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特許7481631発光装置及びその製造方法並びに発光モジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法並びに発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240502BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240502BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240502BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240502BHJP
   F21Y 107/70 20160101ALN20240502BHJP
   F21Y 107/20 20160101ALN20240502BHJP
【FI】
F21S2/00
H01L33/00 L
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21Y115:10
F21Y107:70
F21Y107:20
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021107573
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005571
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 敦志
(72)【発明者】
【氏名】勝又 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】酒本 正和
(72)【発明者】
【氏名】能田 洋輔
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057664(JP,A)
【文献】特表2018-532250(JP,A)
【文献】特開2020-092277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0032589(US,A1)
【文献】米国特許第08356926(US,B1)
【文献】特開2007-157526(JP,A)
【文献】実開平05-013497(JP,U)
【文献】特開2017-143257(JP,A)
【文献】特表2012-525675(JP,A)
【文献】特表2015-532865(JP,A)
【文献】特開2003-280568(JP,A)
【文献】特表2018-512193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
H01L 33/00
F21V 19/00-19/06
F21Y 115/10
F21Y 107/70
F21Y 107/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状に形成された伸縮性シートと、
前記伸縮性シートに形成される伸縮性を備える配線と、
前記配線に電気的に接続される発光素子と、を備え
前記伸縮性シートは、平面視において第1伸縮性シートと前記第1伸縮性シートと向かい合う第2伸縮性シートを備え、
前記第1伸縮性シート及び前記第2伸縮性シートは、それぞれ、第1シート領域と、前記第1シート領域に連続して形成される第2シート領域と、を有し、
前記第1シート領域は前記発光素子が配置され、前記第2シート領域は前記発光素子が配置されておらず、
前記伸縮性シートは、前記第2シート領域に開口部分を有する発光装置。
【請求項2】
前記伸縮性シートの少なくとも一部は互いに向かい合うように配置されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光素子は、前記伸縮性シートの互いに向かい合う内側に配置される請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、前記伸縮性シートの外側に配置される請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記配線は、前記伸縮性シートにビアを有している請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記伸縮性シートの三次元形状を維持するように前記伸縮性シートの端部を接着する封止部材を有し、
前記封止部材は、前記伸縮性シートと同じ材料で形成されている請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1シート領域は、円形状又は楕円形状に形成されており、
前記第1シート領域の周縁及び前記第2シート領域の周縁が封止部材で接着されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1シート領域の周縁の一部は、連続して形成されている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1シート領域の周縁の全ては、連続して形成されている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
互いに向かい合うように配置された前記伸縮性シートの内側に気体を有する請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光装置と、
前記伸縮性シートの外側に設けられる透光性の外枠と、を備える、発光モジュール。
【請求項12】
1枚又は2枚以上であって、配線が形成された伸縮性シートを準備する工程と、
前記配線に発光素子を電気的に接続する工程と、
前記発光素子を電気的に接続する工程の前又は後において、前記伸縮性シートの周縁の一部を接着して開口を持つ袋状とする工程と、
前記袋状の伸縮性シートの開口から気体を入れて前記伸縮性シートを三次元形状に形成する工程と、を含み、
前記伸縮性シートは、平面視において第1伸縮性シートと前記第1伸縮性シートと向かい合う第2伸縮性シートを備え、
前記第1伸縮性シート及び前記第2伸縮性シートは、それぞれ、第1シート領域と、前記第1シート領域に連続して形成される第2シート領域と、を有し、
前記発光素子を電気的に接続する工程は、前記第1シート領域に前記発光素子を載置する発光装置の製造方法。
【請求項13】
配線が形成された開口を持つ袋状の伸縮性シートを準備する工程と、
前記配線に発光素子を電気的に接続する工程と、
前記伸縮性シートの開口から気体を入れて前記伸縮性シートを三次元形状に形成する工程と、を含み、
前記伸縮性シートは、平面視において第1伸縮性シートと前記第1伸縮性シートと向かい合う第2伸縮性シートを備え、
前記第1伸縮性シート及び前記第2伸縮性シートは、それぞれ、第1シート領域と、前記第1シート領域に連続して形成される第2シート領域と、を有し、
前記発光素子を電気的に接続する工程は、前記第1シート領域に前記発光素子を載置する発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記袋状とする工程は、前記伸縮性シートを折り曲げて向かい合わせ、前記伸縮性シートの向かい合う周縁の一部を接着する請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記発光素子を電気的に接続する工程は、平坦な前記伸縮性シート上で前記発光素子を接続する請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記三次元形状に形成する工程の後に、前記三次元形状にした状態を維持するように前記伸縮性シートの開口を接着する工程を含む請求項12乃至請求項15のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記開口を接着する工程において、前記開口を封止部材で接着する請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記開口を接着する工程において、前記開口の一部を溶融して接着する請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【請求項19】
前記準備する工程において、前記配線は、前記伸縮性シートにビアを有している、請求項12乃至請求項18のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項20】
前記準備する工程において、前記配線は、伸縮性を有する請求項12乃至請求項19のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項21】
前記袋状とする工程の後に、前記伸縮性シートの外側に前記伸縮性シートの少なくとも一部を覆う枠体を設ける工程を含み、
前記三次元形状に形成する工程では、前記枠体に前記伸縮性シートが当接するようにして前記三次元形状を形成する請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びその製造方法並びに発光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
部材の表面に沿って変形可能なベース基材とベース基材に設けられた複数の発光素子とを有する発光部と、供給される気体又は液体により膨張する膨張部材と、を備える光照射装置が開示されている(例えば、特許文献1)。また、バルーン及び当該バルーンに装着された複数のLEDにより発光部として構成された照明部が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-031005号公報
【文献】特開2015-176373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、変形可能な伸縮性シートに発光素子を載置した発光装置、発光モジュール、及び発光装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態に係る発光装置は、三次元形状に形成した伸縮性シートと、前記伸縮性シートに形成される伸縮性を備える配線と、前記配線に電気的に接続される発光素子と、を備える。本開示の実施形態に係る発光モジュールは、前記発光装置と、前記伸縮性シートの外側に設けられる透光性の外枠と、を備える。
【0006】
本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法は、1枚又は2枚以上であって、配線が形成された伸縮性シートを準備する工程と、前記配線に発光素子を電気的に接続する工程と、前記接続する工程の前又は後において、前記伸縮性シートを、その周縁の一部と別の一部とを接着して開口を持つ袋状とする工程と、前記伸縮性シートに前記開口から気体を入れて前記伸縮性シートを三次元形状に形成する工程と、を含む。
【0007】
本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法は、配線が形成された開口を持つ袋状の伸縮性シートを準備する工程と、前記配線に発光素子を電気的に接続する工程と、前記伸縮性シートの開口から気体を入れて前記伸縮性シートを三次元形状に形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る実施形態によれば、変形可能な伸縮性シートに発光素子を載置した発光装置、発光モジュール、及び発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図1B図1AのIB-IB線における断面図である。
図1C図1Aに示す発光装置の一部を模式的に示す斜視断面図である。
図2】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
図3A】第1実施形態に係る発光装置の製造方法において準備工程で用いる配線を形成する前の伸縮性シートの平面図である。
図3B】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の準備工程において伸縮性シートに配線を形成した状態を説明する平面図である。
図3C】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の接続工程において発光素子を配線に接続した状態を説明する平面図である。
図3D図3CのIIID-IIID線における部分断面図である。
図3E】第1実施形態に係る発光装置の製造方法において発光素子を配線に接続した後に三次元形状に形成する状態を説明する説明図である。
図4】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図5A】第2実施形態に係る発光装置の製造方法において準備工程で用いる伸縮性シートの平面図である。
図5B】第2実施形態に係る発光装置の製造方法の準備工程において伸縮性シートに配線を形成した状態を説明する平面図である。
図5C】第2実施形態に係る発光装置の製造方法の実装工程において発光素子を配線に接続した状態を説明する平面図である。
図5D図5CのBVD-VD線における部分断面図である。
図5E】第2実施形態に係る発光装置の製造方法において発光素子を配線に接続した後に三次元形状に形成する状態を説明する説明図である。
図6】第3実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図7A】第4実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図7B】第4実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図である。
図8A】各実施形態において配線の変形例を部分的に示す斜視図である。
図8B】各実施形態の伸縮性シートの変形例を模式的に示す斜視図である。
図9A】実施形態に係る発光モジュールを模式的に示す斜視図である。
図9B図9Aに示す発光モジュールを模式的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための発光装置、発光モジュール、及び発光装置の製造方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。そして、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号は、原則として同一のまたは同質の部材や構成を示すものであり、詳細な説明を適宜省略する。なお、ここでは、略楕円形、略楕円体、略円形、略球等、形状の前に略をつけて説明する場合があるが、この場合、完全な形状に当てはまらないが概ねその形状として認識できる範囲であればよい。円や球では、直径の長さが必ずしも一致しなくてもよい。例えば、直径がプラスマイナス5%の範囲内のずれであれば略円や略球ということができる。また、楕円形や楕円体は、長径もしくは短径のいずれか又は両方がプラスマイナス5%の範囲内のずれであれば、略楕円形や略楕円体ということができる。
【0011】
<第1実施形態に係る発光装置>
第1実施形態に係る発光装置の構成について、図1A乃至図1Cを参照して説明する。
図1Aは、第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。図1Bは、図1AのIB-IB線における断面図である。図1Cは、図1Aに示す発光装置の一部を模式的に示す斜視断面図である。
【0012】
発光装置10は、三次元形状に形成された伸縮性シート2と、伸縮性シート2に形成される伸縮性を備える配線3と、配線3に電気的に接続される発光素子15と、を備えている。発光装置10は、伸縮性シート2が平坦な状態のときに配線3及び発光素子15を配置する。そのため伸縮性シート2が三次元形状に形成される発光装置10を容易に製造できる。ここでは、三次元形状の一例として、伸縮性シート2が略楕円体の発光装置10を説明する。以下、発光装置10の各構成について説明する。
【0013】
(発光素子)
発光素子15は、発光装置10の光源であり、伸縮性シート2の外側(外表面)に配線3を介して配置される。発光素子15は、素子構造体11を単体で用いられる場合や、また、素子構造体11に被覆部材13や波長変換部材14を備えた場合も含んでいる。なお、ここでは、発光素子15は、素子構造体11に被覆部材13や波長変換部材14を備えた構成として説明する。
【0014】
素子構造体11は、半導体積層体に正負一対の素子電極が設けられ、例えば、主に上面と側面から光を照射し、下面に素子電極が形成される。半導体積層体は、n側半導体層およびp側半導体層と、これらに挟まれた発光層とを含む。発光層は、ダブルヘテロ接合または単一量子井戸(SQW)等の構造を有していてもよいし、多重量子井戸(MQW)のようにひとかたまりの活性層群をもつ構造を有していてもよい。半導体積層体は、可視光または紫外光を発光可能に構成されている。このような発光層を含む半導体積層体は、蛍光体を効率よく励起可能な窒化物半導体(InAlGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)で構成されたものが好ましい。この他、半導体積層体は、硫化亜鉛系半導体、セレン化亜鉛系半導体、炭化珪素系半導体で構成されたものでもよい。
【0015】
半導体積層体は、n側半導体層とp側半導体層との間に1つ以上の発光層を含む構造を有していてもよいし、n側半導体層と発光層とp側半導体層とを順に含む構造が複数回繰り返された構造を有していてもよい。半導体積層体が複数の発光層を含む場合、発光ピーク波長が異なる発光層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ発光層を含んでいてもよい。なお、発光ピーク波長が同じとは、数nm程度のばらつきがある場合も含む。複数の発光層の間の発光ピーク波長の組み合わせは、適宜選択することができる。例えば半導体積層体が2つの発光層を含む場合、青色光と青色光、緑色光と緑色光、赤色光と赤色光、紫外光と紫外光、青色光と緑色光、青色光と赤色光、または、緑色光と赤色光などの組み合わせで発光層を選択することができる。各発光層は、発光ピーク波長が異なる複数の活性層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ複数の活性層を含んでいてもよい。
素子構造体11の大きさとしては、例えば、平面視において、一辺の長さが100μm以上2mm以下の矩形のものが挙げられる。また、素子構造体11の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形を用いることもでき、これら多角形を種々組み合わせて使用してもよい。
【0016】
発光素子15は、一例として、素子構造体11の側面及び下面が被覆部材13で被覆され、素子構造体11の上面が波長変換部材14で被覆されていてもよい。また、発光素子15は、素子構造体11において波長変換部材14との間に透光性部材を有していてもよい。
ここでは、発光素子15の外形が平面視で略正方形の薄型の略直方体に形成されている。発光素子15は、透光性部材を上方に向かって厚くする(広がる)ように形成することが好ましい。透光性部材の外側の被覆部材13の内壁面(透光性部材との境界面)が、素子構造体11から側方へ放出された光を反射させて効率的に上方へ出射することができるからである。
【0017】
被覆部材13は、素子構造体11の側面及び下面を覆うことで外部環境から素子構造体11を保護している。被覆部材13は、素子構造体11の下面に設けられている素子電極を露出させるように被覆して形成されている。ここでは、被覆部材13は発光素子15の外装を構成している。被覆部材13は、素子構造体11が発光する光を光学的に制御するために、反射部材で形成されることが好ましく、例えば、樹脂部材を母材として、母材内に光反射材を含有して形成されている。母材の材料としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、または、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、または、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、光反射材としては、酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが挙げられる。これらは、粒状、繊維状、薄板片状などのいずれの形状でもよい。
【0018】
波長変換部材14は、素子構造体11の光取出面に形成され、ここでは、素子構造体11の上面全体に設けられている。波長変換部材14は、素子構造体11が発光する波長の光の一部を吸収し、異なる波長の光に変換して発光する波長変換物質を含有する部材である。波長変換部材14で用いられる波長変換物質は、例えば蛍光体である。波長変換部材14の母材あるいはバインダーは、透光性の樹脂によって形成されていることが好ましい。ここでの樹脂としては、例えば、母材あるいはバインダーとなる樹脂が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂又はその変性樹脂は、耐熱性や耐光性に優れ、硬化後の体積収縮が少ないため、好ましい。また、波長変換部材14の母材あるいはバインダーは、樹脂の他、ガラスによって形成されてもよい。
【0019】
波長変換部材14に含有される蛍光体には、公知の材料を適用することができる。波長変換部材層中の蛍光体には、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(POCl:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、SrAl1425:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、CaMgSi16Cl:Eu)、窒化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I))、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInSまたはAgInSe)等を用いることができる。窒化物系蛍光体の例は、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)、αサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)およびSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)等であり、フッ化物系蛍光体の例は、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、KSi0.99Al0.015.99:Mn)およびMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)等である。
【0020】
(伸縮性シート)
配線基板20は、基材として伸縮性を備える伸縮性シート2と、伸縮性シート2に形成した配線3とを備えている。伸縮性シート2は、一例として、伸縮性を備える絶縁性のシートである。伸縮性シート2は、1枚又は2枚以上が接ぎ合わされてシート状に形成されている。伸縮性シート2は、内部に気体を封入されることによって所望の三次元形状となる形状に形成されている。伸縮性シート2は、例えば、第1シート領域2bと、第1シート領域2bに連続する第2シート領域2fとを備えている。そして、伸縮性シート2は、第1シート領域2bに配線3及び発光素子15を配置し、第2シート領域2fに配線3及び気体を封入できる開口部分となる封入口4を有するように形成されている。
【0021】
第1シート領域2bは、発光素子15を配置する部分であり、第2シート領域2fは、発光素子15を配置することなく外部と電気的な接続を行う部分である。伸縮性シート2の第1シート領域2bは、一例として、気体を封入すると略球あるいは略楕円体となる形状に形成される。なお、ここでは、第1シート領域2bは、略楕円形として形成されている。また、伸縮性シート2の第2シート領域2fは、第1シート領域2bの一端に、気体を封入するための開口部分となる封入口4が突出するように形成されている。第1シート領域2bは、第2シート領域2fよりも面積が大きくなるように形成されている。また、伸縮性シート2は、内部に気体が封入されていない状態では、平坦な状態が維持されるような材質で形成されている。伸縮性シート2は、少なくとも一部が向かい合うように形成され、ここでは、裏面(内面)全体が互いに向き合うように形成されている。
【0022】
伸縮性シート2は、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22を重ね合わせて、封入口4となる開口部分を除いて、対向する縁同士を接着して形成される。第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22は、対称軸から互いに線対称になるように形成されていることが好ましい。そして、伸縮性シート2は、互いに向き合うように配置された内側となる内部に気体を有する。伸縮性シート2は、気体を注入して略楕円体に形成してから、封入口4を接着して塞ぐことにより形成される。なお、使用される気体としては、特に気体の種類は限定されず、例えば、空気、窒素、二酸化炭素等を適用することができ、伸縮性シート2の成分と反応せず、また不燃性のものが好ましく、特に不活性な窒素が好ましい。また、伸縮性シート2は、開口部分となる封入口4に逆止弁構造が設けられていてもよい。逆止弁構造により、気体を注入した後、開口を塞ぐまでに開口から気体が流出し難くすることができる。
【0023】
伸縮性シート2は、所望の立体面形状を形成できるだけの伸び率、及び三次元形状を維持するために気体を漏出させないガスバリア性を有し、発光素子15を実装可能な構成であればよい。伸縮性シート2の材料としては、例えば、UVテープ、各種プラスチック、ゴム、樹脂等が挙げられる。ゴムの具体例としては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴムなどが挙げられる。また、樹脂の具体例としては、ポリジメチルシロキサンのようなシリコーン系ポリマーやウレタン系ポリマー等のエラストマーが挙げられる。また、ポリイミド(PI)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる樹脂フィルムを用いてもよい。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂などの熱可塑性樹脂を用いてもよい。なかでも、伸縮性シート2は、発光素子15から発生する熱に対する耐熱性、及び配線3の形成時等の温度に対する耐熱性を有していることが好ましいため、シリコーンゴムからなることがより好ましい。例えば、配線3の形成時等の温度とは、配線3が例えば導電性ペーストで形成されるのであれば焼成温度80℃以上300℃以下であり、その他、発光素子6を接合する接合部材5の硬化温度80℃以上300℃以下である。伸縮性シート2は、その材料に応じて、必要な強度と可撓性等を有する厚さに形成され、具体的には、50μm以上50mm以下が好ましく、200μm以上20mm以下であることがさらに好ましい。伸縮性シート2の伸び率は、5%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましい。一方、配線3の破断や剥離を抑制するために、伸縮性シート2は伸び率700%以下が好ましく、500%以下がさらに好ましく、300%以下が特に好ましい。伸縮性シート2の物性としては、およそ弾性率が1-100MPa程度、ヤング率は1から50MPaを有していることが好ましい。
【0024】
封止部材5は、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22の端部を接合する。封止部材5は、接着剤として、硬化後において第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22と同程度の伸縮性を有する材料が好ましい。封止部材5は、例えば、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22と同じ部材で形成されることがより好ましい。封止部材5は、溶融あるいは半硬化した状態で用いられる。封止部材5は、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22がシリコーンゴムであれば、同様にシリコーンゴムが使用されることが好ましい。
【0025】
(配線)
配線3は、発光素子15の正極、負極のそれぞれに接続し、外部から電流を供給するための導体である。配線3は、伸縮性を備えている。また、配線3は、例えば、伸縮性シート2の表面上に形成されている。配線3は、発光素子15の接続箇所に合わせて配置され発光素子15の電極12a,12cに接合するパッド部3pと、パッド部3pよりも幅が狭い配線部3bと、伸縮性シート2の第2シート領域2fの部分に配置されて発光装置10に対して外部電極に接合する入力パッド3iと、を備えている。配線3は、伸縮性シート2が伸張している状態を考慮して所望の間隔で配置されるように、配線3のパターンが形成される。すなわち、配線3は、伸縮性シート2が例えば略楕円体となったときに発光素子15の電極12a,12cに電気的に接続できるように形成される。なお、配線3は、発光素子15を直列あるいは並列のどちらに接続するようにしてもよい。配線3は、伸縮性を有する導電性部材で形成され、硬化後も伸縮性を備えている。例えば、銅や銀等の金属粒子を伸縮性の高い変成シリコーンやシリコーンゴム等の樹脂材料に混合した伸縮性の導電性ペースト、又はポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸のような導電性ポリマーが挙げられる。伸縮性の導電性ペーストは、含有する金属粒子に起因して電気伝導性が供されると共に、母材である樹脂材料に起因して伸縮性が供される。この場合の伸縮性は、水平方向における伸び縮みの特性を意味している。この時、樹脂材料は5%から80%の伸び率を有することが好ましい。金属粒子の形状は平たく細長い扁平形状やアスペクト比が10から10000である形状が好ましい。樹脂材料中で金属粒子同士を面接触させることができるからである。面接触をしていることで樹脂材料を伸長した際に、金属粒子同士の接触が保つことができるからである。
【0026】
配線基板20は、配線3の配線部3bの少なくとも一部を被覆する絶縁材料からなる保護膜を備えていてもよい。保護膜は、配線3のパッド部3pの領域、及び入力パッド3iの領域を避けて形成される。保護膜は、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22の第1シート領域2bに設けられる場合には、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22と同程度以上の伸び率を有することが好ましい。また、酸化チタン等の光反射材を添加した反射膜であることが好ましい。保護膜は、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22上に配線3を形成した後に、絶縁ペーストを塗布したりフィルムを貼り合わせたりして形成することができる。
【0027】
<第1実施形態に係る発光装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係る発光装置の製造方法について、図2図3A乃至図3Eを参照して説明する。
図2は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。図3Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法において準備工程で用いる配線を形成する前の伸縮性シートの平面図である。図3Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の準備工程において伸縮性シートに配線を形成した状態を説明する平面図である。図3Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の接続工程において発光素子を配線に接続した状態を説明する平面図である。図3Dは、図3CのIIID-IIID線における部分断面図である。図3Eは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法において発光素子を配線に接続した後に三次元形状に形成する状態を説明する説明図である。
以下、各工程について説明する。なお、各部材の材質や配置等については、前記した発光装置10の説明で述べた通りであるので、ここでは、適宜、説明を省略する。
【0028】
発光装置の製造方法は、1枚又は2枚以上であって、配線3が形成された伸縮性シート2を準備する工程S11と、配線3に発光素子15を電気的に接続する工程S12と、発光素子15を電気的に接続する工程S12の前又は後において、伸縮性シート2を、その周縁の一部と別の一部とを接着して開口(封入口4)を持つ袋状とする工程S13と、袋状の伸縮性シートの開口から気体を入れて伸縮性シート2を三次元形状に形成する工程S14と、を含んでいる。さらに、発光装置の製造方法では、形成する工程S14の後に必要に応じて、伸縮性シート2の開口を封止する封止工程S15を行うことが好ましい。
【0029】
(準備する工程)
準備する工程(以下、準備工程)S11は、1枚又は2枚以上であって、配線3が形成された伸縮性シート2を準備する工程である。この準備工程S11では、平坦な状態の第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22にそれぞれ配線3が形成される。準備工程S11は、一例として、第1シート領域2bと第1シート領域2bに連続する第2シート領域2fとを有する第1伸縮性シート21と、第1シート領域2bと第1シート領域2bに連続する第2シート領域2fとを有する第2伸縮性シート22とを形成し、形成した第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22に配線3を形成したものを準備する。第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22は、三次元形状になったときの状態を予め想定して形成されており、伸張したときに第1シート領域2bが、一例として、略楕円体になる形状に形成されている。
【0030】
第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22の外表面となる位置に配線3は形成される。第1シート領域2bには、パッド部3pと、各パッド部3pを連続する配線部3bとが形成される。第2シート領域2fには、配線部3bと連続して形成される入力パッド3iが形成される。なお、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22は、平坦であるため、配線3を形成し易い。
配線3は、使用する材料に適した方法で第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22の各表面にパターン形成される。例えば、導電性ペーストをスクリーン印刷等でパターン形成し、その後、導電性ペーストに応じた条件で焼成して硬化させる。また、配線3は、少なくとも配線部3bが伸縮性を有していればよく、パッド部3pや入力パッド3iは金属膜等で形成することもできる。
【0031】
(接続する工程)
接続する工程(以下、発光素子接続工程)S12は、配線3に発光素子15を電気的に接続する工程である。発光素子接続工程S12では、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22を、例えば、水平方向に引っ張った状態で発光素子15を接続することが好ましい。この時、伸長させる範囲が後記する三次元形状に形成する工程S14と同じ程度であることがさらに好ましい。伸長する方向は、工程S14と同じでも異なっていてもよいが、発光素子15の接続のしやすさから工程S14と異なる方向が好ましい。ここでは、水平方向に伸張させることで、平らな状態の伸縮シート2上で発光素子15を配線3に電気的に接続することができる。この発光素子接続工程S12により発光素子15が配線3に接続されると、水平方向に伸張させていた状態を解除する。
【0032】
発光素子15の電極12a,12cは、配線3のパッド部3pに導電性の接合材料を介して接着することが好ましい。接合材料は、例えば、配線3と同様の導電性ペーストや、クリームはんだ等を適用することができる。発光素子15を接着した後、必要に応じて加熱して接合材料を硬化させる。なお、最終形態では、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22は、略楕円体となるように三次元形状として曲面を有する。
【0033】
(袋状にする工程)
袋状にする工程(以下、袋成形工程)S13は、発光素子15を電気的に接続する工程の前又は後において、1枚又は2枚以上の伸縮性シート2を、その周縁の一部と別の一部とを接着して開口を持つ袋状とする工程である。ここでは、2枚の伸縮性シート2を発光素子接続工程S12の後に袋状とする場合を説明する。袋成形工程S13は、第1伸縮性シート21と第2伸縮性シート22とを、表面(配線3を形成された面)を外側にして重ね合わせ、開口部分を除き周縁となるとじ代21m,22mにおける裏面同士を封止部材5で接着している。なお、この工程S13では、接着剤としての封止部材5を使用せず、熱圧着で第1伸縮性シート21と第2伸縮性シート22とを接合してもよい。これにより、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22の周縁のとじ代21m,22mのない部分(端辺)を開口とする袋状の伸縮性シート2が形成される。
【0034】
(形成する工程、封止工程)
形成する工程(以下、三次元形状形成工程)S14は、袋状の伸縮性シートの開口から気体を入れて伸縮性シート2を三次元形状に形成する工程である。この三次元形状形成工程S14では、図3Eに白抜き矢印で示すように、伸縮性シート2にその開口部分から気体を注入して伸縮性シート2を膨らませて、二点鎖線で表すように三次元形状に形成する。三次元形状形成工程S14では、伸縮性シート2が予め設定されている形状の大きさになるまで気体が入れられる。なお、気体を伸縮性シート2に入れるときに、浮袋等で使用される空気弁を封入口4に装着してもよい。
【0035】
封止工程S15は、三次元形状に形成する工程の後に、三次元形状にした状態を維持するように伸縮性シート2の開口する部分である封入口4を接着する工程である。封止工程S15は、伸縮性シート2が三次元形状を維持できるように、三次元形状形成工程S14と併せて行うことが好ましい。封止工程S15では、伸縮性シート2の開口部分である封入口4を封止部材5を介して接着して塞いでいる。三次元形状形成工程S14と封止工程S15では、例えば、伸縮性シート2の第1シート領域2bと第2シート領域2f(図3A参照)との境界近傍に外部から挟んで支持するクリップ等を用いる。そして、クリップの挟む力に抗して強制的に、気体を入れる管の先端を挿入して、この管から気体を伸縮性シート2内に注入する。管から気体を伸縮性シート2内に入れているときにはクリップが管と封入口4との間から気体が抜けないように挟んでいる。そして、伸縮性シート2が所望の三次元形状になるまで気体を注入し、伸縮性シート2の封入口4から管を抜き取り、クリップで封入口4を挟んで気体の流出を防ぐ。さらに、クリップで挟んでいない部分の第2シート領域の内側に接着剤である封止部材5を塗布して開口を塞ぐ。
【0036】
<第2実施形態に係る発光装置>
つぎに、第2実施形態に係る発光装置について図4を参照して説明する。なお、既に説明した構成と同じ構成の部分について同じ符号を付して適宜説明を省略する。図4は、第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
【0037】
発光装置10Bは、三次元形状に形成した伸縮性シート2Bと、伸縮性シート2Bに形成される伸縮性を備える配線3と、配線3に電気的に接続される発光素子と、を備えている。そして、伸縮性シート2Bは、平面視で、互いに線対称な第1伸縮性シート21と第2伸縮性シート22とが、第1シート領域2bの周縁の一部である接続部分FLによって連続している形状を有する。接続部分FLは、第1伸縮性シート21と第2伸縮性シート22の対称の軸に平行であることが好ましく、対称の軸と一致することがより好ましい。
つまり、発光装置10Bでは、伸縮性シート2Bが略長楕円体を有し、1枚で形成されている。そのため、第1実施形態の伸縮性シート2と比較して継ぎ目が少ない。したがって、発光装置10Bは、伸縮性シート2Bが形成する楕円体の接続部分FLにも発光素子15を配置することができる。
【0038】
<第2実施形態に係る発光装置の製造方法>
以下、発光装置の製造方法について、図5A乃至図5Eを参照して説明する。図5Aは、第2実施形態に係る発光装置の製造方法において準備工程で用いる伸縮性シートの平面図である。図5Bは、第2実施形態に係る発光装置の製造方法の準備工程において伸縮性シートに配線を形成した状態を説明する平面図である。図5Cは、第2実施形態に係る発光装置の製造方法の実装工程において発光素子を配線に接続した状態を説明する平面図である。図5Dは、図5CのVD-VD線における部分断面図である。図5Eは、第2実施形態に係る発光装置の製造方法において発光素子を配線に接続した後に三次元形状に形成する状態を説明する説明図である。
【0039】
発光装置の製造方法は、配線3が形成された平坦な一枚の伸縮性シートを準備する工程(準備工程)S11と、配線3に発光素子15を電気的に接続する工程(発光素子接続工程)S12と、発光素子15を電気的に接続する工程S12の前又は後において、伸縮性シート2Bを、その周縁の一部と別の一部とを接着して開口部分(封入口4)を持つ袋状とする工程(袋成形工程)S13と、袋状の伸縮性シートの開口部分から気体を入れて伸縮性シート2Bを三次元形状に形成する工程(三次元形状形成工程)S14と、を含んでいる。そして、発光装置の製造方法は、袋状の伸縮性シートの開口部分を封止する封止工程S15をさらに備えている。
【0040】
準備工程S11では、前記実施形態に係る製造方法と同様に、所定の平面視形状に切断して伸縮性シート2Bを形成する。この伸縮性シート2Bは、線対称な平面視形状となるように形成される。次に、伸縮性シート2Bの一面(表面)に、配線3を形成して、配線基板20Bとする。伸縮性シート2Bは、平面視において、接続部分FLを除いて、所定の幅のとじ代2mを有する。とじ代2mを避けて配線3のパターンを形成することが好ましい。ここでは伸縮性シート2Bが一枚の平坦なシートから成るため、接続部分FLの位置においてもパッド部3pを設けることができる。
【0041】
(発光素子接続工程、袋成形工程)
発光素子接続工程S12は、配線基板20Bの表面に形成された配線3に、発光素子15を電気的に接続する。ここでは、接続部分FLの位置にも発光素子15が接続される。
袋成形工程S13は、伸縮性シート2Bを折り曲げて向かい合わせ、伸縮性シート2Bの向かい合う周縁の一部を接着することで袋状とする。つまり、ここでは、伸縮性シート2Bの対称の軸となる接続部分FLを折り線として発光素子15と配線が表側になるようにして二つ折りにし、重なり合う伸縮性シート2Bのとじ代2mの裏面同士を接着する。
三次元形状形成工程S14、封止工程S15は、既に説明した製造方法と同様に行うことができる。
【0042】
<第3実施形態に係る発光装置>
次に、第3実施形態に係る発光装置について図6を参照して説明する。なお、既に説明した構成と同じ構成の部分について同じ符号を付して適宜説明を省略する。図6は、第3実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
発光装置10Cは、三次元形状に形成した伸縮性シート2と、伸縮性シート2に形成される伸縮性を備える配線3と、配線3に電気的に接続される発光素子15と、を備えている。発光装置10Cでは、伸縮性シート2の内側の面に配線3が形成されており、その配線に発光素子15が接続されている。つまり、発光装置10Cでは、第1実施形態の伸縮性シート2の内と外を裏返した構成である。
そのため、伸縮性シート2は、発光素子15からの光を透過しやすい部材で形成されている。伸縮性シート2は、光の透過性が高い構成(材料、厚さ)とすることが好ましい。また、伸縮性シート2は、光を拡散させて透過する構成としてもよい。配線3の配線部3bは、光を多く遮らないように、導電性及び強度を確保できる範囲で幅狭に形成されることが好ましい。
【0043】
発光装置10Cは、第1実施形態に係る発光装置10を図6に示す発光装置の製造方法で製造するのと同様に製造することができる。ただし、袋成形工程S13において、第1伸縮性シート21と第2伸縮性シート22とを発光素子15が内側に来るようにして重ね合わせてとじ代同士を接着する。なお、発光装置10Cは、第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22の2枚からなる伸縮性シート2に代えて、第2実施形態の伸縮性シート2Bで形成することもできる。
【0044】
<第4実施形態に係る発光装置>
第4実施形態に係る発光装置の構成について、図7A及び図7Bを参照して説明する。図7Aは、第4実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。図7Bは、第4実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図である。なお、図7A及び図7Bにおいて配線の記載を省略している。なお、既に説明した構成と同じ構成の部分について同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0045】
発光装置10Dは、枠体40を介して立体面形状に形成した伸縮性シート2Dと、伸縮性シート2Dに形成される伸縮性を備える配線と、この配線に電気的に接続される発光素子15と、を備えている。発光装置10Dでは、伸縮性シート2Dは、枠体40に沿うように、中空で内部に気体が封入されている。ここでは、伸縮性シート2Dは、略球面を有している。配線は、ソケット(コネクタ)65の部分に接続されるように形成されている。伸縮性シート2Dは、平面視形状が略紡錘形に形成された、第1伸縮性シート23D1、第2伸縮性シート23D2、第3伸縮性シート23D3を枠体40に封止部材を介して接続されて形成されている。発光装置10Dにおいて、配線は、伸縮性シート2Dの表面に形成され(図1A等参照)発光素子15の設置個所に合わせてパターン形成されている。
【0046】
第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3は、それぞれ第1シート領域23bに配線及び発光素子15を配置し、第1シート領域23bに連続する第2シート領域23fに外部との接続を行うソケット65と電気的に接続されるように配線が形成されている。第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3のぞれぞれの第2シート領域23fは、ソケット65に収納されて、ソケット65が外部と電気的に接続されるときに発光素子15に通電できるように形成されている。
【0047】
枠体40は、伸縮性シート2Dの三次元形状の骨格を構成し、樹脂や金属等の板材で形成される。枠体40は、半円弧状に湾曲した3本のフレームと、フレームのそれぞれの上下の端部を互いに接続するように形成されている。また、一方の端部には、筒状のソケット65の内周面に第2シート領域2fを挟み込むことができるように基部を備えている。また、ソケット65は、外側に接続する外部との電気的な接続ができるように形成されている。そのため、ソケット65の内側とフレームの基部とで第2シート領域2fを挟み込むことで、第2シート領域23fに形成されている配線とソケット65の内側に形成されている電極部分とが電気的に接続される。なお、図7A及び図7Bにおいては、伸縮性シート2Dが枠体40の外側の面に貼り合わされているが、枠体40の内側の面に貼り合わされていてもよい。伸縮性シート2Dは、枠体40を備えることにより、所望の三次元形状に形成され易くかつ変形し難く、また、大型化が容易となる。さらに、発光装置10Dは、枠体40を備えることで、枠体40が三次元形状を維持することができるので、内部に気体を入れることなくまたは留めることなく三次元形状を維持することが可能となる。
【0048】
発光装置10Dは、第2実施形態に係る発光装置10Cのように、発光素子15を伸縮性シート2Dの内側に備えることもできる。また、発光装置10Dにおいて、枠体40が、配線の一部を構成することもできる。この場合には、枠体40のフレームを偶数本、例えば4本として金属板等の導体で形成し、基部及び頂部を絶縁材で形成して、隣り合うフレーム同士が導通しないようにする。また、伸縮性シートは、フレームの数に合わせて同数とする。そして、フレームを交互に正極、負極とし、伸縮性シートの2辺の一方に正極の配線の入力パッド、他方に負極の配線の入力パッドを形成することとしてもよい。なお、発光装置10Dでは、一例として、発光素子15が、図7Bに示すように、平面視において、同心円状に配置されている。発光素子15の配置は、同心円状に配置したときに、各同心円の間隔が異なるように配置してもよく、その配置はランダムであることや、他の規則性を持たせて配置すること等、特に限定されるものではない。
【0049】
<第4実施形態に係る発光装置の製造方法>
以下、発光装置の製造方法について説明する。発光装置の製造方法では、配線3が形成された第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3を準備すると共に、三次元形状の骨格となる枠体40を準備する準備工程と、配線3に発光素子15を電気的に接続する工程S12と、第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3を、その周縁の一部を枠体40とを接着して開口(封入口4)を持つ袋状とする袋成形工程と、袋状の伸縮性シートの開口から気体を入れて伸縮性シート2を三次元形状に形成する三次元形状形成工程と、を含んでいる。なお、この製造方法において、枠体40に第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3を接続することで三次元形状を形成することもできる。この場合、枠体40に第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3を伸張させて接着することで予め設定されている形状となる場合には、三次元形状形成工程は、省略することができる。
【0050】
準備工程では、3枚の伸縮性シートとなる第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3の各表面に配線を形成する。準備工程で準備される枠体40は、第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3が接着剤となる封止部材を介して接続されるため、第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3と同等な素材で形成されることが好ましい。ただし、枠体40は伸縮する必要がないので、可塑材等の伸縮に影響する材料の添加を抑制したものを使用することが好ましい。
【0051】
また、図7Aで示すように、枠体40は、第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3と併せて略球体を形成するように3本のフレームがそれぞれ弧を描くように形成されている。枠体40の下端側には、フレームから筒状に突出する部分がある。なお、枠体40は、フレームにより最終形態の骨格となる形状を、単数あるいは複数の伸縮性シートと共に形成することができるものであれば、その本数や形状は限定されるものではない。
そして、発光素子を接続する工程では、配線を形成した第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3に発光素子15を接続する。
【0052】
袋成形工程において、枠体40に第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3を接続する場合、第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3が枠体40に沿って曲線を形成していれば伸張させてもさせなくてもよい。筒状に突出する部分の外周面に第1伸縮性シート23D1乃至第3伸縮性シート23D3の第2シート領域2fが沿って配置される。そして、三次元形状形成工程により、筒状の突出している部分の開口から内部に気体が充填される。封止工程により、気体が充填された後は開口が封止される。なお、封止工程の後に、外部との電気的な接続を行うためのソケット65を装着する工程が行われる。
【0053】
<発光装置の変形例>
図8Aは、各実施形態の発光装置において配線の変形例を部分的に示す斜視図である。伸縮性シート2Aは、ビアを有している。配線3Aは、伸縮性シート2Aの表面に形成されたパッド部31と、裏面に形成された配線部32と、ビア配線33と、を備えている。ビア配線33は、伸縮性シート2Aのビアに導電性部材を充填して、パッド部31と配線部32とを電気的に接続している。また、ビア配線33は、配線部32と同様に伸縮性を有する導電性部材で形成されることが好ましい。パッド部31は、配線基板20における配線3のパッド部3pと同様に、発光素子15の電極12a,12cとの接続箇所に合わせて形成される。
【0054】
〔発光装置の製造方法の変形例〕
準備工程S11では、配線3(または配線3A)を形成してから第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22をそれぞれの平面視形状に切り出してもよい。このような手順により、大判の伸縮性シートに複数の配線基板20の分の配線3を同時に形成することが容易となる。
また、発光装置の製造方法において、袋成形工程S13を省略することもできる。すなわち、発光装置の製造方法では、配線が形成された開口を持つ袋状の伸縮性シートを準備する準備工程S11と、配線に発光素子を電気的に接続する発光素子接続工程S12と、伸縮性シートの開口から気体を入れて伸縮性シートを三次元形状に形成する三次元形状形成工程S14と、を含むこととしてもよい。
【0055】
この発光装置の製造方法では、図8Bに示すように、予め袋形状に形成した伸縮性シート2Hを用いるため、袋成形工程S13を必要としない。なお、袋状に形成されている伸縮性シート2Hは、予め形成された型を、伸縮性シートの材料が溶融して収納されている溶融プールのなかに付けて乾燥させることで形成することができる。また、伸縮性シート2Hは、平坦な状態で配線3及び発光素子15を形成することができる。例えば、表側及び裏側に配線3を形成した後、表側及び裏側の配線3に発光素子15を接続する。ここで使用される伸縮性シート2Hは、第1領域の周縁のすべてが一体で連続している。つまり、伸縮性シート2Hは、封入口を有する袋状に形成されている。
【0056】
発光素子接続工程S12は、平坦な状態の第1伸縮性シート21及び第2伸縮性シート22或いは伸縮性シート2H等のそれぞれに発光素子15を接続することができるので、最終形態が曲面を備える構成の発光装置であっても製造を容易に行うことができる。
また、予め袋状に形成されている伸縮性シート2Hの内側に配線3及び発光素子15を配置するには、伸縮性シート2Hの表面側に配線3及び発光素子15を配置し、その後、伸縮性シート2Hを裏返すようにして、配線3及び発光素子15をシート裏面側に配置することができる。
【0057】
〔発光モジュール〕
次に、発光装置を使用した発光モジュールについて図9A及び図9Bを参照して説明する。図9Aは、実施形態に係る発光モジュールを模式的に示す斜視図である。図9Bは、図9Aに示す発光モジュールを模式的に示す分解斜視図である。
発光モジュール100は、発光装置10を内蔵し、本体ケース61及び光を透過する外枠であるカバー62を備えている。発光モジュール100は、発光装置10の配線基板20に接続するソケット65を介して電源に電気的に接続できるように形成されている。
【0058】
本体ケース61は、遮光性の有底円筒形状に形成されており、一端側の開口から発光装置10を装着するようになっている。なお、本体ケース61は、内部に乾電池等の電源を備えており、その電源に発光装置10のソケット65が着脱自在に接続して電気的に導通するように形成されている。
カバー62は、ドーム形状で、本体ケース61の開口に着脱自在に取り付けることができるように形成されている。カバー62は、アクリルやポリカーボネート等の樹脂又はガラスで形成され、光を透過するように透光性の部材で形成されている。
ソケット65は、いわゆる口金であり、ねじ込み型や差し込み型等の一般的な構成とすることができ、一対の外部電極がソケット外表面に形成されている。
【0059】
本体ケース61及びカバー62は、発光装置10を収容可能であれば、任意の形状、大きさに形成することができる。特に、図9Aに示すように、カバー62が発光装置10の上半分程度を覆う構成であるため、発光装置10は、略楕円体の上側半分に発光素子15が配線3に接続されている。なお、本体ケース61及びカバー62の構成によっては、カバー62の範囲を拡張して、略楕円体を形成する発光装置10の下方にも発光素子15を接続して発光範囲を広くした構成として発光モジュールを形成しても構わない。また、発光モジュール100は、発光装置10に代えて、発光装置10A,10B,10C,10Dを備えることもできる。また、照明装置や各種光源に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示に係る発光装置及び発光モジュールは、照明装置や各種光源に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
2、2A、2B、2D、2H 伸縮性シート
2b、23b 第1シート領域
2f、23f 第2シート領域
2m、21m、22m とじ代
3、3A 配線
3b 配線部
3i 入力パッド
3p パッド部
4 封入口
5 封止部材
10、10A、10B、10C、10D 発光装置
11 素子構造体
13 被覆部材
14 波長変換部材
15 発光素子
20 配線基板
20B 配線基板
21、23D1 第1伸縮性シート
22、23D2 第2伸縮性シート
23D3 第3伸縮性シート
31 パッド部
32 配線部
33 ビア配線
40 枠体
61 本体ケース
62 カバー(外枠)
65 ソケット
100 発光モジュール
FL 接続部分
S11 準備工程(準備する工程)
S12 発光素子接続工程(接続する工程)
S13 袋成形工程(袋状にする工程)
S14 三次元形状形成工程(形成する工程)
S15 封止工程
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B