(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】エキスパンド方法及びエキスパンド装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H01L21/78 W
(21)【出願番号】P 2020142821
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 曄
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082139(JP,A)
【文献】特開2014-143297(JP,A)
【文献】特開2014-022382(JP,A)
【文献】特開2018-190885(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119506(WO,A1)
【文献】特開2016-021513(JP,A)
【文献】特開2016-127124(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104112691(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド方法であって、
第1方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持した第1挟持部材と第2挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第1方向にエキスパンドする第1エキスパンドステップと、
該第1エキスパンドステップを実施した後、該第1挟持部材と該第2挟持部材とを、互いに近接する方向に移動させ該シートの張力を緩和させる第1戻しステップと、
該第1戻しステップを実施した後、第2方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持した第3挟持部材と第4挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第2方向にエキスパンドする第2エキスパンドステップと、を備えた、エキスパンド方法。
【請求項2】
ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド装置であって、
第1方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持する第1挟持部材と、第2挟持部材と、
該第1挟持部材と該第2挟持部材を該第1方向で近接離反可能に移動させる第1移動ユニットと、
第2方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持する第3挟持部材と、第4挟持部材と、
該第3挟持部材と該第4挟持部材を該第2方向で近接離反可能に移動させる第2移動ユニットと、
少なくとも該第1移動ユニットと該第2移動ユニットとを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、該第1挟持部材と該第2挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第1方向にエキスパンドした後、該第1挟持部材と該第2挟持部材とを、互いに近接する方向に移動させた状態で、該第3挟持部材と該第4挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第2方向にエキスパンドするよう該第1移動ユニットと該第2移動ユニットとを制御する、エキスパンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド方法及びエキスパンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークへのレーザービーム照射により改質層を形成した後、シートをエキスパンドすることでワークを分割する方法が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されたエキスパンド装置は、シートの4辺を挟持してエキスパンドすることで、例えば縦横でサイズの異なるチップでも縦横でエキスパンド量を変えられるため、十分な拡張が可能となる。特許文献1に示されたエキスパンド装置は、更にエキスパンドした後にフレームで固定することでシートの弛みが生じることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示されたエキスパンド装置は、第1方向にエキスパンドした状態で第2方向をエキスパンドしようとしても、シートが第1方向に張っているため、第2方向に十分エキスパンドできず、チップが分割されないという問題がある。
【0005】
特に分割対象がウェーハの裏面に貼着されたDAFや、金属等からなる膜が成膜されたウェーハの場合、未分割領域が発生しやすく問題となっていた。
【0006】
本発明の目的は、未分割領域の発生を抑制することができるエキスパンド方法及びエキスパンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のエキスパンド方法は、ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド方法であって、第1方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持した第1挟持部材と第2挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第1方向にエキスパンドする第1エキスパンドステップと、該第1エキスパンドステップを実施した後、該第1挟持部材と該第2挟持部材とを、互いに近接する方向に移動させ該シートの張力を緩和させる第1戻しステップと、該第1戻しステップを実施した後、第2方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持した第3挟持部材と第4挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第2方向にエキスパンドする第2エキスパンドステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のエキスパンド装置は、ワークが貼着されたシートをエキスパンドするエキスパンド装置であって、第1方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持する第1挟持部材と、第2挟持部材と、該第1挟持部材と該第2挟持部材を該第1方向で近接離反可能に移動させる第1移動ユニットと、第2方向でワークを挟んで互いに対向し、それぞれ該シートを挟持する第3挟持部材と、第4挟持部材と、該第3挟持部材と該第4挟持部材を該第2方向で近接離反可能に移動させる第2移動ユニットと、少なくとも該第1移動ユニットと該第2移動ユニットとを制御するコントローラと、を備え、該コントローラは、該第1挟持部材と該第2挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第1方向にエキスパンドした後、該第1挟持部材と該第2挟持部材とを、互いに近接する方向に移動させた状態で、該第3挟持部材と該第4挟持部材とを互いに離反する方向に移動させることで該シートを第2方向にエキスパンドするよう該第1移動ユニットと該第2移動ユニットとを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、未分割領域の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたエキスパンド装置の加工対象のワークを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されたワークとエキスパンドシート等を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されたエキスパンド装置の挟持ユニットの上方挟持部材を下方からみた斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るエキスパンド方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に示されたエキスパンド方法の挟持ステップを模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示されたエキスパンド方法の第1エキスパンドステップを模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示されたエキスパンド方法の第1戻しステップを模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図5に示されたエキスパンド方法の第2エキスパンドステップを模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、
図5に示されたエキスパンド方法の第2戻しステップを模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、
図5に示されたエキスパンド方法の間隔調整ステップを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るエキスパンド装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るエキスパンド装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたエキスパンド装置の加工対象のワークを示す斜視図である。
図3は、
図2に示されたワークとエキスパンドシート等を示す斜視図である。
図4は、
図1に示されたエキスパンド装置の挟持ユニットの上方挟持部材を下方からみた斜視図である。
【0013】
実施形態1に係る
図1に示すエキスパンド装置1は、
図2に示すワーク200が貼着されたシートであるエキスパンドシート201(
図3に示す)をエキスパンド(拡張ともいう)する装置である。実施形態1に係るエキスパンド装置1の加工対象であるワーク200は、
図2に示すように、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素又はSiC(炭化ケイ素)などを基板203とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハ220と、ウェーハ220に貼着されたDAF(Die Attach Film)221とを備える。
【0014】
ウェーハ220は、
図2に示すように、基板203の表面204の互いに交差(実施形態1では、直交)する複数の分割予定ライン205で区画された各領域にそれぞれデバイス202が形成されている。また、ウェーハ220は、基板203の結晶包囲を示す異形状部であるノッチ208が形成されている。実施形態1では、ウェーハ220は、分割予定ライン205に沿って基板203を分割する分割線206が形成されて、個々のチップ222に分割されている。
【0015】
チップ222は、基板203の一部分と、基板203の表面204に形成されたデバイス202とを備える。なお、実施形態1では、チップ222は、平面形状が0.1mm以上でかつ5mm以下×0.1mm以上でかつ5mm以下程度の矩形状である。即ち、実施形態1では、チップ222は、小チップである。ウェーハ220は、分割予定ライン205に切削ブレードにより切削される切削加工、レーザービームが照射されるレーザー加工又はプラズマエッチンによるプラズマダイシングが施されて、分割予定ライン205に基板203を分割する分割線206が形成されて、個々のチップ222に分割されている。
【0016】
DAF221は、実施形態1において、ウェーハ220と同径の円板状に形成され、個々のチップ222の分割されたウェーハ220の表面204の裏側の裏面207に貼着されている。実施形態1では、DAF221は、個々のチップ222毎に分割されていない。なお、DAF221は、チップ222を他のチップ又は基板等に固定するためのダイボンディング用の接着フィルムである。
【0017】
また、実施形態1において、ワーク200は、
図3に示すように、基板203の裏面207側のDAF221にエキスパンドシート201が貼着され、エキスパンド装置1によりDAF221が個々のチップ222毎に分割される。
【0018】
エキスパンドシート201は、伸縮性を有し、例えば、加熱された合成樹脂が第1方向211に沿って伸長されながら、第1方向211に対して直交する第2方向212に延伸されて成形される。エキスパンドシート201は、伸縮性を有する合成樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ伸縮性と粘着性とを有する合成樹脂により構成された粘着層とを備える。実施形態1では、第1方向211は、所謂流れ方向(MD:Machine Direction方向)であり、第2方向212は、所謂垂直方向(TD:Transverse Direction方向)である。なお、粘着層の表面を、以下、粘着面201-1と記し、基材層の表面を、以下、基材面201-2と記す。
【0019】
実施形態1に係るエキスパンド装置1は、ワーク200に貼着したエキスパンドシート201を第1方向211と、第2方向212とにエキスパンドして、ワーク200のDAF221を個々のチップ222毎に分割するとともに、互いに隣接するチップ222間に間隔を形成する装置である。また、エキスパンド装置1は、エキスパンドシート201をエキスパンドして、互いに隣接するチップ222間に間隔を形成した後、エキスパンドシート201に内径がワーク200よりも大径な環状フレーム209を貼着して、環状フレーム209の開口210内にワーク200を支持する装置でもある。
【0020】
また、実施形態1において、エキスパンドシート201は、第1方向211に伸長されながら整形されるため、第1方向211にテンションが付与されており、第1方向211の方が、第2方向212よりもエキスパンドされにくい。即ち、実施形態1では、エキスパンドシート201は、第2方向212の方が第1方向211よりもエキスパンドされ易い。なお、本発明では、エキスパンドシート201のエキスパンドされにくい方向及びエキスパンドされ易い方向は、実施形態1に記載された方向に限定されない。
【0021】
エキスパンド装置1は、
図1に示すように、平板状の固定基台2と、固定基台2の中央に設けられた保持テーブル10と、図示しないワーク搬送ユニットと、挟持機構30と、移動機構40と、図示しないフレーム搬送ユニットと、シート切断ユニット60と、撮像ユニット70と、コントローラである制御ユニット100とを備える。
【0022】
保持テーブル10は、円板状に形成され、エキスパンドシート201が保持面11に載置される。保持テーブル10は、移動機構によって鉛直方向に移動自在に設けられている。保持面11は、水平方向に沿って平坦に形成され、エキスパンドシート201を介してワーク200が載置可能な直径を有している。保持面11は、エキスパンドシート201を介して、ワーク200が載置される。
【0023】
また、実施形態1では、保持テーブル10は、保持面11に載置されたエキスパンドシート201及びワーク200を冷却するペルチェ素子を備えている。
【0024】
ワーク搬送ユニットは、挟持機構30の上方に配置され、かつ下面にワーク200を保持する。ワーク搬送ユニットは、昇降ユニットにより鉛直方向に移動自在に設けられているとともに、水平方向移動ユニットにより水平方向に移動自在に設けられる。ワーク搬送ユニットは、水平方向移動ユニットにより、下面に保持したワーク200が保持テーブル10と同軸となる位置に配置されて、保持テーブル10と鉛直方向に対面する位置にワーク200を位置付ける。また、ワーク搬送ユニットは、昇降ユニットにより下降されることで、挟持機構30に保持されたエキスパンドシート201にワーク200を貼着する。
【0025】
挟持機構30は、エキスパンドシート201を保持するものである。挟持機構30は、第1挟持ユニット31-1と、第2挟持ユニット31-2と、第3挟持ユニット31-3と、第4挟持ユニット31-4とを備える。第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、ワーク200が貼着されたエキスパンドシート201をワーク200の外周で挟持する挟持ユニットである。
【0026】
第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、それぞれエキスパンドシート201のワーク200よりも外周側の位置を挟持する。第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、互いに構成が略等しいので、同一部分に同一符号を付して説明する。
【0027】
第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4は、固定基台2上に設けられた柱状の移動基台32と、移動基台32に鉛直方向に移動自在に設けられた上方挟持部材33と、下方挟持部材34と、上方挟持部材33と下方挟持部材34とを互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動する部材移動ユニット35とを備える。上方挟持部材33と、下方挟持部材34とは、互いに鉛直方向に間隔をあけて配置され、部材移動ユニット35により互いに近づけられて互いの間にエキスパンドシート201を挟んで保持する。
【0028】
第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とは、第1方向211に沿って互いに対向し、互いの間に保持テーブル10を位置付けている。即ち、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とは、第1方向211で保持テーブル10に保持されたワーク200を挟んで対向して配設されている。
【0029】
第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とは、第2方向212に沿って互いに対向し、互いの間に保持テーブル10を位置付けている。即ち、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とは、第2方向212で保持テーブル10に保持されたワーク200を挟んで対向して配設されている。
【0030】
第1挟持ユニット31-1、第2挟持ユニット31-2、第3挟持ユニット31-3及び第4挟持ユニット31-4の構成は、等しいので、以下、第1挟持ユニット31-1を代表して説明する。上方挟持部材33及び下方挟持部材34は、第2方向212と平行な直線状に形成されている。上方挟持部材33は、移動基台32の上端部から水平方向に伸びた支持アーム39の先端に支持され、下方挟持部材34は、移動基台32の中央部から水平方向に伸びた支持アーム39の先端に支持されている。
【0031】
上方挟持部材33及び下方挟持部材34は、それぞれ、支持アーム39の先端に固定された挟持部本体部材51と、挟持ブロック52とを備える。挟持部本体部材51は、第2方向212と平行な直線状の柱状に形成されている。
【0032】
挟持ブロック52は、上方挟持部材33及び下方挟持部材34それぞれの挟持部本体部材51の長手方向に沿って複数並べられて配置されている。上方挟持部材33の挟持ブロック52と、下方挟持部材34の挟持ブロック52とは、鉛直方向に対向して配置されている。上方挟持部材33の挟持ブロック52と、下方挟持部材34の挟持ブロック52の互いに対向する表面53(
図4に示す)は、水平方向に沿って平坦に形成されている。
【0033】
また、上方挟持部材33の挟持ブロック52では、
図4に示すように、二つの挟持ブロック52が挟持部本体部材51に回動支持部材54を介して取り付けられている。回動支持部材54は、二つの挟持ブロック52を第1方向211と平行な回転軸55を中心として回転自在に支持している。実施形態1では、下方挟持部材34の挟持ブロック52は、全ての互いに固定されているとともに、挟持部本体部材51に直接固定されている。
【0034】
また、上方挟持部材33の挟持ブロック52と、下方挟持部材34の挟持ブロック52とは、部材移動ユニット35により挟持部材33,34が互いに近づけられると、互いに近づいて互いの挟持ブロック52の間にエキスパンドシート201を挟持する。上方挟持部材33の挟持ブロック52と、下方挟持部材34の挟持ブロック52とは、部材移動ユニット35により挟持部材33,34が互いに離れると、互いに離れる。上方挟持部材33の挟持ブロック52の挟持ブロック52が回動支持部材54より回転軸55を中心として回転自在に支持されているので、下方挟持部材34の挟持ブロック52との間にエキスパンドシート201を挟持する際に、上方挟持部材33の挟持ブロック52がエキスパンドシート201の向きに応じて回転して、挟持ブロック52は、挟持ブロック52間にエキスパンドシート201を挟持することができる。
【0035】
挟持ブロック52は、挟持ブロック52間にエキスパンドシート201を挟持する際に、上方挟持部材33の挟持ブロック52の表面53にエキスパンドシート201の粘着面201-1が接触し、下方挟持部材34の挟持ブロック52の表面53にエキスパンドシート201の基材面201-2が接触する。
【0036】
また、挟持ブロック52の各挟持ブロック52は、
図4に示すように、表面53に第2方向212と平行な溝56を複数設け、表面53の保持テーブル10寄りの外縁部に冷却されたエアーを噴出可能な噴出口57を第2方向212と平行に複数並べて配置している。なお、実施形態1では、上方挟持部材33と下方挟持部材34との双方の挟持ブロック52の表面53に溝56を複数設けたが、本発明では、下方挟持部材34の挟持ブロック52の表面53に溝56を設けなくても良い。本発明では、挟持ブロック52の少なくとも上方挟持部材33の挟持ブロック52の表面53に溝56を設けるので、挟持ブロック52の粘着面201-1との接触面積を抑制して、挟持ブロック52が粘着面201-1に貼り付いてしまうことを抑制することができる。
【0037】
第3挟持ユニット31-3、及び第4挟持ユニット31-4では、上方挟持部材33及び下方挟持部材34が、第1方向211と平行な直線状に形成されているとともに、挟持部本体部材51が、第1方向211と平行な直線状の柱状に形成されている。第3挟持ユニット31-3、及び第4挟持ユニット31-4では、回動支持部材54が、二つの挟持ブロック52を第2方向212と平行な回転軸55を中心として回転自在に支持している。第3挟持ユニット31-3、及び第4挟持ユニット31-4では、溝56が第2方向212と平行であるとともに、噴出口57が第2方向212と平行に複数並べられている。
【0038】
なお、第1挟持ユニット31-1の上方挟持部材33及び下方挟持部材34は、特許請求の範囲に記載された第1挟持部材であり、第2挟持ユニット31-2の上方挟持部材33及び下方挟持部材34は、特許請求の範囲に記載された第2挟持部材である。第3挟持ユニット31-3の上方挟持部材33及び下方挟持部材34は、特許請求の範囲に記載された第3挟持部材であり、第4挟持ユニット31-4の上方挟持部材33及び下方挟持部材34は、特許請求の範囲に記載された第4挟持部材である。
【0039】
部材移動ユニット35は、移動基台32に設けられている。部材移動ユニット35は、挟持部材33,34を鉛直方向に移動自在とするモータ36と、モータ36により軸心回りに回転されるボールねじ37と、ボールねじ37に螺合しかつ挟持部材33,34と支持アーム39を介して連結したナット38とを備える。部材移動ユニット35は、モータ36がボールねじ37を軸心回りに回転させることで、ナット38、支持アーム39及び挟持部材33,34を鉛直方向に移動させる。
【0040】
部材移動ユニット35は、モータ36によりボールねじ37を軸心回りに回転することで、挟持部材33,34を互いに近づく方向に移動させて、挟持部材33,34間にエキスパンドシート201を挟持する。部材移動ユニット35は、モータ36によりボールねじ37を軸心回りに回転することで、挟持部材33,34を互いに離れる方向に移動させて、挟持部材33,34間のエキスパンドシート201の挟持を解除する。また、部材移動ユニット35は、モータ36によりボールねじ37を軸心回りに回転することで、挟持部材33,34を鉛直方向に同方向に移動させることもできる。
【0041】
移動機構40は、第1移動ユニット41と、第2移動ユニット42とを備える。
【0042】
第1移動ユニット41は、第1挟持ユニット31-1の移動基台32と第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211に沿って移動させることで、第1挟持ユニット31-1の移動基台32と第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211で互いに離反する方向である
図7に示す矢印300に移動させるものである。第1移動ユニット41は、第1挟持ユニット31-1の移動基台32と第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211に沿って移動させることで、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と、第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを第1方向211で近接離反可能に移動させるものでもある。第1移動ユニット41は、第1挟持ユニット31-1の移動基台32を第1方向211に移動させる第1移動機構43-1と、第2挟持ユニット31-2の移動基台32を第1方向211に移動させる第2移動機構43-2とを備える。
【0043】
第2移動ユニット42は、第3挟持ユニット31-3の移動基台32と第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212に沿って移動させることで、第3挟持ユニット31-3の移動基台32と第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212で互いに離反する方向である
図9に示す矢印302に移動させるものである。第2移動ユニット42は、第3挟持ユニット31-3の移動基台32と第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212に沿って移動させることで、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と、第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを第2方向212で近接離反可能に移動させるものでもある。第2移動ユニット42は、第3挟持ユニット31-3の移動基台32を第2方向212に移動させる第3移動機構43-3と、第4挟持ユニット31-4の移動基台32を第2方向212に移動させる第4移動機構43-4とを備える。
【0044】
第1移動機構43-1、第2移動機構43-2、第3移動機構43-3及び第4移動機構43-4は、互いに構成が略等しいので、同一部分に同一符号を付して説明する。
【0045】
第1移動機構43-1、第2移動機構43-2、第3移動機構43-3及び第4移動機構43-4は、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の移動基台32を第1方向211又は第2方向212に移動可能とするモータ44と、モータ44により軸心回りに回転されて移動基台32を第1方向211又は第2方向212に移動させるボールねじ45とを有する。
【0046】
第1移動機構43-1、第2移動機構43-2、第3移動機構43-3及び第4移動機構43-4は、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4を互いに離反する方向である矢印300,302に移動させることで、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4が挟持したエキスパンドシート201をエキスパンドする。
【0047】
フレーム搬送ユニットは、挟持機構30の上方に配置され、下面に環状フレーム209を保持する。フレーム搬送ユニットは、昇降ユニットにより鉛直方向に移動自在に設けられているとともに、図示しない水平方向移動ユニットにより水平方向に移動自在に設けられる。フレーム搬送ユニットは、水平方向移動ユニットにより、下面に保持した環状フレーム209の開口210が保持テーブル10と同軸となる位置に配置されて、環状フレーム209の開口210と保持テーブル10に載置されたエキスパンドシート201に貼着したワーク200とが鉛直方向に対面する位置に環状フレーム209を位置付ける。また、フレーム搬送ユニットは、昇降ユニットにより下降されることで、エキスパンドシート201に環状フレーム209を貼着する。
【0048】
シート切断ユニット60は、環状フレーム209に貼着されたエキスパンドシート201を環状フレーム209に沿って切断するものである。シート切断ユニット60は、
図1に示すように、エキスパンドシート201を切断するカッター61を備える。シート切断ユニット60は、エキスパンドシート201に環状フレーム209が貼着された後に、カッター61を裏面207側からエキスパンドシート201の環状フレーム209の内縁と外縁との間に切り込ませて、カッター61を環状フレーム209に沿って回転させて、エキスパンドシート201の環状フレーム209の内縁と外縁との間を切断する。
【0049】
撮像ユニット70は、保持テーブル10の上方に配置され、保持テーブル10にエキスパンドシート201を介して保持されたワーク200を撮像するものである。撮像ユニット70は、保持テーブル10に保持されたワーク200の表面204全体を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット70は、保持テーブル10に保持されたワーク200を撮影して、画像を取得し、取得した画像を制御ユニット100に出力する。
【0050】
制御ユニット100は、エキスパンド装置1の各構成要素を制御して、エキスパンド装置1にエキスパンドシート201に対するワーク200の貼着動作、エキスパンドシートのエキスパンド動作及びエキスパンドシート201に対する環状フレーム209の貼着動作等を実施させるものである。即ち、制御ユニット100は、少なくとも、第1移動ユニット41と第2移動ユニット42とを制御する。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、エキスパンド装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してエキスパンド装置1の各構成要素に出力する。
【0051】
また、制御ユニット100は、各種の情報や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0052】
なお、本発明では、エキスパンド装置1は、上述した構成に加え、ロールに巻かれたエキスパンドシート201を保持するシート保持ユニットと、粘着面201-1を上向きにしてシート保持ユニットからエキスパンドシート201を挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4に送り出す送り出しユニットと、送り出しユニットにより送り出されたエキスパンドシート201を所定の長さで切断する切断ユニットとを備える。
【0053】
次に、本明細書は、実施形態1に係るエキスパンド方法を図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態1に係るエキスパンド方法の流れを示すフローチャートである。
図6は、
図5に示されたエキスパンド方法の挟持ステップを模式的に示す平面図である。
図7は、
図5に示されたエキスパンド方法の第1エキスパンドステップを模式的に示す平面図である。
図8は、
図5に示されたエキスパンド方法の第1戻しステップを模式的に示す平面図である。
図9は、
図5に示されたエキスパンド方法の第2エキスパンドステップを模式的に示す平面図である。
図10は、
図5に示されたエキスパンド方法の第2戻しステップを模式的に示す平面図である。
図11は、
図5に示されたエキスパンド方法の間隔調整ステップを模式的に示す平面図である。なお、
図6から
図11は、ワーク200のノッチ208、分割線206、デバイス202を省略している。
【0054】
実施形態1に係るエキスパンド方法は、ワーク200が貼着されたエキスパンドシート201をエキスパンドする方法であって、前述したエキスパンド装置1のエキスパンドシート201のエキスパンド動作でもある。エキスパンド装置1は、オペレータが入力ユニットを操作するなどして入力した加工内容情報を受け付け、オペレータが入力ユニットを操作する等して入力した加工動作の開始指示を受け付けると、エキスパンド動作を開始する。エキスパンド方法は、制御ユニット100がエキスパンド装置1の各構成要素に動作を制御することで実施され、
図6に示すように、挟持ステップ1001と、第1エキスパンドステップ1002と、第1戻しステップ1003と、第2エキスパンドステップ1004と、第2戻しステップ1005と、間隔調整ステップ1006とを備える。
【0055】
(挟持ステップ)
挟持ステップ1001は、第1方向211でワーク200を挟んで互いに対向する第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とでエキスパンドシート201を挟持し、且つ、第2方向212でワークを挟んで互いに対向する第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とでエキスパンドシート201を挟持するステップである。
【0056】
挟持ステップ1001では、エキスパンド装置1は、粘着面201-1を上向きにしてシート保持ユニットからエキスパンドシート201を送り出しユニットにより挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4に送り出し、送り出しユニットにより送り出されたエキスパンドシート201を切断ユニットにより所定の長さで切断する。挟持ステップ1001では、
図6に示すように、エキスパンドシート201を第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34間に挟持し、第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34間に挟持し、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34間に挟持し、第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34間に挟持し、エキスパンドシート201の基材面201-2を保持テーブル10の保持面11に保持する。
【0057】
挟持ステップ1001では、エキスパンド装置1は、ワーク搬送ユニットに保持した分割線206が形成されたワーク200の裏面207側のDAF221をエキスパンドシート201の各挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33,34で囲まれた領域に対向させた後、ワーク搬送ユニットを下降させて、
図6に示すように、エキスパンドシート201にワーク200の裏面207側のDAF221を貼着する。挟持ステップ1001では、エキスパンド装置1は、互いに交差する分割予定ライン205のうち一方が第1方向211と平行となり、他方が第2方向212と平行となる向きで、エキスパンドシート201にワーク200の裏面207のDAF221を貼着する。挟持ステップ1001では、エキスパンドシート201を介してワーク200の裏面207側を保持テーブル10の保持面11で保持し、ペルチェ素子を動作させて、エキスパンドシート201を介してワーク200の特にDAF221を冷却する。
【0058】
(第1エキスパンドステップ)
第1エキスパンドステップ1002は、第1方向211でワーク200を挟んで互いに対向し、それぞれエキスパンドシート201を挟持した第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを互いに離反する方向である矢印300に移動させることでエキスパンドシート201を第1方向211にエキスパンドするステップである。また、第1エキスパンドステップ1002は、第2方向212でワーク200を挟んで互いに対向し、それぞれエキスパンドシート201を挟持した第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とのそれぞれの位置を維持することでエキスパンドシート201の第2方向212のエキスパンドを規制するステップでもある。
【0059】
第1エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、
図7に示すように、移動機構43-1,43-2に第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2とを第1方向211に沿って互いに離反する方向である矢印300に同時に移動させる。すると、エキスパンド装置1は、挟持ユニット31-1,31-2の移動基台32の移動とともに、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33とを第1方向211に沿って互いに離反する方向である矢印300に移動させて、エキスパンドシート201を第1方向211のみにエキスパンドする。
【0060】
また、実施形態1において、第1エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34それぞれの噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出しつつエキスパンドシート201をエキスパンドする。実施形態1において、第1エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを、それぞれ
図7に示す矢印300に沿って所定距離移動させると、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを停止する。
【0061】
実施形態1において、第1エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34それぞれの噴出口57からエキスパンドシート201に向かって冷却エアーを噴出するので、各挟持ユニット31-1,31-2の挟持部材33,34で挟持された領域を冷却する。エキスパンドシート201の各挟持ユニット31-1,31-2の挟持部材33,34で挟持された領域が硬化する。エキスパンドシート201のエキスパンドの結果、エキスパンドシート201に第1方向211に沿った引張力が作用する。
【0062】
このようにワーク200が貼着されたエキスパンドシート201に第1方向211に沿った引張力が作用すると、ワーク200は、分割予定ライン205に沿って分割線206が形成されて個々のチップ222に分割されているので、主に、第2方向212と平行な分割予定ライン205に沿ってDAF221が分割されて、第1方向211のチップ222間の間隔が広がる。このために、第1エキスパンドステップ1002では、ワーク200の第1方向211に沿って並ぶチップ222間でDAF221を分割することとなる。
【0063】
なお、実施形態1において、第1エキスパンドステップ1002では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34それぞれの噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出しつつ第1方向211に沿ってエキスパンドシート201をエキスパンドする。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出することなく、第1方向211に沿ってエキスパンドシート201をエキスパンドしても良い。
【0064】
(第1戻しステップ)
第1戻しステップ1003は、第1エキスパンドステップ1002を実施した後、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを、互いに近接する方向である
図8に示す矢印301に移動させエキスパンドシート201の張力を緩和させるステップである。また、第1戻しステップ1003は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とのそれぞれの位置を維持するステップでもある。
【0065】
第1戻しステップ1003では、エキスパンド装置1は、
図8に示すように、移動機構43-1,43-2に第1挟持ユニット31-1と第2挟持ユニット31-2とを第1方向211に沿って互いに近接する方向である矢印301(矢印300と逆向きの方向)に同時に移動させる。すると、エキスパンド装置1は、挟持ユニット31-1,31-2の移動基台32の移動とともに、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33とを第1方向211に沿って互いに近接する方向である矢印301に移動させて、エキスパンドシート201の張力を緩和する。
【0066】
また、実施形態1において、第1戻しステップ1003では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを、それぞれ
図8に示す矢印301に沿って第1エキスパンドステップ1002と同距離である所定距離移動させると、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを停止する。
【0067】
なお、実施形態1において、第1戻しステップ1003では、エキスパンド装置1は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを、それぞれ第1エキスパンドステップ1002と同距離移動させた。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、例えば、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを、それぞれ第1エキスパンドステップ1002よりも短い距離移動させても良い。本発明では、第1戻しステップ1003において、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とをそれぞれ第1エキスパンドステップ1002よりも短い距離移動させた場合、第1方向211に沿って並ぶチップ222同士が接触することを抑制することができる。
【0068】
(第2エキスパンドステップ)
第2エキスパンドステップ1004は、第1戻しステップ1003を実施した後、第2方向212でワーク200を挟んで互いに対向し、それぞれエキスパンドシート201を挟持した第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを互いに離反する方向である矢印302に移動させることでエキスパンドシート201を第2方向212にエキスパンドするステップである。また、第2エキスパンドステップ1004は、第1方向211でワーク200を挟んで互いに対向し、それぞれエキスパンドシート201を挟持した第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とのそれぞれの位置を維持することでエキスパンドシート201の第1方向211のエキスパンドを規制するステップでもある。
【0069】
第2エキスパンドステップ1004では、エキスパンド装置1は、
図9に示すように、移動機構43-3,43-4に第3挟持ユニット31-3と第4挟持ユニット31-4とを第2方向212に沿って互いに離反する方向である矢印302に同時に移動させる。すると、エキスパンド装置1は、挟持ユニット31-3,31-4の移動基台32の移動とともに、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33とを第2方向212に沿って互いに離反する方向である矢印302に移動させて、エキスパンドシート201を第2方向212のみにエキスパンドする。
【0070】
また、実施形態1において、第2エキスパンドステップ1004では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34それぞれの噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出しつつエキスパンドシート201をエキスパンドする。実施形態1において、第2エキスパンドステップ1004では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを、それぞれ
図9に示す矢印302に沿って第1エキスパンドステップ1002と同距離である所定距離移動させると、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを停止する。
【0071】
なお、実施形態1において、第2エキスパンドステップ1004では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを、第1エキスパンドステップ1002と同距離移動させた。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、第1エキスパンドステップ1002と異なる距離、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを移動させても良い。
【0072】
実施形態1において、第2エキスパンドステップ1004では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34それぞれの噴出口57からエキスパンドシート201に向かって冷却エアーを噴出するので、各挟持ユニット31-3,31-4の挟持部材33,34で挟持された領域を冷却する。エキスパンドシート201の各挟持ユニット31-3,31-4の挟持部材33,34で挟持された領域が硬化する。エキスパンドシート201のエキスパンドの結果、エキスパンドシート201に第2方向212に沿った引張力が作用する。
【0073】
このようにワーク200が貼着されたエキスパンドシート201に第2方向212に沿った引張力が作用すると、ワーク200は、分割予定ライン205に沿って分割線206が形成されて個々のチップ222に分割されているので、主に、第1方向211と平行な分割予定ライン205に沿ってDAF221が分割されて、第2方向212のチップ222間の間隔が広がる。このために、第2エキスパンドステップ1004では、ワーク200の第2方向212に沿って並ぶチップ222間でDAF221を分割し、DAF221を個々のチップ222毎に分割することとなる。
【0074】
なお、実施形態1において、第2エキスパンドステップ1004では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34それぞれの噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出しつつ第2方向212に沿ってエキスパンドシート201をエキスパンドする。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出することなく、第2方向212に沿ってエキスパンドシート201をエキスパンドしても良い。
【0075】
こうして、実施形態1に係るエキスパンド方法では、第1エキスパンドステップ1002、第1戻しステップ1003及び第2エキスパンドステップ1004を順に実施することで、制御ユニット100は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを互いに離反する方向である矢印300に移動させることでエキスパンドシート201を第1方向211にエキスパンドした後、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とを、互いに近接する方向である矢印301に移動させた状態で、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを互いに離反する方向である矢印302に移動させることでエキスパンドシート201を第2方向212にエキスパンドするよう第1移動ユニット41と第2移動ユニット42とを制御する。
【0076】
(第2戻しステップ)
第2戻しステップ1005は、第2エキスパンドステップ1004を実施した後、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを、互いに近接する方向である
図10に示す矢印303に移動させエキスパンドシート201の張力を緩和させるステップである。また、第2戻しステップ1005は、第1挟持ユニット31-1の挟持部材33,34と第2挟持ユニット31-2の挟持部材33,34とのそれぞれの位置を維持するステップでもある。
【0077】
第2戻しステップ1005では、エキスパンド装置1は、
図10に示すように、移動機構43-3,43-4に第3挟持ユニット31-3と第4挟持ユニット31-4とを第2方向212に沿って互いに近接する方向である矢印303(矢印302と逆向きの方向)に同時に移動させる。すると、エキスパンド装置1は、挟持ユニット31-3,31-4の移動基台32の移動とともに、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33とを第2方向212に沿って互いに近接する方向である矢印303に移動させて、エキスパンドシート201の張力を緩和する。
【0078】
また、実施形態1において、第2戻しステップ1005では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを、それぞれ
図10に示す矢印303に沿って第2エキスパンドステップ1004と同距離である所定距離移動させると、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを停止する。
【0079】
なお、実施形態1において、第2戻しステップ1005では、エキスパンド装置1は、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを、それぞれ第2エキスパンドステップ1004と同距離移動させた。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、例えば、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とを、それぞれ第2エキスパンドステップ1004よりも短い距離移動させても良い。
【0080】
本発明では、第2戻しステップ1005において、第3挟持ユニット31-3の挟持部材33,34と第4挟持ユニット31-4の挟持部材33,34とをそれぞれ第2エキスパンドステップ1004よりも短い距離移動させた場合、チップ222同士が接触することを抑制することができる。
【0081】
(間隔調整ステップ)
間隔調整ステップ1006はチップ222間の距離が所定距離となるように、エキスパンドシート201を少なくとも第1方向211にエキスパンドし、エキスパンドされたエキスパンドシート201に環状フレーム209を貼着するステップである。実施形態1において、間隔調整ステップ1006では、エキスパンド装置1は、撮像ユニット70でワーク200を撮像しながら、
図11中の矢印300,302で示すように、移動機構43-1,43-2,43-3,43-4に挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4のエキスパンドシート201を挟持した挟持部材33,34を互いに第1方向211又は第2方向212に離反する方向である矢印300,302に同時に移動させる。
【0082】
間隔調整ステップ1006では、エキスパンド装置1は、撮像ユニット70が撮像して取得した画像に基づいて、互いに隣接するチップ222間の距離を算出し、全てのチップ222間の間隔が所定距離以上となると、移動機構43-1,43-2,43-3,43-4による挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33,34の移動を停止する。間隔調整ステップ1006では、エキスパンド装置1は、開口210とエキスパンドシート201に貼着されたワーク200とが対面する位置にフレーム搬送ユニットに保持した環状フレーム209を位置付ける。また、本発明では、あらかじめ、チップ222間に所望の間隔を形成するために必要な拡張距離を実験的に求めておき、求めた拡張距離分だけ、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の挟持部材33,34を移動させてもよい。
【0083】
間隔調整ステップ1006では、エキスパンド装置1は、フレーム搬送ユニットを下降させて、フレーム搬送ユニットが保持した環状フレーム209をエキスパンドシート201に貼着する。間隔調整ステップ1006では、エキスパンド装置1は、シート切断ユニット60のカッター61にエキスパンドシート201の環状フレーム209の内縁と外縁との間を環状フレーム209に沿って切断させ、エキスパンド装置1のエキスパンド動作即ち実施形態1に係るエキスパンド方法を終了する。
【0084】
以上説明した実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、第1エキスパンドステップ1002を実施した後、第1戻しステップ1003を実施する。その後、実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、第2エキスパンドステップ1004を実施する。
【0085】
このために、実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、エキスパンドシート201を第1方向211にエキスパンドする際には、エキスパンドシート201が第2方向212にエキスパンドされていないために、エキスパンドシート201に第2方向212の張力が付与されていない。また、実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、エキスパンドシート201を第2方向212にエキスパンドする際には、エキスパンドシート201の第1方向211の張力が緩和されている。その結果、実施形態1に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置1は、エキスパンドシート201を第1方向211と第2方向212とのそれぞれに沿って十分にエキスパンドすることができ、ワーク200に未分割領域の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。実施形態1では、第2戻しステップ1005を実施した後、間隔調整ステップ1006を実施したが、本発明では、第2戻しステップ1005を実施せずに、第2エキスパンドステップ1004を実施した後、間隔調整ステップ1006を実施しても良い。
【0087】
また、実施形態1では、DAF221がウェーハ220の裏面207に貼着されて、エキスパンドシート201に貼着されたが、本発明では、DAF221が予めエキスパンドシート201に貼着されており、挟持ステップ1001において、エキスパンドシート201に予め貼着されたDAF221にウェーハ220の裏面207を貼着しても良い。この場合、ウェーハ220は、分割予定ライン205に沿って分割線206が形成されることなく、基板203の内部に分割予定ライン205に沿った分割起点である改質層が形成されて、エキスパンドステップ1002,1004において改質層を起点にDAF221とともに分割されて、個々のチップ222に分割されても良い。
【0088】
また、本発明では、ワーク200は、基板203の内部に分割予定ライン205に沿った分割起点である改質層が形成され、裏面207上に金属膜が形成されたウェーハ220であっても良い。なお、改質層は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。改質層は、基板203の他の部分よりも機械的な強度が低い。
【0089】
また、本発明では、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の各挟持部材33,34に噴出口57を設けて、エキスパンドステップ1002,1004において、噴出口57から冷却エアーをエキスパンドシート201に噴出してエキスパンドシート201をエキスパンドした。しかしながら、本発明では、各挟持部材33,34に噴出口57を設けなくても良い。また、本発明では、挟持ユニット31-1,31-2,31-3,31-4の各挟持部材33,34の構成は、実施形態1に示された構成に限定されない。
【符号の説明】
【0090】
1 エキスパンド装置
33 上方挟持部材(第1挟持部材、第2挟持部材、第3挟持部材、第4挟持部材)
34 下方挟持部材(第1挟持部材、第2挟持部材、第3挟持部材、第4挟持部材)
41 第1移動ユニット
42 第2移動ユニット
100 制御ユニット(コントローラ)
200 ワーク
201 エキスパンドシート(シート)
211 第1方向
212 第2方向
300,302 離反する方向
301,303 近接する方向
1002 第1エキスパンドステップ
1003 第1戻しステップ
1004 第2エキスパンドステップ