(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】マーキング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240507BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240507BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240507BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240507BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/02 A
B24B27/06 J
B24B49/12
H01L21/304 601Z
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020040493
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-217624(JP,A)
【文献】特開2019-021883(JP,A)
【文献】特開平02-125412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B24B 27/06
B24B 49/12
H01L 21/304
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハへのマーキング方法であって、
ウエーハを保持し回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、該X軸方向及び該Y軸方向に直交したZ軸方向に該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に切込み送りするZ軸送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、制御手段と、を少なくとも備えた切削装置を用意する切削装置用意工程と、
マーキングすべきマークの情報を該制御手段に登録するマーク情報登録工程と、
ウエーハを該チャックテーブルに保持してウエーハを該撮像手段で撮像し該表示手段に表示してマーキングすべきウエーハの所望位置をX座標、Y座標で特定する位置特定工程と、
該位置特定工程において特定された所望位置のX座標、Y座標に基づいて該X軸送り手段及びY軸送り手段を作動して該切削ブレードを該所望位置に位置付けると共に、該Z軸送り手段を作動して該切削ブレードでマーキングするマーキング工程と、
を含み構成され
、
該マーキング工程は、X座標及びY座標によって特定される該所望位置内において、該切削ブレードによって、X軸方向に沿う複数の溝をY軸方向に形成するものであり、該溝を形成する位置の組み合わせによって、アルファベット又は数字の文字形状を描画するマーキング方法。
【請求項2】
該位置特定工程において、マーキングすべきウエーハの所望位置は、ウエーハの表面のデバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域で特定される請求項1に記載のマーキング方法。
【請求項3】
該位置特定工程において、マーキングすべきウエーハの所望位置は、外周余剰領域の結晶方位マークの側である請求項2に記載のマーキング方法。
【請求項4】
該位置特定工程において、マーキングすべきウエーハの所望位置は、ウエーハの裏面である請求項1に記載のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハにマーキングを施すマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所望の厚みに形成された後、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ウエーハの所要位置(例えば、オリエンテーションフラットに隣接した外周余剰領域)には、ウエーハを管理するためのバーコード、品番、品名、ロットナンバー等を含む文字、又はIDマークがマーキングされ、過去情報を引継ぎながら各製造工程でマークを確認してウエーハに所望の加工を施したり、ウエーハのトレーサビリティを実現したりしている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術によれば、上記したIDマーク等のマーキングは、レーザー光線を照射することにより実施されるため、例えば、レーザー光線が照射されて形成された溝の両側に盛り上がりが生じてウエーハの表面にデバイスを形成する過程でウエーハの表面に成膜工程を実施して膜を形成しても該盛り上がりが生じている箇所から膜剥がれが生じたり、溝を形成する際にデブリが飛散してデバイスが形成される面を汚染したり、溝に留まったデブリが後工程で環境を汚染したりする等の問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、盛り上がりやデブリ等による汚染が生じないマーキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハへのマーキング方法であって、ウエーハを保持し回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、該X軸方向及び該Y軸方向に直交したZ軸方向に該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に切込み送りするZ軸送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、制御手段と、を少なくとも備えた切削装置を用意する切削装置用意工程と、マーキングすべきマークの情報を該制御手段に登録するマーク情報登録工程と、ウエーハを該チャックテーブルに保持してウエーハを該撮像手段で撮像し該表示手段に表示してマーキングすべきウエーハの所望位置をX座標、Y座標で特定する位置特定工程と、該位置特定工程において特定された所望位置のX座標、Y座標に基づいて該X軸送り手段及びY軸送り手段を作動して該切削ブレードを該所望位置に位置付けると共に、該Z軸送り手段を作動して該切削ブレードでマーキングするマーキング工程と、を含み構成され、該マーキング工程は、X座標及びY座標によって特定される該所望位置内において、該切削ブレードによって、X軸方向に沿う複数の溝をY軸方向に形成するものであり、該溝を形成する位置の組み合わせによって、アルファベット又は数字の文字形状を描画するマーキング方法が提供される。
【0008】
該位置特定工程において、マーキングすべきウエーハの所望位置は、ウエーハの表面のデバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域で特定されることが好ましい。また、該位置特定工程において、マーキングすべきウエーハの所望位置は、外周余剰領域の結晶方位マークの側であることが好ましい。該位置特定工程において、マーキングすべきウエーハの所望位置は、ウエーハの裏面であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマーキング方法は、ウエーハへのマーキング方法であって、ウエーハを保持し回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、該X軸方向及び該Y軸方向に直交したZ軸方向に該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に切込み送りするZ軸送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、制御手段と、を少なくとも備えた切削装置を用意する切削装置用意工程と、マーキングすべきマークの情報を該制御手段に登録するマーク情報登録工程と、ウエーハを該チャックテーブルに保持してウエーハを該撮像手段で撮像し該表示手段に表示してマーキングすべきウエーハの所望位置をX座標、Y座標で特定する位置特定工程と、該位置特定工程において特定された所望位置のX座標、Y座標に基づいて該X軸送り手段及びY軸送り手段を作動して該切削ブレードを該所望位置に位置付けると共に、該Z軸送り手段を作動して該切削ブレードでマーキングするマーキング工程と、を含み構成され、該マーキング工程は、X座標及びY座標によって特定される該所望位置内において、該切削ブレードによって、X軸方向に沿う複数の溝をY軸方向に形成するものであり、該溝を形成する位置の組み合わせによって、アルファベット又は数字の文字形状を描画することから、レーザー加工によってウエーハに加工溝を形成してマーキングを施す場合に形成される加工溝の両側の盛り上がりが形成されず、デバイスを形成する過程で実施される成膜工程において膜剥がれが生じるという問題が解消する。また、レーザー加工によって生じるデブリが飛散せず、デバイスが形成される面が汚染されたり、レーザー加工溝に残ったデブリが後工程で環境を汚染したりする等の問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示す切削装置の内部構成の概略を示す斜視図である。
【
図3】(a)撮像手段によって撮像されたウエーハの一部が表示手段に表示された状態を示す概念図、(b)位置特定工程を実施する態様を示す概念図である。
【
図4】(a)マーキング工程を実施する切削手段の一部を拡大して示す斜視図、(b)マーキング工程によって形成される溝の側面図、及び平面図である。
【
図5】マーキング工程によってIDマークが形成される過程を示す概念図である。
【
図6】マーキング工程によって形成されるIDマークの一部を拡大して示す平面図である。
【
図7】(a)IDマークが形成されたウエーハの斜視図、(b)(a)IDマークを形成した後にデバイスを形成したウエーハの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されるマーキング方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のマーキング方法を実施するに際し、まず、本実施形態のマーキング方法を実施するのに好適な切削装置を用意する切削装置用意工程を実施する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の切削装置1は、装置ハウジングHに覆われている。装置ハウジングHには、表示手段2と、オペレータが情報の入力や作業指示を行う際に使用する操作パネル4とが配設されている。さらに、切削装置1は、切削手段20と、被加工物であるウエーハ10を保持するための保持手段30とを備えている。
【0014】
図2に、装置ハウジングHを除いた切削装置1の内部構造の概略を示す斜視図と、切削装置1によってマーキングが施されるウエーハ10とを示す。ウエーハ10は、例えば、シリコン(Si)のウエーハであり、表面10a、裏面10bのいずれにもデバイスが形成されていない未加工のウエーハである。
図2に示すウエーハ10は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されるデバイス形成領域10cと、デバイス形成領域10cを囲繞する外周余剰領域10dとを備えている。ウエーハ10の外周端の所定の位置には、U字状の切り欠き(ノッチ)によってウエーハ10の結晶方位を示す結晶方位マーク12が形成されている。結晶方位を示すマークとしては、
図2に示すU字状の切り欠きに限定されず、V字状の切り欠きや、外周端に直線状で形成されるオリエンテーションフラットであってもよい。なお、
図2に示すウエーハ10には、説明の都合上、デバイス形成領域10cと、デバイス形成領域10cを囲繞する外周余剰領域10dとを区分する破線Sを示しているが、破線Sは仮想線であって、実際に表面10a上に描かれるものではない。
【0015】
この切削装置用意工程によって用意される切削装置1の概略構成について、
図2を参照しながらより具体的に説明する。
【0016】
図2に示すように、切削装置1は、基台1Aと、基台1A上に配設された門型フレーム1Bとを備え、被加工物であるウエーハ10を切削する切削手段20と、ウエーハ10を保持する保持手段30と、切削手段20と保持手段30とをX軸方向で相対的に加工送りするX軸送り手段40と、切削手段20と保持手段30とをX軸方向に直交しX軸方向と共に水平面を構成するY軸方向に相対的に加工送りするY軸送り手段50と、切削手段20と保持手段30とをX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に切込み送りするZ軸送り手段60と、保持手段30に保持されたウエーハ10を撮像する撮像手段28と、制御手段100と、を備えている。なお、制御手段100は、説明の都合上、切削装置1の外部に記載されているが、実際は、切削装置1のハウジングHの内部に収容されている。
【0017】
保持手段30は、X軸方向において移動自在に基台1Aに載置された矩形状のX軸方向可動板32と、X軸方向可動板32の上面に配設された円柱部材34と、円柱部材34の上部に配設されたカバー部材36と、カバー部材36の中央から上方に延出するように配設されたチャックテーブル38と、を備えている。チャックテーブル38は、図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されている。チャックテーブル38の上面を構成するX軸方向、及び該Y軸方向により規定される保持面38aは、通気性を有する多孔質材料から形成され、円柱部材34、及びチャックテーブル38の内部を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。
【0018】
切削手段20は、チャックテーブル38に吸引保持されたウエーハ10に対して切削加工を実施することによりマーキングを施す手段であり、Y軸送り手段50及びZ軸送り手段60を介して門型フレーム1Bに支持されている。切削手段20は、スピンドル22を回転自在に保持するスピンドルハウジング20Aと、スピンドル22の先端に装着される円環状の切削ブレード21と、切削ブレード21を覆うブレードカバー23と、を備えている。スピンドルハウジング20Aには、スピンドル22を回転させる回転駆動源としての電動モータが収容されている(図示は省略)。
【0019】
X軸送り手段40は、基台1A上に配設され、パルスモータ42の回転運動を、ボールねじ44を介して直線運動に変換してX軸方向可動板32に伝達し、基台1A上の案内レール46、46に沿ってX軸方向可動板32上に配設されたチャックテーブル38をX軸方向において進退させる。
【0020】
Y軸送り手段50は、ボールねじ機構を含んでおり、門型フレーム1Bに配設されたY軸方向に延在する一対の案内レール52と、案内レール52と平行に配置されるボールねじ54と、ボールねじ54によって進退されるナット部(図示は省略)を背面に備えたY軸移動基台56と、ボールねじ54を回転駆動するパルスモータ58とを備えている。Y軸移動基台56は、案内レール52によりY軸方向にガイドされる。Y軸送り手段50は、パルスモータ58によりボールねじ54を回転させてY軸移動基台56をY軸方向に移動し、Y軸移動基台56に支持され切削手段20を支持しているZ軸送り手段60をY軸方向に移動する。
【0021】
Z軸送り手段60は、Y軸移動基台56に配設されZ軸方向に延在する一対の案内レール(図示は省略)と、該案内レールと平行に配置されるボールねじ(図示は省略)と、該ボールねじと螺合するナット(図示は省略)を背面に備えたZ軸移動基台62と、該ボールねじを回転させるための動力であるパルスモータ64とを有する。Z軸送り手段60は、パルスモータ64により該ボールねじを回転させてZ軸移動基台62を該案内レールに沿ってZ軸方向に移動することにより、Z軸移動基台62に支持されている切削手段20をZ軸方向に移動する。
【0022】
撮像手段28は、切削手段20のスピンドルハウジング20Aと一体的に構成されている。したがって、上記したX軸送り手段40、Y軸送り手段50、Z軸送り手段60を作動して、切削手段20と共に撮像手段28を保持手段30に対して相対的にX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させることができる。撮像手段28は、切削手段20の切削ブレード21とX軸方向で一致する位置に配設されており、撮像手段28によって撮像された領域の中央位置と、切削ブレード21によって切削されるY座標位置は一致する。
【0023】
切削装置1には、チャックテーブル38の回転角度位置を検出する回転角度位置検出手段、チャックテーブル38のX軸方向の位置(X座標位置)を検出するX軸座標位置検出手段、切削手段20のY軸方向の位置(Y座標位置)を検出するY軸座標位置検出手段、切削手段20のZ軸方向の位置(Z座標位置)を検出するZ軸座標位置検出手段が配設されており(いずれも図示は省略する)、チャックテーブル38の回転角度位置及びX軸座標位置、切削手段20のY軸座標位置、及びZ軸座標位置が精密に検出され、制御手段100に送られる。
【0024】
制御手段100は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。本実施形態の制御手段100には、上記した表示手段2、操作パネル4、切削手段20、撮像手段28、X軸送り手段40、Y軸送り手段50、及びZ軸送り手段60、並びに、図示を省略する回転角度位置検出手段、X軸座標位置検出手段、Y軸座標位置検出手段、及びZ軸座標位置検出手段が接続される。
【0025】
切削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、本実施形態のマーキング方法を実施する場合は、この切削装置1を用意する切削装置用意工程を実施すると共に、以下に示す工程を実施する。
【0026】
本実施形態のマーキング方法を実施するに際し、切削装置1を用意する切削装置用意工程を実施したならば、ウエーハ10にマーキングすべきマークの情報を制御手段100に登録するマーク情報登録工程を実施する。本実施形態において、ウエーハ10にマーキングするマークは、例えば、ウエーハ10を個別に識別するIDマークであり、一例として「T175-43」を登録する。このIDマークを、操作パネル4、又はタッチパネル機能を備えた表示手段2からオペレータが入力し、制御手段100のメモリに記憶させる。なお、マーク情報登録工程において該マークの情報を登録する方法は、必ずしもオペレータが手入力によって実施することに限定されず、例えば、オンラインによって情報を取得して登録したり、予め登録された画面表示に従ってマーキングすべきマークを選択したりするものであってもよい。以上によりマーク情報登録工程が完了する。
【0027】
次いで、ウエーハ10をチャックテーブル38に保持してウエーハ10を撮像手段28で撮像し、撮像箇所を表示手段2に表示してマーキングすべきウエーハ10の所望位置をX座標、Y座標で特定する位置特定工程を実施する。
【0028】
位置特定工程について、より具体的に説明すると、まず、
図2に示すように、ウエーハ10の表面10aを上方に、裏面10b側を下方に向けて、チャックテーブル38の保持面38aに載置し、図示しない吸引手段を作動して吸引保持する。次いで、X軸送り手段40、Y軸送り手段50、及びZ軸送り手段60を作動して、チャックテーブル38に保持されたウエーハ10の上方に、撮像手段28を位置付ける。次いで、撮像手段28を作動して、
図3(a)に示すように、表示手段2に撮像領域を表示させる。本実施形態において、IDマークをマーキングする領域は、ウエーハ10の表面10a側の外周余剰領域10dであって、結晶方位マーク12が形成された側であるノッチ側外周余剰領域10eである。
【0029】
撮像手段28、X軸送り手段40、Y軸送り手段50、及びZ軸送り手段60を作動して、表示手段2にIDマークをマーキングするノッチ側外周余剰領域10eを表示したならば、
図3(a)に示すように、IDマークを形成する領域Pを指定する。領域Pは、IDマークを形成する領域を囲む矩形の領域(点線で示す)の対角線上の2点(P1、P2)の位置を調整することによって特定される。
【0030】
上記した領域Pが指定されると、
図3(b)に点線で示すように、上記したマーキング情報登録工程において登録されたIDマーク(「T175-43」)が、領域P内のいずれの位置に形成されるかも特定され(破線で示す)、各IDマークの文字、記号を構成する各線のX座標位置、及びY座標位置が制御手段100で演算されて特定される。なお、制御手段100には、予めIDマークで使用されるアルファベット、数字、記号が登録されており、登録された文字、記号が、領域P内において、どのように線を組み合わせて描画するのかが演算により求められる。以上により位置特定工程が完了する。
【0031】
図4(a)には、切削手段20が示されている。切削手段20は、上記したように、スピンドル22の先端に装着される円環状の切削ブレード21と、切削ブレード21を覆うブレードカバー23と、を備え、切削部位に切削水を供給する切削水供給手段24を備えている。切削ブレード21は、例えば、半径が2500μm、厚みが30μmである。本実施形態では、IDマークをこの切削ブレード21によって形成する。IDマークを形成する際の切削ブレード21の切り込み深さは、IDマークを形成する際の効率、及び視認性を考慮して、4μmの深さに設定されている。ここで、切削ブレード21の半径が上記したように2500μm、厚みが30μmであることから、
図4(b)の上段に示すように、切削ブレード21を回転させて4μmだけ切込み送りした場合、ウエーハ10上に形成される溝は、
図4(b)の下段に示すように、切込み長さが283(≒282.7)μm、切込み幅が30μmの直線(以下「短直線L1」という)となる。本実施形態のマーキング方法により形成されるマークは、上記した短直線L1と、以下に説明する切込み幅が30μmであって短直線L1よりも長い1000μmの長さの溝(以下「長直線L2」という)の組み合わせにより形成される。
【0032】
上記した位置特定工程において、IDマークの文字、及び数字を構成する直線(溝)が形成されるX座標、Y座標が制御手段100によって特定され記憶されたならば、該X座標、Y座標に基づいて、X軸送り手段40、及びY軸送り手段50を作動して、チャックテーブル38、及び切削手段20の切削ブレード21を相対的に移動させる。より具体的には、チャックテーブル38を切削手段20の下方に位置付けると共に、切削ブレード21を、
図5(a)に示すノッチ側外周余剰領域10e内に指定された領域Pであって、「T」の上端を構成する直線P11を形成する位置の端部の上方に位置付ける。次いで、切削手段20を作動して切削ブレード21を回転させ、切削ブレード21の先端部近傍に向けて切削水供給手段24によって切削水を供給しながら、Z軸送り手段60を作動して、切削ブレード21を下降させて、ウエーハ10の表面10aから4μm切込み送りし、ウエーハ10を図中矢印Xで示すX軸方向に移動させて、ウエーハ10の表面10a上に、切込み長さが1000μmの長直線L2からなる直線P11を形成し、その後、切削ブレード21を上昇させる。なお、切込み長さが1000μmの長直線L2を形成する方法はこれに限定されず、例えば、X軸方向において、4本の短直線L1を、その一部が重なるように4回に分けて形成する切削加工を実施して、1000μmの直線P11を形成するようにしてもよい。
【0033】
上記したように、直線P11を形成したならば、次いで、X軸送り手段40を作動して、ウエーハ10を図中矢印Xで示す方向に移動し、「1」の上端を構成する直線P12が形成される位置に切削ブレード21を位置付ける。次いで。Z軸送り手段60を作動して、切削ブレード21を下降させて4μm切込み送りし、283μmの長さの溝である短直線L1を形成する。これにより、直線P12が形成される。これに続き、切削手段20、X軸送り手段40、及びZ軸送り手段60を作動して、短直線L1、長直線L2の溝を適宜形成することにより、「7」の上端を構成する直線P13、「5」の上端を構成する直線P14、「4」の上端を構成する直線P15、「3」の上端を構成する直線P16を形成する。最後のIDマークの「3」を構成する直線P16を形成したならば、Y軸送り手段50を作動して、ウエーハ10を矢印Yで示すY軸方向に97μm移動し、さらにX軸送り手段40を作動して、切削ブレード21を、「T」を構成する直線P17を形成する位置の上方に位置づける。次いで、Z軸送り手段60を作動して切削ブレード21を下降して切り込み送りし、X軸送り手段40を作動して、切込み長さが1000μmの直線P17を形成する。これに続き、上記と同様にしてX軸方向に並ぶ直線P18~P22を形成する。
【0034】
図5(a)に示すように、直線P11~P22をウエーハ10の領域Pに形成したならば、さらに、X軸送り手段40、Y軸送り手段50を作動して、切削ブレード21の位置をX軸方向、Y軸方向に移動しながら、Z軸送り手段60を作動してIDマークを構成する直線を、切削ブレード21によってX軸方向に沿って形成する。そして、途中、
図5(b)の状態を経て、
図5(c)に示すように、マーク情報登録工程によって登録されたIDマーク(「T175-43」)が、ウエーハ10の表面10aのノッチ側外周余剰領域10eにマーキングされる。以上によりマーキング工程が完了し、本実施形態のマーキング方法が完了する。
【0035】
図6に、
図5(c)に示す領域P0に形成されたIDマークの一部を拡大して示す。図に示すように、IDマークは、短直線L1と、短直線L1より長い任意の長さに設定される長直線L2と、を組み合わせることによりウエーハ10上にマーキングされる。また、本実施形態では、溝の切込み幅を30μm、溝の間隔を67μmに設定し、Y軸方向において11本の溝によりIDマークを形成している。これにより、IDマークを形成する際の1つの文字、記号は、
図6に示すように、1000μm四方の領域に収まるようにしている。なお、IDマークを形成する際の切込み深さ、及びY軸方向の直線の間隔は、ウエーハ10の材質、切削ブレード21の半径、及び切削ブレードの厚みに応じ、視認性を考慮して適宜調整されるものであり、上記した数値に限定されるものではない。
【0036】
上記したマーキング方法を実施し、
図7(a)に示すようにウエーハ10にIDマークをマーキングしたならば、ウエーハ10の表面10aに対して周知の成膜工程、フォトレジスト工程、配線工程等を実施することにより、
図7(b)に示すように、ウエーハ10の表面10aのデバイス形成領域10cに複数のデバイス14が分割予定ライン16によって区画され形成される。
【0037】
本実施形態のマーキング方法を実施することにより、切削ブレード21によってIDマークがウエーハ10にマーキングされることから、レーザー加工によってウエーハ10に加工溝を形成してマーキングを施す場合に形成される加工溝の両側の盛り上がりが形成されず、デバイス14を形成する過程で実施される成膜工程において膜剥がれが生じるという問題が解消する。また、レーザー加工によって生じるデブリが飛散せず、デバイスが形成される面が汚染されたり、レーザー加工溝に残ったデブリが後工程で環境を汚染したりする等の問題が解消する。
【0038】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、マーキング工程において、ウエーハ10に対してIDマーク「T175-43」をマーキングしたが、本発明はこれに限定されず、ウエーハ10の品名、品番、ロットナンバー、製造元の企業名等をマーキングしてもよい。また、上記した実施形態では、マーキングをウエーハ10の表面10aのノッチ側外周余剰領域10eに実施したが、ノッチ側外周余剰領域10e以外の領域に形成するようにしてもよい。さらに、ウエーハ10の裏面10b側にマーキングを実施してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1:切削装置
1A:基台
1B:門型フレーム
2:表示手段
4:操作パネル
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
10c:デバイス形成領域
10d:外周余剰領域
10e:ノッチ側外周余剰領域
12:結晶方位マーク
14:デバイス
16:分割予定ライン
20:切削手段
20A:スピンドルハウジング
21:切削ブレード
22:スピンドル
24:切削水供給手段
28:撮像手段
30:保持手段
32:X軸可動板
38:チャックテーブル
40:X軸送り手段
42:パルスモータ
50:Y軸送り手段
56:Y軸移動基台
58:パルスモータ
60:Z軸送り手段
62:Z軸移動基台
64:パルスモータ
100:制御手段