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特許7483021マルチ電子ビームシステム用のマイクロスティグマトールアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】マルチ電子ビームシステム用のマイクロスティグマトールアレイ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/153 20060101AFI20240507BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01J37/153 B
H01J37/28 B
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022547677
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021016271
(87)【国際公開番号】W WO2021158576
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】16/782,273
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン シンロン
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ クリストファー
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-252207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0145087(US,A1)
【文献】特表2019-526912(JP,A)
【文献】国際公開第2018/160688(WO,A1)
【文献】特表2001-513254(JP,A)
【文献】特開2019-200983(JP,A)
【文献】国際公開第2019/211072(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/068666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源と、
前記電子源から1つ以上の一次電子ビームを受け取るとともに前記1つ以上の一次電子ビームを複数の一次電子ビームレットに分割するように構成されたマイクロレンズアレイ(MLA)と、
複数の12極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ(MSA)であって、前記複数の一次電子ビームレットの4次フォーカス収差または6次フォーカス収差の少なくとも一方を除去するように構成されているマイクロスティグマトールアレイと、
前記複数の一次電子ビームレットを受け取るとともに前記複数の一次電子ビームレットを試料の表面に集束するように構成された投射光学部品と
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記マイクロスティグマトールアレイ(MSA)が、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された複数の12極静電スティグマトールであって、前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールが12枚の導電板を含む、複数の12極静電スティグマトールと、
前記絶縁基板上に配置され、前記複数の12極静電スティグマトールを1つ以上の電圧源に複数の接続ピンを介して電気的に結合するように構成されている複数の電圧接続線であって、前記1つ以上の電圧源が、1つ以上のフォーカス電圧を前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールに印加するように構成されている、複数の電圧接続線と
を備えるシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールが、単一の電圧接続線を用いて前記1つ以上の電圧源に結合されているシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、1つ以上のプロセッサおよびメモリを含むコントローラをさらに備え、前記1つ以上のプロセッサが、前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールに印加される前記1つ以上のフォーカス電圧を調整するように構成されているシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記1つ以上のプロセッサが、前記複数の一次電子ビームレットのそれぞれの一次電子ビームレットの8極電界および12極電界を選択的に除去するために、前記1つ以上のフォーカス電圧を選択的に調整するようにさらに構成されているシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムであって、前記1つ以上のプロセッサが、ウェハ面の前記複数の一次電子ビームレットのそれぞれの一次電子ビームレットの位置を個別に調整するために、前記1つ以上のフォーカス電圧を調整するようにさらに構成されているシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記電子源から前記一次電子ビームを受け取るとともに前記一次電子ビームを前記マイクロレンズアレイ(MLA)へ誘導するように構成されたビーム制限アパーチャ(BLA)をさらに備えるシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記投射光学部品が伝送レンズおよび対物レンズを含むシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記電子源が熱電界放出(TFE)源を含む請求項1記載のシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、
前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールの第1の導電板、第3の導電板、第5の導電板、第7の導電板、第9の導電板、および第11の導電板に第1のフォーカス電圧が印加されるシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、第2の導電板、第4の導電板、第6の導電板、第8の導電板、第10の導電板、および第12の導電板に第2のフォーカス電圧が印加されるシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記第2のフォーカス電圧がゼロボルト(0V)を含むシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、
前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールが12枚の導電板を含み、
前記12枚の導電板の各導電板同士がギャップ角度δで分離されており、
第1の導電板、第4の導電板、第7の導電板、および第10の導電板が、板角度2αによって画定され、
第2の導電板、第3の導電板、第5の導電板、第6の導電板、第8の導電板、第9の導電板、第11の導電板、および第12の導電板が、β=45°-α-(3δ/2)である板角度βによって画定されるシステム。
【請求項14】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された複数の静電スティグマトールであって、複数の一次電子ビームレットを受け取るとともに前記複数の一次電子ビームレットの4次フォーカス収差または6次フォーカス収差の少なくとも一方を除去するように構成された複数の静電スティグマトールと、
前記絶縁基板上に配置され、前記複数の静電スティグマトールを1つ以上の電圧源に複数の接続ピンを介して電気的に結合するように構成されている複数の電圧接続線であって、前記1つ以上の電圧源が、1つ以上のフォーカス電圧を前記複数の静電スティグマトールのそれぞれの静電スティグマトールに印加するように構成されている、複数の電圧接続線と
を備えるマイクロスティグマトールアレイ(MSA)。
【請求項15】
請求項14に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の一次電子ビームレットのそれぞれの一次電子ビームレットの8極電界および12極電界を選択的に除去するように構成されているマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項16】
請求項14に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の静電スティグマトールが複数の12極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項17】
請求項16に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、
前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールが12枚の導電板を含み、
前記12枚の導電板の各導電板同士がギャップ角度δで分離されており、
第1の導電板、第4の導電板、第7の導電板、および第10の導電板が、板角度2αによって画定され、
第2の導電板、第3の導電板、第5の導電板、第6の導電板、第8の導電板、第9の導電板、第11の導電板、および第12の導電板が、β=45°-α-(3δ/2)である板角度βによって画定されるマイクロスティグマトールアレイ
【請求項18】
請求項16に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の12極静電スティグマトールのそれぞれの12極静電スティグマトールの第1の導電板、第3の導電板、第5の導電板、第7の導電板、第9の導電板、および第11の導電板に第1のフォーカス電圧が印加されるマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項19】
請求項18に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、第2の導電板、第4の導電板、第6の導電板、第8の導電板、第10の導電板、および第12の導電板に第2のフォーカス電圧が印加されるマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記第2のフォーカス電圧がゼロボルト(0V)を含むマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項21】
請求項14に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の静電スティグマトールが、複数の完全正方形4極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項22】
請求項14に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の静電スティグマトールが複数の長方形4極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項23】
請求項14に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の静電スティグマトールが、4枚の導電板を含む複数の4極静電スティグマトールを備え、各導電板が、それぞれの4極静電スティグマトールの光軸に向かって内側に延びる双曲線状の突出部を含むマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項24】
請求項14に記載のマイクロスティグマトールアレイであって、前記複数の静電スティグマトールのそれぞれの静電スティグマトールが、単一の電圧接続線を用いて前記1つ以上の電圧源に結合されているマイクロスティグマトールアレイ。
【請求項25】
半径Rで環状に配置された12枚の導電板を備える12極静電スティグマトールであって、前記12枚の導電板が、第1の導電板、第2の導電板、第3の導電板、第4の導電板、第5の導電板、第6の導電板、第7の導電板、第8の導電板、第9の導電板、第10の導電板、第11の導電板、および第12の導電板を含み、
前記第1の導電板、前記第3の導電板、前記第5の導電板、前記第7の導電板、前記第9の導電板および前記第11の導電板には、一次電子ビームレットの4次フォーカス収差または6次フォーカス収差の少なくとも一方を除去するために、第1のフォーカス電圧が印加される12極静電スティグマトール。
【請求項26】
請求項25に記載の12極静電スティグマトールであって、前記第2の導電板、前記第4の導電板、前記第6の導電板、前記第8の導電板、前記第10の導電板、および前記第12の導電板に第2のフォーカス電圧が印加される12極静電スティグマトール。
【請求項27】
請求項26に記載の12極静電スティグマトールであって、前記第2のフォーカス電圧が0Vを含む12極静電スティグマトール。
【請求項28】
請求項25に記載の12極静電スティグマトールであって、絶縁基板をさらに備え、前記12枚の導電板が前記絶縁基板上に配置される12極静電スティグマトール。
【請求項29】
請求項25に記載の12極静電スティグマトールであって、12枚の導電板の各導電板同士がギャップ角度δで分離されており、
第1の導電板、第4の導電板、第7の導電板、および第10の導電板が、板角度2αによって画定され、
第2の導電板、第3の導電板、第5の導電板、第6の導電板、第8の導電板、第9の導電板、第11の導電板、および第12の導電板が、β=45°-α-(3δ/2)である板角度βによって画定される12極静電スティグマトール。
【請求項30】
請求項25に記載の12極静電スティグマトールであって、前記第1の導電板、前記第3の導電板、前記第5の導電板、前記第7の導電板、前記第9の導電板、および前記第11の導電板を1つ以上の電圧源に電気的に結合するように構成された1つ以上の電圧接続線をさらに備える12極静電スティグマトール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電子ビームシステムに関し、より詳細には、マルチ電子ビームシステム用のマイクロスティグマトールアレイ(MSA)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム検査システムでは、一次電子ビームを複数の一次電子ビームレットに分割するために、しばしばマイクロレンズアレイ(MLA)を利用する。マルチ電子ビームシステムの視野(FOV)が大きい故に、また各マイクロレンズの機械的公差の故に、各電子ビームレット内の非点収差は避けられない。FOVが大きければ大きいほど、非点収差も大きくなる。このフォーカス収差(たとえば、4次フォーカス収差、6次フォーカス収差)は、効率的な検査の実施を可能にするために、補正および/または除去されなければならない。マイクロスティグマトールアレイ(MSA)は、マルチ電子ビームシステム内の非点収差を補正および/または除去するためにMLAに組み込まれてきた技術の1つである。従来のマルチ電子ビームシステムでは、各電子ビームレット内の収差を除去するために、4極静電スティグマトールを利用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2003-0209676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の4極静電スティグマトールでは、4次および/または6次のフォーカス収差を完全に除去することができず、その結果、強い8極(4次)静電界および12極(6次)静電界が発生する。したがって、上記で明らかにされた以前の手法の欠点の1つ以上を取り除くシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つのシステムが開示される。諸実施形態において、このシステムは、電子源と、この電子源から1つ以上の一次電子ビームを受け取るとともにその1つ以上の一次電子ビームを複数の一次電子ビームレットに分割するように構成されたマイクロレンズアレイ(MLA)とを含む。諸実施形態において、システムは、複数の12極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ(MSA)をさらに含み、このMSAは、複数の一次電子ビームレットの4次フォーカス収差または6次フォーカス収差の少なくとも一方を除去するように構成されている。諸実施形態において、システムは、複数の一次電子ビームレットを受け取るとともにその複数の一次電子ビームレットを試料の表面に集束するように構成された投射光学部品をさらに含む。
【0006】
マイクロスティグマトールアレイ(MSA)が開示される。諸実施形態において、MSAは、絶縁基板と、この絶縁基板上に配置された複数の静電スティグマトールとを含む。複数の静電スティグマトールは、複数の一次電子ビームレットを受け取るとともに複数の一次電子ビームレットの4次フォーカス収差または6次フォーカス収差の少なくとも一方を除去するように構成することができる。諸実施形態において、MSAは、絶縁基板上に配置され複数の静電スティグマトールを1つ以上の電圧源に複数の接続ピンを介して電気的に結合するように構成されている複数の電圧接続線をさらに含み、1つ以上の電圧源は、1つ以上のフォーカス電圧を複数の静電スティグマトールのそれぞれの静電スティグマトールに印加するように構成されている。
【0007】
12極静電スティグマトールが開示される。諸実施形態において、12極静電スティグマトールは、半径Rで環状に配置された12枚の導電板を含み、この12枚の導電板は、第1の導電板、第2の導電板、第3の導電板、第4の導電板、第5の導電板、第6の導電板、第7の導電板、第8の導電板、第9の導電板、第10の導電板、第11の導電板、および第12の導電板を含む。諸実施形態において、第1の導電板、第3の導電板、第5の導電板、第7の導電板、第9の導電板および第11の導電板には、一次電子ビームレットの4次フォーカス収差または6次フォーカス収差の少なくとも一方を除去するために、第1のフォーカス電圧が印加される。
【0008】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明は、例示的および説明的なものにすぎず、請求項に記載の本発明を必ずしも制限するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明の実施形態を図示し、一般的な記述とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0009】
本開示の多数の利点は、添付の図を参照することによって当業者にはよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】双極性4極静電スティグマトールを示す図である。
図2】単極性4極静電スティグマトールを示す図である。
図3】本開示の1つ以上の実施形態による、マルチ電子ビーム装置を示す図である。
図4】本開示の1つ以上の実施形態による、マイクロスティグマトールアレイ(MSA)の12極静電スティグマトールを示す図である。
図5】本開示の1つ以上の実施形態による、6次フォーカス収差に対する12極静電スティグマトールの板角度(α)の関係を示すグラフである。
図6】本開示の1つ以上の実施形態による、マイクロアパーチャアレイ(MAA)の簡略図である。
図7】本開示の1つ以上の実施形態による、複数のマイクロレンズを含むマイクロスティグマトールアレイ(MSA)マイクロレンズアレイ(MLA)の第1の層の簡略図である。
図8A】本開示の1つ以上の実施形態による、12極静電スティグマトールの第1の層の簡略立面図である。
図8B】本開示の1つ以上の実施形態による、12極静電スティグマトールの簡略断面図である。
図8C】本開示の1つ以上の実施形態による、12極静電スティグマトールの絶縁体層の簡略立面図である。
図9A】本開示の1つ以上の実施形態による、複数の12極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ(MSA)の第1の層の簡略図である。
図9B】本開示の1つ以上の実施形態による、複数の12極静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ(MSA)の絶縁体層の簡略図である。
図10A】本開示の1つ以上の実施形態による、第1の向きの第1のマイクロスティグマトールアレイ(MSA)の簡略図である。
図10B】本開示の1つ以上の実施形態による、第2の向きの第2のマイクロスティグマトールアレイ(MSA)の簡略図である。
図11】本開示の1つ以上の実施形態による、マイクロスティグマトールアレイ(MSA)の完全正方形4極静電スティグマトールを示す図である。
図12】本開示の1つ以上の実施形態による、双曲線状の突出部付き導電板を含む4極静電スティグマトールを示す図である。
図13】本開示の1つ以上の実施形態による、光学特性評価システムの簡略概略図である。
図14図14は、本開示の1つ以上の実施形態による、マルチレンズアレイを使用する検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、特定の実施形態およびその特定の特徴に関して特に図示され説明されている。本明細書に記載された実施形態は、限定的ではなく例示的なものと解釈される。形状および細部の様々な変更および修正が、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく加えられ得ることは、当業者には直ちに明らかになるはずである。
【0012】
次に、添付の図面に示されている、開示された主題を詳細に参照する。
【0013】
本開示の実施形態は、4次と6次の両方のフォーカス収差を除去するように構成された12極静電スティグマトールを対象とする。本開示の追加の実施形態は、複数の12極静電スティグマトールを含むマルチスティグマトールアレイ(MSA)が含まれる、マルチ電子ビーム装置を対象とする。本開示のさらなる実施形態は、複数の静電スティグマトールを含むマイクロスティグマトールアレイ(MSA)を対象とする。
【0014】
本明細書で先に述べたように、電子ビーム検査システムではしばしば、一次電子ビームを複数の一次電子ビームレットに分割するために、数百のマイクロレンズを含むマイクロレンズアレイ(MLA)を利用する。各電子ビームレットのサイズは数十マイクロメートルのオーダであり、ビームレットは通常、数十マイクロメートルのオーダの間隔で分離されている。マルチ電子ビームシステムの視野(FOV)が大きいこと(たとえば、約250μm)、および各マイクロレンズの機械的公差のために、各電子ビームレット内の非点収差は避けられない。FOVが大きければ大きいほど、非点収差も大きくなる。このフォーカス収差(たとえば、4次フォーカス収差、6次フォーカス収差)は、効率的な検査を実施できるようにするために補正および/または除去されなければならない。
【0015】
マイクロスティグマトールアレイ(MSA)は、マルチ電子ビームシステム内の非点収差を補正および/または除去するためにMLAに組み込まれてきた技術の1つである。従来のマルチ電子ビームシステムでは、各電子ビームレット内の収差を除去するために、4極静電スティグマトールを利用してきた。この4極静電スティグマトールは、4極孔径を呈示する、環状配置の4枚の導電板を含む。しかし、従来の4極静電スティグマトールでは、4次および/または6次のフォーカス収差を完全に除去することができず、そのため、強い8極(4次)および12極(6次)の静電界が発生する。この静電界発生は、電子ビームレットのサイズが、それぞれの4極静電スティグマトールの孔径とほぼ同等のサイズ(たとえば、孔径の50~75%以内)を呈示することに一部起因している。
【0016】
従来の静電スティグマトールは、4極静電スティグマトールを含む様々な形をとっている。これらの静電スティグマトールについては、図1~2を参照してさらに理解することができる。
【0017】
図1は、双極性4極静電スティグマトール102を示す。本明細書では、本開示の付随的な利点と比較できる従来の4極静電スティグマトール102(図1~2に示す)についての簡単な議論が基本的な理解をもたらす、ということが企図されている。
【0018】
4極静電スティグマトール102は、非点収差を補正するために使用される従来のスティグマトールの一例として提示されている。特に、4極静電スティグマトール102は、機械的要素の位置合わせ不良、楕円製作、電子偏向、または投影画像形成に起因してフォーカス電子ビーム装置または成形電子ビーム装置に発生し得る、非点収差の補正に使用することができる。図1に示すように、従来の4極静電スティグマトール102は、4枚の導電板(たとえば、第1の導電板104a、第2の導電板104b、第3の導電板104c、および第4の導電板104d)を含み得る。
【0019】
4極静電スティグマトール102は、第1の方向に沿って(たとえば、Y軸に沿って)電子フォーカス力を生成するために、第2の導電板104bおよび第4の導電板104dに電圧を印加するように構成することができる。逆に、4極静電スティグマトール102は、第2の方向に沿って(たとえば、x軸に沿って)電子デフォーカス力を生成するために、第1の導電板104aおよび第3の導電板104cに電圧を印加するように構成することができる。この関連で、4極静電スティグマトール102は、それぞれ異なる導電板104a~104dに印加される電圧(たとえば、±1V)を選択的に調整することによって、電子ビーム装置の結像面での非点収差ぼけを補正するように構成することができる。
【0020】
実際には、電子ビーム装置内の非点収差を修正するには、図1に示された4極静電スティグマトール102が2つ別個に、45°の回転角度で光学z軸に沿って配置される必要があり得る。たとえば、第1の4極静電スティグマトール102は、図1に図示されるように光学z軸に沿って配置することができる。また第2の4極静電スティグマトール102は、光学z軸に沿って配置することができるが、この第2の4極静電スティグマトール102は、第1の4極静電スティグマトール102に対して45°回転している。
【0021】
4極静電スティグマトール102の導電板104a~104dは、2Rが4極静電スティグマトール102の直径(孔径)の特徴になるように、半径Rで環状に配置することができ、このRは数十マイクロメートルのオーダであり得る。実際には、マルチ電子ビーム装置の各電子ビームレットには、収差補正のために個別の4極静電スティグマトール102が必要になるはずである。
【0022】
図1に示すように、第1の導電板104aおよび第3の導電板104cは第1の電圧(+1V)を呈示することができるのに対し、第2の導電板104bおよび第4の導電板104dは第2の電圧(-1V)を呈示することができる。別個のフォーカス/デフォーカス電圧を電圧源からそれぞれ異なる導電板104a~104dに供給するために、4極静電スティグマトール102には、2つの別個の電圧接続線、すなわち、第1および第3の導電板104a、104cの+1V用の1つと、第2および第4導電板104b、104dの-1V用の第2のものとが必要になるはずである。しかし、数百の電子ビームレットを持つマルチ電子ビーム装置では、4極静電スティグマトール102ごとに(たとえばビームレットごとに)2つの別個の電圧接続線を必要とするために、製作工程が複雑になり、不必要な費用が加わり、また生産速度が低下する。
【0023】
それぞれの4極静電スティグマトール102に必要な電圧接続線の数を減らすために、いくつかの従来のマルチ電子ビーム装置では、1電源4極を利用していた。たとえば、図2は、単極性4極静電スティグマトール静電スティグマトール102を示す。2つの別個のフォーカス/デフォーカス電圧(±1V)を利用した図1の双極性4極静電スティグマトール102とは対照的に、図2の単極性4極静電スティグマトール102では、単一のデフォーカス電圧(+1V)のみを第1および第3の導電板104a、104cに利用する。
【0024】
その結果、図2の4極静電スティグマトール102は、第1および第3の導電板104a、104cを電圧源に結合するただ1つの電圧接続線を必要とするだけになる。第2および第4の導電板104b、104dは接地される。この構成により、必要な電圧接続線の数は減少するが、図2の4極静電スティグマトール102のフォーカス/デフォーカス感度は、図1の4極静電スティグマトール102の半分になる。したがって、図2の4極静電スティグマトール102は、一部のマルチ電子ビーム装置には依然として適していない。
【0025】
図2の4極静電スティグマトール102の電位分布を数学的に導き出すことが役に立つことを証明することができる。φ(r,θ)が、図2の4極静電スティグマトール102のr≦Rにおける静電電位分布を定義するとする。φ(r,θ)をフーリエ級数に展開すると、式1が得られる。
【数1】
ここで、A、A、Bは、境界条件φ(R,θ)によって定義されたフーリエ係数を定義している。
【0026】
式1は、図2に示された4極静電スティグマトール102の孔内(たとえば、r≦R)の静電電位分布を定義するラプラス方程式の明白な解である。式1のフーリエ係数A、A、Bは、それぞれ式2、式3、式4で定義することができる。
【数2】
【0027】
電圧Vが4極静電スティグマトール102内で印加されている状態での(r,θ)についての対称的関係は、式5および式6によって定義することができる。
φ(r,θ)=φ(-r,θ) (5)
φ(r,θ)=φ(r,-θ) (6)
【0028】
式5および式6の対称的条件を満たす場合、式1を簡略化して式7を得ることができる。
【数3】
ここで、Aは、式8によって定義することができる。
【数4】
【0029】
式8のCの項は、境界によって定義される定数であり、式9によって定義することができる。
【数5】
ここで、eは電子の電荷を定義している。
【0030】
したがって、電力(V)が(たとえば、図2のx軸に沿って)印加される方向の静電気力(F)は、式10によって定義することができる。
【数6】
ここで、Fは4極電界力、Fは8極電界力、Fは12極電界力を定義し、それぞれ式11、式12、式13によって定義することができる。
【数7】
【0031】
式11で記述された静電4極電界力は、電子光学装置の非点収差が完全に補正/除去されている理想的な4極電界力を表し得る。しかし、式12および式13で記述された静電8極電界力および静電12極電界力は、4次および6次のフォーカス/デフォーカス収差を発生させる高次静電界を表している。
【0032】
従来の単電子ビーム装置では、電子ビームのサイズ(2r、ミリメートル未満のオーダ)は、図1~2に示された4極静電スティグマトール102の内径(孔径)(2R、数十ミリメートルのオーダ)と比べて相対的に小さい。たとえば、従来の単電子ビーム装置では、rとRの比は一般に、0.1よりはるかに小さい(たとえば、
【数8】
)。電子ビームと4極静電スティグマトール102の孔径との間でサイズが大きく異なるので、式12および式13に記述された8極電界力および12極電界力は通常、従来の単一電子ビーム装置に関しては、画像形成解像度の著しい劣化をもたらさない。
【0033】
しかし、同じことは、従来のマルチ電子ビーム装置では言えない。数百のビームレットを持つ従来のマルチ電子ビーム装置では、4極静電スティグマトール102の内径(孔径)(2R)は、数十マイクロメートルのオーダである。電子源放出ビーム電流(BC)の利用率(n=BC%)を最大化するには(たとえば、
【数9】
)、電子ビームレット径(2r)が、それぞれの4極静電スティグマトール102の内径(2R)の50%よりも大きい必要がある(たとえば、
【数10】
)。このような場合、式12および式13で記述された静電8極電界力および静電12極電界力は、顕著な高次収差(たとえば、4次フォーカス収差、6次フォーカス収差)を発生させる。
【0034】
したがって、本開示の実施形態は、式12および式13で記述された4次および6次のフォーカス収差を除去するように構成される静電スティグマトールを対象とする。高次のフォーカス収差を除去し、ビーム電流の高い利用率(n=BC%)を維持するには、8極電界係数および12極電界係数(A、A)が低減または除去されなければならない。加えて、および/または別法として、CとCの統合を行えば、理論的には、4次および6次のフォーカス収差も除去するはずである。本開示の付随的な利点については、図3図14に関連してさらに図示し説明することができる。
【0035】
図3は、本開示の1つ以上の実施形態による、マルチ電子ビーム装置300を示す。マルチ電子ビーム装置300は、電子源302、電子銃レンズ304、マイクロアパーチャアレイ306(たとえば、MAA 306)、ビーム制限アパーチャ307(たとえば、BLA 307)、マイクロレンズアレイ308(たとえば、MLA 308)、マイクロスティグマトールアレイ310(たとえば、MSA 310)、伝送レンズ314、および対物レンズ316をこれらだけには限らないが含み得る。
【0036】
1つの実施形態では、電子源302は、ソース電子ビーム301を放出するように構成される。電子源302には、熱電界放出(TFE)源をそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意のタイプの電子銃または電子エミッタが含まれ得る。別の実施形態では、BLA307は、ソース電子ビーム301から一次電子ビーム303を選択するように構成することができ、銃レンズ304は、一次電子ビーム303を加速および/または集束するように構成することができる。銃レンズ304は、一次電子ビーム303をMAA 306に向けるようにさらに構成することができる。
【0037】
別の実施形態では、一次電子ビーム303は、MAA 306を通してマイクロレンズアレイ308(たとえば、MLA 308)へ向けられる。諸実施形態において、MLA 308は、一次電子ビームを受け取るとともにその一次電子ビーム303を複数の電子ビームレット305に分割するように構成される。 たとえば、MLA 308は、一次電子ビーム303を数百の一次電子ビームレット305に分割するように構成することができる。MLA 308はさらに、一次電子ビームレット305をクロスオーバ面312で集束するように構成することができる。この関連で、クロスオーバ面312は、MLA 308/MSA 310の像面とみなすことができる。いくつかの実施形態では、本明細書でさらに詳細に論じられるように、MLA 308は、一体化されたマイクロスティグマトールアレイ310(MSA 310)を含み得る。1つの実施形態では、MSA 310は、一次電子ビームレット305から高次収差を除去するように構成された複数の静電スティグマトールを含み得る。
【0038】
次いで、伝送レンズ314および対物レンズ316は、複数の一次電子ビームレット305を受け取るとともにその複数の一次電子ビームレット305をウェハ面に集束するように構成することができる。電子源302からクロスオーバ面までの光学構成要素(たとえば、電子源302、電子銃レンズ304、BLA 307、MAA 306、MLA 308、MSA 310など)は、マルチ電子ビーム装置300の「照射光学部品」とみなすことができる。逆に、伝送レンズ314および対物レンズ316は、マルチ電子ビーム装置300の「投射光学部品」とみなすことができる。MLA 308/MSA 310の像面として機能することに加えて、本明細書では、クロスオーバ面312は、投射光学部品(たとえば、伝送レンズ314および対物レンズ316)の物体面とみなせることに留意されたい。
【0039】
別の実施形態では、対物レンズ316は、一次電子ビームレット305をウェハ面318へと集束し、向けるように構成される。この関連で、ウェハ面318は、投射光学部品(たとえば、伝送レンズ314、対物レンズ316など)の像面とみなすことができる。投射光学部品は、一次電子ビームレット305をウェハ面318に、規定された光学縮小率で投射するように構成することができる。1つの実施形態では、ウェハ面318は、投射光学部品が一次電子ビームレット305を試料の表面に向け集束すべく構成されるように、試料の表面に合致することができる。
【0040】
別の実施形態では、MLA 308/MSA 310は、一次電子ビームレット305のそれぞれをウェハ面318で同時に、かつ独立して走査するように構成することができる。ウェハ面318の一次電子ビームレット305は、検査、点検、画像による計測などをこれらだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意の特性評価プロセスに使用することができる。
【0041】
本明細書で先に述べたように、いくつかの実施形態では、MLA 308は、一体化されたマイクロスティグマトールアレイ310(たとえば、MSA 310)を含み得る。1つの実施形態では、MSA 310は、4次フォーカス収差および/または6次フォーカス収差を除去するように構成された数百のマイクロ静電スティグマトールを含み得る。たとえば、MSA 310は、複数の12極静電スティグマトールを含むことができ、この12極静電スティグマトールについては、図4に関連してさらに図示し説明することができる。
【0042】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態による、マイクロスティグマトールアレイ310(MSA 310)をなす12極静電スティグマトール320を示す。
【0043】
いくつかの実施形態では、12極静電スティグマトール320は、12個の個別の導電板322(たとえば、第1の導電板322a、第2の導電板322b...、および第12の導電板322l)を含み得る。本明細書では、図4に示された12極静電スティグマトール320は、一次電子ビームレット305の4次および6次のフォーカス/デフォーカス収差を効果的かつ効率的に除去できることが企図されている。この関連で、本明細書ではさらに、複数の12極静電スティグマトール320a~320nを含むMSA 310を利用して、マルチ電子ビーム装置300内のフォーカス収差を除去できることが企図されている。
【0044】
諸実施形態において、12極静電スティグマトール320は、2つの別個のフォーカス電圧で動作させることができる。たとえば、図4に示すように、第1の導電板322a、第3の導電板322c、第5の導電板322e、第7の導電板322g、第9の導電板322i、および第11の導電板322kには、1Vの第1のフォーカス電圧を印加することができる。逆に、第2の導電板322b、第4の導電板322d、第6の導電板322f、第8の導電板322h、第10の導電板322j、および第12の導電板322lには、0Vの第2のフォーカス電圧を印加することができる。フォーカス電圧を呈示しない導電板322は(たとえば、フォーカス電圧が0V)、「接地された」導電板とみなすことができる。諸実施形態において、フォーカス電圧は、一次電子ビームレット305内の高次フォーカス/デフォーカス収差を選択的に低減および/または除去するために、選択的に調整することができる。
【0045】
2つの別個の電圧接続線および2つの電圧源を必要とする図1に示された双極性4極静電スティグマトール102と比較して、それぞれの12極静電スティグマトール320は、ただ1つの電圧接続線およびただ1つの電圧源を必要とするだけである。電圧源および電圧接続線の数が少ないので、12極静電スティグマトール320は、双極性4極静電スティグマトール102よりも空間的およびコスト的に多くの利点をもたらすことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、複数の導電板322a~322lは、半径Rで環状に配置することができる。諸実施形態において、導電板322の第1のセットは、板角度2αによって画定することができるのに対し、導電板322の第2のセットは、板角度βによって画定することができる。たとえば、第1、第4、第7、および第10の導電板322a、322d、322g、322jは、板角度2αによって画定することができる(たとえば、象限当たり板角度αによって画定される)。同様に、第2、第3、第5、第6、第8、第9、第11、および第12の導電板322b、322c、322e、322f、322h、322i、322k、322lは、板角度βによって画定することができる。諸実施形態において、12枚の導電板322の各導電板322a~322lは、図4に示すようにギャップ角度δで分離されている。
【0047】
12極静電スティグマトール320の板角度α、β、ギャップ角度δを適切に選択すると、8極電界および/または12極電界が低減および/または除去され、それによって、4次および/または6次のフォーカス収差を低減/除去できることが判明している。12極静電スティグマトール320の数学的解析が例証となることを証明することができる。
【0048】
12極静電スティグマトール320のr≦Rにおける静電電位分布(φ(r,θ))は、やはり上記の式7によって記述することができる。図4の境界φ(R,θ)が対称であるので、12極静電スティグマトール320に適用される式7のフーリエ級数係数Aは、式14で定義することができる。
【数11】
ここで、Ak1およびAk2はそれぞれ、式15および式16によって定義することができる。
【数12】
【0049】
本明細書では、k=4(たとえば、4次)のとき、フーリエ級数係数A4lはゼロに等しいことに留意されたい(たとえば、k=4のとき、A41=0)。逆に、k=6のときには、フーリエ級数係数A61は、式17で定義することができる。
61=V/3πR[sin6α+sin6(α+δ)-sin6(α+β+δ)] (17)
【0050】
さらに、k=4(たとえば4次)のとき、フーリエ級数係数A42は0に等しい(たとえば、k=4のとき、A42=0)。逆に、k=6のとき、フーリエ級数係数A62は、式18で定義することができる。
62=V/3πR[sin6α+sin6(α+δ)-sin6(α+β+δ)] (18)
【0051】
さらなる展開により、式19および式20を得ることができる。
=A41+A42=0+0=0 (19)
=A61+A62=2V/3πR[sin6α+sin6(α+δ)-sin6(α+β+δ)] (20)
【0052】
次に、図4のギャップ角度δの定義によって式21が続くことができる。
【数13】
【0053】
式20に式21を代入すると、式22が得られる。
【数14】
ここで、f(α)は、式23によって定義することができる。
f(α)=cos3δ+(1+cos6δ)sin6α+sin6δcos6α (23)
【0054】
式22および式23を検討すると、所与のギャップ角度δでは、f(α)が特定の板角度αでゼロであるために、フーリエ級数係数Aがゼロに等しくなり得ることが分かる。言い換えると、フーリエ級数係数A、したがって6次のフォーカス収差は、12極静電スティグマトール320の板角度αを慎重に選ぶことによって除去することができる。このことは、図5を参照してさらに理解することができる。
【0055】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態による、6次フォーカス収差に対する12極静電スティグマトール320の板角度(α)の関係を示すグラフ500を表している。
【0056】
曲線502~514は、様々なギャップ角度δ(たとえば、δ、δ、δ、δ、δ、δ)について、f(α)と板角度αの関係を示す。グラフ500に示すように、関数f(α)(したがってフーリエ級数係数A)をゼロに等しくする板角度αが1つだけ、20~35°の範囲内にそれぞれのギャップ角度δごとに存在する。たとえば、第1の所与のギャップ角度δについて、関数f(α)をゼロに等しくすることによってフーリエ級数係数Aをゼロに等しくする20~35°の範囲内の板角度αが1つだけ存在する。別の例として、第2の所与のギャップ角度δについて、関数f(α)をゼロに等しくすることによってフーリエ級数係数Aをゼロに等しくする20~35°の範囲内の板角度αが1つだけ存在する。
【0057】
12極静電スティグマトール320の展開を続けることにより、また式21によって、板角度βは、式24によって選択することができる。
【数15】
【0058】
板角度βがゼロより大きいと仮定すると(たとえば、β>0)、ギャップ角度δは、式25によって得ることができる。
【数16】
【0059】
したがって、いくつかの実施形態では、また、一次電子ビームレット305の4次フォーカス収差および/または6次フォーカス収差を除去するために、12極静電スティグマトール320のそれぞれの板角度α、βおよびギャップ角度δは、式24および式25によって選択することができる。
【0060】
図6は、本開示の1つ以上の実施形態による、マルチ電子ビーム装置300のマイクロアパーチャアレイ306(MAA 306)の簡略図を示す。
【0061】
諸実施形態において、MAA 306は、アパーチャ膜332内に配置された複数のアパーチャ孔330a~330nを含み得る。複数のアパーチャ孔330a~330nは、当技術分野で知られている任意の配置また配列で構成することができる。たとえば、図6に示すように、複数のアパーチャ孔330a~330nは、アパーチャ膜332に六角形の形状で配列することができる。本明細書では、六角形の形状は、回転対称を得るのに最も近い形状を含み、いくつかの光学的な利点をもたらし得ることに留意されたい。
【0062】
本明細書ではさらに、MAA 306内のアパーチャ孔330a~330nの数は、マルチ電子ビーム装置300内で生成される一次電子ビームレット305の数を画定し得ることに留意されたい。たとえば、電子源302は、ソース電子ビーム301を生成するように構成することができ、BLA 307は一次電子ビーム303をMAA 306へ向けることができる。この場合、MAA 306に入射するソース電子ビーム301は、複数の一次電子ビームレット305に分割することができ、一次電子ビームレット305の数および構成は、アパーチャ孔330a~330nの数および構成によって少なくとも部分的に画定される。
【0063】
BLA 307は、図6で2Rとして示されている一次電子ビーム303の直径を選択的に調整するために、選択的に調整することができる。BLA 307のサイズは、一次電子ビーム303がMAA 306を十分に照射できるように(たとえば、それぞれのアパーチャ孔330a~330nを照射できるように)最適化することができる。加えて、BLA 307のサイズは、銃レンズ304、MLA 308、および電子間のクーロン相互作用によって発生する様々な光学的ぼけを低減および/または除去するように選択することができる。
【0064】
諸実施形態において、アパーチャ孔は2aの直径d(たとえば、d=2a)を呈示することができ、隣り合うアパーチャ孔330a~330n間のピッチは、ピッチpによって画定することができる。ピッチは、アパーチャ孔330a~330nのそれぞれの中心から測定することができる。
【0065】
図7は、本開示の1つ以上の実施形態による、複数のマイクロレンズ334a~334nを含むレンズアレイ308(MLA 308)の第1の層の簡略図を示す。
【0066】
諸実施形態において、MLA 308は、導電膜336内に配置された複数のマイクロレンズ334a~334nを含み得る。マイクロレンズ334a~334nには、マイクロアインツェルレンズをそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意のマイクロレンズが含まれ得る。諸実施形態において、マイクロレンズ334a~334nのそれぞれには、フォーカス電圧を印加することができる。1つの実施形態では、マイクロレンズ334a~334nのそれぞれに印加される電圧は、互いに独立して制御することができる。1つの実施形態では、印加電圧は、マイクロレンズ334a~334nそれぞれで等しくなるように設定することができる。
【0067】
導電膜336は、数十マイクロメートルの厚さのオーダとすることができる。複数のマイクロレンズ334a~334nは、当技術分野で知られている任意の配置また配列で構成することができる。いくつかの実施形態では、複数のマイクロレンズ334a~334nは、MAA 306のアパーチャ孔330a~330nの配列に実質的に合致または整合する配列の形で構成することができる。たとえば、図7に示すように、複数のマイクロレンズ334a~334nは、図6に示すように、アパーチャ孔330a~330nの六角形配列にマッピングする(たとえば、対応する)六角形配列で導電膜336に配置することができる。この関連で、複数のマイクロレンズ334a~334nは、アパーチャ孔330a~330nと直径/孔径(たとえば、d=2a)、ピッチp、および配列/配置が同じである円形状を呈示することができる。
【0068】
本明細書では、図7に図示されたマイクロレンズアレイ308は、1つの導電膜336のみを描いていることに留意されたい。しかし、本明細書ではさらに、MLA 308は、3つの別個の膜を、導電膜のそれぞれの間に数十マイクロメートルのオーダのギャップ付きで含み得ることに留意されたい。たとえば、MLA 308は、第1の導電膜336、1つ以上の絶縁層、1つ以上のフォーカス電極、および1つ以上の追加の導電膜を含み得る。この関連で、MLA 308は、単電位レンズ(たとえば、アインツェルレンズ)を含み得る。諸実施形態において、MLA 308の中間膜は、一次電子ビームレット305をクロスオーバ面312に結像させるためにグローバル電圧が印加される、フォーカス要素として使用することができる。逆に、2つの異なる電圧がMLA 308の2つの導電膜(たとえば、導電膜336)に印加される場合には、MLA 308は、加速MLAおよび/または減速MLAとして使用することができる。
【0069】
図8Aは、本開示の1つ以上の実施形態による、MSA 310の12極静電スティグマトール320の第1の層340の簡略立面図を示す。図8Bは、本開示の1つ以上の実施形態による、MSA 310の12極静電スティグマトール320の簡略断面図を示す。図8Cは、本開示の1つ以上の実施形態による、MSA 310の12極静電スティグマトール320の絶縁体層342の簡略立面図を示す。
【0070】
諸実施形態において、12極静電スティグマトール320は、第2の絶縁体層342に結合された第1の層340を含み得る。たとえば、図8Aに示すように、導電板322a~322lは、第1の層340の上に作製することができ、この第1の層340は、図8Bに示すように、絶縁体層342に結合されている。この点で、複数の導電板322a~322lは、絶縁体層342の上に配置および/または作製されると言うことができる。複数の導電板322a~322lは、微小電気機械システム(MEMS)製作技法をそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意の製作技法によって絶縁体層342の上に作製することができる。
【0071】
本明細書では、図8Bに示された12極静電スティグマトール320は、図4に示された12極静電スティグマトール320に対して90°回転していることに留意されたい。諸実施形態において、ゼロ電圧導電板322(たとえば、導電板322b、322d、322f、322h、322j、322l)は、接地板として互いに接続することができる。
【0072】
本明細書で先に述べたように、12極静電スティグマトール320およびMSA 310に必要とされる電圧接続線の数および電圧源の数を減らしたいという要望がある。したがって、いくつかの実施形態では、それぞれの12極静電スティグマトール320は、導電板322の少なくともいくつかを電圧源に少なくとも1つの電圧接続線346を介して電気的に結合するように構成されている複数の接続ピン344a~344fを含み得る。この点において、複数の導電板322は、接続ピン344a~344fおよび1つ以上の電圧接続線346を介して1つ以上の電圧源に電気的に結合することができる。たとえば、複数の電圧動作可能導電板322(たとえば、導電板322a、322c、322e、322g、322i、322k)は、複数の接続ピン344a~344fを介して単一の電圧接続線346に電気的に結合することができる。電圧接続線346は、導電板322a、322c、322e、322g、322i、322kのそれぞれを互いに電気的に結合するとともに、導電板322a、322c、322e、322g、322i、322kを電圧源に電気的に結合するように構成することができる。
【0073】
諸実施形態において、1つ以上の電圧源は、1つ以上のフォーカス電圧を、MSA 310の複数の12極静電スティグマトール320のうちのそれぞれの12極静電スティグマトール320に印加するように構成される。特に、1つ以上のプロセッサおよびメモリを含むコントローラを電圧源に結合することができ、このコントローラは、電圧源が、導電板322に印加されるフォーカス電圧を選択的に印加/調整するように構成することができる。たとえば、MSA 310の12極静電スティグマトール320に印加されるフォーカス電圧は、複数の一次電子ビームレット305の1つ以上の特性を選択的に調整するために、選択的に調整することができる。たとえば、MSA 310の12極静電スティグマトール320に印加されるフォーカス電圧は、複数の一次電子ビームレットのそれぞれの一次電子ビームレットの8極電界および12極電界を選択的に除去するように選択的に調整することができる。この関連で、フォーカス電圧は、4次フォーカス収差および/または6次フォーカス収差を除去するように選択的に調整することができる。別の例として、MSA 310の12極静電スティグマトール320に印加されるフォーカス電圧は、クロスオーバ面312および/またはウェハ面318のそれぞれの一次電子ビームレット305の位置を個別に調整するために、選択的に調整することができる。
【0074】
図9Aは、本開示の1つ以上の実施形態による、複数の12極静電スティグマトール320a~320nを含むマイクロスティグマトールアレイ310(MSA 310)の第1の層340の簡略図を示す。図9Bは、本開示の1つ以上の実施形態による、複数の12極静電スティグマトール320a~320nを含むMSA 310の絶縁体層342の簡略図である。
【0075】
諸実施形態において、MSA 310は、複数の12極静電スティグマトール320a~320nを含み得る。複数の12極静電スティグマトール320a~320nは、当技術分野で知られている任意の配置また配列で構成することができる。いくつかの実施形態では、複数の12極静電スティグマトール320a~320nは、MAA 306のアパーチャ孔330a~330nおよび/またはMLA 308の複数のマイクロレンズ334a~334nの配列に実質的に合致または整合する配列の形で構成することができる。たとえば、図9Aに示すように、複数の12極静電スティグマトール320a~320nは、図6~7に示すように、アパーチャ孔330a~330nおよび/またはマイクロレンズ334a~334nの六角形配列にマッピングする(たとえば、対応する)六角形配列で配置することができる。
【0076】
諸実施形態において、12極静電スティグマトール320a~320nのそれぞれの間のピッチは、数百マイクロメートルのオーダとすることができる。たとえば、12極静電スティグマトール320a~320nは、約100μmのピッチで互いに間隔をあけて配置することができる。図9Bに示すように、それぞれの12極静電スティグマトール320a~320nは、単一の電圧接続線346a~346nを介して個別にアドレス指定可能とすることができる(たとえば、電圧源に結合)。
【0077】
本明細書では、複数の一次電子ビームレット305中の非点収差ぼけは、楕円形のスポットによって特徴付けができることに留意されたい。一次電子ビームレット305ごとに、楕円形スポットの方向(たとえば、楕円形スポットの長軸または短軸)をランダムに変えることができる。それぞれの一次電子ビームレット305ごとにランダムな方向で非点収差を補正するために、マルチ電子ビーム装置300は、光軸に配置された2つの別個のMSA 310a、310bを含み、これら2つの別個のMSA 310a、310bは、互いに45°の回転角度で配置することができる。
【0078】
たとえば、図10Aは、第1の向きの第1のマイクロスティグマトールアレイ310a(MSA 310a)の簡略図を示し、図10Bは、第2の向きの第2のマイクロスティグマトールアレイ310b(MSA 310b)の簡略図を示す。第1のMSA 310aと第2のMSA 310bとを比較すると、第2のMSA 310bは、第1のMSA 310aに対して45°回転していることが分かる。諸実施形態において、第1のMSA 310aと第2のMSA 310bは、互いに結合することができる。加えて、第1のMSA 310aと第2のMSA 310bは、1つ以上の絶縁膜によって分離することができる。絶縁膜は、数十マイクロメートルのオーダの厚さを呈示することができる。
【0079】
照射ビーム電流(BC)の利用率の最大化は、マルチ電子ビームシステム(たとえば、マルチ電子ビーム装置300)の重要な一態様である。利用率nは、式26によって定義することができる。
【数17】
ここで、Nは一次電子ビームレット305の総数、aはアパーチャ孔330a~330nの半径、BLAはBLA 307の直径(たとえば、図6ではBLA=2R)である。
【0080】
たとえば、一次電子ビーム303(BLA 307によって選択される)は、それがMAA 306をテレセントリックに照射するようにMAA 306に向けられていると仮定する。この例では、一次電子ビーム303は、図6に示されたMAA 306の六角形配列によって配置された330本の一次電子ビームレット305(たとえば、N=331)に分割される。アパーチャ孔330a~330n間のピッチpは、MLA 308のマイクロレンズ334a~334nの内孔径が50μmであるのに必要であり得る100μmとすることができる。さらに、一次電子ビーム303のサイズ(たとえば、BLA 307の直径)が、図6に示すように、妥当な照射マージンを得るために角間のビームレット最大距離より10%大きいと仮定する(たとえば、BLA=(1+10%)×21×p=2310μm)。式26をこの例に適用すると、アパーチャ孔330a~330nのa=10μm、a=15μm、a=20μmの半径それぞれに対し、照射BC利用率はそれぞれn=2.5%、n=5.6%、およびn=10%となることが分かる。
【0081】
上記の例で分かるように、アパーチャ孔330a~330nの半径aは、BC利用率nに強く影響を及ぼし得る。しかし、光学的には、式12および式13それぞれで定義されている8極電界効果および12極電界効果により、アパーチャ孔330a~330nの半径aは、12極静電スティグマトール320の孔径Rと同様のサイズに設計することができない。従来技術のこれらの欠点に対処するために、本開示の12極静電スティグマトール320は、上記で定義されたこれらの限界を、板角度α、βおよびギャップ角度δを慎重に選択して8極電界および12極電界の項を取り除くことによって破る。実際に、本明細書では、本開示の実施形態によってBC利用率nの改善が可能になり、それによってマルチ電子ビーム装置300またはシステムのスループットを増加できることが企図されている。
【0082】
図11は、本開示の1つ以上の実施形態による、マイクロスティグマトールアレイ310(MSA 310)の完全正方形4極静電スティグマトール350を示す。
【0083】
本開示の追加および/または代替の実施形態は、1つ以上の完全正方形4極静電スティグマトール350を含むMSA 310を対象とする。完全正方形4極静電スティグマトール350は、第1の導電板352a、第2の導電板352b、第3の導電板352c、および第4の導電板352dを含み得る。 諸実施形態において、導電板352a~352dのそれぞれは、ギャップ354a~354dによって分離することができる。完全正方形4極静電スティグマトール350は、図11に示すように、双極性静電スティグマトール、または単極性静電スティグマトールを含み得る。
【0084】
円の形状(または実質的に円の形状)の内孔を含む12極静電スティグマトール320とは対照的に、完全正方形4極静電スティグマトール350は、正方形によって特徴付けられる内孔を含み得る。たとえば、図11に示すように、完全正方形4極静電スティグマトール350は、4つの辺がある内孔を含むことができ、対向する2辺が長さXであり、対向する2辺が長さYであり、ここでX=Yである。追加および/または代替の実施形態において、図11に示す4極静電スティグマトール350は、長方形形状の4極静電スティグマトール350を含むことができ、内孔は、X≠Yとなる長方形形状である。
【0085】
図11に示した完全正方形4極静電スティグマトール350だけでなく、長方形形状の4極静電スティグマトールも、8極電界と12極電界の両方を効果的に除去できることが判明している。この点において、本開示のMSA 310のいくつかの実施形態は、長方形形状および/または完全正方形の4極静電スティグマトール350を含み得る。したがって、12極4極静電スティグマトール320に関連するいかなる議論も、本明細書で特にことわらない限り、図11の4極静電スティグマトール350に当てはまるとみなすことができる。
【0086】
図12は、本開示の1つ以上の実施形態による、双曲線状の突出部366付き導電板362を含む4極静電スティグマトール360を示す。本明細書では、図11の長方形形状および/または完全正方形の4極静電スティグマトール350および/または12極静電スティグマトール320に関連するいかなる議論も、特にことわらない限り、図12の4極静電スティグマトール360に当てはまるとみなせることに留意されたい。
【0087】
本開示の追加および/または代替の実施形態は、双曲線状の突出部366を含む4極静電スティグマトール360を対象とする。諸実施形態において、4極静電スティグマトール360の1つ以上の導電板362a~362dは、双曲線状の突出部366を含み得る。双曲線状の突出部366は、導電板362a~362dから4極静電スティグマトール360の孔に向かって(たとえば、4極静電スティグマトール360の光軸に向かって)内側に延びるように構成することができる。諸実施形態において、双曲線状の突出部366a~366dは、4極静電スティグマトール360の孔の中心に向かって内側に約1μm延びることができる。4極静電スティグマトール360は、8極電界と12極電界の両方を効果的に最小化できることが判明している。
【0088】
図13は、本開示の1つ以上の実施形態による、光学特性評価システム1300の簡略概略図である。
【0089】
光学特性評価システム1300には、検査システム、レビューシステム、画像ベース計測システムなどをそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意の特性評価システムが含まれ得る。この点において、システム1300は、試料1307についての検査、点検、または画像による計測を実施するように構成することができる。光学特性評価システム1300には、マルチ電子ビーム装置300と、試料ステージ1312上に配置された試料1307と、検出器アセンブリ1314と、1つ以上のプロセッサ1320およびメモリ1322を含むコントローラ1318とが、それだけには限らないが含まれ得る。
【0090】
1つの実施形態では、システム1300の電子ビーム装置300は、一次電子ビームレット305を試料1307へ向けるように構成される。マルチ電子ビーム装置300は、電子光学カラムを形成することができる。別の実施形態では、マルチ電子ビーム装置300は、一次電子ビームレット305を試料1307の表面に集束および/または誘導するように構成された1つ以上の追加および/または代替の電子光学要素を含む。別の実施形態では、システム1300は、一次電子ビームレット305に応じて試料1307の表面から発せられた二次電子1305を集めるように構成された1つ以上の電子光学要素1310を含む。本明細書では、マルチ電子ビーム装置300の1つ以上の電子光学要素、および1つ以上の電子光学要素1310には、1つ以上の偏向器、1つ以上の電子光学レンズ、1つ以上のコンデンサレンズ(たとえば、磁気コンデンサレンズ)、1つ以上の対物レンズ(たとえば、磁気コンデンサレンズ)などをそれだけには限らないが含む、電子を誘導する、集束する、かつ/または集めるように構成された任意の電子光学要素が含まれ得ることに留意されたい。
【0091】
試料1307には、ウェハ、レチクル、フォトマスクなどをそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意の試料が含まれ得る。1つの実施形態では、試料1307は、試料1307を移動しやすくするために、ステージアセンブリ1312上に配置される。別の実施形態では、ステージアセンブリ1312は、駆動可能なステージである。たとえば、ステージアセンブリ1312は、試料1307を1つ以上の直線方向(たとえば、x方向、y方向および/またはz方向)に沿って選択的に並進させるのに適している1つ以上の並進ステージをそれだけには限らないが含み得る。別の例として、ステージアセンブリ1312は、試料1307を回転方向に沿って選択的に回転させるのに適している1つ以上の回転ステージをそれだけには限らないが含み得る。別の例として、ステージアセンブリ1312は、試料1307を直線方向に沿って選択的に並進させる、かつ/または回転方向に沿って試料1307を回転させるのに適している並進ステージおよび回転ステージをそれだけには限らないが含み得る。本明細書では、システム1300は、当技術分野で知られている任意の走査モードで動作できることに留意されたい。
【0092】
マルチ電子ビーム装置300および/またはシステム1300の電子光学アセンブリは、図13に示された、単に例示の目的で提示されている電子光学要素に限定されないことに留意されたい。システム1300は、一次電子ビームレット305を試料1307へ誘導/集束し、それに応じて、発せられた二次電子1305を検出器アセンブリ1314の上に集め、画像化するのに必要な、任意の数およびタイプの電子光学要素を含み得ることにさらに留意されたい。
【0093】
たとえば、システム1300は、1つ以上の電子ビーム走査要素(図示せず)を含み得る。たとえば、1つ以上の電子ビーム走査要素は、一次電子ビームレット305の位置を試料1307の表面に対して制御するのに適している1つ以上の電磁走査コイルまたは静電偏向器をそれだけには限らないが含み得る。さらに、1つ以上の走査要素は、試料1307を選択されたパターンで横切って一次電子ビームレット305を走査するのに利用することができる。
【0094】
別の実施形態では、二次電子1305は、検出器アセンブリ1314の1つ以上のセンサ1316まで偏向器317によって誘導される。偏向器317には、ウィーンフィルタをそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている、二次電子1305を誘導するための任意の光学要素が含まれ得る。システム1300の検出器アセンブリ1314は、試料1307の表面からの多数の二次電子1305を検出するのに適している、当技術分野で知られている任意の検出器アセンブリを含み得る。1つの実施形態では、検出器アセンブリ1314は、電子検出器アレイを含む。この関連で、検出器アセンブリ1314は、電子検出部からなるアレイを含み得る。さらに、検出器アセンブリ1314の検出器アレイの各電子検出部は、入射一次電子ビームレット305の1つに伴う試料1307からの電子信号を検出するように配置することができる。この関連で、検出器アセンブリ1314の各チャンネルは、マルチ電子ビーム装置300の特定の一次電子ビームレット305に対応することができる。検出器アセンブリ1314は、当技術分野で知られている任意のタイプの電子検出器を含み得る。たとえば、検出器アセンブリ1314は、マイクロチャンネルプレート(MCP)や、ダイオードアレイまたはアバランシェフォトダイオード(APD)などのPINまたはpn接合検出器アレイをそれだけには限らないが含み得る。別の例として、検出器アセンブリ1314は、高速シンチレータ/PMT検出器を含み得る。
【0095】
図13は、二次電子検出器アセンブリだけを有する検出器アセンブリ1314を含むものとしてシステム1300を示しているが、この図は、本開示を限定するものとみなされるものではない。この関連で、検出器アセンブリ1314は、二次電子検出器、後方散乱電子検出器、および/または一次電子検出器(たとえば、カラム内電子検出器)をそれだけには限らないが含み得ることに留意されたい。別の実施形態では、システム100は、複数の検出器アセンブリ1314を含み得る。たとえば、システム100は、二次電子検出器アセンブリ1314、後方散乱電子検出器アセンブリ1314、およびカラム内電子検出器アセンブリ1314を含み得る。
【0096】
別の実施形態では、検出器アセンブリ1314は、1つ以上のプロセッサ1320およびメモリ1322を含むコントローラ1318に通信可能に結合される。たとえば、1つ以上のプロセッサ1320は、メモリ1322に通信可能に結合することができ、この1つ以上のプロセッサ1320は、メモリ1322に記憶された一連のプログラム命令を実行するように構成されている。1つの実施形態では、1つ以上のプロセッサ1320は、検出器アセンブリ1314の出力を分析するように構成されている。1つの実施形態では、プログラム命令のセットは、1つ以上のプロセッサ1320が試料1307の1つ以上の特性を分析するように構成されている。別の実施形態では、プログラム命令のセットは、1つ以上のプロセッサ1320が、試料1307および/またはセンサ1316の上に焦点を維持するためにシステム1300の1つ以上の特性を修正するように構成されている。たとえば、1つ以上のプロセッサ1320は、マルチ電子ビーム装置300からの一次電子ビームレット305を試料1307の表面に集束するために、マルチ電子ビーム装置300、対物レンズ1306、または1つ以上の光学要素1302の、1つ以上の特性を調整するように構成することができる。別の例として、1つ以上のプロセッサ1320は、試料1307の表面から二次電子1305を集め、その集めた二次電子1305をセンサ1316上に集束するために、対物レンズ706および/または1つ以上の光学要素1310を調整するように構成することができる。別の例として、1つ以上のプロセッサ1320は、1つ以上の一次電子ビームレット305の位置または配列を独立して調整するために、マルチ電子ビーム装置300の1つ以上の静電偏向器に印加される1つ以上のフォーカス電圧を調整するように構成することができる。
【0097】
本明細書では、システム1300の1つ以上の構成要素は、当技術分野で知られている任意の方法で、システム1300の様々な他の構成要素と通信可能に結合できることに留意されたい。たとえば、1つ以上のプロセッサ1320は、有線接続(たとえば、銅線、光ファイバケーブルなど)または無線接続(たとえば、RF結合、IR結合)、データネットワーク通信(たとえば、WiFi、WiMax、Bluetoothなど)を介して互いに、および他の構成要素に、通信可能に結合することができる。別の例として、1つ以上のプロセッサは、マルチ電子ビーム装置300の1つ以上の構成要素(たとえば、電子源302、MLA 308、MSA 310など)、1つ以上の電圧源などに、通信可能に結合することができる。
【0098】
1つの実施形態では、1つ以上のプロセッサ1320は、当技術分野で知られている任意の1つ以上の処理要素を含み得る。この意味で、1つ以上のプロセッサ1320は、ソフトウェアアルゴリズムおよび/または命令を実行するように構成された任意のマイクロプロセッサタイプのデバイスを含み得る。1つの実施形態では、1つ以上のプロセッサ1320は、本開示全体を通して説明したように、システム1300を動作させるように構成されたプログラムを実行すべく構成されたデスクトップコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、画像コンピュータ、パラレルプロセッサ、または他のコンピュータシステム(たとえば、ネットワークコンピュータ)で構成することができる。本開示全体を通して説明されているステップは、単一のコンピュータシステムによって、または別法として、複数のコンピュータシステムによって実行できることを理解されたい。さらに、本開示全体を通して説明されているステップは、1つ以上のプロセッサ1320のうちの任意の1つ以上で実行できることを理解されたい。一般に、「プロセッサ」という用語は、メモリ1322からのプログラム命令を実行する1つ以上の処理要素を有する任意の装置を包含するように、広義に定義することができる。さらに、システム1300の様々なサブシステム(たとえば、マルチ電子ビーム装置300、MLA 308、MSA 310、検出器アセンブリ1314、コントローラ1318など)は、本開示全体を通して説明されているステップの少なくとも一部を実行するのに適したプロセッサまたは論理要素を含み得る。したがって、上記の説明は例示にすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0099】
メモリ1322は、関連する1つ以上のプロセッサ1320によって実行可能なプログラム命令を記憶するのに適している、当技術分野で知られている任意の記憶媒体を含み得る。たとえば、メモリ1322としては、非一時的なメモリ媒体を挙げることができる。たとえば、メモリ1322としては、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気または光メモリデバイス(たとえば、ディスク)、磁気テープ、ソリッドステートドライブなどをそれだけには限らないが挙げることができる。メモリ1322は、1つ以上のプロセッサ1320を一緒に収容する共通コントローラ内に収容できることに留意されたい。一代替実施形態では、メモリ1322は、プロセッサ1320、コントローラ1318などの物理的位置に対して遠隔に設置することができる。別の実施形態では、メモリ1322は、本開示によって説明した様々なステップを1つ以上のプロセッサ1320が実行するためのプログラム命令を保持する。
【0100】
図14は、本開示の1つ以上の実施形態による、マルチスティグマトールアレイ310(MSA 310)を使用する検査方法1400のフローチャートを示す。本明細書では、方法1400のステップは、システム1300および/またはマルチ電子ビーム装置300によって全部または部分的に実施できることに留意されたい。しかし、方法1400は、追加または代替のシステムレベルの実施形態で方法1400のステップの全部または一部を実行できるという点で、システム100および/またはマルチ電子ビーム装置300に限定されないことをさらに理解されたい。
【0101】
ステップ1402で、一次電子ビームを生成する。たとえば、電子源302が一次電子ビーム303を生成することができる。電子源302には、熱電界放出(TFE)源をそれだけには限らないが含む、当技術分野で知られている任意の電子源が含まれ得る。
【0102】
ステップ1404で、一次電子ビームを複数の一次電子ビームレットに分割する。たとえば、図3に示すように、MAA 306は、一次電子ビーム303を受け取るとともにその一次電子ビーム303を複数の一次電子ビームレット305に分割するように構成することができる。
【0103】
ステップ1406で、複数の一次電子ビームレットをマイクロレンズアレイ308(MLA 308)およびマイクロスティグマトールアレイ310(MSA 310)へ誘導する。諸実施形態において、MLA 308は、複数のマイクロレンズ334a~334nを含み得る。同様に、MSA 310は、複数の静電スティグマトールを含み得る。たとえば、MSA 310は、複数の12極静電スティグマトール320を含み得る。別の例として、MSA 310は、複数の完全正方形4極静電スティグマトール350、長方形形状の4極静電スティグマトール、および/または双曲線状の突出部付き4極静電スティグマトールを含み得る。
【0104】
ステップ1408で、複数の電子ビームレットから4次フォーカス収差および/または6次フォーカス収差をMSAによって除去する。たとえば、MSA 310のそれぞれの12極静電スティグマトール320は、単一の一次電子ビームレット305を受け取るとともにその一次電子ビームレット305から4次フォーカス収差および/または6次フォーカス収差を除去するように構成することができる。諸実施形態において、コントローラは、フォーカス収差を低減および/または除去するために、1つ以上の電圧源が、MSA 310の静電スティグマトールに印加されるフォーカス電圧を選択的に調整するように構成することができる。
【0105】
ステップ1410で、複数の一次電子ビームレットをウェハ面へ誘導する。たとえば、マルチ電子ビーム装置300の投射光学部品は、一次電子ビームレット305をウェハ面318へ誘導するように構成することができる。投射光学部品は、伝送レンズ314および対物レンズ316をそれだけには限らないが含み得る。諸実施形態において、複数の電子ビームレット305は、試料1307の1つ以上の特性評価プロセスを実行するために、試料1307へ誘導することができる。
【0106】
当業者には、本明細書に記載された構成要素(たとえば、動作)、デバイス、目的、およびこれらに伴う議論が、たとえば概念を明確にするために例として使用されていること、ならびに様々な構成修正が考えられることが理解されよう。その結果として、本明細書で用いられているように、論述された特定の例、および付随する議論は、これらのより一般的なクラスの代表的なものである。一般に、何か特定の例を使用するのは、そのクラスの代表的なものであり、特定の構成要素(たとえば、動作)、デバイス、および目的が含まれないことが限定として解釈されるべきではない。
【0107】
当業者には、本明細書に記載のプロセスおよび/またはシステムおよび/または他の技術をもたらすことができる様々な手段(たとえば、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェア)が存在することと、好ましい手段は、プロセスおよび/またはシステムおよび/または他の技術が配備される状況によって異なることとが理解されよう。たとえば、実施者が、速度および精度が最重要であると判断した場合には、実施者は主にハードウェアおよび/またはファームウェア手段を選ぶことができ、別法として、融通性が最重要である場合には、実施者は主にソフトウェア実施態様を選ぶことができ、さらにまた別法として、実施者はハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアのどれかの組み合わせを選ぶこともできる。それゆえに、本明細書に記載のプロセスおよび/またはシステムおよび/または他の技術をもたらすことができる実施可能な手段がいくつか存在し、そのどれもが、利用されるべきどの手段も、その手段が配備される状況と、実施者の、いずれもが変化し得る特定の関心事(たとえば、速度、融通性、予測可能性)とに依存する選択肢であるという点で、本質的に優位ではない。
【0108】
以前の説明は、当業者が特定の適用例およびその要件の文脈で提供された本発明を作製および使用できるようにするために提示されている。本明細書で用いられる、「上部」、「下部」、「上」、「下」、「上方」、「上向き」、「下方」、「下へ」、および「下向き」などの方向の用語は、説明の目的のために相対位置を提示するものであり、絶対的な基準系を指定するものではない。説明された実施形態に対する様々な修正は、当業者には明らかであり、本明細書に定義された一般的な原理は、他の実施形態に適用することができる。したがって、本発明は、図示および説明された特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書に記載された原理および新規な特徴と整合性のある最も広い範囲が与えられるべきものである。
【0109】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者には、文脈および/または適用に対して妥当なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することが可能である。様々な単数形/複数形の置換は、分かりやすくするために本明細書では明示されていない。
【0110】
本明細書に記載の方法のすべては、方法実施形態の1つ以上のステップの結果をメモリに記憶することを含み得る。これらの結果は、本明細書に記載の結果のいずれも含むことができ、当技術分野で知られている任意の方法で記憶することができる。メモリには、本明細書に記載の任意のメモリ、または当技術分野で知られている任意の他の適切な記憶媒体が含まれ得る。結果が記憶された後、これらの結果は、メモリ内でアクセスすること、本明細書に記載の方法またはシステムのいずれかで使用すること、ユーザに表示するためにフォーマットすること、別のソフトウェアモジュール、方法、またはシステムで使用することなどができる。さらに、結果は「恒久的に」、「半恒久的に」、「一時的に」、またはある期間記憶することができる。たとえば、メモリはランダムアクセスメモリ(RAM)とすることができ、結果は必ずしもメモリ内に無期限に存続しなくてもよい。
【0111】
I上述の方法の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載の任意の他の方法の任意の他のステップを含み得ることがさらに考えられる。加えて、上述の方法の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載のシステムのいずれによっても実行することができる。
【0112】
本明細書に記載の主題では場合により、他の構成要素に含まれる、または接続される別の構成要素を図示する。このように示された構造は例示的なものにすぎないこと、および実際には、同じ機能を実現する多くの他の構造を実施できることを理解されたい。概念的な意味では、同じ機能を実現するための任意の配置の構成要素が、所望の機能を実現するように効果的に「結び付けられる」。それゆえに、特定の機能を実現するために本明細書で組み合わされた任意の2つの構成要素は、構造または中間構成要素にかかわらず、所望の機能が実現するように互いに「結び付けられている」と見ることができる。同様に、そのように結び付けられた任意の2つの構成要素はまた、所望の機能を実現するために互いに「接続され」、または「結合され」ていると見ることもでき、そのように結び付けることができる任意の2つの構成要素はまた、所望の機能を実現するために互いに「結合可能」であると見ることもできる。具体的な結合可能の例としては、物理的に結合可能な、および/もしくは物理的に相互作用する構成要素、ならびに/または無線で対話可能な、および/もしくは無線で相互作用する構成要素、ならびに/または論理的に相互作用する、および/もしくは論理的に対話可能な構成要素が、これらだけには限らないが挙げられる。
【0113】
さらに、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。当業者には、一般に、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲(たとえば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は一般に、「開いている」用語とされるものであることが理解されよう(たとえば、用語の「含んでいる」は、「含んでいるがこれだけに限定されない」と解釈されるべきであり、用語の「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語の「含む」は、「含むがこれだけに限定されない」と解釈されるべきである、など)。当業者には、特定の数の導入された請求項記載物が意図されている場合には、このような意図が請求項に明示され、このような記載がなければ、このような意図は存在しないことがさらに理解されよう。たとえば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項記載物を導入するための「少なくとも1つの」および「1つ以上の」という導入句の使用が含まれ得る。しかし、このような句の使用は、同じ請求項が「1つ以上の」または「少なくとも1つ」という導入句、および「1つの(a)」または「1つの(an)」などの不定冠詞を含む場合でも、不定冠詞である「1つの」または「1つの」により請求項記載物を導入することが、このような導入された請求項記載物を含むどれか特定の請求項を、このような記載物1つだけ含む発明に限定していることを暗示していると解釈されるべきではなく(たとえば、「1つの」および/または「1つの」は通常、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)、同じことは、請求項記載物を導入するために使用される定冠詞の用法についても当てはまる。加えて、特定の数の導入された請求項記載物が明示されている場合でも、当業者には、このような記載が通常は、記載された数を少なくとも意味すると解釈されるべきであることが理解されよう(たとえば、他の修飾詞がない「2つの記載物」という無修飾の記載は通常、少なくとも2つの記載物または2つ以上の記載物を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどのうちの少なくとも1つ」に似ている表記法が使用される例では、一般に、このような構造は、当業者がこの表記法を理解する意味のものである(たとえば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB一緒に、AとC一緒に、BとC一緒に、および/またはAとBとC一緒に、などを有するシステムをこれらだけには限らないが含む)。「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」に似た表記法が使用される例では、一般に、このような構造は、当業者がこの表記法を理解する意味のものである(たとえば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB一緒に、AとC一緒に、BとC一緒に、および/またはAとBとC一緒に、などを有するシステムを、これらだけには限らないが含む)。当業者には、2つ以上の代替用語を提示する実質的にあらゆる離接的な単語および/または句が、明細書、特許請求の範囲、または図面においてであろうとなかろうと、その用語のうちの1つ、その用語のどちらか、または両方の用語を含む可能性を意図していると理解されるべきことがさらに理解されよう。たとえば、「AまたはB」という句は、「A」もしくは「B」、または「AおよびB」である可能性を含むと理解されたい。
【0114】
本開示、およびその付随する利点の多くは、以上の説明によって理解されるものと考えられ、様々な変更が、開示された主題から逸脱することなく、またはその重要な利点を犠牲にすることなく、構成要素の形状、構成および配置に加えられてよいことは明らかであろう。説明された形状は例示的なものにすぎず、以下の特許請求の範囲が、このような変更を包含し含むものである。さらに、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
図1
図2
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図5
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図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
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