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  • 特許-撓み継手およびゴニオメータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】撓み継手およびゴニオメータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/74 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F16D3/74 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020204243
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091418
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月24日株式会社アールデック(茨城県つくば市二の宮1-16-10)にて譲渡
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】相浦 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 知巳
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-517403(JP,A)
【文献】特開2005-069381(JP,A)
【文献】特開平10-047365(JP,A)
【文献】登録実用新案第3140190(JP,U)
【文献】特開平4-289443(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第3719900(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10060422(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転軸との間に配置されトルクを伝達する円筒形状の撓み継手であって、
前記2つの回転軸の各々に接続可能な2つの端部を有する本体部を備え、
前記本体部は、複数のスリットを有し、各スリットは、外周面から半径方向に前記本体部の軸線を越える深さまで延びるとともに、他のスリットから該軸線方向に所定のピッチでかつ該外周面の周方向に所定の角度間隔で配置され、
前記スリット幅wと前記所定のピッチpとの比w/pが0.6以上であり、
前記本体部の軸方向に対して垂直な断面積Sと前記スリットの底の接合部分の軸方向に対して垂直な断面積sとの比s/Sが0.20以下であり、
当該撓み継手の半径方向の機械的コンプライアンス値が3mm/N以上である、前記撓み継手。
【請求項2】
前記比w/pと前記比s/Sとの比(w/p)/(s/S)が2.5以上である、請求項1記載の撓み継手。
【請求項3】
前記スリット幅wと前記スリットの深さdとの比w/dが0.07以上である、請求項1または2記載の撓み継手。
【請求項4】
当該撓み継手は、前記スリットを12個以上有する、請求項1~3のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項5】
前記比s/Sが0.13以下である、請求項1~4のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項6】
当該撓み継手の半径方向の機械的コンプライアンス値が5mm/N以上である、請求項1~5のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項7】
前記比w/pが0.7以下である、請求項1~6のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項8】
前記比s/Sが0.07以上である、請求項1~7のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項9】
前記比w/pと前記比s/Sとの比(w/p)/(s/S)が10以下である、請求項1~8のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項10】
当該撓み継手の半径方向の機械的コンプライアンス値が16mm/N以下である、請求項1~9のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項11】
前記軸方向に隣合うスリットは、前記所定の角度間隔が略90°または略180°であり、前記スリットの底は平面である、請求項1~10のうちいずれか一項記載の撓み継手。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか一項記載の撓み継手を備えるゴニオメータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動力の伝達において接合された入力軸と出力軸との作動角を増加可能な撓み継手に関する。
【背景技術】
【0002】
入力回転軸と出力回転軸との作動角を自由に設定可能な機械要素として、自在継手が用いられている。自在継手は複数部品から構成されていることから、小型化が困難であることに加え、構成部品間のバックラッシュにより回転動力の伝達を高精度に行うことが困難である。さらに、真空中で用いた場合、使用可能な潤滑剤の制約により構成部品の摩耗および構成部品間の摩擦が増加し、バックラッシュの増加による回転精度の劣化および齧りによる機械的な破損が起きやすい。
【0003】
円筒体の外周面に直線や螺旋のスリットを複数入れた撓み継手もある程度の作動角を可変な機械要素として用いられている。撓み継手は、単一の機械要素からなることから、自在継手において問題となる構成部品間の隙間による回転精度の影響が無いことに加え、摩耗による回転精度の劣化および摩擦の増加による齧りによる機械的な破損が無い(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-43030号公報
【文献】特許第4083227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存技術の撓み継手、例えば、特許文献1の緩衝カップリングは、円筒体に複数のスリットを形成することにより、入力回転軸と出力回転軸との芯ずれの緩衝を目的としており、作動角が小さい。そのため、大きな作動角を必要とするような利用は想定されていない。
【0006】
本発明の目的は、可撓性に優れ、大きな作動角で動作可能な撓み継手およびそれを用いたゴニオメータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、2つの回転軸との間に配置されトルクを伝達する円筒形状の撓み継手であって、上記2つの回転軸の各々に接続可能な2つの端部を有する本体部を備え、上記本体部は、複数のスリットを有し、各スリットは、外周面から半径方向に上記本体部の軸線を越える深さまで延びるとともに、他のスリットから該軸線方向に所定のピッチでかつ上記外周面の周方向に所定の角度間隔で配置され、上記スリット幅wと上記所定のピッチpとの比w/pが0.6以上であり、上記本体部の軸方向に対して垂直な断面積Sと上記スリットの底の接合部分の軸方向に対して垂直な断面積sとの比s/Sが0.20以下であり、上記撓み継手の半径方向の機械的コンプライアンス値が3mm/N以上である、上記撓み継手が提供される。
【0008】
上記態様によれば、可撓性に優れ、大きな作動角で動作可能な撓み継手を提供できる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、上記態様の撓み継手を備えるゴニオメータが提供される。上記他の態様によれば、撓み継手が可撓性に優れ、大きな作動角で動作可能であるので、回転動力を伝達する機械要素を小型化できるとともに、高い回転精度のゴニオメータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る撓み継手の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る撓み継手の部分断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る撓み継手の部分拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る撓み継手の機械的コンプライアンスの測定の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る撓み継手の適用例である。
図6】作製例の撓み継手の荷重と偏心量との関係を示す図である。
図7】作製例の撓み継手の機械的コンプライアンスと断面積比s/Sを示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係るゴニオメータの概略構成を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るゴニオメータ先端部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。なお、複数の図面間において共通する要素については同じ符号を付し、その要素の詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る撓み継手の概略構成を示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る撓み継手の部分断面図であり、(a)は図1のA-A線矢視図、(b)は図1のB-B線矢視図、(c)は図1のC-C線矢視図、(d)は図1のD-D線矢視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る撓み継手の部分拡大図である。なお、図3は、説明の便宜のために、軸線方向に拡大した図を示している。
【0013】
図1図3を参照するに、撓み継手10は、おおよそ円筒形の本体部11を有する。本体部11は、2つの端部11a、11bを有し、その端部11a、11bの軸線(X-X線)に沿った開口部(孔部)に各々回転軸を接続可能である。撓み継手10は、回転トルクの入力側の回転軸RS1から回転トルクの出力側の回転軸RS2にトルクを伝達する。撓み継手10は、図1では、軸線に沿って直線状に示しているが、可撓性に優れ、2つの回転軸11a、11bの角度がほぼ90°でもトルクの伝達に用いることができる。
【0014】
本体部11は、2つの端部11a、11bとの間に多数のスリット12が形成される。本体部11は、隣合うスリット12との間に円盤状部分13が形成され、スリット12は、その底に隣合う円盤状部分13を接続する接合部分14を有する。接合部分14が可逆的な範囲において撓むことで、撓み継手10の偏位角や作動角が大きくすることができる。
【0015】
スリット12は、本体部11が直径Dを有し、本体部11の外周面から半径方向に軸線(X-X線)を越える深さd(d<D)まで延びる。本体部11の直径Dは、特に制限はないが、機器の制御用としては小型の撓み継手が狭い空間に配置されることが多く、6mm~16mmであることが好ましく、8mmから12mmであることがさらに好ましい。スリット12は、延びる方向が、隣合うスリット12間で所定の角度間隔を形成する。所定の角度間隔は、本実施形態では、90°または180°であり、略90°または略180°であればよく、製造上容易でありかつ低コストの点で好ましい。スリット12aは、図2(a)に示す図1のA-A線矢視図のように、紙面の上から下に延び、接合部分14が下方に形成される。その隣のスリット12bは、図2(b)に示す図1のB-B線矢視図のように、紙面の下から上に延び、接合部分14が上方に形成される。その隣のスリット12cは、図2(c)に示す図1のC-C線矢視図のように、紙面の右から左に延び、接合部分14が左方に形成される。その隣のスリット12dは、図2(d)に示す図1のD-D線矢視図のように、紙面の左から右に延び、接合部分14が右方に形成される。このように、スリット12は、本実施形態では、隣り合う4個のスリット12a~12dが1つのセットを形成する。図1では、本体部11は、6セットのスリット12(合計24個のスリット)形成されている。スリット12は、12個以上であることが、撓み継手10の可撓性を高める点で好ましい。
【0016】
スリット12は、所定の間隔(ピッチ)p毎に形成され、スリット幅wを有する。スリット幅wとスリット12のピッチpとの比w/pは、良好な可撓性を確保するために0.5以上に設定される。比w/pは大きい程可撓性が高まるが、撓み継手10のねじり剛性が低下するので、比w/pは、0.7以下であることが好ましい。
【0017】
図3に示すように円盤状部分13の軸線方向に対して垂直な断面の面積(断面積)をSとし、接合部分14の軸方向に対して垂直な断面の面積(断面積)sとすると、その比s/Sが0.20以下に設定される。比s/Sは小さいほど可撓性が高まり、撓み継手10の入力側の回転軸RS1と出力側の回転軸RS2との作動角をより大きく確保できる点で好ましい。比s/Sは、0.13以下に設定されることが、可撓性が著しく高まる点で好ましい。比s/Sが極めて小さくなると、撓み継手10のねじり剛性が低下するので、比s/Sは0.07以上に設定されることが好ましい。
【0018】
比w/pと比s/Sとの比(w/p)/(s/S)は、可撓性の点で、2.5以上であることが好ましい。比(w/p)/(s/S)は、大きい程可撓性が高まるが、ねじり剛性が低下する。本実施形態の一適用例として、回転動力源が小型のステッピングモータ(例えば取付けサイズが20mm×20mmのモータ)の場合、励磁最大静止トルクを加えた際の撓み継手10のねじり角(入力側の回転軸RS1と出力側の回転軸RS2とのずれ角)が小型モータの単位基本ステップ角よりも小さくすることが好ましい。この観点から、比(w/p)/(s/S)は、10以下であることが好ましい。
【0019】
スリット12は、スリット幅wとスリットの深さdとの比w/dが0.07以上であることが好ましい。比w/dは、スリット1個当たりの最大作動角を決める寸法パラメータのうちの一つであり、大きい程、スリット1個当たりの物理的な最大作動角が大きくなる。
【0020】
図4は、本発明の一実施形態に係る撓み継手の機械的コンプライアンスの測定の説明図である。図4を参照するに、撓み継手10の一方の端部11bを固定して他方の端部11a側の外周面に、軸線に対して垂直方向に荷重をかける。荷重によって撓み継手10が偏位して端部11aの軸線が加重をかけない場合の軸線の位置からずれる。この軸線のずれを偏心量として求める。加重の単位をN、偏心量の単位をmmとして、機械的コンプライアンス(単位:mm/N)が定義される。機械的コンプライアンス値は撓み継手の撓み易さを表し、数値が大きいほど撓み易いことを表す。本実施形態の撓み継手10は、機械的コンプライアンス値が3mm/N以上に設定される。特許文献2に半径方向コンプライアンスとして記載された機械的コンプライアンス値は64μm/Nであり、これに対して本実施形態の撓み継手10は、機械的コンプライアンス値が約47倍以上に設定される。撓み継手10の機械的コンプライアンス値は、より高い可撓性と十分なねじり剛性を両立する点で5mm/N以上であることが好ましい。撓み継手10の機械的コンプライアンス値は、ねじり剛性を確保する点で、16mm/N以下であることが好ましい。
【0021】
なお、撓み継手10は、3つの隣合うスリット12を一つのセットとする場合は、隣合うスリット12間で延びる方向が略120°であればよい。また、5つの隣合うスリット12を一つのセットとする場合は、隣合うスリット12間で延びる方向が略72°であればよい。スリット12が延びる方向は、一つの撓み継手10では多いほど、例えば、スリットが24個ある撓み継手10では15°刻みの方向を選択することが撓み易さの変動を軽減する点で好ましい。他方、スリット12を形成する製造の容易さの点では、スリット12が延びる方向は、90°刻みの方向を選択することが好ましい。
【0022】
撓み継手10は、アルミ合金、ステンレス、リン青銅、ベリリウム銅、チタン合金、コバルト基合金、インコネル等の金属材料、並びに、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリミド(PI)樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等の長期間使用できる、耐衝撃性、耐摩耗性に優れたスーパーエンジニアリング樹脂を用いて、公知の製造方法により作製する。
【0023】
図5は、本発明の一実施形態に係る撓み継手の適用例であり、入力回転軸と出力回転軸とにずれがある場合に、2つの本実施形態の撓み継手10A、10Bを用いた例である。図5を参照するに、入力回転軸RSaと出力回転軸RSbとは平行であるが軸線に対して垂直方向にずれがある。2つの撓み継手10A、10Bおよび軸受を用いて入力回転軸RSaと出力回転軸RSbとを連結している。撓み継手10A、10Bの各々は、作動角が約45°であり従来と比較して極めて大きく撓ませて配置されている。このように本実施形態の撓み継手10A、10Bを適用することで、狭所において入力回転軸RSaと出力回転軸RSbとがずれがあってもコンパクトな機構により回転動力を伝達可能である。
【0024】
[作製例]
本実施形態の撓み継手10について、以下の仕様の撓み継手を作製した。
外寸:長さ30mm、直径D8mm
穴径:直径3mm
スリット寸法:
ピッチp:1mm
スリット幅w:0.5mm、0.6mm、0.7mm
スリット深さd:6.0mm、6.5mm、7.0mm
スリット数n:16、24、24
材料:ベリリウム銅
【0025】
作製した撓み継手のうち、代表的なパラメータを有する撓み継手について、図4とその説明に示した手法で荷重と偏心量との関係を計測し、可撓性を表す機械的コンプライアンス値を求めた。
【0026】
図6は、作製例の撓み継手の荷重と偏心量との関係を示す図であり、スリット深さdが7.0mm、スリット数nが24個、スリット幅wが0.5mm、0.6mmおよび0.7mmの3種類の撓み継手について計測した結果を示す。図6の縦軸は荷重であり、横軸はその荷重に対する偏心量を示す。図6を参照するに、荷重に対してほぼリニアに偏心量に変化していることが分かる。このグラフの傾き(偏心量/荷重)が機械的コンプライアンス値である。スリット幅wとピッチpとの比w/pが0.5から0.7に高くなる程、傾き(偏心量/荷重)が大きくなることが分かる。すなわち、比w/pが0.5から0.7に高くなる程、荷重に対する偏心量が増加し、撓み易くなることが分かる。
【0027】
図7は、作製例の撓み継手の機械的コンプライアンスと断面積比s/Sを示す図であり、横軸が円盤状部分13の軸線方向に対して垂直な断面の面積(断面積)をSと接合部分14の軸方向に対して垂直な断面の面積(断面積)sとの比であり、縦軸は機械的コンプライアンス(mm/N)である。図7を参照するに、比s/Sが大きい程、機械的コンプライアンス値が低くなり、可撓性が低下する。比s/Sが0.20以下であり、比w/pが0.6以上であると、機械的コンプライアンス値が3mm/N以上である撓み継手を得ることができる。さらに比s/Sが0.13以下であり、比w/pが0.6以上であると、機械的コンプライアンス値が5mm/N以上である撓み継手を得ることができる。
【0028】
図8は、本発明の一実施形態に係るゴニオメータの概略構成を示す図である。図9は、本発明の一実施形態に係るゴニオメータ先端部の部分拡大図である。図8および図9を参照するに、本発明の一実施形態に係るゴニオメータ30は、概略、大気側に配置される回転動力源である駆動モータ31、32と、回転導入部33と、真空側に配置され試料ホルダ34を含む先端部35とを有する。回転導入部33では、入力側の回転軸36、38と出力側の回転軸39、40とは、撓み継手41、42により接続されている。撓み継手41、42は、図1に示した実施形態に係る撓み継手10を用いることができる。撓み継手41、42は可撓性に優れているので、入力側の回転軸36、38を出力側の回転軸39、40に対して傾けることが可能であり、入力側の回転軸36、38を取付けフランジ43の面に対して、垂直方向から横に傾けて設けることができる。これにより、駆動モータ31、32を互いに接触しないように配置できる。これとともに、入力側の回転軸36、38と出力側の回転軸39、40とをギアにより接続する場合に比較して、取付けフランジ43を小径化でき、回転導入部33を小型化できる。このようにしてゴニオメータ30は、駆動モータ31、32から回転導入部33の撓み継手41、42を介して回転軸39、40によって先端部35に回転動力が伝達される。
【0029】
回転軸39は、試料ホルダ34の面内回転のための回転動力を伝達し、回転軸40は、試料ホルダ34のチルト回転のための回転動力を伝達する。先端部35において、回転軸39は、撓み継手44および45により軸心を偏位させて回転軸46に回転動力を伝達する。回転軸46は、撓み継手48および平歯車49等を介して試料ホルダ34の面内回転のための回転動力を伝達する。回転軸40は、撓み継手50および51により軸心を偏位させてウォームギア52等を介して試料ホルダ34のチルト回転のための回転動力を伝達する。
【0030】
撓み継手44、45、48、50および51は、図1に示した実施形態に係る撓み継手10を用いることができる。撓み継手44、45、48、50および51は可撓性に優れており、大きな作動角で屈曲することが可能であり、かつ屈曲による塑性変形を防止できる。例えば、撓み継手48は、試料ホルダ34がチルト回転によって試料載置面(不図示)の垂直方向が横方向から紙面上向きまたは紙面下向きに設定されると、それに応じて例えば45°またはそれ以上の角度に屈曲できる。撓み継手48は、屈曲した状態で試料ホルダ34の面内回転のための回転動力を伝達できる。
【0031】
本実施形態のゴニオメータ30は、大きな作動角で回転動力を伝達可能な撓み継手41、42、44、45、48、50および51を備えているので、狭い空間でも回転軸の移動が容易である。これにより、機器設計の柔軟性が飛躍的に向上することができる。さらに、ゴニオメータ30は、回転軸を撓み継手41、42、44、45、48、50および51により接続しているので、真空中や極低温下でも高精度に回転動力を伝達可能であり、高い信頼性を有している。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
10、10A、10B、41、42、44、45、48、50、51 撓み継手
11 本体部
12、12a~12c スリット
13 円盤状部分
14 接合部分
30 ゴニオメータ
34 試料ホルダ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9