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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240502BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20240502BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/08
C09J11/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023018256
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2021197857の分割
【原出願日】2017-04-07
(65)【公開番号】P2023053101
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-117046(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0018260(KR,A)
【文献】特開2009-019161(JP,A)
【文献】特表2012-524143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が樹脂フィルムに積層されてなる粘着フィルムであって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)n-ブチルアクリレートと、
(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種と、
(C)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記(E)帯電防止剤が、フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる融点が25℃以上のイオン性化合物であり、
前記(E)帯電防止剤を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、15重量部超過40重量部以下の割合で含有してなり、
前記(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ
化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有してなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(G)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなり、
前記水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーが、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1種以上であり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、
前記(A)n-ブチルアクリレートが49~79重量部の割合であり、
前記(A)と前記(B)との合計が79重量部以上の割合であり、
前記(C)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが0.7~2.0重量部の割合であり、
前記フルオロ基含有アニオンが、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種であり、
前記粘着剤層の、表面抵抗率が2.0×10+9Ω/□以下であり、
無アルカリガラスに対する粘着力が1.0~6.0N/25mmであることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーが、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して
記(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を1039重量部の割合で含有してなり、
且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.38.0であることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、被着体が液晶パネルであり、タッチパネルの機能を組み込んだインセルパネルに貼合する用途で使用され得る粘着剤組成物及び粘着フィルムに関する。
特に、粘着剤層の表面抵抗率が、従来技術では達成できない2.0×10+9Ω/□以下である、極めて優れた帯電防止性能を有する粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板などの光学部材を、粘着剤層を介して、液晶セルなどの被着体に貼合するための、種々の粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献1~2参照)。
特許文献1には、ブチルアクリレートなどを主成分のモノマーとし、アクリルアミド化合物などを共重合させたアクリル系ポリマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献2には、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分のモノマーとし、カルボキシル基含有モノマー、及び窒素含有ビニルモノマーを共重合させたアクリル系ポリマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-177022号公報
【文献】特開2012-201734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、偏光板と液晶パネルとを貼合する用途の粘着剤層においては、液晶パネルが、タッチパネルの機能を組み込んだインセルパネルになった場合には、該粘着剤層の表面抵抗率を、従来の表面抵抗率に比べて低い値にすることが求められている。
このため、偏光板を液晶パネルに貼合する用途の粘着剤層は、該粘着剤層の表面抵抗率を2.0×10+9Ω/□以下にすることが要望されているが、従来技術においては、このような高度の帯電防止性能を発現させることが、非常に難しい状況であった。
また、このような高度の帯電防止性能を発現できた場合でも、同時に粘着剤層の耐久性を維持することが困難であった。
【0005】
本発明は、粘着剤層の表面抵抗率が、2.0×10+9Ω/□以下の極めて優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐久性を損なわない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような高度の帯電防止性能と耐久性との両方を同時に達成するという困難な課題を解決すべく、本発明者らが鋭意取り組んだ結果、粘着剤組成物のアクリル系ポリマーを構成するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数を特定の範囲に限定して、特定の組み合わせの2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを共重合させた共重合体からなるアクリル系ポリマーとし、さらに、特定の帯電防止剤を含有させた粘着剤組成物とすることで、この課題を解決することが可能となった。
【0007】
本発明者らは、前記アクリル系ポリマーと、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系帯電防止剤を、15重量部を超える割合で含有させることで、従来の粘着剤組成物と比べて、極めて優れた帯電防止性能を有し、且つ、帯電防止剤が析出せず、経時劣化しないで優れた耐久性を有する粘着剤組成物が得られることを見つけ出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明に係わる粘着剤組成物は、粘着剤層の表面抵抗率を2.0×10+9Ω/□以下の極めて優れた帯電防止性能とすべく、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系帯電防止剤を、15重量部を超える割合で含有させている。このように、本発明では、従来技術では達成できない極めて優れた帯電防止性能を得るために、帯電防止剤の含有量を多くしている。
このため、粘着剤層の高温・高湿度環境下における耐久性試験後において、粘着剤層の中に多量に含まれるフルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系帯電防止剤が、粘着剤層の表面に析出せず、耐久性を維持できる粘着剤層にするため、粘着剤組成物に含まれるアクリル系ポリマーが、n-ブチルアクリレート(BA)を主体とし、BAと共重合性の良いモノマーを選択して共重合させてなることを技術思想としている。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)n-ブチルアクリレートと、(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種と、(C)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100~300万のアクリル系ポリマーであり、前記(E)帯電防止剤が、フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる融点が25℃以上のイオン性化合物であり、前記フルオロ基含有アニオンが、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種であり、前記(E)帯電防止剤を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、15重量部超過40重量部以下の割合で含有してなり、前記(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有してなり、前記粘着剤組成物が、さらに、(G)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなり、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の、表面抵抗率が2.0×10+9Ω/□以下であり、前記粘着剤層を、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、又は60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、前記粘着剤層の表面に前記帯電防止剤が析出していないことを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0010】
また、前記帯電防止剤が、フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる融点が25℃以上のイオン性化合物であり、前記フルオロ基含有アニオンが、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種であることが好ましい。
【0011】
前記アクリル系ポリマーが、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部と、前記(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部と、の割合で含有してなり、且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.0~17.8であることが好ましい。
【0012】
前記粘着剤組成物を架橋させた厚さ20μmの粘着剤層を介して、総厚み80μmの偏光板を、無アルカリガラスに貼合したとき、前記粘着剤層の、無アルカリガラスに対する粘着力が1.0~6.0N/25mmであり、前記粘着剤組成物を架橋させた厚さ20μmの粘着剤層を介して、10cm角の総厚み80μmの偏光板を、無アルカリガラスに貼合してなる試験片を、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、又は60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、発泡、及びハガレの無いことが好ましい。
【0013】
前記(C)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが、水酸基を含有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種以上であり、前記水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、前記カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0014】
前記粘着剤層の、初期の表面抵抗率、及び、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後の表面抵抗率が、いずれも2.0×10+9Ω/□以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、樹脂フィルムの片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されてなることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、偏光板用粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、偏光板とインセルパネルとの貼合に用いられていることを特徴とする上記の偏光板用粘着フィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、離型フィルムの片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が、1μm~25μmの厚みで形成された、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されてなることを特徴とする粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、偏光板の片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されてなることを特徴とする粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0021】
また、本発明は、上記の粘着剤層付き偏光板が用いられていることを特徴とする液晶パネルを提供する。
【0022】
また、本発明は、上記の粘着剤層付き偏光板が用いられていることを特徴とするインセル型液晶パネルを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、粘着剤層の表面抵抗率が、従来技術では達成できない2.0×10+9Ω/□以下の極めて優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐久性を損なわない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0025】
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)n-ブチルアクリレートと、(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種と、(C)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100~300万のアクリル系ポリマーであり、前記(E)帯電防止剤として、フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系帯電防止剤を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、15重量部超過40重量部以下の割合で含有してなり、前記(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有してなり、前記粘着剤組成物が、さらに、(G)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなり、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の、表面抵抗率が2.0×10+9Ω/□以下であり、前記粘着剤層を、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、又は60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、前記粘着剤層の表面に前記帯電防止剤が析出していないことを特徴とする。
【0026】
(A)n-ブチルアクリレート、及び、(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種は、いずれもアルキル(メタ)アクリレートモノマーに該当する。本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーを構成するアルキル(メタ)アクリレートのモノマーを、特定の2種以上である、(A)及び(B)の組み合わせとすることが好ましい。
【0027】
本実施形態のアクリル系ポリマーは、(A)n-ブチルアクリレートを主体とし、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部の割合で含有してなることが好ましい。さらに、アクリル系ポリマーが、(A)n-ブチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとして、(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部の割合で含有してなることが好ましい。且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が、重量比として、1.0~17.8であることが好ましい。
【0028】
(C)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、水酸基を含有する共重合可能なモノマー(ヒドロキシル基含有モノマー)、及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー(カルボキシル基含有モノマー)からなる群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。すなわち、ヒドロキシル基含有モノマー、又はカルボキシル基含有モノマーのいずれか一方のみを選択して共重合させてもよく、ヒドロキシル基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーの両方を共重合させてもよい。
【0029】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。
また、本実施形態に係わる粘着剤組成物に含有させるヒドロキシル基含有モノマーは、得られる粘着剤層が透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性に影響を与えるとされる、カルボキシル基含有モノマーの含有量を減らすための共重合性モノマーとして使用できる。そのため、ヒドロキシル基含有モノマーは、粘着剤層の粘着力を向上させ、且つ、腐食性を低減させることに役立てることができる。本実施形態の粘着剤組成物に含有させるヒドロキシル基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~5.0重量部の割合であることが好ましく、0.1~4.4重量部の割合であることがより好ましく、0.1~3.8重量部の割合であることが特に好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などの少なくとも1種以上が挙げられる。
また、本実施形態に係わる粘着剤組成物に含有させるカルボキシル基含有モノマーは、得られる粘着剤層に対して必要な凝集力を付与させることができる。本実施形態に係わる粘着剤組成物におけるカルボキシル基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0~5.0重量部である(カルボキシル基含有モノマーを共重合させない場合も許容される)ことが好ましく、カルボキシル基含有モノマーを共重合させる場合には、0.01~5.0重量部の割合であることがより好ましく、0.01~3.3重量部の割合であることが特に好ましく、0.01~2.8重量部の割合であることが最も好ましい。
【0031】
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとして、芳香族基を含有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合には、(A)及び(B)の組み合わせからなるアルキル(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性に優れるので、好ましい。
【0032】
屈折率が高い粘着剤層を得るためには、本実施形態に係わる粘着剤組成物に、芳香族基を含有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を配合することが好ましい。これらの芳香族基を含有する(メタ)アクリレートモノマーを、アクリル系ポリマーに共重合させることにより、得られる粘着剤層の屈折率を上昇させて調整でき、光学部材間の屈折率差を少なくして、全反射を低減させることにより全光線透過率を向上させることができる。本実施形態に係わる粘着剤組成物において、芳香族基を含有する(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、5~30重量部の割合で含有させるのが好ましく、6~28重量部の割合で含有させるのがより好ましく、6~24重量部の割合で含有させるのが特に好ましい。
【0033】
本実施形態に係わる粘着剤組成物に含有させるアクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。アクリル系ポリマーの共重合体の重量平均分子量は、100~300万であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、帯電防止性能を得るために、(E)帯電防止剤を含有する。(E)帯電防止剤として、フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系帯電防止剤を、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、15重量部超過40重量部以下の割合で含有してなることが好ましく、16~40重量部の割合で含有してなることがより好ましく、16~38重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。この帯電防止剤は、フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなるイオン性化合物である。このイオン性化合物は、融点が25℃以上のイオン性化合物であり、常温(例えば25℃)で固体であることが好ましい。また、このイオン性化合物は、温度25℃で固体の、融点が25℃~80℃のイオン性化合物であることがより好ましい。
【0035】
(E)帯電防止剤に含有されるフルオロ基含有アニオンとしては、無機又は有機のフルオロ基含有アニオンが挙げられる。ここで、フルオロ基とは、アニオンを構成する他の原子に結合したフッ素原子を意味する。無機のフルオロ基含有アニオンとしては、PF 、AsF 、SbF 、BF 、AlF 、(FSO、FSO 、等が挙げられる。有機のフルオロ基含有アニオンとしては、フルオロ基含有のスルホネートアニオン(RSO )、フルオロ基含有のカルボキシレートアニオン(RCOO)、フルオロ基含有のアルコキシド又はフェノキシドアニオン(RO)、フルオロ基含有の有機イミドアニオン(R)、フルオロ基含有のメチド(R)アニオン、フルオロ基含有の有機ボレート(R)アニオン等で、Rの少なくとも1以上として、フルオロ基含有の有機基を有するアニオンが挙げられる。有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基(アリール基、アラルキル基等)、アルキルカルボニル基、芳香族カルボニル基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基等の1種以上が挙げられる。アニオンが2以上のRを有する場合は、2以上のRの間に結合を有して環状となってもよい。なかでも、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種であることが好ましい。
【0036】
(E)帯電防止剤に含有されるアンモニウムカチオンとしては、1~4の有機基を有する有機アンモニウムカチオンが挙げられ、特に4級アンモニウムカチオン(R4N+)が好ましい。Rとしては、非環状又は環状のアルキル基、芳香族基(アリール基、アラルキル基等)などの炭化水素基が挙げられる。カチオンが2以上のRを有する場合は、2以上のRの間に結合を有して環状となってもよい。
【0037】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有する。(F)架橋剤の割合としては、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して0.01~5重量部の割合が挙げられる。
【0038】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。
2官能以上のエポキシ化合物としては、グリコール類のジグリシジルエーテル、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル、トリオール類のトリグリシジルエーテル、ジカルボン酸のジグリシジルエステル、ジグリシジル置換のアミン類、テトラグリシジル置換のジアミン類などが挙げられる。
【0039】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、(G)シランカップリング剤を含有する。(G)シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有し、前記加水分解性基が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等である化合物が挙げられる。(G)シランカップリング剤は、エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有する。(G)シランカップリング剤は、モノマータイプ又はオリゴマータイプの一方又は両方を、少なくとも1種以上用いることができる。シランカップリング剤の割合は、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.01~0.5重量部が挙げられる。
【0040】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。酸無水物基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。
また、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(シリコーンアルコキシオリゴマー)なども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0041】
本実施形態の粘着剤組成物は、任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0042】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の表面抵抗率は、2.0×10+9Ω/□以下であることが好ましく、1.0×10+9Ω/□以下であることがより好ましく、8.0×10+8Ω/□以下であることが特に好ましい。この粘着剤層は、初期の表面抵抗率、及び、耐久性試験後の表面抵抗率が、いずれも2.0×10+9Ω/□以下であることが好ましく、1.0×10+9Ω/□以下であることがより好ましく、8.0×10+8Ω/□以下であることが特に好ましい。ここで、初期の表面抵抗率とは、粘着剤層を耐久性試験に供する前の表面抵抗率である。また、耐久性試験後の表面抵抗率とは、粘着剤層を、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後の表面抵抗率である。ここで、85℃×750hrの試験環境は、dry条件であってもよい。
【0043】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験、及び60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、粘着剤層の表面に(E)帯電防止剤が析出していないものとなる。ここで、85℃×750hrの試験環境は、dry条件であってもよい。
本実施形態の粘着剤組成物における(E)帯電防止剤の析出防止性能は、同一の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層のサンプルを2以上作製し、1つのサンプルを85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に(E)帯電防止剤が析出せず、且つ、別のサンプルを60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に(E)帯電防止剤が析出していないものであってもよい。
【0044】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、厚さ20μmの粘着剤層を介して、総厚み80μmの偏光板を、無アルカリガラスに貼合したとき、粘着剤層の、無アルカリガラスに対する粘着力が1.0~6.0N/25mmであることが好ましい。
また、厚さ20μmの粘着剤層を介して、10cm角の総厚み80μmの偏光板を、無アルカリガラスに貼合してなる試験片を、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験、及び60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に、発泡、及びハガレの無いことが好ましい。
本実施形態の粘着剤組成物における発泡、及びハガレの無い性能は、同一の粘着剤組成物を用いて作製した試験片を2以上作製し、1つの試験片を85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に発泡、及びハガレが無く、且つ、別の試験片を60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験に供した後に発泡、及びハガレの無いものであってもよい。
【0045】
本実施形態に係わる粘着剤層は、本実施形態の粘着剤組成物を樹脂フィルムや離型フィルム等の基材に塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。
【0046】
本実施形態に係わる粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることが好ましい。
【0047】
本実施形態に係わる粘着フィルムは、本実施形態に係わる粘着剤層を、樹脂フィルムや離型フィルム等の基材の片面上に形成することで製造することができる。基材となる樹脂フィルムや離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施されてもよい。基材となる樹脂フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。粘着剤層の厚みとしては、例えば1μm~25μmの厚みが挙げられる。
【0048】
1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学部材が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル、インセル型液晶パネル等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の粘着フィルムは、偏光板用粘着フィルムとして好適である。特に、偏光板とインセルパネルとの貼合に用いられてもよい。また、上記の光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。また、偏光板の片面に、上記の粘着フィルムを用いることにより、粘着剤層付き偏光板を提供することができる。上記の粘着剤層付き偏光板を用いて、インセル型液晶パネル等の液晶パネルを提供することができる。
このような、粘着剤層付き光学フィルムの積層構成の具体例としては、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層」等が挙げられる。粘着剤層付き偏光板の積層構成の具体例として、「離型フィルム/粘着剤層/偏光板」、「離型フィルム/粘着剤層/偏光板/粘着剤層/離型フィルム」、「偏光板/粘着剤層」、「粘着剤層/偏光板/粘着剤層」等が挙げられる。液晶パネル等の部分構造として、これらの粘着剤層付き光学フィルム、又は粘着剤層付き偏光板が組み込まれてもよい。
なお、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/偏光板」などのように、離型フィルムを積層構成に含まれる場合には、離型フィルムを剥がした後、粘着剤層を介して、光学フィルム又は偏光板が被着体に貼合される。
【実施例
【0050】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0051】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にn-ブチルアクリレート70重量部、n-ブチルメタクリレート15重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート2.0重量部、ベンジルアクリレート15重量部とともに、溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル系ポリマーの溶液を得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(A)~(D)の記載のようにする以外は、上記の実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
なお、特に測定結果を示さないが、実施例1~6及び比較例1~3のアクリル系ポリマー溶液に含まれる共重合体の重量平均分子量は、100~300万の範囲内である。
【0052】
<粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを20重量部と、架橋剤(D-110N)を0.1重量部と、シランカップリング剤(X-12-967C)を0.05重量部の割合で加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗布した後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した。その後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を、離型フィルムの片面上に有し、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成である、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(E)~(G)の記載のようにした以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0053】
【表1】
【0054】
表1において、各成分の略記号の後に添えた数値は、重量部を示す。この重量部は、(A)と(B)と(D)との合計を100重量部として求められている。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。IOAは、便宜上(B)に含めた。(C)は、水酸基を含有するモノマーを「(C)OH」、カルボキシル基を含有するモノマーを「(C)COOH」のように分類した。
【0055】
【表2】
【0056】
表2において、コロネート(登録商標)Lは東ソー株式会社の商品名であり、D-110Nは三井化学株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)-Xは三菱ガス化学株式会社の商品名である。また、TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、TMPはトリメチロールプロパンを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味する。また、KBM-403、X-12-967C、X-41-1805、KBM-503は、いずれも、信越化学工業株式会社の商品名である。
【0057】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~3における粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、前記粘着フィルムの粘着剤層の片面を表出させた。その後、厚さ80μmの偏光板(樹脂フィルム)の片面に、前記粘着剤層を介して、前記粘着フィルムを貼合して、離型フィルム/粘着剤層/偏光板の構成である、粘着剤層付き偏光板を得た。
【0058】
<粘着力の測定方法>
上記で得られた、粘着剤層付き偏光板の離型フィルムを剥がして、無アルカリガラス(コーニング社製イーグルXG(登録商標))のアセトンで洗浄した面に、前記粘着剤層を介して、粘着剤層付き偏光板を圧着ロールで貼合して、試験片を作成した。その後、該試験片を、50℃、0.5MPa×20分間の条件で、オートクレーブ処理した。その後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過後の粘着剤層付き偏光板の剥離強度を引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に0.3m/minの速度で剥離した時の剥離強度を、無アルカリガラスに対する粘着剤層の粘着力とした。
【0059】
<表面抵抗率の測定方法>
上記で得られた、粘着剤層付き偏光板について、抵抗率計ハイレスタ(登録商標)UP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定して、初期の表面抵抗率を求めた。同じ粘着剤層付き偏光板を、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験をした後、同様に表面抵抗率を測定して、耐久性試験後の表面抵抗率を求めた。
【0060】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で、10cm角の粘着剤層付き偏光板の離型フィルムを剥がして、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した面に貼合して、試験片を作成した。その後、該試験片について、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験、及び、60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験をした後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着剤層の状態を目視で観察して、耐久性を判断した。
○・・粘着剤層の発泡及びハガレが全く無い。
△・・粘着剤層の一部に発泡、ハガレが発生している。
×・・粘着剤層の全体に発泡、ハガレが発生している。
【0061】
<帯電防止剤の析出状態の評価方法>
粘着力の測定と同様の方法で、10cm角の粘着剤層付き偏光板の離型フィルムを剥がして、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した面に貼合して、試験片を作成した。その後、該試験片について、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験、及び、60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験をした後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着剤層の状態を目視で観察して、粘着剤層の表面への帯電防止剤の析出状態を判断した。
○・・粘着剤層の表面に帯電防止剤の析出が全く無い。
△・・粘着剤層の表面の一部に帯電防止剤の析出が発生している。
×・・粘着剤層の表面の全体に帯電防止剤の析出が発生している。
【0062】
表3に、評価結果を示す。
【0063】
【表3】
【0064】
実施例1~6の粘着フィルムは、無アルカリガラスに対する粘着力が1.0~6.0N/25mmであり、粘着剤層の、初期の表面抵抗率、及び、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験後の表面抵抗率が、いずれも2.0×10+9Ω/□以下であり、85℃×750hrの試験環境下における耐久性試験、及び60℃×90%RH×750hrの試験環境下における耐久性試験後に発泡、及びハガレの無く、耐久性を有しており、且つ、粘着剤層の表面に帯電防止剤の析出も無かった。すなわち、実施例1~6の粘着フィルムについての評価結果では、本発明の課題を解決できたことが実証されている。
【0065】
比較例1の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーに共重合させたアルキル(メタ)アクリレートモノマーが、TBA、IBA、BMA、MAのいずれでもなく、且つ、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーを共重合させていない。このため、比較例1の粘着フィルムは、耐久性試験前の粘着剤層の粘着力は過大であるが、耐久性に劣っていた。また、比較例1の粘着フィルムは、(E)帯電防止剤の含有割合を多くしているため、粘着剤層の表面抵抗率は低くなったが、耐久性試験後に帯電防止剤が、粘着剤層の表面に全面的に析出した。
【0066】
比較例2の粘着フィルムは、(G)シランカップリング剤を含有するものの、エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有するものではない。このため、比較例2の粘着フィルムは、粘着剤層の耐久性に劣り、耐久性試験後に帯電防止剤が、粘着剤層の表面に部分的に析出した。
【0067】
比較例3の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーに共重合させたアルキル(メタ)アクリレートモノマーが、TBA、IBA、BMA、MAのいずれでもなく、且つ、(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーを共重合させていない。このため、比較例3の粘着フィルムは、(G)シランカップリング剤を含有していなくても、耐久性試験前の粘着剤層の粘着力は過大であるが、耐久性に劣っていた。また、比較例3の粘着フィルムは、(E)帯電防止剤の含有割合が少ないため、耐久性試験後の帯電防止剤の、粘着剤層の表面への析出は無かったが、粘着剤層の表面抵抗率が高くなった。
【0068】
このように、比較例1~3の粘着フィルムでは、本発明の課題を解決することができなかった。
【0069】
本発明によれば、粘着剤層の表面抵抗率が、従来技術では達成できない2.0×10+9Ω/□以下の極めて優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐久性を損なわない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することができる。このため、本発明に係わる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムは、偏光板と液晶パネルとを貼合する用途の粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムとして、極めて優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐久性を有することから、産業上の利用価値が大である。