(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240502BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240502BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 B
B23K26/364
(21)【出願番号】P 2020113210
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】▲蔭▼山 弘明
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-089846(JP,A)
【文献】特表2010-507234(JP,A)
【文献】特開2020-088383(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016201(WO,A1)
【文献】特開2018-181906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0179873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体部と、複数の前記半導体部を支持する支持基板と、前記半導体部の側面に設けられた絶縁膜と、前記半導体部と前記支持基板との間に設けられた第1領域と上面視において複数の前記半導体部の間における前記支持基板の上部に設けられた第2領域とを有する金属部分と、を備えた半導体ウエハを準備する工程と、
前記半導体部の側面に設けられた前記絶縁膜の少なくとも一部に形成され、前記第2領域の上部に開口部を有する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の前記開口部を介してレーザー光を前記金属部分の前記第2領域に照射し、前記第2領域の一部を除去する工程と、
前記第2領域を除去した部分に沿って前記支持基板を割断する工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の半導体部のそれぞれは発光層を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜は、前記発光層からの光の波長及び前記レーザー光の波長に対して光反射性を有する金属材料からなる、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属膜は、前記半導体部の前記側面と、前記半導体部の上面とに連続して設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜は、前記半導体部の前記側面と、上面視において前記第2領域の一部に重なる部分とに連続して設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記金属膜の膜厚は、0.05μm以上5μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記支持基板を割断する工程において、前記支持基板をダイシングブレードを用いて割断する、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウエーハにレーザー光を照射することでレーザー加工溝を形成し、そのレーザー加工溝に沿って切削することで半導体ウエーハを分割する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザー光の照射によって金属部分の除去を行う場合、半導体部がレーザー光の反射光によりダメージを受ける虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、金属部分をレーザー光の照射により除去する際に生じる半導体部や半導体部を覆う絶縁膜へのダメージを低減できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置の製造方法は、
複数の半導体部と、複数の前記半導体部を支持する支持基板と、前記半導体部の側面に設けられた絶縁膜と、前記半導体部と前記支持基板との間に設けられた第1領域と上面視において複数の前記半導体部の間における前記支持基板の上部に設けられた第2領域とを有する金属部分と、を備えた半導体ウエハを準備する工程と、
前記半導体部の側面に設けられた前記絶縁膜の少なくとも一部に形成され、前記第2領域の上部に開口部を有する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の前記開口部を介してレーザー光を前記金属部分の前記第2領域に照射し、前記第2領域の一部を除去する工程と、
前記第2領域を除去した部分に沿って前記支持基板を割断する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、レーザー光の照射に際して、半導体部や半導体部を覆う絶縁膜へのダメージを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法において「開口部を有する金属膜」を示す模式的断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法において開口部を介してレーザー光を照射する工程を示す模式的断面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法において開口部を介してレーザー光を照射する工程を示す模式的断面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法において支持基板を割断する工程を示す模式的断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法において支持基板を割断する工程を示す模式的断面図である。
【
図4】本発明の他の態様を説明するための模式的断面図である。
【
図5】本発明の他の態様を説明するための模式的断面図である。
【
図6】本発明の他の態様を説明するための模式的断面図である。
【
図8】半導体ウエハの構成を示す模式的断面図である。
【
図9A】本発明の創出過程で見出された事象を説明するための模式的断面図である。
【
図9B】本発明の創出過程で見出された事象を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態や実施例を説明する。なお、以下に説明する半導体装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
図面に示される「断面視」は、半導体装置の積層構成が分かる見取図に相当し、当該積層構成が分かるように半導体装置を切り取って見た場合の断面視である。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”は、それぞれ断面視の図面における上下方向に相当する。
【0011】
半導体装置は、半導体部を備えている。例えば発光ダイオードとして用いられる半導体部は、n型のn側窒化物半導体層と、p型のp側窒化物半導体層と、n側窒化物半導体とp側窒化物半導体の間に設けられた発光層と、を有する。このような半導体装置は、支持基板上に複数の半導体部を備える半導体ウエハに対して分割工程を施すことで得られる。例えば、半導体ウエハの半導体部間に位置する分割領域に沿って分割することで半導体装置を得ることができる。
【0012】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、
複数の半導体部と、複数の前記半導体部を支持する支持基板と、前記半導体部の側面に設けられた絶縁膜と、前記半導体部と前記支持基板との間に設けられた第1領域と上面視において複数の前記半導体部の間における前記支持基板の上部に設けられた第2領域とを有する金属部分と、を備えた半導体ウエハを準備する工程と、
前記半導体部の側面に設けられた前記絶縁膜の少なくとも一部に形成され、前記第2部分の上部に開口部を有する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の前記開口部を介してレーザー光を前記金属部分の前記第2領域に照射し、前記第2領域の一部を除去する工程と、
前記第2領域を除去した部分に沿って前記支持基板を割断する工程と、を備えている。
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る製造方法について詳細に説明する。
【0014】
半導体装置は、半導体ウエハを半導体部間で分割する工程を経ることによって得られる。
図8に半導体ウエハ100’の模式的断面図を示す。
【0015】
図示されるように、半導体ウエハ100’は、複数の半導体部1を備えている。半導体ウエハ100’では、複数の半導体部1が支持基板2により支持されている。支持基板2上には、複数の半導体部1と、半導体部1に接続される部材が設けられている。隣り合う半導体部1間の距離は、例えば50μm以上200μm以下である。
【0016】
図8に示すように、半導体ウエハ100’を分割して得られる発光素子4は、発光層13を含む半導体部1を備えている。半導体部1は、第1半導体層11と、第2半導体層12と、第1半導体層11と第2半導体層12との間に設けられた発光層13とを含む。第1半導体層11は、例えば、n型半導体層を含む。第2半導体層12は、例えば、p型半導体層を含む。半導体部1には、例えば窒化物半導体を用いる。発光層13に用いる半導体層の材料や混晶比を調整することによって発光波長を種々に選択できる。半導体部1の表面には絶縁膜5が設けられている。より具体的には、半導体部1の表面には、第1半導体層11、第2半導体層12および発光層13を覆うように絶縁膜5が設けられている。
【0017】
本実施形態の半導体装置の一例である発光素子4は、半導体部1に電気的に接続された電極を備えている。例えば、発光素子4の第1半導体層11および第2半導体層12には、それぞれ、コンタクト電極が設けられている。具体的には、第1半導体層11には第1コンタクト電極31が接続され、第2半導体層12には第2コンタクト電極32が接続されている。第1コンタクト電極31は、例えば、n側コンタクト電極として機能する。第2コンタクト電極32は、例えば、p側コンタクト電極として機能する。第1コンタクト電極31及び第2コンタクト電極32は、発光素子4の発光面となる第1半導体層11の上面とは反対側に設けられている。
【0018】
発光素子4の下面側は、金属層38および接合層33を介して支持基板2に接合されている。第2コンタクト電極32は、
図8に示されるように、配線層35に接続されている。配線層35の一部は、半導体部1が設けられた領域の外側に位置している。配線層35のうち半導体部1の外側に位置している部分に接続部34が接続されている。第2コンタクト電極32は、配線層35を介して接続部34に電気的に接続されている。接続部34には例えばワイヤーが接合され、外部と半導体部1における第2半導体層12との電気的な接続を担う。また、配線層35と半導体部1との間の一部には第1保護層36が設けられている。第1保護層36と半導体部1の間に、第2半導体層12と第2コンタクト電極32の一部とを覆う第2保護層37を設けてもよい。第1コンタクト電極31は、第1半導体層11にオーミック接触するように設けられている。第1保護層36は、第1コンタクト電極31と、発光層13、第2半導体層12、および配線層35との間にも設けられている。また保護層36は、半導体部1間にも設けられている。支持基板2と、接合層33との間には金属層38が設けられている。金属層38は、支持基板2と発光素子4を含む部材との密着性を向上させるための層として機能し得る。また、支持基板2の裏面2aには裏面電極21が設けられている。裏面電極21は、支持基板2およびその上に配置されている各層を介して第1コンタクト電極31と導通している。
【0019】
半導体ウエハ100’において、支持基板2上に複数の半導体部1が設けられている。絶縁膜5は、半導体部1の側面1aを少なくとも覆うように設けられている。このような絶縁膜5は、例えば、SiO2、SiN、SiONおよびAl2O3から成る群から選択される少なくとも1種を含む絶縁性の材料から構成されていてよい。半導体部1の側面1aに設けられた絶縁膜5は、例えば、0.1μm以上10μm以下である。なお、このような絶縁膜5は、透光性膜であってよい。
【0020】
支持基板2は、例えば、シリコン基板などであってよい。半導体ウエハ100’では、かかる支持基板2が、例えば、熱圧着工法などによって、ニッケル(Ni)やスズ(Sn)などを含む接合層33を介して半導体部1と接合されている。
【0021】
半導体ウエハ100’の個片化工程では、まず半導体部1間に位置する分割領域にレーザー光Lを照射して金属部分を昇華させる。このレーザー光Lを照射する工程では、レーザー光Lの照射部からの光反射に起因して、半導体部1や半導体部1の側面1aに設けられた絶縁膜5を変質させる虞がある。半導体部1や半導体部1の側面1aの保護膜5が変質すると、保護膜5と半導体部1との界面で発光層13を介さずに流れるリーク電流が発生する場合がある。そのため、
図9Aに示すように、半導体部1の側面1aの絶縁膜5上に金属膜6’を設け、かかる金属膜6’によってレーザー光Lの反射の影響を低減することが考えられる。しかしながら、金属膜6’を単に設けるだけでは、レーザー光Lの照射に起因する熱の影響を無視し難い。金属膜6’が半導体部1の側面上だけでなく分割領域上にまで形成されていると、分割領域で生じた熱が半導体部1に伝搬してしまう虞があるからである。特に、レーザー光Lの照射に際して、分割領域上に設けられた金属膜6’にレーザー光Lが照射されると、
図9Bに示すように、レーザー光Lの照射部で発生する熱Hが、金属膜6’を介して半導体部1の側面1aに伝搬してしまう。
【0022】
そこで、本発明の一実施形態に係る製造方法では、レーザー光Lが照射される半導体ウエハ100’の分割領域を避けて金属膜6を形成する。換言すれば、半導体部1の側面1aに半導体部1間を覆うとともに、分割領域上に位置する開口部60を有する金属膜6を形成する。
【0023】
例えば、
図1および
図2Aに示すように、実質的に半導体部1の側面1aのみを覆う金属膜6を形成する。金属膜6は、互いに隣り合う半導体部1の各側面1a
1および1a
2を覆っている。金属膜6は、隣り合う半導体部1の間の領域に設けられておらず、その領域において開口部60を有する。半導体ウエハ100’の分割領域は、開口部60の領域に含まれる。
【0024】
半導体ウエハ100’は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、支持基板2上に複数の半導体部1と、金属部分3とを有している。金属部分3は、第1領域3Aと第2領域3Bとを有する。第1領域3Aは、半導体部1と支持基板2との間に位置する領域である。第2領域3Bは、複数の半導体部1の間における支持基板2の上部に位置する領域である。第1領域3Aと第2領域3Bとは互いに隣接して金属部分3を成している。金属部分3のうち、半導体部1の下側に位置する領域が第1領域3Aに相当し、隣り合う半導体部1の間に位置する領域が第2領域3Bに相当する。なお、金属部分3の第2領域3B上には、絶縁材料からなる部材が設けられていてもよい。
【0025】
本実施形態に係る製造方法において、金属膜6は、半導体部1の側面1aの絶縁膜5に設けられ、第2領域3Bの上部において開口部60を備えるように形成される。つまり、半導体ウエハ100’では、半導体部1の側面1aに設けられた絶縁膜5を覆う金属膜6が第2領域3Bの上部において開口部60を有する。第2領域3Bは、金属膜6が設けられておらず、金属膜6から露出している。
【0026】
本実施形態に係る製造方法では、このような金属膜6の開口部60を介して半導体ウエハ100’の個片化工程を行う。個片化工程ではレーザー光Lの照射と支持基板2の割断とを行う。具体的には、
図2Aおよび
図2Bに示すように、金属膜6の開口部60を介してレーザー光Lを金属部分3の第2領域3Bに照射し、第2領域3Bの一部を除去する。次いで、
図3Aおよび
図3Bに示すように、第2領域3Bの一部が除去された部分に沿って支持基板2を割断する。
【0027】
このような開口部60を介したレーザー光Lの照射および支持基板2の割断によって、半導体ウエハ100’が好適に個片化され、
図3Bに示すような半導体装置100が得られる。
【0028】
レーザー光Lを開口部60を介して照射し、分割領域P上に位置する金属部分3を除去する際、
図2Aおよび
図2Bに示すように、支持基板2上の金属部分3を略全て除去することが好ましい。これにより、支持基板2の割断工程において、金属部分3により支持基板2の割断が阻害されることが抑制され、個片化時のクラックやチッピングなどを抑制できる。
【0029】
本実施形態に係る製造方法は、金属部分3を除去する際に照射されるレーザー光Lに起因して半導体ウエハ100’で発生する熱が半導体部1の側面1aの絶縁膜5にまで伝わることが抑制されている。そのため、レーザー光Lの照射に起因する熱が半導体部1の側面1aの絶縁膜5にまで及びにくく、半導体部1や絶縁膜5のダメージを低減できる。金属膜6の開口部60を介してレーザー光Lの照射がなされるからである。仮に半導体部1の側面1aと半導体部1の間とに連続して設けられた金属膜6’に対してレーザー光Lが直接照射されると、金属膜6’で発生する熱Hは金属膜6’を介して半導体部1の側面1aへと伝ってしまう。つまり、個片化工程では、レーザー光Lの照射箇所に位置する金属膜6’は最終的に除去されるといえども、レーザー光Lが照射された直後や完全に除去されるまでの間に照射された箇所で生じる熱Hが金属膜6’を介して半導体部1の側面1aまで伝搬しやすい。
【0030】
このように、半導体部1や絶縁膜5のダメージを低減できるので、本実施形態に係る製造方法は、半導体部1におけるリーク電流の発生を好適に抑制できる。つまり、個片化工程で得られる半導体装置100において第1半導体層11と第2半導体層12との間で生じるリーク電流が好適に抑制される。
【0031】
金属膜6は、例えば、レーザー光の波長に対して光反射性を有する金属材料からなる。金属部分3の除去に用いるレーザー光の発光ピーク波長は200nm以上600nm以下程度、例えば300nm以上400nm以下である。このようなレーザー光Lの発光ピーク波長に対して光反射性を有する金属膜6を設ける。ここでいう「光反射性」は、そのようなレーザー光の波長に対する反射率が60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上となっていることを指す。また、金属膜6は、例えば、発光層13からの光の波長に対して光反射性を有する金属材料からなる。ここでいう「光反射性」とは、発光素子4の発光ピーク波長に対する反射率が60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上となっていることを指す。
【0032】
金属膜6がレーザー光Lに対して光反射性を有することで、レーザー光Lからの反射光を好適に反射させることができ、レーザー光Lを照射する時の光の影響を好適に低減できる。つまり、レーザー光照射時の反射光が半導体部1の側面1aに向かったとしても、半導体部1の側面1aの金属膜6が光を反射し、絶縁膜5に対するレーザー光Lの影響を低減できる。また、光反射性を有する金属膜6は、発光層13からの光を反射できるので、所望の光取り出し効率を備える半導体装置100を得やすくなる。
【0033】
金属膜6の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、ニッケル(Ni)、および白金(Pt)などから成る群から選択される少なくとも1種を含む金属材料を挙げることができる。
【0034】
金属膜6の膜厚は、例えば、0.05μm以上5μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上2.5μm以下とすることがより好ましい。これにより、個片化に用いるレーザー光Lの影響を好適に低減できる。また、金属膜6の形成コストおよび/または形成時間が過度にならない。金属膜6の膜厚が0.05μm未満になると、レーザー光Lに対する光反射が不充分になり易い。一方、金属膜6の膜厚が5μmよりも大きくなると、金属膜6を形成するためのコストがかかり易い。
【0035】
金属膜6に形成される開口部60は、パターニング加工により設けることができる。開口部60の形成には、例えば、フォトリソグラフィおよびリフトオフ法などのパターニング技術を用いてよい。例えばリフトオフ法の場合、金属膜6に開口部60を形成する工程は、開口部60が形成される箇所にレジストを形成する工程と、金属部材をレジストを覆うように形成する工程と、レジストを除去する工程と、を有する。金属部材は、例えば蒸着法やスパッタリング法等により形成する。また、金属膜6に開口部60を形成する工程は、半導体部1間も含めて金属部材を形成する工程と、金属部材の一部を除去し開口部60を形成する工程と、により形成してもよい。金属部材の除去は、例えばエッチングなどにより行う。なお、金属膜6と接続部34とが同じ金属材料を含む場合においては、接続部34の形成に併せて金属膜6を形成してよい。
【0036】
金属膜6の開口部60の幅は、半導体部1間の距離よりも小さくなっていることが好ましい。開口部60の幅は、例えば50μm以上90μm以下である。
【0037】
本実施形態に係る製造方法において、レーザー光Lの照射による金属部分3の除去後に行う支持基板2の割断は、機械的手段を用いてよい。例えば、支持基板2を割断する工程において、支持基板2をダイシングブレード70によって割断する。このようなダイシングブレード70を用いた支持基板2の割断工程を金属部分3を除去した後に行うことによって、所望の個片化を達成し易くなる。即ち、支持基板2のクラックやチッピング等を抑えて支持基板2を個片化できる。仮に金属部分3及び支持基板2をダイシングブレードなどの機械的手段により個片化すると、支持基板2にクラックやチッピング等が生じやすいが、分割領域上の金属部分3を除去した後、支持基板2を割断することでそのような不都合な事象を回避できる。
【0038】
本実施形態に係る製造方法では、上述したように、半導体ウエハ100’の個片化に際してレーザー光Lに起因する熱の影響が減じられる。つまり、レーザー照射時においてレーザー光照射箇所から生じる熱は半導体部1の側面1aへと伝搬しにくくなっている。よって、本実施形態に係る製造方法は、得られる半導体装置100でリーク電流の発生が抑制され、その点で歩留まり向上に寄与し得る。また、レーザー光Lの照射箇所の熱が半導体部1へと伝搬することが抑制されることは、出力エネルギーがより高いレーザー光Lの照射でもって金属部分3の除去を実施できることを意味している。したがって、本実施形態に係る製造方法は、より短時間で個片化工程を実施でき、半導体装置100の製造効率が向上し得る。
【0039】
半導体部1への熱伝搬が抑制されることで、半導体部1との距離が比較的近い箇所が分割領域となる場合であってもレーザー光Lにより金属部分3を除去する工程を好適に実施することができる。例えば、
図2Aの断面視に示されるように、本実施形態に係る製造方法は、分割領域のなかでも接続部34が位置しておらず、半導体部1との距離が比較的近くなる分割領域Pに対してもレーザー光Lにより金属部分3を除去する工程を好適に実施できる。
【0040】
本実施形態に係る製造方法により得られる半導体装置100は、半導体部1の側面1aに金属膜6を備えている。したがって、かかる半導体装置100を発光装置として用いる場合、半導体部1の側面1aの金属膜6が光取り出し効率の向上に有効に寄与し得る。具体的には、半導体装置100において半導体部1の上面は光取り出し面になり得るところ、半導体部1の発光層13で生じた光が金属膜6によって半導体部1の側面1aから出射されにくくなり、半導体部1の上面側から出射されやすくなる。このように発光層13からの光が半導体部1の上面側から取り出されやすくなることで光取り出し効率が向上された発光装置とすることができる。
【0041】
本発明の製造方法は、種々の態様で具現化され得る。
【0042】
(他の態様1)
本態様は、
図4に示すように、金属膜6が半導体部1の上面にまで及ぶように形成されている態様である。本態様では、金属膜6は、半導体部1の側面1aと、半導体部1の上面1bとに連続して設けられている。つまり、本態様は、半導体ウエハ100’の断面視において、
図1に示す金属膜6が側面1aにのみ設けられている態様でなく、金属膜6が側面1aと半導体部1の上面1bと設けられている態様である。
【0043】
金属膜6が半導体部1の上面1bにまで及んでいる半導体ウエハ100’を個片化すると、より高い輝度を有する発光装置を得ることができる。例えば、半導体部1の上面1bの周縁部分にまで至るように金属膜6を形成することで、発光層13から半導体部1の上面1bに向かう光が、半導体部1の上面1bの周縁部分に形成した金属膜6で反射される。これにより、半導体部1の周縁部分以外の上面1bから光が主に取り出されやすくなり、高い輝度を備える発光装置とすることができる。
【0044】
なお、半導体部1の上面1bに設けられた絶縁膜5の表面に凹凸形状が形成されている場合、
図4に示すように、金属膜6は絶縁膜5の凹凸形状の周縁に設けられてよい。
【0045】
(他の態様2)
本態様は、
図5に示すように、金属膜6が第2領域3Bの一部にまで及ぶように形成されている態様である。本態様において、金属膜6は、半導体部1の側面1aと、上面視において第2領域3Bの一部に重なる部分とに連続して設けられている。つまり、半導体ウエハ100’の断面視において、金属膜6が半導体部1の側面1aと、隣り合う半導体部1間の領域の一部とに設けられている。
【0046】
このように半導体部1の間の領域にまで及ぶ金属膜6を設けることで、金属膜6と第2領域3Bとの密着性向上に寄与し得るので、金属膜6の剥がれなどが抑制される。
【0047】
(他の態様3)
本態様は、
図6に示すように、金属膜6が半導体部1の上面と第2領域3Bの一部にまで及ぶように形成されている態様である。このような構造により、上述した他の態様1、2による効果をそれぞれ得ることができる。
【実施例】
【0048】
本発明の効果を確認するため、評価試験を行った。
【0049】
複数の半導体部1を有する半導体ウエハを準備し、以下の3つの形態について、レーザー光Lの照射により分割領域となる金属部分3を除去する処理を行い、各半導体部1におけるリーク電流Irの発生頻度を調べた。
比較例1:半導体部1の側面1aに設けられた絶縁膜5に対して金属膜6を設けない形態。
比較例2:半導体部1の側面1aに設けられた絶縁膜5に対してのみならず、半導体部1の間にも金属膜6’を形成した形態。即ち、半導体部1の間に位置する開口部60を金属膜6に設けない形態。
実施例1:半導体部1の側面1aに設けられた絶縁膜5と、半導体部1の間の一部に金属膜6を形成した形態。即ち、半導体部1の間に位置する開口部60を金属膜6に設けた形態。
【0050】
各形態の仕様および試験条件は以下の通りである。
各形態の仕様
・絶縁膜5:SiO2 膜厚:約0.8μm
・金属膜6、6’:Al 膜厚:約1.15μm
レーザー光照射の条件
・レーザー光Lの波長:355nm
・レーザ-光Lの出力:3.65W
リーク電流Irの確認
・印加電圧:5V
リーク電流Irの確認に際しては、レーザー光Lを照射する工程の前後におけるリーク電流Irを測定しリーク電流Irの増減を確認した。
【0051】
上記比較例1、2、及び実施例1の測定結果を
図7Aおよび
図7Bに示す。
図7Aは、レーザー光Lを照射する前の比較例1、2、及び実施例1の形態におけるリーク電流Irをそれぞれ測定し、リーク電流Irの値ごとの発生頻度を示した図である。
図7Bは、レーザー光Lを照射した後の比較例1、2、及び実施例1の形態におけるリーク電流Irをそれぞれ測定し、リーク電流Irの値ごとの発生頻度を示した図である。
図7Aおよび
図7Bのグラフから分かるように、レーザー光Lを照射した後において、比較例1および2では、0.1μA以上のリーク電流Irが発生する頻度がレーザー光Lを照射する前よりも増加している。一方、実施例1では0.1μA以上のリーク電流Irは発生していないことがわかる。実施例1では、初期測定NGの半導体部1を除き、全ての半導体部1においてリーク電流Irの値が実質的に発生しないとみなせる0.1μA未満であった。また、レーザー光Lを照射した後において、初期測定NGが発生する頻度も実施例1の方が比較例1および2よりも抑制された結果となった。なお、
図7Aに示す「初期測定NG」とは、レーザー光Lを照射する前から電気特性がNGと判断された半導体部1のことである。また、
図7Bに示す「初期測定NG」とは、レーザー光Lを照射した後で電気特性がNGと判断された半導体部1のことである。
【0052】
本発明の一実施形態に係る製造方法のように、半導体部1の間に位置する金属膜6の開口部60を介してレーザー光Lを照射することで、半導体部1や半導体部1上の絶縁膜5へのダメージを低減できることを確認できた。
【0053】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施形態及び実施例における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0054】
例えば、半導体ウエハにおいて、半導体部1の側面1aを覆う絶縁膜5は、分割領域にまで設けられてもよい。かかる場合、金属膜6の開口部60を介したレーザー光Lの照射に際しては、分割領域に位置する絶縁膜が除去されることになる。例えば、金属部分3の第2領域3Bにおいて、半導体部1の側面1aを覆う絶縁膜5から延在する絶縁層が含まれていてよく、レーザー光Lで金属部分3を除去するときに、かかる絶縁層の一部も他の金属層と共に除去されてよい。
【0055】
また、半導体部1の側面1aを覆う絶縁膜5は、半導体部1の上面1bを覆うように設けられていてよい(
図8参照)。かかる場合、半導体部1の上面1bに位置する絶縁膜5は、図示するように凹凸状に形成されていてもよい。半導体装置100が発光装置として用いられる場合、凹凸状の絶縁膜5を形成することにより好適な光取り出しに資する。
【0056】
さらには、上記説明では、製造される半導体装置100は、半導体部1から光が出射される発光装置について主に説明したが、本発明は必ずしもそれに限定されない。本発明の技術は、受光素子や増幅素子等の他の半導体装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体部
1a 半導体部の側面
1a1 半導体部の側面
1a2 半導体部の側面
1b 半導体部の上面
11 第1半導体層
12 第2半導体層
13 発光層
2 支持基板
2a 支持基板の裏面
21 裏面電極
3 金属部分
3A 金属部分の第1領域
3B 金属部分の第2領域
31 第1コンタクト電極
32 第2コンタクト電極
33 接合層
34 接続部
35 配線層
36 第1保護層
37 第2保護層
38 金属層
4 発光素子
5 絶縁膜
6 金属膜
6’ 金属膜(参考例)
60 開口部
70 ダイシングブレード
100 半導体装置
100’ 半導体ウエハ
H 熱
L レーザー光
P 分割領域