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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】圧力制御システム、圧力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240502BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20240502BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20240502BHJP
【FI】
H01M8/04746
F17C11/00 C
F17C13/02 301A
H01M8/04 J
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/043
H01M8/04701
H01M8/04664
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020079430
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021174728
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 成輝
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲彦
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-52742(JP,A)
【文献】特開2004-324862(JP,A)
【文献】特開2009-295335(JP,A)
【文献】特開2000-12062(JP,A)
【文献】特開昭61-107668(JP,A)
【文献】特開2008-223931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
F17C 11/00,13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能な第1水素吸蔵合金タンクと、
水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能な第2水素吸蔵合金タンクと、
通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方へ、水素供給源から水素を供給する第1流路と、
通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方から、燃料電池へ水素を供給する第2流路と、
非常時に、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給する第3流路と、
通電時に、前記第2水素吸蔵合金タンク外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力変化を予測し、予測した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が、前記燃料電池が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、前記第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する制御装置と、
を備える圧力制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が前記第1圧力値以上かつ前記第2圧力値未満の場合に、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給すること、
を特徴とする請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項3】
前記第1流路及び前記第2流路のそれぞれには、複数の制御弁が備えられており、
前記制御装置は、通電時に、前記複数の制御弁の開閉を制御することにより、前記非常時に前記第1流路及び前記第2流路を遮断するとともに、前記通電時に、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が、前記第1圧力値以上かつ前記第2圧力値未満になるように制御すること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力制御システム。
【請求項4】
前記第3流路は、手動バルブを有し、前記手動バルブを閉鎖した場合に遮断され、開放された場合に、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項5】
前記燃料電池の排熱を用いて、前記第1水素吸蔵合金タンク又は前記第2水素吸蔵合金タンクを加熱する加熱部を備えること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項6】
前記第2圧力値は、高圧ガス保安法で高圧ガスとならない圧力であること、
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項7】
前記外気温予測値は、天気予報が提供する当日から所定の期間中の気温予報値であり、
前記制御装置は、前記外気温予測値と、前記第2水素吸蔵合金タンクの水素貯蔵量とに基づき、前記水素吸蔵合金のPCT曲線を参照して、当該所定の期間中の前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力変化を予測すること、
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1水素吸蔵合金タンクの圧力と前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力をそれぞれ検出し、予測した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が前記第1圧力値未満の場合に、
前記第1流路を介して、前記水素供給源から前記第水素吸蔵合金タンクへ水素を供給するか、もしくは、
検出した前記第1水素吸蔵合金タンクの圧力が検出した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力よりも大きければ、前記第2流路を介して、前記第1水素吸蔵合金タンクから前記第2水素吸蔵合金タンクへ水素を供給し、
前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力を前記第1圧力値以上かつ前記第2圧力値以下になるように制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、予測した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が前記第2圧力値以上の場合に、
前記第2流路を介して、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給するか、もしくは、
検出した前記第1水素吸蔵合金タンクの圧力が検出した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力よりも小さければ、前記第2流路を介して、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記第水素吸蔵合金タンクへ水素を供給し、
前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力を前記第1圧力値以上かつ前記第2圧力値以下になるように制御すること、
を特徴とする請求項8に記載の圧力制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記燃料電池の運用のために前記第2水素吸蔵合金タンクを加熱する場合に、加熱温度下での前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が第2圧力値未満となるように制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記第1水素吸蔵合金タンクの圧力と前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力をそれぞれ検出し、検出した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が前記第1圧力値未満の場合に、
前記第1流路を介して、前記水素供給源から前記第水素吸蔵合金タンクへ水素を供給するか、もしくは、
検出した前記第1水素吸蔵合金タンクの圧力が検出した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力よりも大きければ、前記第2流路を介して、前記第1水素吸蔵合金タンクから前記第2水素吸蔵合金タンクへ水素を供給し、
前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力を前記第1圧力値以上かつ前記第2圧力値以下になるように制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項12】
前記制御装置は、検出した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が前記第2圧力値以上の場合に、
前記第2流路を介して、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給するか、もしくは、
検出した前記第1水素吸蔵合金タンクの圧力が検出した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力よりも小さければ、前記第2流路を介して、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記第水素吸蔵合金タンクへ水素を供給し、
前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力を前記第1圧力値以上かつ前記第2圧力値以下になるように制御すること、
を特徴とする請求項11に記載の圧力制御システム。
【請求項13】
前記外気温予測値は、前記第2水素吸蔵合金タンクが屋内に設置されている場合には、空調設定温度であり、
前記制御装置は、前記外気温予測値と、前記第2水素吸蔵合金タンクの水素貯蔵量とに基づき、前記水素吸蔵合金のPCT曲線を参照して前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力変化を予測すること、
を特徴とする請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項14】
水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能な第1水素吸蔵合金タンクと、
水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能な第2水素吸蔵合金タンクと、
通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方へ、水素供給源から水素を供給する第1流路と、
通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方から、燃料電池へ水素を供給する第2流路と、
非常時に、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給する第3流路と、
を備える圧力制御システムの圧力制御方法であって、
制御装置が、通電時に、前記第2水素吸蔵合金タンク外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力変化を予測し、前記制御装置が予測した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が、前記燃料電池が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、前記第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する圧力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御システム、および、圧力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料に発電する技術として、燃料電池が知られている。燃料電池を利用する際は大量の水素が必要となるため、水素貯蔵技術の開発は重要な課題とされている。これまでに、水素貯蔵技術の一つとして、大量の水素を安全に貯蔵することができる水素吸蔵合金を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2)。
【0003】
水素吸蔵合金は、水素雰囲気の圧力もしくは雰囲気温度に応じて水素の吸蔵・放出を行う。水素雰囲気の圧力を水素平衡圧力(水素吸蔵合金の平衡圧力)よりも低くするか、加熱して雰囲気温度を高くすれば、水素吸蔵合金は、水素平衡圧力を維持しようとして水素を放出する。一方、水素雰囲気の圧力を水素平衡圧力よりも高くするか、冷却して雰囲気温度を低くすれば、水素吸蔵合金は、水素平衡圧力を維持しようとして水素を吸蔵する。
このような水素吸蔵合金の特性を利用して、特許文献1では、異なる種類の水素吸蔵合金を組み合わせることにより、水素吸蔵タンクの水素貯蔵量を最大化する方法が記載されている。また、特許文献2では、複数の水素吸蔵合金タンクを組み合わせることにより、水素吸蔵合金から吸蔵・放出される水素を最大限活用する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-52742号公報
【文献】特許第5360765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水素吸蔵合金タンク内の圧力は、水素吸蔵合金がタンク内の水素を吸蔵するにつれて低下する。従って、非常時(非通電時)に水素吸蔵合金タンクから水素を取り出すためには、水素吸蔵合金タンクの圧力を昇圧させるか、もしくは常に高く維持しておく必要がある。水素吸蔵合金タンクを昇圧させるには、水素吸蔵合金を加熱して水素を放出させる必要がある。しかしながら、上述した従来技術では、非常時に加熱源を得ることが困難であり、さらに、水素吸蔵合金の平衡圧力は雰囲気温度や水素貯蔵量に依存して変化するため、水素吸蔵合金タンクの圧力を一定に保つことは困難であった。
このように、上述したような従来技術では、非常時に水素吸蔵合金タンクから水素を供給できるように、当該タンク内の圧力を制御する方法は十分に考えられていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、非常時に水素吸蔵合金タンクから水素を供給できるように、水素吸蔵合金タンクの圧力を制御する圧力制御システム、および、圧力制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能な第1水素吸蔵合金タンクと、水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能な第2水素吸蔵合金タンクと、通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方へ、水素供給源から水素を供給する第1流路と、通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方から、前記燃料電池へ水素を供給する第2流路と、非常時に、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給する第3流路と、通電時に、前記第2水素吸蔵合金タンク外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力変化を予測し、予測した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が、前記燃料電池が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、前記第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する制御装置と、を備える圧力制御システムである。
【0008】
また、本発明の一態様は、水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能な第1水素吸蔵合金タンクと、水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能な第2水素吸蔵合金タンクと、通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方へ、水素供給源から水素を供給する第1流路と、通電時に、前記第1水素吸蔵合金タンクと前記第2水素吸蔵合金タンクとのうち少なくとも一方から、燃料電池へ水素を供給する第2流路と、非常時に、前記第2水素吸蔵合金タンクから前記燃料電池へ水素を供給する第3流路と、を備える圧力制御システムの圧力制御方法であって、制御装置が、通電時に、前記第2水素吸蔵合金タンク外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力変化を予測し、前記制御装置が予測した前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力に基づいて、前記第2水素吸蔵合金タンクの圧力が、前記燃料電池が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、前記第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する圧力制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非常時に水素吸蔵合金タンクから水素を供給できるように、水素吸蔵合金タンクの圧力を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る圧力制御システム1の構成の概要を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置200の構成を示すブロック図である。
図3】温度の異なるPCT曲線図を模式的に示した図である。
図4】本実施形態で使用される水素吸蔵合金のPCT曲線を示した図である。
図5】本発明の実施形態に係る圧力制御システム1の通電時における運用手順を示すフローチャートである。
図6】非常時に手動弁81を解放した場合のタンク12aの圧力の時間変化を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による圧力制御システムについて説明する。
【0012】
(圧力制御システムの構成例)
図1は、本発明の実施形態に係る圧力制御システム1の構成の概要を示す図である。
図1に示すように、圧力制御システム1は、燃料電池10と、蓄電池11と、タンク12aと、タンク12bと、第1流路21と、第2流路22と、第3流路23と、水素供給源30と、加熱部50と、制御装置200とを備える。
【0013】
燃料電池10は、第2流路22または第3流路23を介して供給される水素を燃料として、水素と酸素を反応させて電気を発生し、発電した電力を図示していない電気負荷へ供給する。蓄電池11は、停電時に、燃料電池10の始動に必要な電力を供給する。
【0014】
タンク12a(第1水素吸蔵合金タンクの一例)は、水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能な水素吸蔵合金タンクである。タンク12aは、第1流路21を介して水素供給源30に接続され、第2流路22を介して燃料電池10に接続されている。
タンク12b(第2水素吸蔵合金タンクの一例)は、水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能な水素吸蔵合金タンクである。タンク12bは、第1流路21を介して水素供給源30に接続され、第2流路22と第3流路23とを介して燃料電池10に接続されている。
【0015】
また、タンク12aとタンク12bは、タンク内の圧力を検出する圧力計、例えば、圧力センサをそれぞれ備え、検出した圧力を制御装置200(後述する、取得部220)に送信する。
なお、タンク12aとタンク12bは、ほぼ同様の水素吸蔵合金タンクとすることができる。すなわち、水素吸蔵合金を同一または同種とすることができる。また、タンク形状も同一とすることができる。本実施形態において、タンク12aとタンク12bを特に区別しない場合には、タンク12として説明する。
【0016】
水素供給源30は、水電界装置または外部からの水素供給源であり、第1流路21を介してタンク12aとタンク12bに接続されている。水素供給源30は、通電時に、第1流路21を介してタンク12aまたはタンク12bに水素を供給する場合に、図示していない制御装置200(後述する、水素供給源制御部250)によって稼働される。
【0017】
加熱部50は、排熱回収部51と、タンク加熱部52aと、タンク加熱部52bとを備える。排熱回収部51は、燃料電池10の排熱を回収する。タンク加熱部52aは、タンク12aに設けられ、排熱回収部51が回収した排熱を利用してタンク12aを加熱する。タンク加熱部52bは、タンク12bに設けられ、排熱回収部51が回収した排熱を利用してタンク12bを加熱する。なお、加熱部50は、ポンプ、ブロア等の電力で動作する構成を含んでいてもよいし、自然対流を利用した構成のみを含んでいてもよい。
【0018】
第1流路21は、タンク12aとタンク12bの少なくとも一方へ水素供給源30から水素を供給する。第1流路21は、水素供給源30の水素の排出口とタンク12aの水素の受入口との間、または、水素供給源30の水素の排出口とタンク12bの水素の受入口との間に配置されて水素を輸送する管41と、管41に設けられた流量計61、62、63と、逆止弁71と、電磁弁(制御弁の一種)101、102とを備える。
流量計61は、水素供給源30から第1流路21を介してタンク12aとタンク12bの少なくとも一方へ供給される水素の流量を計測する。流量計62は、水素供給源30から第1流路21を介してタンク12bへ供給される水素の流量を計測する。流量計63は、水素供給源30から第1流路21を介してタンク12aへ供給される水素の流量を計測する。逆止弁71は、タンク12aまたはタンク12bから水素供給源30への水素の逆流を防止する。電磁弁101と電磁弁102とは、電磁石と弁とを有し、通電時に開放され、非通電時に閉鎖されるバルブであり、水素供給源30から水素が供給される場合に、制御装置200(後述する、電磁弁制御部240)によって通電される。
【0019】
第2流路22は、通電時に、タンク12aもしくはタンク12bから燃料電池10へ水素を供給する。また、第2流路22aと22bは、通電時に、タンク12aとタンク12bとの間で水素をやり取りする。
第2流路22は、タンク12aの水素の排出口と燃料電池10の水素の受入口との間、または、タンク12bの水素の排出口と燃料電池10の水素の受入口との間に配置されて水素を輸送する管42と、管42に設けられた流量計64、65、66と、減圧弁91と、電磁弁103、104、105とを備える。
流量計64は、タンク12bから第2流路22を介して燃料電池10へ供給される水素の流量を計測する。流量計64は、第2流路22aと第2流路22bを介して、タンク12aとタンク12bとの間でやり取りされる水素の流量を計測する。流量計65は、タンク12aから第2流路22を介して燃料電池10へ供給される水素の流量を計測する。また、流量計65は、第2流路22aと第2流路22bを介して、タンク12aとタンク12bとの間でやり取りされる水素の流量を計測する。流量計66は、タンク12aまたはタンク12bから第2流路22を介して燃料電池10へ供給される水素の流量を計測する。
減圧弁91は、タンク12aまたはタンク12bから放出された水素の圧力を所定の圧力(以下、減圧弁の圧力値ともいう)、例えば、0.1MPaまで減少させて燃料電池10側へ通過させる。
電磁弁103、104、105は、電磁弁101および102と同様に、電磁石と弁とを有し、通電時に開放され、非通電時に閉鎖されるバルブであり、水素供給源30から水素が供給される際に、図示していない制御装置200によって通電され、開放される。
【0020】
第3流路23は、非通電時に、タンク12bから燃料電池10に水素を供給する。
第3流路23は、タンク12bの水素の排出口と燃料電池10の水素の受入口との間に配置されて水素を輸送する管43と、管43に設けられた流量計67と、手動弁81(手動バルブ)と、減圧弁92とを備える。
流量計67は、タンク12bから第3流路23を介して燃料電池10へ供給される水素の流量を計測する。手動弁81は、通電時には閉鎖されていて、非常時に手動操作によって解放されるバルブである。減圧弁92は、減圧弁91と同様に、タンク12bから放出された水素の圧力を減圧弁の圧力値まで減少させて燃料電池10側へ通過させる。
【0021】
制御装置200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含み、通電時に、電磁弁101~105と、水素供給源30と、燃料電池10とを無線もしくは有線により包括的に制御する。さらに、制御装置200は、通電時に、タンク12b外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、タンク12bの圧力変化を予測するとともに、予測したタンク12bの圧力に基づいて、タンク12bの圧力が、燃料電池10が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、前記第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する。
【0022】
ここで、図2を参照して、制御装置200の構成の詳細について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置200の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置200は、記憶部210と、取得部220と、タンク圧力制御部230と、電磁弁制御部240と、水素供給源制御部250と、燃料電池制御部260とを備える。
【0023】
記憶部210は、制御装置200が利用する各種データを記憶する。記憶部210は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体など、又は、これらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。また、記憶部210として、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
図2に示すように、記憶部210は、外気温予測データ記憶部211と、PCT特性データ記憶部212とを備える。
【0024】
外気温予測データ記憶部211は、外気温予測データとして、タンク12bの外気温予測値を記憶する。本実施形態では、タンク12bの外気温予測値は、天気予報が提供する当日から翌週までの期間中の気温予報値である。
水素吸蔵合金タンクを一定時間使用しない場合、当該タンクの雰囲気温度は外気温とほぼ等しくなるという性質がある。本実施形態では、詳しくは後述するように、この性質と外気温予測データ記憶部211の外気温予測データを利用してタンク12bの圧力を制御する。
【0025】
PCT特性データ記憶部212は、PCT特性データとして、タンク12aとタンク12bに内蔵される水素吸蔵合金の特性を表すPCT(Pressure Composition Temperature)曲線を記憶する。
【0026】
PCT曲線は、一定の雰囲気温度下における、水素吸蔵合金中の水素吸蔵量と、水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素平衡圧力との関係を表す。
ここで、図3を参照して、PCT曲線の詳細について説明する。図3は、異なる雰囲気温度下のPCT曲線図を模式的に示した図である。図3において、横軸は水素吸蔵合金中の水素吸蔵量(massパーセント)を示し、縦軸は水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素平衡圧力(MPaG)を示す。特性C1は温度T1(℃)での特性を示し、特性C2は温度T1より低温の温度T2(℃)での特性を示す。
例えば、温度T1(℃)のときの特性C1の点Q1の状態から、温度T2(℃)に冷却すると、特性C2の点Q2の状態に移り、水素吸蔵が進行する。すなわち、冷却により水素は水素吸蔵合金に吸蔵され、水素吸蔵合金タンク内の圧力が圧力P1から圧力P2に低下する。一方、温度T2(℃)のときの特性C2の点Q2の状態から、温度T1(℃)に加熱すると、特性C1の点Q1の状態に移り、水素放出が進行する。すなわち、加熱により、水素吸蔵合金は水素を放出し、水素吸蔵合金タンク内の圧力が圧力P2から圧力P1に上昇する。
【0027】
PCT特性データ記憶部212は、PCT特性データとして、このようなPCT曲線を複数の雰囲気温度について記憶する。
図4は、本実施形態で使用される水素吸蔵合金のPCT曲線の一例を示した図である。図4において、横軸は水素吸蔵合金中の水素吸蔵量(massパーセント)を示し、縦軸は水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素平衡圧力(MPaG)を示す。また、実線は、一定の雰囲気温度下で、水素平衡圧力を上昇させたときのPCT曲線であり、水素吸蔵合金の水素吸蔵時の特性を示す。点線は、一定の雰囲気温度下で、水素平衡圧力を下降させたときのPCT曲線であり、水素吸蔵合金の水素放出時の特性を示す。なお、雰囲気温度は、上述したように、タンク12の外気温とほぼ等しいと考えてよい。
【0028】
図4に示すように、特性C20aは温度20(℃)での水素吸蔵時の特性を示し、特性C30aは温度30(℃)での水素吸蔵時の特性を示し、特性C40aは温度40(℃)での水素吸蔵時の特性を示す。また、特性C20bは温度20(℃)での水素放出時の特性を示し、特性C30bは温度30(℃)での水素放出時の特性を示し、特性C40bは温度40(℃)での水素放出時の特性を示す。ここで、水素平衡圧力は、水素吸蔵時の方が水素放出時よりも大きく、また、水素吸蔵量が同じであれば雰囲気温度が高いほど大きいという特徴を示す。
【0029】
取得部220は、外気温予測値(ここでは、当日から翌週までの期間中の気温予報値)を、インターネットを介して気象庁等のデータサーバから自動的に取得するか、もしくは、キーボード等の入力装置を介してユーザの操作入力によって取得し、外気温予測データ記憶部211に記憶させる。
【0030】
タンク圧力制御部230は、タンク12bの水素貯蔵量と外気温予測データ記憶部211の外気温予測データとに基づき、PCT特性データ記憶部212のPCT特性データを参照して、タンク12bの圧力が外気温変化に応じてどのように変化するかを予測する。さらに、タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力が、燃料電池が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値(例えば、0.50MPaG)以上、かつ、第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する。ここで、第2圧力値は、高圧ガス保安法で高圧ガスとならない圧力(例えば、0.95MPaG)である。なお、タンク12bの圧力制御処理の詳細については後述する。
【0031】
また、タンク圧力制御部230は、タンク12aから送信されるタンク12aの圧力と、タンク12bから送信されるタンク12bの圧力とを受信する。さらに、タンク圧力制御部230は、タンク12aとタンク12bの水素吸蔵量をそれぞれ取得する。
【0032】
電磁弁制御部240は、電磁弁101~105の通電および開閉を制御する。
水素供給源制御部250は、水素供給源30の通電を制御する。
燃料電池制御部260は、燃料電池10と、加熱部50の動作を制御する。
【0033】
次に、図5を参照して、通電時のタンク12bの圧力制御処理について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る圧力制御システム1の通電時における運用手順を示すフローチャートである。
【0034】
(通電時の運用手順)
通電時には、電磁弁101~105は通電状態となり解放されるが、手動弁81は閉鎖される。従って、以下に説明するように、タンク12aまたはタンク12bから第2流路22を介して燃料電池10へ水素が供給される。
【0035】
取得部220は、当日から翌週までの期間中の気温予報値である外気温予測値を取得し、外気温予測データとして外気温予測データ記憶部211に記憶させる(ステップS301)。
【0036】
タンク圧力制御部230は、検出したタンク12bの水素貯蔵量と、外気温予測データ記憶部211の外気温予測データとに基づき、PCT特性データ記憶部212のPCT特性データを参照して、外気温変化に伴うタンク12bの圧力変化を予測する(ステップS302)。なお、燃料電池運用のためにタンク12bを加熱する場合には、タンク圧力制御部230は、検出したタンク12bの水素貯蔵量と加熱温度とに基づき、PCT特性データ記憶部212のPCT特性データを参照して、この観閲温度下でのタンク12bの圧力変化を予測する。
【0037】
タンク圧力制御部230は、外気温予測値が最大となる予測最高気温時、もしくは、燃料電池運用のためにタンク12bを加熱する運用加熱時に、タンク12bの圧力の予測値が第2圧力値以上になるか否かを判定する(ステップS303)。タンク圧力制御部230は、この予測値が第2圧力値以上になると判定した場合に(ステップS303-YES)、処理をステップS304へ進め、第2圧力値未満になると判定した場合に(ステップS303-NO)、処理をステップS305へ進める。
【0038】
ステップS304において、タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力の予測値が第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように制御し、処理をステップS307へ進める。
具体的には、第2流路22bを介して、タンク12bから燃料電池10へ水素を供給し、燃料電池10を発電させて水素を消費することにより、タンク12bの圧力を、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように減圧する。このとき、電磁弁制御部240は、電磁弁103と105を開放し、電磁弁101、102、104を閉鎖する。また、燃料電池制御部260は、燃料電池10を通電して稼働させる。もしくは、タンク12bの圧力がタンク12aの圧力よりも高い場合には、第2流路22を介して、タンク12bからタンク12aへ水素を移し替えることにより、タンク12bの圧力を、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように減圧する。このとき、電磁弁制御部240は、電磁弁103と104を開放し、電磁弁101、102、105を閉鎖する。
【0039】
ステップS305において、タンク圧力制御部230は、外気温予測データ記憶部211の外気温予測データが最小となる予測最低気温時に、タンク12bの圧力の予測値が第1圧力値未満になるか否かを判定する。タンク圧力制御部230は、この予測値が第1圧力値以上になると判定した場合に(ステップS305-NO)、処理をステップS307へ進め、第1圧力値未満になると判定した場合に(ステップS305-YES)、処理をステップS306へ進める。
【0040】
ステップS306において、タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力の予測値が第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように制御し、処理をステップS307へ進める。
具体的には、第1流路21を介して、水素供給源30からタンク12bへ水素を供給し、タンク12bの圧力を、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように昇圧する。このとき、電磁弁制御部240は、電磁弁101と102を開放し、電磁弁103、104、105を閉鎖する。また、水素供給源制御部250は、水素供給源30を通電して稼働させる。もしくは、タンク12aの圧力がタンク12bの圧力よりも高い場合には、第2流路22を介して、タンク12aからタンク12bへ水素を移し替えることにより、タンク12bの圧力を、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように昇圧する。このとき、電磁弁制御部240は、電磁弁103と104を開放し、電磁弁101、電磁弁102、電磁弁105を閉鎖する。
【0041】
ステップS307において、タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力を取得するとともに、取得した圧力が第1圧力値未満か否かを判定する(ステップS307)。タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力が第1圧力値以上であると判定した場合に(ステップS307-NO)、処理をステップS309へ進める。一方、タンク圧力制御部230が、タンク12bの圧力が第1圧力値未満であると判定した場合(ステップS307-YES)、処理をステップS308へ進める。
【0042】
ステップS308において、タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力の予測値が第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように制御する。
具体的には、第1流路21を介して、水素供給源30からタンク12bへ水素を供給し、タンク12bの圧力を、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように昇圧する。このとき、電磁弁制御部240は、電磁弁101と102を開放し、電磁弁103、104、105を閉鎖する。また、水素供給源制御部250は、水素供給源30を通電して稼働させる。もしくは、タンク12aの圧力がタンク12bの圧力よりも高い場合には、第2流路22を介して、タンク12aからタンク12bへ水素を移し替えることにより、タンク12bの圧力を、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満となるように昇圧する。このとき、電磁弁制御部240は、電磁弁103と104を開放し、電磁弁101、電磁弁102、電磁弁105を閉鎖する。
【0043】
燃料電池制御部260が燃料電池10を稼働し、タンク12aもしくはタンク12bから第2流路22を介して燃料電池10へ水素が供給される(ステップS309)。
タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力を取得するとともに、取得した圧力が第1圧力値未満か否かを判定する(ステップS310)。
【0044】
タンク圧力制御部230は、タンク12bの圧力が第1圧力値以上であると判定した場合に(ステップS310-NO)、処理をステップS309に戻し、燃料電池10への水素供給を継続する。一方、タンク圧力制御部230が、タンク12bの圧力が第1圧力値未満であると判定した場合(ステップS310-YES)、電磁弁制御部240は、電磁弁103を閉鎖して第2流路22bを遮断する。この場合、タンク12aから第2流路22を介して燃料電池10へ水素が供給される(ステップS311)。
【0045】
タンク12aから燃料電池10へ水素が供給されている間、電磁弁制御部240は、電磁弁102を閉鎖し、水素供給源30とタンク12aとの間の流路を閉鎖する。その後、水素供給源制御部250が水素供給源30を稼働すると、水素供給源30は、第1流路21を介してタンク12bへ水素を供給する(ステップS312)。ステップS312の後、タンク圧力制御部230は処理を310に戻し、以降の処理を繰り返す。
【0046】
(非常時の運用手順)
非常時において、電磁弁101~105は非通電状態となるので閉鎖される。
また、非常時となったときには、手動弁81が閉鎖されている。そのため、第2流路22と第3流路23は遮断されており、タンク12aとタンク12bの水素は燃料電池10へ供給されない。ここで、ユーザが手動弁81を解放すると、タンク12bの圧力が減圧弁92の圧力値(例えば、0.1MPaG)より大きい場合に、タンク12bから第3流路23を介して燃料電池10へ水素が供給される。なお、タンク12bの圧力は、通電時に、第1圧力値以上、かつ、第2圧力値未満に調整されているので、非常時には手動弁81を開くだけて当該タンクから水素を取り出すことができる。タンク12bから第3流路23を介して燃料電池10へ水素が供給されると、燃料電池10は発電する。
【0047】
ここで、図6を参照して、非常時におけるタンク12bの圧力の時間変化の概要について説明する。図6は、非常時に手動弁81を解放した場合のタンク12bの圧力の時間変化を説明した図である。図6において、横軸は時間、縦軸はタンク12bの圧力を表す。また、波形W1は、非常時に手動弁81を解放した場合のタンク12bの圧力の時間変化の一例を示している。
【0048】
時刻t1において、非常時に手動弁81が解放されると、タンク12bから燃料電池10へ水素が供給され、燃料電池10は水素を燃料として発電を行う。このとき、タンク12bの圧力は水素放出により初期圧力Pinitから低下する。なお、低下の傾きは燃料電池10の出力に依存する。次に、時刻t2において、燃料電池10が発熱すると、排熱回収部51は排熱を回収し、タンク加熱部52bは排熱回収部51が回収した排熱を利用してタンク12bの加熱を開始する。
次に、時刻t3において、タンク12bが加熱されると、水素吸蔵合金から水素が放出されて、タンク12bの圧力は、時刻t4以降において上昇する。なお、タンク12bの熱容量等に対応させて加熱部50を適切に構成することで、燃料電池10が運転継続できる最低圧力Pminを下回らずに、燃料電池10の稼働を継続することができる。また、時刻t3から時刻t4までの期間TR1は、タンク12bの熱容量に依存する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態による圧力制御システム1は、水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能なタンク12aと、水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能なタンク12bと、第1流路21と、第2流路22と、第3流路と、制御装置200とを備える。第1流路21は、通電時に、タンク12aとタンク12bとのうち少なくとも一方へ、水素供給源30から水素を供給する。第2流路22は、通電時に、タンク12aとタンク12bとのうち少なくとも一方から、燃料電池10へ水素を供給する。第3流路23は、非常時に、タンク12bから燃料電池10へ水素を供給する。制御装置200は、通電時に、タンク12b外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、タンク12bの圧力変化を予測し、予測したタンク12bの圧力が、燃料電池10が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する。
これにより、非常時にタンク12bから水素を供給できるように、タンク12bの圧力を制御することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る第3流路は、手動弁81を有し、手動弁81を閉鎖した場合には遮断され、開放された場合にはタンク12bから燃料電池10へ水素を供給する。
これにより、非常時に、手動弁81を開放するだけでいつでもタンク12bから燃料電池10へ水素を供給することができる。
【0051】
また、本実施形態による圧力制御方法は、水素吸蔵合金を内蔵し、水素を吸蔵可能なタンク12aと、水素吸蔵合金を内蔵し、非常時用に水素を吸蔵可能なタンク12bと、通電時に、タンク12aとタンク12bとのうち少なくとも一方へ、水素供給源30から水素を供給する第1流路と、通電時に、タンク12aとタンク12bとのうち少なくとも一方から、燃料電池10へ水素を供給する第2流路と、非常時に、タンク12bから前記燃料電池へ水素を供給する第3流路と、を備える圧力制御システムの圧力制御方法である。制御装置200は、通電時に、タンク12b外部の気温予測値である外気温予測値に基づいて、タンク12bの圧力変化を予測し、予測したタンク12bの圧力に基づいて、タンク12bの圧力が、燃料電池10が運転を継続できる最低圧力よりも大きい圧力値である第1圧力値以上、かつ、第1圧力値より大きい所定の圧力値である第2圧力値未満になるように制御する。
これにより、本実施形態による圧力制御方法は、上述した圧力制御システム1と同様の効果を奏し、非常時にタンク12bから水素を供給できるように、タンク12bの圧力を制御することができる。
【0052】
なお、上記実施形態において、圧力制御システム1が屋外設置である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、室内設置であってもよい。この場合には、外気温予測データ記憶部211は、外気温予測値として、空調設定温度を記憶すればよい。
【0053】
上述した実施形態における圧力制御処理をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録してこの記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0054】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…圧力制御システム、10…燃料電池、12、12a、12b…タンク、21…第1流路、22、22a、22b…第2流路、22a…第2流路、22b…第2流路、23…第3流路、30…水素供給源、50…加熱部、200…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6