(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ささくれ傷検出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2020162590
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】511177282
【氏名又は名称】セノー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 裕
(72)【発明者】
【氏名】築地原 里樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 亘
(72)【発明者】
【氏名】稲嶺 盛瑛
(72)【発明者】
【氏名】角谷 慈樹
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-004642(JP,A)
【文献】特開平10-260141(JP,A)
【文献】特開2003-107057(JP,A)
【文献】特開平07-071944(JP,A)
【文献】特開2007-018164(JP,A)
【文献】稲葉亘(東理大)、稲嶺盛瑛、築地原里樹(福井大)、竹村裕(東理大),ささくれ傷を検出する自動体育館床面検査装置の開発,No.20-2 ロボティクス・メカトロニクス講演会2020予稿集,一般社団法人日本機械学会,2020年05月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面又は壁面に発生したささくれ傷にマーカを付着させるマーキング部と、
前記マーキング部によって前記マーカの付着動作が行われている最中に、前記床面又は前記壁面を表す面情報を取得する情報取得部と、
前記マーキング部によって前記マーカの付着動作が行われている最中又は前記情報取得部により前記面情報が取得されている最中に、前記床面又は前記壁面の付近を移動するように自らの移動体を制御する移動制御部と、
前記移動体の移動により逐次取得された各箇所の前記面情報に基づいて、前記面情報から前記マーカを検知することにより、前記床面又は前記壁面に存在するささくれ傷を検出する検知部と、
を含むささくれ傷検出システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、カメラ又はレーザレーダである、
請求項1に記載のささくれ傷検出システム。
【請求項3】
前記情報取得部により取得される前記面情報が取得されたときの位置情報を取得する位置取得部を更に含む、
請求項1又は請求項2に記載のささくれ傷検出システム。
【請求項4】
前記マーキング部は、前記マーカが設置可能なポリッシャーであり、
前記移動制御部は、前記ポリッシャーの回転速度とは異なる速度によって前記移動体を移動させるように制御する、又は、前記移動体の移動速度とは異なる速度によって前記ポリッシャーを回転させるように制御する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のささくれ傷検出システム。
【請求項5】
前記床面又は前記壁面を外部光から遮光する遮光部を更に含む、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のささくれ傷検出システム。
【請求項6】
前記マーカは綿である、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載のささくれ傷検出システム。
【請求項7】
前記検知部は、前記床面又は前記壁面を表す面情報から前記床面又は前記壁面に前記マーカが存在しているか否かの情報を出力するための予め学習された学習済みモデルに対して、前記移動体の移動により逐次取得された各箇所の前記面情報を入力することにより、前記床面又は前記壁面に前記マーカが存在しているかを判定し、判定結果に基づいて、前記床面又は前記壁面に存在するささくれ傷を検出する、
請求項1~請求項6の何れか1項に記載のささくれ傷検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、ささくれ傷検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床材劣化度観測ロボットが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この床材劣化度観測ロボットは、床面の映像をとるための電子カメラ又は電子スキャナーを車両に設け、映像をとった車両位置情報を入手する車両位置入手手段を設け、映像と車両位置情報とを関連づけて、床面に設置された多数の床材の劣化度合を観測する。
【0003】
また、体育館等の床面に塗装された床ラインの摩耗の程度を判断する、床ラインの摩耗状態の判断方法が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。この床ラインの摩耗状態の判断方法は、床面にライン状に塗装される床ラインの上部、又はこの床ラインの近傍の床面の上部に、高分子物質に蛍光材料を含有させたライン検査塗料を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させ、且つ上記床面を所定期間使用した後、上記ライン検査塗料の塗膜に紫外線を照射し、このライン検査塗料の蛍光発光の有無により、上記床ラインの摩耗の程度を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-004642号公報
【文献】特開2017-101995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、体育館等の床面には、その劣化によりささくれ傷が発生する場合がある。ささくれ傷が発生した体育館等において競技が実施された場合には、大事故に繋がる可能性がある。このため、ささくれ傷を早期に発見し、その補修等を行うことが好ましい。
【0006】
しかし、ささくれ傷は、小さいため発見するのが困難である。床面の状態を撮像した画像から画像処理によってささくれ傷を発見するということも考えられるが、ささくれ傷と床面の汚れ又は床材の木目との差異を特定することが難しいため、ささくれ傷の判別は非常に困難である、という課題がある。
【0007】
上記特許文献1に開示されている技術は、床面の映像をとるための電子カメラによってその画像を取得し、床面に設置された多数の床材の劣化度合を観測する。しかし、上述したように、ささくれ傷はその特定が難しいため、単なる画像処理によってはささくれ傷を精度良く検出することは難しい、という課題がある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている技術のように、床ラインの摩耗の程度を判断する際に塗料を塗布するが塗料を塗布したとしても、ささくれ傷を精度良く検出することは難しい、という課題がある。
【0009】
このため、従来技術は、床面又は壁面に発生したささくれ傷を精度よく検出することができない、という課題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床面又は壁面に発生したささくれ傷を精度よく検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第一態様は、床面又は壁面に発生したささくれ傷にマーカを付着させるマーキング部と、前記マーキング部によって前記マーカの付着動作が行われている最中に、前記床面又は前記壁面を表す面情報を取得する情報取得部と、前記マーキング部によって前記マーカの付着動作が行われている最中又は前記情報取得部により前記面情報が取得されている最中に、前記床面又は前記壁面付近を移動するように自らの移動体を制御する移動制御部と、前記移動体の移動により逐次取得された各箇所の前記面情報に基づいて、前記面情報から前記マーカを検知することにより、前記床面又は前記壁面に存在するささくれ傷を検出する検知部と、を含むささくれ傷検出システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、床面又は壁面に発生したささくれ傷を精度よく検出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るささくれ傷検出システムの概要を説明するための図である。
【
図2】床面のささくれ傷とそれに付着した綿を説明するための図である。
【
図3】実施形態に係るささくれ傷検出システムの概略構成を示す図である。
【
図4】実施形態に係るささくれ傷検出システムの概略構成を示す図である。
【
図5】実施形態に係る制御装置を構成するコンピュータ20のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る制御装置の機能構成を表すブロック図である。
【
図7】実施形態の学習済みモデルの一例を示す図である。
【
図8】実施形態の学習用データの一例を示す図である。
【
図9】結果記憶部に格納されるささくれ傷の検出結果の一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係るささくれ傷検出処理ルーチンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
(ささくれ傷検出システム1の構成)
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るささくれ傷検出システム1の概要を説明するための図である。
図1に示されるように、本実施形態のささくれ傷検出システム1は、例えば体育館等の床面F上を走行し、床面Fに発生しているささくれ傷を検出する。
【0017】
本実施形態のささくれ傷検出システム1は、走行しながら床面に対してマーカの一例である綿を付着させる。
【0018】
図2に、床面のささくれ傷とそれに付着した綿を説明するための図を示す。
図2の左側の上段の図は床面を上から見た図であり、左側の下段の図は床面を横から見た図である。
図2に示されるように、ささくれ傷Sが床面に存在していた場合、
図2の右側に示されるように綿Mを付着させることができる。なお、
図2の右側の上段の図は、ささくれ傷Sに綿Mが付着した床面を上から見た図であり、右側の下段の図はささくれ傷Sに綿Mが付着した床面を横から見た図である。
図2に示されるように、ささくれ傷Sに綿Mが付着した場合には、その見た目が目立つようになり、綿Mの箇所を特定することにより、ささくれ傷Sを容易に発見することができるようになる。
【0019】
そこで、ささくれ傷検出システム1は、ささくれ傷に綿を付着させ、綿が付着している箇所を画像処理によって特定し、その箇所にささくれ傷が発生していることを検知する。ささくれ傷検出システム1によれば、ささくれ傷にマーカである綿が付着し、画像処理によって床面におけるささくれ傷の位置が精度良く検出される。
【0020】
以下、具体的に説明する。
【0021】
図3は、実施形態に係るささくれ傷検出システム1の概略構成を示す図である。なお、以下では、ささくれ傷検出システム1自体を移動体とも称する。ささくれ傷検出システム1は、駆動部の一例である車輪10A,10B、マーキング部の一例であるポリッシャー12A,12B、照明部14A,14B,14C,14D、情報取得部の一例であるカメラ(
図3においては図示省略)、位置取得部の一例であるレーザレーダ16、制御装置18、及び遮光部19を備えている。
【0022】
図4は、実施形態に係るささくれ傷検出システム1を横方向から見た図である。
図4に示されるように、ささくれ傷検出システム1は、情報取得部の一例としてのカメラ15を備えている。
【0023】
車輪10A,10Bは、後述する制御装置18から出力される制御信号に応じて駆動する。車輪10A,10Bが駆動することにより、移動体であるささくれ傷検出システム1が走行する。
【0024】
ポリッシャー12A,12Bにはマーカの一例である綿が備えられている。
図3に示されるように、ささくれ傷検出システム1は、2つのポリッシャー12A,12Bを備えている。ポリッシャー12A,12Bは、後述する制御装置18から出力される制御信号に応じて回転駆動することにより、床面に発生したささくれ傷に綿を付着させる。
【0025】
照明部14A,14B,14C,14Dは、ささくれ傷検出システム1の後方に配置されている。照明部14A,14B,14C,14Dは、床面に対して光を照射する。
【0026】
カメラ15は、ポリッシャー12A,12Bによるマーカの付着動作が行われている最中に、床面を表す面情報の一例として画像を撮像する。
【0027】
遮光部19は、
図3に示されるように、カメラ15によって撮像されている箇所の床面を外部光から遮光するような位置に配置される。遮光部19により外部光が遮光されることにより、床面の画像に対して余計な光が写り込まなくなるため、後述する制御装置18においてささくれ傷を精度良く検出することができる。
【0028】
レーザレーダ16は、ささくれ傷検出システム1の位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ16は、カメラ15により画像が撮像されたときの、ささくれ傷検出システム1の位置情報を取得する。なお、レーザレーダ16は、例えば、建物の壁面に対してレーザを照射し、その跳ね返り時間に応じて、建物内におけるささくれ傷検出システム1の位置情報を取得する。
【0029】
制御装置18は、ささくれ傷検出システム1の全体を制御すると共に、カメラ15により撮像された画像に基づいて、床面に存在するささくれ傷を検出する。
【0030】
図5は、制御装置18を構成するコンピュータ20のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5に示されるように、コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ストレージ24、入力部25、表示部26及び通信インタフェース(I/F)27を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU21は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21は、ROM22又はストレージ24からプログラムを読み出し、RAM23を作業領域としてプログラムを実行する。CPU21は、ROM22又はストレージ24に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM22又はストレージ24には、入力装置より入力された情報を処理する各種プログラムが格納されている。
【0032】
ROM22は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ24は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0033】
入力部25は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0034】
表示部26は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部26は、タッチパネル方式を採用して、入力部25として機能しても良い。
【0035】
通信I/F27は、入力装置等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0036】
図6は、制御装置18の機能構成を表すブロック図である。
図6に示されるように、制御装置18は、画像記憶部180と、学習済みモデル記憶部182と、結果記憶部184と、移動制御部186と、検知部188とを備えている。
【0037】
画像記憶部180には、カメラ15により撮像された各時刻の画像とその画像が撮像されたときの位置情報とが格納される。位置情報は、前述したレーザレーダ16により取得される。
【0038】
学習済みモデル記憶部182には、カメラ15により撮像された床面の画像から当該床面に綿が存在しているか否かの情報を出力するための予め学習された学習済みモデルが格納されている。この学習済みモデルは、例えば、ニューラルネットワークの一種である既知のYOLO(You Only Look Once)等により実現される。また、学習済みモデルは、既知の学習アルゴリズムにより予め学習されている。
【0039】
図7に、学習済みモデルを説明するための図を示す。
図7に示されるように、床面の画像が学習済みモデルへ入力されると、その画像に綿が写っている確率と、その画像に綿が写っていない確率とが出力される。後述する検知部188は、この学習済みモデルを利用して、入力された床面の画像に綿が写っているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、床面にささくれ傷が存在しているか否かを検出する。
【0040】
学習済みモデルは、例えば、
図8に示されるような学習用データに基づく教師あり機械学習により生成される。
図8に示されるような学習用データを用いて教師あり学習がなされることにより、床面の画像から当該床面に綿が存在しているか否かの確率を出力する学習済みモデルが生成される。
【0041】
結果記憶部184には、後述する検知部188によるささくれ傷の検出結果が格納される。
【0042】
図9に、結果記憶部184に格納されるささくれ傷の検出結果の一例を示す。
図9に示されるように、カメラ15により撮像された画像と、当該画像が撮像されたときのささくれ傷検出システム1の位置情報と、当該画像に写る床面にささくれ傷が存在しているか否かの検出結果とが対応付けられて格納される。結果記憶部184に
図9のようなデータが格納されることにより、例えば、建物内の何処にささくれ傷が発生しているのかを容易に判別することができる。
【0043】
移動制御部186は、ささくれ傷検出システム1の全体を制御する。具体的には、移動制御部186は、ポリッシャー12A,12Bによって床面への綿の付着動作が行われている最中又はカメラ15により床面の画像が撮像されている最中に、床面を移動するように自らの移動体を制御する。
【0044】
また、移動制御部186は、ポリッシャー12A,12Bの駆動速度を制御する。移動制御部186は、ポリッシャー12A,12Bの回転速度とは異なる速度によってささくれ傷検出システム1を移動させるように制御する。
【0045】
例えば、
図3に示されるように、ポリッシャー12Aは矢印A方向へ回転駆動し、ポリッシャー12Bは矢印B方向へ回転駆動する場合を考える。また、ポリッシャー12Aの接線方向の速度がV
Aであり、ポリッシャー12Bの接線方向の速度がV
Bであり、かつささくれ傷検出システム1自体の進行方向Cへの移動速度がV
Cであったとする。
【0046】
この場合において、VA=VB=VCが成立しており、ポリッシャー12A,12Bの接線方向の回転速度と、ささくれ傷検出システム1自体の進行方向Cへの移動速度とが同じ速度であったときには、ささくれ傷検出システム1から見るとポリッシャー12A,12Bは回転していないことになる。この場合には、床面に存在するささくれ傷に対して綿を効果的に付着させることができない。
【0047】
そこで、移動制御部186は、ポリッシャー12A,12Bの回転速度とは異なる速度によってささくれ傷検出システム1を移動させるように制御する。または、移動制御部186は、ささくれ傷検出システム1の移動速度とは異なるように、ポリッシャー12A,12Bの回転速度を制御する。これにより、床面に存在するささくれ傷に対して綿を効果的に付着させることができる。
【0048】
検知部188は、ささくれ傷検出システム1の移動により逐次取得された各箇所の画像に基づいて、当該画像から綿を検知することにより、床面に存在するささくれ傷を検出する。
【0049】
具体的には、検知部188は、学習済みモデル記憶部182に格納された学習済みモデルに対して、ささくれ傷検出システム1の移動により逐次取得された各箇所の画像を入力することにより、床面に綿が存在しているかを判定する。そして、検知部188は、床面に綿が存在しているか否かの判定結果に基づいて、床面に存在するささくれ傷を検出する。
【0050】
具体的には、綿が存在していると判定された場合には、その床面の箇所にはささくれ傷が存在していると判定される。一方、綿が存在していないと判定された場合には、その床面の箇所にはささくれ傷が存在していないと判定される。
【0051】
次に、ささくれ傷検出システム1の作用について説明する。
【0052】
ささくれ傷検出システム1の制御装置18の移動制御部186は、所定の駆動信号を受け付けると、車輪10A,10Bに対して制御信号を出力し、車輪10A,10Bを駆動させるように制御する。
【0053】
ささくれ傷検出システム1が移動を開始した際には、制御装置18の移動制御部186は、ポリッシャー12A,12Bによる床面への綿の付着動作、カメラ15による床面の撮像、及びレーザレーダ16による位置情報の取得を開始させる。
【0054】
また、ささくれ傷検出システム1が移動を開始した際には、制御装置18の移動制御部186は、カメラ15によって撮像された床面の画像とレーザレーダ16によって取得された位置情報とを対応付けて、画像記憶部180へ格納する。
【0055】
床面の画像と位置情報とが画像記憶部180に格納され、ささくれ傷検出システム1の制御装置18の検知部188が所定の指示信号を受け付けると、制御装置18の検知部188は、
図10に示されるようなささくれ傷検出処理ルーチンを実行する。
【0056】
ステップS100において、検知部188は、画像記憶部180に格納されている床面の画像及びその位置情報を読み出す。
【0057】
ステップS102において、検知部188は、学習済みモデル記憶部182に格納されている学習済みモデルを読み出す。
【0058】
ステップS104において、検知部188は、上記ステップS102で読み出した学習済みモデルに対して、上記ステップS100で読み出した画像を入力することにより、床面に綿が存在しているかを判定する。具体的には、検知部188は、学習済みモデルから出力される各確率に基づき、綿が存在している確率が、綿が存在していない確率よりも大きい場合には、床面には綿は存在していると判定する。一方、検知部188は、綿が存在している確率が、綿が存在していない確率以下である場合には、床面には綿は存在していないと判定する。
【0059】
ステップS106において、検知部188は、上記ステップS104での床面に綿が存在しているか否かの判定結果に基づいて、床面に存在するささくれ傷を検出する。具体的には、検知部188は、綿が存在していると判定された場合には、その床面にささくれ傷が存在していると判定する。一方、検知部188は、綿が存在していないと判定された場合には、その床面にささくれ傷は存在していないと判定する。これにより、ささくれ傷が検出される。
【0060】
ステップS108において、検知部188は、上記ステップS100で読み出した床面の画像と、その床面の画像の位置情報と、上記ステップS106で得られたささくれ傷の検出結果とを対応付けて、結果記憶部184に格納する。
【0061】
上記ステップS100~ステップS108の各処理は、画像記憶部180に新たな画像が格納される毎に繰り返される。
【0062】
以上のように、本実施形態のささくれ傷検出システムは、床面に発生したささくれ傷に綿を付着させる。そして、ささくれ傷検出システムは、綿の付着動作が行われている最中に、床面の画像を取得する。ささくれ傷検出システムは、綿の付着動作が行われている最中又は床面の画像が取得されている最中に、床面付近を移動するように自らの移動体を制御する。ささくれ傷検出システムは、自らの移動により逐次取得された各箇所の床面の画像に基づいて、床面の画像から綿を検知することにより、床面に存在するささくれ傷を検出する。これにより、床面に発生したささくれ傷を精度よく検出することができる。
【0063】
また、ささくれ傷以外の箇所には綿は付着しにくいため、綿を検知することによりささくれ傷を精度良く検知することができる。また、付着する綿がささくれ傷よりも大きいため立体的になり、ささくれ傷を精度良く検出することができる。また、綿の色による判別も可能となる。また、ささくれ傷の位置及び数が目視でも可能となる。また、一度ささくれ傷に付着した綿はささくれ傷から外れにくい、といった利点もある。
【0064】
また、本実施形態によれば、ささくれ傷の個数をカウントすることが可能となり、また、ささくれ傷検出システムの走行データと照合することで、ささくれ傷の発生場所を特定することも可能となる。
【0065】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、マーカが綿である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ささくれ傷に付着させるようなことが可能なものであればどのようなものであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、情報取得部がカメラである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、情報取得部はレーザレーダ等であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、床面に存在するささくれ傷を検知する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、壁面に存在するささくれ傷を検知するようにしてもよい。この場合には、ささくれ傷検出システムは、何らかの方法により壁面上を移動する。
【0070】
また、上記実施形態では、マーキング部がポリッシャーである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。マーキング部は、床面等にマーカを付着させることが可能なものであればどのようなものであってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、学習済みモデルを用いてマーカの一例である綿を検知する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、他の画像処理手法によって綿を検知するようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、制御装置18がリアルタイムでささくれ傷を検知する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、制御装置18の画像記憶部180に床面の各箇所の画像を格納しておき、別の装置にて床面の画像にささくれ傷が存在しているか否かを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ささくれ傷検出システム
10A,10B 車輪
12A,12B ポリッシャー
14A,14B,14C,14D 照明部
15 カメラ
16 レーザレーダ
18 制御装置
19 遮光部
20 コンピュータ
180 画像記憶部
182 学習済みモデル記憶部
184 結果記憶部
186 制御部
186 移動制御部
188 検知部