(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】アセチルシトレート系可塑剤組成物およびこれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08K 5/11 20060101AFI20240508BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240508BHJP
C07C 69/704 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C08K5/11
C08L101/00
C07C69/704
(21)【出願番号】P 2022575263
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 KR2021010398
(87)【国際公開番号】W WO2022035138
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100048
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヒュク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジュ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ホ・ジョン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0087733(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0137789(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103113617(CN,A)
【文献】国際公開第2016/115257(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0140831(KR,A)
【文献】国際公開第03/045339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 5/00-5/12
C07C 53/00-69/96
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1のシトレートが3以上含まれたシトレート系組成物を含み、
前記シトレートのアルキル基は、C4アルコールおよびC6アルコールから由来し、
前記C4アルコールは、n-ブタノールおよびイソブタノールからなる群から選択される1以上を含み、
前記C6アルコールは、1-ヘキサノール
と、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノー
ルおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される
2以上
とを含む、可塑剤組成物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、炭素数4または6のアルキル基であり、R
4は、アセチル基である。
【請求項2】
前記シトレート系組成物は、
3個のC4アルコール由来のアルキル基を有する低級非混成シトレートと、2個のC4アルコール由来のアルキル基および1個のC6アルコール由来のアルキル基を有する低級混成シトレートを含む低級アルキル系シトレートと、
2個のC6アルコール由来のアルキル基および1個のC4アルコール由来のアルキル基を有する高級混成シトレートと、3個のC6アルコール由来のアルキル基を有する高級非混成シトレートを含む高級アルキル系シトレートとを含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記C4アルコールとC6アルコールとの重量比は、5:95~95:5である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記C6アルコールは、1-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールを含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記C6アルコールは、シクロペンチルメタノールをさらに含む、請求項4に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
前記C6アルコールは、1-ヘキサノールと、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される
2以上
とを含み、
前記1-ヘキサノールは、C6アルコールの全重量に対して60重量%以下で含まれる、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項7】
前記低級アルキル系シトレートと前記高級アルキル系シトレートは、重量比が1:99~99:1である、請求項2に記載の可塑剤組成物。
【請求項8】
前記低級アルキル系シトレートと前記高級アルキル系シトレートは、重量比が2:98~95:5である、請求項7に記載の可塑剤組成物。
【請求項9】
前記低級アルキル系シトレートのうち低級非混成シトレートと低級混成シトレートは、重量比が2:98~90:10である、請求項2に記載の可塑剤組成物。
【請求項10】
前記高級アルキル系シトレートのうち高級非混成シトレートと高級混成シトレートは、重量比が5:95~95:5である、請求項2に記載の可塑剤組成物。
【請求項11】
樹脂100重量部と、請求項1に記載の可塑剤組成物5~150重量部とを含む、樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂は、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月10日付けの韓国特許出願第10-2020-0100048号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、組成物内の成分の低級および高級アルキルラジカルの混成アセチルシトレートが含まれたアセチルシトレート系可塑剤組成物およびこれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、可塑剤は、アルコールがフタル酸およびアジピン酸のようなポリカルボン酸と反応し、これに相応するエステルを形成する。また、人体に有害なフタレート系可塑剤の韓国内外の規制を考慮して、テレフタレート系、アジペート系、その他の高分子系などのフタレート系可塑剤の代わりに使用可能な可塑剤組成物に関する研究が行われ続けている。
【0004】
一方、床材、壁紙、軟質および硬質シートなどのプラスチゾル業種、カレンダリング業種、押出/射出コンパウンド業種を問わず、このような環境にやさしい製品に対するニーズが増大しており、これに対する完成品別の品質特性、加工性および生産性を強化するために、変色および移行性、機械的物性などを考慮して、適切な可塑剤を使用する必要がある。
【0005】
このような様々な使用領域において業種別に求められる特性である引張強度、伸び率、耐光性、移行性、ゲル化性あるいは吸収速度などに応じて、PVC樹脂に可塑剤、充填剤、安定剤、粘度低下剤、分散剤、消泡剤、発泡剤などの副原料などを配合する。
【0006】
一例として、PVCに適用可能な可塑剤組成物のうち、値段が相対的に安いとともに最も汎用的に使用されるジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)を適用する場合、硬度あるいはゾル粘度が高く、可塑剤の吸収速度が相対的に遅く、移行性およびストレス移行性も良好ではなかった。
【0007】
これに対する改善策として、DEHTPを含む組成物として、ブタノールとのトランスエステル化反応の生成物を可塑剤として適用することが考えられるが、可塑化効率は改善するものの、加熱減量や熱安定性などが劣り、機械的物性が多少低下するなど、物性の改善が求められ、一般的に他の二次可塑剤との混用によりこれを補完する方式を採用する以外は、現在としては解決策がない状況である。
【0008】
しかし、二次可塑剤を適用する場合には、物性の変化に対する予測が難しく、製品コストが上昇する要因として作用し得、特定の場合以外には物性の改善が明らかに示されず、樹脂との相溶性に問題を起こすなど、予想できない問題が発生するという欠点がある。
【0009】
また、前記DEHTP製品の劣悪な移行性と減量特性を改善するために、トリメリテート系の製品として、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテートやトリイソノニルトリメリテートといった物質を適用する場合、移行性や減量特性は改善するものの、可塑化効率が劣化し、樹脂に適切な可塑化効果を与えるためには相当量投入しなければならない問題があり、そのため、比較的単価が高い製品であるという点で、商用化が不可能な状況である。
【0010】
したがって、既存の製品としてフタレート系製品の環境問題を解決するための製品またはフタレート系製品の環境問題を改善するための環境にやさしい製品の劣悪な物性を改善した製品などの開発が求められている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、可塑剤組成物として、低級および高級アルキルラジカルが適切に制御されて結合したアセチルシトレートを含むことで、既存の可塑剤に比べて、機械的物性と耐ストレス性を同等以上の水準に維持および改善し、且つ、移行性および可塑化効率の間において適切なバランスを取るとともに、耐光性と残率および減量などの耐熱性を著しく改善することができる可塑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態によると、下記の化学式1のシトレートが3以上含まれたシトレート系組成物を含み、前記シトレートのアルキル基は、C4アルコールおよびC6アルコールから由来し、前記C4アルコールは、n-ブタノールおよびイソブタノールからなる群から選択される1以上を含み、前記C6アルコールは、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される1以上を含む、可塑剤組成物が提供される。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、炭素数4または6のアルキル基であり、R
4は、アセチル基である。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の他の一実施形態によると、樹脂100重量部と、上述の可塑剤組成物5~150重量部とを含む樹脂組成物が提供される。
【0014】
前記樹脂は、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択される1種以上であることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、樹脂組成物に使用する場合、既存の可塑剤に比べて、機械的物性と耐ストレス性を同等以上の水準に維持および改善し、且つ、減量特性と可塑化効率との間において適切なバランスを取るとともに移行性および耐光性などの物性を著しく改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常のもしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0017】
用語の定義
本明細書で用いられるような「組成物」という用語は、当該組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。
【0018】
本明細書で用いられるような「ストレート塩化ビニル重合体」という用語は、塩化ビニル重合体の種類の一つであり、懸濁重合またはバルク重合などにより重合されたものを意味し得、数十~数百マイクロメートルサイズを有する多量の気孔が分布した多孔性粒子の形態を有し、凝集性がなく、流動性に優れた重合体を意味する。
【0019】
本明細書で用いられるような「ペースト塩化ビニル重合体」という用語は、塩化ビニル重合体の種類の一つであり、微細懸濁重合、微細シード重合、または乳化重合などにより重合されたものを意味し得、数十~数千ナノメートルサイズを有する微細で緻密な空隙がない粒子として、凝集性を有し、流動性が劣悪な重合体を意味する。
【0020】
「含む」、「有する」という用語およびこれらの派生語は、これらが具体的に開示されていてもそうではなくても、任意の追加の成分、ステップあるいは手続きの存在を排除することを意図するものではない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求されたすべての組成物は、反対に記述されない限り、重合体であるかあるいはそれ以外の他のものであるかに関係なく、任意の追加の添加剤、補助剤、あるいは化合物を含むことができる。これとは対照的に、「で本質的に構成される」という用語は、造作性に必須ではないもの以外は、任意のその他の成分、ステップあるいは手続きを任意の連続する説明の範囲から排除する。「で構成される」という用語は、具体的に記述または列挙されていない任意の成分、ステップあるいは手続きを排除する。
【0021】
測定方法
本明細書において、組成物内の成分の含量分析は、ガスクロマトグラフィー測定により行い、Agilent社製のガスクロマトグラフィー機器(製品名:Agilent 7890GC、カラム:HP-5、キャリアガス:ヘリウム(flow rate 2.4mL/min)、検出器:F.I.D、注入量(injection volume):1μL、初期値:70℃/4.2min、終期値:280℃/7.8min、program rate:15℃/min)で分析する。
【0022】
本明細書において、「硬度(hardness)」は、ASTM D2240に準じて、25℃でのショア硬度(Shore「A」および/またはShore「D」)を意味し、3T 10sの条件で測定し、可塑化効率を評価する指標になることができ、低いほど可塑化効率に優れることを意味する。
【0023】
本明細書において、「引張強度(tensile strength)」は、ASTM D638方法に準じて、テスト機器であるU.T.M(メーカー;Instron、モデル;4466)を用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/min(1T)で引っ張った後、試験片が切断する地点を測定し、下記の数学式1で計算する。
【0024】
[数学式1]
引張強度(kgf/cm2)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(cm)×幅(cm)
【0025】
本明細書において、「伸び率(elongation rate)」は、ASTM D638方法に準じて、前記U.T.Mを用いて、クロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/min(1T)で引っ張った後、試験片が切断する地点を測定した後、下記の数学式2で計算する。
【0026】
[数学式2]
伸び率(%)=伸長後の長さ/初期の長さ×100
【0027】
本明細書において、「移行損失(migration loss)」は、KSM-3156に準じて、厚さ2mm以上の試験片を得て、試験片の両面にガラス板(glass Plate)を貼り付けた後、1kgf/cm2の荷重を加える。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出し、常温で4時間冷却する。その後、試験片の両面に貼り付けられたガラス板を除去した後、ガラス板とSpecimen Plateをオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を下記数学式3によって計算する。
【0028】
[数学式3]
移行損失量(%)={(初期試験片の重量-オーブン放置後の試験片の重量)/(初期試験片の重量)}×100
【0029】
本明細書において、「加熱減量(volatile loss)」は、試験片を80℃で72時間作業した後、試験片の重量を測定して示す。
【0030】
[数学式4]
加熱減量(重量%)={(初期試験片の重量-作業後の試験片の重量)/(初期試験片の重量)}×100
【0031】
前記様々な測定条件の場合、温度、回転速度、時間などの詳細条件は、場合に応じて多少相違し得、相違する場合には、その測定方法および条件を別に明示する。
【0032】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
本発明の一実施形態によると、下記の化学式1のシトレートが3以上含まれたシトレート系組成物を含み、前記シトレートのアルキル基は、C4アルコールおよびC6アルコールから由来し、前記C4アルコールは、n-ブタノールおよびイソブタノールからなる群から選択される1以上を含み、前記C6アルコールは、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールおよびシクロペンチルメタノールからなる群から選択される1以上を含む可塑剤組成物が提供される。
【0034】
【0035】
前記化学式1中、
R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数4または6のアルキル基であり、R4は、アセチル基である。
【0036】
前記可塑剤組成物は、クエン酸またはクエン酸誘導体とC4アルコールおよびC6アルコールの混合物との直接エステル化反応や、炭素数が4(または6)であるアルキル基を有するシトレートとC6(またはC4)アルコールのトランスエステル化反応により生成される生成物であることができるが、この時に適用されるアルコールは、構造異性体の混合物であることもでき、いずれか一つの単独物質であることもでき、例えば、C4アルコールの場合には、n-ブタノールまたはイソブタノールそれぞれの単独あるいはこれらの混合物であることができ、C6アルコールの場合には、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールまたはシクロペンチルメタノールそれぞれの単独またはこれらのうち2以上の混合物であることができる。
【0037】
また、前記C4アルコールとC6アルコールとの重量比は、5:95~95:5、好ましくは10:90~90:10、特に好ましくは30:70~90:10であることができる。C4アルコールとC6アルコールとの重量比を上記のような範囲内に制御することで、可塑化効率、機械的強度、耐移行性、熱安定性、耐ストレス性、炭化特性などの物性間のバランスに優れた可塑剤組成物を提供することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記可塑剤組成物は、3個のC4アルコール由来のアルキル基を有する低級非混成シトレートと、2個のC4アルコール由来のアルキル基および1個のC6アルコール由来のアルキル基を有する低級混成シトレートを含む低級アルキル系シトレート、および2個のC6アルコール由来のアルキル基および1個のC4アルコール由来のアルキル基を有する高級混成シトレートと、3個のC6アルコール由来のアルキル基を有する高級非混成シトレートを含む高級アルキル系シトレートを含むことができる。より具体的には、前記可塑剤組成物に含まれるシトレートは、総4タイプであり、炭素数が大きい炭素数6のアルキル基が2以上結合した高級アルキル系シトレート(下記化学式5~7)と、炭素数が小さい炭素数4のアルキル基が2以上結合した低級アルキル系シトレート(下記化学式2~4)とに大きく分けられる。また、前記低級アルキル系シトレートは、シトレートの3つのエステル基にすべて炭素数4のアルキル基が結合した低級非混成シトレート(下記化学式2)と、炭素数が4のアルキル基が2個のエステル基に結合した低級混成シトレート(下記化学式3および4)とに小さく分けられ、高級アルキル系シトレートも同様、高級非混成シトレート(下記化学式7)と高級混成シトレート(下記化学式5および6)とに分けられる。一方、化学式4および6で表されるシトレートの場合、キラル炭素の存在によって、光学異性体が存在することができるが、本明細書では、これを他の化合物として分離して取り扱わない。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
前記化学式2~化学式7中、RLは、n-ブチル基またはイソブチル基であり、RHは、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールまたはシクロペンチルメタノールから由来したアルキル基であり、Raは、アセチル基である。
【0046】
ここで、「結合したアルキル基」は、前記シトレートの3つのエステル基に結合したアルキル基を意味し得る。
【0047】
また、前記「非混成」または「混成」は、トリエステルに結合したアルキル基を基準として、アルキルラジカルが炭素数が同一であるもののみ結合したものであるか、炭素数が異なるものが混合して結合したものであるかを区別するものであり、3つのエステル基にすべて炭素数が同一であるアルキル基が結合した場合「非混成」と称することができ、3つのエステル基に炭素数が異なるアルキル基が混合して結合した場合には「混成」と称することができる。詳細には、前記混成および非混成は、炭素数を基準に区別するものであり、例えば、炭素数がすべて同じであるブチル基のみ結合している場合には、n-ブチル基およびイソブチル基がともに混成されているとしても、本明細書では、炭素数が同一のものであるため、「非混成」であることを意味する。
【0048】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、上述のように、シトレートとして総4タイプを含むことで、各タイプに合わせて結合したアルキル基の組み合わせによって、優れた効果を実現することができる。
【0049】
具体的には、高級非混成シトレートと低級非混成シトレートとの間のアルキル基のバランス、および混成タイプの組成物内の混在、さらには、低級アルキル基と高級アルキル基が全体のアルキルラジカルのうちどの程度の比率で制御されたか、さらには、ある一つのアルキル基が混合アルコールに由来した場合、分岐状アルキル基のうち特定の分岐アルキルラジカルがどの程度の比率で存在するかなどの特徴によって、可塑化効率と移行性/減量特性の物性のバランスを取ることができ、引張強度と伸び率のような機械的物性および耐ストレス性も同等以上の水準を維持することができ、組成物内に含まれた4タイプのシトレートの相互作用により、耐熱性と耐光性において著しい改善を図ることができる。
【0050】
これにより、既存のフタレート系製品の環境問題を除去するとともに減量特性をより改善した製品の実現が可能であり、既存のテレフタレート系製品の移行性および減量特性を著しく改善することができ、既存の商用製品に比べて、耐光性と耐熱性が大幅に改善した製品の実現が可能になる。
【0051】
前記のような効果の実現を、より最適に、好ましくするためには、前記化学式2~7で定義されたRLおよびRHの条件を合わせることが重要である。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記RLおよびRHは、定義されたように、それぞれ、炭素数が4であるアルキル基および炭素数が6であるアルキル基である。
【0053】
前記RHは、炭素数が6であるアルキル基として、1-ヘキサノール、1-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、4-メチルペンタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール、3,3-ジメチルブタノール、1-エチルブタノール、2-エチルブタノール、3-エチルブタノールまたはシクロペンチルメタノールに由来するアルキル基であることができる。
【0054】
また、好ましくは、前記RHは、ヘキシルアルコール異性体混合物に由来するものであることができ、この異性体混合物は、分岐化度が2.0以下であり、好ましくは1.5以下であることができる。具体的には、前記分岐化度は、1.5以下であることができ、1.3以下であることができ、より好ましくは1.1以下であることができる。また、0.1以上であることができ、0.2以上であることができ、0.3以上であることができ、最も好ましくは0.7以上であることができる。分岐化度が2.0を超えると、物性間のバランスが崩れて、製品がいずれか一つ以上の評価基準に達しない問題が発生し得るが、好ましい範囲として1.5以下である場合には、機械的物性だけでなく、移行損失と加熱減量の改善がより最適化することができ、物性間のバランスに優れることができる。
【0055】
ここで、分岐化度とは、組成物内に含まれた物質に結合したアルキル基がいくつの分岐炭素を有するかを意味し得、当該物質の重量比に応じてその程度が決定されることができる。例えば、アルコール混合物に、n-ヘキシルアルコールが60重量%、メチルペンチルアルコールが30重量%、また、エチルブチルアルコールが10重量%含まれていると仮定すると、前記各アルコールの分岐炭素数は、それぞれ、0、1および2であるため、分岐化度は、[(60×0)+(30×1)+(10×2)]/100に計算されて0.5であることができる。ここで、シクロペンチルメタノールの場合、分岐炭素数は0であるとみなす。
【0056】
前記ヘキシルアルコール異性体混合物は、1-ヘキサノールおよび2-メチルペンタノールを含むことができる。このように異性体混合物内に1-ヘキサノールと2-メチルペンタノールがともに含まれると、物性間のバランスを維持することができ、加熱減量の面で優れた効果を得ることができる。好ましくは、3-メチルペンタノールをさらに含むことができ、この場合、物性間のバランスが非常に優れるという利点がある。
【0057】
前記2-メチルペンタノールを含む分岐状ヘキシルアルコールは、異性体混合物100重量部に対して40重量部以上含まれることができ、50重量部以上、60重量部以上含まれることができ、好ましくは65重量部以上、70重量部以上含まれることができる。最大量としては全部分岐状であることができ、99重量部以下、98重量部が含まれることができ、好ましくは95重量部以下、または90重量部以下で含まれることができる。この範囲で分岐状ヘキシルアルコールが含まれる場合には、機械的物性の改善を期待することができる。
【0058】
また、前記1-ヘキサノールの直鎖状アルコールは、異性体混合物100重量部に対して50重量部以下で含まれることができ、40重量部以下であることができ、好ましくは30重量部以下であることができる。前記1-ヘキサノールは、成分内に存在しないことができるが、少なくとも2重量部以上含まれることができ、この場合、物性間のバランスを維持し、且つ機械的物性が改善する利点を取ることができる。
【0059】
また、前記ヘキシルアルコールの異性体混合物内の1-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、3-メチルペンタノールおよびシクロペンチルメタノールを含むことができる。好ましくは、シクロペンチルメタノールをさらに含むことで、物性間のバランスを維持し、且つ加熱減量をより改善することができる。
【0060】
この場合、前記シクロペンチルメタノールは、異性体混合物100重量部に対して、20重量部以下であることができ、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であることができ、存在しないか、これによる効果を得るための最小量は、2重量部であることができる。
【0061】
前記RLは、n-ブチル基またはイソブチル基であることができ、これらそれぞれの単独アルコールに由来することができ、これらのアルコールの混合アルコールから由来することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記化学式2~7のシトレートのそれぞれは、前記のように、RLおよびRHがそれぞれ独立して単独アルコールまたはアルコールの異性体混合物が適用されることで、構造異性体を2以上含むことができる。
【0063】
例えば、化学式2の低級非混成シトレートの場合、RLがブチルアルコールの異性体混合物から由来する場合、2以上の構造異性体を含むことができ、その他の化学式3~6のシトレートも同様、2以上の構造異性体を含むことができる。また、RHがヘキシルアルコールの異性体混合物から由来する場合には、化学式3~7のシトレートがそれぞれ2以上の構造異性体を含むことができる。これによって、化学式2~7のシトレートのうち少なくとも5種は、2以上の構造異性体を含むことができる。
【0064】
このように構造異性体を含む場合には、分岐度の調節により、組成物内の分岐度によって示される移行特性や減量特性の改善を容易に制御することができ、耐光性に優れることができる。
【0065】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、本発明による効果の実現により最適化するために、前記各アルキル基の比率を調節することができるが、一次的には、低級アルキル系シトレートと高級アルキル系シトレートの重量比を1:99~99:1に制御することができ、好ましくは2:98~95:5、より好ましくは5:95~95:5の重量比が適用されるように制御することができ、特に好ましくは10:90~95:5の重量比が適用されるように制御することができ、最適には15:85~95:5の重量比が適用されることができる。
【0066】
前記化学式2~4で表されるシトレートである低級アルキル系シトレートを高級アルキル系シトレート(化学式5~7)の耐移行性や可塑化効率を改善し、加熱減量特性のバランスを取るために、低級アルコールおよび高級アルコール由来のアルキル基が混成で存在するシトレートの混合組成物を実現することで、全体の可塑剤組成物の重量感を制御することができ、これにより、可塑剤組成物の性能の改善を大いに期待することができる。
【0067】
より詳細には、本発明の一実施形態による可塑剤組成物の重量感を決定する要素としては、低級アルキル系シトレートのうち、化学式2の低級非混成シトレートと、化学式3および4の低級混成シトレートの重量比を制御することで、これらの重量比は、非混成対混成で、1:99~99:1であることができ、好ましくは2:98~90:10であることができ、より好ましくは5:95~90:10であることができ、特に好ましくは10:90~90:10であることができる。これは、組成物を製造するエステル反応過程において、反応を制御することで、混合アルキル基が結合した生成物の量を制御することができ、これにより、効果の達成に大きな役割を果たすことができる。
【0068】
また、同様に、高級アルキル系シトレートのうち化学式7の高級非混成と化学式5および6の高級混成の重量比を制御することも、類似した役割を果たすことができ、この際、重量比は、非混成対混成で1:99~99:1であることができ、好ましくは5:95~95:5であることができ、より好ましくは10:90~90:10であることができ、特に好ましくは50:50~90:10であることができる。すなわち、反応中に適切な制御により、高級アルキル系シトレート内に含まれたシトレート間の重量比を調節して、生成される可塑剤組成物の効果の向上に注意する必要がある。
【0069】
上記の範囲で本発明による可塑剤組成物の成分が構成される場合には、反応物として使用される物質の当量比や反応の実質的な収率、転化率などを考慮した時に、製造過程上の生産性が増大するだけでなく、上述の引張強度と伸び率のような機械的物性の低下を防止することができ、耐光性に相当な改善を発揮することができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、前記化学式2~7のシトレートにおいて、Raと定義される置換基は、アセチル基である。ヒドロキシ基が含まれたシトレートの場合、可塑化効率と移行特性に優れるが、相対的に多少耐熱性が欠ける部分であることができる。しかし、シトレートのヒドロキシ基にアセチル化によりアセチル基を結合する場合、機械的物性が小幅向上することができ、加熱後に減量する程度である減量特性や高温放置後にも機械的物性が維持される比率である残率特性といった熱的特性を改善することができ、熱抵抗性を強化して変色および炭化特性を改善することにより、加工時または完成品での熱の影響から相対的に自由であるという利点がある。
【0071】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物を製造する方法は、当業界において周知の方法であり、上述の可塑剤組成物を製造することができる場合であれば、特に制限されず、適用されることができる。
【0072】
例えば、クエン酸またはその無水物と2種(炭素数基準)のアルコールを直接エステル化反応させて前記組成物を製造することができ、シトレートと1種(炭素数基準)のアルコールをトランスエステル化反応させて組成物を製造することもできる。
【0073】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、前記エステル化反応を適切に行って製造された物質であり、上述の条件に合致するものとして、各系別のシトレート間の重量比などが好ましく合わされることができる場合であれば、製造方法は特に制限されない。
【0074】
一例として、前記直接エステル化反応は、クエン酸またはその誘導体と2種以上の混合アルコールを投入した後、触媒を添加し、窒素雰囲気下で反応させるステップと、未反応原料を除去するステップと、アシル化(acylation)反応を行うステップと、未反応原料および触媒を中和(または非活性化)させるステップと、不純物を除去(例えば、減圧蒸留など)濾過するステップとで行われることができる。
【0075】
前記アルコールは、前記化学式2~7において、RHおよびRLに相応するアルキル基を有する第一級アルコールであることができ、前記RLのアルキル基を有する第一級アルコールとRHのアルキル基を有する第一級アルコールとの重量比が、製造された組成物内の成分比を決定する主な要素として作用することができ、前記RLまたはRHのアルキル基を決定するアルコールに関する説明は、上述のものと重複するため、その記載を省略する。
【0076】
前記アルコールは、酸100モル%に対して、200~900モル%、200~700モル%、200~600モル%、250~600モル%、あるいは270~600モル%の範囲内で使用されることができ、このアルコールの含量を制御することで、最終組成物内の成分比を制御することができる。
【0077】
前記触媒は、一例として、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、アルキル硫酸などの酸触媒、乳酸アルミニウム、フッ化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、リン酸アルミニウムなどの金属塩、ヘテロポリ酸などの金属酸化物、天然/合成ゼオライト、陽イオンおよび陰イオン交換樹脂、テトラアルキルチタネート(tetra alkyl titanate)およびそのポリマーなどの有機金属から選択される1種以上であることができる。具体的な例として、前記触媒は、テトラアルキルチタネートを使用することができる。好ましくは、活性温度が低い酸触媒として、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが適切であることができる。
【0078】
触媒の使用量は、種類に応じて相違することができ、一例として、均一触媒の場合には、反応物の全100重量%に対して、0.01~5重量%、0.01~3重量%、1~5重量%あるいは2~4重量%の範囲内、また、不均一触媒の場合には、反応物の全量の5~200重量%、5~100重量%、20~200重量%、あるいは20~150重量%の範囲内であることができる。
【0079】
この際、前記反応温度は、100~280℃、100~250℃、あるいは120~230℃の範囲内であることができる。
【0080】
他の一例として、前記トランスエステル化反応は、シトレートと、前記シトレートのアルキルラジカルとは炭素数が異なるアルキルラジカルを有するアルコール(高級アルキル基が結合したシトレートの場合、低級アルキルアルコール、低級アルキル基が結合したシトレートの場合、高級アルキルアルコール)が反応することができる。ここで、シトレートとアルコールが有するアルキル基は互いに交差してもよい。
【0081】
本発明で使用される「トランスエステル化反応」は、下記反応式1のように、アルコールとエステルが反応し、以下反応式1で示されているように、エステルのR''がアルコールのR'と互いに相互交換される反応を意味する。
【0082】
【0083】
本発明の一実施形態によると、前記トランスエステル化反応が行われると、アルコールのアルコキシドがエステル化合物に存在する3つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合;エステル化合物に存在する2つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合;エステル化合物に存在する1つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合;反応が行われていない未反応の場合;のように、4種の場合に、数に応じて4タイプのエステル組成物が生成されることができる。
【0084】
ただし、本発明による可塑剤組成物に含まれるシトレートの場合、エステル基結合位置に応じて、2つのエステル基が交換される場合および1つのエステル基が交換される場合に対しては、それぞれ2種ずつ形成されることができ、それによって、最終組成物内には、最大6種の化合物が混合されていることができる。しかし、使用されるアルコールが異性体混合物である場合、存在するアルキル基が2種以上であるため、構造異性体が多様に生成されることができる。
【0085】
また、前記トランスエステル化反応は、酸-アルコール間のエステル化反応に比べて、廃水の問題が引き起こされないという利点がある。
【0086】
前記トランスエステル化反応により製造された混合物は、アルコールの添加量に応じて前記混合物の組成比を制御することができる。前記アルコールの添加量は、シトレート化合物100重量部に対して、0.1~200重量部、具体的には1~150重量部、より具体的には5~100重量部であることができる。参考までに、最終組成物内の成分比を決定するものは、前記直接エステル化反応のように、アルコールの添加量であることができる。
【0087】
すなわち、前記シトレート系組成物は、アルコールの添加量が多いほど、トランスエステル化反応に参加するシトレートのモル分率(mole fraction)が大きくなるため、前記混合物において、生成物であるシトレートの含量が増加することができ、これに相応して、未反応で存在するシトレートの含量は減少する傾向を示すことができる。
【0088】
本発明の一実施形態によると、前記トランスエステル化反応は、120℃~190℃、好ましくは135℃~180℃、より好ましくは141℃~179℃の反応温度下で、10分~10時間、好ましくは30分~8時間、より好ましくは1~6時間行われることが好ましい。前記温度および時間範囲内では、最終可塑剤組成物の成分比を効率的に制御することができる。この際、前記反応時間は、反応物の昇温後、反応温度に逹した時点から計算されることができる。
【0089】
前記トランスエステル化反応は、酸触媒または金属触媒下で実施されることができ、この場合、反応時間が短縮する効果がある。前記酸触媒は、一例として、硫酸、メタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などであることができ、前記金属触媒は、一例として、有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒または金属自体であることができる。前記金属成分は、一例として、スズ、チタンおよびジルコニウムからなる群から選択されたいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であることができる。
【0090】
また、前記トランスエステル化反応後、未反応アルコールと反応副生成物などを蒸留させて除去するステップをさらに含むことができる。前記蒸留は、一例として、前記アルコールと反応副生成物の沸点の差を用いて別に分離する2ステップ蒸留であることができる。他の一例として、前記蒸留は、混合蒸留であることができる。この場合、エステル系可塑剤組成物を所望の組成比で比較的安定的に確保することができる効果がある。前記混合蒸留は、未反応アルコールと反応副生成物を同時に蒸留することを意味する。
【0091】
本発明の他の一実施形態によると、上述の可塑剤組成物および樹脂を含む樹脂組成物が提供される。
【0092】
前記樹脂は、当分野において周知の樹脂を使用することができる。例えば、ストレート塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ポリケトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、天然ゴム、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上の混合物などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0093】
前記可塑剤組成物は、前記樹脂100重量部に対して、5~150重量部、好ましくは5~130重量部、または10~120重量部含まれることができる。
【0094】
一般的に、可塑剤組成物が使用される樹脂は、溶融加工またはプラスチゾル加工により樹脂製品に製造されることができ、溶融加工樹脂とプラスチゾル加工樹脂は、各重合方法に応じて異なるように生産されることができる。
【0095】
例えば、塩化ビニル重合体が溶融加工に使用される場合、平均粒径が大きい固体状の樹脂粒子が懸濁重合などにより製造されて使用され、このような塩化ビニル重合体は、ストレート塩化ビニル重合体と称される。塩化ビニル重合体がプラスチゾル加工に使用される場合、微細な樹脂粒子としてゾル状態の樹脂が乳化重合などにより製造されて使用され、このような塩化ビニル重合体は、ペースト塩化ビニル樹脂と称される。
【0096】
この際、前記ストレート塩化ビニル重合体の場合、可塑剤は、重合体100重量部に対して5~80重量部の範囲内で含まれることが好ましく、ペースト塩化ビニル重合体の場合、重合体100重量部に対して40~120重量部の範囲内で含まれることが好ましい。
【0097】
前記樹脂組成物は、充填剤をさらに含むことができる。前記充填剤は、前記樹脂100重量部に対して、0~300重量部、好ましくは50~200重量部、より好ましくは100~200重量部であることができる。
【0098】
前記充填剤は、当分野において周知の充填剤を使用することができ、特に制限されない。例えば、シリカ、マグネシウムカーボネート、カルシウムカーボネート、硬質炭、タルク、水酸化マグネシウム、チタンジオキシド、マグネシウムオキシド、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケートおよび硫酸バリウムから選択される1種以上の混合物であることができる。
【0099】
また、前記樹脂組成物は、必要に応じて、安定化剤などのその他の添加剤をさらに含むことができる。前記安定化剤などのその他の添加剤は、一例として、それぞれ、前記樹脂100重量部に対して、0~20重量部、好ましくは1~15重量部であることができる。
【0100】
前記安定化剤は、例えば、カルシウム-亜鉛の複合ステアリン酸塩などのカルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)安定化剤またはバリウム-亜鉛(Ba-Zn系)安定化剤を使用することができるが、これに特に制限されるものではない。
【0101】
前記樹脂組成物は、上述のように、溶融加工およびプラスチゾル加工にいずれも適用可能であり、例えば、溶融加工は、カレンダリング加工、押出加工、または射出加工が適用されることができ、プラスチゾル加工は、コーティング加工などが適用されることができる。
【0102】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例をあげて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、各種の他の形態に変形されることができ、本発明の範囲を以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0103】
実施例1~8
撹拌機、凝縮器およびデカンタが取り付けられた反応器に、クエン酸無水物380g、n-ブタノール40g、1-ヘキサノール、2-メチルペンタノールおよび3-メチルペンタノールがそれぞれ10:40:50の重量比で含まれたヘキシルアルコール異性体混合物760gおよびテトラブチルチタネート(TnBT)2gを投入した後、窒素雰囲気下でエステル化反応させて反応を終了し、未反応アルコールを除去した。次に、未反応アルコールが除去された反応物に酢酸無水物180gを投入し、2時間反応させて、アセチル化を完了した。次に、アセチル化が完了した組成物に塩基性水溶液を添加して触媒および組成物を中和および水洗し、未反応アルコールおよび水分を除去する精製工程を経て、アセチルトリ(n-ブチル)シトレート、アセチルジ(n-ブチル)(ヘキシル)シトレート、アセチルジ(ヘキシル)(n-ブチル)シトレートおよびアセチルトリ(ヘキシル)シトレートをそれぞれ0.1重量%、2.5重量%、7.2重量%および90.2重量%含む実施例1の組成物を得た。
【0104】
前記反応において、反応物の種類および投入量を調節し、下記の表1に示されているような組成を有する実施例2~8の組成物を製造した。
【0105】
一方、前記実施例に記載のアセチルジ(n-ブチル)(ヘキシル)シトレート、アセチルジ(ヘキシル)(n-ブチル)シトレートおよびアセチルトリ(ヘキシル)シトレートでの「ヘキシル」は、反応に使用されたヘキシルアルコール異性体混合物から由来したヘキシル基を意味し、1-ヘキシル、2-メチルペンチルおよび3-メチルペンチルをすべて含むものである。
【0106】
比較例1
ジオクチルフタレート(DOP、LG化学社製)を可塑剤として使用した。
【0107】
比較例2
ジイソノニルフタレート(DINP、LG化学社製)を可塑剤として使用した。
【0108】
比較例3
ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(GL300、LG化学社製)を可塑剤として使用した。
【0109】
比較例4~6
前記実施例1で、アルコールとして、n-ブタノールおよびヘキシルアルコール異性体混合物を投入する代わりに、2-エチルヘキサノールのみを投入して反応をさせた以外は、同様に反応させて比較例4のアセチルトリ(2-エチルヘキシル)シトレートを得た。
【0110】
比較例5および6は、比較例4を下記表1に記載のアルコールに変更したものである。
【0111】
比較例7~9
前記実施例1で、アルコールとして、n-ブタノールおよびヘキシルアルコール異性体混合物を投入する代わりに、2-エチルヘキサノールのみを投入して反応させ、アセチル化を行っていない以外は、同様に反応させて比較例7のトリ(2-エチルヘキシル)シトレートを得た。
【0112】
比較例8および9は、比較例7を下記表1に記載のアルコールに変更したものである。
【0113】
比較例10~11
撹拌機、凝縮器およびデカンタが取り付けられた反応器にクエン酸無水物384gおよび2-エチルヘキサノール1014gおよびテトラブチルチタネート(TnBT)2gを投入した後、窒素雰囲気下でエステル化反応させてトリ(2-エチルヘキシル)シトレートを製造した。
【0114】
撹拌機、凝縮器およびデカンタが取り付けられた反応器に前記製造されたトリ(2-エチルヘキシル)シトレート1000gおよびn-ブタノール300g(TEHC100重量部に対して30重量部)を投入した後、窒素雰囲気下で、160℃の反応温度で2時間トランス-エステル化反応させた。その後、未反応アルコールを除去し、酢酸無水物180gを追加投入し、2時間反応させて、アセチル化を完了した。結果、アセチルトリ(n-ブチル)シトレート、アセチルジ(n-ブチル)(2-エチルヘキシル)シトレート、アセチルジ(2-エチルヘキシル)(n-ブチル)シトレートおよびアセチルトリ(2-エチルヘキシル)シトレートをそれぞれ4.2重量%、25.2重量%、45.3重量%および25.3重量%含む比較例10の組成物を得た。
【0115】
前記反応において、反応物の種類および投入量を調節し、下記の表1に示されているような組成を有する比較例11の組成物を製造した。
【0116】
比較例12~13
前記比較例10においてアセチル化を行っていない以外は同様に反応させて比較例12の組成物を、前記比較例11においてアセチル化を行っていない以外は同様に反応させて比較例13の組成物を製造した。
【0117】
【表1-1】
【表1-2】
-上記の表1において、「C4 30% of TEHC」は、TEHC100重量部に対してC4アルコール30重量部であることを意味し、類似する記載は、同様に解釈することができる。
【0118】
実験例1:シート性能の評価
実施例および比較例の可塑剤を使用して、ASTM D638に準じて、以下のような処方および製作条件で試験片を製作した。
【0119】
(1)処方:ストレート塩化ビニル重合体(LS100)100重量部、可塑剤50重量部および安定剤(BZ-153T)3重量部
(2)配合:98℃で700rpmでミキシング
(3)試験片の製作:ロールミル(Roll mill)で160℃で4分、プレス(press)で180℃で2.5分間(低圧)および2分間(高圧)作業し、1T、2Tおよび3Tシートを製作
【0120】
(4)評価項目
1)硬度(hardness):ASTM D2240に準じて、25℃でのショア硬度(Shore「A」および「D」)を3T試験片で10秒間測定した。数値が小さいほど可塑化効率に優れたものと評価される。
2)引張強度(tensile strength):ASTM D638方法に準じて、テスト機器であるU.T.M(メーカー;Instron、モデル;4466)を用いて、200mm/minのクロスヘッドスピード(cross head speed)で引っ張った後、1T試験片が切断する地点を測定した。引張強度は、以下のように計算した。
【0121】
引張強度(kgf/cm2)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(cm)×幅(cm)
3)伸び率(elongation rate)の測定:ASTM D638方法に準じて、前記U.T.Mを用いて、200mm/minのクロスヘッドスピード(cross head speed)で引っ張った後、1T試験片が切断する地点を測定した後、伸び率を以下のように計算した。
【0122】
伸び率(%)=伸長後の長さ/初期の長さ×100で計算した。
【0123】
4)移行損失(migration loss)の測定:KSM-3156に準じて、厚さ2mm以上の試験片を得て、1T試験片の両面にガラス板を貼り付けた後、1kgf/cm2の荷重を加えた。試験片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出して、常温で4時間冷却した。その後、試験片の両面に貼り付けられたガラス板を除去した後、ガラス板とSpecimen Plateをオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を下記のような式によって計算した。
【0124】
移行損失量(%)={(常温での試験片の初期重量-オーブン放置の後の試験片の重量)/常温での試験片の初期重量}×100
【0125】
5)加熱減量(volatile loss)の測定:前記製作された試験片を80℃で72時間作業した後、試験片の重量を測定した。
【0126】
加熱減量(重量%)=初期の試験片の重量-(80℃、72時間作業後の試験片の重量)/初期の試験片の重量×100で計算した。
【0127】
6)ストレステスト(耐ストレス性):厚さ2mmの試験片を折り曲げた状態で、23℃で168時間放置した後、移行程度(染み出る程度)を観察し、その結果を数値で記載し、0に近いほど優れた特性を示す。
【0128】
7)炭化特性評価:厚さ0.25mmの試験片を40cm×40cmのサイズで製作し、Mathis Ovenで、230℃、10mm/20secの速度で炭化テストを行い、黒く炭化が始まった時間を相対比較して評価した。炭化特性に優れることは、相対的に炭化が遅く始まったことを意味し、炭化特性が劣ることは、相対的に炭化が速く始まったことを意味する。
【0129】
(5)評価結果
前記項目の評価結果を下記の表2および表3に示した。
【0130】
【0131】
【0132】
前記表2および3を参照すると、本発明の一実施形態による可塑剤組成物を適用した実施例1~8の場合、既存の製品として使用される比較例1~3に比べて、可塑化効率と移行損失が大幅に改善し、耐ストレス性にも優れることを確認することができる。
【0133】
また、比較例4~6は、2種以上のアルコールでシトレートのアルキル基を混成化せず、1種のアルコールで製造されたシトレートを適用したものであり、実施例1~8に比べて、ほとんどの物性において劣っていることが確認され、炭素数に応じて物性偏差が大きく発生する問題があることが分かる。
【0134】
なお、比較例7~9は、前記比較例4~6でアセチル化を行っていないものであり、比較例7~9も、比較例4~6と同様、全般的な物性において実施例1~8に比べて劣っており、炭化特性の場合、シトレートにアセチル基が存在しないことによって、アセチル基が存在する実施例1~8や、比較例4~6に比べて大幅に劣っていた。
【0135】
また、高級アルコールの炭素数がC6より大きいC8またはC9アルコールを適用した比較例10および11の場合、可塑化効率、引張強度、伸び率および移行損失の面で、実施例に比べて劣っており、耐ストレス性においても劣っていた。また、比較例10および11でアセチル化を行っていない比較例12および13の場合にも、引張強度、伸び率、耐ストレス性の面において実施例に比べて劣っており、比較例7~10の場合のように、シトレートにアセチル基が存在しないことによって、大幅に劣った炭化特性を示した。
【0136】
これにより、本発明の実施例のように、シトレートを可塑剤として適用する際には、アルコールを2種以上使用し、この際、C4およびC6のアルコールを組み合わせて使用することで、シトレートのアルキル基を混成化することが必要であり、この場合、優れた性能の可塑剤を具現することができるということを確認することができた。