(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20240508BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240508BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240508BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B24B55/06
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B24B55/02 D
(21)【出願番号】P 2019229726
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113373(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154173(WO,A1)
【文献】特開2014-175461(JP,A)
【文献】特開2009-135132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/02、55/06
H01L 21/301、21/304
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームの開口を覆うテープに被加工物が貼着されて形成されたフレームユニットを保持するチャックテーブル機構と、該チャックテーブル機構に保持された該フレームユニットの被加工物に切削液を供給しながら、該被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、を含む切削装置であって、
該チャックテーブル機構は、
該テープを介して該被加工物の裏面全体を吸引保持する吸着面を有するチャックテーブル本体と、
該チャックテーブル本体の外周に配置されて該チャックテーブル本体を囲繞し該吸着面より低い位置に配置されたエアー噴射口から、上方に向かうにしたがって徐々に該チャックテーブル機構の外周に向かって
鉛直方向に対して傾いた角度でエアーを噴射して、該チャックテーブル本体の外周にはみ出した該フレームユニットの該テープの下面にエアーを噴射するエアー噴射ユニットと、を備え、
該テープの下面に該切削液が付着するのが抑制されることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該チャックテーブル機構は、該エアー噴射ユニットより該チャックテーブル本体の外周に設置され、該吸着面より低い高さで該フレームユニットの該フレームを保持するフレーム保持ユニットを備える請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、半導体ウェーハやパッケージ基板、セラミックス基板、ガラス基板等の基板の表面に複数の交差する切削予定ライン(ストリート)が設定され、切削予定ラインで区画された各領域にデバイスが設けられる。デバイスが設けられた基板を切削予定ラインに沿って切削すると、個々のデバイスチップが形成される。これを実施するための装置が切削装置(ダイサー)である。
【0003】
切削作装置は、チャックテーブル機構に被加工物を保持し、切削ブレードに切削液を供給しながら被加工物をチップに分割する。
【0004】
チャックテーブル機構は、凹部を有する枠体と、該枠体の凹部を埋めるように配設され多孔質部材で形成された吸着部と、を備える本体を有し、該吸着部の上面がチャックテーブル機構の吸着面となる。チャックテーブル機構は、一端が吸引源に接続された吸引路を内部に有し、該吸引路の他端が吸着部に接続されている。
【0005】
切削装置は、切削ブレードにより被加工物を切削すると、被加工物から加工屑が生じて飛散する。また、加工により熱が生じる。そこで、チャックテーブル機構に保持された被加工物を切削ブレードで切削する際には、切削屑や熱を排除するために、切削ブレード及び被加工物に切削液が供給される。加工が終了すると、被加工物に付着した切削液はエアーカーテンの下を通過することである程度除去される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、切削加工中に切削ブレード及び被加工物に供給された切削液は、被加工物からテープ及びフレームを伝って外周側に流れて排出される際、一部がフレームユニットの裏面側に伝わり、被加工物を保持するチャックテーブル機構の枠体に到達する場合がある。到達した切削液によって、切削装置は、チャックテーブル機構の多孔質部材を枠体に固定する接着材が変質して、多孔質部材が剥離しやすくなったり、切削屑を含む切削液によって多孔質材が目詰まったり、フレームユニットの下面側に付着した切削液が、加工後に搬送先で垂れ、汚染の原因となる恐れがある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削液のチャックテーブル機構及びフレームユニットの下面側への付着を抑制することができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、環状のフレームの開口を覆うテープに被加工物が貼着されて形成されたフレームユニットを保持するチャックテーブル機構と、該チャックテーブル機構に保持された該フレームユニットの被加工物に切削液を供給しながら、該被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、を含む切削装置であって、該チャックテーブル機構は、該テープを介して該被加工物の裏面全体を吸引保持する吸着面を有するチャックテーブル本体と、該チャックテーブル本体の外周に配置されて該チャックテーブル本体を囲繞し該吸着面より低い位置に配置されたエアー噴射口から、上方に向かうにしたがって徐々に該チャックテーブル機構の外周に向かって鉛直方向に対して傾いた角度でエアーを噴射して、該チャックテーブル本体の外周にはみ出した該フレームユニットの該テープの下面にエアーを噴射するエアー噴射ユニットと、を備え、該テープの下面に該切削液が付着するのが抑制されることを特徴とする。
【0010】
前記切削装置において、該チャックテーブル機構は、該エアー噴射ユニットより該チャックテーブル本体の外周に設置され、該吸着面より低い高さで該フレームユニットの該フレームを保持するフレーム保持ユニットを備えても良い。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、切削液のチャックテーブル機構及びフレームユニットの下面側への付着を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置のチャックテーブル機構とフレームユニットの平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された切削装置の切削加工中を一部断面で示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る切削装置の切削加工中を一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る切削装置のエアー噴射ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置のチャックテーブル機構とフレームユニットの平面図である。
図3は、
図1に示された切削装置の切削加工中を一部断面で示す側面図である。
【0015】
実施形態1に係る切削装置1は、被加工物200を切削加工する加工装置である。なお、実施形態1に係る切削装置の加工対象の被加工物200は、
図1及び
図2に示すように、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。デバイス203は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0016】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウェーハでもよく、ウェーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のQFN(Quad Flat No leaded)パッケージ基板等の樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。
【0017】
実施形態1において、被加工物200の外径よりも大径な円形でかつ外縁部に環状のフレーム205が貼着されたテープ206が、被加工物200の表面201と反対側の裏面204に貼着されて、フレーム205の開口207内に支持されて、フレームユニット208を構成する。フレームユニット208は、環状のフレーム205の開口207を覆うテープ206に被加工物200が貼着されて形成されている。
【0018】
図1に示された切削装置1は、フレームユニット208をチャックテーブル機構10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード31で被加工物200を切削加工する加工装置である。切削装置1は、
図1に示すように、フレームユニット208を吸着面15で吸引保持するチャックテーブル機構10と、チャックテーブル機構10に保持されたフレームユニット208の被加工物200に切削液を供給しながら被加工物200を切削ブレード31で切削する切削ユニット30と、チャックテーブル機構10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット40と、制御ユニット100とを備える。
【0019】
また、切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル機構10と切削ユニット30とを相対的に移動させる移動ユニット50を備える。移動ユニット50は、チャックテーブル機構10を水平方向及び装置本体2の短手方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット51と、切削ユニット30を水平方向及び装置本体2の長手方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット52と、切削ユニット30をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット53と、チャックテーブル機構10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するとともにX軸移動ユニット51によりチャックテーブル機構10とともにX軸方向に加工送りされる回転移動ユニット54とを備える。
【0020】
X軸移動ユニット51は、チャックテーブル機構10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル機構10と切削ユニット30とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。X軸移動ユニット51は、チャックテーブル機構10を被加工物200が搬入出される搬入出領域と、チャックテーブル機構10に保持された被加工物200が切削ユニット30により切削される加工領域とに亘ってX軸方向に移動させる。
【0021】
Y軸移動ユニット52は、切削ユニット30を回転移動ユニット54とともに割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル機構10と切削ユニット30とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット53は、切削ユニット30を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル機構10と切削ユニット30とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0022】
X軸移動ユニット51、Y軸移動ユニット及びZ軸移動ユニット53は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル機構10又は切削ユニット30をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0023】
チャックテーブル機構10は、
図1、
図2及び
図3に示すように、チャックテーブル本体11と、エアー噴射ユニット21とを備える。チャックテーブル本体11は、円盤形状であり、吸着面15を有する。チャックテーブル本体11は、ステンレス鋼等の金属により構成されかつ回転移動ユニット54により軸心回りに回転されるとともに上面の中央に凹部12が形成された円盤状の枠体13と、枠体13の凹部12内に嵌め込まれた円板状の吸着部材14とを備える。吸着部材14は、ポーラスセラミック等から形成され、上面がテープ206を介して被加工物200が載置されて、被加工物200を吸引保持する吸着面15である。吸着部材14の吸着面15と枠体13の上面とは、同一平面上に配置されている。
【0024】
チャックテーブル本体11は、凹部12内の空間が開閉弁16を介して吸引源17と接続され、吸引源17により吸引されることで、吸着面15に載置された被加工物200を吸引保持する。実施形態1では、チャックテーブル本体11は、テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引保持する。なお、実施形態1では、チャックテーブル本体11に被加工物200が吸引保持されたフレームユニット208は、テープ206及びフレーム205がチャックテーブル本体11の外周側にはみ出る。
【0025】
エアー噴射ユニット21は、
図2に示すように、チャックテーブル本体11の外周側に配置されて、チャックテーブル本体11を囲繞する円環状に形成されている。エアー噴射ユニット21は、チャックテーブル本体11の外周を全周に亘って囲んだチューブにより構成されている。また、エアー噴射ユニット21は、上端部がチャックテーブル本体11の吸着面15よりも低い位置に位置するように、枠体13の外周面に取り付けられている。エアー噴射ユニット21は、開閉弁22を介してエアー供給源23より加圧されたエアー25(
図3に示す)が供給される。
【0026】
エアー噴射ユニット21は、上端部にエアー噴射口24が複数設けられている。エアー噴射口24は、エアー噴射ユニット21の上端部を貫通しているとともに、エアー噴射ユニット21の全周に亘って等間隔に設けられている。エアー噴射口24は、エアー噴射ユニット21の上端部を貫通しているために、吸着面15よりも低い位置に配置されている。エアー噴射口24の平面形状は、丸形でも良く、楕円形等の長孔形状でも良い。エアー噴射口24の平面形状が楕円形等の長孔形状である場合、エアー噴射口24の長手方向は、エアー噴射ユニット21の径方向と平行であるのが望ましい。エアー噴射口24の平面形状が楕円形等の長孔形状である場合、例えば、エアー噴射口24の長手方向の内径が1.5mmでかつ短手方向の内径が0.5mmである。
【0027】
エアー噴射口24は、エアー噴射ユニット21から供給された加圧されたエアー25を噴射する。なお、実施形態1において、エアー噴射口は、上方に向けてエアー25を噴射するとともに、上方に向かうにしたがって徐々にチャックテーブル機構10の外周に向かってZ軸方向に対して傾いた角度θでエアー25を噴射する。なお、角度θは、エアー噴射口24から噴射されるエアー25の流れの中心の方向とZ軸方向とのなす角度である。前述した構成によって、エアー噴射ユニット21は、エアー噴射口24からチャックテーブル本体11の外側の斜め上方(上方に向かうにしたがって徐々にチャックテーブル機構10の外周側に向かう方向)に向かってエアー25を噴射し、チャックテーブル本体11の外周にはみ出したフレームユニット208のテープ206の下面209にエアー25を噴射する。
【0028】
また、チャックテーブル機構10は、X軸移動ユニット51により搬入出領域と加工領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット54によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。
【0029】
切削ユニット30は、チャックテーブル機構10に保持されたフレームユニット208の被加工物200を切削する切削ブレード31を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット30は、チャックテーブル機構10に保持されたフレームユニット208の被加工物200に対して、Y軸移動ユニット52によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット53によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット30は、Y軸移動ユニット52、Z軸移動ユニット53などを介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3に支持されている。
【0030】
切削ユニット30は、
図1及び
図3に示すように、切削ブレード31と、Y軸移動ユニット52及びZ軸移動ユニット53によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング32と、スピンドルハウジング32に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード31が装着されるスピンドル33とを備える。スピンドルハウジング32の先端面に固定されたブレードカバー34とを備える。
【0031】
切削ブレード31は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード31は、円環状の円形基台311と、円形基台311の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃312とを備える所謂ハブブレードである。切り刃312は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード31は、切り刃312のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0032】
スピンドル33は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード31を軸心回りに回転させる。実施形態1において、スピンドル33の回転数は、30000rpm以上でかつ100000rpm以下である。切削ブレード31は、スピンドル33により軸心回りに回転されるため、被加工物200を切削する切り刃312の下端から回転方向の後側に向かって被加工物200を切削して生じる切削屑とともに切削液を噴射する。なお、スピンドル33の回転数が、30000rpm以上でかつ100000rpm以下の高速であるために、切削ブレード31の切り刃312の下端より回転方向の後側に向かって飛散される切削液は、ミストになった状態で飛散される。
【0033】
ブレードカバー34は、切削ブレード31の少なくとも上方を覆うものである。ブレードカバー34は、スピンドルハウジング32の先端面に固定されている。また、ブレードカバー34は、シャワーノズル35と、一対のブレードノズル36とを備える。シャワーノズル35は、切削ブレード31の切り刃312の刃先とX軸方向に対面し、切削中に切削ブレード31の切り刃312の刃先に切削液を供給する。ブレードノズル36は、X軸方向と平行に延在し、互いにY軸方向に間隔をあけて配置されている。ブレードノズル36は、互いの間に切削ブレード31の切り刃312の下端を位置づけており、切削中に切削ブレード31の切り刃312の下端に切削液を供給する。
【0034】
なお、切削ユニット30の切削ブレード31及びスピンドル33の軸心は、Y軸方向と平行である。
【0035】
撮像ユニット40は、切削ユニット30と一体的に移動するように、切削ユニット30に固定されている。撮像ユニット40は、チャックテーブル機構10に保持された切削加工前のフレームユニット208の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット40は、チャックテーブル機構10に保持されたフレームユニット208の被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード31との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0036】
また、切削装置1は、チャックテーブル機構10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット30のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット30のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット30のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル機構10のX軸方向、切削ユニット30のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、切削装置1の各構成要素のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置を基準とした位置で定められる。
【0037】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を含むフレームユニット208を複数枚収容するカセット61が載置されかつカセット61をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ60と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット70と、カセット61に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する搬送ユニット80と、装置本体2上の加工領域と搬入出領域との間に設けられ、加工領域から搬入出領域に向かって移動する切削加工後のフレームユニット208の被加工物200の表面に向けて加圧されたエアーを吹きつけて、被加工物200の表面201から切削液を除去するエアーカーテン90とを備える。
【0038】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した各ユニットをそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0039】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。実施形態1において、入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0040】
前述した構成の切削装置1は、オペレータ等が加工内容情報を制御ユニット100に登録し、被加工物200を収容したカセット61がカセットエレベータ60に載置され、オペレータ等からの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。加工動作を開始すると、切削装置1は、スピンドル33を軸心回りに回転し、ノズル35,36から切削液を供給する。切削装置1は、搬送ユニット80がカセット61内からフレームユニット208を一枚取り出して、チャックテーブル機構10の吸着面15にフレームユニット208のテープ206を介して被加工物200の裏面204側を載置する。
【0041】
切削装置1は、テープ206を介して被加工物200を吸着面15に吸引保持し、エアー噴射ユニット21のエアー噴射口24からエアー25を噴射する。切削装置1は、移動ユニット50により搬入出領域から加工領域に向けてチャックテーブル機構10を撮像ユニット40の下方まで移動し、撮像ユニット40によりチャックテーブル機構10に吸引保持した被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。
【0042】
切削装置1は、加工内容情報に基づいて、
図3に示すように、移動ユニット50により、切削ブレード31と被加工物200とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながら被加工物200の分割予定ライン202に切削ブレード31をテープ206に到達するまで切り込ませて切削する。切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、エアーカーテン90からエアーを噴射して、チャックテーブル機構10を加工領域から搬入出領域に向けて移動する。
【0043】
切削装置1は、搬入出領域においてチャックテーブル機構10の移動を停止し、エアー噴射ユニット21のエアー25の噴射及びチャックテーブル機構10の被加工物200の吸引保持を停止し、エアーカーテン90からのエアーの噴射を停止する。切削装置1は、搬送ユニット80により被加工物200を洗浄ユニット70に搬送し、洗浄ユニット70で洗浄した後、搬送ユニット80によりカセット61内に搬入する。切削装置1は、カセット61内のフレームユニット208の被加工物200を1枚ずつ順に切削加工する。切削装置1は、カセット61内の全てのフレームユニット208の被加工物200を切削加工すると、加工動作を終了する。
【0044】
従来から用いられてきた切削装置では、切削加工中に供給される切削液がミスト化するなどして、テープ206の下面209側まで回り込み、チャックテーブル機構10及びフレームユニット208の下面109に付着する恐れがあった。そこで、以上説明したように、実施形態1に係る切削装置1は、切削加工中にチャックテーブル本体11の外周に設けたエアー噴射ユニット21の吸着面15よりも低い位置に配置されたエアー噴射口24からテープ206の下面209に向けてエアー25を噴射して、フレームユニット208のテープ206の下面209に切削液が付着するのが抑制される。
【0045】
切削装置1は、エアー噴射口24からエアー25を斜め上方でかつ且つ外周向きに噴射することで、効果的にテープ206の下面209に沿ってエアー25が流れ、テープ206の下面209の広い範囲で切削液の付着を抑制することができる。その結果、切削装置1は、切削液のチャックテーブル機構10及びフレームユニット208の下面209側への付着を抑制することができるという効果を奏する。また、切削装置1は、エアー噴射口24からエアー25を斜め上方でかつ且つ外周向きに噴射して、効果的にテープ206の下面209に沿ってエアー25が流れるので、テープ206が上方に浮き上がり切削ブレード31に接触することを抑制でき、切削加工を妨害することがないという効果を奏する。
【0046】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図4は、実施形態2に係る切削装置の切削加工中を一部断面で示す側面図である。なお、
図4は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
実施形態2に係る切削装置1-2は、
図4に示すように、チャックテーブル機構10-2が、エアー噴射ユニット21よりチャックテーブル本体11の外周に設置され、吸着面15より低い高さでフレームユニット208のフレーム205をクランプして保持するフレーム保持ユニット18を備えること以外、実施形態1と同じある。フレーム保持ユニット18は、チャックテーブル機構10-2が吸着面15にフレームユニット208の被加工物200を吸引保持する際に、フレームユニット208のフレーム205をクランプして保持する。
【0048】
実施形態2に係る切削装置1-2は、切削加工中にチャックテーブル本体11の外周に設けたエアー噴射ユニット21の吸着面15よりも低い位置に配置されたエアー噴射口24からテープ206の下面209に向けてエアー25を噴射するので、実施形態1と同様に、切削液のチャックテーブル機構10-2及びフレームユニット208の下面209側への付着を抑制することができるとともに、テープ206が上方に浮き上がり切削ブレード31に接触することを抑制でき、切削加工を妨害することがないという効果を奏する。
【0049】
また、切削装置1-2は、フレーム保持ユニット18を備えているので、切削加工中にテープ206やフレーム205が上方に浮き上がることを抑制することができる。
【0050】
〔変形例〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る切削装置のエアー噴射ユニットの平面図である。なお、
図5は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
変形例に係る切削装置1は、エアー噴射ユニット21-1が、
図5に示すように、複数の直線状の円筒状の配管部材27と、2つの配管部材27同士を連結する複数の継手26とを備えて構成されている。変形例では、エアー噴射ユニット21は、8本の配管部材27と、8個の継手26とを備えている。配管部材27は、エアー噴射口24が設けられている。変形例に係るエアー噴射ユニット21は、配管部材27と継手26との少なくとも一方がチャックテーブル本体11の枠体13の外周面に固定される。
【0052】
変形例に係る切削装置1は、切削加工中にチャックテーブル本体11の外周に設けたエアー噴射ユニット21の吸着面15よりも低い位置に配置されたエアー噴射口24からテープ206の下面209に向けてエアー25を噴射するので、実施形態1及び実施形態2と同様に、切削液のチャックテーブル機構10及びフレームユニット208の下面209側への付着を抑制することができるとともに、テープ206が上方に浮き上がり切削ブレード31に接触することを抑制でき、切削加工を妨害することがないという効果を奏する。
【0053】
次に、本発明の発明者らは実施形態1に示された切削装置1の効果を確認した。結果を以下の表1に示す。
【0054】
【0055】
比較例は、角度θが0度である事以外、実施形態1に係る切削装置1と構成が同じものである。本発明品は、角度が45度である実施形態1に係る切削装置1である。表1においては、比較例及び本発明品のチャックテーブル機構10にフレームユニット208の被加工物200を吸引保持し、切削液を供給しながらスピンドル33により切削ブレード31を回転した時のチャックテーブル機構10のチャックテーブル本体11及びテープ206の下面209への切削液の付着の有無を確認した。
【0056】
表1によれば、比較例ではチャックテーブル本体11及びテープ206の下面209に切削液が付着したのに対し、本発明品ではチャックテーブル機構10のチャックテーブル本体11及びテープ206の下面209に切削液が付着しなかった。したがって、表1によれば、切削加工中にチャックテーブル本体11の外周に設けたエアー噴射ユニット21の吸着面15よりも低い位置に配置されたエアー噴射口24からテープ206の下面209に向けてエアーを噴射することで、切削液のチャックテーブル機構10及びフレームユニット208の下面209側への付着を抑制することができることが明らかとなった。また、表1によれば、エアー噴射口24からエアー25を斜め上方でかつ且つ外周向きに噴射することで、切削液のチャックテーブル機構10及びフレームユニット208の下面209側への付着を抑制することができることが明らかとなった。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、本発明は、エアー噴射口24の形状は、実施形態等に記載された形状に限定されずに、ドット状でも良いし、スリット状でも良い。
【符号の説明】
【0058】
1,1-2 切削装置
10,10-2 チャックテーブル機構
11 チャックテーブル本体
15 吸着面
18 フレーム保持ユニット
21 エアー噴射ユニット
24 エアー噴射口
25 エアー
30 切削ユニット
31 切削ブレード
200 被加工物
205 フレーム
206 テープ
207 開口
208 フレームユニット
209 下面