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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ゲート絶縁膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/312 20060101AFI20240508BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240508BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L21/312 C
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
H01L29/78 617V
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021567050
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2020067769
(87)【国際公開番号】W WO2020260430
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019118623
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 行治
(72)【発明者】
【氏名】ファン、パオロ、ソリア、ベルムンド
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 恵
(72)【発明者】
【氏名】能谷 敦子
(72)【発明者】
【氏名】野中 敏章
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0347969(US,A1)
【文献】特開2014-199919(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065561(WO,A1)
【文献】特表2016-511917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0180809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ポリシロキサン、
(II)チタン酸バリウム、および
(III)溶剤
を含んでなり、
(II)チタン酸バリウムの含有量が、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、49~80質量%である、ゲート絶縁膜形成組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、以下の式(Ia):
【化1】
(式中、
Iaは、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、または1以上のメチレンがオキシ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、RIaはヒドロキシ、アルコキシではない)で示される繰り返し単位
を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサンが、以下の式(Ic):
【化2】
で示される繰り返し単位をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記チタン酸バリウムの平均一次粒子径が、10~200nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(II)チタン酸バリウムの含有量が、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、40~80質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、シラノール縮合触媒をさらに含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、ジアゾナフトキノン誘導体をさらに含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
分散剤の含有量が、(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、40質量%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(I)ポリシロキサン、
(II)チタン酸バリウム、
(III)溶剤、および
(IV)前記ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として0~20質量%の、ジアゾナフトキノン誘導体、シラノール縮合触媒、ケイ素含有化合物およびフッ素含有化合物からなる群から選択される、添加剤
からなり、
(II)チタン酸バリウムの含有量が、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、49~80質量%である、ゲート絶縁膜形成組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を基材に塗布し、塗膜を形成させること、および
形成された塗膜を加熱すること
を含んでなる、ゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項11】
前記塗膜の加熱が、250~800℃で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
比誘電率が6.0以上である、請求項10または11に記載の方法により製造されたゲート絶縁膜。
【請求項13】
ゲート電極、
請求項10または11に記載の方法により製造されたゲート絶縁膜、
酸化物半導体層、
ソース電極、および
ドレイン電極
を具備してなる、薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記薄膜トランジスタが、さらに保護膜を具備してなる、請求項13に記載の薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート絶縁膜形成組成物およびゲート絶縁膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高解像度ディスプレイ向けに、アモルファスInGaZnOに代表される酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの開発が活発に行われている。酸化物半導体は、液晶ディスプレイに使用されているアモルファスシリコン薄膜トランジスタと比較して、電子移動度が大きく、大きなON/OFF比など優れた電気特性を示すことから、有機ELディプレイの駆動素子や、省電力素子として期待されている。ディスプレイ向けの開発においては、特にトランジスタとしての素子動作安定性と大面積基板上での均一性を保つことが重要な課題となっている。
【0003】
従来、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜は、化学気相成長法(CVD)や真空蒸着装置を利用して形成されてきた。絶縁膜の特性を向上させるため、また製造プロセスをより簡易にするために、有機および無機材料を含め、さまざまな塗布系材料を用いた絶縁膜の形成方法が提案されている。そのうちの1つが、ポリシロキサンを含む組成物を用いた絶縁膜の形成方法である。例えば、誘電特性を制御するために、ポリシロキサンと金属酸化物とを含む組成物を用いた絶縁膜の形成方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-199919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高誘電率、高移動度等の優れた特性を有するゲート絶縁膜を形成する、ポリシロキサンを含んでなるゲート絶縁膜形成組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるゲート絶縁膜形成組成物は、
(I)ポリシロキサン、
(II)チタン酸バリウム、および
(III)溶剤
を含んでなり、
(II)チタン酸バリウムの含有量が、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、30~80質量%である。
【0007】
本発明によるゲート絶縁膜の製造方法は、
本発明によるゲート絶縁膜形成組成物を塗布し、塗膜を形成させること、および
形成された塗膜を加熱すること
を含んでなるものである。
【0008】
本発明による薄膜トランジスタは、
ゲート電極、
上記の方法で製造されたゲート絶縁膜、
酸化物半導体層、
ソース電極、および
ドレイン電極
を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるゲート絶縁膜形成組成物によれば、高誘電率、高移動度、低リーク電流等の優れた特性を有するゲート絶縁膜を形成することができる。また、形成されたゲート絶縁膜は平坦性の高いものである。また、本発明によれば、優れた特性を有するゲート絶縁膜をより簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるゲート絶縁膜を具備する薄膜トランジスタ基板の一態様を示す模式図である。
図2】本発明によるゲート絶縁膜を具備する薄膜トランジスタ基板の他の一態様を示す模式図である。
図3】本発明によるゲート絶縁膜を具備する薄膜トランジスタ基板の他の一態様を示す模式図である。
図4】本発明によるゲート絶縁膜を具備する薄膜トランジスタ基板の他の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0012】
本明細書において、~または-を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0013】
本明細書において、炭化水素は、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含むものを意味する。炭化水素基は、1価または2価以上の、炭化水素を意味する。 本明細書において、脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素を意味し、脂肪族炭化水素基は、1価または2価以上の、脂肪族炭化水素を意味する。芳香族炭化水素は、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有することも、脂環と縮合していていることもできる、芳香環を含む炭化水素を意味する。芳香族炭化水素基は、1価または2価以上の、芳香族炭化水素を意味する。また、芳香環とは、共役不飽和環構造を有する炭化水素を意味し、脂環とは、環構造を有するが共役不飽和環構造を含まない炭化水素を意味する。
【0014】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0015】
本明細書においてアリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0016】
本明細書において、「Cx~y」、「C~C」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0017】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかである。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0018】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0019】
<ゲート絶縁膜形成組成物>
本発明によるゲート絶縁膜形成組成物(以下、単に、組成物ということがある)は、(I)ポリシロキサン、(II)チタン酸バリウム、および(III)溶剤を含んでなる。 ここで、本発明による組成物は、後述するゲート絶縁膜形成組成物であり、好ましくは薄膜トランジスタを構成するゲート絶縁膜を形成するための組成物である。
本発明による組成物は、非感光性組成物、ポジ型感光性組成物、またはネガ型感光性組成物のいずれであってもよい。本発明において、ポジ型感光性組成物とは、組成物を塗布して、塗膜を形成させ、露光したときに、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が増し、現像によって露光部が除去され、ポジ像を形成できる組成物をいう。ネガ型感光性組成物とは、組成物を塗布して、塗膜を形成させ、露光したときに、露光部がアルカリ現像液に対して不溶化し、現像によって、未露光部が除去され、ネガ像を形成できる組成物をいう。
【0020】
本発明による組成物により形成されたゲート絶縁膜の比誘電率は、好ましくは6.0以上であり、より好ましくは8.0以上である。ここで、比誘電率は、Semilab社製水銀プローブ装置を用いて測定できる。
【0021】
(I)ポリシロキサン
本発明において用いられるポリシロキサンは、特に限定されず、目的に応じて任意のものから選択することができる。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。
【0022】
好ましくは、本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ia):
【化1】
(式中、
Iaは、水素、C1~30(好ましくはC1~10)の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、または1以上のメチレンがオキシ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、RIaはヒドロキシ、アルコキシではない)で示される繰り返し単位を含んでなる。
なお、ここで、上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
また、上記の「フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており」とは、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基中の炭素原子に直結する水素原子が、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置き換えられていることを意味する。本明細書において、他の同様の記載においても同じである。
【0023】
式(Ia)で示される繰り返し単位において、RIaとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニルである。RIaがメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、RIaがフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。
【0024】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ib):
【化2】
(式中、
Ibは、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である)
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0025】
式(Ib)における、RIbとしては、好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、から複数、好ましくは2つまたは3つの水素を除去した基である。例えばピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートから2つまたは3つの水素を除去した基が挙げられる。RIbは、複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する。
【0026】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ic):
【化3】
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0027】
式(Ib)および式(Ic)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、組成物の感度低下や、溶媒や添加剤との相溶性の低下、膜応力が上昇するためクラックが発生しやすくなることがあるため、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Id):
【化4】
(式中、
Idは、それぞれ独立に、水素、C1~30(好ましくはC1~10)の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、かつ炭素原子が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されている)
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0029】
式(Id)で示される繰り返し単位において、RIdとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニルが好ましい。RIdがメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、RIdがフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。
【0030】
上記式(Id)の繰り返し単位を有することによって、本発明によるポリシロキサンは、部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、耐熱性が下がるため、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的には、式(Id)の繰り返し単位は、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。式(Id)の繰り返し単位を有さないこと(0モル%)も本発明の一態様である。
【0031】
また、本発明に用いられるポリシロキサンは以下の式(Ie):
【化5】
(式中、
Ieは、-(CRIe -または
【化6】
であり、
ここで、nは1~3の整数であり、
Ieはそれぞれ独立に水素、メチル、またはエチルを表す)
で示される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0032】
式(Ie)において、LIeは、-(CRIe -であることが好ましく、またRIeは、ひとつの繰り返し単位中で、あるいはポリシロキサン分子中で、同一であるか、または異なっているが、1つの分子中のRIeがすべて同一であることが好ましく、またすべてが水素であることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられるポリシロキサンは、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、RIaがメチル、フェニルである式(Ia)で示される繰り返し単位、式(Ic)で示される繰り返し単位を有する、3種類の繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0034】
なお、本発明による組成物に含まれるポリシロキサンは好ましくはシラノール基を有する。ここで、シラノール基は、ポリシロキサンのSi骨格に、直接OH基が結合したもののことをいい、前記式(Ia)~(Ie)などの繰り返し単位を含むポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に直接ヒドロキシが結合したものである。すなわち、前記式(Ia)~(Ie)の-O0.5-に対して、-O0.5Hが結合することによってシラノールが構成される。ポリシロキサン中のシラノールの含有量はポリシロキサンの合成条件、例えばモノマーの配合比や反応触媒の種類などによって変化する。このシラノールの含有量は、定量的な赤外吸収スペクトル測定によって評価することができる。シラノール(SiOH)に帰属される吸収帯は、赤外吸収スペクトルの900±100cm-1の範囲にピークを有する吸収帯として現れる。シラノールの含有量が高い場合にこの吸収帯の強度が高くなる。
【0035】
本発明においては、シラノールの含有量を定量的に評価するために、Si-Oに帰属される吸収帯の強度を基準とする。Si-Oに帰属されるピークとして1100±100cm-1の範囲にピークを有する吸収帯を採用する。そして、Si-Oに帰属される吸収帯の面積強度S1に対する、SiOHに帰属される吸収帯の面積強度S2の比S2/S1により、シラノールの含有量を相対的に評価することができる。チタン酸バリウムの分散安定性を上げ、感光性の場合のパターン形成を可能とするには、この比S2/S1が大きいことが好ましい。このような観点から、本発明において比S2/S1は、好ましくは0.005~0.16であり、より好ましくは0.02~0.12である。
【0036】
なお、吸収帯の面積強度は、赤外吸収スペクトルのノイズなどを考慮して決定する。ポリシロキサンの典型的な赤外吸収スペクトルには、900±100cm-1の範囲にピークを有する、Si-OHに帰属される吸収帯と、1100±100cm-1の範囲にピークを有する、Si-Oに帰属される吸収帯とが確認される。これらの吸収帯の面積強度は、ノイズ等を考慮したベースラインを考慮した面積として測定できる。なお、Si-OHに帰属される吸収帯の裾と、Si-Oに帰属される吸収帯の裾とが重複する場合もありえるが、その場合には、スペクトルにおける二つの吸収帯の間の極小点に対応する波数を境界とする。その他の吸収帯の裾が、Si-OHまたはSi-Oに帰属される吸収帯の裾と重複する場合も同様である。
【0037】
本発明による組成物は、ポリシロキサンを2種以上含むことができる。1種目を例えば、上記した式(Ia)~(Id)の繰り返し単位を含むポリシロキサンを用い、2種目を、式(Ie)の繰り返し単位と、式(Ie)以外の繰り返し単位を含むポリシロキサンを用いることもできる。
繰り返し単位(Ia)~(Id)のRIa~RIdがC1-10であるとチタン酸バリウムの分散安定性を高くすることができるので好ましい。
【0038】
本発明に用いられるポリシロキサンの質量平均分子量は、特に限定されない。ただし、分子量が高い方が塗布性が改良される傾向がある。一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常500以上25,000以下であり、有機溶媒への溶解性、感光性の場合アルカリ現像液への溶解性の点から1,000以上20,000以下であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィにより測定することができる。
【0039】
また、本発明に用いられるポリシロキサンは、感光性を有する組成物に含まれる場合に、この組成物は、基材上に塗布、像様露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、露光部における塗膜は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHということがある)水溶液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光-現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたポリシロキサンを適切に選択すべきである。例えば、膜厚が0.1~100μm(1,000~1,000,000Å)であれば、ポジ型組成物の場合、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50~5,000Å/秒が好ましく、さらに200~3,000Å/秒であることがより好ましい。ネガ型組成物の場合、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50
~20,000Å/秒が好ましく、さらに1,000~10,000Å/秒であることがより好ましい。
【0040】
本発明に用いられるポリシロキサンは、用途や要求特性に応じ、上記範囲の何れかのADRを有するポリシロキサンを選択すればよい。また、ADRの異なるポリシロキサンを組合せて所望のADRを有する混合物にすることもできる。
【0041】
アルカリ溶解速度や質量平均分子量の異なるポリシロキサンとしては、触媒、反応温度、反応時間あるいは重合体を変更することで調製することができる。アルカリ溶解速度の異なるポリシロキサンを組合せて用いることで、現像後の残存不溶物の低減、パターンだれの低減、パターン安定性などを改良することができる。
【0042】
このようなポリシロキサンは、例えば
(M)プリベーク後の膜が、2.38質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が200~3,000Å/秒であるポリシロキサンが挙げられる。
【0043】
また、必要に応じ
(L)プリベーク後の膜が、5質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン、または
(H)プリベーク後の膜の、2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度が4,000Å/秒以上であるポリシロキサンと
混合し、所望の溶解速度を有する組成物を得ることができる。
【0044】
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法]
ポリシロキサンまたはその混合物のアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液としてTMAH水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
【0045】
ポリシロキサンをPGMEAに35質量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したポリシロキサン溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製)で、塗膜の膜厚測定を行う。
【0046】
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度のTMAH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーをTMAH水溶液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をポリシロキサンの溶解速度とする。
【0047】
<ポリシロキサンの合成方法>
本発明に用いられるポリシロキサンの合成方法は特に限定されないが、例えば、
ia-Si-(ORia’ (ia)
(式中、
iaは、水素、C1~30(好ましくはC1~10)の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、かつ炭素原子が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
ia’は、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである)
で示されるシランモノマー
を必要に応じて、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、加水分解し、重合させることによって得ることができる。
【0048】
式(ia)において、好ましいRia’は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ia)において、Ria’は複数含まれるが、それぞれのRia’は、同じでも異なっていてもよい。
好ましいRiaは、上記のRIaにおいて好ましいものとして挙げたものと同じである。
【0049】
式(ia)で表されるシランモノマーの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。式(ia)で表されるシランモノマーは、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0050】
さらに以下の式(ic)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(ic)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ic)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(ORic’ (ic)
式中、Ric’は、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである。
式(ic)において、好ましいRic’は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ic)において、Ric’は複数含まれるが、それぞれのRic’は、同じでも異なっていてもよい。
式(ic)で示されるシランモノマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、等が挙げられる。
【0051】
下記式(ib)で表わされるシランモノマーをさらに組み合わせることもできる。
ib-Si-(ORib’ (ib)式中、
ib’は、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。Rib’は、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRib’は、同じでも異なっていてもよく、
ibは、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数、好ましくは2つまたは3つの水素を除去した基である。好ましいRibは、上記RIbにおいて好ましいものとして挙げたものと同じである。
【0052】
式(ib)で示されるシランモノマーの具体例としては、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0053】
さらに、以下の式(id)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(id)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Id)を含むポリシロキサンを得ることができる。
(Rid-Si-(ORid’ (id)
式中、
id’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。Rid’は、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRid’は、同じでも異なっていてもよく、
idは、それぞれ独立に、水素、C1~30(好ましくはC1~10)の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、かつ炭素原子が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されている。好ましいRidは、上記RIdにおいて好ましいものとして挙げたものである。
【0054】
さらに、以下の式(ie)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。
(ORie’-Si-Lie-Si-(ORie’ 式(ie)
式中、
ie’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。
ieは、-(CRie -または
【化7】
であり、好ましくは、-(CRie -である。ここで、
nはそれぞれ独立に1~3の整数であり、
ieはそれぞれ独立に水素、メチル、またはエチルである。
【0055】
(II)チタン酸バリウム
本発明による組成物は、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、30~80質量%、好ましくは40~80質量%、より好ましくは50~70質量%の、チタン酸バリウム(TiBaO)を含んでなる。チタン酸バリウムは、高誘電率を有しているものであれば特に限定されない。
本発明による組成物が特定の量のチタン酸バリウムを含むことで、形成されるゲート絶縁膜の誘電率を高くすることができ、高移動度が達成される。さらに、リーク電流の低減や、絶縁破壊電圧の低減も達成される。
また、チタン酸バリウムは、(I)ポリシロキサンとの相溶性が良好であるという特徴を有しており、本発明による組成物の分散安定性を顕著に改善することができる。さらにポリシロキサンがシラノール基を有する場合、分散安定性をさらに改善することができる。
通常、金属酸化物粒子を組成物に均一に分散させる必要がある場合、金属酸化物粒子を分散剤を用いて、あらかじめ分散状態にしてから、組成物中の溶媒に混和させ、分散均一性や分散安定性を向上させることが行われている。本発明による組成物においては、分散剤を用いなくても、チタン酸バリウムを組成物中の溶媒中に、安定的に分散させることができる。一般的な金属酸化物粒子には分散剤としてはポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、エチレンジアミンPO-EO縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪酸アルカノールアミドが用いられるが、これらの分散剤は、絶縁膜中に残留して電気特性に影響する可能性がある。本発明による組成物は、分散剤を必要としないため、より優れた電気特性が達成できるのである。
このような観点から、本発明による組成物の分散剤の含有量は、チタン酸バリウムの総質量を基準として、好ましくは40質量%以下であり、より好ましく20質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下である。本発明による組成物が分散剤を含まない(含有量が0%)ことも好適な一態様である。
【0056】
チタン酸バリウムの粒子形状は、限定されず、球状であっても、不定形であってもよい。動的散乱法によって測定されるチタン酸バリウムの平均一次粒子径が、10~200nmであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましく、20~50nmであることが特に好ましい。
【0057】
(III)溶剤
溶剤は、前記した、ポリシロキサンとチタン酸バリウム、および必要に応じて添加される添加剤を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶剤の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。かかる溶剤は、それぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。
【0058】
本発明による組成物の溶剤含有量は、採用する塗布方法を考慮して、用いるポリシロキサンの質量平均分子量、その分布及び構造に応じて適宜選択することができる。本発明による組成物は、組成物の全質量を基準として、一般に40~90質量%、好ましくは60~80質量%の溶剤を含む。
【0059】
本発明による組成物は、前記した(I)~(III)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。なお、組成物全体にしめる(I)~(III)以外の成分は、デバイス特性への影響を少なくする為、組成物の総質量を基準として、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
【0060】
(IV)添加剤
本発明による組成物は、(I)~(III)以外のさらなる化合物を組み合わせることができる。好ましい態様の1つとして、本発明による組成物は、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、0~20質量%の、ジアゾナフトキノン誘導体、シラノール縮合触媒、ケイ素含有化合物およびフッ素含有化合物からなる群から選択される、添加剤をさらに含むことができる。添加剤を含まないこと(添加剤が0質量%である)も、本発明の好適な一態様である。
本発明による組成物が、上記した(I)、(II)、(III)および上記の添加剤からなること、つまりこれら以外の成分を含まないことも、本発明の好ましい態様である。
【0061】
[ジアゾナフトキノン誘導体]
本発明による組成物がポジ型感光性組成物である場合に、ジアゾナフトキノン誘導体を含んでなることが好ましい。本発明に用いられるジアゾナフトキノン誘導体は、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物であり、特に構造について制限されないが、好ましくはフェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とのエステル化合物であることが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4-ナフトキノンジアジドスルホン酸、あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0062】
フェノール性水酸基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、BisP-AF、BisOTBP-A、Bis26B-A、BisP-PR、BisP-LV、BisP-OP、BisP-NO、BisP-DE、BisP-AP、BisOTBP-AP、TrisP-HAP、BisP-DP、TrisP-PA、BisOTBP-Z、BisP-FL、TekP-4HBP、TekP-4HBPA、TrisP-TC(商品名、本州化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0063】
ジアゾナフトキノン誘導体の添加量は、ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率、あるいは使用されるポリシロキサンの物性、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%、最も好ましくは3~10質量%である。ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が1質量%より少ない場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、現実的な感光性を有さない。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには2質量%以上が好ましい。一方、ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が20質量%より多い場合、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物との相溶性が悪くなることによる塗布膜の白化が起こったり、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物の分解による着色が顕著になるため硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、ジアゾナフトキノン誘導体の耐熱性は、ポリシロキサンに比較すると劣るため、添加量が多くなると熱分解により硬化膜の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。また、硬化膜がモノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0064】
[シラノール縮合触媒]
本発明による組成物がネガ型感光性組成物である場合に、光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、および光熱塩基発生剤からなる群から選択されるシラノール縮合触媒を含むことが好ましい。ポジ型の感光性を付与する場合においても、同様にいずれか1つ以上のシラノール縮合触媒を含んでなることが好ましく、より好ましくは光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤から選択されるシラノール縮合触媒である。これらは、硬化膜製造プロセスにおいて利用する重合反応や架橋反応に応じて、選択されることが好ましい。
【0065】
これらの含有量は、分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラスト、パターン形状により最適量は異なるが、(I)ポリシロキサンおよび(II)チタン酸バリウムの総質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%である。添加量が0.1質量%より少ないと、発生する酸または塩基の量が少なすぎて、パターンだれを起こしやすくなる。一方、添加量が10質量%より多い場合、形成される硬化膜にクラックが発生したり、これらの分解による着色が顕著になることがあるため、硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、硬化膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0066】
本発明において、光酸発生剤または光塩基発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸または塩基を発生する化合物のことをいう。発生した酸または塩基は、ポリシロキサンの重合化に寄与すると考えられる。ここで、光としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
ポジ型の場合に添加する、光酸発生剤または光塩基発生剤は、パターンを投影するための像様露光(以下、最初の露光という)ではなく、その後に行う全面露光の際に、酸または塩基が発生することが好ましく、最初の露光時の波長には吸収が少ないことが好ましい。例えば、最初の露光をg線(ピーク波長436nm)および/またはh線(ピーク波長405nm)で行い、2回目の露光時の波長をg+h+i線(ピーク波長365nm)にするときは、光酸発生剤または光塩基発生剤は波長436nmおよび/または405nmにおける吸光度よりも、波長365nmにおける吸光度が大きくなる方が好ましい。
具体的には、波長365nmにおける吸光度/波長436nmにおける吸光度、または波長365nmにおける吸光度/波長405nmにおける吸光度が、2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上、最も好ましくは100以上である。
ここで、紫外可視吸収スペクトルは、溶媒としてジクロロメタンを用いて測定される。測定装置は特に限定されないが、例えばCary 4000 UV-Vis 分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製)が挙げられる。
【0067】
光酸発生剤は、一般的に使用されているものから任意に選択できるが、例えば、ジアゾメタン化合物、トリアジン化合物、スルホン酸エステル、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0068】
上述のものを含めて、具体的に使用できる光酸発生剤としては、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルーp-トルエンスルホナート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジルトリフレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジル-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
また、5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル等は、h線の波長領域に吸収をもつため、h線に吸収を持たせたくない場合には使用を避けるべきである。
【0069】
光塩基発生剤の例としては、アミド基を有する多置換アミド化合物、ラクタム、イミド化合物もしくはその構造を含むものが挙げられる。
また、アニオンとしてアミドアニオン、メチドアニオン、ボレートアニオン、ホスフェートアニオン、スルホネートアニオン、またはカルボキシレートアニオン等を含むイオン型の光塩基発生剤も用いることができる。
【0070】
本発明において、光熱酸発生剤または光熱塩基発生剤とは、露光により化学構造が変化するが、酸または塩基を発生させず、その後、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらのうち、光熱塩基発生剤が好ましい。光熱塩基発生剤として、以下の式(II)で表されるものが挙げられ、より好ましくはその水和物または溶媒和物が挙げられる。式(II)で表される化合物は、露光によりシス型に反転し不安定になるために、分解温度が下がり、その後の工程でベーク温度が100℃程度であっても塩基を発生させる。
ポジ型の場合に添加する光熱塩基発生剤は、ジアゾナフトキノン誘導体の吸収波長と調整する必要はない。
【化8】
ここで、xは、1以上6以下の整数であり、
a’~Rf’は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、スルフィド、シリル、シラノール、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホナト、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスホナト、アミノ、アンモウム、置換基を含んでもよいC1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を含んでもよいC6~22の芳香族炭化水素基、置換基を含んでもよいC1~20のアルコキシ、または置換基を含んでもよいC6~20のアリールオキシである。
【0071】
これらのうち、Ra’~Rd’は、特に水素、ヒドロキシ、C1~6の脂肪族炭化水素基、またはC1~6のアルコキシが好ましく、Re’およびRf’は、特に水素が好ましい。R1’~R4 ’のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。このとき、その環状構造はヘテロ原子を含んでいてもよい。
Nは含窒素複素環の構成原子であり、その含窒素複素環は3~10員環であり、その含窒素複素環は1つ以上の、式(II)中に示されたC2XOHと異なる置換基を含んでもよい、C1~20、特にC1~6の脂肪族炭化水素基をさらに有していてもよい。
【0072】
a’~Rd’は、使用する露光波長により適宜選択することが好ましい。ディスプレイ向け用途においては、例えばg、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニル、アルキニルなどの不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ、ニトロなどが用いられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0073】
具体的には以下のものが挙げられる。
【化9】
【0074】
本発明において、熱酸発生剤または熱塩基発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらは、組成物の塗布後、プリベーク時の熱では酸または塩基を発生しない、もしくは少量しか発生しないことが好ましい。
熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。好ましいスルホン酸としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら熱酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
【0075】
熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
【0076】
[ケイ素含有化合物]
本発明の組成物は、上記以外の、ケイ素含有化合物を含むことができる。ケイ素含有化合物のうち、好ましいものは、ケイ素含有界面活性剤であり、組成物の塗布性の向上を目的に用いられる。例えば、有機シロキサン界面活性剤が挙げられ、KF-53、KP341(商品名、信越化学工業株式会社製)を用いることができる。このケイ素含有化合物は、直鎖構造である点で、上記のポリシロキサンとは異なる。
【0077】
これらのケイ素含有化合物の添加量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0078】
[フッ素含有化合物]
本発明の組成物は、フッ素含有化合物を含むことができる。フッ素含有化合物のうち、好ましいものはフッ素含有界面活性剤である。フッ素含有界面活性剤は、各種のものが知られており、いずれもフッ素化された炭化水素基と、親水性基とを有するものである。このようなフッ素含有界面活性剤としては、メガファック(商品名:DIC株式会社製)フロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)などが挙げられる。
【0079】
これらのフッ素含有化合物の添加量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0080】
本発明による組成物は、塗布性を向上させることを目的に、上記した以外の界面活性剤を含むことができる。例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0081】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレートなどのアセチレンアルコール誘導体、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0082】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0083】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0084】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その添加量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0085】
<ゲート絶縁膜の製造方法>
本発明によるゲート絶縁膜の製造方法は、
本発明による組成物を基材に塗布して、塗膜を形成させること、および
形成された塗膜を加熱すること
を含んでなる。本発明による組成物が感光性組成物である場合は、パターン形成されたゲート絶縁膜を形成することができる。
【0086】
まず、本発明による組成物を基材に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。
また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0087】
本発明による組成物の塗膜を形成した後、その塗膜の乾燥、および溶媒残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70~150℃、好ましくは90~120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~180秒間、好ましくは30~90秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0088】
非感光性の組成物の場合は、その後、加熱し、塗膜を硬化させる。この加熱工程における加熱温度としては、ポリシロキサンの脱水縮合が進行し、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、シラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜のリーク電流が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、この加熱温度は250~800℃であることが好ましく、300~500℃がより好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。加熱は、不活性ガス雰囲気、または大気中などの酸素含有雰囲気下で行われる。
【0089】
上記の加熱(以降、硬化加熱ということがある)の後に、追加加熱工程を行うことができる。追加加熱は、ポリシロキサンの化学変化(ポリマー化)により、水が発生しトランジスタ性能に影響を及ぼすことのないように、デバイスのアニーリング処理温度以上の温度で行うことが好ましい。また、追加加熱は、硬化加熱温度と同じか、またはそれより高い温度で加熱することにより行うことができる。追加加熱の温度は、250~800℃であることが好ましく、300~500℃がより好ましい。追加加熱時間は、一般に20分~2時間であり、好ましくは40分~1時間である。追加加熱処理の雰囲気は、加熱硬化と同様に不活性ガス雰囲気、または酸素含有雰囲気下において行われる。ただし、加熱硬化工程と異なる雰囲気で追加加熱を行うこともできる。
【0090】
感光性組成物の場合は、塗布後、その塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5~2,000mJ/cm、好ましくは10~1,000mJ/cmとする。照射光エネルギーが5mJ/cmよりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2,000mJ/cmよりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0091】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0092】
露光後、露光個所に発生した酸または塩基により膜内のポリマー間反応を促進させるため、特にネガ型の場合、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、後述する加熱工程とは異なり、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸または塩基が未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃~150℃が好ましく、60℃~120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウェハー面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸または塩基の拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒~500秒が好ましく、40秒~300秒がさらに好ましい。露光後加熱は、ポジ型感光性組成物に光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤または熱塩基発生剤を添加した場合、その酸または塩基が本段階で発生しないよう、またポリマー間の架橋を促進させないため、行わない方が好ましい。
【0093】
その後、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア水、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、TMAH水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0094】
その後、通常全面露光(フラッド露光)の工程を行う。光酸発生剤または光塩基発生剤を使用する場合は、この全面露光工程において酸または塩基を発生させる。光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤を使用する場合は、この全面露光工程において光熱酸発生剤、光熱塩基発生剤の化学構造が変化する。また、膜中に残存する未反応のジアゾナフトキノン誘導体が存在する場合は、光分解して、膜の光透明性がさらに向上するので、透明性を求める場合は、全面露光工程を行うことが好ましい。熱酸発生剤または熱塩基発生剤が選択される場合には、全面露光は必須ではないが、上記の目的で全面露光を行うことが好ましい。全面露光の方法としては、アライナー(例えば、キヤノン株式会社製PLA-501F)などの紫外可視露光機を用い、100~2,000mJ/cm程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する方法がある。
【0095】
得られたパターン膜を加熱することにより塗膜の硬化が行われる。加熱条件は、上述の非感光性の組成物を用いた場合と同様である。同様に、追加加熱を行うこともできる。
【0096】
このように得られたゲート絶縁膜の膜厚は特に限定されないが、好ましくは100~300nmであり、より好ましくは100~200nmである。
【0097】
<薄膜トランジスタ>
本発明による薄膜トランジスタは、ゲート電極、本発明による組成物を用いて形成されたゲート絶縁膜、酸化物半導体層、ソース電極、およびドレイン電極を具備してなる。
ゲート電極は、例えば、モリブデン、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、チタンなどの材料が単層あるいは2種類以上の積層膜である。酸化物半導体層としてはインジウム酸化物、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物からなる酸化物半導体が一般的であるが、半導体特性を示すものであれば、その他の酸化物でもよい。酸化物半導体層の形成方法は、酸化物半導体層と同じ組成のスパッタリングターゲットをDCスパッタリングあるいはRFスパッタリングで成膜するスパッタリング法や、金属アルコキシド、金属有機酸塩、塩化物などのプレカーサー溶液や酸化物半導体ナノ粒子の分散液を塗布して焼成することよって酸化物半導体層を形成する液相法がある。ソース・ドレイン電極は、例えば、モリブデン、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、チタンなどの材料による単層あるいは2種類以上の積層膜である。
本明細書において、薄膜トランジスタとは、たとえば表面に電極、電気回路、半導体層及び絶縁層などを具備した基板など、薄膜トランジスタを構成する素子全般をいう。また、基板上に配置される配線としては、ゲート配線、データ配線、2種類以上の配線層接続のためのビア配線等が挙げられる。
本発明による薄膜トランジスタは、さらに、保護膜を具備することもできる。本発明による組成物を用いて、保護膜を形成させることも可能である。
【0098】
図1に本発明による組成物を用いて形成された絶縁膜を具備してなる、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ1の一態様を示す。図1において、ゲート電極2の上にゲート絶縁膜3が形成され、その上に酸化物半導体層4が形成されている。さらに半導体層4の両端にソース電極5とドレイン電極6がゲート絶縁膜3と接するようにそれぞれ形成される。
また、図示していないが、半導体層4の上にはエッチストッパーが形成されていてもよい。さらに、保護膜7がこれらの半導体層4、ソース電極5、およびドレイン電極6を覆うように形成されていてもよい。他の態様としては、例えば、保護膜7上のコンタクトホール9を介して、半導体層4とコンタクトするソース電極5、およびドレイン電極6を形成させた構造を有する薄膜トランジスタ基板(図2)、あるいはトップゲート構造の薄膜トランジスタ(図3)についても同様に適用することができる。なお、ここに示した構造は単に例示したものであり、本発明による製造方法によってここに示した以外の構造を有する薄膜トランジスタ基板を製造することもできる。
図4に保護膜7上に画素電極8を形成した薄膜トランジスタ基板の一態様を示した。保護膜に形成されたコンタクトホール9を介して画素電極8とドレイン電極6がコンタクトしている。
【実施例
【0099】
本発明を諸例により具体的に説明すると以下の通りである。
【0100】
合成例(ポリシロキサン(P1)の合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液49.0g、イソプロピルアルコール(IPA)600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロート中にメチルトリメトキシシラン68.0g、フェニルトリメトキシシラン79.2g、およびテトラメトキシシラン15.2gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10質量%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサンP1溶液を得た。
得られたポリシロキサンP1の分子量(ポリスチレン換算)をゲル浸透クロマトグラフィにて測定したところ、質量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある)は1,700であった。また、得られた樹脂溶液をシリコンウェハーにプリベーク後の膜厚が2μmになるようにスピンコーター(MS-A100(ミカサ製))により塗布し、プリベーク後2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度(以下「ADR」と略記することがある。)を測定したところ、1,200Å/秒であった。
また、得られたポリシロキサン(P1)の赤外吸収スペクトルを測定したところ、Si-Oに帰属される吸収帯の面積強度S1と、SiOHに帰属される吸収帯の面積強度S2との比S2/S1=0.08であった。
【0101】
組成物Aの調製
上記で得られたポリシロキサンP1溶液に、チタン酸バリウムBaTiO(一次粒子径20nm)を、ポリシロキサン:チタン酸バリウムの質量比が、30:70になるように約10分間にわたって徐々に添加し、約15分間撹拌した後、SCミルを用いて分散した。さらに、熱塩基発生剤(1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7-オルソフタル酸塩)を500ppm、界面活性剤KF-53(信越化学工業株式会社製)を1,000ppmの濃度となるように添加し、さらに固形分濃度が30質量%なるようにPGMEAを添加し、撹拌して、組成物Aを得た。
【0102】
組成物B、CおよびDの調製
ポリシロキサン:チタン酸バリウムの質量比を37:63になるように添加した以外は、組成物Aと同様にして、組成物Bを得た。
熱塩基発生剤を添加しなかった以外は、組成物Bと同様にして、組成物Cを得た。
ポリシロキサン:チタン酸バリウムの質量比を51:49になるように添加した以外は、組成物Aと同様にして、組成物Dを得た。
【0103】
ポジ型感光性組成物Eの調製
組成物Dの熱塩基発生剤の代わりに、ポリシロキサンP1およびチタン酸バリウムの総質量を基準として、ジアゾナフトキノン誘導体として4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体を8質量%を加えて撹拌し、組成物Eを調製した。
【0104】
ネガ型感光性組成物Fの調製
組成物Dの熱塩基発生剤の代わりに、ポリシロキサンP1とチタン酸バリウムの総質量を基準として、光酸発生剤として1,8-ナフタルイミジルトリフレート2質量%を加えて撹拌し、組成物Fを調製した。
【0105】
比較組成物AおよびBの調製
チタン酸バリウムを含まないこと以外は、組成物Aと同様にして、比較組成物Aを得た。
チタン酸バリウムに代えて、酸化チタンTiO(一次粒子径20nm)を用い、ポリシロキサン:酸化チタンの質量比が、37:63になるようにしたこと以外は、組成物Aと同様にして、比較組成物Bを得た。
【0106】
比較組成物CおよびD
ポリシロキサン:チタン酸バリウムの質量比を86:14になるように添加した以外は、組成物Aと同様にして、比較組成物Cを得た。
ポリシロキサン:チタン酸バリウムの質量比を93:7になるように添加した以外は、組成物Aと同様にして、比較組成物Dを得た。
【0107】
実施例101
nドープしたシリコンウエハ上に、上記の組成物Aを、スピンコートにより塗布した。得られた塗膜を110℃で90秒間プリベークして溶剤を揮発させた。そして、大気中300℃で20分間加熱して、硬化させ、膜厚0.1μmのゲート絶縁膜を形成させた。ゲート絶縁膜上にアモルファスInGaZnOをRFスパッタリング法により成膜した(70nm)。アモルファスInGaZnO膜のパターン形成後、ソース・ドレイン電極をパターン形成した。ソース・ドレイン電極材料としては、モリブデンを利用した。その後、N/O(4:1)雰囲気下で300℃、120分間、アニーリングを行い、実施例101の薄膜トランジスタを得た。
【0108】
実施例102~106および比較例101、103~105
実施例102~106および比較例101、103~105の薄膜トランジスタは、それぞれ、表1に記載の組成物を用いたこと、加熱温度が表1に記載の温度であること、さらに実施例104は硬化後の膜厚が0.2μmであったこと、実施例105のアニーリング温度が180℃であること以外は、実施例101と同様にして、薄膜トランジスタを得た。比較例102の薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜として膜厚0.1μmの熱酸化膜を用いた以外は、実施例101と同様にして得た。
【0109】
実施例107
上記の組成物Eを実施例101同様に塗布し、得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶剤を揮発させた。乾燥後の塗膜を、2.38%TMAH水溶液を用いて90秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスし、1000mJ/cmで全面露光した後、大気中300℃で60分間加熱して硬化させ、膜厚0.1μmのゲート絶縁膜を形成させた。その後、実施例101同様にして成膜、パターン形成し、アニーリングを行い、実施例107の薄膜トランジスタを得た。
【0110】
実施例108
上記の組成物Fを実施例101同様に塗布し、得られた塗膜を100℃で90秒間プリベークして溶剤を揮発させた。乾燥後の塗膜を、g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F型、製品名、キヤノン株式会社製)により100~200mJ/cmで露光した。露光後100℃で60秒間加熱し、その後2.38%TMAH水溶液を用いて60秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスした。大気中300℃で60分間加熱して硬化させ、膜厚0.1μmのゲート絶縁膜を形成させた。その後、実施例101同様にして成膜、パターン形成し、アニーリングを行い、実施例108の薄膜トランジスタを得た。
【0111】
実施例102について、ゲート絶縁膜の平坦性を日立ハイテクサイエンス製AFM5300Eを用いて1μm四方の範囲にてスキャン測定したところ、二乗平均平方根粗さが2.95nmであった。
【0112】
得られた薄膜トランジスタについて、下記の特性値を測定した。得られた結果は、表1に示すとおりであった。
【0113】
【表1】
【0114】
比誘電率の測定
比誘電率は、Semilab社製水銀プローブ装置(MCV-530)を使用して測定した。
【0115】
リーク電流の測定
Semilab社製水銀プローブ装置(MCV-530)を用いて、2MVにおける、リーク電流を測定した。
【0116】
キャリア移動度の測定
半導体パラメーターアナライザーAgilent4156Cを用いて、ドレイン電圧0.1V、TFTのサイズはチャンネル幅90μm、チャンネル長10μmにてゲート電圧-5Vから5Vにおけるドレイン電流の変化を測定し、キャリア移動度の算出(単位:cm/V・sec)を行った。
【0117】
絶縁破壊電圧の測定
Semilab社製水銀プローブ装置(MCV-530)を用いて、0.1V刻みで電圧を上げていき、電流値が100倍に増加した電圧を記録した。
【0118】
オフ電流
半導体パラメーターアナライザーAgilent4156Cを用いて、ドレイン電圧0.1V、TFTのサイズはチャンネル幅90μm、チャンネル長10μmにてゲート電圧-2Vにおけるドレイン電流を測定した。
【0119】
また、実施例102と同様に絶縁膜を形成した後、さらに比較組成物Aを用いて同様に絶縁膜を形成して、その他は実施例102と同様に行い、絶縁膜が2層構成である薄膜トランジスタを作成した。この薄膜トランジスタの、キャリア移動度は22であり、オフ電流は1.0x10-10であった。
【0120】
分散剤として使用されるポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルを、組成物の総質量を基準として10質量%さらに含むこと以外は、組成物BまたはDと同様にした参考組成物B’およびD’を調製し、それらを用いて、実施例101と同様にして実施例201および202の薄膜トランジスタを作成した。実施例201および202の比誘電率は、それぞれ10.55および6.69であり、リーク電流はそれぞれ2.0×10-4および1.0×10-5であり、絶縁破壊電圧はそれぞれ1.7および2.0であった。また、実施例201のキャリア移動度は4.0、オフ電流は1.0x10-7であった。
【符号の説明】
【0121】
1 トランジスタ基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 酸化物半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 保護膜
8 画素電極
9 コンタクトホール
図1
図2
図3
図4