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  • 特許-乾麺類の調理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】乾麺類の調理方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240508BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020136722
(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公開番号】P2022032681
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】桑山 貴行
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 健太
(72)【発明者】
【氏名】新井 彩佳
(72)【発明者】
【氏名】鍛治尾 房樹
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025838(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047636(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207912(WO,A1)
【文献】特開2005-013133(JP,A)
【文献】特開平05-038267(JP,A)
【文献】ビストロでスパゲッティを茹でる。,cookpad[online],2018年09月,レシピID:5254156,https://cookpad.com/recipe/5254156,[2023年12月14日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109- 7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する耐熱性容器に乾麺類を収容し、
前記乾麺類100質量部に対して100~190質量部の水を接触させ、
外部から水蒸気が導入されたオーブンの庫内で前記耐熱性容器に収容されている前記乾麺類を加熱する、
乾麺類の調理方法。
【請求項2】
前記乾麺類に前記水を接触させる前に、前記乾麺類の表面に油脂類を付着させる、請求項1に記載の乾麺類の調理方法。
【請求項3】
前記乾麺類は、麺線の長軸に沿って形成された1本または複数本の溝を有し、前記麺線の横断面は、円形又は楕円形の主外形を有する、請求項1または2に記載の乾麺類の調理方法。
【請求項4】
前記1本または複数本の溝が無いものと仮定した場合の前記横断面における前記主外形の面積A0に対する前記1本または複数本の溝の面積A1の比率A1/A0は、0.1~0.5である請求項3に記載の乾麺類の調理方法。
【請求項5】
前記乾麺類は、パスタ類であり、
前記水の量は、前記パスタ類100質量部に対して100~150質量部である、請求項1~4のいずれかに記載の乾麺類の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾麺類の調理方法に係り、特に、乾麺類を水と共に調理するに際し、オーブンを用いることで湯切りを必要としない乾麺類の調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生麺や乾麺等の未調理の麺類は、大きな鍋と大量の湯を用いて茹で調理することで喫食されている。この場合、大きな鍋および大量の水を準備し、調理中には吹きこぼれないように火加減の調節、調理中の攪拌操作、調理後の湯切り操作等を行う必要があるために手間がかかり、また、湯を沸かすのに多量のエネルギーを用いた長時間の加熱が必要になる。比較的少量の湯で喫食できるように、予め調理済みの麺類を乾燥させている即席麺は、その簡便さから大量に利用されているが、麺類が本来有する風味、食感からは劣るものがほとんどである。また、茹で調理することなく、電子レンジを用いて加熱するだけで喫食できる冷凍麺も普及しているが、冷凍保存するための専用の設備と多量のエネルギーが必要になる。
【0003】
一方、比較的少量の水を用いて電子レンジ調理することで、乾麺を調理して喫食させる技術も提案されている。例えば、特許文献1には、耐熱容器に乾燥パスタ又は半乾燥パスタと、水和必要量の水分とを収容し、マイクロ波加熱してパスタを水和させるパスタの調理方法が記載されている。また、特許文献2には、加熱可能な容器に、乾麺と、乾麺の量に対応した量の水と、粉末ソースを入れて電子レンジ加熱することにより、喫食可能となる電子レンジ調理用麺食品が記載されている。
さらに、特許文献3には、電子レンジでは利用できないアルミ製の容器に、凍結した調理済み麺と、麺の上側表面全体を覆うソースが収容された、オーブン又はオーブントースター加熱用容器入り冷凍麺が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-257439号公報
【文献】特開2011-211974号公報
【文献】特開平4-99460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2のように、電子レンジを用いてマイクロ波により少量の水で乾麺を調理すると、麺から溶け出した澱粉等の影響により、湯が突沸する、泡が大量に生じて容器からあふれ出る、という問題があった。
【0006】
また、特許文献3において調理器具として用いられているオーブン調理器は、高温のオーブン庫内に食材を載置し、高温空気の対流熱、器壁からの放射熱および接触面からの熱伝導を利用して加熱する装置であり、一般に、塊肉のような大きな食材の加熱に利用されている。しかしながら、特許文献3の麺は、冷凍麺であるため、上述したように、冷凍保存するための専用の設備および多量のエネルギーが必要になる、という問題がある。
【0007】
本発明の課題は、冷凍保存するための専用の設備および多量のエネルギーを必要とすることなく、簡便に乾麺類を調理することができる乾麺類の調理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、乾麺類に、通常の茹で調理の際と比較して格段に少量の水を接触させた状態で、水蒸気が導入されたオーブンで加熱することにより、調理時の攪拌操作および調理後の湯切り操作が不要になり、また、冷凍麺を使用する場合に比べて冷凍保存するための専用の設備および多量のエネルギーを必要とすることなく、極めて簡便に乾麺を調理して、麺類が本来有する風味、食感を取得し得ることを見いだした。
【0009】
本発明に係る乾麺類の調理方法は、開口部を有する耐熱性容器に乾麺類を収容し、乾麺類100質量部に対して100~190質量部の水を接触させ、外部から水蒸気が導入されたオーブンの庫内で耐熱性容器に収容されている乾麺類を加熱する方法である。
【0010】
乾麺類に水を接触させる前に、乾麺類の表面に油脂類を付着させることができる。
好ましくは、乾麺類は、麺線の長軸に沿って形成された1本の溝又は複数本の溝を有し、麺線の横断面は、円形又は楕円形の主外形を有している。
1本または複数本の溝が無いものと仮定した場合の横断面における主外形の面積A0に対する1本または複数本の溝の面積A1の比率A1/A0は、0.1~0.5であることが好ましい。
また、乾麺類は、パスタ類であり、水の量は、パスタ類100質量部に対して100~150質量部とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性容器に収容した乾麺類100質量部に対して100~190質量部の水を接触させ、外部から水蒸気が導入されたオーブンの庫内で耐熱性容器に収容されている乾麺類を加熱するので、簡便に、且つ、冷凍保存するための専用の設備および多量のエネルギーを必要とすることなく、乾麺を調理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る乾麺類の調理方法を示すフローチャートである。
図2】実施例20~24で使用される溝付きの乾スパゲティを示す部分斜視図である。
図3】実施例20~24で使用される溝付きの乾スパゲティを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「乾麺類」とは、麺生地を成形して所定の形状とした後に乾燥させた麺類をいう。典型的には、水分含量が16質量%以下にまで乾燥され、室温で長期保存可能に包装されて市販されているパスタ類、そば、うどん、を例示することができる。なお、本発明の乾麺類には、麺線形状に成形されたものに限定されず、マカロニ等のショートパスタに代表される、非麺線形状の麺類も包含される。
【0014】
本発明に係る乾麺類の調理方法について、図1のフローチャートを用いて説明する。
乾麺類の調理方法は、調理対象となる乾麺類を、開口部を有する耐熱性容器に収容するステップS1と、乾麺類100質量部に対し100~190質量部の水を耐熱性容器内の乾麺類に接触させるステップS2と、水蒸気が導入されたオーブンの庫内で耐熱性容器に収容されている乾麺類を加熱するステップS3とを備えている。
【0015】
ステップS1において乾麺類が収容される耐熱性容器としては、開口部を有し、オーブン加熱時の庫内温度100~300℃に耐えられる容器であればよく、アルミニウム製、ステンレス製、陶器製の容器を例示することができる。容器の形状は特に限定されないが、オーブン内での熱伝達効率の点、乾麺類の載置や取り出しのしやすさの点では、広口で上面に開口部を有する形状、典型的には鍋、パン、バットの形状を有する容器が好ましい。
なお、内容物を収容し加熱される状態で密封される態様の容器は、本発明における耐熱性容器に含まれないものとする。
【0016】
乾麺類を耐熱性容器に収容する際は、個々の乾麺類同士の重なりが少なくなるよう、容器底面になるべく均等に広がるように敷き詰めて配置するのが好ましい。このように配置することで、乾麺類同士が接着することを防止することができる。また、乾麺類は、耐熱性容器の収容部容積の100体積%に対して、5~40体積%、好ましくは10~35体積%程度の量とすることが望ましい。
【0017】
ステップS2で乾麺類に水を接触させる前に、乾麺類の表面に油脂類を付着させると、乾麺類同士の接着をより防止することができるため好ましい。油脂類の種類は、特に限定されず、菜種油、コーン油、綿実油等の植物油脂、ラード等の動物油脂、藻類由来の油脂等を利用することができる。油脂類の付着量は、乾麺類の表面を覆うように付着させることができる量であることが好ましく、例えば、乾麺類100質量部あたり、5~30質量部、より好ましくは10~20質量部程度とすることができる。乾麺類への油脂類の付着は、乾麺類を水に接触させる前に行えばよいが、時間が経過すると異臭や変色が起こる場合があるため、好ましくは、オーブンで加熱する120時間以内、より好ましくは80時間以内、さらに好ましくは40時間以内である。
【0018】
次に、ステップS2において、所定量の水を乾麺類に接触させる。このため、乾麺類と水は、共に耐熱性容器に収容される。乾麺類に接触させる水は、食品に適用できるものであれば制限なく利用でき、清水、酸性水、アルカリ性水等を例示することができる。
水の量は、乾麺類100質量部に対して、100~190質量部である。水の量が、100質量部より少ないと、乾麺類が茹で上がる前に水が無くなり、乾麺類を十分に茹で上げることができなくなるおそれがある。一方、水の量が、190質量部より多いと、乾麺類が十分に茹で上がった時点で、まだ水が残っており、湯切りをする必要が生じるおそれがある。水の量を、乾麺類100質量部に対して、100~190質量部とすることで、乾麺類が茹で上がったときに、丁度水が無くなり、湯切りをしなくて済む状態を作ることができる。
【0019】
乾麺類に接触させる水の量は、乾麺類100質量部に対して、100~190質量部の範囲内であれば、乾麺の種類および茹で上がりの状態を加味して、適宜調整することができる。例えば、乾麺類がパスタ類の場合、硬めの茹で上がりを求める場合はパスタ類100質量部に対して100~150質量部程度、柔らかめを求める場合は150~190質量部程度とすることができる。また、乾麺類がうどん類の場合、硬めで120~150質量部程度、柔らかめで160~190質量部程度とすることができる。このように用いる水の量を規定することで、調理完了後には水が無くなり、湯切りが不要な状態で調理済みの乾麺類を得ることができる。
【0020】
乾麺類に接触させる水は、乾麺類を耐熱性容器の底面に乾麺類同士の重なりが少なくなるよう載置した状態で、乾麺類の全体が浸漬するように耐熱性容器に収容することが好ましい。典型的には、乾麺類の全体が耐熱性容器の底面に接し、かつ乾麺類同士ができるだけ重ならないように乾麺類を分散させて載置し、その乾麺類の上から所定量の水を静かに注ぎ、乾麺類の全体が水面よりも下になるよう、例えば水面よりも1cm程度下方に乾麺類が位置することが、好適な一態様として例示される。したがって、上記の乾麺類および水の量を用いた際に、このような態様となるように、耐熱性容器の形状を考慮することが望ましい。
【0021】
さらに、ステップS3において、乾麺類および水を収容した耐熱性容器は、オーブンの庫内にセットされ、加熱される。オーブンとしては、高温空気の対流熱、庫内壁からの放射熱、耐熱性容器との接触面からの熱伝導のいずれかの伝熱を利用できるものであれば、どのようなものも利用でき、例えば、オーブントースター、ロースターオーブン、ジェットオーブン、コンベクションオーブン等が挙げられる。これらの中でも、特に、ジェットオーブンおよびコンベクションオーブンは、オーブンの庫内に気流を発生することができるように構成されており、伝熱効率が良いため有用である。
【0022】
オーブンの加熱温度は、オーブンに装備されている加熱温度表示として、100~280℃、好ましくは110~240℃、より好ましくは120~200℃である。100℃より低温では、加熱に時間がかかりすぎ、280℃を超えると、乾麺類が変色する、または、硬くなる場合がある。また、加熱する時間は、所定量の水がほぼ無くなるか完全に無くなって、湯切り不要で乾麺類を取り出し可能になるまで行えばよい。典型的には、乾麺類の標準的な茹で時間に2分~5分を加えた時間であり、例えば、スパゲッティで10~20分、うどんで8~16分程度とすることができる。
【0023】
オーブンで加熱する際、オーブンの庫内に、水蒸気が導入される。この水蒸気は、乾麺類と共に耐熱性容器に収容される水から発生する水蒸気とは別に、外部から導入するものである。オーブンの庫内に導入する水蒸気は、飽和水蒸気でも良く、過熱水蒸気でも良い。オーブンの庫内への水蒸気の導入は、蒸し器、水蒸気発生装置等の水蒸気発生手段から導管をオーブン庫内に導入して行ってもよく、水蒸気発生手段を内蔵するスチームコンベクションオーブン等のオーブンを用いることも可能であり、公知の技術を利用して常法に従って実施可能である。水蒸気は、オーブンの加熱中に、持続的に導入してもよく、断続的に導入してもよい。オーブンの加熱時間に対する水蒸気の導入時間は、オーブン加熱時間全体を100%とした場合、好ましくは30%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上とすることができる。
【0024】
オーブンの加熱中、耐熱性容器に収容された水から生じた水蒸気と、外部から導入された水蒸気とは、オーブンの庫内で混合して飽和または飽和に近い状態となり、乾麺類に吸収される水の量を調節する役割を果たしている。このため、乾麺類が茹で上がった際には水が全て吸収され、湯切り操作が不要になる。
このようにして、本発明の方法で調理された乾麺類は、従来の茹で調理で得られるものと同様に茹で上がり、しかも、手間のかかる湯切り操作が不要であるため、茹で上がった乾麺類をオーブンから取り出して、そのまま、別途準備したソースや具材と合わせることで、喫食が可能になる。
【0025】
次に、本発明で用いる乾麺類の形状について説明する。本発明で用いる乾麺類は、典型的には、通常市販されている形状のものを用いるが、上述したように、標準的な茹で時間に2分~5分を加えた加熱時間が必要になる。この加熱時間は、乾麺類の表面積を大きくすることにより、短縮することができる。
【0026】
乾麺類の表面積を大きくするには、乾麺類の表面に凹凸、溝、孔等の面積拡大形状部を形成する方法があり、乾麺類の長軸に沿って連続的に形成する場合と、乾麺類の長軸に沿って断続的に形成する場合とがある。
面積拡大形状部が乾麺類の長軸に沿って連続的に形成される形状としては、特開平6-46780号の図1(1)、(3)~(5)、および、特許第5726493号に記載の形状を例示することができる。また、面積拡大形状部が乾麺類の長軸に沿って断続的に形成される形状としては、特開平6-46780号の図1(2)、(6)および図2の形状を例示することができる。乾麺類の強度の面からは、面積拡大形状部が乾麺類の長軸に沿って連続的に形成される形状が好ましい。
【0027】
より好ましい乾麺類の形状として、乾麺類の長軸に沿って1本または複数本の溝が形成されると共に麺線の横断面がほぼ円形または楕円形の主外形を有している形状のものが、乾麺類を茹で調理した後の食感が、溝のない典型的な形状のものと同等とすることができるため、有利である。
【0028】
特に、麺線方向と直交する方向での横断面において、溝が無いものと仮定した場合の麺線の主外形の断面積A0に対する、1本または複数本の溝の断面積A1の比率A1/A0は、0.1~0.5であることが好ましく、0.2~0.4がより好ましい。
なお、麺線方向に沿って複数本の溝が形成される場合、溝の断面積A1は、複数本の溝の断面積の合計を意味している。上記の比率A1/A0として、例えば、5本の麺線に対して、各麺線につき3箇所の横断面をそれぞれ光学顕微鏡で観察し、画像処理により断面積A1およびA0を求め、求められた断面積A1およびA0から算出された比率A1/A0の算術平均を用いることができる。
【0029】
このように、乾麺類の長軸に沿って1本または複数本の溝が形成されると共に麺線の横断面がほぼ円形または楕円形の主外形を有している形状とすることで、本発明の方法を用いても、通常の典型的な形状の乾麺類を常法で茹で調理するのと同等の加熱時間で調理することが可能となる。この場合、本発明の方法を用いると、調理後の湯切り作業が不要となるので、全体的な調理時間を短縮することとなる。また、余分な水を用いないため、残った茹で水を廃棄する操作も不要となる。
【実施例
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
市販の乾スパゲティ(断面が1.6mm径の円形、規定の茹で時間7分;日清フーズ製)100gをステンレス製バット(底面30cm×30cm、深さ6cm)の底面に広げて並べた。乾スパゲティ100質量部に対して100質量部の清水をバットに静かに注ぎ入れ、バットごと予熱したオーブン(パナソニック製)の庫内に入れて、オーブン温度150℃で10分間加熱した。なお、オーブン加熱中は、常時、蒸し器で発生させた常圧で約100℃の水蒸気を、シリコーンチューブを介してオーブン庫内に導入した。加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0032】
〔実施例2~5〕
バットに注ぎ入れる清水の量を、乾スパゲティ100質量部に対して130質量部、150質量部、170質量部、190質量部にした他は、実施例1と同様にして、実施例2~5の調理方法により乾スパゲティをそれぞれ加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0033】
〔比較例1および2〕
バットに注ぎ入れる清水の量を、乾スパゲティ100質量部に対して、80質量部、210質量部にした他は、実施例1と同様にして、比較例1および2の調理方法により乾スパゲティをそれぞれ加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0034】
〔参考例1〕
実施例1と同じ市販の乾スパゲティを、常法により規定の時間茹で調理した後、湯切りしてスパゲティを皿に盛りつけた。
【0035】
〔調理操作評価〕
実施例1~5、比較例1および2、参考例1による乾スパゲティの調理操作を、訓練された10名の評価者に実施してもらい、以下の評価基準S1で評価点をつけてもらった。
【0036】
<調理操作の評価基準S1>
5点:加熱後の湯切り操作が全く不要で、そのままソースをかけて喫食できるほど丁度良く調理されており、非常に良好。
4点:わずかに水気が残っているか、または、わずかに水気が足りずにスパゲティ同士が付着気味であるが、湯切り操作が不要で良好。
3点:やや水気が残っているか、または、ややスパゲティ同士が付着していて簡単なほぐし操作が必要だが、湯切り操作は不要でほぼ良好。
2点:水が残っていて湯切り操作が必要であるか、または、スパゲティ同士が付着していて念入りなほぐし操作が必要であり、不良。
1点:水が多く残っていて念入りな湯切り操作が必要であるか、または、スパゲティ同士が付着していてほぐせない部分があり、非常に不良。
【0037】
〔食感評価〕
実施例1~5、比較例1および2、参考例1により調理されたスパゲティを、訓練された10名の評価者に喫食してもらい、以下の評価基準S2で評価点をつけてもらった。
【0038】
<食感の評価基準S2>
5点:上等に茹で調理されたスパゲティと同様、非常に歯ごたえがあり、非常に良好。
4点:通常の茹で調理されたスパゲティと同様に歯ごたえがあり、良好。
3点:通常の茹で調理されたスパゲティに比較してやや硬い、または、やや柔らかいが、ほぼ良好。
2点:通常の茹で調理されたスパゲティに比較して、硬すぎる、または、柔らかすぎて、不良。
1点:通常の茹で調理されたスパゲティに比較して、非常に硬すぎる、または、非常に柔らかすぎて、非常に不良。
【0039】
10名の評価者による調理操作評価の結果の平均値および10名の評価者による食感評価の結果の平均値を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
バットに注ぎ入れる清水の量が、乾スパゲティ100質量部に対して、100~190質量部の範囲内である実施例1~5では、調理操作の評価結果がいずれも3点台または4点台であり、湯切り操作が不要で良好、または、ほぼ良好の調理操作であることがわかった。
これに対し、清水の量が80質量部である比較例1では、調理操作の評価結果が2.2であり、スパゲティ同士が付着していて念入りなほぐし操作が必要であった。また、清水の量が210質量部である比較例2では、調理操作の評価結果が2.5であり、調理後に水が残っていて湯切り操作が必要であった。
なお、参考例1では、茹で操作の際に火加減の調節が必要となり、非常に不良な調理操作であった。
【0042】
また、実施例1~5では、食感の評価結果がいずれも3点台後半から4点台であり、良好、または、ほぼ良好の食感であることがわかった。
これに対し、比較例1および2では、食感の評価結果が2.7および2.9であり、硬すぎる、または、柔らかすぎて、不良な食感であった。
【0043】
〔実施例6~9〕
オーブン庫内への水蒸気の導入を、オーブン加熱中に常時ではなく断続的に行うことにより、加熱時間に対する水蒸気の導入時間の割合を10%、30%、60%、80%にした他は、実施例3と同様にして、実施例6~9の調理方法により乾スパゲティをそれぞれ加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
なお、水蒸気の導入は、加熱中の導入中断が、平均10回となるようにして実施した。
【0044】
〔比較例3〕
オーブン庫内への水蒸気の導入を行わなかった他は、実施例3と同様にして、比較例3の調理方法により乾スパゲティを加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0045】
実施例6~9、比較例3による乾スパゲティの調理操作を、訓練された10名の評価者に実施してもらい、上記の評価基準S1で評価点をつけてもらった。なお、調理操作の評価においては、蒸気導入にかかる手間は考慮せずに行った。
また、実施例6~9、比較例3により調理されたスパゲティを、訓練された10名の評価者に喫食してもらい、上記の評価基準S2で評価点をつけてもらった。
【0046】
10名の評価者による調理操作評価の結果の平均値および10名の評価者による食感評価の結果の平均値を表2に示す。
なお、表2には、実施例3の調理操作評価および食感評価の結果を再掲する。
【0047】
【表2】
【0048】
加熱時間に対する水蒸気の導入時間の割合を10%、30%、60%、80%にした実施例6~9では、調理操作の評価結果がいずれも3点を超えており、湯切り操作が不要で良好、または、ほぼ良好の調理操作であることがわかった。
これに対し、オーブン庫内への水蒸気の導入を一切行わなかった比較例3では、調理操作の評価結果が2.0であり、スパゲティ同士が付着していて念入りなほぐし操作が必要であった。これは、オーブン庫内への水蒸気の導入を行わないために、オーブン庫内にて水蒸気の飽和または飽和に近い状態を作ることができなかったためと推測される。
【0049】
また、実施例6~9では、食感の評価結果がいずれも3点台または4点台であり、良好、または、ほぼ良好の食感であることがわかった。
これに対し、比較例3では、食感の評価結果が1.8であり、非常に不良な食感であった。
【0050】
〔実施例10~14〕
乾スパゲティをオーブン庫内に入れる30分前に、乾スパゲティ100質量部に対して5質量部、10質量部、20質量部、30質量部、40質量部の綿実油を乾スパゲティの表面に刷毛で塗布した他は、実施例3と同様にして、実施例10~14の調理方法により乾スパゲティをそれぞれ加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0051】
実施例10~14による乾スパゲティの調理操作を、訓練された10名の評価者に実施してもらい、上記の評価基準S1で評価点をつけてもらった。
また、実施例10~14により調理されたスパゲティを、訓練された10名の評価者に喫食してもらい、上記の評価基準S2で評価点をつけてもらった。
【0052】
10名の評価者による調理操作評価の結果の平均値および10名の評価者による食感評価の結果の平均値を表3に示す。
なお、表3には、実施例3の調理操作評価および食感評価の結果を再掲する。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例10~14では、調理操作の評価結果がいずれも、実施例3における4.0を超えており、湯切り操作が不要で良好な調理操作であることがわかった。
また、実施例10~14では、食感の評価結果がいずれも、実施例3における4.3以上であり、良好な食感であることがわかった。
【0055】
〔実施例15~19〕
乾スパゲティの表面に、乾スパゲティ100質量部に対して5質量部、10質量部、20質量部、30質量部、40質量部の溶かしたバターを刷毛で塗布し、塗布24時間後にバターが冷却して固化した乾スパゲティをステンレス製バットに収容する他は、実施例3と同様にして、実施例15~19の調理方法により乾スパゲティをそれぞれ加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0056】
実施例15~19による乾スパゲティの調理操作を、訓練された10名の評価者に実施してもらい、上記の評価基準S1で評価点をつけてもらった。
また、実施例15~19により調理されたスパゲティを、訓練された10名の評価者に喫食してもらい、上記の評価基準S2で評価点をつけてもらった。
【0057】
10名の評価者による調理操作評価の結果の平均値および10名の評価者による食感評価の結果の平均値を表4に示す。
なお、表4には、実施例3の調理操作評価および食感評価の結果を再掲する。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例15~19では、調理操作の評価結果がいずれも、実施例3における4.0を超えており、湯切り操作が不要で良好な調理操作であることがわかった。
また、実施例15~19では、食感の評価結果がいずれも、実施例3における4.3以上であり、良好な食感であることがわかった。
【0060】
〔実施例20~24〕
図2に示されるように、3本の溝Gが麺線方向Lに沿って連続して形成された、1.6mm径の円形断面を有する溝付きの乾スパゲティを製造した。麺線方向Lと直交する方向での横断面において、図3に示されるように、溝Gが無いものと仮定した場合の麺線の円形の主外形Cの断面積A0に対する、3本の溝Gの断面積A1の比率A1/A0が、0.1、0.2、0.4、0.5、0.6となるようにした乾スパゲティを用いる他は、実施例3と同様にして、実施例20~24の調理方法により乾スパゲティをそれぞれ加熱し、加熱後のスパゲティを皿に盛り付けた。
【0061】
実施例20~24による乾スパゲティの調理操作を、訓練された10名の評価者に実施してもらい、上記の評価基準S1で評価点をつけてもらった。
また、実施例20~24により調理されたスパゲティを、訓練された10名の評価者に喫食してもらい、上記の評価基準S2で評価点をつけてもらった。
【0062】
10名の評価者による調理操作評価の結果の平均値および10名の評価者による食感評価の結果の平均値を表5に示す。
なお、表5には、実施例3の調理操作評価および食感評価の結果を再掲する。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例20~24では、オーブンによる加熱時間が、実施例3における10分よりも短い6~9分でありながら、調理操作の評価結果がいずれも4.0で、食感の評価結果がいずれも4点前後となり、良好な調理操作および良好な食感であることがわかった。
【0065】
〔実施例25〕
市販の乾燥うどん(断面が平行四辺形、規定の茹で時間13分;日清フーズ製)100gをステンレス製バット(底面30cm×30cm、深さ6cm)の底面に広げて並べた。乾燥うどん100質量部に対して100質量部の清水をバットに静かに注ぎ入れ、バットごと予熱したオーブン(パナソニック製)の庫内に入れて、オーブン温度200℃で16分間加熱した。なお、オーブン加熱中は、常時、蒸し器で発生させた常圧で約100℃の水蒸気を、シリコーンチューブを介してオーブン庫内に導入した。加熱後のうどんを皿に盛り付けた。
【0066】
〔実施例26~29〕
バットに注ぎ入れる清水の量を、乾燥うどん100質量部に対して120質量部、150質量部、160質量部、190質量部にした他は、実施例25と同様にして、実施例22~29の調理方法により乾燥うどんをそれぞれ加熱し、加熱後のうどんを皿に盛り付けた。
【0067】
〔比較例4および5〕
バットに注ぎ入れる清水の量を、乾燥うどん100質量部に対して90質量部、200質量部にした他は、実施例25と同様にして、比較例4および5の調理方法により乾燥うどんをそれぞれ加熱し、加熱後のうどんを皿に盛り付けた。
【0068】
〔参考例2〕
実施例25と同じ市販の乾燥うどんを、常法により規定の時間茹で調理した後、湯切りしてうどんを皿に盛りつけた。
【0069】
〔調理操作評価〕
実施例25~29、比較例4および5、参考例2による乾燥うどんの調理操作を、訓練された10名の評価者に実施してもらい、以下の評価基準S3で評価点をつけてもらった。
【0070】
<調理操作の評価基準S3>
5点:加熱後の湯切り操作が全く不要で、そのままつゆをかけて喫食できるほど丁度良く調理されており、非常に良好。
4点:わずかに水気が残っているか、または、わずかに水気が足りずにうどん同士が付着気味であるが、湯切り操作が不要で良好。
3点:やや水気が残っているか、または、ややうどん同士が付着していて簡単なほぐし操作が必要だが、湯切り操作は不要でほぼ良好。
2点:水が残っていて湯切り操作が必要であるか、または、うどん同士が付着していて念入りなほぐし操作が必要であり、不良。
1点:水が多く残っていて念入りな湯切り操作が必要であるか、または、うどん同士が付着していてほぐせない部分があり、非常に不良。
【0071】
〔食感評価〕
実施例25~29、比較例4および5、参考例2により調理されたうどんを、訓練された10名の評価者に喫食してもらい、以下の評価基準S4で評価点をつけてもらった。
【0072】
<食感の評価基準S4>
5点:上等に茹で調理されたうどんと同様、こしと弾力があり、非常に良好。
4点:通常の茹で調理されたうどんと同様にこしと弾力があり、良好。
3点:通常の茹で調理されたうどんに比較してやや硬い、または、やや柔らかいが、ほぼ良好。
2点:通常の茹で調理されたうどんに比較して、硬すぎる、または、柔らかすぎて、不良。
1点:通常の茹で調理されたうどんに比較して、非常に硬すぎる、または、非常に柔らかすぎて、非常に不良。
【0073】
10名の評価者による調理操作評価の結果の平均値および10名の評価者による食感評価の結果の平均値を表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
バットに注ぎ入れる清水の量が、乾燥うどん100質量部に対して、100~190質量部の範囲内である実施例25~29では、調理操作の評価結果がいずれも3点台または4点台であり、湯切り操作が不要で良好、または、ほぼ良好の調理操作であることがわかった。
これに対し、清水の量が90質量部である比較例4では、調理操作の評価結果が2.2であり、うどん同士が付着していて念入りなほぐし操作が必要であった。また、清水の量が200質量部である比較例5では、調理操作の評価結果が2.3であり、調理後に水が残っていて湯切り操作が必要であった。
なお、参考例2では、茹で操作の際に火加減の調節とさし水が必要となり、非常に不良な調理操作であった。
【0076】
また、実施例25~29では、食感の評価結果がいずれも3点台から4点台であり、良好、または、ほぼ良好の食感であることがわかった。
これに対し、比較例4および5では、食感の評価結果がいずれも2.6であり、硬すぎる、または、柔らかすぎて、不良な食感であった。
【符号の説明】
【0077】
G 溝、L 麺線方向、C 主外形。
図1
図2
図3