点での上記一方向における差分に相当する押し込み量とに基づいて算出する、ことを特徴とする、[1]に記載の板厚の測定装置。
[3] 上記一対のセンサを上記他方向に移動させて、上記異なる少なくとも2つの測定点で上記ワークの厚さを測定する、ことを特徴とする[2]に記載の板厚の測定装置。
[4] 上記他方向の距離を置いて固定された2組の上記一対のセンサを備え、2組の上記一対のセンサにより上記異なる少なくとも2つの測定点で上記ワークの厚さを測定する、ことを特徴とする[2]に記載の板厚の測定装置。
[5] ワークの一方向の側面に向かい合って接触する一対のコンタクトを有する一対のセンサを備える板厚の測定装置に適用される板厚の測定方法であって、上記ワークの傾斜角度と、上記一対のセンサにより測定点で測定した測定値、及び上記測定点における上記一対のコンクタクトの接触位置の違いに起因する上記一方向の誤差に基づいて算出する上記測定点での上記ワークの厚さと、に基づいて、上記ワークの真の厚さを算出する、ことを特徴とする板厚の測定方法。
【0011】
本発明の他の構成は以下のとおりである。
【0012】
[1] ワークのX方向の側面に向かい合って接触する一対のコンタクトを有する一対のセンサを備え、上記一対のセンサによって上記X方向に交差するY方向の上記ワークの異なる少なくとも2つの測定点で上記ワークの厚さを測定し、上記ワークの傾斜角度と、上記一対のセンサで測定した測定値、及び上記一対のコンクタクトの接触位置の違いに起因する上記X方向の誤差に基づいて算出する上記異なる少なくとも2つの測定点の内の1つの測定点での上記ワークの厚さと、に基づいて算出する値を上記ワークの真の厚さとする、ことを特徴とする板厚の測定装置。
[2] 上記傾斜角度は、上記異なる少なくとも2つの測定点の内の2つの測定点間の上記Y方向の距離と、上記一対のセンサの内のいずれかの1つのセンサによる上記2つの測定点での上記X方向における差分に相当する押し込み量とに基づいて算出する、ことを特徴とする、[1]に記載の板厚の測定装置。
[3] 上記一対のセンサを上記Y方向に移動させて、上記異なる少なくとも2つの測定点で上記ワークの厚さを測定する、ことを特徴とする[1]又は[2]に記載の板厚の測定装置。
[4] 上記Y方向の距離を置いて固定された2組の上記一対のセンサを備え、2組の上記一対のセンサにより上記異なる少なくとも2つの測定点で上記ワークの厚さを測定する、ことを特徴とする[2]に記載の板厚の測定装置。
[5] 上記測定点を上記Y方向の3箇所以上とすることを特徴とする[1]に記載の板厚の測定装置。
[6] ワークのX方向の側面に向かい合って接触する一対のコンタクトを有する一対のセンサを備える板厚の測定装置に適用される板厚の測定方法であって、上記一対のセンサによって上記X方向に交差するY方向の上記ワークの異なる少なくとも2つの測定点で上記ワークの厚さを測定し、上記ワークの傾斜角度と、上記一対のセンサで測定した測定値、及び上記一対のコンクタクトの接触位置の違いに起因する上記X方向の誤差に基づいて算出する上記異なる少なくとも2つの測定点の内の1つの測定点での上記ワークの厚さと、に基づいて算出する値を上記ワークの真の厚さとする、ことを特徴とする板厚の測定方法。
【0013】
上記目的を達成する本発明の他の形態は、所定の押圧力でワークの厚さ方向の側面に向かい合って接触する一対のセンサによって前記ワークの厚さを測定する板厚の測定装置において、前記一対のセンサを上下及び測定方向である厚さ方向に移動する測定装置と、前記ワークの長手方向に異なる少なくとも二つの測定点に前記一対のセンサを移動するXYテーブルと、を備え、前記一対のセンサによって測定した測定点での厚さと、前記二つの測定点間の距離と、いずれかの前記センサによる前記二つの測定点での測定方向における差分と、に基づいて真の厚さとするものである。
【0014】
また、上記において、前記測定点での厚さをC、前記二つの測定点間の距離をb-a、いずれかの前記センサによる前記二つの測定点での測定方向における差分を押し込み量Sとして、θ=tan-1(S/b-a)、を求め、真の厚さt=C・(cosθ)とすることが望ましい。
【0015】
さらに、上記において、前記ワークの測定基準となる概算厚みを5~15mmとし、前記二つの測定点間の距離を5~15mmすることが望ましい。
【0016】
さらに、上記において、前記XYテーブルで前記ワークの長手方向に異なる少なくとも二つの測定点に前記一対のセンサを移動することに代えて、前記測定装置に2組の前記一対のセンサを前記長手方向に所定間隔で固定し、該所定間隔を前記二つの測定点間の距離とすることが望ましい。
【0017】
さらに、上記において、前記一対のセンサの前記ワークと接触するコンタクトの半径をrとし、前記一対のセンサによって測定される測定値D、前記コンクタクトの接触位置の違いによる位置ずれによる誤差をx、前記測定点での厚さをC、前記二つの測定点間の距離をb-a、いずれかの前記センサによる前記二つの測定点での測定方向における差分を押し込み量Sとして、
θ=tan-1(S/b-a)、
x=r・((1/cosθ)-1)、
C=D-2・x、を求め、
真の厚さt=C・(cosθ)とすることが望ましい。
【0018】
さらに、上記において、前記ワークの測定基準となる概算厚みを5~15mm、前記二つの測定点間の距離を5~15mmとし、前記コンタクトの半径rを4~8mmとすることが望ましい。
【0019】
さらに、上記において、前記XYテーブルで前記ワークの長手方向に異なる少なくとも二つの測定点に前記一対のセンサを移動することに代えて、前記測定点を上下方向に異なる少なくとも二つの測定点に前記一対のセンサを移動することとしたことが望ましい。
【0020】
また、本発明は、所定の押圧力でワークの厚さ方向の側面に向かい合って接触する一対のセンサによって前記ワークの厚さを測定する板厚の測定方法であって、前記ワークの長手方向に異なる少なくとも二つの測定点に前記一対のセンサを移動し、前記一対のセンサによって測定した測定点での厚さと、前記二つの測定点間の距離と、いずれかの前記センサによる前記二つの測定点での測定方向における差分と、に基づいて真の厚さとすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明による板厚の測定装置及び板厚の測定方法は、測定対象のワークが斜めに設置された場合であっても加工された部品の厚さや隙間を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例による板厚の測定装置の全体構造及び動作を説明するための図
図2】本発明の実施例による板厚の測定装置の測定部を示す平面図
図3】本実施例による測定部の詳細を示す平面図
図4】他の実施例である板厚の測定装置を示す平面図
図5】さらに、他の実施例である板厚の測定装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による厚さ測定方法を適用した厚さ測定部を備えた工作機械の一実施例を説明する。
【0024】
[構成]
本実施例による厚さ測定部が適用された工作機械100は、図1(a)に示す如く、XY平面方向に稼働するXYテーブル20上に搭載した平板形状のワーク10に対して、例えば、フライス・エンドミル・ドリル・中ぐり・タップ等を行う刃物工具を自動的に交換し、部品加工を行う工作部30と、該工作部30におけるワーク加工過程において加工精度を確認するためにワーク10の平面方向(X方向)の厚さtを高精度に測定する測定装置40とを備える。前記ワーク10は、本実施例の場合、長方形状の平板形状であり、4側面がXYテーブル20のXY軸と平行になるようにフリーに搭載されているが固定されていても良い。
【0025】
本実施例による測定装置40は、XYテーブル20の平面に向かって垂直に上下及び測定方向(本例では厚さt方向)に稼働自在な2本のアーム41と、該アーム41の下端に向かい合って配置されてワーク10の測定対象の側面にX方向から所定圧力で接触するセンサ42a及びセンサ42bと、該センサ42a及びセンサ42bの位置を光学的に検知することによってワーク10の厚さtを計測する光学測定部(図示せず)とを備える。また、本実施例によるセンサ42a及び42bは、互いに向き合って外形が半球状の接触子であるコンタクトを有し、この半球状のコンタクトがワーク10の測定対象の平行側面に所定圧力で接触するように押圧され、前記コンタクトの位置を光学的に検出する光学型であるが、コイルに挿入されるコアの挿入量変化を電気的に検出する差動変圧型であっても良い。
【0026】
本実施例による工作機械100は、工作部30がワーク10に対して刃物工具を自動的に交換しながらの切削他を行う加工工程と、この加工工程中にワーク10への加工寸法が所定値範囲(数μm~数十μm)か否かを測定装置40により測定する計測工程とを繰り返しながらワーク10の加工を行うように構成されている。
【0027】
本実施例による計測工程は、次の通りである。
(1)図1(b)に示したXYテーブル20上に搭載したワーク10の上に工作部30及び測定装置40を位置させた状態から、図1(c)に示す如くワーク10の上に工作部30及び測定装置40を、測定装置40から延びる一対のアーム41の下端に向かい合って配置されたセンサ42a及びセンサ42bがワーク10の両側面に向かい合う位置まで下降させる第1工程。なお、本例では工作部30及び測定装置40を同時に上下移動させる例を説明するが、工作部30は上位置に固定し、測定装置40のみを上下移動させるものや、工作部30及び測定装置40をZ軸(重力)方向に上下移動させるように構成しても良い。
【0028】
(2)次いで、図1(d)から(e)に示す如く、XYテーブル20上のワーク10の厚さ方向の側面に向かって一対のアーム41のセンサ42a及びセンサ42bを接近させ、ワーク10の厚さ方向の側面(例えば図2[a]に示す測定点a)に所定圧力で接するように移動する第2工程。
【0029】
(3)この図2(a)に示したワーク10の測定点aにおいてワーク10の両側に接したセンサ42a及びセンサ42bの位置座標値を図示しない光学測定部により測定する第3工程。
【0030】
(4)次いで、ワーク10の両側に接したセンサ42a及びセンサ42bをワーク10の両側面から前記第2工程とは逆方向に移動させて離し、図2(a)に示した矢印方向(Y方向:長手方向)に一対のアーム41のセンサ42a及びセンサ42bを移動させ、再びワーク10の厚さ方向の側面に向かって一対のアーム41のセンサ42a及びセンサ42bを接近させ、ワーク10の厚さ方向の側面(例えば図2[a]に示す測定点b)に所定圧力で接するように移動する第4工程。あるいは第2工程とは逆方向に移動をしないで、そのまま測定点bに移動する。
【0031】
本実施例による測定装置40は、このようにワーク10の両側面に所定圧力で接した一対のセンサ42a及びセンサ42bの測定点a及び測定点bにおける位置座標値を測定し、この両位置座標値によってワーク10の真の厚さtを算出する。すなわち、測定点aにおけるセンサ42a及びセンサ42bの位置座標値の差分による厚さと、測定点bにおけるセンサ42a及びセンサ42bの位置座標値の差分による厚さとを測定する。
【0032】
この測定点abにおけるワーク10の厚さ測定は、ワーク10の4側面がXYテーブル20のXY方向と完全に一致する場合、両測定点における測定値は論理的には同一になるものであるが、実機においてはワーク10の4側面がXYテーブル20のY方向とミクロン単位で完全に一致するとは限らず、図2(b)に示す如く、ワーク10が斜めに搭載されていることも想定される。このワーク10が斜めに搭載された場合、同時に移動するセンサの一対のコンタクトの接点がXYテーブル20のY方向の同軸位置(図2[a]参照)で接し、この測定点での厚さCは、真の厚さtとはワーク10が傾いている分だけ異なったものとなる。
【0033】
そこで本実施例においては、このワーク10が斜めに配置されていることに対処するため、次に述べるワーク斜め配置に対する補正を行い、この補正算出手法を次に説明する。
【0034】
まず、前述のワーク10が角度θだけ斜めに配置されている場合、図2(b)に示す如く、測定点a及び測定点bにおいて測定した厚さはワーク10の真の厚さtに対して傾斜による誤差を生じ、測定点での厚さCが測定値となる。
【0035】
測定点での厚さCと真の厚さt並びに各センサとの位置関係は図3に示す如く表され、傾斜角度θ、真の厚さをt、測定点aにおけるセンサ42bのX位置を基準にした測定点bにおけるセンサ42bのX方向への押し込み量S(いずれかのセンサによる測定点aと測定点bでの測定方向における位置の差分)、測定点での厚さCとしたとき、真の厚さt=C・(cosθ)で求めることができる。ただし、θ=tan-1(S/b-a)、b-aは、測定点aから測定点bまでの距離である。
【0036】
つまり、真の厚さtは、ワーク10の厚さを少なくとも異なる二つの測定点、測定点a及び測定点bにおいて一対のセンサ42a及びセンサ42bで測定し、測定点での厚さCを測定点aから測定点bまでの距離(二つの測定点a、b間の距離)、押し込み量Sに基づいて補正すれば良い。また、誤差δを(C-t)とすると、δ=C(1-cosθ)である。測定点aから測定点bまでの距離b-aを10mmとし、真の厚さtを10mm=10000μmとして傾斜角度θについて計算した例が表1である。
【表1】
【0037】
測定点aから測定点bまでの距離b-aを大きくすれば傾斜角度θをより正確に算出できる。しかし、測定点aから測定点bまで移動するY方向の距離を大きくすることになるので、移動させるXYテーブル20における直線性などの誤差の影響が大きくなる。したがって、ワーク10の厚みによって測定点aから測定点bまでの距離b-aを適切に定めることが好ましい。
【0038】
例えば、測定基準となるワーク10の概算厚みと距離b-aを略等しくすることが良い。表1ではワーク10の概算厚みを10mm、距離b-aを10mmとした場合であり、この条件で実際の測定を行った結果、ワーク10に必要とされる公差を10μmとすると傾斜角度θが3°以上で、少なくとも10°までは補正が有効であることが分かった。また、測定対象であるワーク10の厚みを5~15mmとした場合、距離b-aを5~15mmとすることが適切であった。
【0039】
表2は、表1と同じ条件、測定点aから測定点bまでの距離b-aを10mmとし、真の厚さtを10mmとして押し込み量Sについて計算した例である。
【表2】
【0040】
小さな傾斜角度θを検出するには距離b-aが大きいほど良いが、XYテーブル20の高精度化を要する。これに対しては、2点のセンサ42a、42bを4点に変更し、測定点a及び測定点bでそれぞれ2点のセンサで測定し、距離b-aをセンサ側で固定して一定距離とする。
【0041】
つまり、XYテーブル20でワーク10の長手方向に異なる少なくとも二つの測定点に一対のセンサ42a、42bを移動することに代えて、測定装置40に2組の一対のセンサ42a、42bを長手方向に所定間隔で固定し、この所定間隔を二つの測定点aと測定点b間の距離とする。これにより、距離b-aはXYテーブル20の移動に依存せず独立にでき、高精度化に寄与する。また、測定点aから測定点bまで移動しないで同時に測定できるので、測定時間の短縮となる。
【0042】
図3は、測定部の詳細を示す平面図であり、コンタクトの半径rとしたときの影響を考慮したものである。実際の測定に当たっては、センサ42a、42bのコンタクトは有限な半径rであるので、ワーク10との接触点のX方向の位置にずれを生じる。図3より、センサ42a、42bによって測定される測定値Dとして、測定点での厚さCは、コンクタクトの接触位置の違いによる位置ずれによる誤差をxとして、C=D-2・xとなる。また、xはx=r・((1/cosθ)-1)となる。
【0043】
したがって、コンタクトの半径rが分かれば、θ=tan-1(S/b-a)として位置ずれによる誤差xを求め、前述と同様に測定値Dから、C=D-2・xとして測定点での厚さCを求めることで真の厚さt=C・(cosθ)を求めることができる。
【0044】
表3は、コンタクトの半径rを6000μm(mm)として、傾斜角度θ毎に位置ずれによる誤差をx、及び全誤差2xを求めたものである。
【表3】
【0045】
表1と比べて、例えば、傾斜角度θが3°で表1より誤差が13.723μmであるのに対して表3では全誤差で16.4682μmであり十分小さい。ただし、傾斜角度θが大きくなると無視できない値となることが分かる。また、コンタクトの半径rが大きければ誤差も無視できないが、測定対象であるワーク10の厚みを5~15mmとし、距離b-aを5~15mmとした場合、コンタクトの半径rを4~8mmとすることが適切であった。
【0046】
図4は他の実施例を示す平面図であり、図2で示した実施例に比べて、測定点をY方向へ測定点a、測定点b、測定点cの3か所としたものである。図2、3の説明と同様に、測定点a、測定点bにおいては、真の厚さt=C・(cosθ)、θ=tan-1(S/L)として求めることができる。Cは測定点での厚さC、Lは測定点aから測定点bまでの距離b-aである。
【0047】
また、測定点b、測定点cにおいて、上式のLを測定点bから測定点cまでの距離c-bとすれば、同様に真の厚さtを求めることができる。さらに、測定点a、測定点cにおいて、Lを測定点aから測定点cまでの距離c-aとすれば、同様に真の厚さtを求めることができる。測定点a、測定点bで求められた真の厚さ、測定点b、測定点cで求められた真の厚さ、測定点a、測定点cで求められた真の厚さを平均すれば、より正確な値が算出される。以下、測定点を3か所以上とした場合も同様に真の厚さtを算出することができる。
【0048】
また、測定点を測定点a、測定点b、測定点cの3か所とした場合、ワーク10は厚さが一定であれば、各測定点でセンサ42aとセンサ42bによる押し込み量の合計値、あるいはセンサ42a及びセンサ42bの位置座標値の差分は、同じになる。したがって、各測定点における押し込み量の合計値、あるいは位置座標値の差分のずれ量によって、ワーク10のY方向の平行度、加工精度を検出することができる。
【0049】
図5は、さらに他の実施例を示す側面図であり、図4で示した他の実施例に比べて、測定点をZ方向へ測定点f、測定点gとしたものである。図2、3の説明と同様に、測定点f、測定点gにおいては、真の厚さt=C・(cosθ)、θ=tan-1(S/f-g)として求めることができる。Cは測定点での厚さC、f-gは測定点fから測定点gまでのZ方向の距離である。
【0050】
この場合も図4と同様に、各測定点でセンサ42aとセンサ42bによる押し込み量の合計値、あるいはセンサ42a及びセンサ42bの位置座標値の差分は、同じになる。したがって、各測定点における押し込み量の合計値、あるいは位置座標値の差分のずれ量によって、ワーク10のZ方向の平行度、加工精度を検出することができる。
【0051】
なお、本実施例の測定対象であるワーク10は、XY方向に平行な平行四辺形状を対象とするものであるが、Y方向のみが傾斜した台形形状であることが判明している場合であっても、ワーク台形形状の角度による誤差を補正すれば良い。
【0052】
また、前述の実施例においては、コンタクトが平行側面を有するワーク側面に接して厚さを計測する例を説明したが、例えば、中ぐり又は研磨された間隔内に一対のコンタクトを挿入し、コンタクト間を広げることによって中ぐり等をした隙間の厚さ(間隙)も正確に測定することができる。また、本実施例によるコンタクトはアームの先端から内方に向かって半円状に突出する形状のものを説明したが、一般のタッチプローブ同様に細線形上のアーム先端に設けられる球形状の接触子であっても良い。
【符号の説明】
【0053】
C 測定点での厚さ、t 真の厚さ、S 押し込み量、r コンタクトの半径、D 測定値、10 ワーク、20 XYテーブル、30 工作部、40 測定装置、
41 アーム、42a センサA、42b センサB、100 工作機械








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図3
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図5