(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】堆積プロセスを監視する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20240508BHJP
G01N 23/2273 20180101ALI20240508BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G01B15/02 A
G01N23/2273
H01L21/66 P
(21)【出願番号】P 2021555191
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2020022407
(87)【国際公開番号】W WO2020190643
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-06
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518014357
【氏名又は名称】ノヴァ メジャリング インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】ポイス・ヒース・エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワラド・ラクシュミー
(72)【発明者】
【氏名】ランガージャン・スリニヴァサン
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0077742(US,A1)
【文献】特開平09-014947(JP,A)
【文献】特開2000-124276(JP,A)
【文献】特開2008-034475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/02
G01N 23/2273
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有し,上記第2の層はその中に第3の材料のパターンを有する,そのようなサンプルを提供し,
X線ビームを生成し,上記X線ビームを上記サンプルに方向づけることによって上記サンプルを照射し,
X線検出器を用いて上記X線ビームの一部を遮断してX線フラックス値を生成し,
上記サンプルから放出される電子を収集して電子エネルギーにしたがって上記電子を分離し,
上記電子エネルギーのそれぞれについて電子数を決定し,
上記X線フラックス値を用いて上記第3の材料のパターンの上の上記第1の材料の存在を決定して上記第3の材料のパターンから放出される電子に対応する電子エネルギーの電子数を正規化し,
得られた正規化電子数を参照電子数と比較する,
堆積プロセスを監視する方法。
【請求項2】
得られた正規化電子数と参照電子数との比較は,得られた正規化電子数の参照電子数に対する比率を得ることを含む,請求項1の方法。
【請求項3】
上記比率の自然対数をスケーリングすることによって上記パターンの上の第1の層の厚さを決定することをさらに含む,請求項2の方法。
【請求項4】
上記スケーリングは,上記第3の材料から放出されて上記第1の材料を通って移動する光電子の有効減衰長を乗算することを含む,請求項3の方法。
【請求項5】
上記X線フラックス値を用いて上記第2の材料から放出される電子に対応する電子エネルギーの電子数を正規化しかつ補正係数を適用することによって上記第2の材料の上の上記第1の材料の厚さを決定することをさらに含む,請求項1の方法。
【請求項6】
上記補正係数は,上記第2の材料から放出され,上記第1の材料を通って移動する光電子の有効減衰長を含む,請求項
5の方法。
【請求項7】
上記第1および第2の材料が誘電体でありかつ上記第3の材料が導体である,または上記第1および第2の材料が導体でありかつ上記第3の材料が誘電体である,請求項1の方法。
【請求項8】
上記サンプルの提供が自己整合堆積プロセスを実行して上記第2の層の上に上記第1の層を堆積することを含む,請求項7の方法。
【請求項9】
上記参照電子数が上記第2の層を堆積する前にサンプルを照射することによって得られる,請求項1の方法。
【請求項10】
上記第2の層の上に堆積される第1の層の第1の厚さおよび上記パターンの上に堆積される上記第1の層の第2の厚さが,
上記電子エネルギーのそれぞれについての電子数を用いて,上記第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出される光電子に対応する強度値I
1,I
2およびI
3を生成し,
上記第1の厚さおよび第2の厚さについての反復推定厚さ値を用いて,上記第1,第2および第3の材料から放出される光電子に対応するモデル化強度I’
1,I’
2およびI’
3を計算し,
強度値I
1,I
2およびI
3の測定比率と上記モデル化強度I’
1,I’
2およびI’
3の比率との間の差を最小化し,これによって上記第1の厚さおよび第2の厚さの真の値を取得する,
請求項1の方法。
【請求項11】
強度値I
1
,I
2
およびI
3
の測定比率と上記モデル化強度I’
1
,I’
2
およびI’
3
の比率との間の差を最小化する処理は,測定比率とモデル化強度の比率との差に回帰を実行することを含む,請求項10の方法。
【請求項12】
上記測定比率と上記モデル化強度の比率との差が,[(I’
1/I’
2)-(I
1/I
2)]および[(I’
1/I’
3)-(I
1/I
3)]として表される,請求項
11の方法。
【請求項13】
回帰の実行が,以下の式を最小化するために非線形回帰を実行することを含む,請求項
11の方法。
{[(I’
1/I’
2)-(I
1/I
2)]
2}/(I
1/I
2)
2 + {[(I’
1/I’
3)-(I
1/I
3)]
2}/(I
1/I
3)
2
【請求項14】
上記第2の層の上に堆積された上記第1の層の第1の厚さおよび上記パターンの上に堆積された第1の層の第2の厚さが,
上記電子エネルギーのそれぞれについての電子数を用いて,上記第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出される光電子に対応する強度値I
1,I
2およびI
3を生成し,
上記第1の厚さに関連する,上記第2の材料の上に堆積された上記第1の層の厚い部分からの放出の第1の寄与分と,上記第2の厚さに関連する,上記第3の材料の上に堆積された上記第1の層の薄い部分からの放出の第2の寄与分の合計に対応する予想強度I’
1を設定し,ここで上記第1の材料の材料定数および上記第1の材料の有効減衰長が上記第1の寄与分および上記第2の寄与分のそれぞれに与えられ,
上記第2の層からの光電子放出に対応し,上記第1の厚さを通過して上記第2の材料の材料定数および上記第2の材料からの放出の有効減衰長によって調整される予想強度I’
2を設定し,
上記パターンからの光電子放出に対応し,上記第2の厚さを通過して上記第3の材料の材料定数および上記第3の材料からの放出の有効減衰長によって調整される予想強度I’
3を設定し,
上記強度値I
1,I
2およびI
3ならびに予想値I’
1,I’
2およびI’
3を用いて上記第1の厚さおよび上記第2の厚さを得ることによって決定される,
請求項1の方法。
【請求項15】
上記第1の厚さおよび上記第2の厚さについて異なる推定値を用いて上記予想値I’
1,I’
2およびI’
3を反復計算し,
反復のそれぞれについて,上記強度値I
1,I
2およびI
3と予想値I’
1,I’
2の残差値を決定し,
最小の残差値を生成する上記第1の厚さおよび上記第2の厚さについての推定値を,真の第1の厚さおよび第2の厚さとして設定する,
請求項
14の方法。
【請求項16】
第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有しており,上記第2の層がその中に第3の材料のパターンを有する,そのようなサンプルを提供し,
X線を生成し,上記X線を上記サンプルに方向づけることによって上記サンプルを照射し,
上記サンプルから放出される電子を収集して電子エネルギーにしたがって上記電子を分離し,
上記第1の材料,第2の材料および第3の材料の種から放出される電子に対応する電子エネルギーについての電子数を決定し,
上記電子数を用いて,上記第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出される光電子に対応する強度値I
1,I
2およびI
3を生成し,
上記第1の材料の種から放出される電子のモデル値を,厚い部分の厚さに関連する第1の寄与分と薄い部分の厚さに関連する第2の寄与分の合計に対応するI’
1として表し,ここで上記第1の材料の材料定数および上記第1の材料の有効減衰長が上記第1の寄与分および上記第2の寄与分のそれぞれに与えられ,
上記第2の材料の種から放出される電子のモデル値を,厚い部分の厚さに対応し,上記第2の材料の材料定数および上記第2の材料の有効減衰長によって調整されるI’
2として表し,
上記第3の材料の種から放出される電子のモデル値を,薄い部分の厚さに対応し,上記第3の材料の材料定数および上記第3の材料の有効減衰長によって調整されるI’
3として表し,
上記強度値I
1,I
2およびI
3および上
記モデル値I’
1,I’
2およびI’
3を用いて,上記厚い部分の厚さおよび上記薄い部分の厚さを取得する,
堆積プロセスを監視する方法。
【請求項17】
それぞれの対応する材料についての材料定数および有効減衰長による調整が,有効減衰長に対する上記厚さの比率の指数に材料定数を適用することを含む,請求項
16の方法。
【請求項18】
I
1,I
2およびI
3ならびにI’
1,I’
2およびI’
3の比率差に非線形回帰を適用することをさらに含む,請求項
16の方法。
【請求項19】
ウェハを支持するステージ,
第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有しており,上記第2の層がその中に第3の材料のパターンを有する,そのようなウェハの少なくとも一部の領域にわたってウェハを照射するX線ビームを生成するX線ソース,
上記X線ビームの一部を遮断し,X線フラックス信号を生成するX線センサ,
異なる電子エネルギーにしたがって上記ウェハから放出される電子を空間的に分割する電子アナライザ,
上記電子アナライザを通過した後の電子を検出し,検出信号を出力する電子検出器,
上記検出信号を受付けてそこから上記第3の材料から放出された電子に対応するエネルギー帯における電子の信号強度を決定し,上記X線フラックス信号を用いて信号強度を正規化して上記第3の材料のパターンの上の上記第1の材料の存在を識別する処理装置,
を備えている,
堆積プロセスを監視するシステム。
【請求項20】
上記処理装置がさらに,得られた正規化電子数の参照電子数に対する比率を計算する,請求項
19のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は2019年3月12日出願の米国仮特許出願62/817,492から得られる優先権を主張するもので,その全体が参照によって本書に組み込まれる。
本願は,概略的には半導体製造分野におけるプロセス制御および監視の分野に関する。開示されるプロセス制御技術は選択的堆積プロセス(selective deposition processes)を監視するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
数十年来,半導体業界は,フォトリソグラフィーに依存してチップの回路に必要なパターンを生成していた。フォトリソグラフィーによって各層をウェハ全体にわたって堆積し,次に上記層をパターニングして回路を形成することができていた。現在のナノスケール仕様は,チップ製造プロセスに多くのステップおよびコストを追加することに加えて,フォトリソグラフィーをかなり困難なものにしており,実際は,おそらくはそのうちに不可能になる。さらには,ナノスケール仕様を規定するために用いられるダブルおよびマルチパターニング(単一層を規定するために2またはそれ以上の別々のリソグラフィーおよびエッチング・ステップを必要とするもの)は,許容できないエッジ配置エラー(edge placement errors)(EPE)およびオーバーレイ・ミスアライメント(位置ずれ)につながる可能性がある。
【0003】
選択的堆積(Selective Deposition)と呼ばれる新しい技術は,設計回路の領域にのみ各層を堆積するものであり,フォトリソグラフィー・パターニングの必要性を回避するものである。選択的堆積の有望な例の一つに自己組織化単分子膜(Self-Assembly Monolaters)(SAM)を繰り返し形成する原子層堆積(Atomic Layer Deposition)(ALD)の使用があり,そこでは各単層(each monolayer)が設計回路の領域のみに堆積される。同様の技術である分子層堆積(Molecular Layer Deposition)(MLD)は有機材料の堆積に使用されている。一般には,基板の上面は,誘電体パターン,金属パターンおよび場合によっては半導体パターンを有し,形成されるべき次の層は,金属パターンの上の金属層,誘電体パターンの上の誘電体層または半導体パターンの上の半導体とすることができる。次の層を形成する前に領域のアクティブ化(activation)または領域の非アクティブ化(deactivation)(パッシベーション)(passivation)が必要になることがある。表面パッシベーションを伴うSAMを用いたALD堆積は,フォトリソグラフィー・ステップおよびアラインメント(位置合わせ)のための表面の化学的性質の利用の両方を回避してEPEおよびオーバーレイ・エラーを防ぐので,有望な技術となる可能性がある。
【0004】
どのような技術を用いるとしても,許容可能な歩留まりのもとで統合プロセス(integrated process)を実装するには,計測およびプロセス制御ツールが必要になる。しかしながら,今日に至るまで,プロセスの監視と認定に適した計測ツールは開発されてはいない。これらのプロセスを調査するために現在ラボで使用されている従来のツールには,走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy)(SEM),原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy)(AFM)およびトンネリング電子顕微鏡(Tunneling Electron Microscopy)(TEM)が含まれる。これらのツールは遅すぎるので実稼働環境において使用することができず,商用製造環境においてプロセスのドリフトまたは障害を示すために,プロセスのリアルタイム監視を提供することができない。
【0005】
X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy)(XPS)が基板の界面化学(表面化学)(surface chemistry)を分析するために使用されている。XPSスペクトルはX線ビームを基板に照射し,同時に基板の最上層から放出される電子の運動エネルギーと数を測定することによって得られる。同様に,蛍光X線(X-ray fluorescence)(XRF)が,高エネルギーX線またはガンマ線の衝撃によって励起された材料からの特徴的な「二次」(または蛍光)X線の放出をサンプリングすることによるサンプルの元素分析および化学分析に広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商業的製造環境において選択的堆積を可能にするために,プロセスの監視および制御についての必要性が当該分野に存在する。方法論(methodology)はプロセス品質の分析およびプロセス・ドリフトの検出を可能にするために,ウェハ上のプロセスの品質の高速,直接,かつ非破壊の測定を提供する必要がある。
【発明の開示】
【0007】
以下の開示の概要は,この発明のいくつかの態様および特徴の基本的な理解を提供するものである。この概要は,この発明の広範な概略ではなく,したがってこの発明の重要なキーまたは重要な要素を特に特定すること,またはこの発明の範囲を描写することを意図するものではない。その唯一の目的は,以下に提示する,より詳細な説明の前置きとして,この発明のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0008】
開示する実施態様は,特に選択的堆積の状況における,堆積および/またはパッシベーション・プロセスを,分析しかつ監視することが可能なものである。実施態様はまた,プロセスの品質の定量化を可能にし,かつプロセス・ドリフトを特定できるようにすること,または堆積装置の必要な保守を予測できるようにする。したがって,実施形態は,商業的製造環境における選択的堆積の実施を可能にするものである。
【0009】
開示する実施態様において,XPS計測は選択的堆積中に形成される層(layers)の厚さを分析するために用いられる。たとえばパッシベーションの品質,堆積層の品質,パッシベーション領域に堆積した材料の存在,ピンホールの存在などを分析するために選択的堆積のさまざまなステップにおいて測定を実施することができる。このように,開示する実施形態は,堆積されるべき領域に適切に材料が堆積され,かつ堆積されるべきではない場所に材料が堆積されないことを保証するのに役立つ。
【0010】
本書に開示する実施例は,層の厚さ,パッシベーション,および選択性の程度(degree of selectivity)など,プロセス結果の測定基準(metrics)を決定するためのXPS強度(XPS intensities)の使用を示している。
【0011】
選択的堆積プロセスの文脈において,開示する実施例は,パッシベーションおよび選択性の定量化(quantification)を可能にする。一実施態様では,上記パッシベーションは,パターンラインおよびスペース上の膜厚の計算(calculation of film thicknesses on pattern lines and spaces)によって評価される。開示する実施形態では,XPS信号が用いられ,これがX線フラックス数(X-ray flux number)を用いて正規化される。この方法は選択的堆積プロセスにおいて厚さを計算するのに有効である。上記厚さは選択性を測定するためのメトリックとして用いることができる。これによって,参照選択性番号のブランケット・ウェーハ・データ(blanket wafer data for reference selectivity number)が不要になる。
【0012】
一実施例では,金属上またはSiO2などの下層酸化物上のいずれかにおいてALD酸化物の厚さ(または厚さの近似値)を測定することを実施する。
【0013】
開示するいくつかの実施態様は,堆積プロセスを監視する方法を含み,この方法は,第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有し,第2の層はその中に(therein)第3の材料のパターンを有する,そのようなサンプルを提供し(用意し),X線ビームを生成し,上記X線ビームを上記サンプルに方向づける(向ける)ことによって上記サンプルを照射し,X線検出器を用いてX線ビームの一部を遮断してX線フラックス値(X-ray flux value)を生成し,上記サンプルから放出される電子(electrons)を収集して電子エネルギー(electron energies)にしたがって上記電子を分離し(separating),上記電子エネルギーのそれぞれについて電子数(electron count)を決定し,X線フラックス値を用いることによって上記第3の材料のパターンの上の上記第1の材料の存在を決定して上記第3の材料のパターンから放出された電子に対応する電子エネルギーの電子数を正規化し(normalize),得られた正規化電子数を参照(基準)電子数(reference electron count)と比較する。この方法は,上記得られた正規化電子数と参照電子数との比率を取得し,さらに上記比率の自然対数をスケーリングすることによって上記パターンの上の上記第1の層の厚さを決定してもよい。スケーリングは,上記第3の材料から放出されて上記第1の材料を通って移動する(traveling through)光電子の有効減衰長を乗算することを含む。同様に,上記第2の材料の上の上記第1の層の厚さを,X線フラックス値を使用して上記第2の材料から放出される電子に対応する電子エネルギーの電子数を正規化し,かつ補正係数を適用することによって,決定することができる。
【0014】
さらなる態様は堆積プロセスを監視する方法を含み,この方法は,第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有し,上記第2の層はその中に第3の層のパターンを有する,そのようなサンプルを提供し(用意し),X線ビームを生成して上記X線ビームを上記サンプルに方向づけることによって上記サンプルを照射し,上記サンプルから放出された電子を収集して電子エネルギーにしたがって上記電子を分離し,上記第1の材料,第2の材料および第3の材料の種(species)から放出される電子に対応する電子エネルギーについての電子数を決定し,上記電子数を用いて上記第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出された光電子に対応する強度値I1,I2およびI3を生成し,上記第1の材料の種から放出された電子のモデル値をI’1として表し,これは厚い部分の厚さに関連する第1の寄与分および薄い部分の厚さに関連する第2の寄与分の合計に対応するものであり,ここで上記第1の材料の材料定数(a material constant)および上記第1の材料の有効減衰長(effective attenuation length)が上記第1の寄与分および上記第2の寄与分のそれぞれに適用され,上記厚い部分の厚さに対応し,上記第2の材料の材料定数および上記第2の材料の有効減衰長によって調整される上記第2の材料の種から放出された電子のモデル値をI’2として表し,上記薄い部分の厚さに対応し,上記第3の材料の材料定数および上記第3の材料の有効減衰長によって調整される上記第3の材料の種から放出された電子のモデル値をI’3として表し,上記強度値I1,I2およびI3ならびにモデル値I’1,I’2およびI’3を用いて上記厚い部分の厚さおよび上記薄い部分の厚さを得る。上記方法はまた,上記有効減衰長に対する上記厚さの比率の指数(an exponent of the ratio of the thickness over the effective attenuation length)に材料定数を適用してもよい。
【0015】
更なる態様では,堆積プロセスを監視するシステムが提供され,このシステムは,ウェハを支持するステージ,少なくとも第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有し,上記第2の層はその中に第3の材料のパターンを有する,そのようなウェハの領域の上において上記ウェハを照射するX線を生成するX線ソース,上記X線ビームの一部を遮断してX線フラックス信号を生成するX線センサ,異なる電子エネルギーにしたがって上記ウェハから放出された電子を空間的に分割する電子アナライザ,上記電子アナライザを通過した後の電子を検出し,検出信号を出力する電子検出器,および上記検出信号を受付け,そこから上記第3の材料から放出された電子に対応するエネルギー帯域中の電子の信号強度を決定し,上記X線フラックス信号を使用して信号強度を正規化し,上記第3の材料のパターンの上の上記第1の材料の存在を識別する処理装置を備えている。
【0016】
この発明の他の態様および特徴は,以下の図面を参照して行なう詳細な説明から明らかにされよう。詳細な説明および図面は,添付の特許請求の範囲によって規定されるこの発明の様々な実施形態の様々な非限定的例を提供することを理解されたい。
【0017】
この明細書に組み込まれ,その一部を構成する添付の図面は,この発明の実施形態を例示するものであり,上記説明とともにこの発明の原理を説明および例示するものである。図面は,例示的な実施形態の主要な特徴を図式的に説明することを意図している。図面は,実際の実施形態のすべての特徴または描写された要素の相対的寸法を描写することを意図していず,一定の縮尺で描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】開示された実施形態による測定を示す選択的堆積構造の部分断面図である。
【
図1A】層の厚さを決定する実施形態を示す概略図である。
【実施例】
【0019】
以下,この発明の堆積プロセス制御および監視の実施形態を,図面を参照して説明する。様々な実施形態またはそれらの組み合わせを,異なる用途のためにまたは異なる利益を達成するために使用することができる。達成しようとする結果に応じて,この明細書に開示される異なる特徴を,部分的または完全に,単独でまたは他の特徴と組み合わせて利用し,利点と要件および制約とのバランスをとることができる。したがって,特定の利点が様々な実施形態を参照して強調されるが,開示された実施形態に限定されるものではない。すなわち,この明細書に開示される特徴は,それらが説明される実施形態に限定されず,他の特徴と「混合および適合」することができ,他の実施形態に組み込むことができる。
【0020】
図1は半導体ウェハの一部の断面を示すもので,堆積プロセス,たとえば選択的堆積プロセスの監視を示している。ベース層100,たとえばウェハ基板はシリコン製のもので,その上に絶縁体105の層,ここでは二酸化シリコン層が堆積されている。二酸化シリコン層105は,導電性金属,図示する例ではタングステンWが充填された複数の穴またはトレンチ110を有することによってパターン化されている。第2の絶縁体115の層は,絶縁層105の露出部分の上のみに選択的に堆積されるべきものである。
図1の例では,二酸化ジルコニウム層が上記二酸化シリコン層の露出部分の上のみに選択的に堆積されている。説明のために,
図1は,二酸化ジルコニウムの層が実際に二酸化シリコン層の上に堆積されていることを示しているが,二酸化ジルコニウムの不要な薄い層もタングステン層の露出部分の上に堆積されている。二酸化ジルコニウム115の不均一な層が二酸化シリコンおよびタングステンの上に堆積されている。
【0021】
一実施態様では,XPSが用いられて堆積プロセスの選択性が監視される,すなわち金属層の露出部分の上に絶縁層が堆積されているかどうかが決定される。
図1の例を参照して,一実施形態では,XPSが用いられて,二酸化ジルコニウムがタングステン層の露出部分の上に堆積されているかどうか,もしそうであればそのような望ましくない堆積の厚さが決定される。
【0022】
一実施例では,
図1に示すサンプルがX線照射され,その結果として得られる上記サンプルからの光電子放出(矢印によって示す)が検査される。この特定の実施例では,ZrO
2層125による,以下でW信号と呼ぶタングステン層のみからの放出の減衰が用いられて,意図しない/望ましくない二酸化ジルコニウム層の厚さが計算される。入射X線フラックス(incident X-ray flux)がW信号強度を正規化するための参照として用いられる(信号強度および電子数の用語がここでは同じ意味で(交換可能に)用いられる)。結果として得られる正規化された電子数は参照電子数と比較することができる。
【0023】
図2は,堆積プロセスを監視するためのこの明細書に開示される様々な実施例のためのX線システム200の一例を示している。上記システムの動作およびこの明細書に開示する分析は一または複数のコンピュータ205によって実行することができる。電子銃210が電子ビームを放出し,これが方向づけられ,アノード215,この実施例ではアルミニウム製のアノード215にヒットする。その結果,上記アノードにおいてX線が生成され,モノクロメータ220に向けられる。次に上記X線はモノクロメータにおいて回折される。この実施例では,モノクロメータ220は水晶(crystal quartz)製のもので,AlKαX線のみをウェハ225上に集束させるように構成されている。少量のAlKαもフラックス検出器230において収集される。上記フラックス検出器230の信号はX線数(X-ray count)からフラックス数(flux number)に変換される。フラックス数がウェハにヒットするX線の参照インジケータ(reference indicator)として用いられる。
【0024】
一次AlKαX線ビームが上記ウェハ235にヒットするように方向づけされる。X線が上記ウェハ225の層(複数)を通過するときに,電子および二次X線が上記ウェハの各層から放出される。XPSエネルギー・アナライザ240は上記放出された電子を収集し,それをXPS検出器245に方向づける。上記XPSエネルギー分析器240は,概略的には放出された電子をそれらのエネルギーにしたがって分離するもので,光子周波数ごとに白色光を分離するプリズムに類似するものである。結果として,上記XPS検出器245によって生成された信号を,各固有のエネルギーにおける電子数(すなわち強度)を測定するために用いることができる。強度(電子数)対結合エネルギーをプロットするサンプル・グラフがコンピュータ205によって生成され,モニタ250に示される。
【0025】
モニタ250中に例示するプロットは,サンプル内の材料(複数)をどのように識別することができるかを示している。この特定の実施例では,上記ウェハ225はシリコン製で,シリコン酸窒化物の第1の層と,上記シリコン酸窒化物の上の酸化ハフニウムの層とを有している。上記プロット中の様々なピークを用いて,検査対象のサンプル,ここではウェハ225中に存在する材料を識別することができる。
図2に示す例では,シリコン酸窒化物がシリコン全体を覆っていることが示され,酸化ハフニウムがシリコン酸窒化物の層全体を覆っていることが示されている。しかしながら,
図1の例を参照して説明したように,層が選択的に堆積される場合には,各材料が堆積される場所および厚さを理解することが重要である。
【0026】
一実施態様では,一の層からのXPS信号の減衰が用いられて,その上の異なる材料の層の存在が推測される。さらに,減衰の量を用いて上記層の厚さを定量化することができる。たとえば,金属層(銅,タングステン,タンタルなど)中に存在する金属からのXPS信号を観察して,このXPS信号の減衰が上記金属の上の不要な酸化物層の存在を示すことができる。これは,酸化物下層の上に選択的に酸化物層を堆積するときに選択性の損失を示すことができる。もちろんその逆も決定することができ,すなわち,酸化物層からのXPS信号の減衰を用いて,酸化物の上に堆積している金属,およびそのような不要な金属層の厚さを検出することができる。
【0027】
開示する実施例では,この不要な酸化物の厚さが,上記金属からの測定されるXPS信号に基づいて推定される。上記厚さは,測定中に得られる測定XPS信号,フラックス検出器230から得られるX線フラックス,および覆っている酸化物がない場合の対象金属からの予想(期待)XPS信号(これは,経験,参考測定,酸化物の堆積開始前の測定などから知ることができる)を用いて決定される。
【0028】
図1の特定の実施例に戻って,
図1Aに例示するように,厚さt
0の上層のZrO
2の場合,種(a species)S(
図1AのWまたはSiO
2)からのラインは次のように減衰する。Is=Is’e
(-t0/λs,ZrO2)。ここでIs’(参照強度(reference intensity)または参照電子数(reference electron count)と呼ばれることがある)は,ZrO
2層を通過する前の種Sからの光電子の強度であり,λ
s,ZrO2は材料ZrO
2中を通過する種Sからの特定タイプの光電子,たとえばシリコンから放出されかつZrO
2を通過するシリコン2p光電子(silicon 2p photoelectrons)についての材料パラメータ(有効減衰長(EAL))(effective attenuation length)である。この開示では,材料B中の材料Aについて省略形EALを用いるが,材料から放出される特定の光電子を指すと理解するべきである。
【0029】
上記の式に基づいて,Sからの光電子の強度がわかっている場合,予想される強度に対する測定フラックスに対して較正された測定強度の比率の自然対数に材料パラメータを適用することによって,Sから放出されて層ZrO2を通過する光電子の減衰に基づき,S上の層ZrO2の厚さt0を推定することができる。すなわち,t0=λs,ZrO2Ln((Is/X線フラックス)/Is’)となる。
【0030】
このプロセスを使用して,所望のパターン化層(たとえばSiO2)の上の堆積材料(たとえばZrO2,HfOなど)の厚さを把握し,かつ意図しないパターン層(たとえばSi)の上の堆積材料の厚さを把握することができる。たとえば,この方法を用いて,隣接する表面,たとえば基板のパッシベート(不動態化)面/非アクティベート(非活性化)面になんら堆積をすることなく,選択された表面上に達成可能な堆積厚さを評価することができる。すなわち,意図しない領域に堆積が発生しない限り,その領域の材料からのXPS信号の減衰は観察されない。
【0031】
再度
図1を参照して,シリコン基板の上の一般化されたシステム層は,材料Bのパターンがその中に形成された材料Aの第1の層,および材料Aの上の所望領域に厚さt
thickを有して堆積され,かつ材料Bのパターンの上の意図しない領域に潜在的な厚さt
thinを有して堆積された第2の層を含む。種AおよびBからの強度I
AおよびI
Bを有する光放出は,材料Cの層の存在によって独立して減衰され,これは,少なくとも上記堆積層の厚さおよび層Cを形成する材料に依存する。層Cを形成する材料の効果は有効減衰長と呼ばれ,独立してたとえば実験的に決定される。t
thickまたはt
thinのいずれかの厚さを決定するために,測定強度は基板上の総入射X線フラックスによって正規化され,かつ有効減衰長について補正される。これが強度I
AおよびI
Bを用いて行われることで,所望堆積物の厚さ,およびもしあれば意図しない堆積物の厚さの両方を決定することができる。
【0032】
開示する実施例において,測定ごとのフラックスの変動およびツールごとの変動を考慮する必要があるので,生の強度数(raw intensity numbers)は直接には使用されない。したがって,X線フラックス数が用いられて生の強度が正規化されて厚さが計算される。また,I
s’の値は要件や経験に基づいてスケーリングすることができる定数として用いることができる。たとえば,I
s'の値は,最上層を堆積する前にウェハのXPS測定を実行することによって取得でき,それを入射X線フラックスの単位あたりの,または公称フラックスでの光電子の強度などとすることができる。また,下層およびパターン層(たとえば
図1のSiO
2およびW)の厚さは比較的厚く,ウェハ間において一定であるので,ウェハのそれぞれについてI
s'を測定する必要はない。むしろ,既知の良好なウェハを使用した測定値を保存しておき,それを後続の測定において用いることができる。
【0033】
所望の堆積層および意図しない堆積部分の厚さ(たとえばSiO
2上に堆積されたALD酸化物の厚さおよび金属上の不要なALD酸化物の厚さ)の測定値は,以下のようにして得ることができる。この実施例では,複数材料(multimaterial),複数層(multilayer)の厚さモデルが開発され(developed),これらすべての層からの信号が用いられる。たとえば
図1に示す構造を考えると,W,SiO
2,ZrO
2のそれぞれに対応するXPS信号が用いられる。各信号の強度に対する有効寄与分(the effective contribution to intensity of each signal)を表す定数が生成される。次に,回帰アルゴリズムが用いられて,残差(residuals)を最小にする堆積層の厚さおよび不要堆積の厚さのソリューションが最適化される。
図1の特定の実施例を参照して,SiO
2領域上に堆積された二酸化ジルコニウムおよびタングステンW領域上に堆積された二酸化ジルコニウムの両方の厚さが計算される。
【0034】
一実施例では,予想される種のそれぞれの減衰方程式を規定する関係(relationships defining the attenuation equations for each of the expected species)が確立される。たとえば,ある一般的なケースでは,堆積層は第1の材料によって作られた層の上に選択的に堆積されるが,上記第1の材料内に埋め込まれた第2の材料によって作られた領域,たとえばパターンの上に意図せずに堆積されることがある。したがって,上記システムは3つの信号を検出することができる。すなわち,堆積材料の種の信号,上記第1の材料の種からの減衰信号,および第2の材料の種からの減衰信号(おそらくより少ない程度のもの)である。
【0035】
図1を参照して,堆積材料の種の信号は層115(Cとしても示される)および意図しない部分125から放出された信号の合計であり,第1の材料からの減衰信号は信号I
Aであり,第2の材料からの減衰信号はI
Bである。この例において3つの数式を設定することができる。第1の式は,所望の堆積材料の厚い層によって減衰される第1の材料の信号,たとえばI
Aを規定する式,第2の式は,堆積材料の薄い意図しない層によって減衰される第2の材料の信号,たとえばI
Bを規定する式,そして,第3の式は,意図しない堆積材料125からの追加寄与分を伴う堆積材料115の信号を規定する式であり,それぞれに「自己」減衰成分があり,層の深部から放出された光電子は層の残りの材料を通過するときに減衰される。
【0036】
説明のために,
図1の例を参照して方程式を展開する。ここでは3つの層が関連しており,それは,二酸化シリコンの上に選択的に堆積される二酸化ジルコニウム層,および潜在的にタングステン層の上に堆積される二酸化ジルコニウムの薄い層である。したがって,タングステンのXPS信号は,二酸化ジルコニウムの意図しない薄い層によって減衰され,次のように表すことができる。
【0037】
IW=1/KW*Exp(-tZrO2Thin/EALW_Zr)
ここでKWは信号の強度に対するタングステンの有効寄与分を表す定数であり,tZrO2Thinは意図しない薄い二酸化ジルコニウム層の厚さであり,EALW_Zrはタングステンから放出され,二酸化ジルコニウムを通過する電子の有効減衰長である。すなわち,意図しない薄い層を通過するタングステンの減衰信号は,タングステンのスケーリング係数によってスケーリングされる,二酸化ジルコニウムを通したタングステンの有効減衰長に対する薄い層の厚さの比率の指数として表される。
【0038】
ジルコニウム原子(二酸化ジルコニウム層を表す)から放出された電子の総XPS信号は,シリコンの上に堆積された厚い部分とタングステンの上に堆積された薄い部分からの寄与分の合計であり,次のように表すことができる。
【0039】
IZr=1/KZr*(1-Exp(-tZrO2Thick/EALZr_Zr))+1/KZr*(1-Exp(-tZrO2Thin/EALZr_Zr))
ここでKZrは上記信号の強度に対するジルコニウム電子の有効寄与分を表す定数であり,tZrO2Thickは所望の二酸化ジルコニウム層の厚さであり,tZrO2Thinは意図しない二酸化ジルコニウム層の厚さであり,EALZr_Zrはジルコニウムから放出され,二酸化ジルコニウムを通って移動する電子の有効減衰長である(層の下部にあるジルコニウム原子から放出される電子がその上の層の残りの厚さによって減衰される)。したがってジルコニウムの減衰信号は,堆積された厚い層を通る減衰信号と意図しない薄い層を通る減衰信号の合計であり,ジルコニウムのスケーリング係数によってスケーリングされる,ジルコニウムの有効減衰長に対する厚い層の厚さの比率の指数と,ジルコニウムのスケーリング係数によってスケーリングされる,ジルコニウムの有効減衰長に対する薄い層の厚さの比率の指数の合計によって表される。
【0040】
二酸化シリコンのXPS信号は二酸化ジルコニウムの厚い層によって減衰され,次のように表される。
【0041】
ISiO=1/KSiO2*Exp(-tZrO2Thick/EALSiO2_Zr)
ここでKSiOは信号の強度に対するシリコン電子の有効寄与分を表す定数であり,tZrO2Thickは所望の二酸化ジルコニウムの厚さであり,EALSiO_Zrはシリコンから放出され,厚い二酸化ジルコニウム層を通って移動する電子の有効減衰長である。したがって,堆積された厚い層を通るシリコンの減衰信号は,シリコンのスケーリング係数によってスケーリングされる,二酸化ジルコニウムを通るシリコンの有効減衰長に対する厚い層の厚さの比率の指数として表される。
【0042】
したがって,2つの未知数を決定するために解くことができる3つの方程式があり,未知数は,二酸化シリコンの上に適切に堆積された二酸化ジルコニウム層の厚さと,タングステンの上に堆積された二酸化ジルコニウムの厚さ(存在する場合)である。
【0043】
一実施態様では,IZrの全体の寄与分がIWおよびISiOの強度を用いて正規化される。数式はSiO2およびWのそれぞれの上のZrO2堆積を表すZrO2ThickおよびZrO2thinを変更することによって残差を最小化するようにして解かれる。
【0044】
解ZrO2ThickおよびZrO2thinを解くための最小化は以下のとおりである。
【0045】
【0046】
ここで#Zr,#SiOおよび#Wは,それぞれ,ジルコニウム,SiO
2およびWの電子数(
図2のモニタ250に示されている曲線の下の領域)またはXPS信号強度を表す。値K
Zr,K
SiOおよびK
Wは,たとえばジルコニウムの堆積前にXPS測定を行うか,他の参照サンプル上の測定によって取得することができる。一例では,回帰たとえば非線形回帰が用いられて,測定された生のスペクトル比(たとえば#Zr/#SiOおよび#Zr/#W)とモデル化されたまたは上述した数式によって得られる推定される光放出強度比(たとえばI
Zr/I
SiOおよびI
Zr/I
W)との間の残留誤差を最小化するtZrO
2ThickおよびtZrO
2Thinの値が見つけられる。
【0047】
たとえば,様々な厚さを上記数式において繰り返し用いてモデル化された強度IW,IZr,およびISiOのさまざまな値を生成し,その結果として得られるIW,IZrおよびISiOの値を,残差値が最小化されるまで上記残差式にプラグインする。残差を最小化するIW,IZrおよびISiOの値に対応する予測厚さが堆積層の正しいまたは真の厚さとして扱われる。
【0048】
開示する実施例において,第2の材料の第2の層の上に堆積された第1の材料の第1の層を有するサンプルであって,上記第2の層がその中に第3の材料のパターンを有する,そのようなサンプルにおける堆積プロセスは,測定されるX線フラックス値を用いて上記第3の材料のパターンの上の第1の材料の存在を決定し,上記第3の材料のパターンから放出される電子に対応する電子エネルギーの電子数を正規化して得られた正規化された電子数を参照電子数と比較することによって実行することができる。
【0049】
さらに,この方法は,第2の材料が占めるサンプルの領域にわたる堆積層の厚さ,および第3の材料のパターンが占めるサンプルの領域にわたる堆積層(存在する場合)の厚さを計算することによって進めることができる。上記厚さは次のようにして計算することができる。サンプルにX線ビームを照射し,上記サンプルの第1,第2および第3の材料から放出される光電子を収集して,強度値I1,I2およびI3のそれぞれを生成する。次に,参照強度(reference intensities)I’1,I’2およびI’3を用いてそれぞれの厚さを決定する。参照強度は次の層を堆積する前に取得した値,または「ゴールデン」参照サンプル(a “golden” reference sample)から予測される値である。たとえばI’2は第3の材料のパターンを形成する前または後において,しかしながら第1の材料の第1の層を堆積する前に,XPS信号を測定することによって取得することができる。同様にI’3は第3の材料のパターンを形成した後に,しかしながら第1の材料を堆積する前に,XPS信号を測定することによって取得することができる。
【0050】
I1の値は第2の材料の上の厚い層および第3の材料の上の薄い層(存在する場合)からの追加寄与分として表される。I1,I2およびI3のそれぞれは,参照強度I’1,I’2およびI’3の関数として表され,第1,第2および第3の材料のそれぞれに対応する原子感度値(atomic sensitivity value)ならびに第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出され,その上の対応する材料を通過する電子に対応する有効減衰長によって変更(修正)される。上記原子感度値および有効減衰長は実験的に決定することができる。
【0051】
上記第3の材料の光電子の信号は上記第1および第2の材料からの信号を用いて正規化することができる。たとえば,上記第2の層およびパターンは通常厚く,ウェハごとに変化しないので,堆積層からの信号を正規化するための参照(基準)として用いることができる。たとえば,堆積された第1の層の厚い部分と薄い部分からの2つの寄与分は,比率I1/I2およびI1/I3を取ることによって正規化することができる。
【0052】
開示された方法によって,上記第2の層の上に堆積された第1の層の第1の厚さおよび第2の層中のパターンの上に堆積された上記第1の層の第2の厚さは,第1,第2および第3の材料からそれぞれ放出される光電子に対応する強度値I1,I2およびI3のそれぞれを生成するための電子エネルギーのそれぞれの電子数を使用することによって決定され,第1の厚さおよび第2の厚さの反復推定厚さ値を用いて,第1,第2および第3の材料から放出される光電子に対応するモデル化強度I’1,I’2およびI’3を計算し,強度値I1,I2およびI3の測定比率およびモデル化強度I’1,I’2およびI’3の比率との間の差を最小化し,これによって第1の厚さと第2の厚さの真の値を取得する。この方法はさらに,強度値I1,I2およびI3のそれぞれを,モデル化強度I'1,I'2およびI'3,第1,第2および第3のそれぞれの材料の関連原子感度係数(associated atomic sensitivity factor),ならびに第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出される光電子の有効減衰長の関数として表すことができ,上記最小化ステップから得られた値を用いて上記第1の厚さおよび上記第2の厚さを得る。上記最小化ステップは,上記測定比率とモデル化強度の比率との間の差の回帰(regression)を実行してもよい。
【0053】
また,上記第2の層の上に堆積された上記第1の層の第1の厚さおよび上記第2の層内のパターンの上に堆積された上記第1の層の第2の厚さは,各電子エネルギーの電子数を用いて,第1,第2および第3の材料のそれぞれから放出される光電子に対応する強度値I1,I2およびI3を生成し,第1の厚さに関連する,上記第2の材料の上に堆積された第1層の厚い部分からの放出の第1の寄与分と,第2の厚さに関連する,上記第3の材料の上に堆積された上記第1の層の薄い部分からの放出の第2の寄与分との合計に対応する予想(期待)強度I’1,を設定し,ここで上記第1の材料の材料定数および上記第1の材料の有効減衰長が上記第1の寄与分および上記第2の寄与分のそれぞれに与えられ,第2の層からの光電子放出に対応し,第1の厚さを通過して第2の材料の材料定数および第2の材料からの放出の有効減衰長によって調整される予想強度I'2を設定し,上記パターンからの光電子放出に対応し,上記第2の厚さを通過して上記第3の材料の材料定数および第3の材料からの放出の有効減衰長によって調整される予想強度I'3を設定し,上記強度値I1,I2およびI3ならびに予想値I’1,I’2およびI’3を用いて上記第1の厚さおよび上記第2の厚さを得ることによって,第1の厚さおよび第2の厚さを決定することができる。さらに,上記厚さは,上記第1の厚さおよび第2の厚さについて異なる推定値を用いることによって予想強度I’1,I’2およびI’3を反復計算することによって決定してもよく,反復ごとに上記強度値I1,I2およびI3ならびに期待値I’1,I’2およびI’3を間の残差値を決定し,最小の残差値を生成する第1の厚さおよび第2の厚さの推定値を真の第1の厚さおよび第2の厚さとして設定する。
【0054】
この明細書に記載のプロセスおよび技術は本質的に特定の装置に関連するものではなく,コンポーネントの任意の適切な組み合わせによって実装することができることを理解されたい。さらにこの明細書に記載の教示にしたがって様々なタイプの汎用デバイスを使用することができる。この発明を,あらゆる観点において限定的ではなく例示的であることを意図する特定の例に関連して説明した。当業者であれば多くの異なる組み合わせがこの発明を実施するのに適していることを理解するであろう。
【0055】
さらに,この明細書に開示される発明の詳細および実施を考慮することによって,この発明の他の実施は当業者にとって明らかであろう。特に,この明細書に開示する表現は,開示する例に示されるように、パターン化された層の特定の形状の例として提供されている。記載された実施形態の様々な態様および/または構成要素は単独でまたは任意の組み合わせで使用することができる。この明細書および実施例は例示としてのみ考慮することが意図されておりこの発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。