(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】バケットコンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 17/36 20060101AFI20240502BHJP
B65G 17/12 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B65G17/36 A
B65G17/12 A
(21)【出願番号】P 2020158277
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重松 豊
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061379(JP,A)
【文献】特開2014-125238(JP,A)
【文献】特開2007-284182(JP,A)
【文献】特開2009-137679(JP,A)
【文献】特開2017-087166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/00- 17/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板材で構成された複数のバケットを牽引部材に取付けたバケットコンベアであって、
前記バケットの外面にはバケット側取付板が
溶接接合され、前記牽引部材には牽引部材側取付板が取付けられ
ており、
前記バケット側取付板と前記牽引部材側取付板と
は挿通孔にボルト・ナットからなる結合部材
を通して結合することで前記バケットが前記牽引部材に取付けられており、
前記バケットには、前記鋼板材の少なくとも内面側に耐摩耗性樹脂を用いて形成された耐摩耗性ライニング層が形成され、
前記バケット側取付板の結合面は、前記牽引部材側取付板の結合面が直接接触する樹脂非吹付け面とされている
ことを特徴とするバケットコンベア。
【請求項2】
前記バケットは、前記鋼板材の外面側にも耐摩耗性ライニング層が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のバケットコンベア。
【請求項3】
前記耐摩耗性樹脂がポリウレア樹脂である
ことを特徴とする請求項1または2記載のバケットコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットコンベアに関する。さらに詳しくは、金属や金属化合物粒子のような硬い物体の搬送に適したバケットコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
バケットコンベアの一般的構成は、複数の鋼製のバケットをチェーンに結合し、このチェーンにスプロケットを介して動力を伝達しバケットを搬送する構造となっている。このようなバケットコンベアは、搬送経路の任意の位置でバケット内に被搬送物を投入し、搬送経路の他の位置まで搬送し、バケットを傾転させることによりバケット内の被搬送物を排出する搬送装置として使用される。
【0003】
バケットコンベアの使用例の一つには、金属硫化物であるマット原料の搬送がある。この使用例では、バケットにマット原料を投入および排出する際にマット原料とバケット内面の衝突と摩擦によってバケットの減肉が発生する。バケットの減肉を防止する手段としては、バケットを構成する板材の表面に、適切なライニング、被覆、塗装を施すことが考えられる。
【0004】
上記の手段に関連して、特許文献1~3の従来技術が提案されている。
特許文献1には、バケットへの被搬送物の付着を防止するため、バケット本体の全外面を耐摩耗性軟質ゴムでライニングし、バケット本体の全内面に接着用下地ゴムをライニングし、そのうちの内底面には発泡ゴム層を形成した上で、補強用繊維を埋設する高張力軟質ゴム層を形成したアンローダのバケットが開示されている。
特許文献2には、使用時の騒音や振動をより低減させることを目的とし、ホッパーの鋼製の箱体の内面に耐摩耗性および吸振性を有する樹脂塗膜で被覆されたホッパーが開示されている。
特許文献3には、被搬送物の付着を防止することを目的とし、鋼鉄製の基材に耐摩耗性のあるアルミニウムや亜鉛等の金属材料の溶射材を溶射した後、溶射材の表面にフッ素系樹脂等の非粘着性物質である表面材を塗装したアンローダのバケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-137679号公報
【文献】特開2014-125238号公報
【文献】特開2017-87166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術のごときバケット等において、ライニングや被覆の摩耗が進行すると、バケットの減肉へとつながり、やがてはバケットの穴開きや変形が生じる。バケットの穴開きや変形は、被搬送物の漏れや被搬送物のバケットコンベアのケーシング内への堆積を引き起し、装置を停止しての復旧処置が必要になる。とくに、バケット本体とチェーンを固定するボルト孔の周辺が減肉しボルト孔がボルト座面より広がった場合は、バケットがチェーンから外れて片持ちの状態になったり、バケットがチェーンから脱落したりすることがある。そうすると、バケットがバケットコンベアのケーシング内に引っ掛かってロックされた状態になるので、深刻な設備破損を引き起し、さらに電動機の故障に至ることもある。
【0007】
また、バケット全面に耐摩耗樹脂ライニングを施した場合、耐摩耗樹脂ライニングの表面が完全な平面や平滑面にならないことが多く、バケットの表面とボルト・ナットの座金面が均一に接触せず、バケットコンベア運転中にボルトが緩みバケットが脱落しやすくなる、という問題がある。この場合もバケットが脱落すれば、上記の通り深刻な設備破損を引き起す。
【0008】
特許文献1~3の従来技術では、搬送物の付着を防止したり騒音や振動を抑制する効果は、ある程度期待できる。
しかしながら、バケットのコンベアチェーンに対する固定の緩み、ボルト穴部の減肉は課題すら記載されておらず、未解決の課題となったままである。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、バケットの摩耗による減肉を抑制する構造であって、ボルト結合部材の緩みによるバケットの脱落を防止できるバケットコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のバケットコンベアは、鋼板材で構成された複数のバケットを牽引部材に取付けたバケットコンベアであって、前記バケットの外面にはバケット側取付板が溶接接合され、前記牽引部材には牽引部材側取付板が取付けられており、前記バケット側取付板と前記牽引部材側取付板とは挿通孔にボルト・ナットからなる結合部材を通して結合することで前記バケットが前記牽引部材に取付けられており、前記バケットには、前記鋼板材の少なくとも内面側に耐摩耗性樹脂を用いて形成された耐摩耗性ライニング層が形成され、前記バケット側取付板の結合面は、前記牽引部材側取付板の結合面が直接接触する樹脂非吹付け面とされていることを特徴とする。
第2発明のバケットコンベアは、第1発明において、前記バケットは、前記鋼板材の外面側にも耐摩耗性ライニング層が形成されていることを特徴とする。
第3発明のバケットコンベアは、第1または第2発明において、前記耐摩耗性樹脂がポリウレア樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)バケット側取付板は、バケットの外側に溶接接合されているので、減肉等による脱落が生じない。
b)バケット側取付板の結合面は樹脂非吹付け面であるので、牽引部材側取付板とは直接接触しボルト・ナットで締結したときの締付力を直接相手部材に伝えることができ、ボルト・ナットの緩みを抑制できる。
c)結合部材のボルトは、バケット側取付板と牽引部材側取付板双方のボルト挿通孔に通されるが、ボルト・ナットが緩みにくいので、ボルト挿通孔の周辺が減肉したりボルト挿通孔がボルト座面より広がることが無くなる。
d)以上のa)~c)の相乗効果により、バケットの脱落を長期にわたって防止することができる。
第2発明によれば、バケットの内面側のほか外面側にも耐摩耗性ライニング層が存在するので、バケットの内面側だけでなく外面側での摩耗を緩和できる。
第3発明によれば、ポリウレア樹脂は、高い伸び率と強靭な引張強度で優れた耐衝撃性が得られ、かつ柔軟性があることで騒音も低減できる。そして長期にわたって耐摩耗性を発揮できるのでバケットの寿命延長とバケット脱落防止効果が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバケットコンベアBCにおけるバケット1の説明図である。
【
図2】本発明に係るバケット1の製造方法を示す工程図である。
【
図3】バケット1の取付け状態の説明図であり、(A)図は側面図、(B)図は部分平面図である。
【
図4】本発明に係るバケット1の取付構造を説明する斜視図である。
【
図5】比較例のバケットの取付構造を説明する斜視図である。
【
図6】バケットコンベアBCの基本構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明に係るバケットコンベアは、種々の産業分野で様々な被搬送物の搬送に適用することができるが、適用の一例としては、ニッケルの湿式製錬プラントにおけるマット原料の搬送装置をあげることができる。ここでいうマット原料とは、主物質Ni3S2からなる粒径700μm程度のニッケル化合物粒子である。このマット原料は硬く比重が大きいので、バケットを構成する金属板と衝突すると、大きな振動と騒音を発生しやすく、金属板に摩耗による減肉を発生させやすい。
【0014】
図6に基づきバケットコンベアBCの基本構成の一例を説明する。10はバケットコンベアBCのケーシングで、上下に延びる中間ケーシング10Mと、中間ケーシング10Mの下端部から横に延びる下ケーシング10Lと、中間ケーシング10Mの上端部から横に延びる上ケーシング10Uとからなる。下ケーシング10Lの上面には被搬送物Mを投入するホッパー11が設けられ、上ケーシング10Uの下面には被搬送物Mを排出する排出口12が設けられている。
下ケーシング10Lの端部にはスプロケット13が取付けられ、上ケーシング10Uの端部にはスプロケット14が取付けられている。そして、ケーシング10M、10L、10Uの適所にはガイドスプロケット16が取付けられている。
【0015】
上下のスプロケット13,14のうち一方がモータに連結された駆動スプロケットであり、他方が従動スプロケットである。ガイドスプロケット16を介して上下のスプロケット13,14の間には牽引部材であるチェーン15が巻き掛けられており、このチェーン15には多数のバケット1が連結されている。図示のバケットコンベアBCは、縦向きの中間ケーシング10Mの下部と上部から水平横向きに延びるケーシング10L,10Uをもつ、いわゆる乙字型タイプである。本発明が適用されるバケットコンベアとしては、乙字型タイプが代表的であるが、これに限らず種々の形態に本発明を適用できる。
【0016】
マット原料搬送用のバケットコンベアでは、バケット1には耐久力の高いSS400等の鋼板材が用いられることが多い。バケット1は多数個が用いられ搬送経路を移動するチェーン15に固定される。
【0017】
上記構成のバケットコンベアBCにおいて、両端のスプロケット13,14の回転でチェーン15が移動すると、チェーン15に取付けられた多数のバケット1も移動する。ホッパー11からバケット1に粉体状の搬送物を投入すると、バケット1が上方に移動し、上方に至るとバケット1が回転し、排出口12から搬送物を排出することができる。
【0018】
図6中の拡大図は、バケット1のチェーン15に対する取付け部を示している。チェーン15は多数のチェーン単体15Uを連結したものであり、バケット1は、取付金具2を介してチェーン単体15Uに固定されている。
バケット1は、側面視で三角形の容器であり、断面V字形をなす2面が鋼板材で形成され、1面が開口部となった公知のものである。
【0019】
つぎに、本発明の一実施形態に係るバケット1に適用される取付構造を、
図3および
図4に基づき説明する。バケット1は鋼板材製の前面板1aと後面板1bと側板1cとから断面V字形に構成されたものである。前面板1aと後面板1bは1枚の鋼板材を折り曲げたものでもよく、2枚の鋼板材を溶接したものでもよい。側板1cは三角形の鋼板材であり、前面板1aと後面板1bの両端縁に溶接されている。
【0020】
図示のチェーン単体15Uはこれを多数連接すると、
図6に示すチェーン15となるものである。各チェーン単体15Uは、2枚のリンク15a,15aの両端部に軸支された2個のローラ15b,15bを備えている。このチェーン15は特許請求の範囲にいう牽引部材に相当する。
【0021】
取付金具2は、2枚の取付板2a,2bからなり、2aは牽引部材側取付板であり、2bはバケット側取付板である。
牽引部材側取付板2aは、四角形の平鋼板であり、その下部はチェーン単体15Uの内側(バケット側)のリンク15aに固定されている。バケット側取付板2bも四角形の平鋼板であって、その上部はバケット1の側板1cに固定されている。牽引部材側取付板2aの上部に形成された左右一対の小孔はボルト挿通孔4であり、バケット側取付板2bの下部に形成された小孔は、ボルト挿通孔3である。取付板2a,2bの固定方法は溶接等任意の手段を採用できる。なお、バケット側取付板2bの固定方法については貫通孔を介してのボルト・ナット等の結合部材による固定だけは避けなければならない。
図5に示す比較例のように、側板1cに貫通孔が存在すると、バケット1とバケット側取付板2bを固定する側板1cの貫通孔の周辺が減肉し貫通孔がボルト座面より広がるという従来の課題が解決できなくなるからである。
【0022】
図1に基づき、本発明のバケットコンベアに適用されるバケット1の詳細を説明する。
図1に示すバケット1の内面すなわち、前面板1aおよび後面板1b、そして一部のみ図示した側板1cの内面には、耐摩耗性ライニング層5が形成されている。
この耐摩耗性ライニング層5は、耐摩耗性樹脂を吹付けることによって形成される。耐摩耗性樹脂としては、バケット1へ投入される被搬送物を受け止めたとき、衝撃を緩和できるものであれば、とくに制限なくあらゆる樹脂を利用できる。衝撃を緩和できれば、減肉も抑制できるからである。
【0023】
耐摩耗性ライニング層5の形成は、図示のようにバケット1の内面のみでもよいが、外面に形成してもよい。耐摩耗性ライニング層5をバケット1の外面にも形成した場合は、外面からの摩耗による減肉を抑止できる。
【0024】
耐摩耗性樹脂として、好ましいのはポリウレア樹脂である。ポリウレア樹脂は、ポリイソシアネートとポリアミンが反応してウレア結合を生成した樹脂である。
ポリウレア樹脂は、高い伸び率と強靭な引張強度で優れた耐衝撃性が得られ、かつ柔軟性があることで騒音も低減できる。
ポリウレア樹脂のライニングには、吹き付け法が可能であり、それにより、平面的な部分だけでなく、奥まった部分や突起した部分にも耐摩耗性ライニング層5を形成できる。
耐摩耗性ライニング層5は、ぶ厚い膜厚、たとえば1~2mmの膜厚を実現できる。これにより耐衝撃性を長期にわたり発揮することができる。
【0025】
耐摩耗性ライニング層5を形成すべくポリウレア樹脂を吹付けると、1~2mm位の膜厚の樹脂がバケット1の内面に接着するが、その表面は平滑ではなく、硬化しても緩やかな傾斜や凹凸が残ることになる。
そして、ポリウレア樹脂等の耐摩耗性樹脂がバケット側取付板2bの表面に付着すると、牽引部材側取付板2aとバケット側取付板2bとをボルト締結しても、互いの結合面が片当りしたりして、必要な強度の締結が得られないことがある。
【0026】
しかしながら、本発明を適用した
図1に示すバケット1には、バケット側取付板2bの結合面(表面側が該当する)が、ポリウレア樹脂が存在しない樹脂非吹付け面とされている。この樹脂非吹付け面とは、鋼板表面に樹脂は何も付着してない面をいう。したがって、取付金具2の取付板2a,2bは互いに直接接触させることができる。このため、ボルトを通しナットで締め付けると、ボルトとナットの緩みは生じなくなる。ここでいうボルトとナットは特許請求の範囲にいう結合部材に相当する。
【0027】
本発明において、バケット1に設けられる樹脂非吹付け面の形成方法には制限がなく、どのような方法を用いてもよいが、マスキングしたうえで耐摩耗性樹脂を吹付ける方法が一般的である。
【0028】
つぎに、
図1に示すバケット1の製造方法を、
図2に基づき説明する。
I:第1取付工程
バケット1の側板1cにバケット側取付板2bを固定する。取付ける方法は溶接など任意の方法でよいが、既述のごとく貫通孔を介してのボルト・ナット等の結合部材による固定は避けなければならない。
【0029】
II:マスキング工程
バケット側取付板2bの結合面にマスキングを行う。マスキングの手法はとくに制限はなく、公知のマスキング材mを貼付する等の手法を用いればよい。
【0030】
III:吹付け工程
バケット1の内面に耐摩耗性樹脂(代表的にはポリウレア樹脂)を吹付ける。これにより耐摩耗性ライニング層5を形成する。このとき耐摩耗性樹脂の吹付けは、前面板1a、後面板1bおよび側板1cの内面だけであってもよく、バケット1の外面を含んでよい。バケット1の外面に耐摩耗性樹脂を吹付ける場合はもとより、バケット1の内面にのみ吹付ける場合でもバケット1の外面に余分な耐摩耗性樹脂が付着することもあるので、マスキング材mの取付板2bの表面への貼付はバケット1の内外両面のどちらに吹付ける場合も必須である。
【0031】
IV:マスキング除去工程
吹付けられた耐摩耗性樹脂(代表的にはポリウレア樹脂)が固化する前であって流動性が無くなった時点においてバケット側取付板2bの結合面からマスキング材mを除去すると、取付板2bの表面に耐摩耗性樹脂が存在しない樹脂非吹付け面が形成される。マスキング材mの除去を耐摩耗性樹脂の固化前に行うのは、固化してしまうとマスキング材mの除去が困難になるからである。
【0032】
V:第2取付工程
吹付け工程の後で所定時間放置しておくと耐摩耗性ライニング層5が完全に固化する。放置時間については、樹脂の種類、硬化剤等の配合割合等によって変わってくる。一般的なポリウレア樹脂であれば数分以内に硬化するが、完全に固化させるには1時間から数時間を見込むことが望ましい。耐摩耗性ライニング層5が完全に固化した後でバケット1をチェーン単体15Uに取付金具2を介して結合する。結合は、
図3に示すように、ボルト挿通孔3,4にボルト8を通しナット9で結合することにより行う。
【0033】
図3はバケット1のチェーン単体15Uへの取付け完了状態を示している。図示の取付け完了状態では、バケット側取付板2bの樹脂非吹付け面に牽引部材側取付板2aが直接接触するので、ボルト8およびナット9による締付力を直接相手部材に伝えることができ、ボルト8およびナット9の緩みを抑制することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって、本発明の利点をより詳細に説明する。
(実施例)
金属硫化物であるマット原料搬送用のバケットコンベア(搬送能力60t/hr)であって、鋼板材がSS400のバケット(幅200×高さ280×長さ600)を168個を備えたものを実験に供した。168個のバケット1のうち2個のバケットは本発明を適用した実施例である。
【0035】
実施例におけるバケット1の内面に対するポリウレア樹脂を用いた耐摩耗性ライニング層5はスプレーによる吹付けで施工し、膜厚は1~2mmとした。施工の要領は上記製造方法(
図2参照)のとおりである。
【0036】
実施例におけるバケット1の取付構造は、
図3および
図4に示すとおりである。すなわち、バケット1は取付金具2を介してボルト8とナット9を用いてチェーン単体15Uに固定されている。バケット側取付板2bの表面は樹脂非吹付け面であるので、牽引部材側取付板2aとバケット側取付板2bとは、その間に耐摩耗性樹脂が存在しない。したがって、両取付板2a,2bは直接接触している。
【0037】
(比較例)
比較例の取付構造を、
図5に基づき説明する。
同図に示す比較例は、バケット1の内面に本発明の耐摩耗性ライニング層5を形成し、バケット1の後面板1bには直接穿孔したボルト挿通孔3を形成している。
取付金具2は断面L字形の部材であり、図中の垂直に示された下板2aは2枚のリンクのうち内側(バケット側)のリンク15aに固定されている。図中の水平に示された上板2bとバケット1の後面板1bとはボルト挿通孔3,4に通したボルトとナットで固定される。この比較例は、166個である。
【0038】
上記構造において、バケット1の後面板1bの内面や外面には耐摩耗性樹脂が吹付けられている。それゆえ、バケット1の後面板1bと取付金具2の上板2bが直接接触できないものであった。加えて、バケット1の後面板1bの内側における、ボルトやナット、座金のいずれかの当接面と、バケット1の後面板1bとも直接接触できないものであった。
【0039】
(実験の結果)
比較例のバケットは5か月の運転でバケット内面の耐摩耗性ライニング層5が結合部周辺において摩耗し、母材摩耗が進行した。その理由は、バケット1の後面板1bと取付金具2の上板2bが直接接触できず、ボルトによる結合が緩んだため、ボルトやナット、取付金具そのものの細かな動きによって耐摩耗性ライニング層5が摩耗し、ボルト挿通孔3,4の周囲において摩耗が進行したものと考えられる。
一方、実施例では、バケット1を構成する鋼板に摩耗進行はなく減肉を防止することができた。そもそも、本発明によればバケット1の内面にボルト挿通孔が存在しないので、ボルト挿通孔の周辺が減肉しボルト孔がボルト座面より広がることによるバケット1の脱落は起こり得ない。また、牽引部材側取付板2aとバケット側取付板2bとが直接接触しているので、ボルトとナットの結合の緩みも発生せずバケット1の脱落も生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のバケットコンベアは、ニッケル化合物粒子に限られることなく、種々の被搬送物を扱うバケットに適用できる。とくに、金属や金属化合物粒子のような硬く重い物体の搬送に好適なものである。
【符号の説明】
【0041】
1 バケット
2 取付金具
3 ボルト挿通孔
5 耐摩耗性ライニング層
8 ボルト
9 ナット
15 チェーン
BC バケットコンベア