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特許7482701ジフルオロメチレン化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ジフルオロメチレン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 31/42 20060101AFI20240507BHJP
   C07C 29/64 20060101ALI20240507BHJP
   C07C 41/54 20060101ALI20240507BHJP
   C07C 43/317 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C07C31/42 CSP
C07C29/64
C07C41/54
C07C43/317
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020112289
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011265
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 智子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敏仁
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145175(JP,A)
【文献】米国特許第2889358(US,A)
【文献】Sofya I. SCHERBININA et al.,Synthesis of 3-Fluoropyridines via Photoredox-Mediated Coupling of α,α-Difluoro-β-iodoketones with Silyl Enol Ethers,The Journal of Organic Chemistry,2017年11月30日,Vol. 82, No. 24,p.12967-12974
【文献】Oleg V. FEDOROV et al.,Halogenative Difluorohomologation of Ketones,The Journal of Organic Chemistry,2015年05月18日,Vol. 80, No,11,p.5870-5876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 31/42
C07C 43/317
C07C 29/64
C07C 41/54
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含フッ素化合物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキルもしくはアラルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)
【請求項2】
一般式(1)におけるRが水素原子である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項3】
一般式(1)におけるXがヨウ素原子である、請求項1または請求項2に記載の含フッ素化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される含フッ素化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で示されるビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランとを、活性化剤存在下で反応させた後、水の存在下でハロゲンと反応させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキルもしくはアラルキル基である。)
【請求項5】
活性化剤がヨウ化物塩又はフッ化物塩である、請求項4に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項6】
活性化剤がヨウ化ナトリウムである、請求項4に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジフルオロメチレン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフルオロメチレン化合物は、医農薬や機能性材料の合成中間体として有用である。ジフルオロメチレン部位を有する化合物は、例えば抗アルツハイマー薬や抗生物質等の生理活性物質として知られている。また、ジフルオロメチレン部位はエーテル部位と構造等価体と考えられており、医農薬や材料開発において、既存化合物のエーテル部位をジフルオロメチレン部位に変換することにより、生理活性や化合物の安定性の向上、活性選択性の改質、材料の改質等が見込まれる。
【0003】
従来技術として、特許文献1及び非特許文献1には、分子内にエステル部位と、ハロメチル部位を有する2官能性ジフルオロメチレン化合物が開示されている。また特許文献2には、分子内に複数の置換基とハロメチル部位を有するジフルオロメチレン化合物が開示されている。
しかし、分子内に種々の官能基変換が可能なアルデヒド水和物またはヘミアセタール部位と、ハロメチル部位の両方を有し、取り扱い容易な多官能性ジフルオロメチレン化合物は知られていなかった。
【0004】
特許文献3、特許文献4、非特許文献2~非特許文献4には、種々の2官能性ジフルオロメチレン化合物の製造方法が開示されているが、上記のようなアルデヒド水和物またはヘミアセタール部位と、ハロメチル部位の両方を有するジフルオロメチレン化合物の製造方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-55261号公報
【文献】特開2018-145175号公報
【文献】特開2014-12642号公報
【文献】特開2014-12643号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Org.Biomol.Chem., 2011年,第9巻,5493-5502
【文献】J.Org.Chem., 2015年,第80巻,5870-5876
【文献】J.Org.Chem., 2016年,第81巻,6707-6713
【文献】J.Org.Chem., 2019年,第84巻,5440-5449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の背景技術に鑑み、新たな多官能性ジフルオロメチレン化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、ビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランを、ヨウ化ナトリウム等の活性化剤存在下で反応させた後、水の存在下でハロゲンと反応させることにより、新規なジフルオロメチレン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に記載の発明に係る。
[1] 下記一般式(1)で示される含フッ素化合物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキルもしくはアラルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)
[2] 一般式(1)におけるRが水素原子である、[1]に記載の含フッ素化合物。
[3] 一般式(1)におけるXがヨウ素原子である、[1]又は[2]に記載の含フッ素化合物。
[4] [1]に記載の一般式(1)で示される含フッ素化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で示されるビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランとを、活性化剤存在下で反応させた後、水の存在下でハロゲンと反応させる、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法を提供するものである。
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキルもしくはアラルキル基である。)
[5] 活性化剤がヨウ化物塩又はフッ化物塩である、[4]に記載の含フッ素化合物の製造方法。
[6] 活性化剤がヨウ化ナトリウムである、[4]に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、新規な多官能性ジフルオロメチレン化合物を得ることが可能となって、新たな含フッ素化合物群を提供でき、産業上有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で示される含フッ素化合物において、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキルもしくはアラルキル基である。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソ-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ベンジル基等が挙げられる。中でもRが水素原子である場合、カルボニル基等価体であるハイドレート部位を有し、種々の官能基変換が可能である観点から好ましい。
【0012】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素化合物において、Xはハロゲン原子である。具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、中でも反応性の観点からヨウ素原子が好ましい。
【0013】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素化合物は、一般式(2)で示されるビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランとを、活性化剤存在下で反応させた後、水の存在下でハロゲンと反応させることによって得られる。
【0014】
本発明で用いられる一般式(2)で示されるビニルエーテル類において、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキルもしくはアラルキル基である。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソ-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ベンジル基等が挙げられる。入手性、取り扱いの観点から、Rはエチル基、n-プロピル基、n-ブチル基であることが好ましい。
【0015】
本発明による含フッ素化合物の製造において、反応に用いられるトリメチル(トリフルオロメチル)シランの量は、反応に具するビニルエーテル類に対して、好ましくは1当量~5当量、さらに好ましくは1.5当量~4当量、特に好ましくは2当量~3当量である。
【0016】
本発明による含フッ素化合物の製造において、反応に用いられる活性化剤は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化物塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物塩等が挙げられる。中でも、反応性及び入手容易性の観点から、ヨウ化物塩、特にヨウ化ナトリウムが好ましい。
本発明による含フッ素化合物の製造において、反応に用いられる活性化剤の量は、反応に具するビニルエーテル類に対して、好ましくは0.01当量~2当量、より好ましくは0.05当量~1当量、特に好ましくは0.1当量~0.5当量である。
【0017】
本発明による含フッ素化合物の製造において、ビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランを、活性化剤存在下で反応させる工程に適用可能な溶媒としては、含フッ素化合物の製造に係る反応に不活性なものであれば特に限定はされないが、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられ、特にテトラヒドロフランが好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。溶媒は反応に具するビニルエーテル類に対して、好ましくは2重量倍量~500重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~200重量倍量使用する。
【0018】
本発明による含フッ素化合物の製造において、ビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランを、活性化剤存在下で反応させる工程の反応温度は、0℃~100℃の範囲で、好ましくは室温~60℃の範囲である。
本発明による含フッ素化合物の製造において、ビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランを、活性化剤存在下で反応させる工程の反応時間は、30分~48時間の範囲で、好ましくは1時間~4時間の範囲である。
【0019】
本発明による含フッ素化合物の製造において、水の存在下でハロゲンと反応させる工程は、ビニルエーテル類とトリメチル(トリフルオロメチル)シランを、活性化剤存在下で反応させる工程により得られた反応液に、そのまま水とハロゲンを加えることにより実施してもよい。また、前記反応液を減圧濃縮したのち、水とハロゲンを加えることにより実施してもよい。
【0020】
本発明による含フッ素化合物の製造において、反応に用いられる水の量は、反応に具するビニルエーテル類に対して、好ましくは2重量倍量~500重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~200重量倍量である。
【0021】
本発明による含フッ素化合物の製造において、反応に用いられるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、中でも反応性及び取り扱いの観点からヨウ素が好ましい。
本発明による含フッ素化合物の製造において、反応に用いられるハロゲンの量は、反応に具するビニルエーテル類に対して、好ましくは1当量~5当量、さらに好ましくは1.5当量~4当量、特に好ましくは2当量~3当量である。
【0022】
本発明による含フッ素化合物の製造において、水の存在下でハロゲンと反応させる工程の反応温度は、0℃~100℃の範囲で、好ましくは室温~60℃の範囲である。
本発明による含フッ素化合物の製造において、水の存在下でハロゲンと反応させる工程の反応時間は、30分~48時間の範囲で、好ましくは1時間~4時間の範囲である。
【0023】
本発明は、下記の式に示すように、ビニルエーテル類(下記式ではエチルビニルエーテルを例示)と(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを、活性化剤(下記式ではヨウ化ナトリウムを例示)存在下で反応させて、例えばカッコ内に示すジフルオロシクロプロパンを得た後、水とヨウ素を加えることでヒドロキシ基及びハロゲン(下記式ではヨウ素原子を例示)が導入され、目的の化合物(下記式では2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒド(水和物)を例示)が得られる、という反応機構が推定される。但しこの反応機構の推定により本発明が限定されるものではない。
【0024】
【化3】
【0025】
本発明の一般式(1)で表される含フッ素化合物の精製方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、中和、溶媒抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、デカンテーション、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製し、目的物の一般式(1)で示される含フッ素化合物を得ることができる。
【0026】
さらに、本発明の一般式(1)で表される含フッ素化合物を用いて有用な化合物を製造できる。例えば、一般式(1)で表される含フッ素化合物とベンジルアルコール等の置換基を有するもしくは有しない芳香族や炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族アルコールとを反応させることで、2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒドベンジルヘミアセタール等のヘミアセタールその他の生成物を得ることができる。
【実施例
【0027】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
結果の解析に当たっては、H NMR、19F NMR及び13C NMRは日本電子株式会社製JNM-AL300、IRは日本分光株式会社(JASCO)製FT/IR-4100、融点測定はヤマト科学株式会社製融点測定器MP-21、元素分析はPerkin-Elmer社製CHNS/O Analyzer 2400、質量分析は日本電子株式会社製二重収束磁場型質量分析計JMS-700を使用した。
【0028】
実施例1 2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒド水和物(1)の合成
【化4】
耐圧反応管にアルゴンガスを吹き込み、ヨウ化ナトリウム0.2997g(2.00mmol)、テトラヒドロフラン10mL、エチルビニルエーテル(a)0.96mL(10.0mmol)、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン3.69mL(25.0mmol)を加え閉栓した。60℃で2時間撹拌後に反応容器を氷浴で冷却し、反応混合物に水15mLとヨウ素5.0757g(20.0mmol)を順に導入して閉栓した。60℃で2時間撹拌し、反応容器を室温まで冷却後、飽和重曹水35mLを加えて反応を停止させ、更にチオ硫酸ナトリウム飽和水溶液35mLの添加後、無色になるまで撹拌を継続した。有機層をジエチルエーテル(25mL×3)で抽出後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別後、濃縮で析出した固体をヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒(v/v=10/1)で洗浄し、この混合物を吸引ろ過することで、2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒド水和物(1) 1.3241g(5.57mmol)を白色個体として得た。収率は56%(モル換算、以下同じ)であった。
【0029】
得られた化合物の分析結果は次の通りであった。
H NMR(300MHz, DMSO-d):δ(ppm)6.80(d,J=6.3Hz,2H),4.92(quint,J=6.2Hz,1H),3.55(t,J=17.6Hz,2H).
13C NMR(75.45Hz,DMSO-d):δ(ppm)118.7(t,J=245.0Hz),87.2(t,J=31.9Hz),2.8(t,J=26.7Hz).
19F NMR(282Hz, CDCl):δ(ppm)-110.3(td,J=15.8,4.8Hz)
IR (KBr):3272,3032,2969,1416,1195,1083,1034,1008cm-1
HRMS(FAB+,m/z):[M+H] 計算値CIO:238.9380,実測値:238.9399.
【0030】
本発明の化合物(1)は、固体であるため取り扱いが容易であり、官能基変換が可能なハイドレート部位とハロメチル部位を有するため、医農薬及び機能性材料の合成中間体として有用である。
【0031】
実施例2 2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒド水和物(1)の合成
【化5】
試験管にブチルビニルエーテル(a)4.0g(40mmol)、テトラヒドロフラン 40mL、ヨウ化ナトリウム 2.0g(8.0mmol)を加え、80℃の水浴中で攪拌を行い、トリメチル(トリフルオロメチル)シラン7.7mL(52mmol)をシリンジで1分以上かけて滴下した。そのままの温度で1時間反応を継続し、その後室温まで放冷した。続いて反応混液をナスフラスコに移し、水40mLとヨウ素 15.2g(60mmol)を加え、60℃に加温して1時間撹拌を行った。反応終了後、室温まで放冷した後にフラスコに亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、テトラヒドロフランを減圧留去した後、再度60℃加温して30分間撹拌を行った。その後室温に戻し、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、ジエチルエーテル100mLで3回抽出を行い、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層をろ過後、溶媒を減圧留去し、得られた固体をヘキサンで洗浄しながら濾別し、2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒド水和物(1)6.7g(28.5mmol)を白色固体として得た。収率は71%であった。
【0032】
実施例3 2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒドブチルヘミアセタール(2)の合成
【化6】
200mL三つ口ナスフラスコにヨウ化ナトリウム0.5996g(4.0mmol)、テトラヒドロフラン20mL、ブチルビニルエーテル2.0031g(20mmol)を加え、撹拌しながら60℃に加温した。(トリフルオロメチル)トリメチルシラン7.41mL(50mmol)をゆっくり滴下した。4時間還流し、その後室温まで放冷した。そこへ水10mL、およびヨウ素7.6139g(30mmol)を加え、さらに3時間還流した。反応終了後、室温まで放冷した後に、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えた。テトラヒドロフランを減圧留去した後、ヘキサン20mLで4回抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過して減圧濃縮することで2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒドブチルヘミアセタール(2)3.8g(12.8mmol)を淡黄色油状物として得た。収率は64%であった。
【0033】
得られた化合物の分析結果は次の通りであった。
H NMR(300MHz, CDCl):δ(ppm)4.88(m,1H),3.87(dt,J=9.3,6.6Hz,1H),3.56(dt,J=9.6,6.6 Hz,1H),3.51(t,J=16.8Hz,2H),2.69(brd,J=8.4Hz,1H),1.59(m,2H),1.39(sext,J=7.2Hz,2H),0.94(t,J=7.2Hz,3H).
13C NMR(75.45Hz,CDCl):δ(ppm)117.2(t,J=246.2Hz),93.8(t,J=29.7Hz),68.8,31.4,19.1,13.7,0.07(t,J=27.9Hz).
19F NMR(282Hz, CDCl):δ(ppm)-108.55(dddd,J=248.7,18.3,13.6,4.5Hz,1F),-114.00(ddt,J=248.7,18.3,9.0Hz,1F)
IR(neat):3384,2959,2934,2874,1417,1214,1094,1019cm-1
HRMS(FAB-,m/z):[M-H] 計算値C12I:292.9850,実測値:292.9842.
【0034】
実施例4 2,2-ジフルオロ-3-ヨードプロピオンアルデヒドベンジルヘミアセタール(3)の合成
【化7】
化合物(1)0.1193g(0.5mmol)とベンジルアルコール0.0538g(0.5mmol)、テトラヒドロフラン2mLを耐圧反応管に加え、80℃で12時間加熱した。減圧下溶媒を留去し、生成物0.1399g(0.426mmol)を無色油状物として得た。収率は85%であった。
【0035】
得られた化合物の分析結果は次の通りであった。
H NMR(300MHz, CDCl):δ(ppm)7.37(m,5H),4.95(ddd,J=10.5,8.1,4.1Hz,1H),4.67(d,J=11.7Hz,1H)3,51(m,2H),2.82(dd,J=10.5,1.8Hz,1H).
13C NMR(75.45Hz,CDCl):δ(ppm)136.2,128.5,128.2,128.1,117.1(t,J=245.6Hz),92.7(dd,J=34.1,28.5Hz,70.1,0.01(t,J=27.9Hz.
19F NMR(282Hz, CDCl):δ(ppm)-108.18(dddd,J=248.7,19.4,13.7,4.5Hz,1F),-113.77(ddt,J=248.4,20.5,7.9Hz,1F)
IR(neat):3399,3034,2934,2884,1455,1416,1214,1092,1024,741,699cm-1
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、新規な多官能性ジフルオロメチレン化合物の製造が可能となった。このようなジフルオロメチレン化合物は医農薬及び機能性材料の合成中間体として有用である。