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特許7483673ジブロック型オリゴ糖及びそれを含む界面活性剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ジブロック型オリゴ糖及びそれを含む界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/04 20060101AFI20240508BHJP
   C08B 11/02 20060101ALI20240508BHJP
   C09K 23/48 20220101ALI20240508BHJP
   A23L 29/288 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
C07H15/04 A CSP
C08B11/02
C09K23/48
A23L29/288
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021502381
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008157
(87)【国際公開番号】W WO2020175648
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019035735
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】上高原 浩
(72)【発明者】
【氏名】杉本 瑛里香
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/067883(WO,A1)
【文献】Journal of Polymer Science. Part A. Polymer Chemistry,2011年,Vol.49 No.23,pp.4964-4976,DOI 10.1002/pola.24952
【文献】Journal of Polymer Science. Part B. Polymer Physics,2011年,Vol.49, No.21,pp.1539-1546,DOI 10.1002/polb.22343
【文献】Cellulose (Dordrecht, Netherlands),2008年,Vol.15, No.6,pp.797-801,DOI 10.1007/s10570-008-9232-6
【文献】Carbohydrate Research,2011年,Vol.346, No.13,pp.1671-1683,DOI 10.1016/j.carres.2011.04.034
【文献】Cellulose (Dordrecht, Netherlands),2007年,Vol.14, No.5,pp.513-528,DOI 10.1007/s10570-007-9128-x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C08B
C09K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式(I)中、Rは、各々独立してメチル又はエチル、mは、1.0以上3.0以下、nは、2.0以上5.4以下、アルキルピラノースブロックの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、1.0より大きく4.0以下]
で示される、ピラノースブロックとアルキルピラノースブロックとを有するジブロック型オリゴマー。
【請求項2】
アルキルピラノースブロックのMw/Mnは、1.0より大きく3.0以下である、請求項1に記載のジブロック型オリゴマー。
【請求項3】
mは、1.5以上2.5以下、nは、4.2以上5.4以下である、請求項1又は2に記載のジブロック型オリゴマー。
【請求項4】
n/mは、2.0以上3.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のジブロック型オリゴマー。
【請求項5】
25℃の流体力学的直径が、1000nm未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のジブロック型オリゴマー。
【請求項6】
は、全てメチルである、請求項1~5のいずれか1項に記載のジブロック型オリゴマー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のジブロック型オリゴマーを含む界面活性剤。
【請求項8】
メチル又はエチルセルロースを酸の存在下でメタノール分解又はエタノール分解して、メチル又はエチルピラノースオリゴマーを生成すること;及び
メチル又はエチルピラノースオリゴマーと、ピラノースブロックとを結合させることを含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載のジブロック型オリゴマーの生産方法。
【請求項9】
請求項7記載の界面活性剤を含む、食品用界面活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、親水部としてグルコースブロックを有し、疎水部としてメチル化又はエチル化グルコースブロックを有する、ジブロック型オリゴ糖(又はオリゴマー)に関し、さらに詳しくは特定の範囲の数のグルコースブロックと、特定の範囲の数のメチル又はエチル化グルコースブロックを有する、ジブロック型オリゴ糖を含む界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
D-グルコピラノースがβ-1,4結合した剛直な直鎖状高分子であるセルロースは、植物細胞壁を構成する主成分であり、地球上で最も多量に生産される有機化合物である。またセルロースは再生産可能であり、焼却によっても有害物質を出すことが少ないので、近い将来に枯渇することが予想される化石資源に代わる環境負荷の小さい地球に優しい天然資源として注目されており、セルロースの高付加価値化に向けた新規利用法の開発が盛んに行われている。
【0003】
セルロースは無水グルコース単位当たりに3つの水酸基を有し、その水酸基を化学修飾することで、セルロースにはない様々な機能を有するセルロース誘導体を得ることができる。代表的なセルロース誘導体であるメチルセルロース (MC)は水酸基をメチル化したセルロースであり、無味で高い生体適合性を持つという性質のために、既に食品、医薬品などの用途に使用されている。
【0004】
その用途の一つに界面活性能があり、MC水溶液は常温で界面活性剤として機能する。
特許文献1は、アルキル化されたグルコース又はセロオリゴ糖からなる疎水部分と単糖又はオリゴ糖からなる親水性部分とがブロック的に結合しているセロオリゴ糖誘導体からなる界面活性剤を開示する(特許文献1特許請求の範囲参照)。特許文献1は、その実施例1で得られるブロック的メチル化セロオリゴ糖ライブラリーを分画して、クロロホルム可溶部(PartA)を含む水溶液の表面張力を測定して、約45mN/mであることを報告した(特許文献1、[0189]参照)。
【0005】
非特許文献1は、非変性セロオリゴ糖ブロックとトリ-O-メチル化セロオリゴ糖ブロックのジブロックオリゴマー(具体的にはペンタマー1とヘキサマー2)を合成し、それらの水溶液の表面張力は、約30mN/mまで低下し得ることを報告した(非特許文献1、Fig10[0189]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4749339号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Hiroshi Kamitakahara, Fumiaki Nakatsubo, Dieter Klemm, "New class of carbohydrate-based nonionic surfactant: diblock co-oligomers of tri-O-methylated and unmodified cello-oligosaccharides", Cellulose (2007) 14: 513-528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、ブロック的メチル化セロオリゴ糖ライブラリーを分画して、クロロホルム可溶部(PartA)を含む水溶液の表面張力を開示する。しかし、その表面張力は、約45mN/mであり、界面活性能をより向上させることが求められる。更に、特許文献1によって生産される材料は、長く、手間が掛かる方法で生産され、より簡単に効率的に生産可能な材料であることが求められる。
【0009】
非特許文献1は、ジブロックオリゴマー(具体的にはペンタマー1とヘキサマー2)を合成し、それらの水溶液の表面張力は、約30mN/mまで低下し得ることを報告した。界面活性能は、相当なレベルを示すように見えるが、そのオリゴマー材料も長く、手間がかかる生産方法で生産されており、より簡単に効率的に生産可能な(そのような化学構造を有する)材料であることが求められる。
【0010】
従って、本開示は、より効率的に生産(又は製造)可能であって、高い界面活性能を示し得る、セルロースに基づくジブロック型オリゴマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、非修飾グルコースブロックとメチル化又はエチル化グルコースブロックを含むジブロック型オリゴマーであって、メチル化又はエチル化グルコースブロックが特定の分散度(Mw/Mn)(数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn))を有する場合、優れた界面活性能を示すとともに、容易に生産することができることを見出した。更に、そのようなジブロックオリゴマーは界面活性剤用途に好適であることを見出して、本開示の技術を完成させるに至った。
【0012】
本明細書は、下記の形態を含む。
1.下記式(I):
【化1】
[式(I)中、Rは、各々独立してメチル又はエチル、mは、1.0以上3.0以下、nは、1.0以上13.0以下、アルキルピラノースブロックの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、1.0より大きく4.0以下]
で示される、ピラノースブロックとアルキルピラノースブロックとを有するジブロック型オリゴマー。
2.アルキルピラノースブロックのMw/Mnは、1.0より大きく3.0以下である、上記1に記載のジブロック型オリゴマー。
3.mは、1.5以上2.5以下、nは、2.0以上6.0以下である、上記1又は2に記載のジブロック型オリゴマー。
4.n/mは、2.0以上3.0以下である、上記1~3のいずれか1つに記載のジブロック型オリゴマー。
5.25℃の流体力学的直径が、1000nm未満である、上記1~4のいずれか1つに記載のジブロック型オリゴマー。
6.Rは、全てメチルである、上記1~5のいずれか1つに記載のジブロック型オリゴマー。
7.上記1~6のいずれか1つに記載のジブロック型オリゴマーを含む界面活性剤。
8.メチル又はエチルセルロースを酸の存在下でメタノール分解又はエタノール分解して、メチル又はエチルピラノースオリゴマーを生成すること;及びメチル又はエチルピラノースオリゴマーと、ピラノースブロックとを結合させること を含む、上記1~6のいずれか1つに記載のジブロック型オリゴマーの生産方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーは、非修飾グルコースブロックとメチル化又はエチル化グルコースブロックを含み、メチル化又はエチル化グルコースブロックが特定の分散度(Mw/Mn)を有し、優れた界面活性能を示すとともに、容易に生産することができる。更に、そのジブロック型オリゴマーは界面活性剤用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ピラノースブロックとアルキルピラノースブロックとを有するジブロック型オリゴマーを化学式で示す。
図2図2は、温度に対する、オリゴマー8a0、8b~8fの流体力学的直径を示す。
図3-1】図3-1は、ネガティブ染色法によるTEM画像を示す。(a)と(b)は、8a0、(c)と(d)は、8b、(e)と(f)は、8c、(g)と(h)は、8fである。バーは、(f)中100nm、(a)(b)(c)(d)(e)(g)(h)(j)中200nm、(j)中500nmを示す。
図3-2】図3-2は、cryoTEM画像を示す。(a)と(b)は、8a0、(c)と(d)は、8dである。バーは、200nmを示す。
図3-3】図3-3は、AFM画像を示す。左側2列はシリコンウェハ上であり、右側2列は雲母上である。シリコンウェハ上も雲母上も各々左側が高さ画像であり、右側がフェーズ画像である。
図4図4は、オリゴマー8a0~8fの水溶液の表面張力曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、新たなジブロック型オリゴマーを提供し、それは、下記式(I):
【化2】
[式(I)中、Rは、各々独立してメチル又はエチル、mは、1.0以上3.0以下、nは、1.0以上13.0以下、アルキルピラノースブロックの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、1.0より大きく4.0以下]
で示される、ピラノースブロックとアルキルピラノースブロックとを有するジブロック型オリゴマーである。
【0016】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーのピラノースブロックについて、mは、ピラノースブロックに関する平均値であり、ピラノースの数は、整数であっても、整数でなくてもよい。mは、1.0以上3.0以下である。mは、1.2以上であってよく、1.4以上であってよく、1.5以上であってよく、1.6以上であってよい。mは、2.8以下であってよく、2.6以下であってよく、2.5以下であってよく、2.4以下であってよい。mは、1.0以上3.0以下である場合、より高い界面活性を示し得る。
【0017】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーのアルキルピラノースブロックについて、Rは、各々独立してメチル基又はエチル基である。全てがメチル基又は全てがエチル基であってよい。
【0018】
アルキルピラノースブロックについて、nは、アルキルピラノースブロックに関する平均値であり、アルキルピラノースの数は、整数であっても整数でなくてもよい。nは、1.0以上13.0以下である。nは、1.2以上であってよく、1.4以上であってよく、1.5以上であってよく、1.6以上であってよく、2.0以上であってよく、2.5以上であってよい。nは、12.0以下であってよく、10.0以下であってよく、8.0以下であってよく、6.0以下であってよい。nは、1.0以上13.0以下である場合、ゲル化することなく、より適度な界面活性能を発揮し得る。
【0019】
n/mは、一の態様では、例えば、1.0以上13.0以下であり得、3.0以上6.0以下であってよい。n/mは、他の態様では、2.0以上3.0以下であってよい。
【0020】
アルキルピラノースブロックそのもの(ピラノースブロックと結合前)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、1.0より大きく4.0以下であり、1.0より大きく3.0以下であってよい。Mw/Mnは、一の態様において、1.05以上2.0以下であってよく、他の態様では、例えば、1.05以上1.7以下であってよく、更なる態様では、1.10以上1.5以下であってよい。数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いて測定した値をいい、より具体的には、実施例に記載した方法で測定した値をいう。
【0021】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーの25℃での流体力学的直径は、例えば、1000nm未満でありえ、500nm以下であってよい。一の態様では、25℃での流体力学的直径は、200nm以下であってよく、他の態様では、25℃での流体力学的直径は、100nm以下であってよい。25℃での流体力学的直径が、1000nm未満である場合、ゲル化を生じ難く、界面活性剤として利用しやすい。
【0022】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーは、25℃~70℃でその流体力学的直径の急激な増加が観察されても、観察されなくてもよい。ジブロック型オリゴマーの熱的特性は、適宜利用することができる。
【0023】
本開示は、本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーを含む、界面活性剤を提供することができる。本明細書で界面活性剤とは、水に溶けて、水の表面張力を低下させることができる材料をいう。そのような界面活性剤は、種々の用途に使用することができるが、例えば、泡立て剤、乳化剤、分散剤、湿潤剤等として、利用することができる。本開示の実施形態の界面活性剤は、必要に応じて、適宜他の成分を含むことができる。
【0024】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマー(又はオリゴ糖)は、全体として分子量分布を有する材料である。そのため、種々の分子量を有するオリゴマーの全体として混合物であるが、上述のように、適度な界面活性能を有しながら、以下に説明するように、生産(又は製造)方法の著しい短縮化、コストダウンが可能であるという特徴を有する。
【0025】
本開示は、新たなジブロック型オリゴマー(又はオリゴ糖)の生産方法を提供し、それは、
(A)メチル又はエチルセルロースを、酸の存在下で、メタノール分解又はエタノール分解して、メチル又はエチルピラノースブロックを生成すること;及び
(B)メチル又はエチルピラノースブロックと、ピラノースブロック(前駆体)とを結合させることを含む。
【0026】
本開示の実施形態の生産方法は、更に、
(C)ピラノースブロック(前駆体)を準備すること;及び/又は
(D)メチル又はエチルセルロースを準備すること
を含むことができる。
(C)ピラノースブロック(前駆体)の準備は、(B)メチル又はエチルピラノースブロックと、ピラノースブロックとをグリコシル化反応によって結合させる前に行うことができる。
(C)メチル又はエチルセルロースの準備は、(A)メチル又はエチルセルロースを酸の存在下でメタノール分解又はエタノール分解する前に行うことができる。
【0027】
本開示の実施形態の生産方法において、(C)ピラノースブロック準備工程は、従来既知の方法を用いて行うことができる。例えば、下記反応式に示すように、セロビオース3を出発原料として、3段階で、グリコシルドナー(ピラノースブロック前駆体)6を生成することができる。セロビオースの代わりに、グルコース、セロトリオース等を使用することができる。尚、下記グリコシルドナー6は、その水酸基が保護基(具体的にはアセチル基)で保護されているので、後ほど、保護基(アセチル基)の脱離が必要であることに注意が必要である。
【0028】
【化3】
【0029】
本開示の実施形態の生産方法において、(D)メチル又はエチルセルロース準備工程は、従来既知の方法を用いて行うことができる。例えば、下記反応式に示すように、セルロース又は市販のメチル又はエチルセルロースを、ヨウ化メチル又はヨウ化エチルと反応させて、全ての水酸基をメチル化又はエチル化することで行うことができる。
【0030】
【化4】
【0031】
本開示の実施形態の生産方法において、(A)メチル又はエチルセルロースを、酸の存在下で、メタノール分解又はエタノール分解する、メチル又はエチルピラノースブロックの生成工程は、上述の完全にメチル化又はエチル化されたセルロースを、必要であれば、溶媒に溶解して、酸の存在下で、メタノール分解又はエタノール分解することで行うことができる。例えば、下記反応式に示すように、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の溶媒に溶解して、硫酸、塩酸、硝酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸の存在下、上述の完全にメチル化又はエチル化されたセルロースを、メタノール分解又はエタノール分解することで行うことができる。
【0032】
【化5】
【0033】
反応温度、反応時間、反応時の溶質の濃度、当量関係等の反応条件は、目的とするメチル又はエチルピラノースオリゴマーの分子量などに応じて、適宜、選択することができる。例えば、反応時間は、10分~10時間であってよく、15分~5時間であってよく、20分~3時間であってよく、30分~2時間であってよい。反応温度は、30~80℃であってよく、35~75℃であってよく、40~70℃であってよく、45℃~65℃であってよい。酸及びメタノールの量等は、適宜選択することができる。
【0034】
本開示の実施形態の生産方法において、(B)メチル又はエチルピラノースブロックと、ピラノースブロックとを結合させる工程は、メチル又はエチルピラノースオリゴマー2とピラノースブロック前駆体6とを、例えば、下記反応式に示すように、グリコシル化反応を用いて結合させることで行うことができる。
【0035】
【化6】
【0036】
本開示の実施形態の生産方法において、ピラノースブロックの水酸基が保護基によって保護されている場合、保護基を外すことができる、例えば、下記反応式に基づいて、アセチル基を外して、水酸基を脱保護することができる。
【0037】
【化7】
【0038】
本開示の実施形態の生産方法は、従来既知の特許文献1及び非特許文献1記載のジブロック型オリゴマーの生産方法と比較すると、メチル又はエチルピラノースブロックの生成工程が、著しく短縮されている。従って、全体的により短時間で、より容易に、より高収率で、より低コストで、ジブロック型オリゴマーを生産することができる。更に、そのようなジブロック型オリゴマーを含む界面活性剤を生産することができる。
【実施例
【0039】
以下、本開示を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本開示の一態様にすぎず、本開示はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0040】
実施例又は比較例で使用したオリゴマー等は、下記のように生産した。
1.疎水部の合成
1-1.完全メチル化セルロース1の合成
(Methyl 2,3,6-tri-O-methyl cellulosideの合成)
【化8】
乾燥したメチルセルロース (20.0 g) をDMSO (500 mL) に溶解し、NaH 60% dispersion in mineral oil(4.03 g) を加えたあと、CH3I(6.0 mL)を加え、25時間撹拌した。さらにNaH 60% dispersion in mineral oil (6.03 g) を加え、CH3I (7.0 mL) を加え、16時間撹拌した。その後、NaH 60% dispersion in mineral oil を (7.67g) 加え、CH3I (10.0mL) を加え、6時間撹拌後、NaH 60% dispersion in mineral oil (2.08 g) ,CH3I (10mL) を加え、4日間撹拌した。MeOH (10 mL) を添加することで反応は停止した。
反応溶液を蒸留水(2.0 L)に注ぎ、ホモジナイザーで10分間撹拌したあと、H2SO4で中和し静置した。生じた沈殿Aと上澄みを分け、沈殿Aは減圧乾燥した。
上澄みは遠心沈降して、沈殿を回収し、2回水で分散、遠心沈降したあと、イソプロパノールで2回分散、遠心沈降、Hexaneで2回分散、遠心沈降し、得られた沈殿Bを減圧乾燥した。沈殿Aを3.10 g、沈殿Bを4.10 g得た。全体収率33%。沈殿A:Mn=2.6×104、Mw=8.0×104、 Mw/Mn=3.12、 沈殿B:Mn=1.9×104 , Mw=5.4×104, Mw/Mn=2.76
以後、沈殿Bを(1)として用いた。
また、同様の方法で合成された、Mn=4.6×104, Mw=1.7×105,Mw/Mn=3.7の完全メチル化セルロース(1’)も準備した。
【0041】
1-2.メタノリシスによるオリゴマー2の合成(完全メチル化セルロースのメタノール分解による完全メチル化セルロースオリゴマーの合成)
(Methyl 2,3,6-tri-O-methyl celluloside Oligomers having a methoxyl group at C-1 of reducing end and hydroxyl group at C-4 of non-reducing endの合成)
【化9】
一般的なメタノール分解によるオリゴマー合成方法(General method)は、下記の通りである。
CHCl3に上述の完全メチル化セルロース(1 or 1’)を溶解し、MeOH (100equiv.)を加えた。その後、アイスバス中でH2SO4 (40 equiv.)をゆっくりと滴下し、適切な反応温度、時間で撹拌した。アイスバスに移しNaHCO3で中和することで反応を停止した。塩を含んだ反応液をろ過、EtOAcで1回洗浄後、濃縮及び減圧乾燥し、オリゴマー2を得た。
具体的な合成例を、以下に示す。
【0042】
オリゴマー2a(n=2.3)の合成
化合物1’ (101mg)から、60℃で60分撹拌しオリゴマー2a (128 mg)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 2: calcd for C10H20O6, 440.23; found, 463.27 [M+Na]+, DP = 3: calcd for C19H36O11, 644.33; found, 667.40 [M+Na]+, DP = 4: calcd for C28H52O16, 848.43; found, 871.54 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C37H68O21, 1052.53; found, 1075.67 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C46H84O26, 1256.62; found, 1279.81 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C55H100O31, 1460.72; found, 1483.94 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C64H116O36, 1664.82; found, 1688.05 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C73H132O41, 1868.92; found, 1892.14 [M+Na]+. Mn =4.79×102, Mw =1.20×103, Mw/Mn =2.51, DPn =2.3
【0043】
オリゴマー2b(n=4.6)の合成
化合物1’ (154 mg)から、60℃で70分撹拌し、オリゴマー2b (179mg)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 2: calcd for C10H20O6, 440.23; found, 463.58 [M+Na]+, DP = 3: calcd for C19H36O11, 644.33; found, 667.71 [M+Na]+, DP = 4: calcd for C28H52O16, 848.43; found, 871.89 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C37H68O21, 1052.53; found, 1076.10 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C46H84O26, 1256.62; found, 1280.31 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C55H100O31, 1460.72; found, 1484.50 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C64H116O36, 1664.82; found, 1688.69 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C73H132O41, 1868.92; found, 1892.86 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C82H148O46, 2073.02; found, 2097.03 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C91H164O51, 2277.12; found, 2301.19 [M+Na]+. Mn =9.43×102, Mw =1.23×103, Mw/Mn =1.31, DPn =4.6
【0044】
オリゴマー2c(n=11.2)の合成
化合物1’ (97.2 mg)から、60℃で40分撹拌し、オリゴマー2c (108.6 mg)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 2: calcd for C10H20O6, 440.23; found, 463.27 [M+Na]+, DP = 3: calcd for C19H36O11, 644.33; found, 667.40 [M+Na]+, DP = 4: calcd for C28H52O16, 848.43; found, 871.54 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C37H68O21, 1052.53; found, 1075.67 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C46H84O26, 1256.62; found, 1279.81 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C55H100O31, 1460.72; found, 1483.94 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C64H116O36, 1664.82; found, 1688.05 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C73H132O41, 1868.92; found, 1892.14 [M+Na]+. Mn =2.29×103, Mw =2.94×103, Mw/Mn =1.28, DPn =11.2
【0045】
オリゴマー2d(n=4.3)の合成
化合物1 (1.00g)から、55℃で120分撹拌し、生成物をゲル濾過クロマトグラフィー (eluent:20% MeOH/ CH2Cl2)でさらに精製し、オリゴマー2d (149.9mg, 14.9 wt%) を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 3: calcd for C19H36O11, 644.33; found, 667.17 [M+Na]+, DP = 4: calcd for C28H52O16, 848.43; found, 871.26 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C37H68O21, 1052.53; found, 1075.31 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C46H84O26, 1256.62; found, 1279.50 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C55H100O31, 1460.72; found, 1483.41 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C64H116O36, 1664.82; found, 1687.44 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C73H132O41, 1868.92; found, 1891.42 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C82H148O46, 2073.02; found, 2095.34 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C91H164O51, 2277.12; found, 2299.19 [M+Na]+. Mn =8.79×102, Mw =1.48×103, Mw/Mn =1.68, DPn =4.3
【0046】
オリゴマー2e(n=14.2)の合成
化合物1 (104 mg)から、55℃で60分撹拌し、オリゴマー2e (119.6 mg)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 2: calcd for C10H20O6, 440.23; found, 463.10 [M+Na]+, DP = 3: calcd for C19H36O11, 644.33; found, 667.25 [M+Na]+, DP = 4: calcd for C28H52O16, 848.43; found, 871.36 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C37H68O21, 1052.53; found, 1075.44 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C46H84O26, 1256.62; found, 1279.84 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C55H100O31, 1460.72; found, 1483.55 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C64H116O36, 1664.82; found, 1687.60 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C73H132O41, 1868.92; found, 1891.67 [M+Na]+. Mn =2.89×103, Mw =3.98×103, Mw/Mn =1.38, DPn =14.2
【0047】
オリゴマー2f(n=16.6)の合成
化合物1’ (105 mg)から、55℃で40分撹拌し、オリゴマー2f (114.9 mg)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 3: calcd for C19H36O11, 666.66; found, 668.52 [M+Na]+, DP = 4: calcd for C28H52O16, 848.43; found, 870.45 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C37H68O21, 1052.53; found, 1074.31 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C46H84O26, 1256.62; found, 1278.16 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C55H100O31, 1460.72; found, 1481.99 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C64H116O36, 1664.82; found, 1685.84 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C73H132O41, 1868.92; found, 1889.69 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C82H148O46, 2073.02; found, 2093.61 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C91H164O51, 2277.12; found, 2297.42 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C100H180O56, 2481.22; found, 2501.25 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C109H196O61, 2685.32; found, 2705.08 [M+Na]+ DP = 14: calcd for C118H212O66, 2889.43 ; found, 2908.98 [M+Na]+, DP = 15: calcd for C127H228O71, 3093.53; found, 3112.93 [M+Na]+, DP = 16: calcd for C136H244O76, 3297.63; found, 3316.84 [M+Na]+. Mn =3.38×103, Mw =5.37×103, Mw/Mn =1.59, DPn =16.6
【0048】
2.親水部の合成
2-1.セロビオース(3)のアセチル化
(Cellobiose octaacetate4の合成)
【化10】
無水酢酸 (120 ml)にセロビオース (20.0 g、3)とCH3COONa (10.3 g)を溶解し、100 ℃で3時間、110℃で1.5時間撹拌後、水で再沈殿し反応を止めた。沈殿をろ過し、蒸留水で洗浄後、EtOHによる再結晶を行い、ろ過し、EtOH、Hexaneで2回ずつ洗浄後乾燥し、白色固体のアセチル化セロビオース4 (37.9 g、95.5%)を得た。
【0049】
2-2.化合物5の合成
(2,3,4,6-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl-(1,4)-2,3,6-tri-O-acetyl-α-D-glucopyranosideの合成)
【化11】
化合物4 (10.0g)をTHF (250 ml)に溶解し、氷浴中でヒドラジン一水和物 (1.4mL)を加え、2.5時間撹拌した。その後、反応溶液に分液漏斗に移し、酢酸エチル、水を加え、1N HCl水溶液で中和し、水、Brineで1回ずつ洗浄、芒硝ろ過後、濃縮、減圧乾燥して化合物5 (9.22g, 97.0%)を得た。
【0050】
2-3.グリコシルドナー(6)の合成
(2,3,4,6-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl-(1,4)-2,3,6-tri-O-acetyl-α-D-glucopyranosyl 2,2,2-trichloroacetoimidateの合成)
【化12】
乾燥した化合物5 (3.9 g)を無水CH3Cl3 (100 mL)に溶解し、そこにDBU (0.92mL)、トリクロロアセトニトリル (7.3m L)を加え2.5時間撹拌した。その後、反応液を濃縮し、粗生成物をアルミナカラム(eluent:CH2Cl2)に通した。粗生成物を再び濃縮した後、シリカゲルカラム (eluent:CH2Cl2)で精製して、濃縮し、減圧乾燥した。その後、EtOHで再結晶し、ろ過、EtOH,Hexaneで1回ずつ洗浄し、減圧乾燥して、化合物6 (3.1 g, 65.7%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ1.99, 2.01, 2.02, 2.03, 2.05, 2.10, 2.12 (COCH3), 3.67(ddd, 1H, J=2.1, J=3.9, J=9.6, H5’), 3.85 (t, 1H, J=9.9, H4), 4.05 (dd, 1H, J=2.1, J=12.6, H6’a), 4.11(m, 1H, H5), 4.13 (dd, 1H, J=4.5, J=13.0, H6a), 4.40 (dd, 1H, J=4.2, J=12.6, H6’b), 4.51 (m, 1H, H6b), 4.55 (d, 1H, J=7.8, H1’), 4.94 (dd, 1H, J=8.1, J=8.7, H2’), 5.07 (dd, 1H, J=3.9, J=10.2, H2), 5.09 (t, 1H, J=9.0, H4), 5.15 (t, 1H, J=9.3, H3’) 5.53 (t, 1H, J=10.2, H3), 6.49 (d, 1H, J=3.9, H1’), 8.66 (s,1H, NH)
【0051】
3.ジブロック型オリゴマーの合成
3-1.オリゴマー2(2a-f)と化合物6のグリコシル化によるオリゴマー7の合成
【化13】
General method
グリコシル化反応は高減圧下 (>1×10-3 Torr)で行った。化合物2a-f及び化合物6 (4 or 12 equiv.)をスターラーとともに高減圧下で1日乾燥し、そこに高減圧状態を保った状態で無水CH2Cl2 (11.9 mL)加えた。氷浴中でTMSOTf (0.2 equiv.)を加え、21時間0℃で撹拌した。反応の進行をMALDI-TOF MSにより確認し反応を止めた。その後、EtOAcで抽出し、飽和NaHCO3水溶液、Brineで洗浄し、芒硝ろ過後、濃縮して減圧乾燥し、粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(eluent: EtOAc:Hexane=2:1)で精製し、同時にTLCにより疎水部のDPn=1, 2 (Rf値:0.24 (DPn=1), 0.13 (DPn=2)) の低分子フラクションをほぼ除去した後、化合物7を得た。
【0052】
オリゴマー7a0,7aの合成
オリゴマー2a (56.5mg)と化合物6(367 mg, 4equiv.)から、オリゴマー7a0 (78.1 mg, 66.0 %),7a (25.5mg, 14.0 %)を得た。ただし、オリゴマー7a0はシリカゲルカラムクロマトグラフィー (eluent: EtOAc:Hexane=2:1)で精製する際に低分子フラクションとして得た。
7a0(n=1.5); 1H-NMR (CDCl3): δ 1.98, 2.01, 2.01, 2.04, 2.06, 2.09, 2.10 (CO-CH3), 3.19 (dd, J =3.5, J=9.5, H2), 3.39, 3.40, 3.50, 3.53 (OCH3), 3.80 (t, J=9.5, H4’), 4.04 (dd, J = 2.0, J = 12.5, H6’’), 4.17 (dd, J=5.0, J = 12.0, H6’) , 4.37 (dd, J = 4.0, J = 12.0, H6’’), 4.49 (dd, J = 2.0, J = 12.0, H6’), 4.51 (d, J = 8.0, H1’’), 4.70 (d, J = 8.0, H1’), 4.80 (d, J = 3.5, H1α), 4.90 (t, J = 9.5, H2’), 4.93 (t, J = 9.5, H2’’), 5.07 (t, J = 9.5, H4’’), 5.14 (t, J = 9.5, H3’’), 5.15 (t, J = 9.0, H3’) MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP =3 : calcd for C36H54O23, 877.30 ; found 877.07 Mn=1.00×103 , Mw = 1.45×103, Mw/Mn =1.44 , DPn = 1.5
7a(n=4.2); MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 4: calcd for C45H70O28, 1058.41; found, 1081.13 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C54H86O33, 1262.51; found, 1285.15 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C63H102O38, 1466.61; found, 1489.21 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C72H118O43, 1670.71; found, 1693.24 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C81H134O48, 1874.81; found, 1895.02 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C90H150O53, 2078.91; found, 2102.09 [M+Na]+. Mn = 1.55×103, Mw = 1.77×103, Mw/Mn =1.14, DPn =4.2 (以後DPnは疎水部のみの重合度を示している)
【0053】
オリゴマー7bの合成
オリゴマー2b (59.1 mg)と化合物6 (232.9mg, 4equiv.)からオリゴマー7b (n=5.3)(20.8 mg, 28.2 %)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 4: calcd for C45H70O28, 1058.41; found, 1081.87 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C54H86O33, 1262.51; found, 1286.05 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C63H102O38, 1466.61; found, 1490.23 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C72H118O43, 1670.71; found, 1694.41 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C81H134O48, 1874.81; found, 1898.56 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C90H150O53, 2078.91; found, 2102.71 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C99H166O58, 2283.01; found, 2306.87 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C108H182O63, 2487.11; found, 2511.01 [M+Na]+. Mn = 1.79×103, Mw = 2.13×103, Mw/Mn =1.19 , DPn = 5.3
【0054】
オリゴマー7cの合成
オリゴマー2c (43.5 mg)と化合物6 (178 mg, 12equiv.)からオリゴマー7c(n=6.7) (44.0 mg, quant.)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 4: calcd for C45H70O28, 1058.41; found, 1081.33 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C54H86O33, 1262.51; found, 1285.41 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C63H102O38, 1466.61; found, 1489.37 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C72H118O43, 1670.71; found, 1693.56 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C81H134O48, 1874.81; found, 1897.62 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C90H150O53, 2078.91; found, 2100.59 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C99H166O58, 2283.01; found, 2305.73 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C108H182O63, 2487.11; found, 2509.79 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C117H198O68, 2691.21; found, 2713.79 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C126H214O73, 2895.31; found, 2917.79 [M+Na]+, DP=14: calcd for C135H230O78, 3099.41; found, 3121.81. Mn = 2.06×103, Mw = 2.75×103, Mw/Mn =1.34 , DPn =6.7
【0055】
オリゴマー7d, 7gの合成
オリゴマー2d (98.1 mg)と化合物6 (917 mg, 12equiv.)を無水CH3Cl3 (50 mL)中で反応させて得られた生成物 (211.4 mg)をゲル濾過クロマトグラフィー (eluent:20 % MeOH/CH2Cl2)でさらに精製し、オリゴマー7d (n=9.1)(64.5mg, 22.0 %) 及びオリゴマー7g (n=5.4)(133.8 mg, 66.9 %)を得た。
7d:MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 5: calcd for C54H86O33, 1262.51; found, 1285.31 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C63H102O38, 1466.61; found, 1489.37 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C72H118O43, 1670.71; found, 1693.44 , [M+Na]+, DP = 8: calcd for C81H134O48, 1874.81; found, 1897.46 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C90H150O53, 2078.91; found, 2101.53 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C99H166O58, 2283.01; found, 2306.61 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C108H182O63, 2487.11; found, 2510.56 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C117H198O68, 2691.21; found, 2714.43 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C126H214O73, 2895.31; found, 2917.44 [M+Na]+, DP=14: calcd for C135H230O78, 3099.41; found, 3122.44, DP=15: calcd for C144H246O83, 3303.51; found, 3326.09. Mn = 2.55×103, Mw = 3.10×103, Mw/Mn =1.22 , DPn = 9.1
7g : Mn = 1.79×103, Mw = 2.22×103, Mw/Mn =1.24 , DPn =5.4
【0056】
オリゴマー7eの合成
オリゴマー2e (58.9 mg)と化合物6 (190 mg, 12equiv.)からオリゴマー7e (n=12.3)(87.6 mg, quant)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 4: calcd for C45H70O28, 1058.41; found, 1081.40 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C54H86O33, 1262.51; found, 1285.51 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C63H102O38, 1466.61; found, 1489.58 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C72H118O43, 1670.71; found, 1693.68 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C81H134O48, 1874.81; found, 1898.76 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C90H150O53, 2078.91; found, 2102.84 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C99H166O58, 2283.01; found, 2308.88 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C108H182O63, 2487.11; found, 2510.93 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C117H198O68, 2691.21; found, 2714.92 [M+Na]+. Mn = 3.20×103, Mw = 4.48×103, Mw/Mn =1.40 , DPn = 12.3
【0057】
オリゴマー7fの合成
オリゴマー2f (79.2 mg)と化合物6 (222 mg, 12equiv.)からオリゴマー7f (n=13.8)(85.6 mg, quant)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ 1.99, 2.01, 2.04, 2.07, 2.09, 2.11 (-OCOCH3), 2.96 (t, H-2’), 3.21 (t, H-3’), 3.29, 3.39 (C6-OCH3), 3.42, 3.51, 3.52, 3.54 (C2-OCH3), 3.56, 3.57, 3.58 (C3-OCH3), 3.6-3.83 (H-4’, H-6’), 4.03, 4.16, 4.30, 4.34 (d, J = 7.8, H-1’), 4.50, 4.71, 4.87, 4.94, 5.07, 5.14 MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 4: calcd for C45H70O28, 1058.41; found, 1080.89 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C54H86O33, 1262.51; found, 1284.89 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C63H102O38, 1466.61; found, 1488.88 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C72H118O43, 1670.71; found, 1692.85 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C81H134O48, 1874.81; found, 1896.82 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C90H150O53, 2078.91; found, 2100.79 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C99H166O58, 2283.01; found, 2304.75 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C108H182O63, 2487.11; found, 2508.71 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C117H198O68, 2691.21; found, 2712.67 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C126H214O73, 2895.31; found, 2916.62 [M+Na]+, DP=14: calcd for C135H230O78, 3099.41; found, 3120.56, DP=15: calcd for C144H246O83, 3303.51; found, 3324.51 . Mn =3.51 ×103, Mw = 6.42×103, Mw/Mn =1.83 , DPn =13.8
【0058】
3-2.アセチル基の除去によるジブロック型オリゴマー8の合成
【化14】
General Method
オリゴマー7a0-gをMeOH/THF (1/4, v/v)に溶解し、28% NaOCH3 in MeOH (10 equiv.)を加え、2時間撹拌し、DOWEX H+で中和して反応をとめた。ろ過、濃縮、減圧乾燥して、オリゴマー8ao-gを得た。
【0059】
オリゴマー8a0
オリゴマー7a0 (44.7 mg)からオリゴマー8a0 (21.9 mg, 74.7%)を得た。
1H-NMR (D2O): δ3.30 (t, J =9.0 , H2’), 3.33 (t, J = 8.4, H2’’), , 3.3-3.4 (H2), 3.38, 3.40, 3.46, 3.58 (OCH3), 3.82 (dd, J = 4.8, J = 12.9, H6’’), 3.90 (dd, J=1.8, J = 12.9, H6’), 3.97 (dd, J=1.8, J = 12.6., H6’’), 4.40 (d, 1H, J = 7.8, H1’’), 4.50 (d, J = 7.8, H1’) , 4.99 (d, J = 3.6, H1α); 13C-NMR (D2O): δ57.6 (C1-OCH3), 60.5, 60.9, 62.1, 62.7 (C6’ or C6’’),63.2 (C6’ or C6’’),71.9,72.1, 72.5(C6), , 75.8 (C2’ or C2’’), 75.9 (C2’ or C2’’), 76.9, 77.6, 78.1, 78.4, 78.6 (C4), 81.2 (C4’), 82.2 (C2), 83.1 (C3), 99.2 (C1α), 105.0 (C1’'), 105.2 (C1’); MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 3: calcd for C22H40O16, 560.23; found, 583.15 [M+Na]+.
【0060】
オリゴマー8a
オリゴマー7a (14.9 mg)からオリゴマー8a (14.9 mg, quant) を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 5: calcd for C40H72O26, 968.43; found, 991.28 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C49H88O31, 1172.53; found, 1195.34 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C58H104O36, 1376.63; found, 1399.40 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C67H120O41, 1580.73; found, 1603.46 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C76H136O46, 1784.83; found, 1807.53 [M+Na]+.
【0061】
オリゴマーb
オリゴマー7b (21.3 mg)からオリゴマー8b (17.0 mg,95.5 %)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 5: calcd for C40H72O26, 968.43; found, 991.42 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C49H88O31, 1172.53; found, 1195.50 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C58H104O36, 1376.63; found, 1399.59 [M+Na]+, DP = 8balcd for C67H120O41, 1580.73; found, 1603.67 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C76H136O46, 1784.83; found, 1807.74 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C85H152O51, 1988.93; found, 2011.80 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C94H168O56, 2193.03; found, 2215.87 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C103H184O61, 2397.13; found, 2419.95 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C112H200O66, 2601.23; found, 2624.00 [M+Na]+, DP = 14: calcd for C121H216O71, 2805.33; found , 2828.08 [M+Na]+.
【0062】
オリゴマー8c
オリゴマー7c (24.4 mg)からオリゴマー8c (22.8 mg, quant)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 3: calcd for C22H40O16, 560.23; found, 583.28 [M+Na]+,DP = 4: calcd for C31H56O21, 764.33; 797.17 found, 786.02 [M+Na]+, DP = 5: calcd for C40H72O26, 968.43; found, 991.24 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C49H88O31, 1172.53; found, 1195.25 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C58H104O36, 1376.63; found, 1399.28 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C67H120O41, 1580.73; found, 1603.32 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C76H136O46, 1784.83; found, 1807.38 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C85H152O51, 1988.93; found, 2011.41 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C94H168O56, 2193.03; found, 2215.42 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C103H184O61, 2397.13; found, 2419.38 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C112H200O66, 2601.23; found, 2623.27 [M+Na]+, DP = 14: calcd for C121H216O71, 2805.33; found , 2827.03 [M+Na]+, DP = 15: calcd for C130H232O76, 3009.43 ; found, 3030.68 [M+Na]+.
【0063】
オリゴマー8d
オリゴマー7d (45.8 mg)からオリゴマー8d (35.8mg, quant)を得た。
MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 5: calcd for C40H72O26, 968.43; found, 991.42 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C49H88O31, 1172.53; found, 1195.50 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C58H104O36, 1376.63; found, 1399.59 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C67H120O41, 1580.73; found, 1603.67 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C76H136O46, 1784.83; found, 1807.74 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C85H152O51, 1988.93; found, 2011.80 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C94H168O56, 2193.03; found, 2215.87 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C103H184O61, 2397.13; found, 2419.95 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C112H200O66, 2601.23; found, 2624.00 [M+Na]+, DP = 14: calcd for C121H216O71, 2805.33; found , 2828.08 [M+Na]+.
【0064】
オリゴマー8e
オリゴマー7e (54.3 mg)からオリゴマー8e (38.9 mg, 78.9 %)を得た。MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 5: calcd for C40H72O26, 968.43; found, 991.18 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C49H88O31, 1172.53; found, 1195.22 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C58H104O36, 1376.63; found, 1399.23 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C67H120O41, 1580.73; found, 1603.28 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C76H136O46, 1784.83; found, 1807.28 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C85H152O51, 1988.93; found, 2011.30 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C94H168O56, 2193.03; found, 2215.30 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C103H184O61, 2397.13; found, 2419.31 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C112H200O66, 2601.23; found, 2623.31 [M+Na]+, DP = 14: calcd for C121H216O71, 2805.33; found , 2827.30 [M+Na]+, DP = 15: calcd for C130H232O76, 3009.43 ; found, 3031.29 [M+Na]+ , DP = 16: calcd for C139H248O81, 3213.53; found, 3235.30 [M+Na]+.
【0065】
オリゴマー8f
オリゴマー7f (36.4 mg)からオリゴマー8f (30.3 mg, 90.9 %)を得た。
1H-NMR (D2O): δ 3.14 (t, H-2’), 3.41 (C6-OCH3), 3.4-3.5 (H-3’), 3.57 (C3-OCH3), 3.5-3.7 (H-5’), 3.59 (C2-OCH3), 3.7-4.0 (H-4’, H-6’), 4.46 (H-1’), H1α (d, 4.99, J=3.6). MALDI-TOF MS (positive reflector mode; DHB as matrix): DP = 5: calcd for C40H72O26, 968.43; found, 992.10 [M+Na]+, DP = 6: calcd for C49H88O31, 1172.53; found, 1196.13 [M+Na]+, DP = 7: calcd for C58H104O36, 1376.63; found, 1400.06 [M+Na]+, DP = 8: calcd for C67H120O41, 1580.73; found, 1603.91 [M+Na]+, DP = 9: calcd for C76H136O46, 1784.83; found, 1807.68 [M+Na]+, DP = 10: calcd for C85H152O51, 1988.93; found, 2011.40 [M+Na]+, DP = 11: calcd for C94H168O56, 2193.03; found, 2215.09 [M+Na]+, DP = 12: calcd for C103H184O61, 2397.13; found, 2418.76 [M+Na]+, DP = 13: calcd for C112H200O66, 2601.23; found, 2622.14 [M+Na]+, DP = 14: calcd for C121H216O71, 2805.33; found , 2826.30 [M+Na]+, DP = 15: calcd for C130H232O76, 3009.43 ; found, 3029.86 [M+Na]+ , DP = 16: calcd for C139H248O81, 3213.53; found, 3232.59 [M+Na]+.
【0066】
オリゴマー8g
化合物7g (118.9mg) から化合物8g (81.8 mg, quant.) を得た。
【0067】
下記表1に、オリゴマー8a0から8gの分子量とDPn等をまとめて示す。
【表1】
【0068】
上述のオリゴマーについて、下記のような機器分析等を行った。
NMR
1H-、13C-及び二次元NMRスペクトルは、Varian NMR, INOVA300及びAgilent,500NMRを用いて測定した。試料をCHCl3に溶解させ、内部標準物質としてtetramethylsilaneを用いて測定した。
【0069】
MALDI-TOF MS
Matrix assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass (MALDI-TOF MS) スペクトルは、Bruker MALDI-TOF MS Autoflex IIIを用いて、positive ion modeで測定した。2,5-dihydroxybenzonic acid (DHB) をマトリックスとして用いた。
【0070】
GPC
液体クロマトグラフ装置 (Gel Permeation Chromatography, GPC)(Shimadzu, CBM-10A, SPD-10A, SIL-10A, LC-10AT, FCV-10AL,CTO-10A, RID-10A and FRC-10A) を用いてGPC分析を行った。カラムはShodex columm (K802, K802.5, K805)、溶出溶媒はCHCl3を用い、温度は40℃、流量は1.0 mL/min で測定した。数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)はポリスチレン(Shodex)換算により見積もった。
【0071】
DLS
動的光散乱はELS-Z Zeta-potential &Particle size Analyzer Otsuka Electronics Co., Ltdを用いて測定した。25℃から70℃まで5℃ずつ昇温し、各温度3回の測定の平均値を用いて、流体力学的直径を求めた。1 wt%水溶液を調整し、測定前にpore size 2.7μ m syringe filterでろ過した。
【0072】
透過型電子顕微鏡(TEM)
透過型電子顕微鏡画像は、JEOL JEM-1400を用いて撮影した。加速電圧は100 kVであった。
1) 8a0, 8c, 8dの場合: 各々の1 %水溶液を、炭素コートされたCuグリッド上に滴下した。ろ紙片に溶媒を吸収させると同時に2 %酢酸ウラニルをアプライし、染色液をろ紙で吸い取った後、30分乾燥させた。
2)8b, 8fの場合: 各々の1 %水溶液を炭素コートされたCuグリッド上に滴下し、ろ紙片に溶媒を吸収させた。その後10倍希釈したEMステイナーをアプライし、しばらく静置した後、染色液をろ紙片で吸い取った。
【0073】
クライオ走査電子顕微鏡(Cryo-TEM)
1 %水溶液をグリッド上にのせ、ろ紙片で溶媒を吸い取った直後に、液体エタンで急速に凍らせてサンプルを作成した。JEOL JEM-2000EIIを用いて、加速電圧100 kVで液体窒素温度下で観察した。
【0074】
原子間力顕微鏡 (AFM)
AFM観察は各々の1 wt%水溶液を、Silicon Wafer, 又はmica 上に滴下し、風乾して、試料を得た。その後、Shimadzu SPM-9600を用い、大気雰囲気下でAFM観察を行った。
【0075】
表面張力測定
水溶液の表面張力測定は、Wilhelmy Plate法により、表面張力計(CBVP-A3, Kyowa Interface Science Co, Ltd)を用いて行った。測定は、700 μLのテフロン(登録商標)セルを用いて、およそ23 ℃の室温で行った。測定開始の5分後から30分後の間で、安定した時の値を、測定値として読み取った。
【0076】
動的光散乱 (DLS)測定結果
ジブロック型オリゴマー8a0~8fの各々について、動的光散乱測定を行い、流体力学的直径を求めた。測定濃度は1.0 wt%、測定温度範囲は25-70℃であった。結果を、図2及び表2に示した。図2は、温度に対するジブロック型オリゴマー8a0~fの流体力学的直径を示す。オリゴマー8a0~bは、極めて小さいが、オリゴマー8c~eでは、熱応答を生じ得、オリゴマー8fは、他のオリゴマーと比べて、相当大きな熱応答を生じ得ることを示す。表2は、オリゴマー8c~fの熱応答温度が、40~55℃であること、8fの流体力学直径は、他と比べて極めて大きいことを示す。
【0077】
下記表2に、オリゴマー8の流体力学的直径と熱応答温度を示す。
【表2】
【0078】
形態観察
オリゴマー8a0, 8b, 8c, 8d, 8fに対してネガティブ染色法によるTEM観察を行い、オリゴマー8a0,8dに対してcryo-TEM観察を行い、オリゴマー8a0, 8b-8cに対してAFM観察を行った。
【0079】
TEM観察
ネガティブ染色法によるTEM観察の結果の一部を図3-1に示す。オリゴマー8a0 (図3-1(a)(b))では、粒状あるいは短い棒状の小さな会合体がさらに密な状態で集合していることが観察された。オリゴマー8b(図3-1(c)(d))では、部分的に粒状あるいは短い棒状の小さな会合体が集合していることが観察された。オリゴマー8c, 8d, 8f (図3-1 (e)~(j))では、幅10nm~20nm程度の繊維状会合体が粗に集合している様子が観察された。
【0080】
cryo-TEM観察
Cryo-TEM観察で主に観察された形態を図3-2に示す。化合物8a0(図3-2(a)(b))では棒状の会合体がさらに凝集している様子が観察された。非常に濃く見える部分があるため、それだけ分子が積層し電子密度が高くなっていると考えられる。化合物8c(図3-2(c)(d))で観察された形態は、ネガティブ染色法でTEM観察された形態とよく類似した。
【0081】
AFM観察
疎水性表面を有するシリコンウェハー、及び親水性表面を有するmica上にオリゴマー8a0, 8b-8c の1 wt%水溶液を1μL滴下し、大気環境下で風乾した後、AFM観察を行った。オリゴマー8a0, 8b-8c のAFM観察から得られたそれぞれの高さ像及び位相像を、図3-3右及び左に各々示す。
どちらの基板上でも比較的疎水部が短いジブロック型オリゴマー (オリゴマー8a0, 8b)においては、高さが最大でも3 nm程度の小さな集合体が観察されたが、比較的疎水部が長いジブロック型オリゴマー (オリゴマー8c-8f)では、高さが数十~数百 nmに及ぶほどの前者よりかなり大きな構造体が観察された。
【0082】
表面張力測定
疎水部が界面活性能に与える影響を調べるため、オリゴマー8a0-8fに対してWilhelmy plate法により表面張力測定を行った。図4は、オリゴマー8a0~8fの濃度に対する、各々の水溶液の表面張力を示す。参考に市販のメチルセルロース(SM-4)水溶液の表面張力曲線も示す。ジブロック型オリゴマー (8a0-8f)水溶液の表面張力曲線は、オリゴマーの疎水部が長くなるにつれて濃度の対数に対する表面張力の平均変化率が小さくなり、市販のメチルセルロース(SM-4)の表面張力曲線に近づくことが示された。
【0083】
表面張力の代表値として、1.0 wt%での表面張力を採用して、界面活性能を評価する。オリゴマー8a0, 8a-8fの1 wt%での表面張力を比較して、表3に示した。オリゴマー8a及び8b(疎水部のDPn≒4.2, 5.4)の時、その1.0wt%水溶液の表面張力が30 mN/m以下と特に低くなった。特にDPn≒4.2のジブロック型オリゴマー8aで最も優れた界面活性能を示すのに対し、DPn≒1.5の疎水部が極めて短い場合(オリゴマー8a0)と、DPn≒6.7以上の比較的疎水部が長い場合(オリゴマー8c~8f)、一般的な界面活性能を示す。したがって、ジブロック型オリゴマーの疎水部は、その界面活性能に対して影響を及ぼし、疎水性ブロックを調節することで、市販の界面活性剤と同等の優れた界面活性能を有するジブロック型オリゴマーを得ることができる。更に、界面活性能を適宜調節した種々のジブロック型オリゴマーを得ることができる。
【0084】
【表3】
【0085】
味分析
味分析は、下記の手順で、下記の評価基準に基づいて、2名のパネラーが評価した。2名のパネラーの平均値を表4に示す。
異なる鎖長を有する2種類のジブロック型オリゴマー (8a0, 8g)及びショ糖ラウリン酸エステルを用いた。ショ糖ラウリン酸エステルは、食品用界面活性剤として、一般に利用されている。各々の0.1 wt%水溶液を準備した。各パネラーは、口を3回水で濯いだ後、各々の水溶液を口に含んで評価した。
評価基準
5:苦味及び渋味を全く感じず、無味であった。
4:苦味及び渋味をごく僅かに感じたが、気にするほどではなかった。
3:苦味及び渋味をわずかに感じたが、許容範囲であった。
2:苦味及び渋味を明確に感じた。
1:苦味及び渋味を強く感じた。
【0086】
【表4】
【0087】
表4より、ジブロック型オリゴマーの苦味と渋味は、ショ糖ラウリン酸エステルより、全体的に抑制されており、実質的に無味といえる。
この味分析の結果は、ジブロック型オリゴマーは、一般的な食品用界面活性剤であるショ糖ラウリン酸と比べて苦味が弱いことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示の実施形態のジブロック型オリゴマーは、非修飾グルコースブロックとメチル化又はエチル化グルコースブロックを含み、メチル化又はエチル化グルコースブロックが特定の分散度(Mw/Mn)を有し、優れた界面活性能を示すとともに、容易に生産することができる。更に、そのジブロックオリゴマーは界面活性剤用途に好適である。
【0089】
[関連出願]
尚、本出願は、2019年2月28日に日本国でされた出願番号2019-35735を基礎出願とするパリ条約第4条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4