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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ジッタ発生装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/03 20060101AFI20240502BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H04L25/03 C
H04L25/02 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020063223
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021164039
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】中村 友洋
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0304054(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0098843(US,A1)
【文献】特開2009-042231(JP,A)
【文献】特開2005-181325(JP,A)
【文献】特開2009-239361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H04L 25/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
確定的ジッタが付加された信号を生成して出力するジッタ発生装置において、
前記信号に付加される前記確定的ジッタの量をジッタ量とし、前記ジッタ量と複数のジッタパラメータの組み合わせとの間の関係が定義された規則をジッタパラメータ規則として、
ユーザー操作に従い所望の前記ジッタ量を入力し、前記ジッタパラメータ規則を用いて、前記ジッタ量を前記複数のジッタパラメータの組み合わせに変換し、前記複数のジッタパラメータの組み合わせを出力するジッタパラメータ処理部と、
前記ジッタパラメータ処理部により出力された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる第1のジッタパラメータに基づいて、所定のリップルを有するDC電圧を生成すると共に、クロックを生成する電源及びクロック生成部と、
前記電源及びクロック生成部により生成された前記DC電圧及び前記クロックに従い動作すると共に、前記ジッタパラメータ処理部により出力された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる第2のジッタパラメータに基づいて、前記確定的ジッタが付加される前記信号に対してエンファシスフィルタによるフィルタ処理を施し、前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる第3のジッタパラメータに基づいて、前記フィルタ処理が施された前記信号から差動信号を生成する物理媒体接続部と、を備え、
前記物理媒体接続部により生成された前記差動信号を、前記確定的ジッタが付加された前記信号として出力する、ことを特徴とするジッタ発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のジッタ発生装置において、
前記ジッタパラメータ処理部がユーザー操作に従い入力する所望の前記ジッタ量を、予め設定されたジッタ量範囲内における最小のジッタ量とし、前記第1のジッタパラメータをスイッチング周波数とし、前記第2のジッタパラメータを前記エンファシスフィルタのゲインとし、前記第3のジッタパラメータを前記差動信号の振幅値として、前記物理媒体接続部により生成された前記差動信号を、前記最小のジッタ量の前記確定的ジッタが付加された前記信号として出力する、ことを特徴とするジッタ発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のジッタ発生装置において、
さらに、分配部及び処理表示部を備え、
前記分配部は、
前記確定的ジッタが付加された前記信号を分配して前記処理表示部に出力すると共に、ジッタ耐性を測定する被測定機器に出力し、
前記処理表示部は、
前記確定的ジッタが付加された前記信号に基づいて、CRCエラー回数及びBERを求め、前記ジッタパラメータ処理部により順次変化する前記ジッタ量が入力された場合に、順次変化する前記ジッタ量毎に、前記ジッタ量に対応する前記複数のジッタパラメータの組み合わせのうちの一部または全部、前記CRCエラー回数及び前記BERを画面表示する、ことを特徴とするジッタ発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載のジッタ発生装置において、
前記物理媒体接続部の前記エンファシスフィルタをアナログフィルタとし、
前記ジッタパラメータ処理部は、
入力した前記ジッタ量が前記ジッタパラメータ規則に定義されていない場合、前記ジッタパラメータ規則に定義された前記複数のジッタパラメータの組み合わせを用いた内挿または外挿により、前記ジッタ量に対応する前記複数のジッタパラメータの組み合わせを特定し、
前記電源及びクロック生成部は、
前記ジッタパラメータ処理部により特定された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる前記第1のジッタパラメータに基づいて、前記DC電圧を生成すると共に、前記クロックを生成し、
前記物理媒体接続部は、
前記ジッタパラメータ処理部により特定された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる前記第2のジッタパラメータに基づいて、前記フィルタ処理を施し、前記ジッタパラメータ処理部により特定された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる前記第3のジッタパラメータに基づいて、前記差動信号を生成する、ことを特徴とするジッタ発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載のジッタ発生装置において、
前記ジッタパラメータ処理部は、
前記ユーザー操作に従い前記ジッタ量を入力すると共に、前記信号に付加される前記確定的ジッタの種類をジッタ種類として入力し、前記ジッタパラメータ規則を用いて、前記ジッタ量を前記複数のジッタパラメータの組み合わせに変換し、
予め設定された区別規則に従い、前記ジッタ種類に応じて、前記複数のジッタパラメータの組み合わせを固定パラメータ及び可変パラメータに区別し、前記固定パラメータを固定値として出力し、予め設定された順次変化規則に従い、前記可変パラメータを時間の変化と共に順次変化する可変値として出力し、
当該ジッタ発生装置は、前記固定パラメータ及び前記可変パラメータに応じて生成された前記差動信号を、前記ジッタ種類の前記確定的ジッタが付加された前記信号として出力する、ことを特徴とするジッタ発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のジッタが付加された信号を出力するジッタ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送局で使用されている4Kまたは8K用非圧縮映像インターフェースにおいて、8K解像度、RGB444、ハイフレームレート、広色域及び12ビット階調に対応した映像信号を伝送するために、U-SDI(Ultrahigh-definition Signal/Data Interface)が使用されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
U-SDIに対応したスイッチャー、モニター等の信号処理機器では、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の信号処理部品と当該機器外部との間の信号伝送のために、一般に電気/光変換器が用いられる。
【0004】
しかしながら、電気信号は、基板の配線による減衰等の影響を受けるため、機器内部ではジッタが発生する。このジッタの発生が原因となって、信号処理機器は、U-SDIに対応した受信特性を満足することができず、映像データ、アンシラリーデータ、タイミング基準コード等が変化してしまう。このため、異なる機器間の信号伝送が不可能となる問題、アイマスクテストに合格しないという問題等が生じる。
【0005】
一般に、U-SDIの入力インターフェースを備えた被測定機器のジッタ耐性は、ジッタ量により測定することができる。具体的には、BERT(Bit Error Rate Tester:ビットエラーレートテスター)等のジッタ源が、ジッタ量を徐々に変化させた信号を被測定機器へ送出することで、ジッタ源と被測定機器との間の信号伝送が不可能となったときのジッタ量が測定される。以下、ジッタ源を「ジッタ発生装置」という。
【0006】
このジッタ量は、例えばジッタ発生装置に備えたエンファシスフィルタのフィルタ係数を操作することにより、変化させることができる(例えば特許文献2,3を参照)。また、ジッタ量は、電気/光変換器に入力される差動信号の振幅値を操作することにより変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5744337号公報
【文献】特開2012-50069号公報
【文献】特開2009-182968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、U-SDI信号の周波数は5GHz帯以上であるため、ジッタ発生装置に備えたエンファシスフィルタのフィルタ係数または差動信号の振幅値のみを操作したとしても、基板上の配線の減衰特性により、ジッタ量が十分に変化しないことがある。つまり、従来の手法では、ジッタは、U-SDI信号の1UI(ユニットインターバル)に対して僅かな量しか変化しないことがあり、被測定機器のジッタ耐性を適切に測定することができないという問題があった。
【0009】
これは、ジッタ発生装置に備えた電気/光変換器の入出力特性、U-SDI信号を生成する構成部(後述する10Gリンク信号生成部14)等が使用するクロック、当該構成部に供給される電源の電圧特性等が原因である。
【0010】
つまり、従来の手法においてジッタが僅かな量しか変化しないのは、ジッタのコンポーネントの1つである確定的ジッタの量が、差動信号の振幅値、エンファシスフィルタのゲイン、電源のリップル、スイッチング周波数等のパラメータに対して複合的に依存するためである。
【0011】
図13は、差動信号の振幅値を変化させた場合のジッタ量の測定結果の一例を示す図である。(1)は、ポストエンファシスフィルタのゲインが0dBの場合を示し、(2)は、ポストエンファシスフィルタのゲインが8.5dBの場合を示す。aはトータルジッタの量Tj(ps)、bは確定的ジッタの量Dj(ps)、cはランダムジッタの量Rj(ps)をそれぞれ示す。
【0012】
横軸は差動信号の振幅値(mVpp)を示し、縦軸は、トータルジッタの量Tj(ps)、確定的ジッタの量Dj(ps)及びランダムジッタの量Rj(ps)を示す。トータルジッタの量Tjは、確定的ジッタの量Djと、ランダムジッタの量Rjに所定の係数を乗算したものとの和である。所定の係数は、推定するBER(Bit Error Rate:ビットエラーレート)により決定され、BER=1×10-12の場合は14.069である。一般に、確定的ジッタは基板の配線設計等により決定され、ランダムジッタは熱雑音等が原因で決定される。
【0013】
図13(1)(2)から、トータルジッタの量Tj、確定的ジッタの量Dj及びランダムジッタの量Rjのそれぞれは、差動信号の振幅値に依存して変化することがわかる。
【0014】
図14は、ポストエンファシスフィルタのゲインを変化させた場合のジッタ量の測定結果の一例を示す図であり、差動信号の振幅値が460mVppの場合を示している。aはトータルジッタの量Tj(ps)、bは確定的ジッタの量Dj(ps)、cはランダムジッタの量Rj(ps)をそれぞれ示す。
【0015】
横軸は、ポストエンファシスフィルタのゲイン(dB)を示し、縦軸は、トータルジッタの量Tj(ps)、確定的ジッタの量Dj(ps)及びランダムジッタの量Rj(ps)を示す。
【0016】
図14から、トータルジッタの量Tj、確定的ジッタの量Dj及びランダムジッタの量Rjのそれぞれは、ポストエンファシスフィルタのゲインに依存して変化することがわかる。
【0017】
また、U-SDIの入力インターフェースを備えたピクチャーモニター等の被測定機器についてジッタ耐性試験を実施する場合、従来のBERTをジッタ発生装置としてそのまま使用すると、ジッタ耐性を測定することができない。これは、従来のBERTがU-SDIに対応していないため、被測定機器は、BERTから送出された信号をU-SDI信号として認識することができず、ユーザーは、正しく信号伝送されているか否かを視覚的に確認できないからである。
【0018】
このように、従来のジッタ発生装置は、僅かな量の確定的ジッタしか発生させることができないため、ジッタ発生装置として十分に機能していないという問題があった。また、従来のジッタ発生装置は、U-SDIに対応した被測定機器のジッタ耐性試験に使用するのが困難であるという問題があった。
【0019】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、所望の確定的ジッタを付加した信号を生成して出力可能なジッタ発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、請求項1のジッタ発生装置は、確定的ジッタが付加された信号を生成して出力するジッタ発生装置において、前記信号に付加される前記確定的ジッタの量をジッタ量とし、前記ジッタ量と複数のジッタパラメータの組み合わせとの間の関係が定義された規則をジッタパラメータ規則として、ユーザー操作に従い所望の前記ジッタ量を入力し、前記ジッタパラメータ規則を用いて、前記ジッタ量を前記複数のジッタパラメータの組み合わせに変換し、前記複数のジッタパラメータの組み合わせを出力するジッタパラメータ処理部と、前記ジッタパラメータ処理部により出力された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる第1のジッタパラメータに基づいて、所定のリップルを有するDC電圧を生成すると共に、クロックを生成する電源及びクロック生成部と、前記電源及びクロック生成部により生成された前記DC電圧及び前記クロックに従い動作すると共に、前記ジッタパラメータ処理部により出力された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる第2のジッタパラメータに基づいて、前記確定的ジッタが付加される前記信号に対してエンファシスフィルタによるフィルタ処理を施し、前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる第3のジッタパラメータに基づいて、前記フィルタ処理が施された前記信号から差動信号を生成する物理媒体接続部と、を備え、前記物理媒体接続部により生成された前記差動信号を、前記確定的ジッタが付加された前記信号として出力する、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項2のジッタ発生装置は、請求項1に記載のジッタ発生装置において、前記ジッタパラメータ処理部がユーザー操作に従い入力する所望の前記ジッタ量を、予め設定されたジッタ量範囲内における最小のジッタ量とし、前記第1のジッタパラメータをスイッチング周波数とし、前記第2のジッタパラメータを前記エンファシスフィルタのゲインとし、前記第3のジッタパラメータを前記差動信号の振幅値として、前記物理媒体接続部により生成された前記差動信号を、前記最小のジッタ量の前記確定的ジッタが付加された前記信号として出力する、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項3のジッタ発生装置は、請求項1に記載のジッタ発生装置において、さらに、分配部及び処理表示部を備え、前記分配部が、前記確定的ジッタが付加された前記信号を分配して前記処理表示部に出力すると共に、ジッタ耐性を測定する被測定機器に出力し、前記処理表示部が、前記確定的ジッタが付加された前記信号に基づいて、CRCエラー回数及びBERを求め、前記ジッタパラメータ処理部により順次変化する前記ジッタ量が入力された場合に、順次変化する前記ジッタ量毎に、前記ジッタ量に対応する前記複数のジッタパラメータの組み合わせのうちの一部または全部、前記CRCエラー回数及び前記BERを画面表示する、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項4のジッタ発生装置は、請求項1に記載のジッタ発生装置において、前記物理媒体接続部の前記エンファシスフィルタをアナログフィルタとし、前記ジッタパラメータ処理部が、入力した前記ジッタ量が前記ジッタパラメータ規則に定義されていない場合、前記ジッタパラメータ規則に定義された前記複数のジッタパラメータの組み合わせを用いた内挿または外挿により、前記ジッタ量に対応する前記複数のジッタパラメータの組み合わせを特定し、前記電源及びクロック生成部が、前記ジッタパラメータ処理部により特定された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる前記第1のジッタパラメータに基づいて、前記DC電圧を生成すると共に、前記クロックを生成し、前記物理媒体接続部が、前記ジッタパラメータ処理部により特定された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる前記第2のジッタパラメータに基づいて、前記フィルタ処理を施し、前記ジッタパラメータ処理部により特定された前記複数のジッタパラメータの組み合わせに含まれる前記第3のジッタパラメータに基づいて、前記差動信号を生成する、ことを特徴とする。
【0024】
また、請求項5のジッタ発生装置は、請求項1に記載のジッタ発生装置において、前記ジッタパラメータ処理部が、前記ユーザー操作に従い前記ジッタ量を入力すると共に、前記信号に付加される前記確定的ジッタの種類をジッタ種類として入力し、前記ジッタパラメータ規則を用いて、前記ジッタ量を前記複数のジッタパラメータの組み合わせに変換し、予め設定された区別規則に従い、前記ジッタ種類に応じて、前記複数のジッタパラメータの組み合わせを固定パラメータ及び可変パラメータに区別し、前記固定パラメータを固定値として出力し、予め設定された順次変化規則に従い、前記可変パラメータを時間の変化と共に順次変化する可変値として出力し、当該ジッタ発生装置が、前記固定パラメータ及び前記可変パラメータに応じて生成された前記差動信号を、前記ジッタ種類の前記確定的ジッタが付加された前記信号として出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、所望の確定的ジッタを付加した信号を生成して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ジッタ発生装置の基本構成例を示すブロック図である。
図2】ジッタパラメータ処理部の処理例を示すフローチャートである。
図3】テーブルT1,・・・,T24の構成例を示す図である。
図4】物理媒体接続部の構成例を示すブロック図である。
図5】実施例1のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。
図6】実施例2のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。
図7】処理表示部の表示例を示す図である。
図8】処理表示部の他の表示例を示す図である。
図9】実施例3のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。
図10】実施例4のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。
図11】実施例4におけるジッタパラメータ処理部の処理例(周期ジッタの場合)を示すフローチャートである。
図12】実施例4におけるジッタパラメータ処理部の処理例(基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタの場合)を示すフローチャートである。
図13】差動信号の振幅値を変化させた場合のジッタ量の測定結果の一例を示す図である。
図14】ポストエンファシスフィルタのゲインを変化させた場合のジッタ量の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、予め設定された規則に従い、所望の確定的ジッタの量からジッタパラメータを求め、ジッタパラメータに基づいて、所望の確定的ジッタを付加した信号を生成することを特徴とする。これにより、所望の確定的ジッタを付加した信号を生成して出力することができる。
【0028】
〔ジッタ発生装置〕
まず、ジッタ発生装置の基本的な構成及び処理について説明する。図1は、ジッタ発生装置の基本構成例を示すブロック図であり、後述する実施例1~4の前提となるものである。
【0029】
このジッタ発生装置1は、ジッタパラメータ処理部10、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16を備えている。電源制御部11、スイッチングレギュレーター12及びクロック生成部13により、電源及びクロック生成部が構成される。ジッタ発生装置1は、確定的ジッタの量J(以下、「ジッタ量J」という。)を入力し、ジッタ量Jが付加された10Gリンク信号を生成して出力する。
【0030】
ジッタパラメータ処理部10は、予め設定された24個のテーブルT1,・・・,T24を備えている。テーブルT1,・・・,T24の詳細については後述する。
【0031】
ジッタパラメータ処理部10は、ユーザー操作に従い、ユーザーが所望するジッタ量Jを入力する。このジッタ量Jは、当該ジッタ発生装置1が出力する光の10Gリンク信号に付加される確定的ジッタの量である。
【0032】
ジッタパラメータ処理部10は、テーブルT1,・・・,T24を用いて、入力したジッタ量Jを、テーブルT1,・・・,T24に対応した24系統のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせに変換する。すなわち、ジッタパラメータ処理部10は、ジッタ量Jに対応する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせを、テーブルT1,・・・,T24の逆関数J-1(x1,・・・,xn)として求める。nはジッタパラメータの数を示し、正の整数である。
【0033】
ここで、テーブルT1は、第1系統のジッタパラメータx1,・・・,xn、10Gリンク信号生成部14-1、第1系統の電気の10Gリンク信号、及び物理媒体接続部15における第1系統の構成に対応する。また、テーブルT1は、第1系統の差動信号、電気/光変換器16における第1系統の構成、及び第1系統の光の10Gリンク信号に対応する。
【0034】
同様に、テーブルT2,・・・,T24は、それぞれ第2,・・・24系統のジッタパラメータx1,・・・,xn、10Gリンク信号生成部14-2,・・・,14-24、第2,・・・,24系統の電気の10Gリンク信号等にそれぞれ対応する。
【0035】
ジッタパラメータx1,・・・,xnは、10Gリンク信号に所望のジッタ量Jを付加するためのパラメータであり、ジッタ量J及び系統に応じて異なる値をとる。ジッタパラメータx1,・・・,xnのうち、ジッタパラメータx1は差動信号の振幅値とする。また、ジッタパラメータx2はプリエンファシスフィルタのゲイン、ジッタパラメータx3はポストエンファシスフィルタのゲイン、ジッタパラメータxnはスイッチング周波数とする。
【0036】
ジッタパラメータ処理部10は、系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xn-1を物理媒体接続部15に出力すると共に、系統毎のジッタパラメータxnを電源制御部11に出力する。
【0037】
これにより、系統毎のジッタパラメータx1である差動信号の振幅値、ジッタパラメータx2であるプリエンファシスフィルタのゲイン及びジッタパラメータx3であるポストエンファシスフィルタのゲイン等が物理媒体接続部15に出力される。
【0038】
また、系統毎のジッタパラメータxnであるスイッチング周波数が電源制御部11に出力され、スイッチングレギュレーター12において後述する所定のリップルを有するDC電圧(直流電圧)が生成される。また、クロック生成部13においてクロックが生成される。
【0039】
図2は、ジッタパラメータ処理部10の処理例を示すフローチャートであり、図3は、テーブルT1,・・・,T24の構成例を示す図である。ジッタパラメータ処理部10は、ユーザー操作に従い、ジッタ量Jを入力する(ステップS201)。
【0040】
ジッタパラメータ処理部10は、テーブルT1,・・・,T24から、ジッタ量Jに対応する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせを読み出す(ステップS202)。
【0041】
図3を参照して、テーブルT1,・・・,T24(以下、総称して「テーブルT」という。)は、ジッタ量J(J1,J2,・・・)、及び当該ジッタ量Jに対応するジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせにより構成される。ジッタパラメータx1は、差動信号の振幅値であり、ジッタパラメータx2は、プリエンファシスフィルタのゲインであり、ジッタパラメータx3は、ポストエンファシスフィルタのゲインである。また、ジッタパラメータxnは、スイッチング周波数である。
【0042】
テーブルTは、電気/光変換器16における系統の個体毎、すなわち第1,・・・,24の系統毎にユーザーにより予め設定され、ジッタ量Jをジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせに変換するための規則が定義されている。つまり、テーブルTには、ジッタ量Jとジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせとの間の関係が定義されている。
【0043】
テーブルTは、例えば10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24が出力する10Gリンク信号の代わりに疑似ランダム信号(PRBS:Pseudo Random Bit Sequence)を用いて、電気/光変換器16が出力する光の10Gリンク信号を測定することにより、ジッタ量Jとジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせとの間の関係が定義される。
【0044】
ジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせは、テーブルTについて個別に設定され、また、ジッタ量Jに対応して設定される。つまり、同一のジッタ量Jに対応するジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせが、系統毎(テーブルT毎)に異なることもある。
【0045】
ジッタパラメータ処理部10により、テーブルTのそれぞれについて、ジッタ量Jに対応するジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせが系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせとして読み出される。
【0046】
尚、ジッタパラメータ処理部10は、ステップS202において、テーブルTに、入力したジッタ量Jが設定されていない場合、テーブルTに設定されているジッタ量Jのうち、入力したジッタ量Jに最も近い値を特定する。そして、ジッタパラメータ処理部10は、テーブルTから、特定した値(ジッタ量J)に対応するジッタパラメータx1,・・・,xnを読み出す。
【0047】
また、ジッタパラメータ処理部10は、ステップS202において、内挿または外挿により、ジッタパラメータx1,・・・,xnを求めるようにしてもよい。例えば、ジッタパラメータ処理部10は、テーブルTに設定されたジッタ量J1,J2,・・・のうち、入力したジッタ量Jに近い複数のジッタ量Jm,・・を特定する。そして、ジッタパラメータ処理部10は、テーブルTから、複数のジッタ量Jm,・・に対応するジッタパラメータx1,・・・,xnをそれぞれ読み出し、内挿または外挿により、入力したジッタ量Jに対応するジッタパラメータx1,・・・,xnを求める。
【0048】
図2に戻って、ジッタパラメータ処理部10は、系統毎のジッタパラメータx1(差動信号の振幅値),x2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン),・・・,xn-1を物理媒体接続部15に出力する(ステップS203)。また、ジッタパラメータ処理部10は、系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を電源制御部11に出力する(ステップS204)。
【0049】
図1に戻って、電源制御部11は、ジッタパラメータ処理部10から系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を入力する。そして、電源制御部11は、スイッチングレギュレーター12が出力するDC電圧及びクロック生成部13が出力するクロックを制御するために、所定の規則に従い、系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を1系統の電圧(値)に変換する。
【0050】
例えば、電源制御部11は、系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を平均化し、所定の規則に従い、スイッチング周波数の平均値を1系統の電圧に変換する。電源制御部11は、変換した電圧をスイッチングレギュレーター12及びクロック生成部13に出力する。
【0051】
系統毎のまたは平均化したジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を1系統の電圧に変換する規則は、電圧からジッタパラメータxn(スイッチング周波数)に対応するDC電圧及びクロックが、スイッチングレギュレーター12及びクロック生成部13において生成されるように、予め設定される。
【0052】
スイッチングレギュレーター12は、電源制御部11から電圧を入力する。そして、スイッチングレギュレーター12は、既知の手法を用いて、当該電圧に対応するリップルを有するDC電圧を生成し、DC電圧を10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16に出力する。
【0053】
これにより、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16は、ジッタ量Jに対応する系統毎のスイッチング周波数が反映されたリップルを有する単一のDC電圧に従って動作することとなる。
【0054】
クロック生成部13は、電源制御部11から電圧を入力する。そして、クロック生成部13は、既知の手法を用いて、当該電圧に対応するクロックを生成し、クロックを10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24及び物理媒体接続部15に出力する。
【0055】
これにより、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24及び物理媒体接続部15は、ジッタ量Jに対応する系統毎のスイッチング周波数が反映された単一のクロックに従って動作することとなる。
【0056】
10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24(以下、総称して「10Gリンク信号生成部14」という。)は、スイッチングレギュレーター12からDC電圧の電源が供給され、クロック生成部13からクロックを入力し、これらのDC電圧の電源及びクロックに従い動作する。
【0057】
10Gリンク信号生成部14は、10Gリンク信号である映像信号のフレーム周波数が120Hzの場合、2系統の基本ストリームに対し多重化処理を施し、多重化したデータに対しバイト化による整列処理を施す。そして、10Gリンク信号生成部14は、整列処理後のデータに対して8B /10B符号化処理を施し、10Gリンク信号を生成する。
【0058】
一方、10Gリンク信号生成部14は、10Gリンク信号である映像信号のフレーム周波数が60Hzの場合、4系統の基本ストリームに対し多重化処理を施し、前述と同様の処理を行い、10Gリンク信号を生成する。そして、10Gリンク信号生成部14は、生成した系統毎の10Gリンク信号を物理媒体接続部15に出力する。尚、10Gリンク信号生成部14の処理の詳細については、前述の特許文献1を参照されたい。
【0059】
10Gリンク信号は、U-SDIに従った信号として10Gリンク信号生成部14から物理媒体接続部15へ出力される。
【0060】
物理媒体接続部15は、スイッチングレギュレーター12からDC電圧の電源が供給され、クロック生成部13からクロックを入力し、これらのDC電圧の電源及びクロックに従い動作する。
【0061】
物理媒体接続部15は、第1,・・・,24系統のそれぞれについての構成部を備えている。物理媒体接続部15は、10Gリンク信号生成部14から系統毎の10Gリンク信号を入力すると共に、ジッタパラメータ処理部10から系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xn-1を入力する。
【0062】
物理媒体接続部15は、系統毎に、10Gリンク信号に対してジッタパラメータx1,・・・,xn-1に基づいた所定の処理を行うことで、10Gリンク信号にジッタ量Jを付加する。そして、物理媒体接続部15は、系統毎に、ジッタ量Jが付加された差動信号を生成し、系統毎の差動信号を電気/光変換器16に出力する。
【0063】
図4は、物理媒体接続部15の構成例を示すブロック図である。この物理媒体接続部15は、第1系統についてエンファシス回路20-1及び差動信号ドライバ21-1を備え、第2,・・・,24系統のそれぞれについても同様の構成をなしている。
【0064】
エンファシス回路20-1は、スイッチングレギュレーター12からDC電圧の電源が供給され、クロック生成部13からクロックを入力し、これらのDC電圧の電源及びクロックに従い動作する。
【0065】
エンファシス回路20-1は、10Gリンク信号生成部14-1から第1系統の10Gリンク信号を入力すると共に、ジッタパラメータ処理部10から第1系統のジッタパラメータx2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン)を入力する。
【0066】
エンファシス回路20-1は、プリエンファシスフィルタにおいて、10Gリンク信号に対しジッタパラメータx2(プリエンファシスフィルタのゲイン)を用いたフィルタ処理を行う。また、エンファシス回路20-1は、ポストエンファシスフィルタにおいて、10Gリンク信号に対しジッタパラメータx3(ポストエンファシスフィルタのゲイン)を用いたフィルタ処理を行う。
【0067】
エンファシス回路20-1は、第1系統のフィルタ処理が施された10Gリンク信号を差動信号ドライバ21-1に出力する。他の系統についても同様の処理が行われる。
【0068】
差動信号ドライバ21-1は、スイッチングレギュレーター12からDC電圧の電源が供給され、クロック生成部13からクロックを入力し、これらのDC電圧の電源及びクロックに従い動作する。
【0069】
差動信号ドライバ21-1は、エンファシス回路20-1からフィルタ処理が施された10Gリンク信号を入力すると共に、ジッタパラメータ処理部10から第1系統のジッタパラメータx1(差動信号の振幅値)を入力する。
【0070】
差動信号ドライバ21-1は、フィルタ処理が施された10Gリンク信号を用いて、ジッタパラメータx1(差動信号の振幅値)の示す振幅値となるように差動信号を生成し、第1系統の差動信号を電気/光変換器16に出力する。他の系統についても同様の処理が行われる。
【0071】
これにより、ジッタ量Jが付加された系統毎の差動信号が物理媒体接続部15から電気/光変換器16に出力される。尚、図4においては、他のジッタパラメータx4,・・・,xn-1を用いた処理は省略してある。
【0072】
図1に戻って、電気/光変換器16は、スイッチングレギュレーター12からDC電圧の電源が供給され、DC電圧の電源に従い動作する。電気/光変換器16は、第1,・・・,24系統のそれぞれについての構成部を備えている。電気/光変換器16は、物理媒体接続部15から系統毎の差動信号を入力し、系統毎の差動信号の電気信号を系統毎の光信号に変換し、系統毎の光の10Gリンク信号を出力する。
【0073】
これにより、ジッタ発生装置1から、ユーザー操作にて指定されたジッタ量Jが付加された系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。
【0074】
以上のように、図1に示したジッタ発生装置1によれば、ジッタパラメータ処理部10は、予め設定されたテーブルT1,・・・,T24を用いて、ユーザーが所望するジッタ量Jを系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせに変換する。
【0075】
電源及びクロック生成部(電源制御部11、スイッチングレギュレーター12及びクロック生成部13)は、系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)に基づいて、スイッチング周波数が反映されたリップルを有するDC電圧を生成すると共に、クロックを生成する。
【0076】
物理媒体接続部15は、電源及びクロック生成部により生成されたDC電圧の電源及びクロックに従い動作する。物理媒体接続部15は、系統毎に、10Gリンク信号に対してジッタパラメータx1,・・・,xn-1に基づいた所定の処理を行う。そして、物理媒体接続部15は、ジッタ量Jを付加した差動信号を生成する。
【0077】
所定の処理は、例えばジッタパラメータx2(プリエンファシスフィルタのゲイン)に基づいたプリエンファシスフィルタの処理、ジッタパラメータx3(ポストエンファシスフィルタのゲイン)に基づいたポストエンファシスフィルタの処理、ジッタパラメータx1(差動信号の振幅値)に基づいた当該振幅値の差動信号を生成する処理である。
【0078】
電気/光変換器16は、電源及びクロック生成部により生成されたDC電圧の電源に従い動作する。電気/光変換器16は、系統毎に、差動信号を光の10Gリンク信号に変換し、ジッタ量Jが付加された光の10Gリンク信号を出力する。
【0079】
これにより、確定的ジッタの量がユーザーの所望するジッタ量Jとなるように、光の10Gリンク信号が生成される。したがって、所望の確定的ジッタを付加した信号を出力することができる。
【0080】
以下、本発明のジッタ発生装置1について、映像の10Gリンク信号にジッタ量Jを付加する例として、実施例1~4を挙げて説明する。実施例1は、ジッタ量Jが最小となるように差動信号の振幅値等を調整し、最小量の確定的ジッタを付加した10Gリンク信号を出力する例である。
【0081】
実施例2は、ジッタ発生装置1を、被測定機器のジッタ耐性を測定するためのテスト用信号を発生する装置として用いる場合の例である。より詳細には、実施例2は、ジッタ量が順次変化するように差動信号の振幅値等を調整し、順次変化する確定的ジッタを付加した10Gリンク信号を出力する例である。
【0082】
実施例3は、実施例1,2において、プリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタがアナログフィルタとして実装されている場合の例である。実施例4は、特定種類のジッタ(例えば、周期ジッタまたは基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタ)のみを付加した10Gリンク信号を出力する例である。
【0083】
〔実施例1〕
まず、実施例1のジッタ発生装置1について説明する。前述のとおり、実施例1は、ジッタ量Jが最小となるように差動信号の振幅値等を調整し、最小量の確定的ジッタを付加した10Gリンク信号を出力する例である。
【0084】
図5は、実施例1のジッタ発生装置1の構成例を示すブロック図である。このジッタ発生装置1aは、ジッタパラメータ処理部10、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16を備えている。ジッタ発生装置1aの構成は、図1に示したジッタ発生装置1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0085】
ジッタ発生装置1aのジッタパラメータ処理部10は、最小のジッタ量J(ジッタ量Jmin)を入力し、テーブルT1,・・・,T24を用いて、ジッタ量Jminを系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnに変換する。ジッタ量Jminは、ジッタ量Jの取り得る予め設定されたジッタ量範囲において、最小のジッタ量Jである。そして、ジッタ量Jminが変換されたジッタパラメータx1,・・・,xnに基づいて、DC電圧及びクロックが生成され、差動信号が生成される。
【0086】
これにより、ジッタ発生装置1aから、ユーザー操作にて指定されたジッタ量Jminが付加された系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。
【0087】
以上のように、実施例1のジッタ発生装置1aによれば、確定的ジッタの量がユーザーの所望する最小のジッタ量J(=Jmin)となるように、光の10Gリンク信号が生成される。したがって、最小量の確定的ジッタを付加した信号を出力することができる。
【0088】
〔実施例2〕
次に、実施例2のジッタ発生装置について説明する。前述のとおり、実施例2は、ジッタ発生装置1を、被測定機器のジッタ耐性を測定するためのテスト用信号を発生する装置として用いる場合の例である。より詳細には、実施例2は、ジッタ量Jが順次変化するように差動信号の振幅値等を調整し、順次変化する確定的ジッタを付加した10Gリンク信号を出力する例である。
【0089】
図6は、実施例2のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。このジッタ発生装置1bは、ジッタパラメータ処理部10、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15、電気/光変換器16、分配部17及び処理表示部18を備えている。ジッタ発生装置1bは、被測定機器30のジッタ耐性を測定するためのテスト用信号を生成する装置であり、順次変化する確定的ジッタを付加した系統毎の10Gリンク信号を、テスト用信号として被測定機器30へ出力する。
【0090】
図5に示した実施例1のジッタ発生装置1aと図6に示す実施例2のジッタ発生装置1bとを比較すると、両ジッタ発生装置1a,1bは、ジッタパラメータ処理部10、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16を備えている点で共通する。
【0091】
一方、ジッタ発生装置1bは、ジッタ発生装置1aの各構成部に加え、さらに分配部17及び処理表示部18を備えている点で、ジッタ発生装置1aと相違する。
【0092】
図6に示すジッタ発生装置1bにおいて、図5と共通する部分には図5と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0093】
ジッタパラメータ処理部10は、図5に示した実施例1と同様の処理を行う。実施例2では、ジッタパラメータ処理部10は、ユーザー操作に従い、順次増加する(時間の経過と共に増加する)ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)を入力する。J1<・・・<Jmである。尚、ジッタパラメータ処理部10は、ユーザー操作に従い、順次減少するまたは順次変化するジッタ量Jを入力するようにしてもよい。
【0094】
ジッタパラメータ処理部10は、テーブルT1,・・・,T24を用いて、入力したジッタ量J(=J1,・・・,Jm)を系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnにそれぞれ変換する。
【0095】
ジッタパラメータ処理部10は、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)に応じて順次変化する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xn-1を物理媒体接続部15に出力すると共に、系統毎のジッタパラメータxnを電源制御部11に出力する。また、ジッタパラメータ処理部10は、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)に応じて順次変化する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnを処理表示部18に出力する。
【0096】
これにより、電気/光変換器16から分配部17へ、ユーザー操作にて指定されたジッタ量J(=J1)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号が出力され、その後、ジッタ量J(=J2)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。さらに、ジッタ量J(=J3,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号が順次出力される。
【0097】
分配部17は、電気/光変換器16からジッタ量J(=J1,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号を順次入力し、これらの光の10Gリンク信号を分配する。そして、分配部17は、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号を、処理表示部18及び被測定機器30に出力する。
【0098】
処理表示部18は、分配部17から、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号を順次入力すると共に、ユーザー操作によるジッタ量J(=J1,・・・,Jm)を順次入力する。また、処理表示部18は、ジッタパラメータ処理部10から、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)に応じた系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnを順次入力する。
【0099】
処理表示部18は、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号を電気信号に変換する。そして、処理表示部18は、系統毎及びジッタ量J毎に、電気信号に基づいて、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回符号冗長検査)エラー回数を求めると共に、BERを算出する。CRCエラー回数を求める手法及びBERの算出手法は既知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0100】
処理表示部18は、系統毎及びジッタ量J毎に、ジッタパラメータx1,・・・,xnのうちの一部または全部、CRCエラー回数及びBERを画面に表示する。
【0101】
図7は、処理表示部18の表示例を示す図である。図7に示すように、処理表示部18は、ジッタ量Jを画面表示すると共に、ユーザー操作に従い指定された系統について、ジッタパラメータx1である差動信号の振幅値、ジッタパラメータx2であるプリエンファシスフィルタのゲイン(番号)、ジッタパラメータx3であるポストエンファシスフィルタのゲイン(番号)、ジッタパラメータxnであるスイッチング周波数、CRCエラー回数及びBERを画面表示する。
【0102】
プリエンファシスフィルタのゲイン(番号)及びポストエンファシスフィルタのゲイン(番号)は「0」「1」・・・であり、実際のゲイン(dB)の値に対応する識別番号である。後述する図8においても同様である。
【0103】
図8は、処理表示部18の他の表示例を示す図である。図8に示すように、処理表示部18は、横軸をジッタパラメータx3であるポストエンファシスフィルタのゲイン(番号)、縦軸をジッタ量Jとして、ユーザー操作に従い指定された系統のグラフを画面表示する。また、処理表示部18は、ユーザー操作に従い、グラフ上のポストエンファシスフィルタのゲイン(番号)及びジッタ量Jが指定されると、指定されたポストエンファシスフィルタのゲイン(番号)及びジッタ量Jに対応するCRCエラー回数及びBERを画面表示する。
【0104】
図8には、ユーザー操作に従い、ポストエンファシスフィルタのゲイン(番号)=5、及びジッタ量J=J1が指定され、これに対応するCRCエラー回数=0及びBER=1E-12が画面表示されている。
【0105】
図6に戻って、分配部17により分配された光の10Gリンク信号は被測定機器30へ出力される。例えば被測定機器30が10Gリンク信号に対応したモニターの場合、被測定機器30は、光の10Gリンク信号を入力して電気信号に変換し、映像を画面表示する。ここで、ユーザー操作に従ってジッタ量JがJ1からJmへ順次増加すると、ユーザーは、モニターに表示された映像を目視し、処理表示部18に表示されたデータを参照することで、映像が表示されなくなったときのジッタ量Jiを判断することができる。
【0106】
また、ユーザー操作に従ってジッタ量JがJ1からJmへ順次増加することで、ユーザーは、処理表示部18に表示されたデータを参照することにより、例えばCRCエラー回数が所定回以上となったときのジッタ量Jiを判断することができる。また、ユーザーは、BERが所定値以上となったときのジッタ量Jiを判断することができる。
【0107】
以上のように、実施例2のジッタ発生装置1bによれば、ジッタパラメータ処理部10は、ユーザー操作に従い、順次増加するジッタ量J(=J1,・・・,Jm)を入力し、ジッタ量J毎に、実施例1と同様の処理を行う。電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16は、ジッタ量J毎に、実施例1と同様の処理を行う。
【0108】
分配部17は、順次増加するジッタ量J(=J1,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号を分配し、処理表示部18及び被測定機器30に出力する。
【0109】
処理表示部18は、ジッタ量J(=J1,・・・,Jm)が付加された系統毎の光の10Gリンク信号を電気信号に変換し、系統毎及びジッタ量J毎に、CRCエラー回数及びBERを求める。そして、処理表示部18は、系統毎及びジッタ量J毎に、ジッタパラメータx1,・・・,xn、CRCエラー回数及びBERを画面に表示する。
【0110】
これにより、確定的ジッタの量がユーザーの所望するジッタ量J、すなわち順次変化するジッタ量(=J1,・・・,Jm)となるように、光の10Gリンク信号が生成される。そして、ユーザーは、被測定機器30のモニターに表示された映像を目視し、処理表示部18に表示されたデータを参照することで、映像が表示されなくなったときのジッタ量Jiを判断することができる。また、ユーザーは、CRCエラー回数及びBERに対応するジッタ量Jiを判断することができる。つまり、ユーザーは、ジッタ量(=J1,・・・,Jm)に応じた映像、CRCエラー回数、BER等の指標を目視することができる。
【0111】
したがって、ジッタ発生装置1bを、被測定機器30のジッタ耐性を測定するためのテスト用信号を発生する装置として用いることができる。
【0112】
〔実施例3〕
次に、実施例3のジッタ発生装置について説明する。前述のとおり、実施例3は、実施例1,2において、プリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタがアナログフィルタとして実装されている場合の例である。尚、実施例3のアナログフィルタは、後述する実施例4についても適用がある。
【0113】
図9は、実施例3のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。このジッタ発生装置1cは、ジッタパラメータ処理部10、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部40及び電気/光変換器16を備えている。
【0114】
図5に示した実施例1のジッタ発生装置1aと図9に示す実施例3のジッタ発生装置1cとを比較すると、両ジッタ発生装置1a,1cは、ジッタパラメータ処理部10、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24及び電気/光変換器16を備えている点で共通する。
【0115】
一方、ジッタ発生装置1cは、アナログ回路で構成されたエンファシス回路20-1等を実装した物理媒体接続部40を備えている点で、デジタル回路で構成されたエンファシス回路20-1等を実装した物理媒体接続部15を備えているジッタ発生装置1aと相違する。
【0116】
図9に示すジッタ発生装置1cにおいて、図5と共通する部分には図5と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0117】
ジッタパラメータ処理部10は、テーブルT1,・・・,T24を用いて、ユーザーが所望するジッタ量Jに対応する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnを求める際に、テーブルT1,・・・,T24に、入力したジッタ量Jが設定されていない場合、内挿または外挿により系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnを求める。
【0118】
これにより、ジッタパラメータx2であるプリエンファシスフィルタのゲイン及びジッタパラメータx3であるポストエンファシスフィルタのゲインを実数値にて求めることができ、これらのゲインは物理媒体接続部40に出力される。
【0119】
物理媒体接続部40は、図4に示した物理媒体接続部15と同様の構成の下で同様の処理を行うが、系統毎のエンファシス回路20-1等のプリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタはデジタルフィルタではなくアナログフィルタである。
【0120】
プリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタのゲインは実数値で設定することができ、特に、プリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタがオペアンプ等を用いて実装される場合、ゲインを1以上に設定することができる。
【0121】
以上のように、実施例3のジッタ発生装置1cによれば、プリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタがアナログフィルタとして実装されている場合に、ジッタパラメータx2であるプリエンファシスフィルタのゲイン及びジッタパラメータx3であるポストエンファシスフィルタのゲインを実数値にて設定することができる。
【0122】
また、プリエンファシスフィルタ及びポストエンファシスフィルタがアナログフィルタとして実装されている場合も同様に、所望の確定的ジッタを付加した信号を出力することができる。
【0123】
〔実施例4〕
次に、実施例4のジッタ発生装置について説明する。前述のとおり、実施例4は、特定種類のジッタ(例えば、周期ジッタまたは基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタ)のみを付加した10Gリンク信号を出力する例である。
【0124】
図10は、実施例4のジッタ発生装置の構成例を示すブロック図である。このジッタ発生装置1dは、ジッタパラメータ処理部41、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15、電気/光変換器16、分配部17及び処理表示部18を備えている。ジッタ発生装置1dは、被測定機器30における特定種類のジッタ耐性を測定するためのテスト用信号を生成する装置であり、特定種類のジッタのみを付加した系統毎の10Gリンク信号を、テスト用信号として被測定機器30へ出力する。
【0125】
図6に示した実施例2のジッタ発生装置1bと図10に示す実施例4のジッタ発生装置1dとを比較すると、両ジッタ発生装置1b,1dは、電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15、電気/光変換器16、分配部17及び処理表示部18を備えている点で共通する。
【0126】
一方、ジッタ発生装置1dは、ジッタ発生装置1bのジッタパラメータ処理部10の代わりにジッタパラメータ処理部41を備えている点で、ジッタ発生装置1bと相違する。
【0127】
図10に示すジッタ発生装置1dにおいて、図6と共通する部分には図6と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0128】
ジッタパラメータ処理部41は、ジッタパラメータ処理部10と同様に、予め設定された24個のテーブルT1,・・・,T24を備えている。
【0129】
ジッタパラメータ処理部41は、ユーザー操作に従い、ジッタ量Jを入力すると共に、ジッタの種類を入力する。このジッタ量Jは、当該ジッタ発生装置1dが出力する光の10Gリンク信号に付加される所望の確定的ジッタの量であり、ジッタの種類は、当該ジッタ発生装置1dが出力する光の10Gリンク信号に付加される確定的ジッタの種類である。
【0130】
ジッタの種類は、例えば周期ジッタまたは基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタである。周期ジッタは、ジッタパラメータ処理部41により変換されるスイッチング周波数に応じたスイッチングレギュレーター12のスイッチング動作が原因で発生する、データに対して無相関のジッタを示す。基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタは、映像信号と相関関係のあるデータ依存性のジッタ(DDJ:Data Dependent Jitter)の一種であり、ジッタパラメータ処理部41により変換される差動信号の振幅値、エンファシスフィルタのゲイン等を基準にして、振幅値、エンファシスフィルタのゲイン等を様々に変化させることで得られるジッタである。
【0131】
ジッタの種類として周期ジッタが入力された場合、ジッタ発生装置1dから周期ジッタのみを付加した10Gリンク信号が出力され、被測定機器30の周期ジッタに対する耐性が測定される。また、ジッタの種類として、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタが入力された場合、ジッタ発生装置1dから当該ジッタのみを付加した10Gリンク信号が出力され、被測定機器30の当該ジッタに対する耐性が測定される。
【0132】
ジッタパラメータ処理部41は、テーブルT1,・・・,T24を用いて、入力したジッタ量Jを系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnに変換する。
【0133】
ジッタパラメータ処理部41は、予め設定された規則(区別規則)に従い、ジッタの種類に応じて、ジッタパラメータx1,・・・,xnを固定パラメータと可変パラメータとに区別する。そして、ジッタパラメータ処理部41は、系統毎の固定パラメータを固定値として出力すると共に、系統毎の可変パラメータを、予め設定された規則(順次変化規則)に従い、時間の経過と共に順次変化する可変値として出力する。
【0134】
区別規則は、ジッタの種類毎に予め設定されており、順次変化規則は、ジッタの種類及び可変パラメータ毎に予め設定されている。時間の経過と共に順次変化する可変値は、時間の経過と共に増加してもよいし、減少してもよい。
【0135】
これにより、予め設定された区別規則に従い、ジッタの種類に関連するジッタパラメータのみが可変値に区別される。
【0136】
(ジッタの種類:周期ジッタ)
まず、ジッタの種類として周期ジッタが入力された場合の処理について説明する。図11は、実施例4におけるジッタパラメータ処理部41の処理例(周期ジッタの場合)を示すフローチャートである。
【0137】
ジッタパラメータ処理部41は、ユーザー操作に従い、ジッタ量Jを入力すると共に、ジッタの種類として周期ジッタを入力する(ステップS1101)。そして、ジッタパラメータ処理部41は、テーブルT1,・・・,T24から、ジッタ量Jに対応する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnを読み出す(ステップS1102)。
【0138】
ジッタパラメータ処理部41は、ジッタの種類が周期ジッタである場合の予め設定された区別規則に従い、ジッタパラメータx1,・・・,xnを、固定パラメータであるジッタパラメータx1,・・・,xn-1と可変パラメータであるジッタパラメータxnとに区別する。
【0139】
これにより、ジッタパラメータx1(差動信号の振幅値),x2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン),・・・,xn-1は、固定パラメータに区別される。また、ジッタパラメータxn(スイッチング周波数)は、可変パラメータに区別される。
【0140】
ジッタパラメータ処理部41は、系統毎の固定値であるジッタパラメータx1,・・・,xn-1を物理媒体接続部15に出力する(ステップS1103)。また、ジッタパラメータ処理部41は、予め設定された順次変化規則に従い、系統毎の可変パラメータであるジッタパラメータxnを基準にして、時間の経過と共に順次変化する可変値を生成する。そして、ジッタパラメータ処理部41は、系統毎の可変値であるジッタパラメータxnを電源制御部11に出力する(ステップS1104)。
【0141】
これにより、スイッチング周波数は可変値として電源制御部11に順次出力され、可変値であるスイッチング周波数に応じて、確定的ジッタの周期が変化する。つまり、分配部17から処理表示部18及び被測定機器30へ、可変のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)、及び固定のジッタパラメータx1等に応じて、確定的ジッタの周期が変化した系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。そして、被測定機器30における周期ジッタのジッタ耐性が測定される。
【0142】
この場合、処理表示部18は、分配部17から、確定的ジッタの周期が変化した系統毎の光の10Gリンク信号を順次入力すると共に、ユーザー操作によるジッタ量J及びジッタの種類を入力する。また、処理表示部18は、ジッタパラメータ処理部41から、系統毎の固定値であるジッタパラメータx1,・・・,xn-1を入力する。さらに、処理表示部18は、ジッタパラメータ処理部41から、時間の経過と共に順次変化する系統毎の可変値であるジッタパラメータxnを入力する。
【0143】
処理表示部18は、前述のとおり、CRCエラー回数を求めると共に、BERを算出する。処理表示部18は、例えばスイッチング周波数毎に、ジッタ量J及びジッタの種類、並びに系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xn-1、CRCエラー回数及びBERを画面表示する。
【0144】
(ジッタの種類:基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタ)
次に、ジッタの種類として、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタが入力された場合の処理について説明する。図12は、実施例4におけるジッタパラメータ処理部41の処理例(基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタの場合)を示すフローチャートである。
【0145】
ジッタパラメータ処理部41は、ユーザー操作に従い、ジッタ量Jを入力すると共に、ジッタの種類として、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタを入力する(ステップS1201)。そして、ジッタパラメータ処理部41は、テーブルT1,・・・,T24から、ジッタ量Jに対応する系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnを読み出す(ステップS1202)。
【0146】
ジッタパラメータ処理部41は、ジッタの種類が基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタである場合の予め設定された区別規則に従い、ジッタパラメータx1,・・・,xnを、固定パラメータであるジッタパラメータx4,・・・,xnと、可変パラメータであるジッタパラメータx1,x2,x3とに区別する。
【0147】
これにより、ジッタパラメータx4,・・・,xn(スイッチング周波数)は、固定パラメータに区別される。また、ジッタパラメータx1(差動信号の振幅値),x2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン)は、可変パラメータに区別される。
【0148】
ジッタパラメータ処理部41は、予め設定された順次変化規則に従い、系統毎の可変パラメータであるジッタパラメータx1,x2,x3から、時間の経過と共に順次変化する可変値をそれぞれ生成する。そして、ジッタパラメータ処理部41は、系統毎の可変値であるジッタパラメータx1,x2,x3及び固定値であるジッタパラメータx4,・・・,xn-1を物理媒体接続部15に出力する(ステップS1203)。また、ジッタパラメータ処理部41は、系統毎の固定値であるジッタパラメータxnを電源制御部11に出力する(ステップS1204)。
【0149】
例えば、ジッタパラメータ処理部41は、可変値であるジッタパラメータx1,x2,x3について、最初にジッタパラメータx1,x2を固定値とし、ジッタパラメータx3を可変値として出力する。ジッタパラメータ処理部41は、次にジッタパラメータx1,x3を固定値とし、ジッタパラメータx2を可変値として出力し、そして、ジッタパラメータx2,x3を固定値とし、ジッタパラメータx1を可変値として出力する。
【0150】
これにより、差動信号の振幅値、プリエンファシスフィルタのゲイン及びポストエンファシスフィルタのゲインは可変値として物理媒体接続部15に順次出力され、これらの可変値に応じて、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタが変化する。つまり、分配部17から処理表示部18及び被測定機器30へ、可変のジッタパラメータx1(差動信号の振幅値),x2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン)及び固定のxn(スイッチング周波数)等に応じて、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタが変化した系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。そして、被測定機器30における基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタのジッタ耐性が測定される。
【0151】
この場合、処理表示部18は、分配部17から、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタが変化した系統毎の光の10Gリンク信号を順次入力すると共に、ユーザー操作によるジッタ量J及びジッタの種類を入力する。また、処理表示部18は、ジッタパラメータ処理部41から、時間の経過と共に順次変化する系統毎の可変値であるジッタパラメータx1,x2,x3を入力する。さらに、処理表示部18は、ジッタパラメータ処理部41から、系統毎の固定値であるジッタパラメータx4,・・・,xnを入力する。
【0152】
処理表示部18は、前述のとおり、CRCエラー回数を求めると共に、BERを算出する。処理表示部18は、例えば差動信号の振幅値、プリエンファシスフィルタのゲイン及びポストエンファシスフィルタのゲインの組み合わせ毎に、ジッタ量J及びジッタの種類、並びに系統毎のジッタパラメータx4,・・・,xn-1、CRCエラー回数及びBERを画面表示する。
【0153】
以上のように、実施例4のジッタ発生装置1dによれば、ジッタパラメータ処理部41は、ユーザー操作に従い、ジッタ量J及びジッタの種類を入力し、実施例1のジッタパラメータ処理部10と同様に、ジッタ量Jを系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnに変換する。そして、ジッタパラメータ処理部41は、予め設定された規則に従い、ジッタの種類に応じて、ジッタパラメータx1,・・・,xnを固定パラメータと可変パラメータとに区別し、系統毎の固定パラメータを固定値として出力すると共に、系統毎の可変パラメータを、時間の経過と共に順次変化する可変値として出力する。
【0154】
電源制御部11、スイッチングレギュレーター12、クロック生成部13、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24、物理媒体接続部15及び電気/光変換器16は、実施例1と同様の処理を行う。また、分配部17及び処理表示部18は、実施例2と同様の処理を行う。
【0155】
ここで、ジッタの種類が周期ジッタである場合、予め設定された規則に従い、ジッタパラメータx1(差動信号の振幅値),x2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン),・・・,xn-1が固定パラメータに区別され、ジッタパラメータxn(スイッチング周波数)が可変パラメータに区別される。
【0156】
これにより、可変するスイッチング周波数に応じて、確定的ジッタの周期が変化した系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。
【0157】
また、ジッタの種類が基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタである場合、予め設定された規則に従い、ジッタパラメータx4,・・・,xn(スイッチング周波数)が固定パラメータに区別され、ジッタパラメータx1(差動信号の振幅値),x2(プリエンファシスフィルタのゲイン),x3(ポストエンファシスフィルタのゲイン)が可変パラメータに区別される。
【0158】
これにより、可変する差動信号の振幅値、プリエンファシスフィルタのゲイン及びポストエンファシスフィルタのゲインに応じて、基板内部の符号間干渉が原因で発生するジッタが変化した系統毎の光の10Gリンク信号が出力される。
【0159】
そして、ユーザーは、被測定機器30のモニターに表示された映像を目視し、処理表示部18に表示されたデータを参照することで、特定種類のジッタのみが付加された映像、CRCエラー回数、BER等の指標を目視することができる。したがって、ジッタ発生装置1dを、被測定機器30における特定種類のジッタ耐性を測定するためのテスト用信号を発生する装置として用いることができ、ジッタ耐性を確定ジッタの種類毎に定量的に測定することができる。
【0160】
以上、実施例1~4を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1~4に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0161】
(10Gリンク信号以外の信号)
ジッタ発生装置1は、所望の確定的ジッタを10Gリンク信号に付加するようにしたが、所望の確定的ジッタを10Gリンク信号以外の信号(例えば、12G-SDIリンク信号またはU-SDI以外の規格に適用する信号)に付加するようにしてもよい。また、ジッタ発生装置1は、所望の確定的ジッタを、24チャンネル未満の10Gリンク信号からなる8K/120PのU-SDI信号、または、12チャンネル若しくは12チャンネル未満の10Gリンク信号からなる8K/60P、4K/120P、4K/60PのU-SDI信号に付加するようにしてもよい。
【0162】
(電気/電気変換器)
また、ジッタ発生装置1は、系統毎の差動信号の電気信号を系統毎の光信号に変換する電気/光変換器16を備えるようにした。これに対し、ジッタ発生装置1は、電気/光変換器16の代わりに、系統毎の差動信号の電気信号を異なる仕様の電気信号に変換する電気/電気変換器を備えるようにしてもよい。
【0163】
(ジッタパラメータ規則)
また、ジッタ発生装置1のジッタパラメータ処理部10は、テーブルT1,・・・,T24を用いて、入力したジッタ量Jを系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせに変換するようにした。
【0164】
これに対し、ジッタパラメータ処理部10は、テーブルT1,・・・,T24の代わりに、例えば予め設定された関数を用いて、入力したジッタ量Jを系統毎のジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせに変換するようにしてもよい。要するに、ジッタパラメータ処理部10は、ジッタ量Jとジッタパラメータx1,・・・,xnの組み合わせとの間の関係が定義された規則(ジッタパラメータ規則)を用いて、前述の変換を行うようにすればよい。ジッタパラメータ処理部41についても同様である。
【0165】
(系統毎のDC電圧及びクロック)
また、ジッタ発生装置1の電源制御部11は、所定の規則に従い、系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を1系統の電圧に変換するようにした。そして、スイッチングレギュレーター12は、電源制御部11により変換された電圧に対応するリップルを有するDC電圧を生成し、単一のDC電圧を10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24等に出力する。また、クロック生成部13は、電源制御部11により変換された電圧に対応するクロックを生成し、単一のクロックを10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24等に出力する。
【0166】
これに対し、電源制御部11は、所定の規則に従い、系統毎のジッタパラメータxn(スイッチング周波数)を、対応する系統毎の電圧に変換し、系統毎の電圧をスイッチングレギュレーター12及びクロック生成部13に出力するようにしてもよい。
【0167】
この場合、スイッチングレギュレーター12は、系統毎の構成部を備える。スイッチングレギュレーター12は、系統毎のリップルを有するDC電圧を生成し、系統毎のDC電圧を対応する10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24等に出力する。また、クロック生成部13は、系統毎の構成部を備える。クロック生成部13は、系統毎のクロックを生成し、系統毎のクロックを対応する10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-24等に出力する。これにより、系統毎に10Gリンク信号に付加される確定的ジッタの精度を向上させることができる。
【0168】
(10Gリンク信号を入力するジッタ発生装置1)
また、図1等に示したジッタ発生装置1は、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-Nを備えるようにしたが、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-Nを備えていなくてもよい。この場合、ジッタ発生装置1は、10Gリンク信号生成部14-1,・・・,14-Nを備えた外部装置から、系統毎の10Gリンク信号を入力し、ジッタ量Jが付加された系統毎の10Gリンク信号を生成し、出力する。
【符号の説明】
【0169】
1a,1b,1c,1d ジッタ発生装置
10,41 ジッタパラメータ処理部
11 電源制御部
12 スイッチングレギュレーター
13 クロック生成部
14-1,・・・,14-24 10Gリンク信号生成部
15,40 物理媒体接続部
16 電気/光変換器
17 分配部
18 処理表示部
20-1 エンファシス回路
21-1 差動信号ドライバ
30 被測定機器
T1,・・・,T24 テーブル
J ジッタ量(確定的ジッタの量)
1,・・・,xn ジッタパラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14