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特許74833053-ヒドロキシプロピオネートの結晶および3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】3-ヒドロキシプロピオネートの結晶および3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/43 20060101AFI20240508BHJP
   C07C 59/01 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C59/01
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022577690
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2022000673
(87)【国際公開番号】W WO2022154537
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0006246
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0119997
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウチョル・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ヨン・フ
(72)【発明者】
【氏名】キュン・ムク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドンギョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒュン・キム
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139415(JP,A)
【文献】特開平02-072887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309451(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160686(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00ー51/64
C07C 59/00ー59/92
C12P 7/00ー 7/66
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na 、Mg 2+ およびCa 2+ からなる群より選択される一つ以上の陽イオンを含む金属塩存在下で、3-ヒドロキシプロピオン酸を350g/L以上900g/L以下含む濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階と、
前記濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を分離し、3-ヒドロキシプロピオン酸に転換する段階と、を含む、3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項2】
記金属塩はCa(OH)、Mg(OH)またはこれらの混合物である、請求項1に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項3】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、構造式1または構造式2の形態である、請求項1または2に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程:
[構造式1]
Cation(3HP)
[構造式2]
Cation(3HP)・mH
上記構造式中、
Cationは、陽イオン(Cation)であり、
3HPは、陽イオンと結合する3-ヒドロキシプロピオン酸であり、
nは、陽イオンと結合する3HPの数で、1以上の整数であり、
mは、水和物の水分子の数で、1以上の整数である。
【請求項4】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、粒子径分布D50が20μm以上90μm以下であり、(D90-D10)/D50が1.00以上3.00以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項5】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、体積平均径が30μm以上100μm以下であり、個数平均径が1μm以上30μm以下であり、面積平均径が10μm以上70μm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項6】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、平均アスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)が0.50以上3.00以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項7】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、カールフィッシャー法(Karl Fischer method)で測定された水分含有量が200ppm以上5000ppm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項8】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ASTM D6866-21規格で測定された放射性炭素同位体含有量が20pMC(percent modern carbon)以上であり、バイオ炭素含有量は20重量%以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項9】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、X線回折(XRD)分析で導出された結晶中の原子間間隔(d値)が1.00Å以上15.00Å以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項10】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、X線回折(XRD)分析時、2θ値が8~22度の範囲で結晶格子間のピークが現れる、請求項1からのいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項11】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、示差走査熱量計(DSC)による分析時、ガラス転移温度が-55℃以上-30℃以下である、請求項1から1のいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項12】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、示差走査熱量計(DSC)による分析時、融点が30℃以上170℃以下である、請求項1から1のいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項13】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、示差走査熱量計(DSC)による分析時、結晶化温度が25℃以上170℃以下である、請求項1から1のいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項14】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、純度が70%以上である、請求項1から13のいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項15】
3-ヒドロキシプロピオン酸生産能を有する菌株を発酵して3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する段階と、
前記発酵液を濃縮して前記3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液を形成する段階と、をさらに含む、請求項1から1のいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項16】
前記3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する段階後、
前記発酵液から細胞を除去する段階、または
前記発酵液をろ過または精製する段階をさらに含む、請求項1に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項17】
前記濃縮液を形成する段階において、前記濃縮は、発酵液を蒸発(evaporation)させて行われる、請求項1または1に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【請求項18】
3-ヒドロキシプロピオン酸の回収率が40%以上である、請求項1から1のいずれか一項に記載の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本出願は、2021年1月15日付の韓国特許出願第10-2021-0006246号および2021年9月8日付の韓国特許出願第10-2021-0119997号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶および3-ヒドロキシプロピオン酸(3-hydroxypropionic acid;3HP)の回収工程に関し、より詳しくは、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶化を利用した3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程および前記工程で形成された3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に関する。
【背景技術】
【0004】
3-ヒドロキシプロピオン酸(3-hydroxypropionic acid;3HP)は、アクリル酸(acrylic acid)、アクリル酸メチル(methyl acrylate)、アクリルアミド(acrylamide)などの多様な化学物質に転換可能なプラットフォーム化合物である。2004年に米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)からTop 12 value-added bio-chemicalに選ばれた後、学界と産業界で活発に研究されている。
【0005】
3-ヒドロキシプロピオン酸の生産は、大きく化学的方法と生物学的方法の2つの方法で行われるが、化学的方法の場合、初期物質が高価であること、生産過程中の毒性物質が生成されることなどによって環境にやさしくないとの指摘があり、環境にやさしいバイオ工程が脚光を浴びている。
【0006】
微生物発酵による有機酸の製造時、微生物を発酵する過程で3-ヒドロキシプロピオン酸などの有機酸以外の他の副産物も共に生成されるため、発酵液から有機酸を抽出および分離する過程を必要とする。微生物発酵液から有機酸を抽出および分離する方法としては、電気透析法、逆浸透膜法、有機酸を含有する溶液-有機溶媒反応抽出法などが用いられ、特に、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた逆抽出法が収率が高いため、幅広く利用されている。しかし、これらの方法の場合、生成物が有機酸塩の形態であるため、これを有機酸に転換するための工程をさらに必要とするので、純度が低いという短所がある。
【0007】
3-ヒドロキシプロピオン酸は、発酵工程により生産される他の有機酸とは異なり、高い親水性を示し、水に対する溶解度および反応性が高い。したがって、沈殿または抽出などの従来の有機酸の分離精製工程を適用しにくい。
【0008】
反応抽出法は、有機酸と反応性が良好なアミンまたはアルコールなどの活性稀釈液(active diluent)を用いて有機酸を抽出する方法であって、有機酸の選択的抽出が可能であり、抽出効率が比較的高い。したがって、3HPの分離精製時にも前記反応抽出法を適用することが試みられている。一例として、前記アミンとしてトリオクチルアミン(trioctylamine;TOA)を使用する方法が提案されたが、3HPの抽出効率が低く、また、多量の有機溶媒を必要とするという問題がある。また、アミンとしてトリデシルアミン(tridecylamine)を使用する場合、TOAより3HPの抽出効率は高いが、抽出時、有機相と水相が分離しないエマルジョン(emulsion)現象が発生する問題がある。
【0009】
したがって、微生物発酵液などの3-ヒドロキシプロピオン酸含有原料液から高純度および高収率の3-ヒドロキシプロピオン酸を回収する工程の開発を必要とするのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を生成する段階を含む3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程と前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アルカリ金属塩存在下で、3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階、および前記濃縮液から3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を分離し、3-ヒドロキシプロピオン酸に転換する段階を含む3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程が提供される。
【0012】
また、本発明は、下記構造式1または構造式2で表される3-ヒドロキシプロピオネートの結晶が提供される。
【0013】
[構造式1]
Cation(3HP)
[構造式2]
Cation(3HP)・mH
上記構造式中、
Cationは、陽イオン(Cation)であり、
3HPは、陽イオンと結合する3-ヒドロキシプロピオン酸であり、
nは、陽イオンと結合する3HPの数で、1以上の整数であり、
mは、水和物の水分子の数で、1以上の整数である。
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程および3-ヒドロキシプロピオネートの結晶について、より具体的に説明する。
【0015】
本明細書に記述する製造方法を構成する段階は順次的または連続的であることを明示するか、他の特別な言及がある場合でなければ、一つの製造方法を構成する一つの段階と他の段階が明細書に記述された順序に限定して解釈されない。したがって、当業者が容易に理解できる範囲内で製造方法の構成段階の順序を変化させることができ、この場合、それに付随する当業者にとって自明な変化は本発明の範囲に含まれるものである。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、アルカリ金属塩存在下で、3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階、および前記濃縮液から3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を分離し、3-ヒドロキシプロピオン酸に転換する段階を含む3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程が提供される。
【0017】
本発明者らは、アルカリ金属塩が存在する状態で3-ヒドロキシプロピオン酸が高濃度に濃縮されると、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成することができることを実験を通して確認し、このように形成された3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は液相から容易に分離(および精製)することができ、また、高純度の3-ヒドロキシプロピオネートを高い効率で回収できることを実験を通して確認して、発明を完成した。
【0018】
より具体的には、3-ヒドロキシプロピオン酸を含む濃縮液は300g/L以上、350g/L以上、400g/L以上、450g/L以上、500g/L以上の濃度で3-ヒドロキシプロピオン酸を含むことができ、900g/L以下、850g/L以下、800g/L以下の濃度で3-ヒドロキシプロピオン酸を含み得る。
【0019】
3-ヒドロキシプロピオン酸の結晶の生成の有無は、アルカリ金属塩の存在下、および濃縮液の3-ヒドロキシプロピオン酸の濃度などにより影響を受けると見られる。
【0020】
また、前記濃縮液中で3-ヒドロキシプロピオン酸の結晶の濃度が、3-ヒドロキシプロピオン酸の結晶の水溶解度(Water Solubility)より高い場合、3-ヒドロキシプロピオン酸の結晶がより容易に生成される。
【0021】
例えば、3-ヒドロキシプロピオン酸の結晶であるCa(3HP)の水溶解度(Water Solubility)は常温で450g/Lであるため、前記濃縮液の3-ヒドロキシプロピオン酸の濃度が450g/Lを超える場合、Ca(3HP)結晶の生成が促進される。また、前記3-ヒドロキシプロピオン酸の結晶であるMg(3HP)の水溶解度(Water Solubility)は常温で250g/Lであるため、前記濃縮液の3-ヒドロキシプロピオン酸の濃度が250g/Lを超える場合、Mg(3HP)結晶の生成が促進される。
【0022】
アルカリ金属塩を含み、かつ、上述した濃度を満たす濃縮液から3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成することができ、前記アルカリ金属塩は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成するための目的の範囲内で限定なく選択することができ、例えば、前記アルカリ金属塩は、Na、Mg2+およびCa2+からなる群より選択される一つ以上の陽イオンを含み得るが、Mg2+またはCa2+を含む場合、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶をより効果的に形成することができる。例えば、アルカリ金属塩はCa(OH)、Mg(OH)またはこれらの混合物であり得る。
【0023】
アルカリ金属塩は、3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する工程で添加されて残留するか、または3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する工程中に添加することができる。また、前記アルカリ金属塩の濃度は、3-ヒドロキシプロピオン酸の濃度の10%~100%、または30%~90%であり、例えば、10~900g/L、50~800g/L、100~700g/Lまたは200~600g/Lの濃度で、濃縮液に存在することがある。
【0024】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、下記構造式1または構造式2の形態であり得る。つまり、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、下記構造式1または構造式2の形態である3-ヒドロキシプロピオネートを含み得る。
【0025】
下記構造式1および構造式2中、Cationは陽イオン、3HPは陽イオンと結合する3-ヒドロキシプロピオン酸、nは陽イオンと結合する3HPの数で、1以上の整数を意味し、下記構造式2中、mは水和物でCation(3HP)nと結合する水分子の数で、1以上の整数である。陽イオンは、例えば、Na、Mg2+またはCa2+であり得るが、Mg2+またはCa2+の場合、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶がより効果的に形成される。
【0026】
[構造式1]
Cation(3HP)
[構造式2]
Cation(3HP)・mH
【0027】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階は、濃縮液を攪拌する段階をさらに含み得る。
【0028】
攪拌する段階は、摂氏0~70度、摂氏0~60度、摂氏0~50度、摂氏0~40度、摂氏0~35度、摂氏0~30度、摂氏10~70度、摂氏10~60度、摂氏10~50度、摂氏10~40度、摂氏10~35度、摂氏10~30度、摂氏15~70度、摂氏15~60度、摂氏15~50度、摂氏15~40度、摂氏15~35度、摂氏15~30度、摂氏20~70度、摂氏20~60度、摂氏20~50度、摂氏20~40度、摂氏20~35度、または摂氏20~30度(例えば、常温)の温度および/または100~2000rpm、100~1500rpm、100~1000rpm、100~500rpm、100~400rpm、または200~400rpm(例えば、約300rpm)の条件下で行うことができる。
【0029】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布D50は、20μm以上90μm以下、25μm以上85μm以下、30μm以上80μm以下、35μm以上75μm以下であり得る。
【0030】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布D10は、5μm以上40μm以下、8μm以上35μm以下、10μm以上30μm以下であり、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布D90は、50μm以上200μm以下、60μm以上190μm以下、65μm以上180μm以下、70μm以上175μm以下であり得る。
【0031】
粒子径分布D50、D10、D90は、粒度分布曲線において、それぞれ体積累積量の50%、10%、90%に相当する粒径を意味し、D50、D10、D90は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザー回折法は、通常、サブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径を測定することができ、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0032】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布D50、D10、D90が大きすぎると、結晶化の際に除去しなければならない不純物が結晶中に含まれるため精製効率が低下し、小さすぎると結晶のろ過時に通液性が低下する。
【0033】
一方、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の(D90-D10)/D50は、1.00以上3.00以下、1.20以上2.80以下、1.40以上2.60以下、1.60以上2.40以下であり得る。
【0034】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、体積平均径が30μm以上100μm以下、35μm以上95μm以下、40μm以上90μm以下であり、個数平均径が1μm以上30μm以下、3μm以上25μm以下、5μm以上20μm以下であり、面積平均径が10μm以上70μm以下、15μm以上60μm以下、20μm以上55μm以下であり得る。
【0035】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、体積平均径、個数平均径、および面積平均径が大きすぎると結晶化の際に除去しなければならない不純物が結晶中に含まれて精製効率が低下し、小さすぎると結晶のろ過時に通液性が低下する。
【0036】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布(D10、D50、D90)において、アスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)および平均アスペクト比は、それぞれ0.50以上3.00以下、0.70以上2.80以下、1.00以上2.50以下であり得る。3-ヒドロキシプロピオネートの結晶のアスペクト比が大きすぎると結晶の移送時に流れと詰まりの問題が発生することがあり、小さすぎると結晶のろ過時に通液性が低下する。
【0037】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、カールフィッシャー法(Karl Fischer method)で結晶中に含まれている水分含有量を測定することができ、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている水分含有量は200ppm以上5000ppm以下、250ppm以上4800ppm以下、300ppm以上4600ppm以下、350ppm以上4400ppm以下であり得る。
【0038】
この時、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中に含まれている水分は、結晶水(例えば、Ca(3HP)・2HO)ではなく、結晶中に含まれている付着水分を意味する。また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている水分含有量が多すぎると結晶固体ではなく、スラリー形態で回収されるか、または水中に不純物が含まれて純度が低下する問題が生じる。
【0039】
一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程において、後述する3-ヒドロキシプロピオン酸生産能を有する菌株を発酵するなどの工程により3-ヒドロキシプロピオン酸を製造することによって、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は放射性炭素同位体(14C)を含み得る。
【0040】
放射性炭素同位体(14C)は、地球大気中の炭素原子1012個当たりほとんど1個であり、半減期は約5700年であり、炭素ストック(stock)は、宇宙線(cosmic ray)と通常の窒素(14N)が参加する核反応により大気上層で豊富であり得る。一方、化石燃料では放射性炭素同位体が既に崩壊しており、14C比率が実質的に0であり得る。3-ヒドロキシプロピオン酸原料としてバイオ由来原料を使用するか、これと一緒に化石燃料を併用する場合、ASTM D6866-21規格で3-ヒドロキシプロピオン酸中に含まれている放射性炭素同位体含有量(pMC;percent modern carbon)とバイオ炭素含有量を測定することができる。
【0041】
測定方法は、例えば、測定対象化合物に含まれる炭素原子をグラファイトまたは二酸化炭素ガス形態にし、質量分析装置または液体閃光分光法により測定することができる。この時、質量分析装置などと共に14Cイオンを12Cイオンから分離するための加速器を併用して2個の同位元素を分離して、含有量および含有量比を質量分析装置で測定することができる。
【0042】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ASTM D6866-21規格で測定された放射性炭素同位体含有量が20pMC(percent modern carbon)以上、50pMC以上、90pMC以上、100pMC以上であり、バイオ炭素含有量は20重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上であり得る。
【0043】
前記放射性炭素同位体比(pMC)は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている放射性炭素同位体(14C)と現代基準参考物質の放射性炭素同位体(14C)の比率を意味し、1950年代の核実験プログラムの効力が消滅せずに持続しており、100%よりも大きいことがある。
【0044】
また、バイオ炭素含有量は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている炭素含有量全体に対するバイオ炭素含有量を意味し、該値が大きいほど環境にやさしい化合物に相当する。
【0045】
一方、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の放射性炭素同位体含有量(pMC)およびバイオ炭素含有量が少なすぎると環境へのやさしさが減少し、バイオ由来物質ではないとみられる。
【0046】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の状態は、X線回折(XRD)グラフにおいてピークなどにより確認することができる。
【0047】
例えば、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、X線回折(XRD)分析時、2θ値が8~22度の範囲で結晶格子間のピークが現れる。
【0048】
例えば、濃縮液に水酸化マグネシウム(Mg(OH))が含まれているので、形成される3-ヒドロキシプロピオネートの結晶がMg(3HP)の場合、Mg(3HP)に対するX線回折(XRD)分析時、2θ値が8~15度の範囲で3-ヒドロキシプロピオン酸とマグネシウム結合による結晶格子間のピークが現れる。このようなピークは、水酸化マグネシウム(Mg(OH))または硫酸マグネシウム(Mg(SO))に対するX線回折(XRD)分析結果とは異なる結果を示すものであり、X線回折(XRD)分析結果、2θ値が8~15度の範囲で特定のピークが現れる場合、Mg(3HP)の結晶が形成されたことを確認することができる。
【0049】
具体的には、Mg(3HP)に対するX線回折(XRD)分析時、2θ値が8~15度の範囲で3つ以上、4つ以上または5つ以上のピークが現れ、例えば、2θ値が8.2~9.3度、9.5~11.0度、11.2~12.7度、12.9~13.3度、13.5~14.8度の範囲でそれぞれのピークが現れる。
【0050】
また、濃縮液に水酸化カルシウム(Ca(OH))が含まれているので、形成される3-ヒドロキシプロピオネートの結晶がCa(3HP)の場合、Ca(3HP)に対するX線回折(XRD)分析時、2θ値が10~22度の範囲で3-ヒドロキシプロピオン酸とカルシウム結合による結晶格子間のピークが現れる。このようなピークは、水酸化カルシウム(Ca(OH))または硫酸カルシウム(Ca(SO))に対するX線回折(XRD)分析結果とは異なる結果を示すものであり、X線回折(XRD)分析結果、2θ値が10~22度の範囲で特定のピークが現れる場合、Ca(3HP)の結晶が形成されたことを確認することができる。
【0051】
具体的には、Ca(3HP)に対するX線回折(XRD)分析時、2θ値が10~22度の範囲で3つ以上、5つ以上、7つ以上、9つ以上のピークが現れ、例えば、2θ値が10.0~11.0度、11.1~11.6度、11.6~12.5度、12.7~13.6度、13.8~16.0度、17.0~18.0度、19.0~19.8度、20.2~21.2度、21.5~22.0度の範囲でそれぞれのピークが現れる。
【0052】
一方、入射角(θ)とは、X線を特定の結晶面に照射するとき、結晶面とX線がなす角度を意味し、前記ピークとは、x-y平面において横軸(x軸)が入射X線の入射角の2倍(2θ)値であり、x-y平面において縦軸(y軸)が回折強度のグラフ上で、横軸(x軸)である入射X線の入射角の2倍(2θ)値が正方向に増加することによって、縦軸(y軸)である回折強度に対する横軸(x軸)であるX線の入射角の2倍(2θ)値の1次微分値(接線の傾き、dy/dx)が正の値から負の値に変わる、1次微分値(接線の傾き、dy/dx)が0である地点を意味する。
【0053】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、X線回折(XRD)分析で導出された結晶中の原子間間隔(d値)が1.00Å以上15.00Å以下、1.50Å以上13.00Å以下、2.00Å以上11.00Å以下、2.50Å以上10.00Å以下であり得る。
【0054】
例えば、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶がMg(3HP)の場合、2θ値が8~15度の範囲に現れるピークの前記結晶中の原子間間隔(d値)は、1.00Å以上15.00Å以下、2.00Å以上13.00Å以下、4.00Å以上11.00Å以下、5.50Å以上10.00Å以下であり得る。
【0055】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶がCa(3HP)の場合、2θ値が10~22度の範囲に現れるピークの前記結晶中の原子間間隔(d値)は、1.00Å以上15.00Å以下、2.00Å以上13.00Å以下、3.00Å以上10.00Å以下、3.40Å以上9.00Å以下、4.00Å以上8.50Å以下であり得る。
【0056】
また、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ガラス転移温度が-55℃以上-30℃以下であり、融点が30℃以上170℃以下であり、結晶化温度が25℃以上170℃以下であり得る。
【0057】
ガラス転移温度、融点、結晶化温度は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を示差走査熱量計(DSC)によって測定することができ、測定時、昇温速度は1~20℃/分であり得る。また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ガラス転移温度が-55℃以上-30℃以下、-50℃以上-35℃以下、-45℃以上-40℃以下であり得る。また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の融点は、30℃以上170℃以下、31℃以上160℃以下、32℃以上150℃以下であり得る。また、前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の結晶化温度は、25℃以上170℃以下、27℃以上160℃以下、30℃以上150℃以下であり得る。また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の結晶化安定区間は、-40℃~150℃であり得る。
【0058】
一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階前に、3-ヒドロキシプロピオン酸生産能を有する菌株を発酵して3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する段階と、発酵液を濃縮して前記3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液を形成する段階とを含み得る。
【0059】
3-ヒドロキシプロピオン酸生産能を有する菌株は、グリセロールデヒドラターゼ(glycerol dehydratase)およびアルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase)からなる群より選択される一つ以上または前記2種のタンパク質をコードする遺伝子を含むものであり得る。
【0060】
一例として、3-ヒドロキシプロピオン酸生産菌株は、グリセロールデヒドラターゼ再活性化酵素(GdrAB)をコードする遺伝子(gdrAB)をさらに含み得る。一例として、3-ヒドロキシプロピオン酸生産菌株は、さらにビタミンB12を生合成することができる菌株であり得る。
【0061】
グリセロールデヒドラターゼ(glycerol dehydratase)は、dhaB(GenBank accession no.U30903.1)遺伝子によってコードされるものであり得るが、これに限定されない。前記dhaB遺伝子は、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)に由来する酵素であり得るが、これに限定されない。前記グリセロールデヒドラターゼをコードする遺伝子は、dhaB1、dhaB2および/またはdhaB3をコードする遺伝子を含み得る。前記グリセロールデヒドラターゼタンパク質およびこれをコードする遺伝子は、グリセロールを3-ヒドロキシプロパナール(3-hydroxypropanal、3-HPA)と水(HO)に分解する酵素活性を維持する範囲内で遺伝子および/またはアミノ酸配列の変異を含み得る。
【0062】
アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase;ALDH)をコードする遺伝子(aldH)は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)またはE.coli K12 MG1655細胞株に由来するaldH(GenBank Accession no.U00096.3;EaldH)遺伝子、クレブシエラニューモニエ(K.pneumoniae)に由来するpuuC遺伝子、および/またはアゾスピリルムブラシレンセ(Azospirillum brasilense)由来のKGSADH遺伝子であり得るが、これらに限定されない。前記アルデヒド脱水素酵素タンパク質およびこれをコードする遺伝子は、3-ヒドロキシプロパナールから3-ヒドロキシプロピオン酸を生産するための活性を維持する範囲内で遺伝子および/またはアミノ酸配列の変異を含み得る。
【0063】
発酵液生産のための培地は、3-ヒドロキシプロピオン酸生産のための目的の範囲で制限なく選択される。一例として、前記培地は、炭素源としてグリセロール(glycerol)を含むものであり得る。さらに他の一例として、前記培地は、廃グリセロール(crude glycerol)および/または前処理された廃グリセロールであり得るが、これらに限定されない。一例として、前記生産用培地は、ビタミンB12をさらに含み得る。
【0064】
3-ヒドロキシプロピオン酸生産能を有する菌株を発酵して3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する段階において、前記3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液に含まれている3-ヒドロキシプロピオン酸の濃度は、1~200g/L、10~150g/L、30~130g/Lまたは40~100g/Lであり得る。
【0065】
また、発酵は中性発酵であり、例えば、発酵時のpHが6~8、6.5~8、6~7.5または6.5~7.5の範囲で維持し得るが、これに限定されない。上記pHの範囲は必要に応じて適切に調節することができる。前記中性発酵のためにアルカリ金属塩を投入することができる。アルカリ金属塩は、Mg2+、Caまたはその混合物を含み得る。また、前記アルカリ金属塩は、Ca(OH)またはMg(OH)であり得るが、これらに限定されない。
【0066】
一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程は、3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する段階後、発酵液から細胞を除去(分離)する段階;発酵液および/または細胞が除去された発酵液を精製および/または脱色(decoloration)する段階;および/または発酵液および/または細胞が除去された発酵液をろ過する段階をさらに含み得る。
【0067】
細胞の除去(分離)は、細胞(菌株)除去の目的の範囲で当業界にて知られている方法を制限なく選択して行うことができる。一例として、細胞の分離は、遠心分離で行うことができる。
【0068】
発酵液および/または細胞が除去された発酵液を精製および/または脱色(decoloration)する段階は、発酵液精製の目的の範囲で当業界にて知られている方法を制限なく選択して行うことができ、例えば、活性炭を前記発酵液と混合した後、活性炭を除去することによって行うことができるが、これに限定されない。
【0069】
前記発酵液および/または細胞が除去された発酵液をろ過する段階は、固形不純物の除去、タンパク質および/または疎水性官能基がある物質の除去、および/または脱色(decoloration)の目的の範囲で当業界にて知られている方法を制限なく選択して行うことができ、例えば、フィルターろ過、および/または活性炭ろ過方法で行うことができ、これらに限定されない。
【0070】
一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程は、3-ヒドロキシプロピオン酸生産能を有する菌株を発酵して3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を生産する段階後、発酵液を濃縮して3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液を形成する段階を含み得る。
【0071】
発酵液の濃縮は、発酵液(例えば、発酵液の液状成分)を蒸発させて行うことができる。
【0072】
濃縮は、発酵液の液状成分を蒸発させるために通常使用可能なすべての手段によって行うことができ、例えば、回転蒸発濃縮、蒸発濃縮、真空濃縮、減圧濃縮などで行うことができるが、これらに限定されない。
【0073】
一例として、濃縮後の発酵液中の3-ヒドロキシプロピオン酸の濃度は、濃縮前と比較して2~50倍、2~40倍、2~30倍、2~20倍、2~10倍、5~50倍、5~40倍、5~30倍、5~20倍、または5~10倍増加したものであり得る。
【0074】
上述のように、発酵液を濃縮して3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液を形成する段階後に、アルカリ金属塩存在下で3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成することができる。
【0075】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階後に、濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を分離し、3-ヒドロキシプロピオン酸に転換することができる。
【0076】
濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を分離する方法は、結晶を分離するための目的の範囲で本発明の属する技術分野で知られている方法を制限なく選択して行うことができる。一例として、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の回収は、乾燥(例えば、加熱乾燥など)、および/またはろ過方法で行うことができるが、これらに限定されない。
【0077】
また、分離された3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を3-ヒドロキシプロピオン酸に転換(精製)する方法は、3-ヒドロキシプロピオン酸の精製の目的の範囲で当業界にて知られている方法を制限なく選択して行うことができる。例えば、下記に列挙した方法のうち一つ以上の方法を使用することができるが、これらに限定されない。
【0078】
例えば、i)陽イオン交換樹脂により陽イオンを除去して3-ヒドロキシプロピオン酸をプロトン化(protonation)する方法、
ii)液体陽イオン交換(Liquid Cation Exchange)を用いて陽イオン(例えば、Mg2+、Ca2+など)を有機溶媒で抽出して3-ヒドロキシプロピオン酸をプロトン化(Protonation)する方法、および
iii)酸(例えば、硫酸など)で滴定して塩(例えば、CaSO(s)またはMgSO(s))を製造することにより、3-ヒドロキシプロピオン酸をプロトン化(Protonation)する方法が挙げられる。
【0079】
一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)回収工程において、3-ヒドロキシプロピオン酸の回収率は、下記数式1の方法で計算することができる。
【0080】
[数式1]
3HPの回収率(%)={(結晶中の3HP含有量)/(結晶化前の発酵液の3HP含有量)}×100
【0081】
一例として、本発明に係る3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程の3-ヒドロキシプロピオン酸の回収率は、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、例えば、40~99.9%、50~99.9%、60~99.9%、70~99.9%、80~99.9%、90~99.9%、40~99%、50~99%、60~99%、70~99%、80~99%、90~99%、40~97%、50~97%、60~97%、70~97%、80~97%、90~97%、40~95%、50~95%、60~95%、70~95%、80~95%、または90~95%であり得るが、これらに限定されない。前記回収率は、重量を基準にして算定したものであり得る。
【0082】
また、3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)回収工程において、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中に含まれている3-ヒドロキシプロピオネートの純度は、回収された結晶全体の質量に対して構造式1および/または構造式2の構造式を有する化合物の質量百分率(%)で計算することができる。一例として、本発明に係る3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程で生成された3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中に含まれている3-ヒドロキシプロピオネートの純度は、70%以上、80%以上、90%以上、70~99.9%、80~99.9%、90~99.9%、70~99%、80~99%、または90~99%であり得るが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の他の一実施形態によれば、下記構造式1または構造式2で表される3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を提供する。
【0084】
[構造式1]
Cation(3HP)
[構造式2]
Cation(3HP)・mH
上記構造式1および構造式2中、Cationは陽イオンを、3HPは陽イオンと結合する3-ヒドロキシプロピオン酸を、nは陽イオンと結合する3HPの数で、1以上の整数を意味し、下記構造式2中、mは水和物でCation(3HP)nと結合する水分子の数で、1以上の整数である。陽イオンは、例えば、Na、Mg2+またはCa2+であり得るが、Mg2+またはCa2+の場合、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶がより効果的に形成される。
【0085】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程で形成されたものであり、例えば、アルカリ金属塩存在下で、3-ヒドロキシプロピオン酸を300g/L以上含む濃縮液で3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を形成する段階で形成されたものであり得る。
【0086】
前記3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、粒子径分布D50が20μm以上90μm以下、25μm以上85μm以下、30μm以上80μm以下、35μm以上75μm以下であり、粒子径分布D10は5μm以上40μm以下、8μm以上35μm以下、10μm以上30μm以下であり、粒子径分布D90は50μm以上200μm以下、60μm以上190μm以下、65μm以上180μm以下、70μm以上175μm以下であり得る。
【0087】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の(D90-D10)/D50は1.00以上3.00以下、1.20以上2.80以下、1.40以上2.60以下、1.60以上2.40以下であり得る。
【0088】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、体積平均径が30μm以上100μm以下、35μm以上95μm以下、40μm以上90μm以下であり、個数平均径が1μm以上30μm以下、3μm以上25μm以下、5μm以上20μm以下であり、面積平均径が10μm以上70μm以下、15μm以上60μm以下、20μm以上55μm以下であり得る。
【0089】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布(D10、D50、D90)のアスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)、および平均アスペクト比は、それぞれ0.50以上3.00以下、0.70以上2.80以下、1.00以上2.50以下であり得る。
【0090】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている水分含有量は、200ppm以上5000ppm以下、250ppm以上4800ppm以下、300ppm以上4600ppm以下、350ppm以上4400ppm以下であり得る。
【0091】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ASTM D6866-21規格で測定された放射性炭素同位体含有量が20pMC(percent modern carbon)以上、50pMC以上、90pMC以上、100pMC以上であり、バイオ炭素含有量は20重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上であり得る。
【0092】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、X線回折(XRD)分析時、2θ値が8~22度の範囲で結晶格子間のピークが現れ、XRD分析で導出された結晶中の原子間間隔(d値)が1.00Å以上15.00Å以下、1.50Å以上13.00Å以下、2.00Å以上11.00Å以下、2.50Å以上10.00Å以下であり得る。
【0093】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ガラス転移温度が-55℃以上-30℃以下であり、融点が30℃以上170℃以下であり、結晶化温度が25℃以上170℃以下であり得る。
【0094】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中に含まれている3-ヒドロキシプロピオネートの純度は、70%以上、80%以上、90%以上、70~99.9%、80~99.9%、90~99.9%、70~99%、80~99%、または90~99%であり得る。
【0095】
また、上述した3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布D10、D50、D90、(D90-D10)/D50、体積平均径、個数平均径、面積平均径、粒子径分布(D10、D50、D90)のアスペクト比、平均アスペクト比、水分含有量、放射性炭素同位体含有量、バイオ炭素含有量、XRD分析の導出結果(結晶中の原子間間隔(d値)、特定の2θ値の範囲に現れるピーク)、ガラス転移温度、融点、結晶化温度および純度などに対する測定条件、具体的な説明などについては、一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程で上述した通りである。
【0096】
本発明のさらに他の実施形態によると、3-ヒドロキシプロピオン酸のアルカリ金属塩またはその水和物を含み、ASTM D6866-21規格で測定されたバイオ炭素含有量は20重量%以上の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶を提供する。
【0097】
3-ヒドロキシプロピオン酸のアルカリ金属塩は、3-ヒドロキシプロピオン酸のカルシウム塩またはマグネシウム塩であり得る。
【0098】
また、3-ヒドロキシプロピオン酸のアルカリ金属塩は、下記構造式1で表され、3-ヒドロキシプロピオン酸のアルカリ金属塩の水和物は、下記構造式2で表される。Cationは、Mg2+またはCa2+であり得る。
【0099】
[構造式1]
Cation(3HP)
[構造式2]
Cation(3HP)・mH
【0100】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ASTM D6866-21規格で測定された放射性炭素同位体含有量が20pMC(percent modern carbon)以上、50pMC以上、90pMC以上、100pMC以上であり、バイオ炭素含有量は20重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上であり得る。
【0101】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、体積平均径が30μm以上100μm以下、35μm以上95μm以下、40μm以上90μm以下であり、個数平均径が1μm以上30μm以下、3μm以上25μm以下、5μm以上20μm以下であり、面積平均径が10μm以上70μm以下、15μm以上60μm以下、20μm以上55μm以下であり得る。
【0102】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布(D10、D50、D90)のアスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)および平均アスペクト比は、それぞれ0.50以上3.00以下、0.70以上2.80以下、1.00以上2.50以下であり得る。
【0103】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、粒子径分布D50が20μm以上90μm以下、25μm以上85μm以下、30μm以上80μm以下、35μm以上75μmであり、粒子径分布D10は5μm以上40μm以下、8μm以上35μm以下、10μm以上30μm以下であり、粒子径分布D90は50μm以上200μm以下、60μm以上190μm以下、65μm以上180μm以下、70μm以上175μm以下であり得る。
【0104】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の(D90-D10)/D50は、1.00以上3.00以下、1.20以上2.80以下、1.40以上2.60以下、1.60以上2.40以下であり得る。
【0105】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている水分含有量は、200ppm以上5000ppm以下、250ppm以上4800ppm以下、300ppm以上4600ppm以下、350ppm以上4400ppm以下であり得る。
【0106】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、X線回折(XRD)分析時、2θ値が8~22度の範囲で結晶格子間のピークが現れ、XRD分析で導出された結晶中の原子間間隔(d値)が1.00Å以上15.00Å以下、1.50Å以上13.00Å以下、2.00Å以上11.00Å以下、2.50Å以上10.00Å以下であり得る。
【0107】
3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、ガラス転移温度が-55℃以上-30℃以下であり、融点が30℃以上170℃以下であり、結晶化温度が25℃以上170℃以下であり得る。
【0108】
また、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中に含まれている3-ヒドロキシプロピオネートの純度は、70%以上、80%以上、90%以上、70~99.9%、80~99.9%、90~99.9%、70~99%、80~99%、または90~99%であり得る。
【0109】
上述した3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒子径分布D10、D50、D90、(D90-D10)/D50、体積平均径、個数平均径、面積平均径、粒子径分布(D10、D50、D90)のアスペクト比、平均アスペクト比、水分含有量、放射性炭素同位体含有量、バイオ炭素含有量、XRD分析の導出結果(結晶中の原子間間隔(d値)、特定の2θ値の範囲に現れるピーク)、ガラス転移温度、融点、結晶化温度および純度などに対する測定条件、具体的な説明などについては、一実施形態による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収工程で上述した通りである。
【発明の効果】
【0110】
本発明に係る3-ヒドロキシプロピオネートの結晶は、3-ヒドロキシプロピオネートを高純度で含み、特定粒径または形状を有することによって発酵副産物および/または添加物などの不純物からのろ過が容易であり、また、3-ヒドロキシプロピオン酸回収(分離、精製)工程は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶化により発酵副産物および/または添加物を容易に分離することができるので、高純度の3-ヒドロキシプロピオネートを回収することができ、有機溶媒なしに工程を行うことができるので3-ヒドロキシプロピオン酸の分離精製工程を単純化することができ、3-ヒドロキシプロピオン酸の精製費用を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1】実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
図2】実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
図3】実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
図4】実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
図5】実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))の示差走査熱量計(DSC)による分析結果を示すグラフである。
図6】実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))の示差走査熱量計(DSC)による分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0112】
以下、本発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は例示に過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0113】
本明細書において特段の言及がない限り、温度は全て摂氏で表す。
【実施例
【0114】
調製例1.3-ヒドロキシプロピオン酸生産用菌株の製造
グリセロールを基質として使用して、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-hydroxypropionic acid、3HP)を生産することが知られているグリセロールデヒドラターゼ(Glycerol dehydratase)およびアルデヒド脱水素酵素(Aldehyde dehydrogenase)をコードする遺伝子を導入した組換えベクターを製造した。前記製造された組換えベクターを大腸菌(E.coli)W3110株に導入して3-ヒドロキシプロピオン酸生産菌株を製作した。
【0115】
より具体的には、グリセロールデヒドラターゼをコードする遺伝子(dhaB)、アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(aldH)およびグリセロールデヒドラターゼリアクチバーゼをコードする遺伝子(gdrAB)を含むプラスミドpCDFにアデノシルトランスフェラーゼをコードするBtuR遺伝子をクローニングして得られたpCDF_J23101_dhaB_gdrAB_J23100_aldH_btuRベクターをW3110株(KCCM 40219)に電気穿孔装置(Bio-Rad、Gene Pulser Xcell)を用いた電気穿孔法で導入して3-ヒドロキシプロピオン酸生産菌株を製作した。調製例1の3-ヒドロキシプロピオン酸生産菌株の製作過程および使用されたベクター、プライマ-、および酵素は、韓国公開特許第10-2020-0051375号公報(参照として本明細書に組み込む)の実施例1を参照して行った。
【0116】
実施例1.Ca(3HP)結晶の製造
調製例1で調製した3-ヒドロキシプロピオン酸生産用菌株を、非精製グリセロールを炭素源として使用して、5L発酵器で摂氏35度で発酵培養し、3-ヒドロキシプロピオン酸を生産した。3-ヒドロキシプロピオン酸生成によるpH低下を防止するために、アルカリ金属塩である水酸化カルシウム(Ca(OH))を投入して発酵中のpHを中性に維持した。
【0117】
発酵培養後、遠心分離(4000rpm、10分、摂氏4度)して細胞を除去し、活性炭を用いて1次発酵液精製(1次精製)を行った。具体的には、遠心分離して菌体が除去された発酵液に活性炭を添加してよく混合した後、再び遠心分離して活性炭を分離した。その後、活性炭が分離された発酵液を0.7umのろ過紙を用いて真空ポンプ(vaccum pump)でろ過して、3-ヒドロキシプロピオン酸発酵液を精製した。
【0118】
前記1次精製を終えた発酵液の3-ヒドロキシプロピオン酸濃度は50~100g/Lであり、前記発酵液は、Rotary evaporator(摂氏50度、50mbar)を用いて濃度600g/Lに濃縮して濃縮液を製造し、常温で攪拌(300rpm)してCa(3HP)結晶を生成した。この時、前記濃縮液における前記アルカリ金属塩の濃度は493.3g/L(Ca(OH)基準)であった。
【0119】
前記生成された結晶をエタノール(EtOH)を用いて3回洗浄(washing)し、摂氏50度のオーブンで乾燥して最終的に結晶を回収した。前記結晶の重量を測定し、結晶を水に溶かして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の量を定量して、結晶中の3-ヒドロキシプロピオン酸の量を測定し、発酵液中のHPLCで測定された3-ヒドロキシプロピオン酸の量と比較して回収率を測定した(数式1)。
【0120】
[数式1]
3HPの回収率(%)={(結晶中の3HP含有量)/(結晶化前の発酵液の3HP含有量)}×100
結晶で回収した3-ヒドロキシプロピオン酸の回収率は約92%であった。
【0121】
実施例2.Mg(3HP)結晶の製造
前記実施例1と実質的に同様の方法で発酵過程を行うものの、アルカリ金属塩としてCa(OH)の代わりにMg(OH)を使用し、濃縮してMg(3HP)結晶を生成および回収した。
下記表1に各濃縮液の濃度別のMg(3HP)結晶の回収率を示す。
【表1】
【0122】
上記表1から分かるように、濃縮後の結晶化の結果、90%以上の3-ヒドロキシプロピオン酸が回収され、結晶化による3-ヒドロキシプロピオン酸の回収率が優れていることが確認された。
【0123】
比較例1.発酵後硫酸で滴定
前記実施例1と同様の方法で発酵過程を行った後、硫酸(HSO)を用いてpH2まで発酵液を滴定した。滴定過程で生成された石膏(Gypsum、Ca(SO))を除去し、3-ヒドロキシプロピオン酸のプロトン化(protonation)を行った。
【0124】
前記石膏を除去した発酵液を前記実施例1と実質的に同様の方法で1次精製および濃縮し、結晶生成の有無を確認した。
【0125】
しかし、濃縮過程で600g/L(3HP基準)を濃縮した場合、結晶が生成せず、1000g/L(3HP基準)まで濃縮を行った場合でも結晶の生成が確認されなかった。
【0126】
<試験例>
1.結晶中の3-ヒドロキシプロピオネートの純度分析
イオンクロマトグラフィー(Ion chromatography、IC)分析(Dionex Aquion;Eluent:20mM Methanesulfonic Acid;Column:Dionex IonPac CS12A;Flow Rate:1.0ml/min;Suppressor:Dionex CERS 500 4mm;Current:59mA)を行い、前記実施例1および実施例2で得られた3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の陽イオン分析を行い、結晶中の各3-ヒドロキシプロピオネートの純度を確認した。
【0127】
下記表2に実施例1のCa(3HP)結晶の陽イオン分析結果を、下記表3に実施例2のMg(3HP)結晶の各濃縮液の濃度別の3-ヒドロキシプロピオネートの純度測定結果を示す。
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
上記表2および表3を参照すると、実施例1および実施例2で結晶中の3-ヒドロキシプロピオネートの純度は92.9%以上であることを確認し、実施例1の純度の場合、上記表2のCationの種類中のCa2+の比率でCa(3HP)の純度を確認した結果、98%以上と非常に優れた純度を示すことを確認した。
【0130】
2.結晶中の3-ヒドロキシプロピオン酸の分析
実施例1および実施例2で得られた3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中の3-ヒドロキシプロピオン酸の含有量を分析するために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を行った。具体的なHPLCの条件は、下表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
実施例1および実施例2の結晶に対するHPLCによる結果を下表5に示す。下表5において結晶中の3-ヒドロキシプロピオネートは、実施例1の場合Ca(3HP)、実施例2の場合Mg(3HP)を意味する。
【0133】
【表5】
【0134】
上記表5を参照すると、実施例1および実施例2の結晶に対するHPLCによる結果に現れる結晶中の3HP塩の純度が93.20%以上であることを確認した。
【0135】
3.3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の粒度分析
粒度分析装置(Size and Shape Particle Analyzer;Microtrac TurboSync)を用いて実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))と実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))のD10、D50、D90、体積平均径、個数平均径および面積平均径をそれぞれ測定し、その結果を下表6に示す。
【0136】
また、前記粒度分析装置を用いて実施例1および実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶のD10、D50およびD90それぞれのアスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)と平均アスペクト比を測定して、下表7に示す。
【0137】
【表6】
【表7】
【0138】
アスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)
上記表6および表7を参照すると、実施例1および実施例2の粒子径分布D10が13.68~27.41μmであり、粒子径分布D50が36.50~71.40μmであり、粒子径分布D90が74.02~170.40であり、(D90-D10)/D50が、実施例1は2.00であり、実施例2は1.65であり、体積平均径が41.30~88.71μmであり、個数平均径が5.13~18.99μmであり、面積平均径が24.81~53.45μmであり、D10のアスペクト比(LW Ratio;Length to width ratio)が13.68~27.41であり、D50のアスペクト比が36.50~71.40であり、D90のアスペクト比が74.02~170.40であり、平均アスペクト比が41.30~88.71であることを確認した。
【0139】
4.3-ヒドロキシプロピオネートの結晶の水分含有量の分析
メトローム(Metrohm)社製のカールフィッシャー滴定装置を用いて実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))と実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))の水分含有量を分析し、下表8に示す。
【表8】
【0140】
上記表8を参照すると、実施例1および実施例2の水分含有量が351~4370ppmであることを確認した。
【0141】
5.3-ヒドロキシプロピオネートの結晶中のバイオ炭素含有量の分析
ASTM D6866-21(Method B)を用いて実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))と実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))の放射性炭素同位体比(pMC)およびバイオ炭素含有量を分析し、その結果を下表9に示す。
【0142】
前記バイオ炭素含有量は、実施例1および実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶にそれぞれ含まれているバイオ炭素含有量を意味し、放射性炭素同位体比(pMC)は、3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に含まれている放射性炭素同位体(14C)と現代基準参考物質の放射性炭素同位体(14C)の比率を意味する。
【0143】
【表9】
【0144】
-pMC:percent Modern Carbon;パーセントの現代炭素
上記表9を参照すると、前記実施例1および実施例2の3HP塩の結晶の全てのpMCが101以上であり、バイオ炭素含有量もまた、100%であることを確認した。
【0145】
6.3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に対するX線回折(XRD)分析
実施例1および実施例2で製造された結晶に対して1.54Åの波長のCu-Kα線を照射して反射モードのX線回折(XRD)パターンを測定した。
【0146】
測定装置はBruker AXS D4 Endeavor XRDを用いた。使用電圧および電流は、それぞれ40kVおよび40mAであり、使用した光学素子(optics)および検出装置(detector)は以下の通りである。
【0147】
-Primary(incident beam)optics:motorized divergence slit、soller slit 2.3度
-Secondary(diffracted beam)optics:soller slit 2.3度
-LynxEye detector(1D detector)
【0148】
図1および図2は、実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶のX線回折分析の結果を示すグラフであり、図3および図4は、実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶のX線回折分析の結果を示すグラフである。
【0149】
図1および図2のXRDグラフにおいて番号が付与されたピークの2θ値および格子面間隔(d値)を下表10に示し、図3および図4のXRDグラフにおいて番号が付与されたピークの2θ値および格子面間隔(d値)を下表11に示す。
【表10】
【表11】
【0150】
上記表10および表11により、実施例1で製造された3-ヒドロキシプロピオネートの結晶はCa(3HP)であり、実施例2で製造された3-ヒドロキシプロピオネートの結晶はMg(3HP)であることを確認した。
【0151】
7.3-ヒドロキシプロピオネートの結晶に対する示差走査熱量計(DSC)による分析
実施例1および実施例2の結晶に対して示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、「DSC(Q2000)」)を用いて、それぞれの結晶の融点(Tm)を確認し、実施例1の場合、昇温速度10℃/分、-60℃~150℃の範囲でガラス転移温度、結晶化温度などを測定し、実施例2の場合、昇温速度10℃/分、-70℃~30℃の範囲でガラス転移温度、結晶化温度などを測定し、その結果は下表12に示す。
【0152】
図5は、実施例1の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Ca(3HP))の示差走査熱量計(DSC)による分析結果を示すグラフであり、図6は、実施例2の3-ヒドロキシプロピオネートの結晶(Mg(3HP))の示差走査熱量計(DSC)による分析結果を示すグラフである。
【0153】
【表12】
【0154】
上記表12を参照すると、実施例1および実施例2のガラス転移温度が-45~-40℃であり、融点が32~155℃であり、結晶化温度が30~150℃であることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6