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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240509BHJP
   B65H 43/00 20060101ALI20240509BHJP
   B65H 29/68 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B65H43/00
B65H29/68
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020041906
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142685
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】久野 悟志
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-70348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0244233(US,A1)
【文献】特開2012-45763(JP,A)
【文献】特開2012-246128(JP,A)
【文献】特開2004-50451(JP,A)
【文献】特開平4-263970(JP,A)
【文献】特開2012-121713(JP,A)
【文献】特開2011-173328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 43/00
B65H 29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の速度で搬送される搬送対象物に液を付与する液付与手段と、
液が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱手段と、
を備え、
前記液付与手段によって前記搬送対象物に液が付与された後、前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記搬送対象物が前記加熱手段へ向かって搬送され、
前記搬送対象物に付与される液の量に応じて、前記搬送対象物が前記加熱手段を通過するときの速度を変更し、
前記搬送対象物が前記加熱手段を通過するときの速度は、前記第2の速度よりも遅い第3の速度であり、
前記搬送対象物同士の搬送方向の間隔に応じて、前記第2の速度及び前記第3の速度の少なくとも一方を変更する画像形成装置。
【請求項2】
第1の速度で搬送される搬送対象物に液を付与する液付与手段と、
液が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱手段と、
を備え、
前記液付与手段によって前記搬送対象物に液が付与された後、前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記搬送対象物が前記加熱手段へ向かって搬送され、
前記搬送対象物が前記加熱手段を通過するときの速度は、前記第2の速度よりも遅い第3の速度であり、
前記搬送対象物同士の搬送方向の間隔に応じて、前記第1の速度から前記第2の速度に変更するタイミングと、前記第2の速度から前記第3の速度に変更するタイミングの少なくとも一方を変更する画像形成装置。
【請求項3】
第1の速度で搬送される搬送対象物に液を付与する液付与手段と、
液が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱手段と、
液が付与された前記搬送対象物を検知する搬送対象物検知手段と、
を備え、
前記液付与手段によって前記搬送対象物に液が付与された後、前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記搬送対象物が前記加熱手段へ向かって搬送され、
前記搬送対象物検知手段の検知タイミングに基づき、前記第1の速度から前記第2の速度に変化させる画像形成装置。
【請求項4】
第1の速度で搬送される搬送対象物に液を付与する液付与手段と、
液が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を通過した搬送対象物に処理を施す後処理手段と、
を備え、
前記液付与手段によって前記搬送対象物に液が付与された後、前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記搬送対象物が前記加熱手段へ向かって搬送され、
前記後処理手段は前記加熱手段を含み、
前記後処理手段は、前記液付与手段を備える画像形成装置本体に着脱可能である画像形成装置。
【請求項5】
第1の速度で搬送される搬送対象物に液を付与する液付与手段と、
液が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱手段と、
前記搬送対象物に処理を施す後処理手段へ前記搬送対象物を搬送する搬送手段と、
を備え、
前記液付与手段によって前記搬送対象物に液が付与された後、前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記搬送対象物が前記加熱手段へ向かって搬送され、
前記搬送手段は前記加熱手段を含み、
前記搬送手段は、前記液付与手段を備える画像形成装置本体に着脱可能である画像形成装置。
【請求項6】
前記第3の速度は、前記第1の速度よりも遅い請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送対象物は、前記第2の速度から前記第3の速度に減速してから、前記加熱手段に進入する請求項1、2、6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送対象物に付与される液の量に応じて、前記搬送対象物が前記加熱手段を通過するときの速度を変更する請求項からのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
液が付与された前記搬送対象物を前記加熱手段へ案内せずに表裏反転して前記液付与手段へ再搬送する反転搬送路を有し、
前記液付与手段によって前記搬送対象物の一方の面に液が付与された後、前記搬送対象物は前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記反転搬送路へ搬送され、
前記液付与手段によって前記搬送対象物の他方の面に液が付与された後、前記搬送対象物は前記第2の速度で前記加熱手段へ向かって搬送される請求項1から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置として、液が付与されたシートなどの搬送対象物を搬送しながら加熱する加熱装置を備えるものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2004-50451号公報)には、画像の劣化を防止するための表面封止材が塗布されたシートを搬送しながら加熱するインクジェット式画像形成装置が開示されている。この画像形成装置においては、シートにインクが吐出された後、加熱された一対のローラによってシートを挟持しながら搬送することにより、表面封止材が熱で溶融される。その後、シートがローラ対の間から排出されることにより、表面封止材は自然冷却されて硬化する。
【0004】
ところで、表面封止材の溶融に必要な熱量は、シートに付与されるインクの量によって異なる。すなわち、シートに付与されるインクの量が多くなるほど、必要な熱量も多くなる。そのため、特許文献1に記載の画像形成装置においては、一対のローラの回転速度を、インクの量が多くなるほど遅くなるように設定し、シートへの供給熱量を多くするようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、各ローラの回転速度を遅くすると、シートに画像が形成されてから、そのシートが装置外に排出するまでの時間が長くなるため、生産性(単位時間あたりの画像出力枚数)が低下するといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の速度で搬送される搬送対象物に液を付与する液付与手段と、液が付与された前記搬送対象物を加熱する加熱手段と、を備え、前記液付与手段によって前記搬送対象物に液が付与された後、前記第1の速度よりも速い第2の速度で前記搬送対象物が前記加熱手段へ向かって搬送され、前記搬送対象物に付与される液の量に応じて、前記搬送対象物が前記加熱手段を通過するときの速度を変更し、前記搬送対象物が前記加熱手段を通過するときの速度は、前記第2の速度よりも遅い第3の速度であり、前記搬送対象物同士の搬送方向の間隔に応じて、前記第2の速度及び前記第3の速度の少なくとも一方を変更する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】シリアル型の液体吐出ヘッドを備える画像形成部の平面図である。
図3】ライン型の液体吐出ヘッドを備える画像形成部の平面図である。
図4】乾燥装置の概略構成図である。
図5】拍車の配置を示す乾燥装置の平面図である。
図6】拍車の他の配置例を示す乾燥装置の平面図である。
図7】搬送速度の制御方法を説明するための図である。
図8】搬送速度の制御方法を説明するための図である。
図9】搬送速度の制御方法を説明するための図である。
図10】搬送速度の制御方法を説明するための図である。
図11】搬送速度の制御方法を説明するための図である。
図12】搬送速度の制御方法を説明するための図である。
図13】搬送速度の変化を時系列で表したグラフである。
図14】他の搬送速度の変化例を示すグラフである。
図15】さらに別の搬送速度の変化例を示すグラフである。
図16】用紙が連続して搬送される場合の搬送動作を示す図である。
図17】用紙が連続して搬送される場合の搬送動作を示す図である。
図18】用紙が連続して搬送される場合の搬送動作を示す図である。
図19】両面印刷時に用紙が反転搬送路へ搬送される場合の搬送動作を示す図である。
図20】両面印刷時に用紙が反転搬送路へ搬送される場合の搬送動作を示す図である。
図21】用紙にバックカールが発生する原理を説明するための図である。
図22】用紙にバックカールが発生する原理を説明するための図である。
図23】押圧ローラとして砥粒ローラを用いた例を示す図である。
図24】押圧ローラとしてローレットローラを用いた例を示す図である。
図25】押圧ローラが加熱ベルトを介して固定ローラに接触する例を示す図である。
図26】押圧ローラが加熱ベルトを介してテンションローラと固定ローラの両方に接触する例を示す図である。
図27】拍車に代えて送風ファンが設けられた例を示す図である。
図28】拍車に代えて吸引ファンが設けられた例を示す図である。
図29】押圧ローラに対する加熱ベルトの巻き付け角度を変更可能にした例を示す図である。
図30】押圧ベルトを用いた例を示す図である。
図31】押圧ベルトの外周面に凹凸が多数設けられた例を示す図である。
図32】押圧ベルトが網目状に形成された例を示す図である。
図33】加熱ローラ内にヒータが設けられた例を示す図である。
図34】用紙の反対の面が液付与面よりも高い温度で加熱されるように、各ヒータの発熱を制御する例を示す図である。
図35】第1加熱部材及び第2加熱部材として加熱ローラを用いた例を示す図である。
図36】第1加熱部材と第2加熱部材とが互いに接触しない例を示す図である。
図37】第1加熱ローラに接触する回転体をベルト部材とした例を示す図である。
図38】第1加熱ローラと第2加熱ローラの順を図36に示す例とは逆にした例を示す図である。
図39】加熱ベルトに接触するセラミックヒータを用いた例を示す図である。
図40】ニップ部の位置で加熱ベルトに接触するセラミックヒータを用いた例を示す図である。
図41】押圧ベルトに接触するセラミックヒータを用いた例を示す図である。
図42】回転しないベルト支持部材によって加熱ベルトを支持した例を示す図である。
図43】押圧パッドを用いた例を示す図である。
図44】加熱ガイドを用いた例を示す図である。
図45】加熱ガイドの変形例を示す図である。
図46図45に示す加熱ガイドの用紙幅方向の断面図である。
図47】他の画像形成装置の構成を示す図である。
図48】さらに別の画像形成装置の構成を示す図である。
図49】画像形成装置に装着される付加装置の一例を示す図である。
図50】画像形成装置に装着される付加装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱手段)6と、シート排出部7と、を備えている。また、画像形成装置100の横には、シート揃え装置200が配置されている。
【0012】
原稿搬送装置1は、原稿トレイ11から原稿を1枚ずつ分離して画像読取装置2のコンタクトガラス13に向けて搬送する装置である。原稿搬送装置1は、原稿を搬送する原稿搬送手段として複数の搬送ローラなどを備えている。
【0013】
画像読取装置2は、コンタクトガラス13上に載置された原稿の画像や、コンタクトガラス13上を通過する原稿の画像を読み取る装置である。画像読取装置2は、画像読取部としての光学走査ユニット12を備えている。光学走査ユニット12は、コンタクトガラス13上の原稿に光を照射する光源や、原稿の反射光から画像を読み取る画像読取手段としてのCCD(電荷結合素子)などを有している。また、画像読取手段として、密着型イメージセンサ(CIS)などを用いてもよい。
【0014】
画像形成部3は、シートに液を付与する液付与手段としての液体吐出ヘッド14を有している。液体吐出ヘッド14は、画像形成用の液体であるインクを吐出してシートに付与する。液体吐出ヘッド14としては、主走査方向(シート幅方向)に移動しながらインクを吐出する、いわゆるシリアル型でもよいし、主走査方向に並ぶ複数の液体吐出ヘッドを移動させずにインクを吐出する、いわゆるライン型であってもよい。なお、シリアル型及びライン型の各液体吐出ヘッド14の詳しい構成については、後述する。
【0015】
カートリッジ装着部5には、複数のインクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bkが着脱可能に装着されている。各インクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bkには、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの異なる色のインクが充填されている。各インクカートリッジ内のインクは、供給ポンプによって液体吐出ヘッド14へ供給される。
【0016】
シート供給装置4は、シート収容部としての複数の給紙カセット16を備えている。各給紙カセット16には、画像が形成されるシートとして、A4サイズやB4サイズなどのあらかじめ用紙搬送方向(シート搬送方向)に所定のサイズに裁断された用紙P、いわゆるカット紙が収容されている。また、各給紙カセット16には、シート給送手段としての給紙ローラ17と、シート分離手段としての分離パッド18と、が設けられている。
【0017】
シート揃え装置200は、画像形成装置100から送られてきた用紙を揃える後処理手段としての後処理装置である。また、シート揃え装置200のほか、用紙を綴じ処理するステープル処理装置や、用紙に穴をあけるパンチ処理装置などの他の後処理装置が配置されていてもよい。
【0018】
図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の基本動作について説明する。
【0019】
印刷動作開始の指示があると、複数の給紙カセット16のうちのいずれかの給紙カセット16から用紙Pが給送される。詳しくは、給紙ローラ17が回転することにより、給紙カセット16に収容されている最上位の用紙Pが給紙ローラ17と分離パッド18とによって他の用紙(用紙束)と分離されて送り出される。
【0020】
用紙Pが画像形成部3と対向する水平方向の搬送路20に搬送されると、画像形成部3によって用紙Pに画像が形成される。詳しくは、画像読取装置2によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に応じて液体吐出ヘッド14の吐出動作が制御されることにより、用紙Pの画像形成面(上面)にインクが吐出されて画像が形成される。なお、用紙Pに形成される画像は、文字、図形等の有意な画像のほか、それ自体意味を持たないパターンなどであってもよい。
【0021】
両面印刷を行う場合は、画像形成部3の用紙搬送方向下流側で、用紙Pを反対方向へ搬送することにより、用紙Pを反転搬送路21へ案内する。詳しくは、用紙Pの後端が、画像形成部3の用紙搬送方向下流側に配置されている第1経路切換手段31を通過した後、用紙Pを反対方向に搬送する。また、用紙Pの後端が第1経路切換手段31を通過した後、第1経路切換手段31によって搬送路が反転搬送路21に切り換えられる。これにより、用紙Pが反転搬送路21へ案内される。そして、用紙Pが反転搬送路21を通過することにより、用紙Pは表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、上記と同様の画像形成部3の動作により用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0022】
画像が形成された用紙Pは、第1経路切換手段31よりも用紙搬送方向下流側にある第2経路切換手段32によって、乾燥装置6を通過する搬送路22か、乾燥装置6を通過しない搬送路23かへ、選択的に案内される。用紙Pが乾燥装置6を通過する搬送路22へ案内されると、乾燥装置6によって用紙P上のインクが乾燥される。一方、用紙Pが乾燥装置6を通過しない搬送路23へ案内された場合は、用紙Pが、第3経路切換手段33によって、シート排出部7へ向かう搬送路24か、シート揃え装置200へ向かう搬送路25かへ、選択的に案内される。また、乾燥装置6を通過した用紙Pは、別の第4経路切換手段34によって、シート排出部7へ向かう搬送路26か、シート揃え装置200へ向かう搬送路27かへ、選択的に案内される。
【0023】
そして、用紙Pがシート排出部7へ向かう搬送路24,26へ案内された場合は、用紙Pがその画像形成面((インクが付与された液付与面))を下向きにしてシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路25,27へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。これにより一連の印刷動作が完了する。
【0024】
次に、画像形成部3の一例としてシリアル型の液体吐出ヘッド14の構成について説明する。
【0025】
図2は、シリアル型の液体吐出ヘッド14を備える画像形成部3の平面図である。
【0026】
図2に示すように、画像形成部3は、液体吐出ヘッド14を搭載するキャリッジ9と、キャリッジ9を用紙幅方向である主走査方向Eへ案内するためのガイド部材(ガイドロッド)10と、キャリッジ9を移動させる駆動装置19と、を備えている。
【0027】
実施形態では、ブラックインク滴を吐出する吐出口列を有するブラック用の液体吐出ヘッド14Aと、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクを吐出する吐出口列を有するカラー用の液体吐出ヘッド14Bが、キャリッジ9に設けられている。各液体吐出ヘッド14A,14Bは、それぞれの吐出口列が主走査方向Eと交差する方向(用紙搬送方向A)に配置されるように、インク吐出方向を下方に向けて装着されている。なお、異なる色ごとに個別の液体吐出ヘッドを設けてもよい。また、液体吐出ヘッドは、ブラック及びシアン用の各色インクを吐出するヘッドと、マゼンタ及びイエロー用の各色インクを吐出するヘッドであってもよい。また、使用されるインクの色は上記色に限定されるものではない。
【0028】
各液体吐出ヘッド14A,14Bが備えるインクを吐出するためのエネルギー発生手段としては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを用いることができる。 また、キャリッジ9には、各液体吐出ヘッド14A,14Bに各色のインクを供給するための複数のサブタンクが搭載され、各サブタンクにはインク供給チューブを介して画像形成装置本体に搭載されたインクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bk(図1参照)からインクが補充供給される。
【0029】
駆動装置19は、駆動源であるモータ28と、駆動プーリ29及び従動プーリ30に掛け回されたタイミングベルト35と、を備えている。モータ28が駆動し、駆動プーリ29が回転すると、タイミングベルト35が周回運動することにより、タイミングベルト35に連結されたキャリッジ9が、ガイド部材10に沿って主走査方向Eへ移動する。モータ28の回転方向が一方向とその逆方向とに切り換えられることにより、キャリッジ9は主走査方向Eへ往復移動することができる。
【0030】
キャリッジ9が主走査方向Eへ移動しながら画像信号に応じて各液体吐出ヘッド14A,14Bからインクが吐出されることにより、停止している用紙Pに対して1行分の画像が形成される。そして、用紙Pが図2中の矢印A方向に所定量搬送された後、次の行の画像形成が行われる。続けて同様に、用紙Pの搬送及び停止と、キャリッジ9の往復移動が繰り返し行われ、用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
【0031】
続いて、画像形成部3の他の例としてライン型の液体吐出ヘッド14の構成について説明する。
【0032】
図3は、ライン型の液体吐出ヘッド14を備える画像形成部3の平面図である。
【0033】
図3に示すように、画像形成部3は、ベース部36の用紙搬送方向Aと用紙幅方向(主走査方向E)のそれぞれの方向に並んで配置された複数の液体吐出ヘッド14を備えている。各液体吐出ヘッド14には、複数のノズルを配列したノズル列54が設けられている。
【0034】
この場合、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、用紙Pが画像形成部3との対向領域を通過する際に、画像情報に基づく駆動信号によって各液体吐出ヘッド14の吐出駆動が制御され、各液体吐出ヘッド14から各色のインクが用紙Pに吐出される。これにより、用紙Pに対して画像情報に応じた画像が形成される。
【0035】
図4は、本実施形態に係る乾燥装置6の概略構成図である。
【0036】
図4に示すように、乾燥装置6は、加熱ベルト40と、テンションローラ41と、固定ローラ42と、押圧ローラ43と、ヒータ44と、複数の拍車45と、を備えている。
【0037】
加熱ベルト40は、用紙に接触して用紙を加熱する加熱部材である。加熱ベルト40は、可撓性を有する無端状のベルト部材で構成され、テンションローラ41及び固定ローラ42に掛け回されて回転可能に支持されている。
【0038】
テンションローラ41及び固定ローラ42は、加熱ベルト40を回転可能に支持するベルト支持部材である。テンションローラ41は、加熱ベルト40内で移動可能に構成され、バネなどの付勢手段によって加熱ベルト40の内周面に押圧されている。一方、固定ローラ42は、移動しないように固定されている。
【0039】
押圧ローラ43は、テンションローラ41と固定ローラ42との間で加熱ベルト40の外周面を押圧する押圧部材である。押圧ローラ43がバネやカムなどの加圧手段によって加熱ベルト40の内側(テンションローラ41及び固定ローラ42のそれぞれの外周面に接する共通接線Mよりも内側)へ押し込まれることより、加熱ベルト40には、押圧ローラ43の外周面に沿って湾曲する湾曲部40aが形成されている。
【0040】
ヒータ44は、加熱ベルト40を加熱する加熱源である。本実施形態では、ヒータ44がテンションローラ41の内側に配置されている。このため、ヒータ44が発熱すると、その熱がテンションローラ41を介して加熱ベルト40に伝わり、加熱ベルト40が加熱される。従って、本実施形態におけるテンションローラ41は、内部に配置されたヒータ44の熱によって加熱ベルト40を加熱する加熱部材(加熱回転体)として機能する。加熱源としては、ハロゲンヒータやカーボンヒータなどの赤外線を放出する輻射熱式ヒータのほか、電磁誘導式の加熱源や、温風発生装置などを用いることが可能である。また、ヒータは、接触式、非接触式のいずれであってもよい。本実施形態では、ヒータ44としてハロゲンヒータを用いている。
【0041】
拍車45は、外径方向に突出する複数の突起を有する突起回転体である。拍車45は、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側で加熱ベルト40の外周面に接触するように配置されている。また、図5に示すように、拍車45は、ベルト幅方向Bに伸びる支軸46に複数設けられている。ここで「ベルト幅方向」とは、加熱ベルト40の外周面に沿って用紙搬送方向Aとは交差する方向をいう。また、図6に示す例のように、互いに接近する複数の拍車45によって構成される拍車群を、ベルト幅方向Bに渡って等間隔に配置してもよい。また、各拍車45は、ベルト幅方向Bに渡って間隔を異ならせて配置されてもよいし、用紙搬送方向Aにおける上流側の拍車45と下流側の拍車45が、用紙搬送方向Aに同じ位置でなく、ベルト幅方向Bに互いにずれて配置されていてもよい。
【0042】
続いて、乾燥装置6の基本動作について説明する。
【0043】
印刷動作が開始されると、固定ローラ42が図4中の矢印方向(反時計回り)に回転駆動することにより、加熱ベルト40が従動回転し、これに伴って、テンションローラ41、押圧ローラ43及び拍車45も従動回転する。なお、テンションローラ41や押圧ローラ43が駆動ローラとして機能してもよい。また、ヒータ44が発熱することにより、テンションローラ41を介して加熱ベルト40が加熱される。ヒータ44は、加熱ベルト40の温度が例えば100~150℃の範囲内に維持されるように発熱制御される。
【0044】
この状態で、図4に示すように、液体状のインクIが付与された用紙Pが乾燥装置6へ搬送されると、用紙Pは、拍車45と加熱ベルト40との間を通過した後、押圧ローラ43と加熱ベルト40との間を通過するように搬送され、乾燥装置6から排出される。このとき、用紙Pは、主に加熱ベルト40の熱によって加熱されることにより、用紙P上のインクIの乾燥が促進される。乾燥装置6から排出された用紙Pは、上述のように、シート排出部7かシート揃え装置200へ搬送される。
【0045】
ところで、用紙上のインクの乾燥に必要な熱量は、用紙に付与されるインク量によって異なる。用紙に対するインク付与量が多くなるほど、必要な熱量も多くなる傾向にある。従って、特にインク付与量が多い場合は、用紙に対する供給熱量を多くすることが好ましい。これに対する対策として、乾燥装置を通過する用紙の速度を遅くする方法がある。すなわち、乾燥装置を通過する用紙の速度を遅くすると、用紙が加熱される時間が長くなるため、用紙に対する供給熱量を増加させることができる。
【0046】
しかしながら、乾燥装置を通過する用紙の速度を単に遅くすると、画像形成から用紙排出までに要する時間が長くなり、生産性(単位時間あたりの画像出力枚数)が低下するといった問題が発生する。そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、このような生産性の低下の問題を改善すべく、用紙の搬送速度を次のように制御している。
【0047】
以下、本実施形態に係る搬送速度の制御方法について説明する。
【0048】
図7は、給紙カセット16から供給された用紙Pの前端e1が、画像形成部3よりも用紙搬送方向上流側に設けられた搬送手段としてのタイミングローラ対101に突き当たり、搬送が一旦停止された状態を示す図である。
【0049】
この状態から、タイミングローラ対101の回転が開始されることにより、図8に示すように、用紙Pが画像形成部3へ向かって搬送され、用紙Pに画像が形成される。ここで、用紙Pが画像形成部3を通過するときの速度を第1の速度V1とする。ただし、画像形成部3を通過する際の用紙Pの搬送動作は、液体吐出ヘッド14がシリアル型である場合とライン型である場合とで異なるので、それぞれの場合に応じて第1の速度Vを以下のように定義する。
【0050】
液体吐出ヘッド14がライン型である場合は、用紙Pが一定の速度で継続的に搬送されるため、用紙Pが画像形成部3を通過する速度を第1の速度V1とする。
【0051】
一方、液体吐出ヘッド14がシリアル型である場合は、用紙Pが間欠的に搬送されるため、第1の速度V1を下記(1)~(4)のいずれかとする。
(1)タイミングローラ対101から用紙Pの第1行目を印字する位置まで送るときの搬送速度
(2)用紙Pの前端(搬送方向の先端)がタイミングローラ対101を通過してから用紙Pの後端が後述の第1用紙センサS1を通過するまでの搬送距離をその搬送時間で除算して得られる単位時間あたりの速度
(3)用紙Pの前端がタイミングローラ対101を通過してから用紙Pの最終行の印字が終了するまでの搬送距離をその搬送時間で除算して得られる単位時間あたりの速度
(4)用紙Pに1行印字した後、次の1行分を印字する長さ分だけ移動するまでの用紙の搬送速度
【0052】
その後、図9に示すように、用紙Pの後端e2が、画像形成部3の用紙搬送方向下流端又はその近傍に設けられた第1用紙センサS1によって検知されると、第1用紙センサS1の検知信号に基づいて用紙Pの速度が上記第1の速度V1よりも速い第2の速度2に増速される。そして、用紙Pは、その第2の速度V2で乾燥装置6へ向かって搬送される。なお、用紙Pの速度が第1の速度V1から第2の速度V2へ増速するタイミングは、用紙Pの最終行の画像形成が完了したタイミングであってもよい。
【0053】
その後、図10に示すように、用紙Pの前端e1が、乾燥装置6の用紙搬送方向上流側に設けられた第2用紙センサS2によって検知されると、第2用紙センサS2の検知信号に基づいて用紙Pの速度が上記第2の速度V2よりも遅い第3の速度V3に減速される。
【0054】
そして、図11に示すように、用紙Pは上記第3の速度V3で乾燥装置6に進入し、乾燥装置6によって用紙Pが第3の速度V3で搬送されながら加熱される。
【0055】
その後、図12に示すように、用紙Pの後端e2が、乾燥装置6の用紙搬送方向下流側に設けられた第3用紙センサS3によって検知されると、用紙Pの速度が第3の速度V3から第1の速度V1へ増速され、用紙Pがシート排出部7かシート揃え装置200へ搬送される。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置においては、画像形成部3によって用紙Pにインクが付与された後、用紙Pの速度を第1の速度V1から第2の速度V2へ増速して乾燥装置6へ搬送することにより、増速しない場合に比べて、用紙Pにインクが付与されてから、その用紙Pがシート排出部7かシート揃え装置200へ搬送されるまでの時間を短くすることができる。これにより、生産性を向上させることができるようになる。
【0057】
また、本実施形態に係る画像形成装置においては、用紙Pが乾燥装置6へ進入する前に、用紙Pの速度が、第2の速度V2からそれよりも遅い第3の速度V3へ変更されることにより、乾燥装置6による用紙Pの加熱時間を長く確保することができるようになる。これにより、インクを効果的に乾燥させることが可能である。
【0058】
また、本実施形態に係る画像形成装置においては、用紙Pを増速又は減速するタイミングを、用紙を検知する用紙検知手段(搬送対象物検知手段)としての3つの用紙センサS1,S2,S3を用いて決定しているため、所定のタイミングで確実に用紙Pの速度を増速又は減速させることが可能である。
【0059】
生産性の向上を図ため、第1用紙センサS1は、液体吐出ヘッド14の用紙搬送方向下流端に近い位置に配置されることが好ましい。第1用紙センサS1を、液体吐出ヘッド14の用紙搬送方向下流端又はその近傍に配置することにより、早いタイミングで第2の速度V2へ増速できるようになり、生産性を向上させることができる。例えば、液体吐出ヘッド14がシリアル型の場合、第1用紙センサS1は、キャリッジ9の横側面(図2におけるキャリッジ9の左側面又は右側面)に取り付けられることが好ましい。また、吐出ヘッド14がライン型である場合は、第1用紙センサS1が、ベース部36の用紙搬送方向下流端(図3におけるベース部36の上端面)に取り付けられることが好ましい。なお、第1用紙センサS1は、画像形成部3ではなく、画像形成装置本体に取り付けられていてもよい。
【0060】
第2用紙センサS2は、生産性を向上させるために、できるだけ乾燥装置6に近い位置に配置されることが好ましい。すなわち、用紙Pの減速をできるだけ乾燥装置6に近い位置で行うことにより、用紙Pが速い速度(第2の速度V2)で搬送される時間を長く確保できるようになり、生産性を向上させることができる。ただし、搬送速度(搬送ローラ対の回転速度)は瞬時に切り換えられるわけではないので、第2用紙センサS2は乾燥装置6の入口直前よりは手前側に配置されることが好ましい。すなわち、乾燥装置6の加熱ベルト40は、第3の速度V3と同じ速度で回転しているので、用紙Pの前端が加熱ベルト40に接触する前に、用紙Pの速度が第2の速度V2から第3の速度V3へ完全に切り換えられるようにすることが好ましい。これにより、用紙Pの速度と加熱ベルト40の回転速度が一致しないことによる画像の擦れを防止できるようになる。
【0061】
また、第3用紙センサS3も同様に、生産性を向上させる目的で、乾燥装置6に対して可能な限り近い位置に配置されることが好ましい。これにより、早いタイミングで用紙Pの速度を第3の速度V3からこれより速い速度(例えば、第1の速度V1)へ切り換えることができる。
【0062】
図13図15は、上述の搬送速度の変化を時系列で表したグラフである。なお、ここでは、画像形成部3が図3に示すライン型の液体吐出ヘッド14である場合を想定している。
【0063】
図13に示すように、上述の実施形態では、第3の速度V3を、第1の速度V1よりも遅い速度に設定している。これにより、乾燥装置6に対する用紙Pの通過時間を長く確保することができるようになり、インクを効果的に乾燥させることが可能となる。ただし、第3の速度V3は、この例に限らず、図14に示す例のように第1の速度V1と同じ速度であってもよいし、図15に示す例のように第1の速度V1と第2の速度V2との間の速度であってもよい。第3の速度V3をいずれの速度に設定するかは、乾燥装置6の性能(乾燥能力)や生産性などを考慮して適宜決定すればよい。
【0064】
また、用紙に付与されるインク量に応じて、第3の速度V3を変更可能にしてもよい。例えば、用紙に付与されるインク量が多い場合は、図13に示すように、第3の速度V3を第1の速度V1よりも遅くすることにより用紙の加熱時間を長く確保し、反対に、用紙に付与されるインク量が少ない場合は、図15に示すように、第3の速度V3を第1の速度V1と第2の速度V2との間の比較的速い速度にして生産性を向上させてもよい。
【0065】
用紙に付与されるインク量の検出は、例えば、画像の解像度や画像面積率を検出することで代用できる。すなわち、用紙に付与されるインク量は、画像の解像度や画像面積率に応じて変化するので、画像の解像度や画像面積率を検出することにより、付与されるインク量を間接的に検出することができる。また、画像の解像度や画像面積率は、上記画像読取装置2によって読み取られた画像情報や画像形成装置とは別の端末などから入力される画像情報などから得られる。そして、画像情報から得られた解像度又は画像面積率が所定値以上である場合は、用紙に付与されるインク量が多い(所定量よりも多い)と判断して、第3の速度V3を第1の速度V1よりも遅い速度に変更し、反対に、解像度又は画像面積率が所定値未満である場合は、用紙に付与されるインク量が少ない(所定量よりも少ない)と判断して、第3の速度V3を第1の速度V1と第2の速度V2との間の比較的速い速度に変更してもよい。また、このような速度変更は、画像情報のみに限らず、解像度の異なる画像形成モードから選択されたモード情報や、液体吐出ヘッド14から吐出されるインクの総量などに基づいて行ってもよい。
【0066】
次に、用紙が連続して搬送される場合の搬送動作について説明する。
【0067】
図16は、先行用紙P1に画像が形成され、後行用紙P2が画像形成部3へ向かって搬送される際の搬送動作を示す図である。このとき、先行用紙Pの後端e2は、第1用紙センサS1の位置に到達していないので、第2の速度V2へ増速されておらず、第1の速度V1で搬送されている。また、後行用紙P2も同様に、第1の速度V1で搬送されている。この状態で、先行用紙P1の後端e2と後行用紙P2の前端e1との間には、搬送方向の間隔Xが介在している。
【0068】
その後、図17に示すように、先行用紙P1の後端e2が第1用紙センサS1を通過すると、先行用紙P1の速度は第1の速度V1から第2の速度V2へ増速される。一方、後行用紙P2は、第1の速度V1で搬送されているため、先行用紙P1の後端e2と後行用紙P2の前端e1との間隔は、上記間隔Xから間隔Yへ拡大する。
【0069】
その後、図18に示すように、先行用紙P1は、乾燥装置6へ進入する前に、第2の速度V2から第3の速度V3へ減速され、第3の速度V3で乾燥装置6を通過する。一方、後行用紙P2は、第1の速度V1から第2の速度V2へ増速されるので、先行用紙P1の後端e2と後行用紙P2の前端e1との間隔は、上記間隔Yから間隔Zへ縮小する。しかしながら、先行用紙P1と後行用紙P2との間隔は、前もって間隔Yに広げられているため、この間隔が縮小しても、後行用紙P2が先行用紙P1に追いついたり、重なったりすることはない。
【0070】
このように、先行用紙P1に画像が形成された後、先行用紙P1の速度を一旦第2の速度V2へ増速させることにより、その後、先行用紙Pの速度を第3の速度V3へ減速させても、先行用紙P1が後行用紙P2に追いつかれることなく、先行用紙P1の加熱時間を長く確保できるようになる。これにより、インクを効果的に乾燥させることができると共に、生産性の向上も図れるようになる。
【0071】
また、用紙センサを用いない場合は、搬送ローラ対の経時的な摩耗による搬送力低下を考慮して、用紙の後端が液体吐出ヘッド14を確実に通過してから増速するように、あらかじめ増速タイミングを遅めに設定する必要があるが、本実施形態のように、用紙センサ(第1用紙センサS1)を用いる場合は、このような対応は不要になる。すなわち、第1用紙センサS1を用いることにより、用紙の後端が液体吐出ヘッド14を通過してから増速するタイミングを早めに設定することができるので、先行用紙P1と後行用紙P2との間隔(図17に示す間隔Y)を大きく確保することが可能である。これにより、先行用紙P1と後行用紙P2との重なりが生じにくくなると共に、用紙が乾燥装置6を通過する際の速度(第3の速度V3)をより遅く設定することができるようになり、インクをより効果的に乾燥させることができるようになる。
【0072】
また、先行用紙P1と後行用紙P2との間隔は、用紙のサイズ(搬送方向のサイズ)によって異なる場合がある。例えば、大きいサイズの用紙が搬送される場合、小さいサイズの用紙が搬送される場合よりも、用紙同士の間隔が広い場合がある。用紙同士の間隔が広い場合は、後行用紙P2の速度を上げても、後行用紙P2が先行用紙P1に追いつきにくくなる。このため、間隔が広い場合は、間隔が狭い場合よりも、後行用紙P2の第2の速度V2をより速い速度に設定してもよい。
【0073】
また、用紙同士の間隔が広い場合は、先行用紙P1の速度を下げても、後行用紙P2が先行用紙P1に追いつきにくい。このため、間隔が広い場合は、間隔が狭い場合よりも、先行用紙P1の第3の速度V3をより遅い速度に設定してもよい。
【0074】
また、用紙同士の間隔が広い場合は、後行用紙P2を増速させるタイミングを早くしてもよい。このため、間隔が広い場合は、間隔が狭い場合よりも、後行用紙P2を第1の速度V1から第2の速度V2へ増速させるタイミングを早くすることが可能である。
【0075】
また、用紙同士の間隔が広い場合は、後行用紙P2を減速させるタイミングを遅らせてもよい。このため、間隔が広い場合は、間隔が狭い場合よりも、後行用紙Pを第2の速度V2から第3の速度V3へ減速させるタイミングを遅くすることができる。
【0076】
また、上記のような搬送速度の制御は、両面印刷時に用紙を反転搬送路へ搬送する場合にも適用可能である。
【0077】
具体的には、図19に示すように、一方の面(表面)に画像が形成された用紙Pが、第1の速度V1から第2の速度V2へ増速されて下流側へ搬送され、その用紙Pの後端e2が第1経路切換手段31を通過すると、用紙Pの搬送を一旦停止する。また、このとき、第1経路切換手段31によって搬送経路が反転搬送路21へ切り換えられる。
【0078】
そして、図20に示すように、用紙Pを反対方向へ搬送し、用紙Pを反転搬送路21へ案内する。このときの用紙Pの速度は、第1の速度V1よりも速い第2の速度V2とする。その後、用紙Pは、タイミングローラ対101に突き当たって搬送が停止された後、タイミングローラ対101によって用紙Pが第1の速度V1で画像形成部3へ搬送される。これにより、表裏が反転された状態で用紙Pが画像形成部3へ搬送され、用紙Pの他方の面(裏面)に画像が形成される。その後、用紙Pは、上述の搬送制御と同様の制御によって(第2の速度V2へ増速した後第3の速度V3へ減速して)乾燥装置6へ搬送される。
【0079】
このように、両面印刷時に用紙Pを反転搬送路21へ搬送する場合も、用紙Pの速度を第2の速度へ一旦増速させることにより、生産性を向上させることが可能である。また、この例のように、表と裏の両方に画像が形成されてから用紙Pを乾燥装置6へ搬送する場合は、表と裏に画像が形成されるたびに用紙Pを乾燥装置6へ搬送する場合に比べて結果的に搬送経路が短くなるため、生産性が向上する。ただし、乾燥装置6から用紙へ供給される総熱量は少なくなるため、表と裏の両方に画像が形成されてから用紙Pを乾燥装置6へ搬送する態様は、用紙に対するインク付与量が比較的少ない場合に行われる方が好ましい。
【0080】
以上、本発明における乾燥性と生産性の両立を実現できる構成や方法について説明したが、上述の実施形態に係る乾燥装置の構成(図4に示す構成)によれば、さらに次のような作用効果も得られる。以下、上述の実施形態に係る乾燥装置の作用効果について説明する。
【0081】
図4に示す実施形態に係る乾燥装置6においては、インクIが付与された用紙Pが乾燥装置6へ搬送されると、用紙Pの液体付与面(インクIが付与された面)Paとは反対の面Pbが加熱ベルト40に接触し、主にこの反対の面Pb側から用紙Pが加熱される。このように、図4に示す乾燥装置6においては、主に用紙Pが液付与面Paとは反対の面Pb側から加熱されることにより、用紙Pに発生するバックカールを抑制することができる。
【0082】
以下、バックカールの発生原理及びそれを抑制する作用効果について説明する。
【0083】
一般的に、普通紙などにおいては、図21に示すように、用紙Pの片側の面Paに液体Liが付着すると、その液体Liの水分Wによって用紙Pの液付与面Pa側の繊維が特定の方向に伸びることにより、カールが発生する。より具体的には、水分Wが用紙Pのセルロース繊維間に浸透し、セルロース繊維間の水素結合を切断することにより、セルロース繊維の間隔が広がって、用紙Pが特定の方向に伸びる。これにより、用紙Pの画像形成面(液付与面Pa)が凸となるような、いわゆるバックカールが発生する。
【0084】
また、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置においては、用紙にトナーを定着させるために、用紙の画像形成面を加熱すると、バックカールと同様のカールが発生することがある。詳しくは、図22に示すように、用紙Pの画像形成面(トナー付着面Pa)が加熱されると、画像形成面がこれとは反対の面Pbよりも高い温度で加熱されるため、用紙Pにもともと含まれている水分Wの含水率が画像形成面側よりも反対の面Pb側で高くなる。その結果、加熱後の乾燥による用紙Pの収縮が画像形成面よりも反対側の面Pbで顕著となり、画像形成面(トナー付着面Pa)が凸となるバックカールが発生する。
【0085】
これに対して、図4に示す乾燥装置6においては、バックカールが生じる図22に示す例とは反対に、用紙Pがその画像形成面(液付与面Pa)とは反対の面Pb側から加熱される。すなわち、図22に示す例とは反対に、用紙Pの液付与面Paよりも反対の面Pbが高い温度で加熱されるので、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用する。このため、図4に示す乾燥装置6によれば、バックカールの発生を抑制できるようになり、バックカールが生じることによる用紙の搬送不良や、用紙積載枚数の減少などの問題を改善できるようになる。
【0086】
さらに、図4に示す乾燥装置6においては、用紙Pが、押圧ローラ43と加熱ベルト40との間(湾曲部40a)を通過する際、湾曲部40aによって液付与面Paが凹となるように曲げられながら搬送される。すなわち、用紙Pは、湾曲部40aを通過することにより、用紙搬送方向Aに渡ってバックカールの曲げ方向(液付与面Paが凸となる曲げ方向)とは反対方向に曲げられる。
【0087】
このように、図4に示す乾燥装置6においては、用紙Pが液付与面Paとは反対の面Pbから加熱され、さらに、用紙Pがバックカールの曲げ方向とは反対方向に曲げられることにより、バックカールを効果的に抑制することが可能である。
【0088】
また、このようなバックカールを抑制する作用効果は、両面印刷の場合に、用紙の裏面に形成された画像を乾燥させる場合も同様に得られる。すなわち、裏面の画像を乾燥させる場合は、用紙Pの裏面とは反対の面、すなわち表面側から主に用紙Pが加熱されることにより、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用する。なお、両面印刷の場合は、用紙の両面にインクが付与されるため、両面とも「液付与面」であるといえるが、本明細書中において「液付与面」とは、シートの片面のみに液(インク)が付与された場合はその液が付与された面(表面)を意味し、シートの両面に液(インク)が付与された場合は2回目に液が付与された面(裏面)を意味する。
【0089】
また、図4に示す乾燥装置6においては、複数の拍車45が押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されているため、用紙Pが押圧ローラ43へ到達する前に、用紙Pは複数の拍車45によって案内される。このとき、用紙P上のインクが液体状であったとしても、拍車45は、一般的な搬送ローラなどに比べて用紙Pに対する接触面積が小さいため、拍車45の接触により用紙P上のインクが乱れるのを抑制できる。また、拍車45へのインクの付着も低減できるため、その後、拍車45から別の用紙にインクが付着することによる用紙の汚れも抑制することが可能である。
【0090】
また、用紙Pは、拍車45によって加熱ベルト40に接触するように案内されるため、用紙Pが押圧ローラ43へ到達する前に用紙Pを加熱ベルト40へ接触させ、インクの乾燥を促進させることができる。これにより、その後、用紙Pが押圧ローラ43と接触した際の画像の乱れを抑制できるようになる。また、用紙Pが押圧ローラ43へ到達した後は、押圧ローラ43によって用紙が加熱ベルト40に対して密着するように押し付けられるため、このときの密着により用紙Pに対する熱供給がより効果的に行われ、インクの乾燥をより一層促進させることが可能である。
【0091】
また、図4に示す乾燥装置6においては、ヒータ44が、押圧ローラ43(又は湾曲部40a)よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されているため、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側で用紙Pを効果的に加熱することができる。これにより、用紙Pが押圧ローラ43に至る前にインクの乾燥を促進させ、押圧ローラ43へのインクの付着をより効果的に抑制することが可能である。
【0092】
また、押圧ローラ43へのインクの付着をより一層抑制するため、押圧ローラ43と用紙との接触面積を少なくするように、外周面に凹凸が設けられたローラを用いてもよい。例えば、図23に示すような、外周面にセラミック又はガラスなどの砥粒55が多数接着された砥粒ローラや、図24に示すような、外周面に網目状の凹凸部(ローレット)56が施されたローレットローラを用いることができる。
【0093】
さらに、図4に示す乾燥装置6においては、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に拍車45が配置されていることにより、用紙Pにコックリングなどの変形が生じた状態で用紙Pが乾燥装置6に搬送されてきたとしても、複数の拍車45によって用紙Pを加熱ベルト40上で平面状に保持しながら搬送することができる。これにより、用紙Pを押圧ローラ43と加熱ベルト40との間に平面状に進入させることができ、用紙Pに対するシワの発生を抑制することができる。
【0094】
なお、拍車45は加熱ベルト40の外周面に必ずしも接触していなくてもよい。用紙Pを加熱ベルト40上で波打たせず平面状に保ちながら搬送することができれば、拍車45は加熱ベルト40の外周面に対して接近するように(隙間を介して非接触に)配置されていてもよい。要するに、良好な用紙搬送性が確保できれば、拍車45は、加熱ベルト40に対して接触していても非接触であってもよい。
【0095】
また、図4に示す乾燥装置6においては、押圧ローラ43が、加熱ベルト40を介してテンションローラ41や固定ローラ42に圧接しておらず、テンションローラ41や固定ローラ42とは互いに用紙搬送方向Aに離れた箇所で加熱ベルト40に接触しているため、用紙Pが強く加圧されることによるシワの発生を抑制できる。すなわち、加熱ベルト40の用紙搬送経路上では、押圧ローラ43と他のローラとが圧接されることによるニップ部は形成されていないので、用紙Pがローラ同士の間(ニップ部)によって強く加圧されることがなく、シワの発生を抑制することが可能である。また、加熱ベルト40がローラ同士の間(ニップ部)で強く加圧されることによる加熱ベルト40への負荷も低減でき、加熱ベルト40の耐久性の向上と長寿命化を図れる。また、加熱ベルト40の回転抵抗も低減できるので、回転効率が向上し、駆動エネルギーの省エネ化も図れる。
【0096】
このように、用紙のシワの発生などを抑制するには、押圧ローラ43が加熱ベルト40を介して他のローラと圧接されていない方が好ましいが、この場合に限らず、バックカールなどの用紙の変形をより効果的に抑制したい場合は、図25に示す例のように、押圧ローラ43を固定ローラ42に対して圧接させてもよい。さらに、図26に示す例のように、押圧ローラ43をテンションローラ41と固定ローラ42の両方に圧接させてもよい。
【0097】
また、画像の乱れを抑制しつつ、用紙Pを加熱ベルト40に接触させる別の手段として、上記のような拍車45に代えて、図27に示すような送風手段としての送風ファン61を用いてもよい。この場合、送風ファン61から吹き出されたエアによって用紙Pが加熱ベルト40に接触させられることにより、用紙Pが強く加圧されることなく、用紙Pを平面状に保ちながら搬送することができる。また、加熱ベルト40が冷えるのを抑制するため、送風ファン61を温風ファンとしてもよい。
【0098】
さらに別の例として、図28に示すような吸引手段としての吸引ファン62を用いてもよい。この場合、加熱ベルト40には多数の吸引孔が設けられており、加熱ベルト40の内側に配置された吸引ファン62によってエアが吸引されることにより、用紙Pが加熱ベルト40に吸着される。これにより、用紙Pは、強く加圧されることなく、平面状に保たれながら搬送される。
【0099】
また、上記のような送風ファン61や吸引ファン62を用いる方法のほか、加熱ベルト40を帯電させ、帯電する加熱ベルト40に用紙Pを静電吸着させる方法を採用することも可能である。
【0100】
また、図29に示す例のように、押圧ローラ43を移動させて、押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを変更可能にしてもよい。これにより、押圧ローラ43と加熱ベルト40とが接触する用紙搬送方向Aの接触範囲(湾曲部40a)の長さHを変更することが可能である。
【0101】
例えば、文字などの画像面積率の低い画像が形成される場合は、用紙Pへのインク付与量が比較的少なく、バックカールが生じにくい。このため、画像面積率の低い画像が形成される場合は、図29に示すように、押圧ローラ43を図の右方向へ移動させて押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを小さくし、上記接触範囲の長さHを短くするとよい。この場合、用紙Pが加熱ベルト40の湾曲部40aを通過する際の曲げ矯正作用を小さくすることでき、発生し得るバックカールのカール量に対応した矯正力を付与することができる。なお、この場合、押圧ローラ43と加熱ベルト40との接触範囲の長さHが短くなることにより、押圧ローラ43によって用紙Pが加熱ベルト40に押し付けられながら加熱される時間が短くなる。すなわち、加熱ベルト40から用紙Pに付与される熱量が少なくなるが、画像面積率が低くインク付与量が少ない用紙Pは、乾燥に要する加熱時間も短くて済むため、巻き付け角度θを小さくしても問題ない。また、用紙Pに付与される熱量が少なくなることによる省エネ効果も得られる。
【0102】
反対に、画像面積率が高くインク付与量の多い画像が形成される場合は、押圧ローラ43を図の左側へ移動させて押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを大きくし、上記接触範囲の長さHを長くするとよい。これにより、用紙Pが加熱ベルト40の湾曲部40aを通過する際の曲げ矯正作用が大きくなり、バックカールなどの用紙変形を効果的に抑制できるようになる。
【0103】
また、厚紙などの比較的厚い用紙Pが搬送される場合は、巻き付け角度θが大きいと、用紙Pが湾曲して搬送されにくくなるため、巻き付け角度θを小さくすることが好ましい。巻き付け角度θを小さくすることで、厚い用紙Pが搬送される場合でも、用紙Pを円滑に搬送しやすくなり、搬送不良の発生を回避できるようになる。このように、用紙の厚さや、あるいは用紙に対するインク付与量に応じて、適宜巻き付け角度θを変更することにより、用紙の変形を効果的に抑制しつつ、さらに搬送性や省エネ性を向上させることができるようになる。
【0104】
また、上記のような加熱ベルト40の巻き付き角度θを変更するほか、用紙Pに対するインク付与量が少ない場合は、インク付与量が多い場合に比べて、ヒータ44の発熱量を少なくすることによっても、省エネ性を向上させることが可能である。
【0105】
また、加熱ベルト40の巻き付き角度θを変更する際の押圧ローラ43の移動方向は、押圧ローラ43から用紙搬送方向Aの下流側に伸びる加熱ベルト40の方向(図29の矢印C方向)と平行な方向とすることが望ましい。このようにすることにより、押圧ローラ43が移動しても、乾燥装置6からの用紙Pの排出方向を変更せずに済むので、用紙Pを安定して排出することが可能である。また、本乾燥装置6においては、用紙Pが加熱ベルト40の湾曲部40aを通過することにより、その搬送方向を変更することができる。すなわち、湾曲したベルト部材を用いることによって、用紙Pの搬送方向を所望の方向に容易に変更して用紙Pを搬送することが可能である。
【0106】
また、図29に示す例では、テンションローラ41が、圧ローラ43の移動に伴って同時に移動することにより、加熱ベルト40に付与される張力を所定の値に調整することができる。このとき、テンションローラ41の移動方向を、図29における左斜め下方向(図の矢印D方向)及びこれの反対方向とすることにより、用紙搬送方向Aの最上流位置にある拍車45を移動させなくても、この拍車45と加熱ベルト40との接触状態を維持できる。これにより、用紙Pが用紙搬送方向Aの最上流の拍車45と加熱ベルト40との間へ進入する進入位置又は進入角度が変化しないので、用紙Pを安定して進入させることができる。
【0107】
また、本発明は、上述の乾燥装置に限らず、その他の乾燥装置にも適用可能である。以下、本発明を適用可能な他の乾燥装置の構成について説明する。
【0108】
図30に示す乾燥装置6は、押圧ベルト48が設けられた例である。この例では、押圧ローラ43と、これよりも用紙搬送方向Aの下流側に配置された支持ローラ49に、無端状の押圧ベルト48が掛け回されている。それ以外は、図4に示す構成と基本的に同様である。
【0109】
図30に示す乾燥装置6では、押圧ローラ43が押圧ベルト48を介して加熱ベルト40に向かって付勢されていることにより、押圧ベルト48が加熱ベルト40に押圧されている。すなわち、本実施形態では、押圧ローラ43と押圧ベルト48が、加熱ベルト40を押圧する押圧部材として機能する。また、本実施形態では、固定ローラ42が回転駆動すると、これに伴って、加熱ベルト40、テンションローラ41、押圧ベルト48、押圧ローラ43及び支持ローラ49が従動回転する。また、押圧ローラ43と支持ローラ49のいずれか一方のローラを駆動ローラとしてもよい。
【0110】
この場合、用紙Pが拍車45を通過して、加熱ベルト40と押圧ベルト48との間に進入すると、回転する加熱ベルト40と押圧ベルト48とによって用紙Pが押圧されながら搬送される。このとき、用紙Pは加熱ベルト40の湾曲部40aに沿ってバックカールの曲げ方向とは反対方向に曲げられることにより、バックカールの発生を効果的に抑制できる。また、本実施形態に係る乾燥装置6においては、互いに接触する2つのベルト部材(加熱ベルト40及び押圧ベルト48)を用いているため、用紙Pが挟まれながら搬送される範囲(図30中の符号Hで示す範囲)を用紙搬送方向Aへ大きく確保することができる。これにより、用紙Pをより効果的に加熱することができるため、用紙P上のインクの乾燥をより一層促進させることができ、バックカールなどの変形をより効果的に抑制できるようになる。
【0111】
また、図30に示す乾燥装置6においては、押圧ベルト48が、加熱ベルト40の湾曲部40aから用紙搬送方向Aの上流側ではなく、湾曲部40aから用紙搬送方向Aの下流側へ伸びるように配置されている。このため、用紙Pが押圧ベルト48に接触する前に、用紙Pを加熱ベルト40に接触させ、用紙P上のインクの乾燥を促進させることができる。これにより、押圧ベルト48に対するインクの付着を抑制することが可能である。
【0112】
また、押圧ベルト48へのインクの付着をより効果的に抑制するため、押圧ベルト48として、図31に示すような、外周面に細かい凹凸が多数設けられたベルト57や、図32に示す例のような、網目状に形成されたベルト58を用いてもよい。
【0113】
また、図30に示す乾燥装置6においても、図29に示す例と同様に、押圧ローラ43を移動可能にしてもよい。これにより、押圧ベルト48に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを変更して、押圧ベルト48と加熱ベルト40とが接触する用紙搬送方向Aの接触範囲の長さHを変更することができる。
【0114】
続いて、図33に示す乾燥装置6は、上述の図4に示す乾燥装置6において、さらに押圧ローラ43の内側にも加熱源であるヒータ47が設けられた例である。それ以外は、図4に示す構成と基本的に同様である。
【0115】
この場合、押圧ローラ43は、用紙Pを押圧する押圧部材としての機能と、用紙Pを加熱する加熱部材(加熱回転体)としての機能を兼ねる。従って、用紙Pは、押圧ローラ43を通過する際、加熱ベルト40に接触する面(液付与面Paとは反対の面Pb)と押圧ローラ43に接触する面(液付与面Pa)の両方から同時に加熱される。これにより、用紙Pをより効果的に加熱することができ、用紙P上のインクの乾燥をさらに促進させることができる。
【0116】
また、この場合、加熱ベルト40に接触する面(液付与面Paとは反対の面Pb)の方が押圧ローラ43に接触する面(液付与面Pa)に比べて長い時間熱が付与されることにより、上述の実施形態と同様、用紙Pの液付与面Paとは反対の面Pbの方が液付与面Paよりも高い温度で加熱される。このため、この例においても、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用し、バックカールを抑制することができる。また、このような用紙Pを表裏両面から加熱する構成において、より確実にバックカールの発生を抑制するために、各ヒータ44,47の発熱を制御してしてもよい。
【0117】
図34に示す乾燥装置6は、各ヒータ92,93の発熱を制御することにより、用紙Pの反対の面Pbが液付与面Paよりも高い温度で加熱されるようにした例である。
【0118】
具体的に、図34に示す乾燥装置6は、加熱ローラ90と、加熱ベルト91と、2つのヒータ92,93と、ニップ形成部材94と、ステー95と、反射部材96と、ベルト支持部材97と、2つの温度センサ118,119を備えている。
【0119】
加熱ローラ90は、用紙を加熱する第1加熱部材であって、円筒状に形成された加熱回転体である。一方、加熱ベルト91は、用紙を加熱する第2加熱部材であって、加熱ローラ90よりも径方向に薄い無端状のベルト部材などで構成された加熱回転体である。
【0120】
加熱ローラ90は、バネやカムなどの加圧手段によって加熱ベルト91を介してニップ形成部材94に加圧されている。これにより、加熱ローラ90は、加熱ベルト91に圧接され、これらの間にニップ部Nが形成されている。ニップ形成部材94は、熱による変形防止と、安定したニップ部Nの形成のために、LCPなどの耐熱樹脂材料で構成されることが好ましい。
【0121】
2つのヒータ92,93のうち、一方のヒータ92は、加熱ローラ90の内側に配置され、他方のヒータ93は、加熱ベルト91の内側に配置されている。本実施形態では、各ヒータ92,93としてハロゲンヒータが用いられている。また、これらの加熱源は、ハロゲンヒータやカーボンヒータなどの赤外線光を放出する輻射熱式ヒータのほか、電磁誘導式の加熱源なでであってもよい。
【0122】
ステー95は、加熱ローラ90の加圧力に抗してニップ形成部材94を支持する支持部材である。ステー95がニップ形成部材94を支持することにより、ニップ形成部材94の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが得られる。また、ステー95は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0123】
反射部材96は、ヒータから放射される熱及び光を反射する部材である。反射部材96は、加熱ベルト91内のヒータ93とステー95との間に配置され、ヒータ93から放射された熱や光を加熱ベルト91へ反射する。この場合、加熱ベルト91は、ヒータ93から直接照射される光に加え、反射部材96によって反射される光も受けるので、加熱ベルト91が効果的に加熱される。また、反射部材96によってステー95などの加熱ベルト91以外の部材へ熱が伝達されるのも抑制できるため、省エネ性も向上する。反射部材96の材料としては、アルミニウムやステンレスなどが用いられる。
【0124】
ベルト支持部材97は、加熱ベルト91を内側から支持するC字状又は円筒状の部材である。ベルト支持部材97は、加熱ベルト91の回転軸方向の両端部に挿入されている。これにより、ベルト支持部材97によって加熱ベルト91が回転可能に支持される。特に、加熱ベルト91は、回転しない静止状態で、基本的に周方向に張力が発生しない状態(フリーベルト方式)で支持される。
【0125】
2つの温度センサ118,119は、加熱ローラ90及び加熱ベルト91のそれぞれの表面温度(外周面の温度)を検出する温度検出手段である。各温度センサ118,119の検出温度に基づき、加熱ベルト91の表面温度が加熱ローラ90の表面温度よりも高くなるように各ヒータ92,93の発熱量が制御される。また、各温度センサ118,119の配置は、図34に示す位置に限らず、加熱ローラ90と加熱ベルト91とのニップ開始位置付近(ニップ部Nの用紙入口側)であってもよい。また、各ヒータ92,93の温度を直接検出する温度検出手段を設け、これらの検出温度に基づき、加熱ベルト91の表面温度が加熱ローラ90の表面温度よりも高くなるように制御してもよい。
【0126】
図34に示す乾燥装置6において、加熱ローラ90が図中の矢印方向(時計回り)に回転駆動すると、これに伴って加熱ベルト91が従動回転する。また、各ヒータ92,93の発熱が開始されると、加熱ローラ90及び加熱ベルト91が加熱される。このとき、各温度センサ118,119から得られた検出温度に基づいて、加熱ベルト91の表面温度が加熱ローラ90の表面温度よりも高くなるように各ヒータ92,93の発熱量が制御される。
【0127】
これにより、用紙Pが乾燥装置6へ搬送されると、用紙Pの液付与面Paとは反対の面Pbが表面温度の高い加熱ベルト91によって加熱される。その結果、用紙Pの反対の面Pbが液付与面Paよりも高い温度で加熱されることになり、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用する。このように、図34に示す乾燥装置6においては、各ヒータ92,93の発熱量を制御することにより、用紙Pの反対の面Pbが液付与面Paよりも高い温度で加熱される状態をより確実に実現でき、バックカールの発生をより効果的に抑制できるようになる。
【0128】
また、図35に示す例のように、内側にヒータ59,60を有する第1加熱部材及び第2加熱部材は、互いに接触(圧接)する一対の加熱ローラ68,69であってもよい。
【0129】
また、図36に示す例のように、第1加熱部材及び第2加熱部材は、互いに接触しないように配置されていてもよい。この例では、内部にヒータ113を有する第1加熱部材としての第1加熱ローラ111と、内部にヒータ114を有する第2加熱部材としての第2加熱ローラ112が、用紙搬送方向Aに互いに離れた位置に配置されている。この場合も、用紙Pの液付与面Paとは反対の面Pbが液付与面Paよりも高い温度で加熱されるように、第2加熱ローラ112の表面温度を第1加熱ローラ111の表面温度よりも高くなるように制御する。
【0130】
ただし、この場合、第2加熱ローラ112の表面温度を第1加熱ローラ111の表面温度よりも高くなるように制御するにあたって、次のような事情を考慮して温度制御することが好ましい。すなわち、図36に示す例では、用紙Pが第2加熱ローラ112のニップ部を通過した後、用紙Pが第1加熱ローラ111のニップ部に進入するまでに用紙Pの表面温度が低下するため、その後の第1加熱ローラ111の加熱によって用紙Pの液付与面Paの温度がこれとは反対の面Pbの温度よりも高くならないようにする必要がある。そのため、第1加熱ローラ111の温度は、用紙Pが第1加熱ローラ111のニップ部に進入するときの反対の面Pbの温度よりも低くなるように制御することが好ましい。このように制御することにより、用紙Pの反対の面Pbの温度が液付与面Paの温度よりも高い状態を維持することができ、バックカールを効果的に抑制することが可能となる。
【0131】
また、図36に示す例において、第1加熱ローラ111に接触するローラを、図37に示すような無端状のベルト部材115に変更してもよい。図37に示すベルト部材115は、2つの支持ローラ116,117によって張架されており、第1加熱ローラ111がベルト部材115に押し当てられることより、ベルト部材115には第1加熱ローラ111の外周面に沿って湾曲する湾曲部115aが形成されている。
【0132】
この場合、用紙Pの液付与面Paとは反対の面Pbが高い温度で加熱されることに加え、用紙Pがベルト部材115の湾曲部115aを通過することによる曲げ作用も用紙Pに対して付与されるため、バックカールの発生を効果的に抑制することができる。
【0133】
また、図36に示す第1加熱ローラ111及び第2加熱ローラ112の配置を、図38に示すように、用紙搬送方向Aに渡って逆の配置にしてもよい。すなわち、第1加熱ローラ111を、第2加熱ローラ112よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置してもよい。この場合、用紙Pは、まず、第1加熱ローラ111に接触することにより、用紙Pの液付与面Paが加熱されるが、その後、用紙Pが第2加熱ローラ112に接触することにより、用紙Pの液付与面Paとは反対の面Pbが加熱される。このとき、第2加熱ローラ112の温度が第1加熱ローラ111の温度よりも高くなるように設定されていることにより、第1加熱ローラ111による加熱後、用紙Pの液付与面Paとは反対の面Pbを高い温度で加熱することができる。これにより、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力を作用させ、バックカールを抑制することができる。
【0134】
また、図4や、図25図33に示す加熱ベルト40を加熱するヒータは、ローラ内に配置されたヒータに限らず、図39に示すような加熱ベルト40の内周面に接触するセラミックヒータ50であってもよい。また、このようなセラミックヒータ50は、加熱ベルト40の外周面に接触するように配置されていてもよい。ただし、セラミックヒータ50は回転する加熱ベルト40に対して相対的に摺動するため、このときの摺動抵抗を低減できるように、セラミックヒータ50と加熱ベルト40との間に低摩擦材料から成る摺動シート、又は熱伝導効率を高めるための摺動コーティングを施したアルミ等の板金部材を介在させることが好ましい。
【0135】
さらに、図40に示す例のように、加熱源は、ニップ部Nの位置で加熱ベルト91に接触するセラミックヒータ120であってもよい。
【0136】
また、図41に示す例のように、加熱ベルト40に接触するセラミックヒータ50のほか、押圧ベルト48に接触するセラミックヒータ53を配置してもよい。
【0137】
また、加熱ベルト40を支持するベルト支持部材は、ローラなどの回転体に限らない。例えば、図42に示すような、回転しない複数のベルト支持部材64,65によって加熱ベルト40が支持されてもよい。また、各ベルト支持部材64,65は、別体で構成されるほか、一対のフレーム部材66を介して一体に構成されてもよい。この場合、押圧ローラ43が回転駆動することにより、加熱ベルト40が各ベルト支持部材64,65に対して摺動しながら従動回転する。このとき、加熱ベルト40と各ベルト支持部材64,65の間で生じる摺動抵抗を低減するため、各ベルト支持部材64,65は低摩擦材料で構成されることが好ましい。あるいは、加熱ベルト40と各ベルト支持部材64,65との間に、低摩擦材料から成る摺動シートを介在させてもよい。
【0138】
また、加熱ベルト40を押圧して湾曲部を形成する押圧部材は、押圧ローラなどの回転体に限らない。例えば、図43に示す例のように、押圧部材は、曲面状のセラミックヒータなどで構成された回転しない押圧パッド67であってもよい。例えば、用紙に付与される液が画像を形成しない処理液などである場合は、液付与面Paと押圧パッド67が摺接しても画像の乱れの問題は発生しないので、このような押圧パッド67を採用することも可能である。なお、この場合も、加熱ベルト40と押圧パッド67との間で生じる摺動抵抗を低減するため、これらの間に低摩擦材料から成る摺動シートを介在させることが好ましい。
【0139】
また、加熱ベルト40などの回転体に代えて、図44に示すような回転しない加熱ガイド70を用いてもよい。図44に示す加熱ガイド70は、用紙Pを湾曲させる湾曲部70aを有しており、押圧ローラ43が回転駆動することにより、用紙Pが加熱ガイド70に接触しながら搬送される。このとき、用紙Pは、加熱ガイド70によって液付与面Paとは反対の面Pb側から加熱されると共に、湾曲部70aにて液付与面Paが凹となるように湾曲しながら搬送されることにより、バックカールが抑制される。
【0140】
また、加熱ガイド70は、図45及び図46に示すような構成であってもよい。この場合、加熱ガイド70は、用紙Pの幅方向全体に渡って配置された主ガイド部70bと、用紙Pの幅方向両端部側に配置された一対の端部ガイド部70cと、を有している。主ガイド部70bは、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbに対向するように配置され、各端部ガイド部70cは、用紙Pの幅方向端部と、その端部側の液体付着面Paに対向するように配置されている。また、この場合、加熱ガイド70の湾曲部70aに押圧ローラ43は設けられていない。代わりに、加熱ガイド70の用紙搬送方向Aの上流側と下流側に拍車45が設けられている。
【0141】
図45及び図46に示す実施形態においては、用紙Pが加熱ガイド70へ搬送されると、用紙Pの幅方向両端部が主ガイド部70bと各端部ガイド部70cとの間に進入し、これらのガイド部70b,70cによって用紙Pが案内される。また、用紙Pは、用紙搬送方向Aの上流側の拍車45と主ガイド部70bによって挟まれながら搬送される。そして、用紙Pは、加熱ガイド70の湾曲部70aを通過し、続いて、用紙Pは、用紙搬送方向Aの下流側の拍車45と主ガイド部70bによって挟まれながら搬送され、排出される。この場合も、用紙Pが、液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、液体付着面Paが凹となるように湾曲させられることにより、バックカールなどの変形が効果的に抑制される。
【0142】
以上、本発明を適用可能な乾燥装置の種々の構成について説明したが、このような乾燥装置(加熱手段)は、図1に示すような構成の画像形成装置に限らず、図47図48に示すような他の画像形成装置にも搭載可能である。
【0143】
以下、図47及び図48に示す各画像形成装置の構成について説明する。なお、以下の説明では、主に上述の実施形態とは異なる部分について説明し、その他の部分については上述の実施形態と同様であるので適宜説明を省略する。
【0144】
図47に示す画像形成装置100は、上述の実施形態と同様の、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱手段)6と、シート排出部7に加え、さらに手差しシート供給装置8を備えている。ただし、図47に示す画像形成部3は、図1に示す実施形態とは異なり、用紙Pが水平方向に対して斜めに搬送される搬送路80に対向するように配置されている。
【0145】
手差しシート供給装置8は、用紙を載置する載置部としての手差しトレイ51と、手差しトレイ51から用紙を給送する給送手段としての給紙ローラ52と、を有する。手差しトレイ51は、画像形成装置本体に対して開閉可能(揺動可能)に取り付けられている。手差しトレイ51が開いた状態(図47に示す状態)となることで、手差しトレイ51上に用紙を載置し、給送することができる。
【0146】
図47に示す画像形成装置100において、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置4又は手差しシート供給装置8から用紙Pが供給され、用紙Pが画像形成部3へ搬送される。そして、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、液体吐出ヘッド14から用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
【0147】
両面印刷を行う場合は、用紙Pが画像形成部3を通過した後、用紙Pが反対方向に搬送され、第1経路切換手段71により用紙Pが反転搬送路81へ案内される。用紙Pは、反転搬送路81を通過することにより、表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0148】
片面あるいは両面に画像が形成された用紙Pは、乾燥装置6に搬送され、用紙P上のインクが乾燥される。なお、表面のインクの乾燥処理後に用紙Pの裏面に画像を形成する場合は、表面のインクの乾燥処理を行った後、乾燥装置6を迂回する搬送路を経由して用紙Pを乾燥装置6よりも用紙搬送方向上流側へスイッチバックさせ、反転搬送路81を介して用紙Pを再び画像形成部3へ案内することが望ましい。乾燥装置6を通過した用紙Pは、第2経路切換手段72によって、上段のシート排出部7へ向かう搬送路82か、下段のシート排出部7へ向かう搬送路83か、選択的に案内される。用紙Pが上段のシート排出部7へ向かう搬送路82へ案内された場合は、用紙Pは上段のシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pが下段のシート排出部7へ向かう搬送路83へ案内された場合は、用紙Pが、第3経路切換手段73によって、下段のシート排出部7へ向かう搬送路84か、シート揃え装置200へ向かう搬送路85かへ、選択的に案内される。
【0149】
そして、用紙Pが下段のシート排出部7へ向かう搬送路84へ案内された場合は、用紙Pが下段のシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路85へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
【0150】
続いて、図48に示す画像形成装置100は、図47に示す画像形成装置100と同様に、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱手段)6と、シート排出部7にと、手差しシート供給装置8と、を備えている。なお、この場合、画像形成部3は、図1に示す実施形態と同様に、用紙Pが水平方向に搬送される搬送路86に対向するように配置されている。
【0151】
図48に示す画像形成装置100において、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置4又は手差しシート供給装置8から用紙Pが供給され、用紙Pが画像形成部3へ搬送される。そして、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、液体吐出ヘッド14から用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
【0152】
両面印刷を行う場合は、用紙Pが画像形成部3を通過した後、用紙Pが反対方向に搬送され、第1経路切換手段74により用紙Pが反転搬送路87へ案内される。用紙Pは、反転搬送路87を通過することにより、表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0153】
片面あるいは両面に画像が形成された用紙Pは、第2経路切換手段75によって、乾燥装置6へ向かう搬送路88か、シート揃え装置200へ向かう搬送路89か、選択的に案内される。用紙Pが乾燥装置6へ向かう搬送路88へ案内された場合は、用紙P上のインクが乾燥装置6によって乾燥される。なお、表面のインクの乾燥処理後に用紙Pの裏面に画像を形成する場合は、表面のインクの乾燥処理を行った後、乾燥装置6を迂回する搬送路を経由して用紙Pを搬送路88の用紙搬送方向上流側(乾燥装置6よりも上流側)へスイッチバックさせ、反転搬送路87を介して用紙Pを再び画像形成部3へ案内することが望ましい。乾燥装置6を通過した用紙Pはシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路89へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
【0154】
また、上述の各実施形態に係る乾燥装置6は、画像形成装置100に直接搭載されるもののほか、画像形成装置100に装着される付加装置に搭載されるものであってもよい。
【0155】
例えば、付加装置の例として、図49に示すような、画像形成装置100に対して着脱可能に構成された搬送装置300にも上述の各実施形態に係る乾燥装置6を適用可能である。この搬送装置300は、用紙を搬送する搬送手段としての複数の搬送ローラ対301と、用紙が搬送される搬送路82~85と、用紙を加熱する乾燥装置6と、用紙を排出するシート排出部7とを備え、画像読取装置2と画像形成部3との間に着脱可能に搭載されている。また、搬送装置300は、乾燥装置6を通過した用紙に処理を施す後処理手段(例えば、シート揃え装置200)にも用紙を搬送可能に構成されている。このような着脱可能な搬送装置300に、上述の各実施形態に係る乾燥装置(加熱手段)のいずれかを適用することにより、画像形成装置100において用紙にカールなどの変形が発生したとしても、搬送装置300に設けられた乾燥装置6によって用紙の変形を効果的に抑制することができる。
【0156】
また、他の付加装置の例として、図50に示すような後処理手段としての後処理装置400にも上述の各実施形態に係る乾燥装置6を適用可能である。この後処理装置400は、用紙を加熱する乾燥装置6と、用紙にステープル処理やパンチ処理などの後処理を施す後処理部401とを備えている。
【0157】
画像形成装置100から図50に示す後処理装置400へ用紙が搬送されると、用紙は、乾燥装置6によって加熱された後、後処理部401の載置トレイ403に載置される。このとき、用紙がフェイスアップ(画像形成面が上向き)で載置される場合は、作像順が逆順となるように(後のページから形成するように)すればよい。また、載置トレイ403に載置された用紙Pは、後処理部401に設けられた搬送ローラ402によって前後逆向きに搬送される。これにより、用紙Pの後端が載置トレイ403の後端規制部403aに突き当たって用紙Pの後端位置が揃えられる。また、搬送ローラ402は、載置トレイ403への用紙排出の妨げにならないように、用紙Pに対して接触可能な位置から用紙Pと接触しない退避位置に移動可能に構成されている。そして、用紙Pの後端位置が揃えられた状態で、用紙Pにステープル処理やパンチ処理などが施される。その後、搬送ローラ402が逆回転することにより、載置トレイ403上の用紙Pが後処理装置400の外部へ排出される。このような後処理装置400に、上述の各実施形態に係る乾燥装置(加熱手段)のいずれかを適用することにより、画像形成装置100において用紙にカールなどの変形が発生したとしても、後処理装置400に設けられた乾燥装置6によって用紙の変形を効果的に抑制することが可能である。
【0158】
以上、本発明を適用可能な乾燥装置や、乾燥装置が搭載される種々の装置の構成について説明したが、これらの実施形態においても、上述の実施形態と同様に、画像形成部3によって用紙Pにインクが付与された後、用紙Pの速度を増速して乾燥装置6へ搬送することにより、生産性を向上させることが可能である。
【0159】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱手段)は、用紙を挟持しながら加熱する加熱手段に限らず、用紙に赤外線を照射して加熱する非接触式の加熱手段であってもよい。
【0160】
また、本発明に用いられる搬送対象物は、紙、樹脂、布、皮革などで構成されたシートのほか、セラミックス、ガラス、木材、金属などで構成された板状部材、ダンボール、石膏ボードなどであってもよい。
【符号の説明】
【0161】
3 画像形成部
6 乾燥装置(加熱手段)
14 液体吐出ヘッド(液付与手段)
21 反転搬送路
100 画像形成装置
P 用紙(搬送対象物)
S1 第1用紙センサ(搬送対象物検知手段)
S2 第2用紙センサ(搬送対象物検知手段)
S3 第3用紙センサ(搬送対象物検知手段)
V1 第1の速度
V2 第2の速度
V3 第3の速度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【文献】特開2004-50451号公報
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