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特許7484104光硬化性粘着シート、画像表示装置用積層体及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】光硬化性粘着シート、画像表示装置用積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240509BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20240509BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
C09J4/06
G02B5/30
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019145636
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2020026529
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2018150436
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 かほる
(72)【発明者】
【氏名】野澤 大希
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227453(JP,A)
【文献】特開2014-189620(JP,A)
【文献】特開2011-209379(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137178(WO,A1)
【文献】特開2014-196442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤以外の架橋剤(B)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上である光硬化性粘着シートであって、
前記光架橋剤(C)が、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、数平均分子量が500以上10万以下のマクロモノマーとビニル単量体とを含有する単量体混合物を重合して得られるグラフト共重合体である、光硬化性粘着シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記架橋剤(B)とが反応して形成された架橋構造、又は、前記架橋剤(B)と前記光架橋剤(C)とが反応して形成された架橋構造、又は、これら両方の架橋構造を有する、請求項1記載の光硬化性粘着シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、親水性の(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマー成分の共重合体である、請求項1又は2に記載の光硬化性粘着シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有しており、粘着シートにおいて、当該官能基と、前記架橋剤(B)の官能基とによる化学的な結合を形成している、請求項1~3の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項5】
前記光架橋剤(C)が多官能モノマーである、請求項1~4の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項6】
光架橋剤(C)が有する、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基と、前記架橋剤(B)の官能基とによる化学的な結合を形成している、請求項1~5の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項7】
前記架橋剤(B)は、イソシアネート系化合物である、請求項1~の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項8】
前記架橋剤(B)は、イソシアネート系化合物であり、イソシアネート基がフェノール化合物、カプロラクタム化合物、オキシム化合物及び活性メチレン化合物の何れか又はこれらの二種類以上からなるブロック剤によって保護されたブロックイソシアネートである、請求項1~の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項9】
前記架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下である、請求項1~の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項10】
前記光架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である、請求項1~の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項11】
(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、化学的架橋構造を有し、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であり、
前記光架橋剤(C)が、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、数平均分子量が500以上10万以下のマクロモノマーとビニル単量体とを含有する単量体混合物を重合して得られるグラフト共重合体である、光硬化性粘着シート。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、親水性の(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマー成分の共重合体である、請求項11に記載の光硬化性粘着シート。
【請求項13】
前記光架橋剤(C)が多官能モノマーである、請求項11又は12に記載の光硬化性粘着シート。
【請求項14】
前記光架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である、請求項1113の何れかに記載の光硬化性粘着シート。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載の光硬化性粘着シートが、2つの画像表示装置用構成部材の間に介在してなる構成を備えた画像表示装置用積層体。
【請求項16】
前記画像表示装置構成部材が、タッチセンサー、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルム、位相差フィルムからなる群のうちの何れか2種類以上の組み合わせからなる積層体であることを特徴とする請求項15に記載の画像表示装置用積層体。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の画像表示装置構成用積層体を備えた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷部などの段差への追従性並びに形状安定性に優れた光硬化性粘着シート並びにこれを用いてなる画像表示装置用積層体及び画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の視認性を向上させるために、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)又はエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を、粘着シートや液状の接着剤等で充填し、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
【0003】
このような画像表示装置用構成部材間の空隙に粘着剤を用いて充填する方法として、例えば特許文献1には、紫外線硬化性樹脂を含む液状の接着樹脂組成物を該空隙に充填した後、紫外線を照射し硬化せしめる方法が開示されている。
【0004】
また、画像表示装置用構成部材間の空隙を、粘着シートを用いて充填する方法も知られている。例えば特許文献2には、透明両面粘着シートの少なくとも片側に、画像表示装置構成部材が積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体の製造方法として、紫外線によって1次架橋した粘着シートを画像表示装置構成部材に貼合後、画像表示装置構成部材を介して粘着シートに紫外線照射し2次硬化させる方法が開示されている。
【0005】
さらに、例えば特許文献3には、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体(A)と、光架橋剤以外の架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する粘着剤樹脂組成物を含む粘着シートを用いて画像表示装置構成部材を貼着後、画像表示装置構成部材を介して活性エネルギー線を照射し、当該粘着樹脂組成物を架橋させて、画像表示装置構成部材を接着させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2010/027041号公報
【文献】特許第4971529号公報
【文献】国際公開2015/137178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像表示装置を構成する表面保護パネルの周縁部には、枠状の隠蔽層が印刷してあることが多く、そのような印刷部を備えた構成部材を貼り合わせるための粘着シートには、印刷部などの段差に追従して隅々まで充填することができる段差追従性が求められると共に、粘着シートに歪や変形が生じないよう、高い流動性が求められる。
【0008】
その一方で、粘着シートの流動性が高すぎると、裁断前の粘着シート巻回体(粘着シートロール)や、裁断したチップ加工品(粘着シート裁断品)の端部から粘着剤が糊はみ出しやすくなる。このため、粘着シートには適度な形状安定性も求められる。
【0009】
さらに、画像表示装置の薄型・軽量化に伴い、表面保護パネルは、従来のガラス板からアクリル板やポリカーボネート板等のプラスチック板に変更されるようになってきている。
表面保護パネルがプラスチック板の場合、例えば該プラスチック板と粘着シートとの積層体は、高温・高湿条件に曝されると、段差近傍に気泡が発生したり、該プラスチック板からアウトガスが発生して、気泡、浮き、剥がれ等が発生したりすることがあるため、被着部材に貼り合わせた後の耐久性も高い必要がある。
【0010】
特に光硬化性粘着シートを用いて被着部材を貼り合わせる場合、被着部材(画像表示装置構成部材)間に光硬化性粘着シートを介在させた状態で、被着部材(画像表示装置構成部材)を通して光線を該光硬化性粘着シートに照射して粘着シートを硬化(架橋)させるため、被着部材に印刷部などがあると、当該印刷部によって光線が十分に該光硬化性粘着シートに到達せず、硬化(架橋)が不十分となり、例えば高温・高湿条件に曝された時に流動したり、発泡したりすることが想定される。
【0011】
そこで本発明は、段差追従性と形状安定性とを兼備するとともに、被着部材に貼り合わせた後の耐久性にも優れており、さらには被着部材に印刷部などの光線遮蔽部があったとしても、流動したり、発泡したりするのを抑えることができる光硬化性粘着シート、並びに、これを用いた画像表示装置用積層体及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤以外の架橋剤(B)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上である光硬化性粘着シートを提案する。
【0013】
本発明はまた、(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、化学的架橋構造を有し、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上である光硬化性粘着シートを提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する光硬化性粘着シートは、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であるから、優れた段差追従性を発揮することができる一方、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記光架橋剤以外の架橋剤(B)とが反応して架橋構造を形成したり、前記光架橋剤以外の架橋剤(B)と光架橋剤(C)とが反応して架橋構造を形成したりして、該粘着シートに架橋構造を持たせることができ、しかもその際、光開始剤(D)は光活性を維持した状態すなわち光硬化性を維持した状態とすることができる。
よって、当該架橋構造により、形状安定性を得ることができるばかりか、被着部材に印刷部などの光線遮蔽部があったとしても、流動したり、発泡したりするのを抑えることができる。
そして、本発明が提案する光硬化性粘着シートを被着部材間に積層して、光照射することにより、当該光硬化性粘着シートを光硬化させることができるから、被着部材に貼り合わせた後の耐久性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<<本粘着シート>>
本発明の実施形態の一例に係る光硬化性粘着シート(「本粘着シート」と称する。)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤以外の架橋剤(B)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物(「本粘着剤組成物」と称する)から形成され、光硬化性両面粘着シートである。
【0017】
本粘着シートは、本粘着剤組成物から形成された層のみからなる単層構成のものであっても、他の層をさらに備えた複層構成のものであってもよい。但し、複層構成の場合、表裏層としての最外層が光硬化性を有する層であることが好ましい。
【0018】
本発明において「光硬化性」とは、光照射によって硬化する性質を意味し、具体的には、例えば波長200nm~780nmの領域のうちのいずれかの波長領域を有する光線を照射することによって硬化する性質を意味し、とりわけ、波長280nm~430nmの領域のうちのいずれかの波長領域を有する光線を照射することによって硬化する性質を有することが好ましい。
【0019】
<本粘着剤組成物>
本粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を主成分樹脂として含み、さらに光架橋剤以外の架橋剤(B)、光架橋剤(C)、光開始剤(D)及び、必要に応じての他の成分を含む組成物である。
【0020】
本発明において「主成分樹脂」とは、各層を形成する樹脂組成物のうち最も質量割合の大きな樹脂を意味し、当該主成分樹脂の機能を妨げない範囲で他の樹脂を含有することを許容する。この際、当該主成分樹脂の含有割合は、各層を構成する樹脂の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートをそれぞれ包括する意味であり、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体を包括する意味である。
【0021】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)>
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、下記式1で示される構造単位を50質量%以上含有する(メタ)アクリル系共重合体であるのが好ましい。
なお、下記式1において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数4~18の直鎖又は分岐状のアルキル基を表す。
【0022】
【化1】
【0023】
上記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、粘着シートとしての柔軟性及び段差吸収性を担保する観点から、上記式1で示される構造単位、いわゆるモノマー成分を50質量%以上含むものが好ましく、同様の観点から、中でも55質量%以上、その中でも60質量%以上含むものが特に好ましい。
【0024】
上記式1で表されるモノマーとしては、例えばn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
上記の中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートの何れか1種以上を含むことが特に好ましい。
【0025】
上記(メタ)アクリル系共重合体は、上記モノマー成分以外の「他の共重合性モノマー」を有するものである。
当該「他の共重合性モノマー」としては、例えば(a)カルボキシル基含有モノマー(以下「共重合性モノマーA」とも称する。)、(b)水酸基含有モノマー(以下「共重合性モノマーB」とも称する。)、(c)アミノ基含有モノマー(以下「共重合性モノマーC」とも称する。)、(d)エポキシ基含有モノマー(以下「共重合性モノマーD」とも称する。)、(e)アミド基含有モノマー(以下「共重合性モノマーE」とも称する。)、(f)ビニルモノマー(以下「共重合性モノマーF」とも称する。)、(g)側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレートモノマー(以下「共重合性モノマーG」とも称する。)、(h)マクロモノマー(以下「共重合性モノマーH」とも称する。)、(i)芳香族含有モノマー(以下「共重合性モノマーI」と称する)や、(j)その他官能基含有モノマー(以下「共重合性モノマーJ」)を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
これらの中でも、架橋構造を形成する観点から、共重合性モノマーA、B及びCが特に好ましい。また、粘着シートの湿熱白化防止及び被着体との接着力を高める観点から、親水性の(メタ)アクリレートモノマーであるのが特に好ましい。
また、上記「他の共重合性モノマー」は、上記(メタ)アクリル系共重合体中に1~30質量%の割合で含むことが好ましく、中でも2質量%以上或いは25質量%以下の割合で含むことがより好ましい。
【0026】
上記共重合性モノマーAとしては、例えば(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシブチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0027】
上記共重合性モノマーBとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
上記共重合性モノマーCとしては、例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノイソプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、N-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
上記共重合性モノマーDとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0030】
上記共重合性モノマーEとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0031】
上記共重合性モノマーFとしては、ビニル基を分子内に有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、アルキル基の炭素数が1~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル類並びに分子内に水酸基、アミド基及びアルコキシルアルキル基等の官能基を有する官能性モノマー類並びにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類並びに酢酸ビニル、N-ビニル-2-ピロリドン、プロピオン酸ビニル及びラウリン酸ビニル等のビニルエステルモノマー並びにスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン及びその他の置換スチレン等の芳香族ビニルモノマーを例示することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
上記共重合性モノマーGとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
上記共重合性モノマーHとしてのマクロモノマーは、末端の官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体であり、重合により(メタ)アクリル酸エステル共重合体となった際に側鎖の炭素数が20以上となるモノマーであるのが好ましい。
【0034】
共重合性モノマーHを用いることにより、グラフト共重合体の枝成分としてマクロモノマーを導入し、(メタ)アクリル酸エステル共重合体をグラフト共重合体とすることができる。例えば、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体(A)とすることができる。
したがって、共重合性モノマーHと、それ以外のモノマーの選択や配合比率によって、グラフト共重合体の主鎖と側鎖の特性を変化させることができる。
【0035】
上記マクロモノマーの骨格成分は、アクリル酸エステル重合体又はビニル系重合体から構成されるのが好ましい。例えば上記側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート、上記共重合性モノマーA、上記の共重合性モノマーB、上記共重合性モノマーG等に例示されるものを挙げることができ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記共重合性モノマーIとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
上記共重合性モノマーJとしては、例えば(メタ)アクリル変性シリコーンや、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート等の含フッ素モノマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0038】
<光架橋剤以外の架橋剤(B)>
本粘着剤組成物が光架橋剤以外の架橋剤(B)を含んでいれば、本粘着シート内に架橋構造を形成することができる。すなわち、架橋剤(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子内に存在する架橋性官能基と反応して、共有結合やイオン結合等の化学的な架橋構造を形成することができる。
【0039】
(イソシアネート系化合物(B1))
次に、このような架橋剤(B)の一例としてのイソシアネート系化合物(「イソシアネート系化合物(B1)」と称する)を中心にして架橋剤(B)について詳述する。
【0040】
イソシアネート基を備えた化合物(「イソシアネート系化合物」と称する)を本粘着剤組成物が含んでいれば、本粘着シート内に架橋構造を形成することができる。すなわち、イソシアネート系化合物(B1)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子内に存在する架橋性官能基と反応して、共有結合やイオン結合等の化学的な架橋構造を形成することができる。
また、光架橋剤(C)が、該イソシアネート系化合物(B1)と反応する官能基、例えば水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有していれば、該イソシアネート系化合物(B1)と該光架橋剤(C)とが反応して化学的な架橋構造を形成することもできる。
【0041】
上記イソシアネート系化合物(B1)としては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート系化合物を挙げることができる。
また、これらのイソシアネート系化合物(B1)とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体等も使用することができる。
とりわけ、ポットライフや、樹脂との相溶性、耐久性に優れる点から脂肪族イソシアネート及びこれらのビウレット体が好ましい。
中でもポットライフを担保する観点からは、イソシアネート基がフェノール化合物、カプロラクタム化合物、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム化合物、活性メチレン化合物及びジメチルピラゾールの何れか又はこれらの二種類以上からなるブロック剤によって保護されたブロックイソシアネートであるのが特に好ましい。
【0042】
本粘着剤組成物に用いることができる架橋剤(B)としては、上記イソシアネート系化合物(B1)の代わりに例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等のエポキシ基含有化合物や、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジンやアミノエチルピペラジン等のエチレンアミン系化合物、アジリジン系化合物、カルボジイミド化合物、トリアジン系化合物、オキセタン基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、尿素系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、過酸化物系架橋剤等を挙げることができる。これらの化合物は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
これらの化合物は、イソシアネート系化合物の代わりに用いることができるから、以下の説明におけるイソシアネート系化合物は、これらの化合物に置き換ることができる。
【0043】
上記イソシアネート系化合物(B1)の含有量は、少なすぎると、イソシアネート系化合物を添加した効果を得ることができない一方、多過ぎると、粘着樹脂組成物のポットライフが低下したり、粘着シートとしての柔軟性が損なわれたりする。かかる観点から、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下、中でも0.05質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは3質量部以下の割合であるのが好ましい。イソシアネート系化合物(B1)以外の架橋剤(B)についても、同様であり、このように読み替えることができる。
【0044】
<光架橋剤(C)>
光架橋剤は、光による反応により、本粘着シートに架橋構造を形成させることができる化合物である。
光架橋剤(C)としては、光重合性化合物を挙げることができ、より具体的には、分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物、とりわけ、分子内に炭素-炭素二重結合を有するモノマー成分やオリゴマー成分を挙げることができる。中でも、分子内に炭素-炭素二重結合を2つ以上有する多官能モノマーが好ましい。
多官能モノマーを用いることで、多官能モノマー同士が化学的に結合して3次元網目構造からなる化学的な架橋構造を形成するばかりか、この3次元網目構造に鎖状の(メタ)アクリル系共重合体が絡み合うことで、ポリマーの動きが拘束されて物理的な凝集構造すなわち物理的な架橋構造を形成することもできる。
【0045】
上記多官能モノマーとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能(メタ)アクリル系モノマーの他、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル系オリゴマーを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
上述のように架橋剤(B)の官能基、例えばイソシアネート系化合物(B1)と反応して化学的な架橋構造を形成する観点から、光架橋剤(C)は、イソシアネート系化合物(B1)と反応する官能基、例えば水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する化合物、より具体的には、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
このような官能基を有する多官能(メタ)アクリレートは、当該官能基と、架橋剤(B)の官能基、例えばイソシアネート系化合物(B1)のイソシアネート基とによる化学的な結合を形成することができ、粘着シートの凝集力を高めることができるばかりか、保管安定性及び形状安定性を向上させることもできる。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばグリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル化合物に(メタ)アクリル酸を付加させた各種エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0047】
粘着樹脂組成物は、前記多官能モノマーの他に、単官能モノマーをさらに含有してもよい。単官能モノマーを含有することにより、粘着シートの粘弾性挙動を調整したり、被着体との親和性向上や、湿熱白化抑制の効果を向上させたりすることができる。
このような単官能モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートの他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等を挙げることができる。
中でも、湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0048】
また、前記単官能(メタ)アクリレートが、架橋剤(B)の官能基、例えばイソシアネート系化合物(B1)のイソシアネート基と反応する官能基、例えば水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する化合物であれば、粘着樹脂組成物の凝集力を高めることができることから、好ましい。
【0049】
光架橋剤(C)の含有量は、少なすぎると、光架橋剤を添加した効果すなわち必要な架橋度を得ることができない一方、多過ぎると、光架橋前の状態で光架橋剤がブリードしたり、物理的架橋の凝集力が不足しがちになったり、光架橋後の粘着シートが硬くなりすぎて段差吸収性が損なわれたりする。かかる観点から、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.5~50質量部、中でも1質量部以上或いは40質量部以下、その中でも5質量部以上或いは30質量部以下の割合であるのが好ましい。
【0050】
<光開始剤(D)>
光開始剤(D)は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光開始剤と、に大別される。
上記光開始剤(D)としては、開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれであってもよく、それぞれ単独に使用しても両者を混合して使用してもよく、さらに、各々について1種又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0052】
水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイル蟻酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノンやその誘導体などを挙げることができる。
【0053】
上記光開始剤(D)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1~10質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
【0054】
<その他の成分>
本粘着剤組成物は、上記以外の成分として、例えば、必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、シランカップリング剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0055】
<架橋構造>
本粘着シートは、架橋構造を有することが好ましい。
本粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記光架橋剤以外の架橋剤(B)とが反応して架橋構造を形成したり、光架橋剤以外の架橋剤(B)と光架橋剤(C)とが反応して架橋構造を形成したりして、本粘着シート内に架橋構造を形成することができ、しかもその際、光開始剤(D)は光活性を維持した状態すなわち光硬化性を維持した状態とすることができる。
本粘着シートは、架橋構造を有することにより、形状安定性を得ることができるばかりか、被着部材に印刷部などの光線遮蔽部があったとしても、流動したり、発泡したりするのを抑えることができる。
【0056】
前記架橋構造は、物理的な架橋構造及び/又は化学的な架橋構造であることが好ましい。
前記の物理的な架橋構造とは、ポリマー鎖が化学結合を介して架橋しているのではなく、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間の水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力等の相互作用による非共有結合によって(疑似)架橋することをいう。他方、前記の化学的な架橋構造とは、ポリマー鎖が化学的な共有結合を介して架橋していることをいう。
一方、物理的な架橋構造とは、ポリマー鎖が化学結合を介して架橋しているのではなく、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間の水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力等の相互作用による非共有結合によって(疑似)架橋することをいう。
本粘着シートにおいては、形状保持性により優れるため、架橋構造は、化学的架橋構造であることがより好ましい。
【0057】
物理的な架橋構造は、温度や圧力等によりポリマー鎖間の相互作用が弱くなり、温度の上昇等により流動性が高くなる。他方、化学的な架橋構造は、このような流動性を制御することができる。
【0058】
物理的な架橋構造を形成するためには、例えば枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体などのように、ミクロ相分離構造をとる(メタ)アクリル系共重合体(A)を選択したり、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体のように、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間の相互作用による非共有結合によって(疑似)架橋するような(メタ)アクリル系共重合体(A)を選択したりして、物理的な架橋構造を形成する方法を挙げることができる。また、光架橋剤(C)として多官能モノマーを用いれば、多官能モノマー自体が架橋して3次元網目構造をとり、この3次元網目構造に鎖状の(メタ)アクリル系共重合体が絡み合うことで物理的な架橋構造を形成する方法もできる。但し、これらの方法に限定するものではない。
ちなみに、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)として、前記グラフト共重合体を用いることで、室温状態では、親和性の高い幹成分同士や枝成分同士が引き寄せ合って(メタ)アクリル系共重合体がミクロ相分離構造をとり、樹脂組成物(粘着剤)として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、形状を保持することができる。
【0059】
なお、本発明においては、ミクロ相分離構造を解析することによって、マクロモノマーによる物理的な架橋構造を形成しているか否かを判断することができる。具体的には、国際公開公報2018/101252号公報に記載されているように、小角X線散乱測定における1次元散乱プロファイルの半値幅X1を測定し、例えば、当該半値幅X1(nm-1)が0.05<X1<0.30であれば、物理的な架橋構造を形成していると判断することができる。
ただし、物理的架橋構造を有しているか否かの判断方法は、上記の方法に限定するものではない。
【0060】
他方、化学的な架橋構造を形成するためには、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子内に存在する架橋性官能基と反応して、共有結合やイオン結合等の化学的な架橋構造を形成する架橋剤を使用する方法、水素引抜型光開始剤を用いて(メタ)アクリル系共重合体(A)から水素を引抜いて反応起点を形成し、(メタ)アクリル系共重合体(A)のポリマー内及び/又はポリマー間や、他の組成成分と架橋構造を形成する方法、さらには、アミノ基、水酸基及びカルボキシル基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する光架橋剤(C)とりわけ、該官能基を有する多官能モノマーと、該官能基と反応する官能基を有する他の架橋剤、例えば架橋剤(B)、中でもイソシアネート系化合物(B1)とを組み合わせて化学的な架橋構造を形成する方法、さらには、前記光架橋剤(C)の前記官能基と、架橋剤(B)の官能基、例えばイソシアネート系化合物(B1)のイソシアネート基とを反応させて該光架橋剤同士による化学的な架橋構造を形成する方法などを挙げることができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0061】
このように本粘着シート内に架橋構造を形成する観点からは、(メタ)アクリル系共重合体(A)の好ましい例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体、例えば数平均分子量が500以上10万以下のマクロモノマーとビニル単量体とを含有する単量体混合物を重合して得られるグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体を挙げることができる。これらは、本粘着シート内に物理的架橋構造を形成することができる点で好ましい。
また、架橋剤(B)の官能基、例えばイソシアネート基を有する化合物と反応して化学的な架橋構造を形成できる、アミノ基、水酸基及びカルボキシル基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)は、本粘着シート内に化学的な架橋構造を形成することができる点で好ましい。
【0062】
また、上述のように架橋剤(B)と反応して化学的な架橋構造を形成する観点からすると、架橋剤(B)としてイソシアネート化合物(B1)を使用した場合、光架橋剤(C)としては、イソシアネート系化合物(B1)と反応する官能基、例えば水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する化合物を含有するものであるのが好ましい。
【0063】
中でも、前記多官能モノマーが、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基とイソシアネート基とによる化学的な結合を有するものであれば、粘着組成物の凝集力を高めることができることから、好ましい。
このような多官能モノマーとしては、例えばグリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル化合物に(メタ)アクリル酸を付加させた各種エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0064】
本発明においては、ゲル分率を測定することで、光硬化性粘着シートが化学的架橋構造を有しているか否かを判断することができる。例えば、光硬化性粘着シートのゲル分率が5%以上、好ましくは10%以上であれば、そのシートは架橋構造を有すると判断することができる。ただし、化学的架橋構造を有しているか否かの判断方法は、このようなゲル分率測定による方法に限定するものではない。
【0065】
この際、ゲル分率は下記1)~4)の手順によって測定できる。
1)粘着剤組成物を秤量し(W1)、予め重さを測った200メッシュのSUSメッシュ(W0)に包む。
2)上記SUSメッシュを100mLの酢酸エチルに24時間浸漬する。
3)SUSメッシュを取り出し、75℃で4時間半乾燥する。
4)乾燥後の重量(W2)を求め、下記式より粘着剤組成物のゲル分率を測
定する。
ゲル分率(%)=100×(W2-W0)/W1
【0066】
<形状保持性と光硬化性>
本粘着シートは、形状を保持した状態で光硬化性を有することが好ましい。
このように、本粘着シートが、形状を保持した状態で光硬化性を有するようにするためには、本粘着シートが一度硬化(仮硬化)された状態で形状保持されており、且つ、光硬化(活性)性を有する場合(「態様(1)」と称する)と、本粘着シートが一度も硬化されていない未硬化状態で形状保持されていて、且つ、光硬化(活性)性を有する場合(「態様(2)」と称する)とを挙げることができる。
【0067】
上記態様(1)としては、本粘着シートの製造時において、仮硬化(1次架橋)して形状保持して、且つ、光硬化(活性)性を具備した状態とする方法を挙げることができる。
【0068】
上記態様(1)の具体例としては、式1で表される構造単位を50質量%以上含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)として、架橋剤(B)としてイソシアネート化合物(B1)を使用した場合、イソシアネート系化合物(B1)のイソシアネート基と反応する官能基(i)、例えば水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)を使用すればよい。より具体的には、該(メタ)アクリル系共重合体(A)が、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー又は窒素原子含有(メタ)アクリレートモノマーの何れかを含むモノマー成分の共重合体であればよい。
これにより、(メタ)アクリル系共重合体(A)中の官能基(i)と、イソシアネート化合物(B1)中のイソシアネート基(ii)が反応し、化学的な結合が形成されることで硬化(架橋)して、粘着層が形成される。このようにして粘着層を形成することで、光架橋剤(C)及び光開始剤(D)が活性を有したまま粘着層中に存在することができる。
なお、この際、光開始剤(D)としては、上述した開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれを使用してもよい。
【0069】
また、上述した光架橋剤(C)として、アミノ基、水酸基及びカルボキシル基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有する光架橋剤を使用すれば、架橋剤(B)としてイソシアネート化合物(B1)を使用した場合、該光架橋剤(C)の該官能基が、イソシアネート系化合物(B1)のイソシアネート基と反応し、化学的な結合が形成されることで硬化(架橋)して粘着層が形成される。
とりわけ、該光架橋剤(C)として、上記官能基の他に分子内に炭素-炭素二重結合を有する光重合性化合物を使用して粘着層を形成することで、該光架橋剤(C)及び光開始剤(D)が活性を有したまま粘着層中に存在することができる。
【0070】
また、架橋剤(B)としてイソシアネート化合物(B1)を使用した場合、上記イソシアネート系化合物(B1)は、さらに(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性官能基を有していてもよい。
これにより、該ラジカル重合性官能基による、(メタ)アクリル系共重合体(A)の光硬化(架橋)性を維持したまま粘着剤層を形成することができる。
この際、イソシアネート系化合物(B1)としては、例えば2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が特に好適な例である。
このように、該ラジカル重合性官能基による(メタ)アクリル系共重合体(A)同士の架橋反応を利用することにより、光硬化(架橋)後の凝集力が効率よく上がりやすく信頼性に優れる等の利点があるため、より好ましい。
【0071】
他方、上記態様(2)の具体例としては、例えば(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー成分として、マクロモノマーを利用する方法を挙げることができる。より具体的に言えば、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体を利用する方法を挙げることができる。このようなマクロモノマーを利用することで、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って樹脂組成物(粘着剤)として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、未硬化(架橋)のままでシート形状を保持させることができ、また、光開始剤(D)を、活性を有したまま本粘着シート中に存在させることができる。
なお、この際、光開始剤(D)としては、上述した開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれを使用してもよい。
【0072】
以上を総合して、本粘着シートの特に好ましい形態として、次の実施形態1~3を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0073】
好ましい本粘着シートの実施形態1としては、上記の式1で表される構造単位を50質量%以上含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、イソシアネート系化合物(B1)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であって、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー又は窒素原子含有(メタ)アクリレートモノマーの何れかを含むモノマー成分の共重合体であり、かつ、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基の何れかと該イソシアネート系化合物(B1)が有するイソシアネート基とによる化学結合が形成されている粘着シートを挙げることができる。この粘着シート中には、活性を有する状態で、前記光架橋剤(C)及び光開始剤(D)を存在させることができる。
【0074】
好ましい本粘着シートの実施形態2としては、上記の式1で表される構造単位を50質量%以上含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、イソシアネート系化合物(B1)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であって、前記光架橋剤(C)は、分子内に水酸基、カルボキシル基又はアミノ基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基と炭素-炭素二重結合を有し、かつ、該官能基と該イソシアネート系化合物(B1)が有するイソシアネート基による化学結合が形成されている粘着シートを挙げることができる。この粘着シート中には、活性を有する状態で、前記光架橋剤(C)及び光開始剤(D)を存在させることができる。
また、上記実施形態において、とりわけ、光架橋剤(C)は、水酸基を有する多官能モノマーであることが好ましい。
【0075】
好ましい本粘着シートの実施形態3としては、上記の式1で表される構造単位を50質量%以上含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)、イソシアネート系化合物(B1)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物から形成され、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であって、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー又は窒素原子含有(メタ)アクリレートモノマーの何れかを含むモノマー成分の共重合体であり、前記光架橋剤(C)は、アミノ基、水酸基又はカルボキシル基からなる群から選択される何れか1つ以上の官能基を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)間による架橋構造を有する粘着シートを挙げることができる。この粘着シート中には、活性を有する状態で、前記光架橋剤(C)及び光開始剤(D)を存在させることができる。
また、上記実施形態において、とりわけ、光架橋剤(C)は、水酸基を有する多官能モノマーであることが好ましい。
【0076】
さらに、上記実施形態において、とりわけ、(メタ)アクリル系共重合体(A)が、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基の何れかと該イソシアネート系化合物(B1)が有するイソシアネート基による化学結合を有していることが好ましく、さらに、光架橋剤(C)が有する官能基と該イソシアネート系化合物(B1)が有するイソシアネート基による化学結合を有していることが好ましい。
【0077】
<厚さ>
本粘着シートの厚さとしては、20μm~1mmの範囲であることが好ましく、中でも50μm以上或いは600μm以下、その中でも75μm以上或いは500μm以下であることが特に好ましい。
【0078】
<本粘着シートの製造方法>
本粘着シートを製造する方法の一例について説明する。
先ず、光硬化性粘着剤組成物を調製する。より具体的には、(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤以外の架橋剤(B)、光架橋剤(C)、光開始剤(D)、さらにその他の材料等を、それぞれ所定量混合して光硬化性粘着剤組成物を調製する。
【0079】
これらの混合方法としては、特に制限されず、各成分の混合順序も特に限定されない。また、組成物製造時に熱処理工程を入れてもよく、この場合は、予め、該樹脂組成物の各成分を混合してから熱処理を行うことが望ましい。
また、各種の混合成分を濃縮してマスターバッチ化したものを使用してもよい。
混合する際の装置も特に制限されず、例えば万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。必要に応じて溶剤を用いて混合してもよい。
【0080】
なお、前記光硬化性粘着剤組成物は、溶剤を含まない無溶剤系として使用することできる。無溶剤系として使用することで溶剤が残存せず、耐熱性及び耐光性が高まるという利点を備えることができる。
【0081】
上記塗布(塗工)方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法を挙げることができる。
【0082】
本粘着シート内に架橋構造を形成する方法としては、上記(メタ)アクリル系共重合体として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体を使用した場合には、(メタ)アクリル系共重合体中の主鎖同士及び/又はグラフト鎖成分同士が水素結合や制電相互作用、ファンデルワールス力などの相互作用によって凝集することで、粘着シート内に物理的架橋構造を形成することができる。
他方、架橋剤(B)を反応させて架橋構造を形成する場合には、適宜加熱するか、又は、一定期間養生させることで粘着シート内に化学的な架橋構造を形成すればよい。
【0083】
また、光を照射して、光硬化性を残しつつ、上記光硬化性樹脂組成物を光硬化させて、本粘着シート内に架橋構造を形成することもできる。
但し、光硬化性を有するように、言い換えれば光開始剤(D)が光活性を残存するように、例えば本粘着シートのゲル分率を0~60%となるように、配合する光重合開始剤の種類や照射する光の波長域、光量や光の強度などを調整するのが好ましい。
【0084】
<本粘着シートの物性>
(損失正接(Tanδ))
本粘着シートは、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であることが好ましく、中でも0.95以上或いは3.0以下、その中でも1.0以上或いは2.5以下であるのがさらに好ましい。
一般に高分子材料は粘性的性質と弾性的性質を兼ね備えており、Tanδが0.9以上、更にその値が大きくなるほど粘性的性質が強くなる。
したがって、本粘着シートが、このような特性を有することにより、高い流動性を有する。
【0085】
本粘着シートが上記の特性を有するためには、本粘着シートを、上記の光硬化性樹脂組成物から形成すればよい。
具体的には、架橋構造を発生する原因となる原料、例えば架橋剤、(メタ)アクリレートモノマーなどの種類や量を調整することで、90℃の時に本粘着シートが分子レベルで流動性を有するように、複雑な架橋構造をとらないように、調製するのが好ましい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0086】
(光線透過率及びヘーズ)
本粘着シートは、画像表示装置の構成部材として用いるなど光学用途に用いる観点から、全光線透過率(JIS K7361-1)が80%以上であり、且つヘーズ(JIS K7136)が5%以下であることが好ましい。
かかる観点から、本粘着シートの全光線透過率は80%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。また、本粘着シートのヘーズは5%以下であるのが好ましく、2%以下であるのがより好ましい。
【0087】
(保持力耐久性)
本粘着シートは、1N/cmの負荷をかけて40℃で保持力を測定したときの落下時間が60分以上であるのが好ましい。
本粘着シートがこのような物性を有することにより、保管安定性や高い作業性を得られるという利点がある。
以上の観点から、中でも60分経過後のズレ長さが10mm以下であるのがさらに好ましく、その中でも5mm以下、その中でも3mm以下であるのがより好ましい。
【0088】
また、本粘着シートは、1N/cmの負荷をかけて60℃で保持力を測定したときの落下時間が60分以内であるのが好ましい。
本粘着シートがこのような物性を有することにより、被着体への濡れ性に優れ、高い段差吸収性を発現する等の利点があり、また、このような物性を有することにより、ホットメルト貼合にも適用することができる。
【0089】
(剥離強度)
本粘着シートは、光照射前のガラスに対する180°剥離強度が1N/cm以上であることが好ましく、2N/cm以上であることがより好ましい。
本粘着シートが、このような物性を有することにより、本粘着シートを被着体に貼り合せる際の位置決めが容易となるなどの利点がある。
【0090】
また、本粘着シートは、本粘着シートをガラスに貼着し、積算光照射量として2000mJ/mの光を照射した際の、ガラスに対する180°剥離強度が3N/cm以上となることが好ましく、4N/cm以上となることがより好ましい。
本粘着シートが、このような物性を有することにより、高い耐久性を有するなどの利点がある。
本粘着シートが、このような物性を有するには、上記の光硬化性樹脂組成物から形成すればよい。
【0091】
<<別の形態>>
本発明の実施形態の他例に係る光硬化性粘着シート(「本粘着シート2」と称する。)として、(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)を含む光硬化性粘着剤組成物(「本粘着剤組成物2」と称する)から形成され、化学的架橋構造を有し、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上である光硬化性粘着シートを挙げることができる。
【0092】
この際、本粘着剤組成物2における(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)については、前述した本粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体(A)、光架橋剤(C)、及び、光開始剤(D)と同様である。
また、前述及び後述する本粘着剤組成物及び本粘着シートの説明は、本粘着剤組成物2及び本粘着シート2について置き換えることができる。
【0093】
<<本粘着シート積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る粘着シート積層体(以下「本粘着シート積層体」とも称する)は、本粘着シートと離型フィルムとを積層してなる構成を備えた粘着シート積層体である。
【0094】
かかる離型フィルムの材質としては、公知の離型フィルムを適宜用いることができる。例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等のフィルムに、シリコーン樹脂を塗布して離型処理したものや、離型紙などを適宜選択して用いることができる。
【0095】
本粘着シートの両側に離型フィルムを積層する場合、一方の離型フィルムは、他方の離型フィルムと同じ積層構成乃至材料のものであっても、異なる積層構成乃至材料のものであってもよい。
また、同じ厚さであっても、異なる厚さであってもよい。
また、剥離力の異なる離型フィルムや厚さの異なる離型フィルムを本粘着シートの両側に積層することができる。
【0096】
上記離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、25μm~500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上或いは250μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0097】
なお、本粘着シートは、上記のように被着部材や離型フィルムを使用せずに、例えば上記樹脂組成物を直接に押出成形する方法や、型に注入することによって成形する方法を採用することもできる。
さらには、被着部材である画像表示装置用構成部材間に上記樹脂組成物を直接充填することによって、本粘着シートの態様とすることもできる。
【0098】
<<本画像表示装置用積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る画像表示装置用積層体(「本画像表示装置用積層体」と称する)は、本粘着シートが、2つの画像表示装置用構成部材の間に介在してなる構成を備えた画像表示装置用積層体である。
【0099】
本画像表示装置構成部材としては、例えばタッチセンサー、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルム、位相差フィルムからなる群のうちの何れか2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
本画像表示装置用積層体の具体例としては、例えば離型フィルム/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成を挙げることができる。
【0100】
上記タッチパネルとしては、保護パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体や、画像表示パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体も含む。
よって、本積層体は、例えば離型フィルム/本粘着シート/保護パネル、離型フィルム/本粘着シート/画像表示パネル、画像表示パネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成であってもよい。
また、上記の構成において、本粘着シートと、これと隣接するタッチパネル、保護パネル、画像表示パネル、偏光フィルム等の部材との間に前記の導電層を介入する全ての構成を挙げることができる。但し、これらの積層例に限定されるものではない。
【0101】
なお、上記タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式等の方式のものが挙げられる。中でも静電容量方式であることが好ましい。
【0102】
上記保護パネルの材質としては、ガラスの他、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー等の脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等のプラスチックであってもよい。
【0103】
画像表示パネルは、偏光フィルムその他位相差フィルム等の他の光学フィルム、液晶材料及びバックライトシステムから構成される(通常、粘着層形成組成物又は粘着物品の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる。)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。
【0104】
本画像表示装置用積層体は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどの画像表示装置の構成部材として使用することができる。
【0105】
<<本画像表示装置>>
本発明の実施形態の一例に係る画像表示装置(「本画像表示装置」と称する)は、本画像表示装置用積層体を備えるものである。
本画像表示装置の具体例としては、本画像表示装置用積層体を備えた液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイを挙げることができる。
【0106】
<<語句の説明>>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0107】
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例
【0108】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0109】
[実施例1]
(メタ)アクリル系共重合体として、メタクリル酸メチルからなる、末端官能基がメタクリロイル基のマクロモノマー(数平均分子量:3,000)15質量部、ブチルアクリレート86質量部、及び。アクリル酸4質量部をランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-1、質量平均分子量:25万)1kgに対し、ブロックイソシアネート化合物(B-1、旭化成社製「MF-B60B」)を20gと、光架橋剤として、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(C-1、新中村化学社製「NKエステルATM-4PL」)150g、光開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと、4-メチルベンゾフェノンとの混合物(D-1、IGM社製「Esacure TZT」)15gを添加し、均一混合して、粘着剤組成物1を得た。
【0110】
次に、前記粘着剤組成物1を、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRV(V08)」、厚さ100μm)上に、厚さ120μmとなるようシート状に成形した後、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を被覆した。これを120℃で30分加熱した後、室温で1週間養生してイソシアネートを架橋し、粘着シート1を作製した。
粘着シート1は、イソシアネートによる化学的な架橋構造を有する粘着シートであって、さらに光を照射することにより硬化(架橋)する光硬化性を備えた粘着シートであった。
【0111】
[実施例2]
イソシアネート化合物(B-1)を40gとした以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物2及び粘着シート2を作成した。
粘着シート2も、イソシアネートによる化学的な架橋構造を有する粘着シートであって、さらに光を照射することにより硬化(架橋)する光硬化性を備えた粘着シートであった。
【0112】
[実施例3]
イソシアネート化合物(B-1)を80gとした以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物3及び粘着シート3を作成した。
粘着シート3も、イソシアネートによる化学的な架橋構造を有する粘着シートであって、さらに光を照射することにより硬化(架橋)する光硬化性を備えた粘着シートであった。
【0113】
[実施例4]
(メタ)アクリル系共重合体として、イソボルニルメタクリレート:メタクリル酸メチル=1:1からなる、末端官能基がメタクリロイル基のマクロモノマー(数平均分子量3,000)14.8質量部、2-エチルヘキシルアクリレート73.3質量部、メチルアクリレート8.8質量部、及び、アクリルアミド3.1質量部をランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-2、質量平均分子量:25万)1kgに対し、ブロックイソシアネート化合物(B-1、旭化成社製「MF-B60B」)を20gと、光架橋剤(C-2)として、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製「A9570W」)125g及びペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(新中村化学社製 A-TMM3-L)25g、光開始剤(D-2)として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドと、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)と、2,4,6トリメチルベンゾフェノンと、4-メチルベンゾフェノンとの混合物(IGM社製 Esacure KTO46)20gを添加し、均一混合して、粘着剤組成物4を得た。
【0114】
次に、前記粘着剤組成物4を、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRV(V08)」、厚さ100μm)上に、厚さ120μmとなるようシート状に成形した後、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を被覆した。これを120℃で30分加熱した後、室温で1週間養生してイソシアネートを架橋し、粘着シート4を作製した。
粘着シート4も、イソシアネートによる化学的な架橋構造を有する粘着シートであって、さらに光を照射することにより硬化(架橋)する光硬化性を備えた粘着シートであった。
【0115】
[実施例5]
イソシアネート化合物(B-1)を80gとした以外は、実施例4と同様に粘着剤組成物5及び粘着シート5を作製した。
粘着シート5も、イソシアネートによる化学的な架橋構造を有する粘着シートであって、さらに光を照射することにより硬化(架橋)する光硬化性を備えた粘着シートであった。
【0116】
[比較例1]
イソシアネート化合物を用いない以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物6及び粘着シート6を作製した。
【0117】
[比較例2]
粘着剤組成物7としてのアクリル系粘着剤(綜研化学(株)製「SKダイン1882」;硬化剤の添加割合は奨励配合)を、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRV(V08)」上に、乾燥後の厚さが30μmとなるようシート状に成形して粘着層を形成した。この粘着層を、ハンドローラーを用いて4枚重ねた後、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を被覆した。
温度60℃、0.2MPa、20分の条件でオートクレーブ処理して、常温で1週間養生して架橋剤を反応させ、粘着シート7を作製した。
【0118】
[比較例3]
ブチルアクリレート72質量部、2-エチルヘキシルアクリレート26質量部、及び、アクリル酸2質量部をランダム共重合してなるアクリル系共重合体(A-3、質量平均分子量:49万)1kgに対し、多官能モノマーとして、ノナンジオールジアクリレート(C-3、大阪有機化学社製「ビスコート260」)60g、光開始剤として、2,4,6トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンとの混合物(D-1、IGM社製 Esacure TZT)10gを添加し、均一混合して、粘着層形成組成物8を得た。
【0119】
次に、前記粘着剤組成物8を、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRV(V08)」、厚さ100μm)上に、厚さ120μmとなるようシート状に成形した後、表面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を被覆した。
高圧水銀ランプを用いて、離型フィルムを介して波長365nmの積算光量が2000mJ/cmとなるよう粘着シートに光照射して粘着組成物を光硬化して、粘着シート8を作製した。
【0120】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各シート等について、次のとおり、評価した。
評価結果を表1に示した。
【0121】
(1)粘度測定
粘着シート1~8について、離型フィルムを剥がし、粘着シートを重ねて厚さを1mm以上とした。次に、レオメーター(英弘精機株式会社製「MARS」)を用いて、粘着治具:Φ20mmパラレルプレート、歪み:0.5%、周波数1Hz、昇温速度:3℃/minの条件で動的粘弾性測定を行い、温度90℃での損失正接(Tanδ)を測定した。
【0122】
(2)光学特性
実施例及び比較例で作製した粘着シート1~8について、一方の離型フィルムを剥がし、露出した粘着面に82mm×53mm、厚さ0.55mmのソーダライムガラスにハンドローラーにて貼着した。
残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面に、82mm×53mm、厚さ0.55mmのソーダライムガラスをハンドローラーで貼り合せて、光学特性評価用サンプルを作製した。
ヘーズメータ(日本電色工業社製「NDH5000」)を用いて、JIS K7136に準拠してヘーズ、及びJIS K7361-1に準拠して全光線透過率を測定した。
【0123】
(3)形状安定性
実施例及び比較例で作製した粘着シート1~8について、一方の離型フィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)側から、他方の離型フィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRV(V08)」、厚さ100μm)を貫通しないように、粘着シートを30mm×30mmの正方形状にハーフカットした。
裁断された一方の離型フィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRQ」、厚さ75μm)を剥離して、露出した粘着面に、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ50μm)を被覆した。
両側の剥離フィルムを50mm×50mmに裁断し、光硬化前の形状安定性評価用サンプルを作製した。
前記形状安定性評価用サンプルを、温度40℃、湿度90%の環境下で300時間養生し、養生後の粘着シートの端面の糊はみ出し量を観察した。
糊はみ出しの量は、裁断した養生後の粘着シートについて、各辺の中央部における糊はみ出し距離を測定し、4辺の平均距離を糊はみ出し量(mm)とした。
【0124】
養生後に粘着シートがつぶれ、糊はみ出し量が1mm以上であったものを「×(poor)」、糊はみだしが見られたが、1mm未満であったものを「○(good)」と判定した。
なお、表中の「<0.1mm」は、糊はみ出し量が0.1mm未満で、ほとんど糊はみ出しのない状態を指す。
【0125】
(4)段差吸収性
58mm×110mm×厚さ0.8mmのガラスの周縁部(長辺側3mm、短辺側15mm)に、厚さ30~35μmの印刷を施し、中央の凹部が52mm×80mmの印刷段差付ガラス板を準備した。
実施例及び比較例で得られた粘着シート1~8について、53mm×81mmの寸法にカットした。一方の離形フィルムを剥がし、ソーダライムガラス(54mm×82mm×厚さ0.5mm)にロール貼合した後、残るもう一方の離形フィルムを剥がし、前記印刷段差付きガラス板の額縁状の印刷段差の全周に、粘着シートがかかるようにして真空プレスを用いて真空圧着(温度25℃、プレス圧0.13MPa、プレス時間1分)して評価サンプルを作製した。
【0126】
評価サンプルを、40℃、0.2MPa、20分の条件でオートクレーブ処理した後、下記の評価基準で合否を判定した。
○(good):段差周辺部に、浮きや微小気泡が全く見られない
×(poor):段差周辺部に、浮きや微小気泡が見られる
【0127】
(5)湿熱信頼性
<ガラス板積層構成>
段差吸収性評価に用いたサンプルについて、粘着シート1~8については、印刷段差付ガラス板側から、高圧水銀ランプを用いて、365nmでの積算光量が2000mJ/cmとなるよう光を照射し、耐久性評価サンプルを作製した。
前記評価サンプルを、85℃、85%R.H.環境下に24時間暴露し、外観不良が認められなかったものを「◎(very good)」、印刷段差近傍の開口部に発泡や剥離はなかったものの、印刷下部の粘着シートが流れて粘着シートの端部が変形しているものを「○(good)」、印刷段差近傍の開口部に発泡や剥離が認められたものを「×(poor)」と判定した。
【0128】
<樹脂板積層構成>
実施例及び比較例で得られた粘着シート1~8の離形フィルムを剥がし、その露出面にポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製「コスモシャインA4300」、厚み100μm)をハンドローラーにてロール圧着した。
これを45mm×90mmに裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ポリカーボネート系樹脂板(三菱瓦斯化学社製「ユーピロンシートMR58」、50mm×100mm、厚さ0.8mm)のポリカーボネート樹脂面にハンドローラーを用いてロール貼着して評価サンプルを作製した。
前記評価サンプルを、85℃、85%R.H.環境下に24時間暴露し、発泡や剥離など外観不良が認められなかったものを「○(good)」、発泡や剥離が認められたものを「×(poor)」と判定した。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例の粘着シートは、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9以上であって、優れた段差吸収性と湿熱信頼性を有するばかりか、イソシアネート系化合物が保管安定性を担保することで、形状安定性にも優れる結果となった。
また、光が届きにくく、光硬化しにくい印刷部にかかる粘着シート部分も、耐久性試験で流れ出さず、一定の形状を保持することができた。
【0131】
一方、比較例1は、イソシアネートなどの架橋剤を含有しないホットメルト粘着剤組成物のみからなる粘着シートであり、形状安定性に乏しいものであった。
また、ガラス板積層構成の信頼性試験において、印刷裏の粘着シートが流れて端部に糊はみ出しが生じた。
【0132】
比較例2は光架橋性を有しない、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9未満である、高凝集力の粘着層のみからなる粘着シートであり、形状安定性に優れるものの、段差吸収性に劣る結果となった。
【0133】
比較例3はホットメルト性を有しない、温度90℃での損失正接(Tanδ)が0.9未満である、柔軟な粘着層のみからなる粘着シートであり、凝集力が低く、樹脂板積層構成の耐久性試験にて発泡し、信頼性に劣るものであった。