(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/62 20060101AFI20240509BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240509BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G59/62
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2018196824
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145409(JP,A)
【文献】特開2000-063490(JP,A)
【文献】特表2017-501288(JP,A)
【文献】特表2010-535152(JP,A)
【文献】特開2009-132774(JP,A)
【文献】特開2017-110198(JP,A)
【文献】特開2015-089940(JP,A)
【文献】特開2014-201639(JP,A)
【文献】特開2013-082785(JP,A)
【文献】特開2018-024770(JP,A)
【文献】特開2011-246543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃、大気圧下において
粉状、粒状又はタブレット状の固体であり、エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、
前記エポキシ樹脂は25℃、大気圧下において固体であり、
前記硬化剤はカシューナッツシェルリキッドに由来する構造単位を含むフェノールノボラック樹脂と25℃、大気圧下において固体である
フェノール硬化剤とを含み、
前記フェノールノボラック樹脂の量が硬化剤全体に対して当量基準で3%~50%である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノールノボラック樹脂の水酸基当量は70g/eq~223g/eqである、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノールノボラック樹脂が、カシューナッツシェルリキッド以外のフェノール化合物に由来する構造単位をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記
フェノール硬化剤が、
アラルキル型フェノール樹脂を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
電子部品装置の封止材として用いるための、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
素子と、前記素子を封止する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化等に伴い、実装の高密度化が進んでいる。これにより、電子部品装置の主流は従来のピン挿入型のパッケージから、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Intergration)等の表面実装型のパッケージへと変化しつつある。
【0003】
表面実装型のパッケージは、従来のピン挿入型のものと実装方法が異なっている。すなわち、ピンを配線板に取り付ける際、従来のピン挿入型パッケージはピンを配線板に挿入した後に配線板の裏面からはんだ付けを行うため、パッケージが直接高温にさらされることはなかった。しかし、表面実装型パッケージでは電子部品装置全体が半田バス、リフロー装置等で処理されるため、パッケージが直接はんだ付け温度(リフロー温度)にさらされる。この結果、パッケージが吸湿した場合、はんだ付けの際に吸湿による水分が急激に膨張し、発生した蒸気圧が剥離応力として働き、素子、リードフレーム等のインサートと封止材との間で剥離を発生させ、パッケージクラック、電気的特性不良等の原因となる場合がある。このため、インサートに対する接着性に優れ、ひいてははんだ耐熱性(耐リフロー性)に優れる封止材料の開発が望まれている。
【0004】
上記の要求に対応するために、例えば、封止材に含まれる無機充填材の改質材として、シランカップリング剤の使用が検討されている。具体的には、エポキシ基含有シランカップリング剤又はアミノ基含有シランカップリング剤の使用(例えば、特許文献1参照)、硫黄原子含有シランカップリング剤の使用(例えば、特許文献2参照)等が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-147939号公報
【文献】特開2000-103940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エポキシ基含有シランカップリング剤又はアミノ基含有シランカップリング剤を用いる方法では、リードフレームの表面の金属に対する接着性の向上効果が十分でない場合がある。また、硫黄原子含有シランカップリング剤を用いた場合は金、銀等の特定の金属に対する接着性の向上効果が十分でないという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、金属に対する接着性と耐リフロー性に優れる封止構造が得られる硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて得られる電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記硬化剤は、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位を含むフェノールノボラック樹脂を含む、硬化性樹脂組成物。
【0009】
【化1】
(一般式(1)において、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数10~18の脂肪族炭化水素基を表し、nは1又は2の整数である。)
<2>前記フェノールノボラック樹脂が、前記一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位として下記一般式(1-1)~一般式(1-3)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位の少なくともひとつを含む、<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
【化2】
(一般式(1-1)~一般式(1-3)において、R
2は一般式(1)におけるR
2と同義である。)
<3>前記フェノールノボラック樹脂が、前記一般式(1)で表されるフェノール化合物以外のフェノール化合物に由来する構造単位をさらに含む、<1>又は<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
<4>前記硬化剤が、前記一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位を含むフェノールノボラック樹脂以外の硬化剤をさらに含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<5>電子部品装置の封止材として用いるための、<1>~<4>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<6>素子と、前記素子を封止する<1>~<5>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属に対する接着性と耐リフロー性に優れる封止構造が得られる硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて得られる電子部品装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0013】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0014】
<硬化性樹脂組成物>
本開示の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含み、前記硬化剤は、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位を含むフェノールノボラック樹脂(以下、特定フェノールノボラック樹脂とも称する)を含む。
【0015】
【0016】
式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数10~18の脂肪族炭化水素基を表し、nは1又は2の整数である。
【0017】
特定フェノールノボラック樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、硬化した状態での金属(特に、金)に対する接着性に優れている。その理由は必ずしも明らかではないが、例えば、特定フェノールノボラック樹脂に含まれるフェノール化合物に由来する構造単位が有する炭素数10~18の脂肪族炭化水素基が、金属に対する接着性を向上させるように作用していることが考えられる。さらに、特定フェノールノボラック樹脂に含まれるフェノール化合物に由来する構造単位が有する炭素数10~18の脂肪族炭化水素基が、金属表面と硬化性樹脂組成物の硬化物の界面付近において弾性率の低減、吸水率の低減等が生じるように作用する結果、耐リフロー性が向上することが考えられる。
【0018】
特定フェノールノボラック樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、硬化した状態での金属に対する接着性に優れているため、少なくとも表面の材質が金属(特に、金)であるリードフレームを含むパッケージの封止材として好適である。少なくとも表面の材質が金であるリードフレームとしては、例えば、PPF(Pre Plating Lead Flame)と呼ばれる銅リードフレームにNi-Pd-Auめっきを施したリードフレームが挙げられる。
【0019】
(特定フェノールノボラック樹脂)
特定フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位を含むフェノールノボラック樹脂である。
【0020】
【0021】
一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数10~18の脂肪族炭化水素基を表し、nは1又は2の整数である。
【0022】
特定フェノールノボラック樹脂に含まれる一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位は、すべて同じ構造であっても、互いに異なっていてもよい。特定フェノールノボラック樹脂が、一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位を2種以上含む場合、これらの配置は特に制限されず、規則的に配置されても、不規則に配置されてもよい。
【0023】
ある実施態様では、特定フェノールノボラック樹脂は、一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位としてnが1である構造単位(1価フェノール)と、nが2である構造単位(2価フェノール)とを少なくとも含むものであってもよく、nが1である構造単位(1価フェノール)と、nが2である構造単位として一方の水酸基に対してもう一方の水酸基がメタ位にある構造単位とを少なくとも含むものであってもよい。
【0024】
特定フェノールノボラック樹脂は、一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位として下記一般式(1-1)~一般式(1-3)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位の少なくともひとつを含むものであってもよく、一般式(1-1)~一般式(1-3)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位のすべてを含むものであってもよい。
【0025】
【0026】
一般式(1-1)~一般式(1-3)において、R2は一般式(1)におけるR2と同義である。
【0027】
一般式(1)において、R2で表される炭素数10~18の脂肪族炭化水素基は、炭素数13~16の脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和二重結合を有していても有していなくてもよい。R2で表される炭素数10~18の脂肪族炭化水素基が不飽和二重結合を有する場合、その数は特に制限されず、例えば、1~5であってもよい。R2で表される炭素数10~18の脂肪族炭化水素基は、分岐していても分岐していなくてもよいが、分岐していないことが好ましい。R2で表される炭素数10~18の脂肪族炭化水素基の具体例としては、下記群(A)で表される脂肪族炭化水素基(*は芳香環との結合位置を示す)が挙げられる。特定フェノールノボラック樹脂中のR2で表される炭素数10~18の脂肪族炭化水素基の構造は、同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
【0029】
特定フェノールノボラック樹脂は、一般式(1)で表されるフェノール化合物以外のフェノール化合物に由来する構造単位をさらに含むものであってもよい。一般式(1)で表されるフェノール化合物以外のフェノール化合物としては、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物が挙げられる。
【0030】
【0031】
一般式(2)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、nは1又は2の整数である。一般式(2)で表されるフェノール化合物としては、フェノール、クレゾール等の1価フェノール化合物、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン等の2価フェノール化合物などが挙げられる。
【0032】
ある実施態様では、特定フェノールノボラック樹脂は、一般式(2)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位としてフェノール及びクレゾールのいずれか一方又は両方を含むものであってもよく、フェノール及びオルトクレゾールのいずれか一方又は両方を含むものであってもよい。
【0033】
特定フェノールノボラック樹脂が一般式(1)で表されるフェノール化合物以外のフェノール化合物に由来する構造単位を含む場合、一般式(1)で表されるフェノール化合物に由来する構造単位が特定フェノールノボラック樹脂全体に占める割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
特定フェノールノボラック樹脂を合成する方法は、特に制限されない。例えば、特定フェノールノボラック樹脂の原料となるフェノール化合物と、ホルムアルデヒド等のアルデヒドとを、酸触媒の存在下で反応させることによって合成することができる。
【0035】
特定フェノールノボラック樹脂の分子量は、特に制限されない。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が300~20000の範囲であってもよい。
【0036】
特定フェノールノボラック樹脂の粘度は、特に制限されない。例えば、25℃における粘度が50Pa・s以下であることが好ましく、30Pa・s以下であることがより好ましい。特定フェノールノボラック樹脂の25℃での粘度は、コーン角度3゜、コーン半径14mmのコーンロータを装着したEHD型回転粘度計を25℃で1分間、10回毎分(10rpm)で回転させたときの測定値に所定の換算係数(0.5)を乗じた値(Pa・s)とする。
【0037】
特定フェノールノボラック樹脂の水酸基当量は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0038】
特定フェノールノボラック樹脂は、特定フェノールノボラック樹脂以外の硬化剤と併用することが好ましい。すなわち、硬化性樹脂組成物は、硬化剤として特定フェノールノボラック樹脂と、特定フェノールノボラック樹脂以外の硬化剤とを含むことが好ましい。
【0039】
硬化性樹脂組成物が、硬化剤として特定フェノールノボラック樹脂と、特定フェノールノボラック樹脂以外の硬化剤とを含む場合、硬化性の観点からは、硬化剤全体に占める特定フェノールノボラック樹脂の割合は、当量基準で50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。金属に対する接着性向上の観点からは、硬化剤全体に占める特定フェノールノボラック樹脂の割合は、当量基準で1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。
【0040】
特定フェノールノボラック樹脂以外の硬化剤の種類は特に制限されず、硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。硬化剤の具体例については、後述する。
【0041】
(エポキシ樹脂)
硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の種類は特に制限されず、硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロー性と流動性のバランスの観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるエポキシ樹脂(これらを「特定エポキシ樹脂」と称する)が好ましい。特定エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
エポキシ樹脂が特定エポキシ樹脂を含む場合、特定エポキシ樹脂の性能を発揮する観点からは、その含有率がエポキシ樹脂全体の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0044】
特定エポキシ樹脂の中でも、流動性の観点からは、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂又は硫黄原子含有型エポキシ樹脂がより好ましく、耐熱性の観点からは、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂又はアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
【0045】
ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂の中でもR8のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のR8が水素原子であるYX-4000H(三菱ケミカル株式会社、商品名)、全てのR8が水素原子である4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのR8が水素原子の場合及びR8のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基でそれ以外のR8が水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(三菱ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0046】
【0047】
式(II)中、R8は水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数4~18の芳香族基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0048】
スチルベン型エポキシ樹脂は、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R9のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のR9が水素原子であり、R10の全てが水素原子である場合と、R9のうち3,3’,5,5’位のうちの3つがメチル基であり、1つがt-ブチル基であり、それ以外のR9が水素原子であり、R10の全てが水素原子である場合との混合品であるESLV-210(住友化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0049】
【0050】
式(III)中、R9及びR10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0051】
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂は、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子であり、R12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のR12が水素原子であるYSLV-80XY(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0052】
【0053】
式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0054】
硫黄原子含有型エポキシ樹脂は、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’位がt-ブチル基であり、6,6’位がメチル基であり、それ以外のR13が水素原子であるYSLV-120TE(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0055】
【0056】
式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0057】
ノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子であり、R15がメチル基であり、i=1であるESCN-190、ESCN-195(住友化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0であるN-770、N-775(DIC株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0である部分とi=1であり、R15が-CH(CH3)-Phである部分を有するスチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるYDAN-1000-10C(新日鉄住金化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=1であり、R15がメチル基である部分とi=2であり、R15のうち一つがメチル基で一つがベンジル基である部分を有するベンジル基変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるHP-5600(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0058】
【0059】
式(VI)中、R14は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R15は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0060】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化して得られるエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP-7200(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0061】
【0062】
式(VII)中、R16は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0063】
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂は、トリフェニルメタン骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限されない。例えば、トリフェニルメタン骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のトリフェニルメタン型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、kが0である1032H60(三菱ケミカル株式会社、商品名)、EPPN-502H(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0064】
【0065】
式(VIII)中、R17及びR18は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数、kは各々独立に0~4の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0066】
ナフトール化合物及びフェノール化合物と、アルデヒド化合物とから得られるノボラック樹脂をエポキシ化した共重合型エポキシ樹脂は、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でiが1であり、jが0であり、kが0であるNC-7300(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0067】
【0068】
式(IX)中、R19~R21は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数、jは各々独立に0~2の整数、kは各々独立に0~4の整数を示す。l及びmはそれぞれ平均値であり、0~10の数であり、(l+m)は0~10の数を示す。式(IX)で表されるエポキシ樹脂の末端は、下記式(IX-1)又は(IX-2)のいずれか一方である。式(IX-1)及び(IX-2)において、R19~R21は、i、j及びkの定義は式(IX)におけるR19~R21は、i、j及びkの定義と同じである。nは1(メチレン基を介して結合する場合)又は0(メチレン基を介して結合しない場合)である。
【0069】
【0070】
上記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体等が挙げられる。これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
共重合型エポキシ樹脂としては、下記2種の構造単位をランダム、交互又はブロックの順序で含むメトキシナフタレン・クレゾールホルムアルデヒド共縮合型エポキシ樹脂である、下記の一般式で表されるエピクロンHP-5000(DIC株式会社、商品名)もまた好ましい。下記一般式では、n及びmはそれぞれ平均値であり、0~10の数であり、(n+m)は0~10の数を示し、好ましくはn及びmはそれぞれ平均値であり、1~9の数であり、(n+m)は2~10の数を示す。
【0072】
【0073】
アラルキル型エポキシ樹脂は、フェノール、クレゾール等のフェノール化合物及びナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂と、を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール化合物及びナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はこれらの誘導体とから合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。
【0074】
下記一般式(X)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、R38が水素原子であるNC-3000S(日本化薬株式会社、商品名)、iが0であり、R38が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのR8が水素原子であるエポキシ樹脂を質量比80:20で混合したCER-3000(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、jが0であり、kが0であるESN-175(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0075】
【0076】
式(X)及び(XI)において、R38は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R37、R39~R41は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、lはそれぞれ独立に0~6の整数を示す。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
【0077】
上記一般式(II)~(XI)中のR8~R21及びR37~R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8~88個のR8の全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR9~R21及びR37~R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R8~R21及びR37~R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R9とR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)~(XI)における炭素数1~18の有機基はアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0078】
上記一般式(II)~(XI)中のnは、平均値であり、それぞれ独立に0~10の範囲であることが好ましい。nが10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度が低下し、充填不良、ボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形等の発生が抑制される傾向にある。nは0~4の範囲に設定されることがより好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、硬化性樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
【0081】
硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0082】
(特定フェノールノボラック樹脂以外の硬化剤)
硬化性樹脂組成物に含まれる特定フェノールノボラック樹脂以外の硬化剤の種類は特に制限されず、併用されるエポキシ樹脂の種類、硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。エポキシ樹脂と併用される硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化性及びポットライフの両立の観点からはフェノール硬化剤、アミン硬化剤及び酸無水物硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、電気的信頼性の観点からはフェノール硬化剤がより好ましい。
【0083】
フェノール硬化剤としては、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂及び多価フェノール化合物が挙げられる。具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
フェノール硬化剤の中でも、耐リフロー性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種(これらを「特定フェノール硬化剤」と称する)が好ましい。特定フェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
硬化剤が特定フェノール硬化剤を含む場合、それらの性能を充分に発揮する観点から、特定フェノール硬化剤の含有率は硬化剤全体の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0086】
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等が挙げられる。アラルキル型フェノール樹脂は、更に他のフェノール樹脂と共重合していてもよい。共重合したアラルキル型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0087】
アラルキル型フェノール樹脂は、フェノール化合物及びナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はこれらの誘導体と、から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XII)~(XIV)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
【0088】
【0089】
式(XII)~(XIV)において、R23は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R22、R24、R25及びR28は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R26及びR27は水酸基又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、pはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
【0090】
上記一般式(XII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、R23が全て水素原子であるMEH-7851(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0091】
上記一般式(XIII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であるXL-225、XLC(三井化学株式会社、商品名)、MEH-7800(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0092】
上記一般式(XIV)で表されるフェノール樹脂の中でも、jが0であり、kが0であり、pが0であるSN-170(新日鉄住金化学株式会社、商品名)、jが0であり、kが1であり、R27が水酸基であり、pが0であるSN-395(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0093】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として得られるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XV)で表されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であるDPP(新日本石油化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0094】
【0095】
式(XV)中、R29は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0096】
トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、トリフェニルメタン骨格を有する化合物を原料として得られるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XVI)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
【0097】
下記一般式(XVI)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であるMEH-7500(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0098】
【0099】
式(XVI)中、R30及びR31は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、0~10の数である。
【0100】
ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂は、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として得られるフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XVII)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
【0101】
下記一般式(XVII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であり、qが0であるHE-510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0102】
【0103】
式(XVII)中、R32~R34は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、qはそれぞれ独立に0~5の整数である。l及びmはそれぞれ平均値であり、それぞれ独立に0~11の数である。ただし、lとmの合計は1~11の数である。
【0104】
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール化合物及びナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XVIII)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
【0105】
下記一般式(XVIII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社、商品名)、HP-850N(日立化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0106】
【0107】
式(XVIII)中、R35は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R36は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0108】
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるR22~R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23~R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22~R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22及びR23の全てについて同一でも異なっていてもよく、R30及びR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0109】
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるnは、0~10の範囲であることが好ましい。10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も低くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形が発生し難くなる。1分子中の平均nは0~4の範囲に設定されることが好ましい。
【0110】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0111】
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、硬化性樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0112】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0113】
(硬化促進剤)
硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、硬化性樹脂の種類、硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
【0114】
硬化性及び流動性の観点からは、硬化促進剤はホスホニウム化合物を含むことが好ましい。ホスホニウム化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の三級ホスフィンと、無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラ-p-トリルボレート等のホウ素原子に結合したフェニル基がないテトラ置換ホスホニウム及びテトラ置換ボレート;テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物からプロトンが脱離したアニオンとの塩、テトラ置換ホスホニウムとカルボン酸化合物からプロトンが脱離したアニオンとの塩、などが挙げられる。
【0115】
上記ホスホニウム化合物の中でも、下記一般式(I-1)で表される化合物(以下、特定硬化促進剤とも称する)が好ましい。
【0116】
【0117】
式(I-1)中、R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数1~18の炭化水素基であり、R1~R3のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R4~R7は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1~18の有機基であり、R4~R7のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0118】
一般式(I-1)のR1~R3として記載した「炭素数1~18の炭化水素基」は、炭素数が1~18である脂肪族炭化水素基及び炭素数が6~18である芳香族炭化水素基を含む。
【0119】
流動性の観点からは、炭素数1~18の脂肪族炭化水素基は炭素数1~8であることが好ましく、2~6であることがより好ましく、4~6であることがさらに好ましい。
【0120】
炭素数1~18の脂肪族炭化水素基は、炭素数1~18の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基であっても、炭素数3~18の脂環式炭化水素基であってもよい。製造しやすさの観点からは、直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0121】
炭素数1~18の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、アリル基、ビニル基などが挙げられる。直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基は2以上の置換基を有してもよく、その場合の置換基は同じでも異なっていてもよい。直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合、脂肪族炭化水素基と置換基に含まれる炭素数の合計が1~18であることが好ましい。硬化性の観点からは無置換のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の無置換のアルキル基がより好ましく、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基及びn-オクチル基がさらに好ましい。
【0122】
炭素数3~18の脂環式炭化水素として具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。脂環式炭化水素基は2以上の置換基を有してもよく、その場合の置換基は同じでも異なっていてもよい。脂環式炭化水素基が置換基を有する場合、脂環式炭化水素基と置換基に含まれる炭素数の合計が3~18であることが好ましい。脂環式炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の位置は特に限定されない。硬化性の観点からは無置換のシクロアルキル基が好ましく、炭素数4~10の無置換のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基、シクロペンチル基及びシクロヘプチル基がさらに好ましい。
【0123】
炭素数が6~18である芳香族炭化水素基は炭素数6~14であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。芳香族炭化水素基は置換基を有していても、有していなくてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。芳香族炭化水素基は2以上の置換基を有してもよく、その場合の置換基は同じでも異なっていてもよい。芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、芳香族炭化水素基と置換基に含まれる炭素数の合計が6~18であることが好ましい。芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の位置は特に限定されない。
【0124】
炭素数が6~18である芳香族炭化水素基として具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基における置換基の位置はオルト位、メタ位及びパラ位のうちいずれでもよい。流動性の観点からは、無置換で炭素数が6~12又は置換基を含めた炭素数が6~12のアリール基が好ましく、無置換で炭素数が6~10又は置換基を含めた炭素数6~10のアリール基がより好ましく、フェニル基、p-トリル基及びp-メトキシフェニル基がさらに好ましい。
【0125】
一般式(I-1)のR1~R3として記載した用語「R1~R3のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、R1~R3のうち2個又は3個が結合し、全体としてひとつの2価又は3価の炭化水素基となる場合を意味する。この場合のR1~R3の例としては、リン原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニレン、プロピレニレン、ブチレニレン基等のアルケニレン基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基等の、リン原子と結合して環状構造を形成しうる置換基が挙げられる。これらの置換基はさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0126】
上記一般式(I-1)のR4~R7として記載した「炭素数1~18の有機基」は、炭素数1~18であり、かつ置換されても置換されていなくてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基、アシル基、炭化水素オキシカルボニル基、及びアシルオキシ基を含むことを意味する。
【0127】
上記脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の例としては、R1~R3で表される脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の例として上述したものが挙げられる。
【0128】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、2-ブトキシ基、t-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、これらの脂肪族炭化水素オキシ基がさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されたものなどが挙げられる。
【0129】
上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、これらの芳香族炭化水素オキシ基がさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換されたものなどが挙げられる。
【0130】
上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基等、これらの脂肪族炭化水素カルボニル基又は芳香族炭化水素カルボニル基がさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換されたものなどが挙げられる。
【0131】
上記炭化水素オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、これらの脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基がさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換されたものなどが挙げられる。
【0132】
上記アシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、これらの脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基がさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換されたものなどが挙げられる。
【0133】
上記一般式(I-1)のR4~R7として記載した用語「2以上のR4~R7が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2個~4個のR4~R7が結合し、全体としてひとつの2価~4価の有機基を形成してもよいことを意味する。この場合のR4~R7としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニレン、プロピレニレン、ブチレニレン等のアルケニレン基、メチレンフェニレン等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基などの環状構造を形成しうる置換基、これらのオキシ基又はジオキシ基などが挙げられる。これらの置換基はさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0134】
上記一般式(I-1)のR4~R7としては、特に限定されるものではない。例えば、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアルコキシ基、又は置換又は非置換のアリールオキシ基から選択されることが好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、非置換若しくはアルキル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つで置換されたアリール基、又は鎖状若しくは環状のアルキル基が好ましい。非置換又はアルキル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つで置換されたアリール基としては、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、p-メトキシフェニル基等が挙げられる。鎖状又は環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、t-ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。硬化性の観点からは、R4~R7はすべて水素原子である場合か、又はR4~R7の少なくとも一つが水酸基であり、残りがすべて水素原子である場合が好ましい。
【0135】
一般式(I-1)においてより好ましくは、R1~R3のうち2個以上が炭素数1~18のアルキル基又は炭素数3~18のシクロアルキル基であり、R4~R7がすべて水素原子であるか、少なくとも一つが水酸基であり残りがすべて水素原子である。さらに好ましくは、R1~R3のすべてが炭素数1~18のアルキル基又は炭素数3~18のシクロアルキル基であり、R4~R7がすべて水素原子であるか、少なくとも一つが水酸基であり残りがすべて水素原子である。
【0136】
速硬化性の観点からは、特定硬化促進剤は、下記一般式(I-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0137】
【0138】
式(I-2)中、R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数1~18の炭化水素基であり、R1~R3のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R4~R6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~18の有機基であり、R4~R6のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0139】
一般式(I-2)におけるR1~R6の具体例はそれぞれ一般式(I-1)におけるR1~R6の具体例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0140】
特定硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物、トリ-n-ブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物、トリイソブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物、トリシクロペンチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物等が挙げられる。
【0141】
特定硬化促進剤は、例えば、第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物として得ることができる。
第三ホスフィン化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。成形性の観点からは、トリフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィンが好ましい。
【0142】
キノン化合物として具体的には、o-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4-ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられる。耐湿性と保存安定性の観点からは、p-ベンゾキノンが好ましい。
【0143】
硬化性樹脂組成物は、ホスホニウム化合物以外の硬化促進剤を含んでもよい。
ホスホニウム化合物以外の硬化促進剤として具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物などが挙げられる。
【0144】
硬化性樹脂組成物が硬化促進剤として特定硬化促進剤を含む場合、特定硬化促進剤の含有率は、硬化促進剤全体の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0145】
硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0146】
(無機充填材)
硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含んでもよい。特に、硬化性樹脂組成物を半導体パッケージの封止材として用いる場合には、無機充填材を含むことが好ましい。
【0147】
無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の状態としては粉未、粉末を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。
【0148】
硬化性樹脂組成物が無機充填材を含む場合、その含有率は特に制限されない。流動性及び強度の観点からは、硬化性樹脂組成物全体の30体積%~90体積%であることが好ましく、35体積%~80体積%であることがより好ましく、40体積%~70体積%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有率が硬化性樹脂組成物全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。無機充填材の含有率が硬化性樹脂組成物全体の90体積%以下であると、硬化性樹脂組成物の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
【0149】
無機充填材の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が0.2μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が0.2μm以上であると、モールドアンダーフィル用樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。体積平均粒子径が10μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、体積平均粒径(D50)として測定することができる。
【0150】
硬化性樹脂組成物又はその硬化物中の無機充填材の体積平均粒子径は、公知の方法によって測定することができる。例えば、有機溶剤、硝酸、王水等を用いて、硬化性樹脂組成物又は硬化物から無機充填材を抽出し、超音波分散機などで充分に分散して分散液を調製する。この分散液を用いて、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒径を測定することができる。あるいは、硬化物を透明なエポキシ樹脂等に埋め込み、研磨して得られる断面を走査型電子顕微鏡にて観察して得られる体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒径を測定することができる。更には、FIB装置(集束イオンビームSEM)などを用いて、硬化物の二次元の断面観察を連続的に行い、三次元構造解析を行なうことで測定することもできる。
【0151】
硬化性樹脂組成物の流動性の観点からは、無機充填材の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、また無機充填材の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。
【0152】
[各種添加剤]
硬化性樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含んでもよい。硬化性樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0153】
(カップリング剤)
硬化性樹脂組成物が無機充填材を含む場合は、樹脂成分と無機充填材との接着性を高めるために、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
【0154】
硬化性樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
【0155】
(イオン交換体)
硬化性樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。特に、硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0156】
Mg(1-X)AlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0157】
硬化性樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0158】
(離型剤)
硬化性樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
硬化性樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~15質量部が好ましく、0.1質量部~10質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。15質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
【0160】
(難燃剤)
硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
硬化性樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~300質量部であることが好ましく、2質量部~150質量部であることがより好ましい。
【0162】
(着色剤)
硬化性樹脂組成物は、着色剤をさらに含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0163】
(応力緩和剤)
硬化性樹脂組成物は、シリコーンオイル、シリコーンゴム粒子等の応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系応力緩和剤が好ましい。シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられる。
【0164】
(硬化性樹脂組成物の調製方法)
硬化性樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
【0165】
硬化性樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。硬化性樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。硬化性樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0166】
<電子部品装置>
本開示の一実施形態である電子部品装置は、素子と、前記素子を封止する上述の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、硬化性樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、硬化性樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても硬化性樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0167】
硬化性樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
【実施例】
【0168】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0169】
〔硬化性樹脂組成物の調製〕
下記の材料を表1及び表2に記載の組成(質量部)で混合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、実施例1~15、比較例1~8の硬化性樹脂組成物を調製した。
【0170】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:エポキシ当量196g/eq、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、商品名「YX-4000H」)
エポキシ樹脂2:エポキシ当量282g/eq、軟化点59℃のスチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社、商品名「YDAN-1000-10C」)
エポキシ樹脂3:エポキシ当量250g/eq、軟化点58℃のメトキシナフタレン・クレゾールホルムアルデヒド共縮合型エポキシ樹脂(DIC株式会社、商品名「HP-5000」)
エポキシ樹脂4:エポキシ当量282g/eq、軟化点56℃のビフェニレン骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、商品名「NC-3000」)
【0171】
(比較例の硬化剤)
硬化剤A:水酸基当量176g/eq、軟化点70℃のフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社、商品名「MEH-7800」)
硬化剤B:水酸基当量199g/eq、軟化点89℃のビフェニル骨格型フェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社、商品名「MEH-7851」)
【0172】
(実施例の硬化剤)
特定のフェノールノボラック樹脂1:R2が群(A)で表される脂肪族炭化水素基である一般式(1-1)~一般式(1-3)の混合物である工業用カシューナッツシェルリキッド及びフェノールをホルムアルデヒドにより重縮合した水酸基当量223g/eq、25℃での粘度が19.3Pa・sのノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社、商品名「ELP83H」)
特定のフェノールノボラック樹脂2:R2が群(A)で表される脂肪族炭化水素基である一般式(1-1)~一般式(1-3)の混合物である工業用カシューナッツシェルリキッド、クレゾール及びフェノールをホルムアルデヒドにより重縮合した水酸基当量209g/eq、25℃での粘度が14.0Pa・sのノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社、商品名「ELPC80」)
特定のフェノールノボラック樹脂3:R2が群(A)で表される脂肪族炭化水素基である一般式(1-1)~一般式(1-3)の混合物である工業用カシューナッツシェルリキッド、クレゾール及びフェノールをホルムアルデヒドにより重縮合した水酸基当量204g/eq、25℃での粘度が23.6Pa・sのノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社、商品名「ELPC75」)
特定のフェノールノボラック樹脂4:R2が群(A)で表される脂肪族炭化水素基である一般式(1-1)~一般式(1-3)の混合物である工業用カシューナッツシェルリキッド及びクレゾールをホルムアルデヒドにより重縮合した水酸基当量204g/eq、25℃での粘度が20.2Pa・sのノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社、商品名「ELC75」)
【0173】
(硬化促進剤)
硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物
(無機充填剤)
球状溶融シリカ(体積平均粒子径17.5μm、比表面積3.8m2/g)
(カップリング剤)
エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(着色剤)
カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、商品名「MA-100」)
(離型剤)
カルナバワックス(株式会社セラリカNODA)
【0174】
【0175】
【0176】
[硬化性樹脂組成物の評価]
実施例1~15及び比較例1~8で作製した硬化性樹脂組成物の特性を、次の特性試験により評価した。評価結果を表3及び表4に示す。なお、硬化性樹脂組成物の成形は、明記しない限りトランスファ成形機により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒で成形した。また、必要に応じて後硬化を175℃で5時間の条件で行った。
【0177】
(1)スパイラルフロー
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、硬化性樹脂組成物を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
【0178】
(2)熱時硬度
硬化性樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚み3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計(株式会社上島製作所、HD-1120(タイプD))を用いて測定した。
【0179】
(3)260℃せん断接着力
硬化性樹脂組成物を上記条件で、銅合金板(Pd-PPF)に底面直径4mm、上面直径3mm、高さ4mmのサイズに成形し、上記条件で後硬化した。その後、ボンドテスター(デイジ・ジャパン株式会社、シリーズ4000)を用い、銅板の温度を260℃に保ちながら、せん断速度50μm/sでせん断接着力(MPa)を求めた。
【0180】
(4)吸水率
上記(2)で成形した円板を上記条件で後硬化した。その後、得られた円板を85℃、60%RHの条件下で168時間放置し、放置前後の質量変化を測定した。測定結果から下記式により、吸水率を計算した。
吸水率(質量%)=(放置後の円板質量-放置前の円板質量)/放置前の円板質量×100
【0181】
(5)耐リフロー性
8mm×10mm×0.4mmのシリコンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージ(QFP)(リードフレーム材質:銅合金(Pd-PPF))を、硬化性樹脂組成物を用いて上記条件で成形し、上記条件で後硬化した。得られたパッケージを85℃、60%RHの条件で168時間加湿した。その後、所定温度(250℃、260℃、270℃)、10秒の条件でリフロー処理をそれぞれ行い、パッケージ外部のクラックの有無を目視で、パッケージ内部の剥離発生の有無を超音波探傷装置(日立建機株式会社製、HYE-FOCUS)でそれぞれ観察した。試験パッケージ数(10)に対する、クラック及び剥離のいずれかが発生したパッケージ数の総和で耐リフロー性を評価した。
【0182】
【0183】
【0184】
表3及び表4に示すように、特定のフェノールノボラック樹脂1~4を含有する実施例1~15は、特定のフェノールノボラック樹脂を含有しない比較例1~8に比べ、金属(Pd-PPF)に対する接着力が向上し、耐リフロー性も向上した。