IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニューフレアテクノロジーの特許一覧

<>
  • 特許-荷電粒子ビーム照射装置 図1
  • 特許-荷電粒子ビーム照射装置 図2
  • 特許-荷電粒子ビーム照射装置 図3
  • 特許-荷電粒子ビーム照射装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240507BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240507BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20240507BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
G03F7/20 504
H01J37/16
H01J37/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020193563
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082165
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】岸 和宏
(72)【発明者】
【氏名】川口 通広
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-019708(JP,A)
【文献】特開2001-284219(JP,A)
【文献】特開2004-237262(JP,A)
【文献】特開2010-056390(JP,A)
【文献】特開2015-211119(JP,A)
【文献】特表2020-503557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01J 37/00-37/36
G03F 7/20-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に荷電粒子ビームを照射する光学系が内部に配置された光学鏡筒と、
上部に前記光学鏡筒が配置され、下部に開口が設けられ、内部に前記試料が収容される真空容器と、
前記開口を塞ぐように前記真空容器の下部に取り付けられ、前記試料が載置されるステージが取り付けられる内蓋と、
前記内蓋の外側において前記開口を塞ぐように前記真空容器の下部に取り付けられる外蓋と、を有し、
前記外蓋の平面積は、前記内蓋の平面積よりも大きいことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記内蓋が前記真空容器の下部に取り付けられる際に前記開口を通して前記真空容器内に収容されることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項3】
前記光学鏡筒の中心軸は、前記真空容器の気圧変形中心上に位置することを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項4】
前記真空容器および前記外蓋は、2×10-6 K以下の線膨張係数を有する材料によって形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項5】
前記ステージの平面積は、前記内蓋の平面積よりも小さく
記開口の内周面は、前記外蓋が下方から当接した状態で取り付けられる取付面を有するように段差状に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項6】
前記内蓋は、前記開口の上端の内周縁部に下方から当接した状態で取り付けられることで、前記真空容器の下部内に取り付けられることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料室内のステージに載置された試料に荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射装置においては、試料室を構成する真空容器が大気圧変動の影響によって微小に変形することで、ステージの位置精度が劣化することがあった。ステージの位置精度が劣化することで、試料への荷電粒子ビームの照射精度が低下してしまっていた。
【0003】
このようなステージの位置精度の劣化を抑制するため、試料室を内側容器と外側容器との二重密閉容器構造に形成し、内側容器と外側容器との間の空間を一定の圧力に保持する荷電粒子ビーム照射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-17394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した二重密閉容器構造を有する荷電粒子ビーム照射装置では、装置が複雑化してしまい、また、内側容器および外側容器を開閉する機構を試料室の外側に設けなければならないため、装置が大型化してメンテナンス性が低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、装置の複雑化および大型化を抑制しつつ大気圧変動による荷電粒子ビームの照射精度の低下を抑えることができる荷電粒子ビーム照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である荷電粒子ビーム照射装置は、試料に荷電粒子ビームを照射する光学系が内部に配置された光学鏡筒と、上部に光学鏡筒が配置され、下部に開口が設けられ、内部に試料が収容される真空容器と、開口を塞ぐように真空容器の下部に取り付けられ、試料が載置されるステージが取り付けられる内蓋と、内蓋の外側において開口を塞ぐように真空容器の下部に取り付けられる外蓋と、を有する。
【0008】
上述の荷電粒子ビーム照射装置において、ステージは、内蓋が真空容器の下部に取り付けられる際に開口を通して真空容器内に収容されてもよい。
【0009】
上述の荷電粒子ビーム照射装置において、光学鏡筒の中心軸は、試料室の気圧変形中心上に位置していてもよい。
【0010】
上述の荷電粒子ビーム照射装置において、真空容器および外蓋は、室温で2×10-6 K以下の線膨張係数を有する材料によって形成されていてもよい。
【0011】
上述の荷電粒子ビーム照射装置において、ステージの平面積は、内蓋の平面積よりも小さく、外蓋の平面積は、内蓋の平面積よりも大きく、開口の内周面は、外蓋が当接した状態で取り付けられる取付面を有するように段差状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の複雑化および大型化を抑制しつつ大気圧変動による荷電粒子ビームの照射精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置の一例を示す図である。
図2】本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置において、試料の収容工程および内蓋の取り付け工程を示す図である。
図3】本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置において、外蓋の取り付け工程を示す図である。
図4】本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。実施形態は、本発明を限定するものではない。また、実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置の一例を示す図である。図1の荷電粒子ビーム照射装置1は、電子銃から出射された荷電粒子ビームを、光学系を介して試料に照射するように構成されている。例えば、試料は、フォトリソグラフィに用いられるマスクであり、荷電粒子ビームは、マスク上にパターンを描画する。
【0016】
図1に示すように、荷電粒子ビーム照射装置1は、光学鏡筒の一例である電子鏡筒2と、試料室3と、ステージ4とを備える。
【0017】
電子鏡筒2は、荷電粒子ビームを出射する電子銃および電子銃から出射された荷電粒子ビームを試料5に照射する光学系が内部に配置されている。光学系は、例えば、各種の偏向器やアパーチャ部材などである。
【0018】
試料室3は、内部に試料5が収容される中空の構造体である。試料室3は、真空容器31と、内蓋32と、外蓋33とを有する。
【0019】
真空容器31は、上部に電子鏡筒2が固定され、下部に開口31aが設けられ、内部に試料5が収容される容器である。真空容器31は、試料5に荷電粒子ビームが照射される際に真空に保持される。真空容器31は、図示しない真空ポンプによって排気されることで真空状態に保持される。真空容器31は、例えば立方体状または直方体状である。真空容器31は、円柱状であってもよい。真空容器31の下部には、真空容器31すなわち荷電粒子ビーム照射装置1を所定の固定面(床面)上に固定する固定具が設けられていてもよい。
【0020】
内蓋32は、開口31aを塞ぐように真空容器31の下部に取り付けられる。なお、図1に示される例において、開口31aの上端は、内蓋32の平面積(すなわち平面視したときの内蓋32の面積)よりも開口面積が小さく形成されている。これにより、内蓋32は、開口31aの上端の内周縁部31bに下方から当接し、この内周縁部31bにおいて真空容器31の下部に取り付けられている。このような真空容器31の下部への内蓋32の取り付けは、例えば、図1に示すように、ネジ等の固定部材34によって内周縁部31bに内蓋32を固定することで行ってもよい。これにより、簡易な構成によって真空容器31の下部に内蓋32を取り付けることができる。
【0021】
内蓋32上には、試料5が載置されるステージ4が取り付けられる。ただし、ステージ4は、試料5上への荷電粒子ビームの照射位置を変更するために、内蓋32上において所定の方向(例えば、X方向、Y方向、θ方向)に移動することができる。ステージ4の平面積は内蓋32の平面積や開口31aの上端の平面積よりも小さく、平面の形としてはすっぽり中に入る形となっている。ステージ4は、内蓋32が真空容器31の下部に取り付けられる際に開口31aを通して試料室3内に収容される。これにより、内蓋32上にステージ4を容易に取り付けることができ、かつ、内蓋32を真空容器31の下部に取り付けるときに、開口31aを通してステージ4を開口31aや内周縁部31bに当てることなく試料室3内に収容することができる。なお、図1に示される例において、ステージ4の平面積は電子鏡筒2の断面積よりも大きい。
【0022】
外蓋33は、内蓋32の外側(真空容器31の容器としての外側)すなわち下側において開口31aを塞ぐように真空容器31の下部に取り付けられている。外蓋33の平面積は内蓋32の平面積よりも大きい。開口31aの内周面は、外蓋33が下方から当接した状態で取り付けられる水平な取付面31cを有するように、段差状に形成されている。取付面31cへの外蓋33の取り付けは、例えば、図1に示すように、ネジ等の固定部材35によって取付面31cに外蓋33を固定することで行ってもよい。これにより、簡易な構成によって真空容器31の下部に外蓋33を取り付けることができる。
【0023】
外蓋33は、内蓋32に対して上下方向に間隔を開けて配置される。外蓋33と内蓋32との間隔は、大気圧変動によって外蓋33が変形したときに、変形した外蓋33が内蓋32に突き当たらない程度の間隔であることが好ましい。内蓋32が大気圧に晒されることによって内蓋32が大気圧変動の影響を受けないようにするため、内蓋32と外蓋33との間の空間は、図示しない真空ポンプによって排気されて真空状態に保持される。内蓋32と外蓋33との間の空間の真空状態は、真空容器31内(すなわち真空容器31と内蓋32で閉じられた空間)の真空状態よりも低真空(高圧)であってもよい。あるいは、真空容器31内と、内蓋32と外蓋33との間の空間とを連通するように内蓋32に貫通孔を設け、真空容器31内および内蓋32と外蓋33との間の空間を共通の真空ポンプで排気してもよい。
【0024】
このように、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置1は、試料室3が、内蓋32および外蓋33による二重蓋構造を有する。二重蓋構造を有することで、装置の複雑化および大型化を抑制しつつ大気圧変動による荷電粒子ビームの照射精度の低下を抑えることができる。
【0025】
なお、真空容器31および外蓋33は、室温で2×10-6 K以下の線膨張係数を有する材料によって形成されていてもよい。これにより、温度変化にともなう真空容器31および外蓋33の変形を抑制することができる。
【0026】
また、外蓋33は、真空容器31を真空密閉する密閉構造を有していてもよい。密閉構造は、例えば、O-リングやシール材であってもよい。これにより、真空容器31の密閉性をより有効に確保して大気圧変動による荷電粒子ビームの照射精度の低下をより効果的に抑えることができる。
【0027】
また、電子鏡筒2の中心軸は、真空容器31の気圧変形中心上に位置していてもよい。気圧変形中心とは、真空容器31のうち大気圧変動によるたわみ(すなわち、変形量)が最大となる点である。例えば、気圧変形中心は、真空容器31における電子鏡筒2の取付面(すなわち、真空容器31の上面)のうち、大気圧変動によるたわみが最大となる点であってもよい。また、真空容器31が立方体、直方体または円柱などの単純形状の場合、気圧変形中心は、真空容器31の重心であってもよい。電子鏡筒2の中心軸が真空容器31の気圧変形中心上に位置することで、電子鏡筒2を試料室3の気圧変形が小さい位置に配置することができる。これにより、試料室3の気圧変形にともなう電子鏡筒2の倒れを防止することができる。
【0028】
図2は、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置1において、試料5の収容工程および内蓋32の取り付け工程を示す図である。以上のように構成された荷電粒子ビーム照射装置1を使用する際には、図2に示すように、内蓋32上にステージ4を取り付け、かつ、ステージ4上に試料5を載置した後に、真空容器31の開口31aを通して内蓋32を真空容器31の下部に取り付ける。このとき、開口31aを通して内蓋32上のステージ4を開口31aや内周縁部31bに当てることなく真空容器31内に収容することができる。
【0029】
図3は、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置1において、外蓋33の取り付け工程を示す図である。真空容器31の下部に内蓋32を取り付けた後、図3に示すように、内蓋32の外側(下側)の開口31a内に設けられた取付面31cに外蓋33を下方から当接させ、取付面31cに外蓋33を取り付ける。
【0030】
このようにして、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置1は、真空容器31を開閉するための大型で複雑な機構を要することなく、真空容器31の下部内に収まるような内蓋32および外蓋33からなる簡易かつコンパクトな二重蓋構造によって試料室3内に試料5を密閉状態に収容することができる。
【0031】
図4は、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置1の作用を示す図である。また、図4に示すように、本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置1は、大気圧変動が生じた場合に、真空容器31および外蓋33は変形するが、内蓋32は殆ど変形しない。これは、外蓋33が大気圧に晒されるのに対して、内蓋32は真空内に位置して大気圧に晒されないためである。このように、大気圧変動にともなう内蓋32の変形を抑えることができるので、内蓋32上に取り付けられたステージ4の位置精度の低下を抑制することができる。ステージ4の位置精度の低下が抑制されることで、大気圧変動による荷電粒子ビームの照射精度の低下を抑えることができる。
【0032】
以上述べたように、本実施形態によれば、試料室3が内蓋32および外蓋33による二重蓋構造を有することで、装置の複雑化および大型化を抑制しつつ大気圧変動による荷電粒子ビームの照射精度の低下を抑えることができる。
【0033】
上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 荷電粒子ビーム照射装置
2 電子鏡筒
3 試料室
31 真空容器
31a 開口
32 内蓋
33 外蓋
5 試料
図1
図2
図3
図4