(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】テレコンバータレンズ、光学系及び光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 15/08 20060101AFI20240509BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G02B15/08
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2019222698
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【氏名又は名称】保坂 丈世
(74)【代理人】
【識別番号】100156281
【氏名又は名称】岩崎 敬
(72)【発明者】
【氏名】籔本 洋
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-297401(JP,A)
【文献】特開平11-183800(JP,A)
【文献】特開2014-145870(JP,A)
【文献】特開2002-196236(JP,A)
【文献】特開2021-012244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタレンズの像側に配置され、前記マスタレンズを含めた光学系全系の焦点距離を拡大するテレコンバータレンズであって、
回折面を有し、
前記回折面は、次式の条件を満足する正の単レンズに形成されているテレコンバータレンズ。
40.00 < νp < 100.00
1.40 < np < 1.90
但し、
νp:前記正の単レンズの媒質のd線に対するアッベ数
np:前記正の単レンズの媒質のd線に対する屈折率
【請求項2】
次式の条件を満足する請求項1に記載のテレコンバータレンズ。
0.010 < f/fpf < 0.100
但し、
f:前記テレコンバータレンズの焦点距離
fpf:前記回折面の焦点距離
【請求項3】
次式の条件を満足する請求項1または2に記載のテレコンバータレンズ。
1.10 < β < 2.50
但し、
β:前記テレコンバータレンズの倍率
【請求項4】
次式の条件を満足する請求項1~3のいずれか一項に記載のテレコンバータレンズ。
10.00mm < L < 49.00mm
但し、
L:前記マスタレンズに前記テレコンバータレンズを装着していない際の前記マスタレンズの像面から、前記テレコンバータレンズを装着した際の前記テレコンバータレンズの最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離
【請求項5】
次式の条件を満足する請求項1~4のいずれか一項に記載のテレコンバータレンズ。
0.15 < Lpf/TL < 0.75
但し、
Lpf:前記マスタレンズに前記テレコンバータレンズを装着した際の前記回折面から像面までの光軸上の距離
TL:前記マスタレンズに前記テレコンバータレンズを装着した際の前記テレコンバータレンズの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
【請求項6】
次式の条件を満足する請求項1~5のいずれか一項に記載のテレコンバータレンズ。
1/rpf ≦ 0.00mm-1
但し、
rpf:物体側に凸面を正としたときの、前記回折面の基準球面の曲率半径
【請求項7】
次式の条件を満足する請求項1~6のいずれか一項に記載のテレコンバータレンズ。
0.80 < {f/(fpf×β^2)}×100 < 5.00
但し、
f:前記テレコンバータレンズの全系の焦点距離
fpf:前記回折面の焦点距離
β:前記テレコンバータレンズの倍率
【請求項8】
前記回折面を1つ有する請求項1~7のいずれか一項に記載のテレコンバータレンズ。
【請求項9】
次式の条件を満足する請求項1~8のいずれか一項に記載のテレコンバータレンズ。
0.05 < (BF/TL)/β < 0.25
但し、
BF:前記マスタレンズに前記テレコンバータレンズを装着した際のバックフォーカス
TL:前記マスタレンズに前記テレコンバータレンズを装着した際の、前記テレコンバータレンズの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
β:前記テレコンバータレンズの倍率
【請求項10】
回折面を最も像側のレンズに有し、
前記最も像側のレンズは、次式の条件を満足する正の単レンズである光学系。
40.00 < νp < 70.00
1.40 < np
≦ 1.517420
但し、
νp:前記正の単レンズの媒質のd線に対するアッベ数
np:前記正の単レンズの媒質のd線に対する屈折率
【請求項11】
次式の条件を満足する請求項
10に記載の光学系。
0.05 < Lpf/TL < 0.50
但し、
Lpf:前記回折面から像面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
【請求項12】
次式の条件を満足する請求項
10または11に記載の光学系。
1/rpf ≦ 0.00mm-1
但し
rpf:物体側に凸面を正としたときの、前記回折面の基準球面の曲率半径
【請求項13】
請求項1~9の何れか一項に記載のテレコンバータレンズを備える光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレコンバータレンズ、光学系及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスタレンズとカメラ本体との間に、負の焦点距離を有するテレコンバータレンズを挿入して撮影レンズの焦点距離を拡大する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1は、さらなる光学性能の向上が要望されているという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様に係るテレコンバータレンズは、マスタレンズの像側に配置され、前記マスタレンズを含めた光学系全系の焦点距離を拡大するテレコンバータレンズであって、回折面を有し、前記回折面は、次式の条件を満足する正の単レンズに形成されている。
40.00 < νp < 100.00
1.40 < np < 1.90
但し、
νp:前記正の単レンズの媒質のd線に対するアッベ数
np:前記正の単レンズの媒質のd線に対する屈折率
【0005】
本発明の第一の態様に係る光学系は、回折面を最も像側のレンズに有し、前記最も像側のレンズは、次式の条件を満足する正の単レンズである。
40.00 < νp < 70.00
1.40 < np ≦ 1.517420
但し、
νp:前記正の単レンズの媒質のd線に対するアッベ数
np:前記正の単レンズの媒質のd線に対する屈折率
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るテレコンバータレンズを搭載するカメラの断面図である。
【
図2】マスタレンズ(テレコンバータレンズ未装着時)のレンズ構成を示す断面図である。
【
図4】マスタレンズと第1実施例に係るテレコンバータレンズからなる光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【
図5】マスタレンズと第1実施例に係るテレコンバータレンズからなる光学系の諸収差図である。
【
図6】マスタレンズと第2実施例に係るテレコンバータレンズからなる光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【
図7】マスタレンズと第2実施例に係るテレコンバータレンズからなる光学系の諸収差図である。
【
図8】マスタレンズと第3実施例に係るテレコンバータレンズからなる光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【
図9】マスタレンズと第3実施例に係るテレコンバータレンズからなる光学系の諸収差図である。
【
図10】上記テレコンバータレンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、マスタレンズMLの像側に配置され、このマスタレンズMLとの合成焦点距離がマスタレンズMLの焦点距離よりも長くなるように構成されている。具体的には、
図1に示す、本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLを備えた光学機器であるカメラ10に基づいて説明する。このカメラ10は、撮影レンズ2としてマスタレンズMLを備えたレンズ交換式の所謂ミラーレスカメラである。テレコンバータレンズ3(TCL)は、マスタレンズMLである撮影レンズ2と撮像部4を有するカメラ本体1との間に取り付けられる。
【0009】
本カメラ10において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2及びテレコンバータレンズ3で集光されて、OLPF(Optical low pass filter:光学ローパスフィルタ)FLを介して撮像部4の撮像面上に被写体像を形成する。そして、撮像部4に設けられた光電変換素子により被写体像が光電変換されて被写体の画像が生成される。この画像は、カメラ本体1に設けられたEVF(Electronic view finder:電子ビューファインダ)5に表示される。これにより撮影者は、EVF5を介して被写体を観察することができる。
【0010】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、撮像部4により光電変換された画像が不図示のメモリに記憶される。このようにして、撮影者は本カメラ10による被写体の撮影を行うことができる。なお、本実施形態では、ミラーレスカメラの例を説明したが、カメラ本体にクイックリターンミラーを有しファインダー光学系により被写体を観察する一眼レフタイプのカメラに本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLを搭載した場合でも、上記カメラ10と同様の効果を奏することができる。
【0011】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、
図2に示すように、マスタレンズMLの
像側に配置され、マスタレンズMLの焦点距離を拡大するものであり、このテレコンバータレンズTCLは、回折面Dを有する。
【0012】
従来、負の屈折力を持ちマスタレンズの像側に配置することで焦点距離を拡大するリアコンバータが知られている。しかしながら、昨今のミラーレスカメラ用のレンズにおいてはマスタレンズのバックフォーカスが短いため、マスタレンズの焦点面とリアコンバータとの距離が短く、リアコンバータのレンズ群(コンバータレンズ群)の屈折力(パワー)が強いために、ペッツバール和の補正と色収差の補正を両立することが困難になってくる。すなわち、コンバータレンズ群は全体として強い負のパワーを持つため、ペッツバール和をゼロに近づけるには正レンズの媒質の屈折率を下げ、負レンズの媒質の屈折率を上げる必要がある。一方、色収差補正のためには正レンズの媒質のアッベ数が小さく、負レンズの媒質のアッベ数が大きい必要があるが、一般の光学ガラスは屈折率が上がるとアッベ数も低下する傾向があり、この補正が困難になる。
【0013】
これに対して、回折面を有する回折レンズはペッツバール和に影響を与えず、正の屈折力(パワー)を持ちながらもアッベ数相当値としては-3.453という強い負レンズの色消し効果を持つ。したがって、本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、回折面Dを配置することにより、上述した回折レンズ(回折面)の性質により、主にミラーレスカメラ用のリアコンバータとして小型でありながら極めて優れた像面平坦性と色収差補正を実現するものである。なお、本実施形態では、回折レンズ(回折面)を、負の屈折力(パワー)を持つ光学素子として利用し、強い正レンズの色消し効果を持たせている。
【0014】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(1)を満足することが望ましい。
【0015】
0.010 < f/fpf < 0.100 (1)
但し、
f:テレコンバータレンズTCLの焦点距離
fpf:回折面Dの焦点距離
【0016】
条件式(1)は、回折面Dの焦点距離に対するテレコンバータレンズTCLの焦点距離の比を規定するものである。この条件式(1)を満足することにより、良好な光学性能を得ることができる。条件式(1)の範囲を超えると、軸上色収差及び倍率色収差の補正、特に、二次スペクトルの補正が困難となるため好ましくない。なお、条件式(1)の効果を確実なものとするために、条件式(1)の下限値を0.011、0.012、0.015、0.018、0.020、0.022、0.024、更に0.025とすることがより望ましい。また、条件式(1)の効果を確実なものとするために、条件式(1)の上限値を0.099、0.095、0.090、0.085、0.080、0.078、0.075、0.073、更に0.070とすることがより望ましい。
【0017】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(2)を満足することが望ましい。
【0018】
1.10 < β < 2.50 (2)
但し、
β:テレコンバータレンズTCLの倍率
【0019】
条件式(2)は、テレコンバータレンズTCLの倍率を規定するものである。この条件式(2)を満足することにより、良好な光学性能を得ることができる。条件式(2)の下限値を下回る、すなわち、テレコンバータレンズTCLの倍率が低いと、テレコンバータレンズTCLを装着した際の光学系の焦点距離の増加分に対して、テレコンバータレンズTCLの全長が相対的に大きくなってしまい、テレコンバータレンズTCLを装着した際の光学系バックフォーカスが不足してしまうため好ましくない。なお、条件式(2)の効果を確実なものとするために、条件式(2)の下限値を1.20、更に1.30とすることがより望ましい。また、条件式(2)の上限値を上回る、すなわち、テレコンバータレンズTCLの倍率が高いと、回折面Dを用いても性能が出ず、また、大型化してしまうため好ましくない。なお、条件式(2)の効果を確実なものとするために、条件式(2)の上限値を2.40、2.30、2.20、更に2.10とすることがより望ましい。
【0020】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(3)を満足することが望ましい。
【0021】
10.00mm < L < 49.00mm (3)
但し、
L:マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCLを装着していない際のマスタレンズMLの像面から、テレコンバータレンズTCLを装着した際のテレコンバータレンズTCLの最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離
【0022】
条件式(3)は、マスタレンズMLにテレコンバータTCLを装着していない際のマスタレンズMLの像面から、テレコンバータレンズTCLを装着した際のテレコンバータレンズTCLの最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離を規定するものである。なお、光学的には、このLは、テレコンバータTCLにとっての物点距離に相当する。この条件式(3)を満足することにより、良好な光学性能を得ることができる。条件式(3)の下限値を下回ると、テレコンバータTCLの屈折力(パワー)が強くなりすぎて、像面湾曲の補正が困難となるため好ましくない。なお、条件式(3)の効果を確実なものとするために、条件式(3)の下限値を12.50、15.00、16.50、18.00、20.00、21.50、22.00、23.00、23.50、24.00、24.50、更に25.00とすることがより望ましい。また、条件式(3)の上限値を上回ると、回折面Dの効果を発揮することができず好ましくない。なお、条件式(3)の効果を確実なものとするために、条件式(3)の上限値を47.50、45.00、42.50、40.00、37.50、35.00、33.00、32.50、32.00、31.50、31.00、30.50、更に30.00とすることがより望ましい。
【0023】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(4)及び条件式(5)を満足する正レンズ(以下、「特定正レンズ」と呼ぶ)を少なくとも1つ有することが望ましい。
【0024】
40.00 < νp < 100.00 (4)
1.40 < np < 1.90 (5)
但し、
νp:特定正レンズの媒質のd線に対するアッベ数
np:特定正レンズの媒質のd線に対する屈折率
【0025】
条件式(4)及び条件式(5)は、テレコンバータレンズTCLに含まれる特定正レンズの媒質のd線に対するアッベ数及び屈折率を規定するものである。テレコンバータレンズTCLに、条件式(4)及び条件式(5)を満足する特定正レンズを設けることにより、軸上色収差や倍率色収差を良好に補正することができる。
【0026】
条件式(4)の範囲を超えると、軸上色収差及び倍率色収差の補正が困難となり好ましくない。なお、条件式(4)の効果を確実なものとするために、条件式(4)の下限値を41.00、42.50、44.00、45.00、46.00、47.00、48.00、49.00、更に50.00とすることがより望ましい。また、条件式(4)の効果を確実なものとするために、条件式(4)の上限値を95.00、90.00、85.00、80.00、75.00、70.00、65.00、63.00、60.00、58.00、更に55.00とすることがより望ましい。
【0027】
条件式(5)の下限値を超えると、特定正レンズのレンズ面の曲率がきつくなりすぎて収差補正と加工性が悪くなるため好ましくない。なお、条件式(5)の効果を確実なものとするために、条件式(5)の下限値を1.42、1.45、1.48、更に1.50とすることがより望ましい。また、条件式(5)の上限値を超えると、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。なお、条件式(5)の効果を確実なものとするために、条件式(5)の上限値を1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.58、更に1.55とすることがより望ましい。
【0028】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、回折面Dが上述した特定正レンズに形成されていることが望ましい。このような構成によると、回折面Dの効果を十分発揮させることができる。
【0029】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(6)を満足することが望ましい。
【0030】
0.15 < Lpf/TL < 0.75 (6)
但し、
Lpf:マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCLを装着した際の回折面Dから像面までの光軸上の距離
TL:マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCLを装着した際のテレコンバータレンズTCLの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
【0031】
条件式(6)は、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCLを装着した際の、テレコンバータレンズTCLの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離に対する回折面Dから像面までの光軸上の距離の比を規定するものである。この条件式(6)を満足することにより、良好な光学性能を得ることができる。条件式(6)の下限値を下回ると、回折面Dによる色収差の補正が十分に得られないが、回折面Dの屈折力(パワー)を強くして補正効果を得ようとすると、倍率色収差に対する補正が強くなり、倍率色収差と軸上色収差のバランスがとれなくなるため好ましくない。なお、この条件式(6)の効果を確実なものとするために、条件式(6)の下限値を、0.16、0.18、0.20、0.23、0.25、0.28、0.30、0.32、0.34、更に0.35とすることがより望ましい。また、条件式(6)の上限値を上回ると、軸上色収差に対する補正が強くなり、倍率色収差と軸上色収差のバランスがとれなくなるため好ましくない。また、回折面(回折格子)Dを通過する光線の角度が画角によって大きく異なることで回折効率が低下し、不要な回折光によって画質が悪化するため好ましくない。なお、この条件式(6)の効果を確実なものとするために、条件式(6)の上限値を0.73、0.70、0.68、0.65、0.63、0.60、0.58、更に0.55とすることがより望ましい。
【0032】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(7)を満足することが望ましい。
【0033】
1/rpf ≦ 0.00mm-1 (7)
但し、
rpf:物体側に凸面を正としたときの、回折面Dの基準球面の曲率半径
【0034】
条件式(7)は、回折面Dの基準球面の曲率半径を規定するものである。この条件式(7)を満足すると、回折面Dは物体側に凹面となる。条件式(7)の上限値を上回る、すなわち、回折面Dが物体側に凸面だと成型が困難であるため好ましくない。また、回折面Dが、像側の凹面だと撮像面からの反射光がゴーストやフレアの原因となって画質が低下するため好ましくない。
【0035】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(8)を満足することが望ましい。
【0036】
0.80 < {f/(fpf×β^2)}×100 < 5.00 (8)
但し、
f:テレコンバータレンズTCLの全系の焦点距離
fpf:回折面Dの焦点距離
β:テレコンバータレンズTCLの倍率
【0037】
条件式(8)は、テレコンバータレンズTCLの焦点距離、倍率及び回折面Dの焦点距離の関係を規定するものである。この条件式(8)を満足することにより、良好な光学性能を得ることができる。条件式(8)の下限値を下回ると、回折面Dの効果が不足し、色収差補正が困難になるため好ましくない。なお、条件式(8)の効果を確実なものとするために、条件式(8)の下限値を0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、更に1.10とすることがより望ましい。また、条件式(8)の上限値を上回ると、回折面Dの効果が強くなりすぎて二次スペクトルの補正が困難になるため好ましくない。なお、条件式(8)の効果を確実なものとするために、条件式(8)の上限値を4.95、4.90、4.80、4.50、4.25、4.00、3.80、更に3.50とすることがより望ましい。
【0038】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、回折面Dを1つ有することが望ましい。テレコンバータレンズTCLに複数の回折面を設けると、各々の回折面で発生する高次回折光が設計上不要なフレア光となって結像性能が悪化するため好ましくない。
【0039】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、回折面Dが単レンズに形成されていることが望ましい。回折面Dを接合レンズの表面に形成しようとすると、回折面Dを形成するためのUV硬化樹脂と、レンズを接合するためのUV接着剤とが必要になるが、これらのUV硬化樹脂とUV接着剤を併用することが困難になるため好ましくない。また、接合レンズの接合面に回折面Dを形成する場合、接合される2つのレンズの双方が高いUV透過率を有する硝材でないと、UV硬化樹脂の成型時にUVの吸収により温度変化が生じ、熱応力により面精度が悪化するため好ましくない。一方、上記問題を回避するために互いにUV透過率の高い硝材を用いると光学的な設計制約が多く、光学性能が低下するため好ましくない。具体的には、正レンズと負レンズとを接合した接合レンズとする場合に、屈折率が高い硝材はUV透過率が悪いため、負レンズの屈折率を上げることができず、ペッツバール和の補正が困難になる。
【0040】
本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLは、以下に示す条件式(9)を満足することが望ましい。
【0041】
0.05 < (BF/TL)/β < 0.25 (9)
但し、
BF:マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCLを装着した際のバックフォーカス
TL:マスタレンズMLにテレコンバータレンズTLを装着した際の、テレコンバータレンズTCLの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
β:テレコンバータレンズTCLの倍率
【0042】
条件式(9)は、テレコンバータレンズの倍率と、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCLを装着した際のバックフォーカス及び光学全長(テレコンバータレンズTCLの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離)との関係を規定するものである。この条件式(9)を満足することにより、良好な光学性能を得ることができる。条件式(9)の下限値を下回ると、最も像側のレンズ径を最大像高に近い大きさにしないと撮像センサーに適切な射出瞳位置を得ることができなくなり、光学系全体が径方向に肥大化するため好ましくない。なお、この条件式(9)の効果を確実なものとするために、条件式(9)の下限値を0.06、0.08、0.10、0.12、更に0.15とすることがより望ましい。また、条件式(9)の上限値を上回ると、像側に屈折力(パワー)の強い正レンズを配置することができなくなり、ペッツバール和が悪化するとともに、光学系全体が光軸方向に肥大化し、主にミラーレスカメラで求められる小型化が困難になるため好ましくない。なお、この条件式(9)の効果を確実なものとするために、条件式(9)の上限値を0.24、0.23、更に0.22とすることがより望ましい。
【0043】
以上のように、テレコンバータレンズTCLにおける回折面Dの位置と屈折力(パワー)を各々適切に設定することで、主にミラーレスカメラ用のリアコンバータとして小型でありながら極めて優れた像面平坦性と色収差補正を実現することができる。
【0044】
なお、マスタレンズMLと、このマスタレンズMLに装着されたテレコンバータレンズTCLとを一体の光学系OLとしても、上述した構成及び条件式を適用することができ、各々の構成及び条件式による効果を得ることができる。
【0045】
マスタレンズMLとテレコンバータレンズTCLとを一体の光学系OLとした場合、回折面Dを最も像側のレンズに有することが望ましい。このような構成とすることで、回折面Dの効果を十分に発揮させることができ、良好な光学性能を得ることができる。
【0046】
また、光学系OLにおいて、回折面Dは特定正レンズに形成されることが望ましい。
【0047】
また、光学系OLの場合、TLは、光学系OLの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離であり、BFは光学系OLのバックフォーカスである。
【0048】
なお、以上で説明した条件及び構成は、それぞれが上述した効果を発揮するものであり、全ての条件及び構成を満たすものに限定されることはなく、いずれかの条件又は構成、或いは、いずれかの条件又は構成の組み合わせを満たすものでも、上述した効果を得ることが可能である。
【0049】
また、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0050】
本実施形態では、1群構成のテレコンバータレンズTCLを示したが、以上の構成条件等は、2群、3群等の他の群構成にも適用可能である。例えば、テレコンバータレンズTCL内の一部のレンズ群を光軸方向に移動させることで変倍可能な光学系や、一部のレンズ群を置き換えたり、着脱することで倍率が切り替わる光学系としてもよい。また、最も物体側にレンズまたはレンズ群を追加した構成や、最も像側にレンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。具体的には、最も像側に、変倍時又は合焦時に像面に対する位置を固定されたレンズ群を追加した構成が考えられる。また、レンズ群とは、変倍時又は合焦時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。また、レンズ成分とは、単レンズ又は複数のレンズが接合された接合レンズをいう。
【0051】
また、レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
【0052】
さらに、各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。
【0053】
また、本実施形態のテレコンバータレンズTCLは、倍率が1.2~3.0倍程度である。
【0054】
以下、本実施形態に係るテレコンバータレンズTCLの製造方法の概略を、
図10を参照して説明する。まず、各レンズを配置してテレコンバータレンズTCLの各レンズ成分を準備する(ステップS100)。次に、回折面を有するレンズ成分を配置する(ステップS200)。そして、所定の条件式(例えば、上述した条件式(1))による条件を満足するように各レンズ成分を配置する(ステップS300)。
【0055】
具体的には、本実施形態では、例えば
図4に示すように、テレコンバータレンズTCLとして、物体側から順に、両凸正レンズL1、物体側のレンズ面が非球面形状に形成された両凹形状の負レンズL2と両凸正レンズL3と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL4とを接合した接合レンズ、及び、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズであって、物体側のレンズ面に回折面Dが形成された回折レンズL5を準備し、上述した手順で配置してテレコンバータレンズTCLを製造する。
【0056】
以上のような構成により、良好な結像性能を有するテレコンバータレンズ、光学系、光学機器及びテレコンバータレンズの製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本願の各実施例を、図面に基づいて説明する。なお、
図2はマスタレンズMLの構成を示す断面図であり、
図4、
図6及び
図8は、各実施例に係るテレコンバータレンズTCL(TCL1~TCL3)の構成を示す断面図である。
【0058】
なお、各実施例には、それぞれのテレコンバータレンズTCL1~TCL3が取り付けられるマスタレンズMLも示している。何れの実施例も、同一の諸元のマスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL1~TCL3が取り付けられている。
【0059】
各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数をKとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で表される。なお、以降の実施例において、「E-n」は「×10-n」を示す。
【0060】
S(y)=(y2/r)/{1+(1-K×y2/r2)1/2}
+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10 (a)
【0061】
なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0である。また、各実施例の表中において、非球面には面番号の右側に*印を付している。
【0062】
また、各実施例において、回折面の位相形状ψは、次式(b)によって表される。
【0063】
ψ(h,n) = (2π/(n×λ0))×(C2h2+C4h4) (b)
但し、
h:光軸に対する垂直方向の高さ
n:回折光の次数
λ0:設計波長
Ci:位相係数(i=2,4)
【0064】
また、任意の波長λ、任意の回折次数mに対する式(b)で表される回折光学面の屈折力φDは、最も低次の位相係数C2を用いて、次式(c)のように表される。
【0065】
φD(λ,n) = -2×C2×n×λ/λ0 (c)
【0066】
なお、各実施例の表中において、回折面には面番号の右側に#印を付している。
【0067】
[マスタレンズ]
マスタレンズMLは、
図2に示すように、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズM1と物体側に凸面を向けた平凸正レンズM2とを接合した接合正レンズ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズM3、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズM4、両凹負レンズM5、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズM6、両凹負レンズM7、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズM8、両凸正レンズM9、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズM10、開口絞りS、両凸負レンズL11と両凸正レンズL12とを接合した接合負レンズ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13、物体側のレンズ面が非球面形状に形成された両凸形状の正レンズL14と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL15とを接合した接合正レンズ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL16、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL18、両凸正レンズL19、物体側のレンズ面が非球面形状に形成された負メニスカス形状の負レンズL20、及び、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL21で構成されている。
【0068】
以下の表1に、マスタレンズMLの諸元の値を掲げる。この表1において、全体諸元に示すfmは全系の焦点距離、FNOmはFナンバー、ωmは半画角[°]、Yは最大像高、BFmは空気換算したバックフォーカス、及び、TLmは空気換算した光学全長の値を表している。ここで、バックフォーカスBFは、最も像側のレンズ面(本実施例では第40面)から像面Iまでの光軸上の距離を示しており、光学全長TLは、最も物体側のレンズ面(本実施例では第1面)から像面Iまでの光軸上の距離を示している。また、レンズデータにおける第1欄mは、光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序(面番号)を、第2欄rは、各レンズ面の曲率半径を、第3欄dは、各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(面間隔)を、第4欄νd及び第5欄ndは、d線(λ=587.6nm)に対するアッベ数及び屈折率を示している。また、曲率半径0.0000は平面を示し、空気の屈折率1.000000は省略してある。
【0069】
ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は以降の実施例においても同様である。
【0070】
(表1)マスタレンズ
[全体諸元]
fm = 196.000
FNOm = 2.878
ωm = 6.136°
Y = 21.70
BFm = 32.547
TLm = 232.433
[レンズデータ]
m r d νd nd
物面 ∞
1 116.2423 2.8000 29.12 2.001000
2 85.0631 9.7000 82.57 1.497820
3 0.0000 0.1000
4 92.0132 7.7000 95.25 1.433852
5 696.9876 49.5274
6 59.5059 1.9000 65.44 1.603000
7 31.9138 10.3000
8 -185.1020 1.6000 82.57 1.497820
9 108.1171 0.8000
10 41.1067 3.7000 27.35 1.663819
11 64.1222 5.5000
12 -71.7484 1.9000 82.57 1.497820
13 88.6525 1.6071
14 69.5450 3.2000 17.98 1.945950
15 201.9972 2.3656
16 126.1730 4.7000 82.57 1.497820
17 -126.1730 0.1000
18 47.6776 3.8500 82.57 1.497820
19 122.6982 8.1230
20 0.0000 3.5000 開口絞りS
21 -84.8430 1.8000 20.88 1.922860
22 51.8412 5.0000 82.57 1.497820
23 -171.0866 1.4835
24 110.4711 1.7000 32.35 1.850260
25 60.9020 2.0000
26* 58.6240 7.7000 66.89 1.592010
27 -57.5104 1.7000 36.40 1.620040
28 -95.6311 1.3000
29 58.4576 2.7000 34.92 1.801000
30 135.4103 4.1032
31 -369.9204 2.0000 17.98 1.945950
32 -98.7678 0.8000
33 1320.8593 1.2500 53.96 1.713000
34 37.1386 27.7126
35 119.5718 3.8500 35.77 1.902650
36 -119.5718 3.9138
37* -80.2212 1.9000 63.84 1.516120
38 -307.4896 4.1000
39 -55.1271 1.9000 60.71 1.563840
40 -276.4823 32.5472
像面 ∞
【0071】
このマスタレンズMLにおいて、第26面及び第37面は非球面形状に形成されている。次の表2に、非球面のデータ、すなわち円錐定数K及び各非球面定数A4~A10の値を示す。
【0072】
(表2)
[非球面データ]
面 K A4 A6 A8 A10
26 1.0000 -2.02109E-06 9.22834E-10 -6.78340E-12 2.57624E-14
37 1.0000 1.26934E-06 1.09611E-09 -5.25758E-12 2.06460E-14
【0073】
このマスタレンズMLの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図及びコマ収差図を
図3に示す。各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。なお、球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)、FはF線(λ=486.1nm)、CはC線(λ=656.3nm)をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリジオナル像面をそれぞれ示す。コマ収差図において、実線はメリジオナルのコマを、破線はスキュー光線のY方向(メリジオナル)とZ方向(サジタル)をそれぞれ示す。また、以降に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。これらの各収差図より、マスタレンズMLは、諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0074】
[第1実施例]
図4は、上述したマスタレンズMLに第1実施例に係るテレコンバータレンズTCL1が取り付けられた光学系OL1の構成を示す図である。
【0075】
光学系OL1を構成するテレコンバータレンズTCL1は、物体側から順に、両凸正レンズL1、物体側のレンズ面が非球面形状に形成された両凹形状の負レンズL2と両凸正レンズL3と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL4とを接合した接合負レンズ、及び、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズ(特定正レンズ)の物体側のレンズ面に回折面Dが形成された回折レンズL5から構成されている。
【0076】
以下の表3に、第1実施例に係るテレコンバータレンズTCL1の諸元の値を掲げる。この表3において、全体諸元におけるfはテレコンバータレンズTCL1の全系の焦点距離を、faは光学系OL1の焦点距離(マスタレンズMLとテレコンバータレンズTCL1の合成焦点距離)、FNOaは光学系OL1のFナンバー(合成Fナンバー)、ωaは光学系OL1の半画角、Yは光学系OL1の最大像高、Bfaは光学系OL1の空気換算したバックフォーカス、TLaは光学系OL1の空気換算した光学全長を表している。この符号の説明は、以降の実施例においても同様である。
【0077】
また、マスタレンズMLのレンズデータは既に表1に示しているため、表3のレンズデータには、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL1を装着したときの、マスタレンズMLの最も像側の面である第40面の値と以降のテレコンバータレンズTCL1の値を示す。したがって、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL1を装着したときの光学系OL1のレンズデータは、表1に示す第1面から第39面までのデータと、表3に示す第40面以降のデータで表される。
【0078】
(表3)第1実施例
[全体諸元]
f = -101.095
fa = 274.123
FNOa = 4.025
ωa = 4.374°
Y = 21.70
BFa = 10.055
TLa = 247.986
[レンズデータ]
m r d νd nd
40 -276.4823 3.9922
41 162.0565 4.0500 22.74 1.808090
42 -66.8770 4.0897
43* -40.6283 1.2500 37.23 1.882020
44 29.3716 11.9646 35.27 1.592700
45 -20.1549 1.2500 26.94 2.050898
46 -96.2968 4.2680
47# -56.6787 7.1805 52.20 1.517420
48 -27.2719 10.0547
像面 ∞
【0079】
このテレコンバータレンズTCL1において、第43面は非球面形状に形成されている。次の表4に、非球面のデータ、すなわち円錐定数K及び各非球面定数A4~A10の値を示す。
【0080】
(表4)
[非球面データ]
面 K A4 A6 A8 A10
43 1.0000 5.56880E-06 -9.20130E-09 7.90410E-11 -3.08340E-13
【0081】
このテレコンバータレンズTCL1において、第47面は回折面である。以下の表5に回折面データ、すなわち設計波長λ0、次数n並びに各位相係数C2、C4の値を示す。
【0082】
(表5)
[回折面データ]
m λ0 n C2 C4
47 587.6 1.0 1.45000E-04 4.43000E-07
【0083】
マスタレンズMLとテレコンバータレンズTCL1とからなる光学系OL1の球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図及びコマ収差図を
図5に示す。これらの各収差図より、テレコンバータレンズTCL1を含む光学系OL1は、諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0084】
[第2実施例]
図6は、上述したマスタレンズMLに第2実施例に係るテレコンバータレンズTCL2が取り付けられた光学系OL2の構成を示す図である。
【0085】
光学系OL2を構成するテレコンバータレンズTCL2は、物体側から順に、両凸正レンズL1、両凹負レンズL2と両凸正レンズL3とを接合した接合負レンズ、物体側のレンズ面及び像側のレンズ面が非球面形状に形成された物体側に凹面を向けた負メニスカス形状の負レンズL4、及び、物体側に平面を向けた平凸正レンズ(特定正レンズ)の物体側のレンズ面に回折面Dが形成された回折レンズL5から構成されている。
【0086】
以下の表6に、第2実施例に係るテレコンバータレンズTCL2の諸元の値を掲げる。なお、マスタレンズMLのレンズデータは既に表1に示しているため、表6のレンズデータには、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL2を装着したときの、マスタレンズMLの最も像側の面である第40面の値と以降のテレコンバータレンズTCL2の値を示す。したがって、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL2を装着したときの光学系OL2のレンズデータは、表1に示す第1面から第39面までのデータと、表6に示す第40面以降のデータで表される。
【0087】
(表6)第2実施例
[全体諸元]
f = -110.158
fa = 274.127
FNOa = 4.250
ωa = 4.388°
Y = 21.70
BFa = 13.372
TLa = 249.177
[レンズデータ]
m r d νd nd
40 -276.4823 4.0000
41 94.3781 4.1630 20.36 1.892860
42 -67.0448 3.1379
43 -41.5374 1.2000 26.94 2.050898
44 19.6703 8.7114 27.51 1.755199
45 -221.8166 2.8804
46* -42.0485 1.4000 29.83 1.951499
47* -6317.6373 0.7711
48# 0.0000 9.6550 64.14 1.516800
49 -26.3976 13.3722
像面 ∞
【0088】
このテレコンバータレンズTCL2において、第46面及び第47面は非球面形状に形成されている。次の表7に、非球面のデータ、すなわち円錐定数K及び各非球面定数A4~A10の値を示す。
【0089】
(表7)
[非球面データ]
面 K A4 A6 A8 A10
46 -15.6386 -1.71660E-05 3.44620E-08 -1.32520E-10 1.96330E-13
47 -0.2923E+06 4.67600E-06 -5.11750E-08 1.06390E-10 -1.56130E-13
【0090】
このテレコンバータレンズTCL2において、第48面は回折面である。以下の表8に回折面データ、すなわち設計波長λ0、次数n並びに各位相係数C2、C4の値を示す。
【0091】
(表8)
[回折面データ]
m λ0 n C2 C4
48 587.6 1.0 2.65000E-04 4.02000E-07
【0092】
マスタレンズMLとテレコンバータレンズTCL2とからなる光学系OL2の球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図及びコマ収差図を
図7に示す。これらの各収差図より、テレコンバータレンズTCL2を含む光学系OL2は、諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0093】
[第3実施例]
図8は、上述したマスタレンズMLに第3実施例に係るテレコンバータレンズTCL3が取り付けられた光学系OL3の構成を示す図である。
【0094】
光学系OL3を構成するテレコンバータレンズTCL3は、物体側から順に、両凸正レンズL1、物体側のレンズ面が非球面形状に形成された両凹形状の負レンズL2と両凸正レンズL3とを接合した接合負レンズ、両凹負レンズL4と両凸正レンズL5と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL6とを接合した接合負レンズ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL7、及び、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズ(特定正レンズ)の物体側のレンズ面に回折面Dが形成された回折レンズL8から構成されている。
【0095】
以下の表9に、第3実施例に係るテレコンバータレンズTCL3の諸元の値を掲げる。なお、マスタレンズMLのレンズデータは既に表1に示しているため、表9のレンズデータには、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL3を装着したときの、マスタレンズMLの最も像側の面である第40面の値と以降のテレコンバータレンズTCL3の値を示す。したがって、マスタレンズMLにテレコンバータレンズTCL3を装着したときの光学系OL3のレンズデータは、表1に示す第1面から第39面までのデータと、表9に示す第40面以降のデータで表される。
【0096】
(表9)第3実施例
[全体諸元]
f = -66.558
fa = 391.997
FNOa = 5.756
ωa = 3.129°
Y = 21.70
BFa = 9.156
TLa = 261.766
[レンズデータ]
m r d νd nd
40 -276.4823 3.9922
41 70.2166 4.1000 30.05 1.698950
42 -56.8450 3.0327
43* -32.8691 1.0000 40.39 1.854000
44 16.0992 8.2000 28.46 1.728250
45 -47.0798 1.1597
46 -40.9426 1.0000 26.94 2.050898
47 24.9501 11.7078 30.13 1.698947
48 -14.4836 1.1000 26.94 2.050898
49 -52.0176 2.4551
50 -53.0373 1.4000 26.94 2.050898
51 -168.8728 1.0000
52# -273.3168 12.5762 52.20 1.517420
53 -22.8743 9.1556
像面 ∞
【0097】
このテレコンバータレンズTCL3において、第43面は非球面形状に形成されている。次の表10に、非球面のデータ、すなわち円錐定数K及び各非球面定数A4~A10の値を示す。
【0098】
(表10)
[非球面データ]
面 K A4 A6 A8 A10
43 1.0000 1.35720E-05 -3.41470E-08 3.73080E-10 -2.61940E-12
【0099】
このテレコンバータレンズTCL3において、第52面は回折面である。以下の表11に回折面データ、すなわち設計波長λ0、次数n並びに各位相係数C2、C4の値を示す。
【0100】
(表11)
[回折面データ]
m λ0 n C2 C4
52 587.6 1.0 4.60000E-04 -1.35000E-07
【0101】
マスタレンズMLとテレコンバータレンズTCL3とからなる光学系OL3の球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図及びコマ収差図を
図9に示す。これらの各収差図より、テレコンバータレンズTCL3を含む光学系OL3は、諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0102】
[条件式対応値]
第1実施例(テレコンバータレンズTCL1及び光学系OL1)~第3実施例(テレコンバータレンズTCL3及び光学系OL3)の条件式(1)~(9)の数値を以下に記載する。
(1)f/fpf
(2)β
(3)L
(4)νp
(5)np
(6)Lpf/TL
(7)1/rpf
(8){f/(fpf×β^2)}×100
(9)(BF/TL)/β
第1実施例 第2実施例 第3実施例
fpf -3448.276 -1886.792 -1086.957
Lpf 17.235 23.027 21.732
(1) 0.029 0.058 0.061
(2) 1.399 1.399 2.000
(3) 28.555 28.563 28.555
(4) 52.20 64.14 52.20
(5) 1.517420 1.516800 1.517420
(6) 0.358 0.467 0.351
(7) -0.01764 0.00000 -0.00337
(8) 1.499 2.985 1.531
(9) 0.149 0.194 0.074
【符号の説明】
【0103】
1 カメラ(光学機器) OL1~OL3 光学系 ML マスタレンズ
TCL(TCL1~TCL3) テレコンバータレンズ D 回折面