(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】粒子分離装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240507BHJP
C12M 1/28 20060101ALI20240507BHJP
G01N 1/34 20060101ALI20240507BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20240507BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240507BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/28
G01N1/34
G01N1/40
G01N1/00 101L
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2020005716
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高田 耕児
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 真義
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/172428(WO,A1)
【文献】特開2012-120456(JP,A)
【文献】特開2009-296967(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136273(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第03263693(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
気体を排出する圧力発生部と、
注入口および排出口を有し、前記サンプル液が注入されるサンプル液収容部材と、
注入口および排出口を有し、バッファ液が注入されるバッファ液収容部材と、
前記サンプル液収容部材の注入口に接続され、前記圧力発生部からの気体を該サンプル液収容部材に供給するサンプル側管路、および前記バッファ液収容部材の注入口に接続され、前記圧力発生部からの気体を該バッファ液収容部材に供給するバッファ側管路を備える圧力供給部と、
前記サンプル側管路および前記バッファ側管路の一方の管路の途中に介装され、互いに連通された第1ポート、第2ポートおよび第3ポートを備え、該第1ポートが当該一方の管路の上流側に接続され、該第2ポートが当該一方の管路の下流側に接続され、該第3ポートが大気開放用ポートであり、該第3ポートを閉塞して該第1ポートを開放する第1モードと該第1ポートを閉塞して該第3ポートを開放する第2モードとを選択的に切り替える第1切替弁と、
前記サンプル液収容部材の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部材の排出口に接続されるバッファ液導入口、該サンプル液導入口を介して導入されたサンプル液と該バッファ液導入口を介して導入されたバッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、該DLD流路部でサンプル液からバッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および該DLD流路部で標的粒子がバッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口を備えるDLDマイクロ流路チップと、
前記圧力発生部および前記第1切替弁を電気的に制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第2モードに設定する制御信号を該第1切替弁に送るとともに、前記圧力発生部を作動させる制御信号を該圧力発生部に送り、その後、前記第1切替弁を前記第1モードに切り替える制御信号を該第1切替弁に送るようにした粒子分離装置。
【請求項2】
前記圧力供給部は、前記圧力発生部の気体の排出口に接続された共通管路を備え、前記サンプル側管路は該共通管路から二股に分岐した一方に接続された管路であり、前記バッファ側管路は該共通管路から二股に分岐した他方に接続された管路である請求項1に記載の粒子分離装置。
【請求項3】
前記サンプル液は、前記標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含む請求項1または2に記載の粒子分離装置。
【請求項4】
前記標的粒子は、細胞である請求項1~3のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項5】
前記サンプル液は、血中循環腫瘍細胞を前記標的粒子として含む請求項4に記載の粒子分離装置。
【請求項6】
前記サンプル側管路は前記サンプル液収容部材の注入口に着脱可能であり、前記バッファ側管路は前記バッファ液収容部材の注入口に着脱可能である請求項1~5のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項7】
前記第1切替弁は、三方活栓を含む請求項1~6のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項8】
前記第1切替弁は、三方分岐管および2つの二方活栓を含む請求項1~6のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項9】
前記第1切替弁は、電磁弁である請求項1~6のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項10】
前記第1切替弁は、三方電磁弁を含む請求項1~6のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項11】
前記第1切替弁は、三方分岐管および2つの二方電磁弁を含む請求項1~6のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項12】
前記サンプル液収容部材内の液体の液面位置および前記バッファ液収容部材内の液体の液面位置の少なくとも一方を検出するセンサをさらに有する請求項1~11のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項13】
前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第2モードに設定する制御信号を該第1切替弁に送るとともに、前記圧力発生部を作動させる制御信号を該圧力発生部に送り、その後、予め設定された所定の第1時間の経過を待って前記第1切替弁を前記第1モードに切り替える制御信号を該第1切替弁に送るようにした請求項
1~12のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第2モードに設定する制御信号を該第1切替弁に送るとともに、前記圧力発生部を作動させる制御信号を該圧力発生部に送り、その後、前記センサにより液面が予め設定された第1位置に達したことが検出された場合に前記第1切替弁を前記第1モードに切り替える制御信号を該第1切替弁に送るようにした請求項
1~12のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第1モードに切り替えた後、予め設定された所定の第2時間を待って前記圧力発生部の作動を停止させる制御信号を該圧力発生部に送るようにした請求項
13または
14に記載の粒子分離装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第1モードに切り替えた後、前記センサにより液面が予め設定された第2位置に達したことが検出された場合に前記圧力発生部の作動を停止させる制御信号を該圧力発生部に送るようにした請求項
13または
14に記載の粒子分離装置。
【請求項17】
前記サンプル側管路および前記バッファ側管路の他方の管路の途中に介装され、互いに連通された第1ポート、第2ポートおよび第3ポートを備え、該第1ポートが当該他方の管路の上流側に接続され、該第2ポートが当該他方の管路の下流側に接続され、該第3ポートが大気開放用ポートであり、該第3ポートを閉塞して該第1ポートを開放する第1モードと該第1ポートを閉塞して該第3ポートを開放する第2モードとを選択的に切り替える第2切替弁をさらに有する請求項1~
16のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項18】
前記第2切替弁は、三方活栓を含む請求項
17に記載の粒子分離装置。
【請求項19】
前記第2切替弁は、三方分岐管および2つの二方活栓を含む請求項
17に記載の粒子分離装置。
【請求項20】
前記第2切替弁は、三方電磁弁を含む請求項
17に記載の粒子分離装置。
【請求項21】
前記第2切替弁は、三方分岐管および2つの二方電磁弁を含む請求項
17に記載の粒子分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的粒子を含む液体中から該標的粒子を分離する粒子分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から、腫瘍細胞が血中へ遊離することが知られている。このような腫瘍細胞は、血中循環腫瘍細胞(CTC:Circulating Tumor Cells)と呼ばれ、末梢血中の血中循環腫瘍細胞を分離(分取)して調べることにより、がんの進行状態や治療効果の把握、あるいは再発・転移の早期発見等のための情報が得られるものと期待されている。
【0003】
血中循環腫瘍細胞を簡便に分離(分取)するための粒子分離技術としては、血中循環腫瘍細胞が血球細胞よりもサイズが大きい傾向があることを利用した、水力学的層流分離の一つである決定論的横置換(DLD:Deterministic Lateral Displacement)法を用いた方法が知られている(たとえば特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
この分離技術を利用した粒子分離装置として、本願発明者らは、サンプル液注入系とバッファ液注入系と、単一のシリンジ(圧力発生装置)で発生させた圧力を二股に分岐させてサンプル液注入系とバッファ液注入系とに供給し、サンプル液およびバッファ液を、DLD法の原理に基づいて設計されたDLDマイクロ流路チップに注入するようにした装置を先に提案した(特許文献2参照)。
【0005】
ところで、この粒子分離装置を用いて分離の対象となる標的粒子をサンプル液から分離する処理(本明細書で「ソーティング」と呼ぶ)を行うのに先立ち、サンプル液注入系およびバッファ液注入系のそれぞれとDLDマイクロ流路チップの接続管やDLDマイクロ流路チップ内に存在する空気を除去するため、サンプル液注入系およびバッファ液注入系の双方からDLDマイクロ流路チップに予備的にバッファ液を供給してこれらを満たす処理(本明細書で「プライミング」と呼ぶ)が行われる。
【0006】
しかしながら、DLDマイクロ流路チップの構造によっては、プライミングを行っても、DLDマイクロ流路チップ内(特に、DLDマイクロ流路チップのバッファ液注入系に接続される導入口とサンプル液注入系に接続される導入口との間の一部)に該空気が気泡として残留してしまう場合があり、ソーティングの際に適切な分離を妨げる原因となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7,735,652号明細書
【文献】国際公開第2019/172428号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Huang et al.,“Continuous Particle Separation Through Deterministic Lateral Displacement”,Science 304,p.987-990,2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、適切に粒子を分離し得る粒子分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る粒子分離装置は、
標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
気体を排出する圧力発生部と、
注入口および排出口を有し、前記サンプル液が注入されるサンプル液収容部材と、
注入口および排出口を有し、バッファ液が注入されるバッファ液収容部材と、
前記サンプル液収容部材の注入口に接続され、前記圧力発生部からの気体を該サンプル液収容部材に供給するサンプル側管路、および前記バッファ液収容部材の注入口に接続され、前記圧力発生部からの気体を該バッファ液収容部材に供給するバッファ側管路を備える圧力供給部と、
前記サンプル側管路および前記バッファ側管路の一方の管路の途中に介装され、互いに連通された第1ポート、第2ポートおよび第3ポートを備え、該第1ポートが当該一方の管路の上流側に接続され、該第2ポートが当該一方の管路の下流側に接続され、該第3ポートが大気開放用ポートであり、該第3ポートを閉塞して該第1ポートを開放する第1モードと該第1ポートを閉塞して該第3ポートを開放する第2モードとを選択的に切り替える第1切替弁と、
前記サンプル液収容部材の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部材の排出口に接続されるバッファ液導入口、該サンプル液導入口を介して導入されたサンプル液と該バッファ液導入口を介して導入されたバッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、該DLD流路部でサンプル液からバッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および該DLD流路部で標的粒子がバッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口を備えるDLDマイクロ流路チップと、を有する。
【0011】
本発明に係る粒子分離装置では、第1切替弁はサンプル側管路またはバッファ側管路の途中に介装されているが、簡単のため、第1切替弁をサンプル側管路の途中に介装した構成の場合を例に説明する。まず、本処理としてのソーティング(標的粒子の分離)を実施する前の予備的処理として、DLDマイクロ流路チップ内をバッファ液で満たすプライミングを行う。すなわち、バッファ液収容部材にバッファ液を注入した状態とし、サンプル液収容部材は空の状態とし、第1切替弁を第2モードに設定して、圧力発生部からの気体をサンプル側管路およびバッファ側管路に供給する。このとき、サンプル側管路の途中に介装された第1切替弁の第1ポートは閉塞されているため、圧力発生部からの気体はバッファ液収容部材にのみ供給され、バッファ液収容部材内のバッファ液がバッファ液導入口を介してDLD流路部に導入される。
【0012】
そして、第1切替弁の第3ポートが大気開放されているため、DLD流路部に導入されたバッファ液の一部(殆ど)はDLD流路部の下流側とサンプル液収容部材側の管路抵抗差に応じて空のサンプル液収容部材内に逆流的に流れ込む。これにより、バッファ液収容部材からDLDマイクロ流路チップのバッファ液導入口に至る部分、バッファ液導入口とサンプル液導入口との間の部分、およびサンプル液収容部材からサンプル液導入口に至る部分内に存在していた気体(ここでは空気とする)が大気開放されたサンプル液収容部材の上流側に排出される。
【0013】
その後適宜な量のバッファ液がサンプル液収容部材内に流れ込んだならば、第1切替弁を第1モードに切り替える。これにより、第1ポートが開放され、第3ポートが閉塞されるため、圧力発生部からの気体はバッファ液収容部材およびサンプル液収容部材の両方に供給され、バッファ液収容部材内のバッファ液およびサンプル液収容部材内のバッファ液がDLD流路部に導入され、既にDLD流路部内に存在しているバッファ液とともに、バッファ液排出口およびサンプル液排出口に至り、該DLD流路部内がバッファ液で満たされた状態となる。この状態で、圧力発生部による気体の排出を停止して、プライミングを終了する。
【0014】
プライミングの後、圧力発生部による気体の排出を停止した状態で、サンプル液収容部材内にサンプル液を注入した状態とするとともに、バッファ液収容部材内にバッファ液を注入した状態として、第1切替弁を第1モードに設定して、圧力発生部からの気体をサンプル液収容部材およびバッファ液収容部材に供給して、ソーティング(標的粒子の分離)を実施する。粒子分離の開始に際して、バッファ液収容部材からDLDマイクロ流路チップのバッファ液導入口に至る部分、サンプル液収容部材からサンプル液導入口に至る部分、DLDマイクロ流路チップのバッファ液導入口とサンプル液導入口との間の部分、およびDLD流路部内の空気は排出されて、バッファ液で満たされた状態であるため、気泡の残留に伴う不具合を生じることなく適切な分離を行うことができる。
【0015】
第1切替弁をバッファ側管路の途中に介装した構成の場合には、サンプル液収容部材にバッファ液を注入した状態とし、バッファ液収容部材は空の状態としてプライミングを行う以外は、上記とほぼ同様である。
【0016】
本発明に係る粒子分離装置において、前記圧力供給部は、前記圧力発生部の気体の排出口に接続された共通管路を備え、前記サンプル側管路は該共通管路から二股に分岐した一方に接続された管路であり、前記バッファ側管路は該共通管路から二股に分岐した他方に接続された管路であることができる。圧力発生部として、単一の装置を備えるだけでよいので、電力等の人力以外の動力によって駆動する場合には装置を簡素化できるとともに、特段の配慮をしなくても、サンプル液とバッファ液との両者を適切な流量で流すことができ、適切な分離を実現することが可能となる。
【0017】
本発明に係る粒子分離装置において、前記サンプル液は、前記標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含むことができる。本発明に係る粒子分離装置は、サンプル液が標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含む場合にも、該標的粒子を分離することができる。
【0018】
本発明に係る粒子分離装置において、前記サンプル液は、前記標的粒子として、細胞を含む液体とすることができる。この場合において、前記サンプル液は、血中循環腫瘍細胞を前記標的粒子として含むものとすることができる。本発明に係る粒子分離装置は、血中循環腫瘍細胞等の細胞の分離に好適に用いることができる。
【0019】
本発明に係る粒子分離装置において、前記サンプル側管路を前記サンプル液収容部材の注入口に着脱可能とし、前記バッファ側管路を前記バッファ液収容部材の注入口に着脱可能とすることができる。このように構成することにより、サンプル液収容部材の注入口からサンプル側管路を取り外した状態で、サンプル液をサンプル液収容部材に注入した後にサンプル液収容部材の注入口にサンプル側管路を装着し、バッファ液収容部材の注入口からバッファ側管路を取り外した状態で、バッファ液をバッファ液収容部材に注入した後にバッファ液収容部材の注入口にバッファ側管路を装着することができる。
【0020】
本発明に係る粒子分離装置において、前記第1切替弁として、三方活栓を含むもの、あるいは三方分岐管および2つの二方活栓を含むものを用いることができる。第1モードと第2モードとをレバー操作により手動で適宜に切り替えることができる。
【0021】
本発明に係る粒子分離装置において、前記第1切替弁として、電磁弁を用いることができ、三方電磁弁を含むものや三方分岐管および2つの二方電磁弁を含むものを用いることができる。第1モードと第2モードとを電気的に手動または自動制御により適宜に切り替えることができる。
【0022】
本発明に係る粒子分離装置において、前記サンプル液収容部材内の液体の液面位置および前記バッファ液収容部材内の液体の液面位置の少なくとも一方を検出するセンサをさらに有することができる。センサによる検出結果に応じて、第1切替弁の切り替えや圧力発生部の作動または停止等のタイミングを制御し得る。
【0023】
本発明に係る粒子分離装置において、前記圧力発生部および前記第1切替弁を電気的に制御する制御装置をさらに有することができる。圧力発生部の作動または停止および第1切替弁による第1モードまたは第2モードの切り替えを自動制御することができる。この場合において、前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第2モードに設定する制御信号を該第1切替弁に送るとともに、前記圧力発生部を作動させる制御信号を該圧力発生部に送り、その後、予め設定された所定の第1時間の経過を待って前記第1切替弁を前記第1モードに切り替える制御信号を該第1切替弁に送るようにできる。または、前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第2モードに設定する制御信号を該第1切替弁に送るとともに、前記圧力発生部を作動させる制御信号を該圧力発生部に送り、その後、前記センサにより液面が予め設定された第1位置に達したことが検出された場合に前記第1切替弁を前記第1モードに切り替える制御信号を該第1切替弁に送るようにできる。これにより、バッファ液収容部材からDLDマイクロ流路チップのバッファ液導入口に至る部分、サンプル液収容部材からサンプル液導入口に至る部分、およびDLDマイクロ流路チップのバッファ液導入口とサンプル液導入口との間の部分内の気体を自動的に排出することができる。
【0024】
これらの場合において、前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第1モードに切り替えた後、予め設定された所定の第2時間を待って前記圧力発生部の作動を停止させる制御信号を該圧力発生部に送るようにできる。または、前記制御装置は、前記第1切替弁を前記第1モードに切り替えた後、前記センサにより液面が予め設定された第2位置に達したことが検出された場合に前記圧力発生部の作動を停止させる制御信号を該圧力発生部に送るようにできる。これにより、DLDマイクロ流路チップのバッファ液導入口とサンプル液導入口との間の部分の気体を排出した後に、DLDマイクロ流路チップのDLD流路部内をバッファ液で満たすことができる。
【0025】
本発明に係る粒子分離装置において、前記サンプル側管路および前記バッファ側管路の他方の管路の途中に介装され、互いに連通された第1ポート、第2ポートおよび第3ポートを備え、該第1ポートが当該他方の管路の上流側に接続され、該第2ポートが当該他方の管路の下流側に接続され、該第3ポートが大気開放用ポートであり、該第3ポートを閉塞して該第1ポートを開放する第1モードと該第1ポートを閉塞して該第3ポートを開放する第2モードとを選択的に切り替える第2切替弁をさらに有することができる。前記第2切替弁としては、三方活栓を含むもの、三方分岐管および2つの二方活栓を含むもの、三方電磁弁を含むもの、または三方分岐管および2つの二方電磁弁を含むものを用いることができる。バッファ液収容部材またはサンプル液収容部材の一方を任意に選択してバッファ液を注入した状態とし、他方を空とした状態でプライミングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るCTC分離装置の全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1のCTC分離装置のDLDマイクロ流路チップの概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すDLDマイクロ流路チップの粒子分離の原理を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態に係るCTC分離装置の全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態に係るCTC分離装置の制御系の要部構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の別の実施形態に係るCTC分離装置の制御系の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の別の実施形態に係るCTC分離装置の外観構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、標的粒子および該標的粒子と異なるサイズの非標的粒子が分散したサンプル液から該標的粒子を分離(分取)するための、本発明が適用された粒子分離装置の実施形態として、血球を非標的粒子として、血中循環腫瘍細胞(CTC)を標的粒子として含む血液由来の液をサンプル液とし、該サンプル液から血中循環腫瘍細胞を分離するCTC分離装置について、図面を参照して説明する。
【0028】
ただし、本発明は、血中循環腫瘍細胞を分離するものに限定されず、血中循環腫瘍細胞以外の細胞を標的粒子として、該標的粒子とサイズの異なる細胞を非標的粒子として含む体液(血液、リンパ液、唾液、尿、涙等を含む)から標的粒子となる細胞を分離するものに適用可能である。また、標的粒子および非標的粒子としては、細胞にも限定されず、サイズの異なる2種以上の粒子が分散した液体中から標的粒子を分離するものに広く適用可能である。なお、ここでいう「分散」とは、粒子(細胞)が液体中に粒子単体で浮遊している場合のみならず、その一部または全部がクラスターとして浮遊している場合が含まれ、また、液体中に散らばって浮遊している場合のみならず、ある程度沈降している場合も含まれる。対象とする標的粒子および非標的粒子の粒径は、0.1~1000μm程度である。
【0029】
さらに、本発明において、サンプル液は分離対象である標的粒子を含むものであればよく、該標的粒子とサイズの異なる非標的粒子は、必ずしも含んでいる必要はない。たとえば、単一サイズの粒子または所定のサイズ以上の粒径を有する複数種の粒子を含むバッファ液の交換(粒子を含むバッファ液をサンプル液として、該サンプル液と成分の異なるまたは同一の他のバッファ液に該粒子を移す)を行う場合や粒子の濃度の濃縮を行う場合にも、本発明は適用可能である。また、「標的粒子」とは分離の対象の粒子という意味であり、何らかの利用(たとえば検査)に供するために分離回収したい粒子という意味のみならず、不要なために分離除去したい(取り除きたい)粒子という意味も含まれる。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係るCTC分離装置1は、圧力発生部としてのシリンジ2、圧力供給部としての圧力分配部3、サンプル液収容部(サンプル液収容部材)4、バッファ液収容部(バッファ液収容部材)5、分離部(DLDマイクロ流路チップ)6、サンプル液回収部7,およびバッファ液回収部8を概略備えて構成されている。
【0031】
シリンジ2は、排出口21aを有するバレル(外筒)21およびピストン22からなるピストンシリンジであり、ピストン22を押圧(押し込む方向にスライド)することにより、バレル21内の気体(空気)を排出口21aから押し出し(排出し)、引き出す方向にスライドすることにより、排出口21aから気体を吸引する。
【0032】
圧力分配部3は、シリンジ2により発生された圧力を分配するものであり、シリンジ2のバレル21の排出口21aに接続された第1管路(共通管路)31、第1管路31から二股に分岐した一方であって後述するサンプル液収容部4のバレル41の注入口41aに接続される第2管路(サンプル側管路)32、および第1管路31から二股に分岐した他方であって後述するバッファ液収容部5のバレル51の注入口51aに接続される第3管路(バッファ側管路)33を備えている。
【0033】
第1管路31は、一方向弁31a、一方向弁31b、T型チューブコネクタ31c、三方活栓31d、およびチューブ31eを備えて構成されている。
【0034】
第1管路31の途中には、一方向弁31aが介装されており、一方向弁31aは、上流側(シリンジ2側)が下流側(第2管路32側、第3管路33側)に比して、陽圧時に開放し陰圧時に閉塞するように設けられた逆流防止用の弁である。一方向弁31aとしては、ダイヤフラム式チェックバルブを用いることができる。
【0035】
第1管路31の一方向弁31aよりもシリンジ2側には、外気吸入用の通気口が設けられている。通気口は、第1管路31の壁部に内外に貫通するように設けられ、シリンジ2側が陽圧時に閉塞し陰圧時に開放するように設けられた一方向弁31bを備えている。一方向弁31bとしては、一方向弁31aと同様に、ダイヤフラム式チェックバルブを用いることができる。通気口は、本実施形態では、第1~第3接続口を有するT型チューブコネクタ31cを第1管路31の途中に介装する、すなわち、T型チューブコネクタ31cの第1接続口をシリンジ2のバレル21の排気口21aに接続し、第2接続口を一方向弁31aの一方の接続口に接続し、第3接続口を一方向弁31bの一方の接続口に接続し、一方向弁31bの他方の接続口を外部に開放(大気開放)することにより実現している。
【0036】
第1管路31の一方向弁31aよりも下流側(サンプル液収容部4側、バッファ液収容部5側)には、第1~第3接続口および流路変更用のレバーを備える三方活栓31dが介装されている。より具体的には、三方活栓31dの第1接続口が一方向弁31aの下流側の接続口に接続され、第2接続口にチューブ31eが接続され、第3接続口は外部に開放されている。三方活栓31dは、そのレバーを所定の向きに回動させることにより、第1接続口から第2接続口に至る経路のみを開放し、第1接続口から第3接続口に至る経路のみを開放し、または第2接続口から第3接続口に至る経路のみを開放することができる。
【0037】
第2管路32は、チューブ32aおよびチューブ32aの一端に取り付けられたアダプタ32bを備えて構成されている。第2管路32のアダプタ32bは、後述するサンプル液収容部4のバレル41の注入口41aに着脱可能に装着される。第3管路33は、チューブ33aおよびチューブ33aの一端に取り付けられたアダプタ33bを備えて構成されている。第3管路33のアダプタ33bは、後述するバッファ液収容部5のバレル51の注入口51aに着脱可能に装着される。
【0038】
第1管路31のチューブ31eの下流側(三方活栓31dと反対側)の端部は、第1~第3接続口を有するY型チューブコネクタ34の第1接続口に接続されている。第2管路32のチューブ32aの上流側(アダプタ32bと反対側)の端部は、Y型チューブコネクタ34の第2接続口に接続されており、第3管路33のチューブ33aの上流側(アダプタ33bと反対側)の端部は、Y型チューブコネクタ34の第3接続口に接続されている。
【0039】
第2管路32の途中には、サンプル側切替弁(第1切替弁)91が介装されている。サンプル側切替弁91は、互いに連通された第1ポート91a、第2ポート91bおよび第3ポート91cを備え、第1ポート91aが第2管路32の上流側(Y型チューブコネクタ34の第2接続口側)に接続され、第2ポート91bが第2管路32の下流側(アダプタ32b側)に接続されており、第3ポート91cが大気開放用ポートとなっている。サンプル側切替弁91は、第3ポート91cを閉塞して第1ポート91aを開放する送圧モード(第1モード)と第1ポート91aを閉塞して第3ポート91cを開放する開放モード(第2モード)とを選択的に切り替える手段である。
【0040】
サンプル側切替弁91としては、本実施形態では、手動で流路(モード)を切り替えるためのレバーを備える三方活栓を用いている。サンプル側切替弁91としての三方活栓は、そのレバーを所定の向きに回動させることにより、第1ポート91aから第2ポート91bに至る経路のみを開放し、第1ポート91aから第3ポート91cに至る経路のみを開放し、または第2ポート91bから第3ポート91cに至る経路のみを開放することができる。なお、三方活栓は、第3ポート91cを閉塞して第1ポート91aおよび第2ポート91bを開放する送圧モードと、第1ポート91aを閉塞して第2ポート91bおよび第3ポート91cを開放する開放モードとに加えて、第2ポート91bを閉塞して第1ポート91aおよび第3ポート91cを開放する別の開放モードに切り替えることも可能である。
【0041】
サンプル側切替弁91としては、上述した三方活栓以外に、たとえば第1~第3接続口を有する三方分岐管(T型、Y型のいずれでもよい)および2つまたは3つの二方活栓を備えるものを用いてもよい。より具体的には、三方分岐管の第1接続口を二方活栓を介して第2管路32の上流側(Y型チューブコネクタ34の第2接続口側)に接続し、三方分岐管の第2接続口を直接にまたは二方活栓を介して第2管路32の下流側(アダプタ32b側)に接続し、三方分岐管の第3接続口を二方活栓を介して大気開放したものを用いてもよい。
【0042】
また、サンプル側切替弁91としては、三方電磁弁を備えるものを用い、手動で流路(送圧モード、開放モード)を切り替えるための操作ボタン等の操作部を操作(押下等)することによりモードを切り替えるようにしたものを用いてもよい。三方電磁弁に代えて、たとえば第1~第3接続口を有する三方分岐管(T型、Y型のいずれでもよい)および2つまたは3つの二方電磁弁を備えるものを用いてもよい。より具体的には、三方分岐管の第1接続口を二方電磁弁を介して第2管路32の上流側(Y型チューブコネクタ34の第2接続口側)に接続し、三方分岐管の第2接続口を直接にまたは二方電磁弁を介して第2管路32の下流側(アダプタ32b側)に接続し、三方分岐管の第3接続口を二方電磁弁を介して大気開放したものを用いてもよい。この場合、手動で流路(送圧モード、開放モード)を切り替えるための操作ボタン等の操作部を操作(押下等)することによりモードを切り替えるようにできるのは、三方電磁弁の場合と同様である。
【0043】
なお、本実施形態ではサンプル側切替弁91として、切替弁を第2管路32の途中に設けているが、サンプル側切替弁91に代えて、サンプル側切替弁91と同様の切替弁をバッファ側切替弁として第3管路33の途中に介装してもよい。また、サンプル側切替弁91に加えて、サンプル側切替弁91と同様の切替弁をバッファ側切替弁(第2切替弁)として第3管路33の途中に介装してもよい。これらの場合のバッファ側切替弁は、互いに連通された第1ポート、第2ポートおよび第3ポートを備え、第1ポートが第3管路33の上流側(Y型チューブコネクタ34の第3接続口側)に接続され、第2ポートが第3管路33の下流側(アダプタ33b側)に接続され、第3ポート92cが大気開放用ポートである。バッファ側切替弁の機能、具体的構成およびバリエーションについては上述したサンプル側切替弁91と同様である。
【0044】
サンプル液収容部4は、バレル(シリンジの外筒に相当する部材)41を備え、バレル41は、注入口41aおよび排出口41bを有している。バレル41には、標的粒子(血中循環腫瘍細胞)および該標的粒子と異なるサイズの非標的粒子(血球)を含むサンプル液(血液)Sが収容される。なお、サンプル液Sとしては、血液を希釈したもの(たとえば、血液を濃度4mMのEDTAを含有するPBSで2倍希釈したもの)を用いることができる。
【0045】
バレル41は、注入口41aが上方に、排出口41bが下方に位置するように、その長手方向(軸方向)が略鉛直に設定された状態で、不図示のスタンド等に支持されている。サンプル液Sは、バレル41の注入口41aから第2管路32のアダプタ32bを取り外した状態で注入され、注入後にバレル41の注入口41aに第2管路32のアダプタ32bが気密に装着される。バレル41内に収容されたサンプル液Sは、第2管路32を介して圧力が作用した場合に、排出口41bから排出される。
【0046】
バッファ液収容部5は、バレル(シリンジの外筒に相当する部材)51を備え、バレル51は、注入口51aおよび排出口51bを有している。バレル51には、バッファ液Bが収容される。バッファ液Bとしては、等張液を一種または複数種混合したものを用いることができ、たとえばPBSまたはグリセリン含有PBS等を用いることができる。
【0047】
バレル51は、バレル41と同様に、注入口51aが上方に、排出口51bが下方に位置するように、その長手方向(軸方向)が略鉛直に設定された状態で、不図示のスタンド等に支持されている。バッファ液Bは、バレル51の注入口51aから第3管路33のアダプタ33bを取り外した状態で、たとえばサンプル液Sと同量だけ注入され、注入後にバレル51の注入口51aに第3管路33のアダプタ33bが気密に装着される。バレル51内に収容されたバッファ液Bは、第3管路33を介して圧力が作用した場合に、排出口51bから排出される。
【0048】
分離部6は、DLDマイクロ流路チップ61および漏れ防止用のチップホルダ(不図示)を備えて構成されている。DLDマイクロ流路チップ61は、
図2にも示されているように、サンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、DLD流路部61c、サンプル液排出口61d、およびバッファ液排出口61eを備えて構成されている。
【0049】
サンプル液導入口61aには、チューブ41cを介して、サンプル液収容部4のバレル41の排出口41bが接続される。バッファ液導入口61bには、チューブ51cを介して、バッファ液収容部5のバレル51の排出口51bが接続される。DLD流路部61cは、複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えている。なお、DLD流路部61cと、サンプル液収容部4のバレル41の排出口41bからDLD流路部61cまでの流路(排出口41bと、チューブ41cと、サンプル液導入口61aと、DLD流路部61cと、からなる流路)、およびバッファ液収容部5のバレル51の排出口51bからDLD流路部61cまでの流路(排出口51bと、チューブ51cと、バッファ液導入口61bと、DLD流路部61cと、からなる流路)は、予めバッファ液(PBSまたはグリセリン含有PBS等)で満たしておくことが望ましい。
【0050】
シリンジ2のピストン22を押圧することにより供給される圧力により、サンプル液収容部4のバレル41内のサンプル液Sが、排出口41b、チューブ41cおよびサンプル液導入口61aを介してDLD流路部61cに導入されるとともに、バッファ液収容部5のバレル51内のバッファ液Bが、排出口51b、チューブ51cおよびバッファ液導入口61bを介してDLD流路部61cに導入される。
【0051】
サンプル液導入口61aを介して導入されたサンプル液と、バッファ液導入口61bを介して導入されたバッファ液とは、互いに接しながらそれぞれ層流として並行して、DLD流路部61c内を流れる。DLD流路部61cは、たとえば非特許文献1に記載されているような決定論的横置換(DLD)法の原理にしたがって配設された複数の微細なピラー(マイクロピラー)を有している。
【0052】
決定論的横置換法とは、
図3に示すように、所定の規則にしたがって配設された複数のピラーPからなるピラー群に粒子の分散液を流した際に、小さい粒子は流れの方向に沿って進み、大きい粒子はピラーの存在によって流れの方向に沿う進行を妨げられる結果として、流れの方向に対して斜めに進む性質を利用した分離法である。ピラーPの間隔Gと、シフト量dとで決まるしきい値を適宜に設定することにより、該しきい値未満の径の粒子と該しきい値以上の径の粒子とを分離することができる。
【0053】
DLD流路部61c内において、サンプル液に含まれる比較的に大きい径のCTC(たとえば12μm程度)は、サンプル液の流れ方向に対して斜めに進み、サンプル液に接しながら層流として並行して流れるバッファ液Bに移動し、サンプル液からバッファ液に移動したCTCを含むバッファ液がバッファ液排出口61eに至る。DLD流路部61c内において、サンプル液に含まれる比較的に小さい径の血球(たとえば8μm程度)は、サンプル液の流れ方向に沿って進み、CTCが移動した(分離された)後のサンプル液とともに、サンプル液排出口61dに至る。なお、DLD流路部61c内において、サンプル液とバッファ液とは、互いに接しながら層流として並行して流れる際に、互いに僅かに混入し合うため、サンプル液排出口61dから排出されるサンプル液にはバッファ液の一部が、バッファ液排出口61eから排出されるバッファ液にはサンプル液の一部が含まれる場合がある。ここで、
図2示す実施形態においては、サンプル液導入口61aとバッファ液導入口61bとが対称であり、サンプル液排出口61dとバッファ液排出口61eとが対称であるが、これらは対称でなくてもよい。たとえばDLD流路部61cからサンプル液排出口61dおよびバッファ液排出口61eへの分岐する位置を中心よりバッファ液排出口61e側にずらすことにより、サンプル液とバッファ液とが混入し合ってもバッファ液排出口61eから排出されるバッファ液に混入するサンプル液の量を減らすことができる。
【0054】
サンプル液排出口61dには、サンプル液回収部7のチューブ71を介してサンプル液回収容器72が接続されており、CTCが分離された後のサンプル液がサンプル液回収容器72に回収される。バッファ液排出口61eには、バッファ液回収部8のチューブ81を介してバッファ液回収容器82が接続されており、サンプル液から移動した(分離された)CTCを含むバッファ液がバッファ液回収容器82に回収される。
【0055】
被験者の血液からCTCを分離する本処理としてのソーティングを実施する前の予備的処理として、DLDマイクロ流路チップ61内をバッファ液で満たすプライミングを行う。プライミングでは、まず、空のバッファ液収容部5にバッファ液Bを収容(注入)し、あるいは予めバッファ液Bを収容(注入)した状態のバッファ液収容部5をセットし、サンプル液収容部4は空の状態としておく。次いで、サンプル側切替弁91を開放モードに設定して、シリンジ2のピストン22を押圧して、シリンジ2のバレル21内の空気を押し出す。このとき、第2管路32の途中に介装されたサンプル側切替弁91の第1ポート91aは閉塞されているため、シリンジ2から押し出された空気は第3管路33を介してバッファ液収容部5にのみ供給され、バッファ液収容部5内のバッファ液Bがチューブ51cおよびDLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bを介してDLD流路部61cに導入される。
【0056】
そして、このとき、サンプル側切替弁91の第3ポート91cが大気開放されているため、DLD流路部61cに導入されたバッファ液の一部(殆ど)はDLD流路部61cの下流側(排出口61d,61e側)とサンプル液収容部4側の管路抵抗差に応じて、DLDマイクロ流路チップ61のサンプル液導入口61aおよびチューブ41cを介して、空のサンプル液収容部4内に逆流的に流れ込む。これにより、バッファ液収容部5からDLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bに至る部分、バッファ液導入口61bとサンプル液導入口61aとの間の部分、およびサンプル液収容部4からサンプル液導入口61aに至る部分内に存在していた空気がサンプル液収容部4側に押し出される。
【0057】
その後適宜な量のバッファ液Bがサンプル液収容部4内に流れ込んだならば、すなわち、サンプル液収容部4内の液面が予め決められた所定位置(高さ)に達したことを目視等により確認したならば、サンプル側切替弁91を送圧モードに切り替える。これにより、第1ポート91aが開放され、第3ポート91cが閉塞されるため、シリンジ2からの空気はサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方に供給され、バッファ液収容部5内のバッファ液Bおよびサンプル液収容部4内のバッファ液BがDLD流路部61cに導入され、既にDLD流路部61c内に存在しているバッファ液Bとともに、バッファ液排出口61bおよびサンプル液排出口61aに至り、DLD流路部61c内がバッファ液Bで満たされた状態となる。この状態で、シリンジ2による空気の押し出しを停止し、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方の圧を抜き、プライミングを終了する。ここで、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方の圧を抜くには、三方活栓31dの第2接続口から第3接続口に至る経路を開放する方法、またはサンプル側切替弁91を開放モードとした後に、サンプル側切替弁91の第2ポート91bを閉塞して第1ポート91aおよび第3ポート91cを開放する別の開放モードとする(必要に応じてこの操作を繰り返す)方法を用いることができる。
【0058】
プライミングの後、シリンジ2による空気の押し出しを停止した状態で、サンプル液収容部4の注入口41aから第2管路32のアダプタ32bを外し、バレル41にサンプル液Sを収容(注入)し、注入口41aにアダプタ32bを取り付けるとともに、必要に応じてバッファ液収容部5の注入口51aから第3管路33のアダプタ33bを外し、バレル51にバッファ液Bを収容(注入)し、注入口51aにアダプタ33bを取り付ける。次いで、サンプル側切替弁91を送圧モードに設定して、シリンジ2による空気の押し出しを再開する。これにより、サンプル液Sおよびバッファ液Bが分離部6のDLDマイクロ流路チップ61の対応する導入口61a,61bに圧送され、ソーティング(標的粒子の分離)が行われる。
【0059】
ソーティングに先立ち、本実施形態の手順でプライミングを行っているため、バッファ液収容部5からDLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bに至る部分、サンプル液収容部4からサンプル液導入口61aに至る部分、DLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bとサンプル液導入口61aとの間の部分、およびDLD流路部61c内の空気は予め排出されて、バッファ液Bで満たされた状態となっている。したがって、気泡の残留に伴う不具合を生じることなく適切な分離を行うことができる。
【0060】
なお、サンプル側切替弁91に代えて、サンプル側切替弁91と同様の切替弁を第3管路33の途中にバッファ側切替弁として介装してもよく、この場合には、サンプル液収容部4にバッファ液Bを収容(注入)した状態とし、バッファ液収容部5は空の状態としてプライミングを行う以外は、上記とほぼ同様であるので、その説明は省略する。また、サンプル側切替弁91に加えて、サンプル側切替弁91と同様の切替弁を第3管路33の途中にバッファ側切替弁として介装してもよく、この場合には、バッファ側切替弁を送圧モードに設定した状態でプライミングを行う以外は、サンプル側切替弁91を有しバッファ側切替弁を有しない場合とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0061】
なお、本実施形態では、サンプル液をサンプル液収容部4のバレル41に注入するため、第2管路32をバレル41の注入口41aに着脱可能とし、バッファ液をバッファ液収容部5のバレル51に注入するため、第3管路33をバレル51の注入口51aに着脱可能としているが、これらを着脱可能とせずに、または着脱可能とした上で、他の手段により、これらを注入し得るようにしてもよい。たとえば、第2管路32および第3管路33の途中に三方活栓をそれぞれ介装して、該三方活栓の経路を適宜に切り替えて、サンプル液またはバッファ液を対応するバレル41,51に注入するようにしてもよい。
【0062】
また、
図1においては、シリンジ2のバレル21は、サンプル液収容部4のバレル41およびバッファ液収容部5のバレル51と同様に、略鉛直方向に沿って立てて設置しているように描かれているが、これに限られることはなく、第1管路31、第2管路32および第3管路33の一部または全部を柔軟な材質で構成して、その柔軟な部分が折れ曲がって、シリンジ2側が重力で垂れ下がるようにしてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、サンプル液およびバッファ液をDLDマイクロ流路チップ61に流すための圧力発生源となる圧力発生装置(圧力発生部)としてシリンジ2を用いたが、他の圧力発生装置を用いてもよい。たとえば、排出口を有するチャンバーおよび可動部を備え、該可動部を一定量動かすことにより、該チャンバー内の気体を該排出口から一定量押し出すようにした圧力発生装置を用いてもよく、電力等の人力以外の動力によって駆動する圧力発生装置を用いてもよい。他の圧力発生装置の具体例としては、可動部としてローターを備える電動ロータリーポンプ、可動部としてダイヤフラムを備える電動ダイヤフラムポンプ、可動部としてプランジャーを備える電動プランジャーポンプ、可動部としてピストンを備える電動ピストンポンプ、などの電動ポンプに採用されるチャンバーおよび可動部を備えた圧力発生装置を挙げることができるが、これらに限定されない。なお、上述した実施形態におけるシリンジ2は、チャンバーとしてバレル21を有し、そのチャンバー(バレル21)内部の圧力を変化させる可動部としてピストン22を有する圧力発生装置であると言い得る。また、圧力発生装置としては、圧縮空気ボンベやその他のガスボンベを用いたものであってもよい。
【0064】
シリンジ2以外の圧力発生装置を用いる場合には、一方向弁31a、T型チューブコネクタ31cおよび一方向弁31b、ならびに三方活栓31dのうちの一部または全部を省略してもよい。
【0065】
次に、本発明の別の実施形態を、
図4~
図7を参照して説明する。なお、
図4または
図7において、上述した
図1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0066】
図4に示すように、この別の実施形態では、
図1におけるシリンジ2に代えて、圧力発生装置(圧力発生部)として電動ポンプ9を備えている。電動ポンプ9は、後述する制御装置95からの制御信号に応じて、その作動(気体排出)または停止(気体排出の停止)が制御される。なお、図示は省略しているが、電動ポンプ9の排出口(電動ポンプ9内のチャンバーから第1管路31に至るまでの経路)に逆流防止用の一方向弁が介装されている。
【0067】
この別の実施形態では、
図4に示すように、第2管路32の途中に介装されたサンプル側切替弁(第1切替弁)91に加えて、第3管路33の途中にバッファ側切替弁(第2切替弁)92が介装されたものを例示している。バッファ側切替弁92は、互いに連通された第1ポート92a、第2ポート92bおよび第3ポート92cを備え、第1ポート92aが第3管路33の上流側(Y型チューブコネクタ34の第3接続口側)に接続され、第2ポート92bが第3管路33の下流側(アダプタ33b側)に接続されており、第3ポート92cが大気開放用ポートとなっている。バッファ側切替弁92は、第3ポート92cを閉塞して第1ポート92aを開放する送圧モード(第1モード)と第1ポート92aを閉塞して第3ポート92cを開放する開放モード(第2モード)とを選択的に切り替える手段である。
【0068】
この別の実施形態では、サンプル側切替弁91およびバッファ側切替弁92としては、後述する制御装置95からの制御信号に応じて、第1モードおよび第2モードを含む複数のモードを切り替えることができる電磁弁として、三方電磁弁を用いている。なお、三方電磁弁に代えて、たとえば第1~第3接続口を有する三方分岐管(T型、Y型のいずれでもよい)および2つまたは3つの二方電磁弁を備えるものを用いてもよい。
【0069】
また、この別の実施形態では、サンプル液収容部4のバレル41内の液体の液面位置(高さ)を検出するサンプル側センサ93、およびバッファ液収容部5のバレル51内の液体の液面位置(高さ)を検出するバッファ側センサ94を設けている。センサ93,94としては、特に限定されないが、送光部から発した光を受光部で受光して透過率(受光量)の変化により液面位置を検出するようにしたものを用いることができる。また、センサ93,94としては、この別の実施形態では、液面が予め設定された所定位置(所定高さ)に達したことを検出するものを用いているものとするが、液面の現在位置(高さ)を逐次検出し得るものであってもよい。センサ93,94による検出結果は、後述する制御装置95に入力される。なお、センサ93,94は、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0070】
図5に示すように、この別の実施形態の粒子分離装置(CTC分離装置)は、装置の各部を電気的に制御する制御装置95を備えている。制御装置95は、操作部96(
図7のプライミングボタン96a、ソーティングボタン96b等)からの操作信号、サンプル側センサ93およびバッファ側センサ94からの検出信号等に基づいて、ポンプ9に作動(排気)または停止を指示する制御信号、サンプル側切替弁91およびバッファ側切替弁92のモード切り替えを指示する制御信号等を送る手段である。
【0071】
図7にこの別の実施形態のCTC分離装置の外観を示すように、このCTC分離装置は、正面パネルの下部に分離作業を行う作業者が操作するための操作部96として、プライミングの開始を指示するプライミングボタン96aおよびソーティングの開始を指示するソーティングボタン96bが設けられている。また、サンプル液収容部4(バレル41)、バッファ液収容部5(バレル51)および分離部6(DLDマイクロ流路チップ61)は一体的なカートリッジとして構成されており、このカートリッジが正面パネルに設けられたカートリッジ取付部に着脱できるようになっている。また、サンプル液回収部7(サンプル液回収容器72)およびバッファ液回収部8(バッファ液回収容器82)は、正面パネルのカートリッジ取付部の下側に設けられた回収容器取付部にそれぞれ着脱できるようになっている。
【0072】
次に、
図6を参照して、この別の実施形態のCTC分離装置の制御系の処理について説明する。被験者の血液からCTCを分離する際には、作業者は、まず、カートリッジの空のバッファ液収容部5のバレル51にバッファ液Bを収容(注入)し、カートリッジのサンプル液収容部4のバレル41は空とした状態で、該カートリッジを正面パネルのカートリッジ取付部に装着する。なお、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5が空のカートリッジを正面パネルのカートリッジ取付部に装着した後、カートリッジのバッファ液収容部5のバレル51にバッファ液Bを収容(注入)してもよい。次いで、第2管路32のアダプタ32bを注入口41aに、第3管路33のアダプタ33bを注入口51aに取り付ける。また、空のサンプル液回収部7(サンプル液回収容器72)および空のバッファ液回収部8(バッファ液回収容器82)を、正面パネルの回収容器取付部にそれぞれ装着しておく。
【0073】
この状態で、作業者が正面パネルのプライミングボタン96aを操作(押下)することにより、
図6に示す制御装置95による処理(プライミング)が開始される。まず、制御装置95はプライミングボタン96aの押下を検出すると、バッファ側切替弁92に送圧モードに設定する制御信号を送り(ステップS001)、サンプル側切替弁91に開放モードに設定する制御信号を送る(ステップS002)。なお、カートリッジ等が適切に装着されているか否かは別途センサにより検出されており、適切に装着されている場合にのみ、一連の処理が開始される。
【0074】
次に、制御装置95は、ポンプ9に作動(排気開始)を指示する制御信号を送り、ポンプ9による空気の押し出し(圧力の供給)を開始させる(ステップS003)。このとき、第2管路32の途中に介装されたサンプル側切替弁91の第1ポート91aは閉塞されているため、ポンプ9から押し出された空気は第3管路33を介してバッファ液収容部5にのみ供給され、バッファ液収容部5内のバッファ液Bがチューブ51cおよびDLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bを介してDLD流路部61cに導入される。
【0075】
そして、このとき、サンプル側切替弁91の第3ポート91cが大気開放されているため、DLD流路部61cに導入されたバッファ液の一部(殆ど)はDLD流路部61cの下流側(排出口61d,61e側)とサンプル液収容部4側の管路抵抗差に応じて、DLDマイクロ流路チップ61のサンプル液導入口61aおよびチューブ41cを介して、空のサンプル液収容部4内に逆流的に流れ込む。これにより、バッファ液収容部4からDLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bに至る部分、バッファ液導入口61bとサンプル液導入口61aとの間の部分、およびサンプル液収容部4からサンプル液導入口61aに至る部分内に存在していた空気がサンプル液収容部4の大気開放された上流側に押し出される。
【0076】
次いで、制御装置95はタイマーによる時間経過の計測を開始し、サンプル液収容部4のバレル41に収容(注入)されるべきバッファ液の量に応じて予め設定された所定時間(第1時間)が経過したか否かを判断し(ステップS004)、経過していない場合(Noの場合)には該計測を継続し、経過した場合(Yesの場合)にはサンプル側切替弁91を送圧モードに切り替える(ステップS005)。なお、ステップS004では、時間経過ではなく、サンプル側センサ93によりサンプル液収容部4のバレル41内のバッファ液Bの液面が、予め設定された所定位置(第1位置)に達したことが検出された場合に、ステップS005に進むようにしてもよい。
【0077】
サンプル側切替弁91の開放モードから送圧モードへの切り替えにより、第1ポート91aが開放され、第3ポート91cが閉塞されるため、ポンプ9からの空気はサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方にほぼ均等に供給され、バッファ液収容部5内のバッファ液Bおよびサンプル液収容部4内のバッファ液BがDLD流路部61cに導入される。
【0078】
制御装置95は、サンプル側センサ93によりサンプル液収容部4のバレル41内のバッファ液Bの液面が、予め設定された所定位置(第2位置)に達したことが検出されたか否かを判断し(ステップS006)、達していない場合(Noの場合)には該検出を継続し、所定位置に達した場合(Yesの場合)には、ポンプ9に作動停止(排気停止)を指示する制御信号を送り(ステップS007)、サンプル側切替弁91を開放モードへ切り替え(ステップS008)、バッファ側切替弁92を開放モードへ切り替え(ステップS009)、一連の処理(プライミング)を終了する。なお、ステップS006では、サンプル側センサ93による液面位置による判断ではなく、S004と同様に経過時間で判断するようにしてもよい。すなわち、制御装置95はタイマーによる時間経過の計測の開始の後、DLD流路部61をバッファ液で満たすために必要なバッファ液の量に応じて予め設定された所定時間(第2時間)が経過した場合に処理を終了するようにしてもよい。
【0079】
これにより、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5からDLD流路部61cに導入されたバッファ液Bは、既にDLD流路部61c内に存在しているバッファ液Bとともに、バッファ液排出口61bおよびサンプル液排出口61aに至り、バッファ液回収部8およびサンプル液回収部7に排出され、DLD流路部61c内がバッファ液Bで満たされた状態となる。
【0080】
プライミングの終了の後、作業者は正面パネルに装着されているカートリッジを装着したまま、該カートリッジのサンプル液収容部4の注入口41aから第2管路32のアダプタ32bを外し、バレル41にサンプル液Sを収容(注入)し、注入口41aにアダプタ32bを取り付けるとともに、必要に応じてバッファ液収容部5の注入口51aから第3管路33のアダプタ33bを外し、バレル51にバッファ液を収容(注入)し、注入口51aにアダプタ33bを取り付ける。なお、プライミングの終了の後、カートリッジを正面パネルから一旦取り外し、同様の操作をした後、再度正面パネルに装着するようにしてもよい。また、サンプル液回収容器72および必要に応じてバッファ液回収容器82を空の状態としておく。
【0081】
この状態で、作業者が正面パネルのソーティングボタン96bを操作(押下)することにより、制御装置95によるソーティング処理が開始される。制御装置95は、ソーティングボタン96bの押下を検出すると、まず、バッファ側切替弁92およびサンプル側切替弁91を送圧モードに設定する。なお、カートリッジ等が適切に装着されているか否かは別途センサにより検出されており、適切に装着されている場合にのみ、一連の処理が開始される。
【0082】
次に、制御装置95は、ポンプ9に作動(排気開始)を指示する制御信号を送り、ポンプ9による空気の押し出し(圧力の供給)を開始させる。このとき、サンプル側切替弁91およびバッファ側切替弁92はそれぞれ送圧モードに設定されているため、ポンプ9からの空気はサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方にほぼ均等に供給され、サンプル液収容部4内のサンプル液Sおよびバッファ液収容部5内のバッファ液BがDLD流路部61cに導入され、ソーティング(標的粒子の分離)が行われる。
【0083】
次いで、制御装置95はタイマーによる時間経過の計測を開始し、サンプル液収容部4のバレル41に収容(注入)したサンプル液Sの量に応じて予め設定された所定時間が経過したか否かを判断し、経過した場合には一連の処理(ソーティング)を終了する。なお、処理の終了のタイミングとしては、時間経過ではなく、サンプル側センサ93によりサンプル液収容部4のバレル41内のサンプル液Sの液面が、予め設定された所定位置(所定高さ)に達したことが検出された場合に、一連の処理を終了するようにしてもよい。
【0084】
なお、上記の制御おいて、サンプル側センサ93による検出結果を用いた処理(工程)に関しては、バッファ側センサ94による検出結果を用いるようにしてもよい。
【0085】
上述した別の実施形態では、バッファ液をバッファ液収容部5に適宜に収容(注入)したカートリッジを正面パネルのカートリッジ取付部に適宜に装着し、圧力分配部3を適宜に接続して、プライミングボタン96aを押下することにより、バッファ液収容部5からDLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bに至る部分、サンプル液収容部4からサンプル液導入口61aに至る部分、DLDマイクロ流路チップ61のバッファ液導入口61bとサンプル液導入口61aとの間の部分、およびDLD流路部61c内をバッファ液で予備的に満たすプライミングが自動的に実施される。また、プライミングの後に、サンプル液をカートリッジのサンプル液収容部4に適宜に収容(注入)し、圧力分配部3を適宜に接続して、ソーティングボタン96bを押下することによりソーティングが自動的に実施される。したがって、気泡の残留に伴う粒子分離性能の低下を抑制することができ、高い分離性能を実現できるとともに、その作業が極めて容易である。
【0086】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0087】
1…CTC分離装置(粒子分離装置)
2…シリンジ(圧力発生装置)
21…バレル(チャンバー)
21a…排出口
22…ピストン(可動部)
3…圧力分配部(圧力供給部)
31…第1管路(共通管路)
31a…一方向弁(第1一方向弁)
31b…一方向弁(第2一方向弁、通気口)
31c…T型チューブコネクタ(通気口)
31d…三方活栓
32…第2管路(サンプル側管路)
32a…チューブ
32b…アダプタ
33…第3管路(バッファ側管路)
33a…チューブ
33b…アダプタ
34…Y型チューブコネクタ
4…サンプル液収容部(サンプル液収容部材)
41…バレル
41a…注入口
41b…排出口
41c…チューブ
5…バッファ液収容部(バッファ液収容部材)
51…バレル
51a…注入口
51b…排出口
51c…チューブ
6…分離部
61…DLDマイクロ流路チップ
61a…サンプル液導入口
61b…バッファ液導入口
61c…DLD流路部
61d…サンプル液排出口
61e…バッファ液排出口
7…サンプル液回収部
71…チューブ
72…サンプル液回収容器
8…バッファ液回収部
81…チューブ
82…バッファ液回収容器
9…電動ポンプ(圧力発生部)
91…サンプル側切替弁(第1切替弁)
91a…第1ポート
91b…第2ポート
91c…第3ポート
92…バッファ側切替弁(第2切替弁)
92a…第1ポート
92b…第2ポート
92c…第3ポート
93…サンプル側センサ
94…バッファ側センサ
95…制御装置
96…操作部
96a…プライミングボタン
96b…ソーティングボタン
B…バッファ液
P…ピラー
S…サンプル液