(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02 20060101AFI20240502BHJP
H01S 5/023 20210101ALI20240502BHJP
H01S 5/02355 20210101ALI20240502BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240502BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20240502BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240502BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01S5/02
H01S5/023 ZNM
H01S5/02355
H01L23/12 F
H01L23/14 C
H01L23/02 F
H01L23/36 C
(21)【出願番号】P 2022176221
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2017251781の分割
【原出願日】2017-12-27
【審査請求日】2022-12-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 英典
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-346029(JP,A)
【文献】特開2005-123457(JP,A)
【文献】特開平07-176820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 33/00-33/64
H01L 23/34-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に発光部が実装され、
前記発光部は、CVDダイヤモンドからなるサブマウント上に接合された半導体レーザ素子を有し、
前記サブマウントの全ての側面に上面の外形と下面の外形とを繋ぐ上面側から下面側にかけて広がる傾斜面が設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記サブマウントの厚みは、50~300
μmであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記基体は金属材料から形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記半導体レーザ素子から出射された光を上方に反射させる反射面を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザを備えた光源装置が様々な産業分野で用いられている。その中には、基体上に
SiCサブマウント及びダイヤモンドサブマウントが順次積層され、ダイヤモンドサブマト上に半導体レーザ素子が実装された光源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光源装置では、基体及び半導体レーザ素子の間に異なる材料からなる2つのサブマウントが積層されているので、基体及び半導体レーザ素子の熱膨張率の差に起因する熱応力を緩和することができる。また、ダイヤモンドサブマウントは高い熱伝導率を有するので、温度差を抑制して熱応力緩和に寄与する。
【0005】
しかし、ダイヤモンドサブマウントの側面断面形状は略矩形なので、熱を半導体レーザ素子側から基体側に流すとき、外側へ広げるように放熱することはできない。よって、十分な放熱性能が得られず、熱応力緩和が不十分で、光源装置の信頼性に問題が生じる可能性がある。
更に、半導体レーザ素子が矩形の断面形状のダイヤモンドサブマウントの略中央に配置されているので、半導体レーザ素子からの出射光の広がり角によっては、出射光がダイヤモンドサブマウントの上面と干渉して、発光効率が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、発光効率が高くかつ信頼性の高い光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る光源装置では、
基体と、
前記基体上に接合された第2サブマウントと、
前記第2サブマウント上に接合されたCVDダイヤモンドからなる第1サブマウントと、
前記第1サブマウント上に接合された半導体レーザ素子と、
を備え、
前記第1サブマウントの少なくとも1つの側面に下方に広がる傾斜面が設けられ、前記傾斜面の上辺と前記半導体レーザ素子の出射面とが略同一面上に位置するように前記半導体レーザ素子が配置されている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明に係る実施形態では、発光効率が高くかつ信頼性の高い光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る光源装置の模式的な斜視図である。
【
図3A】
図2に示す光源装置の発光部を拡大して示した図であって、本発明に係る発光部の1つの側面形状を模式的に示す側面図である。
【
図3B】
図3Aに示す発光部の平面形状の1つの例を示す平面図である。
【
図3C】
図3Aに示す発光部の平面形状のその他の例を示す平面図である。
【
図4A】本発明に係る発光部のその他の側面形状を模式的に示す側面図である。
【
図4B】
図4Aに示す発光部の平面形状の1つの例を示す平面図である。
【
図4C】
図4Aに示す発光部の平面形状のその他の例を示す平面図である。
【
図5】第1サブマウントの厚みを変動させたときの、光源装置の熱抵抗をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する光源装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0011】
(1つの実施形態に係る光源装置)
はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る光源装置の説明を行う。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る光源装置の模式的な斜視図である。
図2は、
図1のA-A断面を示す側面断面図である。なお、
図2の半導体レーザ素子及びサブマウントの部分については、断面ではなく側面で示してある。
本実施形態に係る光源装置2は、基体4及び端子保持部材(外周壁)6で構成されたパッケージを有する。このパッケージの中の端子保持部材(外周壁)6で囲まれた基体4上に、半導体レーザ素子10を有する発光部40が実装されている。
【0012】
後述するように、発光部40は、第3ろう材32を介して、基体4の上面4Aに接合された第2サブマウント30と、第2ろう材22を介して、第2サブマウント30上に接合されたCVDダイヤモンドからなる第1サブマウント20と、第1ろう材12を介して、第1サブマウント20上に接合された半導体レーザ素子10とを備える。
【0013】
発光部40の両側には、リード端子14A、14Bが配置され、リード端子14A、14Bは、端子保持部材(外周壁)6に設けられた貫通穴を通って、パッケージの外部にまで延びている。リード端子14A、14Bは、各貫通穴に充填された端子封止材16A、16Bにより、端子保持部材(外周壁)6にシールされた状態で取り付けられている。
【0014】
リード端子14A、14B及び半導体レーザ素子10の正負電極は、ワイヤよって電気的に接続(ワイヤボンディング)されている。これにより、外部からの電力が、リード端子14A、14B及びワイヤを介して給電され、半導体レーザ素子10が発光する。また、端子保持部材(外周壁)6における半導体レーザ素子10の出射側に、透光性を有する窓8が取り付けられている。これにより、半導体レーザ素子10からの出射光が窓8を透過して、光源装置2の外部へ出射されるようになっている。
【0015】
基体4を形成する材料としては、熱伝導率の高い材料が好ましく、銅または銅合金を例示することができる。ただし、これに限られるものではなく、アルミ材料、ステンレス材料をはじめとするその他の任意の金属材料を用いることができる。更に、基体4の表面に金めっきを施すことにより、発光部40との密着性を高めることができる。
端子保持部材(外周壁)6を形成する材料としては、端子封止材16A、16Bと線膨張係数が近い材料であり、かつ窓8と線膨張係数が近い材料であることが好ましい。具体的には、SPC材料や、コバール材料を例示することができ、それらの複数の材料を組合せるとよりより信頼性の高いものとすることができる。ただし、端子保持部材(外周壁)6の材料は、これに限られるものではなく、用途に応じて、その他の任意の材料を採用することができる。
【0016】
窓8を形成する材料は透光性を有する材料であり、具体的には、ガラスを例示することができる。ただし、窓8の材料は、これに限られるものではなく、透光性を有するものであれば、石英をはじめとするその他の材料を採用することもできる。また、入射面となる窓8の半導体レーザ素子10側の面には、光反射防止膜が設けられているのが好ましい。窓8及び端子保持部材(外周壁)6は、低融点ガラスや適当なろう材等で固定することが好ましい。
【0017】
リード端子14A、14Bを形成する材料として金属材料を例示でき、表面には金めっきが施されているものが好ましい。具体的な金属材料としては、Fe-Ni、コバール、銅を例示することができるが、これに限られるものではない。端子封止材16A、16Bの材料としては、ガラス材料またはアルミナ等のセラミックを例示することができる。
【0018】
(1つの実施形態に係る発光部)
次に、
図3Aを参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る発光部の説明を行う。
図3Aは、
図2に示す光源装置2の発光部40を拡大して示した図であって、本発明に係る発光部40の1つの側面形状を模式的に示す側面図である。
【0019】
本実施形態に係る発光部40は、第3ろう材32を介して、基体4の上面4Aに接合された第2サブマウント30と、第2ろう材22を介して、第2サブマウント30上に接合されたCVDダイヤモンドからなる第1サブマウント20と、第1ろう材12を介して、第1サブマウント20上に接合された半導体レーザ素子10とを備える。
【0020】
第2サブマウント30の材料としては、AlN、SiC、アルミナ等のセラミック材料を例示できるが、放熱特性の観点から、熱伝導率の高いAlNまたはSiCが好ましい。第2サブマウント30の厚みとしては、100~300μmが好ましい。
【0021】
第1サブマウント20は、炭化水素の混合気体による化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposition)を用いて製造された合成ダイヤモンドである、CVDダイヤモンドから形成されている。第1サブマウント20の厚みとしては、50~300μmを例示することができる。仮に厚みが50μm未満になると、十分な強度を得られない場合があり、厚みが300μmを越えると、放熱特性が低下し、個片化するときの条件が厳しくなる場合がある。
【0022】
第1ろう材12、第2ろう材22または第3ろう材32の材料としては、融点の異なるAu-Sn共晶はんだ、Sn-Ag-Cuはんだ等のはんだ材、またはAgナノ粒子、Cuナノ粒子、Auナノ粒子等のナノ粒子材を例示することができる。
【0023】
半導体レーザ素子10としては、窒化物半導体レーザ素子を例示することができる。出射光の波長としては、紫外光域から緑色光域の波長域を例示できるが、これに限られるものではなく、用途に応じて、その他の任意の波長域の半導体レーザ素子を採用することができる。
【0024】
本実施形態に係る発光部40では、第1サブマウント20の少なくとも1つの側面に、下方に広がる傾斜面20Bが設けられている。
図3Aでは、第1サブマウント20の出射側及びその反対側の側面が傾斜しているが、少なくとも出射側の側面が傾斜していればよい。その他の側面については、発光部40の左右両側の側面にも傾斜面20Bが設けられている場合もあり得るし、発光部40の左右の側面には傾斜面が設けられていない場合もあり得る。
【0025】
図3Aでは、傾斜面20Bが湾曲した曲面で構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、
図3Aの二点鎖線で示すように、傾斜面20Bが略平面で構成されている場合もあり得るし、傾斜面20Bが、平面及び曲面が組み合わされた面で構成されている場合もあり得る。
【0026】
更に、本実施形態に係る発光部40では、第1サブマウント20の傾斜面20Bの上辺と半導体レーザ素子10の出射面10Aとが略同一面上に位置するように、半導体レーザ素子10が配置されている。
【0027】
傾斜面20Bの上辺は、第1サブマウント20の傾斜面20B及び第1サブマウント20の上面20Aが交わる境界部分であり、明確な線(エッジ)として示される場合も、滑らかに連続する面の上面との境界位置として示される場合もあり得る。傾斜面20Bの上辺は、第1サブマウント20の上面20Aの端部の位置に一致し、「傾斜面20Bの上辺と半導体レーザ素子10の出射面10Aとが略同一面上に位置する」ことは、「半導体レーザ素子10の出射面10Aが、第1サブマウント20の上面20Aの略端部(または端部近傍)に位置する」ことと同義である。
【0028】
図3Aの一点鎖線で示すように、仮に第1サブマウント20の側面に傾斜面が設けられていない場合には、半導体レーザ素子10からの出射光も所定の広がり角を有するので、出射光が第1サブマウント20と干渉する場合があり得る(矢印B参照)。特に、出射光のファーフィールドパターンの長軸が上下方向に配置されている場合には、干渉が生じ易くなる。
一方、本実施形態では、第1サブマウント20の傾斜面20Bの上辺と半導体レーザ素子10の出射面10Aが略同一面上に位置するように、半導体レーザ素子10が配置されている(半導体レーザ素子10の出射面10Aが、第1サブマウント20の上面20Aの概略端部(または端部近傍)に位置する)ので、半導体レーザ素子10から所定の広がり角で光が出射された場合であっても、出射光が第1サブマウント20と干渉する不具合を回避することができる。
【0029】
仮に、第1サブマウント20が傾斜面を有さず、半導体レーザ素子10の出射面10Aが第1サブマウント20の上面20Aの概略端部に位置する場合、上面20Aの端部領域において、半導体レーザ素子10からの熱が外側に広がるようにして第2サブマウント30側に流れることはない。よって、放熱が不十分になる可能性がある。
一方、本実施形態では、
図3Aの点線の矢印で示す熱の流れから明らかなように、第1サブマウント20の側面が上面側から下面側にかけて広がるような傾斜面20Bを有しているので、半導体レーザ素子10からの熱が外側に広がるようにして第2サブマウント30側に流れる。よって、半導体レーザ素子10からの熱をより効率的に第2サブマウント30側に逃がすことができ、光源装置2の信頼性を高めることができる。
【0030】
以上のように、本実施形態では、第1サブマウント20の少なくとも1つの側面に下方に広がる傾斜面20Bが設けられ、傾斜面20Bの上辺と半導体レーザ素子10の出射面10Aとが略同一面上に位置するように半導体レーザ素子10が配置されているので、発光効率が高くかつ信頼性の高い光源装置2を提供することができる。
【0031】
なお、「傾斜面20Bの上辺と半導体レーザ素子10の出射面とが略同一面上に位置する」における「略同一」の範囲については、半導体レーザ素子10から出射された光が、確実に第1サブマウント20と干渉しない範囲において、半導体レーザ素子10の出射光の広がり角、傾斜面20Bの形状や傾斜角、製造の容易さ等を考慮して定めることが好ましい。
【0032】
第1サブマウント20は、傾斜面20Bを有しているため、上下面で面積が異なるが、面積の小さい上面20Aが半導体レーザ素子10に接触し、面積の大きい下面が第2サブマウント30に接触している。これにより、半導体レーザ素子10で発生する熱を効率的に放熱することが可能になる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、第1サブマウント20が、第2サブマウント30に接触する下面20Cの方が、半導体レーザ素子10に接触する上面20Aよりも大きくなるように形成されているので、放熱面をより大きく取ることができ、半導体レーザ素子10からの熱をより効率的に放熱することができる。
【0034】
第1サブマウント20の製造に当たり、ダイヤモンド製の大盤(板材)から切り出して、個々の第1サブマウント20を形成することができる、このとき、レーザを用いた切断方法を採用することにより、従来のスクライブ装置による場合に比べて、個片化に要する時間を大幅に短縮することができ、これにより、第1サブマウント20の製造コストを低減できる。この場合、レーザ切断により形成される側面部分を傾斜面とする。
【0035】
つまり、レーザ切断で個片化することにより、第1サブマウント20を低い製造コストで形成でき、切断面を傾斜面とすることができる。切断面を傾斜面とすることにより、第1サブマウント20の全ての側面が、上面側から下面側にかけて広がるように傾斜した形状を有することになる。全面に下側に広がる傾斜面を有するので、半導体レーザ素子10からの熱の放熱性能を確実に高めることができ、レーザ切断で形成された傾斜面を有効に利用することができる。
【0036】
<第1サブマウント及び第2サブマウントの配置>
次に、
図3Aから
図3C及び
図4Aから
図4Cを参照しながら、第1サブマウント及び第2サブマウントの配置について、更に詳細に説明する。
図3Aは上述のとおり、本発明に係る発光部の1つの側面形状を示す側面図である。
図3Bは、
図3Aに示す発光部40の平面形状の1つの例を示す平面図である。
図3Cは、
図3Aに示す発光部40の平面形状のその他の例を示す平面図である。
図4Aは、本発明に係る発光部のその他の側面形状を示す側面図である。
図4Bは、
図4Aに示す発光部の平面形状の1つの例を示す平面図である。
図4Cは、
図4Aに示す発光部の平面形状のその他の例を示す平面図である。
【0037】
図3Aに示す側面図では、半導体レーザ素子10の出射面10Aの反対側において、第1サブマウント20の下面20Cの外形よりも、第2サブマウント30の上面30Aの外形が大きく形成されている。
図3Aに対応する1つの平面形状を示す
図3Bでは、半導体レーザ素子10の出射面10Aの反対側において、第1サブマウント20の下面20Cの外形よりも、第2サブマウント30の上面30Aの外形が大きく形成されているが、発光部40の左右両側においては、第1サブマウント20の下面20Cの外形及び第2サブマウント30の上面30Aの外形が略一致している。
一方、
図3Aに対応するその他の平面形状を示す
図3Cでは、半導体レーザ素子10の出射面10A側以外の全領域において、第1サブマウント20の下面20Cの外形よりも、第2サブマウント30の上面30Aの外形が大きく形成されている。
【0038】
図4Aに示す側面図では、第1サブマウント20の下面20Cの外形と、第2サブマウント30の上面30Aの外形とが略一致している。
図4Aに対応する1つの平面形状を示す
図4Bでは、全ての方向において、第1サブマウント20の下面20Cの外形と、第2サブマウント30の上面30Aの外形とが略一致している。
一方、
図4Aに対応するその他の平面形状を示す
図4Cでは、発光部40の左右両側において、第1サブマウント20の下面20Cの外形よりも、第2サブマウント30の上面30Aの外形が大きく形成されている。
【0039】
第1サブマウント20をレーザ切断で個片化した場合には、表面が炭化して短絡等が生じ易くなる虞がある。よって、製造時に、第1サブマウント20及び第2サブマウント30の間に存在する溶融した第2ろう材22が外に押し出されて、基体4に達した場合には、短絡等が生じる可能性がある。これに対して、
図3B、
図3C及び
図4Cに示すように、半導体レーザ素子10の出射面10A側以外の領域の少なくとも一部において、第1サブマウント20の下面20Cの外形よりも、第2サブマウント30の上面30Aの外形が大きく形成されている場合には、外に押し出された溶融した第2ろう材22を第2サブマウント30の上面30Aで収容することができる。よって、溶融した第2ろう材22が基体4側に流れて短絡等が生じるのを未然に防ぐことができる。
【0040】
外に押し出された溶融した第2ろう材22を収容する観点からは、
図3Cに示す形状が有利であるが、省スペースの観点からは、
図3Bや
図4Cに示す形状が有利である。よって、第1サブマウント20及び第2サブマウント30の接合状態、第2ろう材22の使用量、スペース的な制約等を考慮して、最適な形状を定めることが好ましい。
また、溶融した第2ろう材22が外に押し出されないように調整することにより、
図4Bに示すような形状も採用可能であり、この場合にはスペース的に最も有効であり、光源装置をより小型化できる。
【0041】
<ろう材の組み合わせ>
次に、半導体レーザ素子10、第1サブマウント20及び第2サブマウント30を接合するろう材の組み合わせについて、更に詳細に説明する。
第2サブマウント30の下面30B側に第3ろう材32を備え、第1サブマウント20の下面20C側に第2ろう材22を備え、第1サブマウント20の上面20A側に第1ろう材12を備えている。
【0042】
また、第1サブマウント20の上下面20A、20Cに設けられた第1ろう材12及び第2ろう材22に対して、第2サブマウント30の下面30Bに設けられた第3ろう材32は、融点が異なっている。
【0043】
光源装置2を製造するとき、基体4の上面4Aに、第2サブマウント30を搭載した後、第1サブマウント20を搭載するが、この搭載時の加熱に掛かる時間の差や、サブマウント材料の熱伝導率の差により、各々のろう材の状態が異なってくる。ろう材の加熱状態が不適切であると、ろう材の熱抵抗が上昇し、半導体レーザ素子10からの熱を効率良く放熱することができなくなる。この搭載時間の差及び材料の熱伝導率の差、特に、加熱時間差を最適に調整するために、搭載する部材、素子毎に異なる融点を有するろう材を配置することが好ましい。
【0044】
上記のような構成にすることにより、実装条件に合わせた最適なろう材を選定することが可能となり、より効率の良い光源装置2を得ることができる。
【0045】
第1サブマウント20及び第2サブマウント30の材質が異なるので、搭載時の加熱に掛かる時間の差や、サブマウント材の熱伝導率の差により、各ろう材の加熱状態が異なる。このとき、第1ろう材12及び第2ろう材22の融点と、第3ろう材32の融点とを異ならせることにより、異なる加熱状態を最適に調整することができる。
【0046】
また、半導体レーザ素子10、第1サブマウント20及び第2サブマウント30の接合方法として、第1ろう材12及び第2ろう材22を用いて、半導体レーザ素子10、第1サブマウント20及び第2サブマウント30を接合した後、第3ろう材32を用いて、半導体レーザ素子10及び第1サブマウント20が接合された第2サブマウント30を、基体4の上面4Aに接合するのが好ましい。この場合、例えば、第1ろう材及び第2ろう材は、はんだ材であり、第3ろう材はナノ粒子材であることが好ましい。
【0047】
膨張及び収縮しやすい銅または銅合金から形成された基体4は、温度が高いほど線膨張差が大きくなる。このとき、基体4との接合に用いる第3ろう材32の融点を、前の接合工程で凝固する第1ろう材12及び第2ろう材22の融点よりも低くする必要があるので、必然的に第3ろう材32の融点が低くなる。よって、第2サブマウント30及び基体4の接合における線膨張差による熱応力の発生を抑制でき、信頼性の高い光源装置2を製造することができる。
【0048】
(シミュレーションに基づく第1サブマウントの厚み)
次に、
図5を参照しながら、光源装置の熱抵抗のシミュレーションに基づく、適切な第1サブマウントの厚みについて説明する。
図5は、第1サブマウントの厚みを変動させたときの、光源装置の熱抵抗をシミュレーションした結果を示すグラフである。
このときの熱抵抗は、発光部40に搭載された半導体レーザ素子10のジャンクション温度(Tj)と、光源装置2の基体4の底面温度(Tb)から求めたものである。シミュレーションにおける第2サブマウント30の材料は、SiC及び、AlN材料であり、第2サブマウント30の厚みは200
μmに固定して計算した。
【0049】
図5のグラフから明らかなように、第1サブマウント20であるCVDダイヤモンドの厚みが、50
μm以下になると、急激に熱抵抗が上昇することが判明した。この結果は、第1サブマウント20であるCVDダイヤモンド厚みが、50
μm以下になると、半導体レーザ素子10から発生する熱が、第1サブマウント20で広がりきる前に、第2サブマウント30に到達するため、効率良く放熱できていないことを示している。
よって、今回のシミュレーションにより、第1サブマウント20の厚さが50
μm以上とすることにより、より放熱特性の高い光源装置を得ることが判明した。
【0050】
(その他の実施形態に係る光源装置)
上記の実施形態の光源装置2では、端子保持部材(外周壁)6の上側が解放されているが、これに限られるものではない。例えば、端子保持部材(外周壁)6の上側をリッドで覆って、発光部40を外気から遮蔽することもできる。この場合には、光源装置2の長寿命化が期待できる。
また、上記の実施形態の光源装置2では、半導体レーザ素子10から出射された光が、そのまま窓8を透過して、光源装置2の外へ出射されるが、これに限られるものではない。例えば、反射面を設けて、半導体レーザ素子10から出射された光を、反射面により、基体4の上面4Aと略直交する方向(上方)に反射させることも考えられる。このとき、仮にリッドが取り付けられている場合には、窓をリッドに配置することも考えられる。
【0051】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光源装置は、加工用光源、プロジェクタ、液晶のバックライト用光源、照明用光源、各種インジケータ用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、信号機など、種々の光源に用いることができる。
【符合の説明】
【0053】
2 光源装置
4 基体
6 端子保持部材(外周壁)
8 窓
10 半導体レーザ素子
10A 出射面
12 第1ろう材
14A、14B リード端子
16A、16B 端子封止材
20 第1サブマウント
20A 上面
20B 傾斜面
20C 下面
22 第2ろう材
30 第2サブマウント
30A 上面
32 第3ろう材
40 発光部