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  • 特許-インク、印刷方法、および印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】インク、印刷方法、および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240509BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240509BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020047710
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147463
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】葛城 弘二
(72)【発明者】
【氏名】菅原 孝志
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117308(JP,A)
【文献】特開2018-043511(JP,A)
【文献】特開2020-007396(JP,A)
【文献】特開2015-007204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホン酸基を含む顔料と、有機溶剤と、水とを含有するインクであって、
前記有機溶剤の1種が沸点200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上であって、前記インクに含まれる有機溶剤全量に対して70質量%以上であり
前記インクの静的表面張力が35.0mN/m以上56.5mN/m以下であり、
更に下記構造式1及び/又は2に記載のフッ素化合物を含有し、
前記インク中の前記フッ素化合物の含有量が0.005質量%以上0.01質量%以下であることを特徴とするインク。
【化1】
【請求項2】
前記ホスホン酸基を含む顔料のカウンターイオンがナトリウムまたはトリエタノールアミンである請求項1に記載のインク。
【請求項3】
沸点が200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上の前記有機溶剤が、インクに含まれる有機溶剤全量に対して80質量%以上である請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
前記インクに含まれる前記有機溶剤の混合溶剤のSP値が14.2(cal/cm0.5以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
更に前記顔料の一部または全てをスチレンアクリル樹脂で覆った顔料を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のインク。
【請求項6】
前記インク中の前記顔料に対する前記スチレンアクリル樹脂の比率が10質量%以上40質量%以下である請求項5に記載のインク。
【請求項7】
更に下記構造式3に記載のポリエーテルウレタン樹脂粒子を含む請求項1~6のいずれか1項に記載のインク。
【化2】
【請求項8】
前記ポリエーテルウレタン樹脂粒子の酸価が48(KOHmg/g)以上80(KOHmg/g)以下である請求項7に記載のインク。
【請求項9】
更に蛍光増白剤を含有する請求項1~8のいずれか1項に記載のインク。
【請求項10】
前記蛍光増白剤がベンゾオキサゾール系蛍光増白剤、またはクマリン系蛍光増白剤である請求項9に記載のインク。
【請求項11】
静的表面張力とバブルライフタイム15msにおける動的表面張力の差が5mN/m以上で、かつバブルライフタイプ15msにおける動的表面張力の値の方が大きい請求項1~10のいずれか1項に記載のインク。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のインクを用いてインクジェット記録方法により印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項13】
インクを吐出する吐出ヘッド、およびインクを含む印刷装置において、前記インクは請求項1~11のいずれか1項に記載のインクであり、前記吐出ヘッドは前記インクを吐出する複数のノズルと、前記ノズルに通じる個別液室と、前記個別液室に前記インクを供給する共通液室と、前記個別液室に通じる循環流路と、前記循環流路に通じる循環共通液室と、前記個別液室の前記インクに圧力を付与する圧力発生手段とを備える吐出ヘッドであることを特徴とする、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、印刷方法、および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式による画像形成方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、しかもランニングコストが低いなどの理由から、急速に普及してきている。
【0003】
普通紙および各種コート紙に使用されるインクには様々な品質、機能が求められるが、基本的な品質である画像濃度の向上についてこれまで種々の検討がなされてきた。特に、インクジェット用インクの普通紙に対する画像濃度の向上は、市場から強く求められている。
【0004】
特許文献1には、ビスホスホン酸基が粒子表面に結合した自己分散顔料を含むインクが記載されている。
特許文献2には、顔料、有機溶剤、及び界面活性剤を含み、静的表面張力と動的表面張力の値を規定したインクが記載されている。
特許文献3には、水、有機溶剤、顔料及びホスホン酸基の塩を有する共重合体を含むインクが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインクには、より高画像濃度化が求められていた。
本発明は以上を鑑みてなされたものであり、炭酸カルシウムが含まれているメディアに高い画像濃度の画像を形成することが可能なインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は以下に記載する通りのものである。
ホスホン酸基を含む顔料と、有機溶剤と、水とを含有するインクであって、
前記有機溶剤の1種が沸点200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上であり、
前記インクの静的表面張力が35.0mN/m以上56.5mN/m以下であり、
更にフッ素化合物を含有することを特徴とするインク。
なお、「RH」とは、相対湿度(Relative Humidity)のことであり、空気中に含まれる水蒸気の量と、その温度の空気が含み得る水蒸気の最大量との比率を意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭酸カルシウムが含まれているメディアに高い画像濃度の画像を形成することが可能なインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、インクジェット記録方式による印刷装置の一例を示す斜視説明図である。
図2図2は、インクジェット記録方式による印刷装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るインク、印刷方法、および印刷装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0011】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤の少なくとも1種は、メディアへの浸透性や乾燥特性などの観点から、沸点が200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上のものから選択される。このような有機溶剤の具体例としては、例えばグリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオールなどが挙げられる。これらの有機溶剤はインクに含まれる有機溶剤全量に対して80質量%以上であることが好ましい。
また、上記の沸点が200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上の有機溶剤と併用して使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0012】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0013】
また、インクの保存安定性の観点から、インク中の有機溶剤の混合溶剤のSP値は14.2(cal/cm0.5以上であることが好ましい。
本発明では以下の式より混合溶剤のSP値を算出した。なお、算出に用いる有機溶剤はインク中に3.0質量%以上含有しているものを対象とした。含有率が3.0質量未満の有機溶剤は、特性への影響が少ないことから、混合溶剤のSP値の算出に含めないこととすることができる。
インク中の有機溶剤の混合溶剤のSP値(cal/cm0.5
=[有機溶剤AのSP値×有機溶剤Aの体積分率]+・・・+[有機溶剤nのSP値×有機溶剤nの体積分率]
【0014】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0015】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0016】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0017】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0018】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0019】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明ではメディア中に添加されている炭酸カルシウムと反応させてより高濃度化を実現するために、顔料表面にホスホン酸基の官能基を付加した自己分散顔料を用いる。また、カウンターイオンはナトリウムまたはトリエタノールアミンのいずれかであることが好ましい。カウンターイオンがナトリウムの場合、顔料の凝集性がより高まるため高濃度化が期待できる。一方、カウンターイオンがトリエタノールアミンの場合、溶媒に対する顔料の分散性が優れるため保存安定性などに優れる。なお、インク中に含まれる顔料中のカウンターイオンは、例えば遠心分離器にてインク中から顔料成分を取出した後、イオンクロマトグラフィーなどによって特定することが可能である。
また、本発明のインクは、高画像濃度化と定着性をより高いレベルで両立させる観点からは、前記自己分散顔料と樹脂被覆顔料を併用することが好ましい。樹脂被覆顔料に関しては吐出安定性や保存安定性の観点から、被覆する樹脂はスチレンアクリル樹脂が好ましく、顔料に対するスチレンアクリル樹脂の比率は10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。顔料に対するスチレンアクリル樹脂の比率が10質量%以上であることにより、定着性の低下やドット形状の不安定化が起こらないようにすることができる。また、前記比率が40質量%以下であることにより、吐出安定性や保存安定性を高めることができる。なお、自己分散顔料と樹脂被覆顔料はそれぞれの比重が異なるため、例えば遠心分離器にてインク中からそれぞれ取り出すことが可能である。
【0021】
<蛍光増白剤>
蛍光増白剤とは、目に見えない短波長側の紫外線を吸収し、目に見える紫~青色の光に変えるものであり、蛍光染料とも呼ばれる。本発明では目視上より高濃度化させる目的でこの蛍光増白剤を使用することが好ましい。
本発明で使用する蛍光増白剤は、下記一般式1または一般式2で表される構造単位を有するものが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
一般式1で表される構造単位を有するものはベンゾオキサゾールまたはその誘導体であり、一般式2で表される構造単位を有するものはクマリンまたはその誘導体であり、親水性または疎水性いずれのものであっても良い。
インク中における蛍光増白剤の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.2質量%以下がより好ましい。蛍光増白剤の含有量を0.001質量%以上とすることによって目視上、高濃度化を発現することができる。一方、蛍光増白剤の含有量を1質量%以下とすることによって、入射光がすぐに吸収されたり、分子同士の衝突により蛍光強度が減少する濃度消光現象を抑制することができる。
蛍光増白剤としては、例えば、市販品としてTINOPAL OB(BASF社製)、Nikkafluor OB、Nikkabright PAW-L、Nikkafluor MCT(日本化学工業所社製)などが挙げられる。
【0024】
<蛍光増白増強剤>
本発明では蛍光増白剤の効果を向上させるものとして蛍光増白増強剤を使用しても良い。蛍光増白増強剤は蛍光増白剤の分散性を向上させ、かつ表面移行させることにより蛍光増白剤の効果を向上させるものであり、具体的にはポリエーテルポリオールである。
インク中における蛍光増白増強剤の含有量は、色材の含有量に対して0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。蛍光増白増強剤の含有量を色材の含有量に対して0.2質量%以上とすることによって目視上、高濃度化を発現することができる。一方、蛍光増白増強剤の含有量を色材の含有量に対して2質量%以下とすることによって、吐出安定性の改善が可能となる。
蛍光増白増強剤としては、例えば、市販品としてサンノプコ社製のオプティアクト I-10などが挙げられる。
【0025】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0026】
<樹脂>
インク中に、構造式3に記載のポリエーテルウレタン樹脂粒子を含んでも良い。構造式3に記載のポリエーテルウレタン樹脂粒子を含むことで、顔料の分散が安定化して好ましい。なお、構造式3のポリエーテルウレタン樹脂粒子は、例えばGC-MSとNMRを使用することによって同定することが可能である。
【0027】
【化2】
【0028】
前記ポリエーテルウレタン樹脂粒子の酸価は48(KOHmg/g)以上80(KOHmg/g)以下が好ましい。ポリエーテルウレタン樹脂粒子の酸価が48(KOHmg/g)以上80(KOHmg/g)以下であることにより、顔料の分散が安定化し、保存安定性を向上させることができる。なお、酸価の測定方法は、測定サンプルをエタノール/エーテル混合溶液に溶解させ、そこに指示薬のフェノールフタレイン溶液を加えた後、0.1mol/lの水酸化カリウム溶液を滴定し、滴定に要した0.1mol/lの水酸化カリウム溶液から算出することができる。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては例えば、三井化学社製 タケラックW5661、W932などが挙げられる。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
インクには、その他の樹脂を含んでも良い。インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。
【0030】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0031】
樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0032】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0033】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0034】
<界面活性剤>
本発明のインクはフッ素化合物を含有する。前記フッ素化合物としては、フッ素系界面活性剤を使用することができる。フッ素系界面活性剤は界面活性能が非常に強く、少量の添加でも大きな濡れ性を付与することができる。また、本発明で好ましく利用可能なフッ素系界面活性剤は静的表面張力の値を大きく下げる一方で、動的表面張力の値は大きく下げないという特性を有している。静的表面張力の値が低いことで、メディア上のインクドットが拡がりやすくなり、ベタ埋まりが向上することで高濃度化が期待できる。一方、動的表面張力の値が高めになることで、吐出ヘッドからの吐出安定性に優れるという効果が期待できる。なお、本発明のインクは、上記のように静的表面張力が小さいため、炭酸カルシウムが含まれていないメディアであってもインクが浸透するメディアであれば高画像濃度の画像を形成することができる。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に構造式1及び構造式2で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、構造式1及び構造式2の界面活性剤は、例えばGC-MSとNMRを使用することによって同定することが可能である。
【0035】
【化3】
【0036】
フッ素系界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高濃度化及び吐出安定性などの観点から、インク全量に対して0.001質量%以上0.03質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.01質量%以下がより好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えばサーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(AGC社製)、フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(住友スリーエム社製)、メガファックF-470、F-1405、F-474(DIC社製)、ゾニールTBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、FS-3100、UR(DuPont社製)、FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A、PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン社製)などが挙げられ、これらの中でも高濃度化と吐出安定性の観点から、DuPont社製のFS-300、FS-3100、ダイキン社製のユニダインDSN-403が特に好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
また、上記界面活性剤と他の界面活性剤を併用してもよく、例えば、シリコーン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、アセチレングリコール系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、アセチレングリコール系消泡剤が好ましい。
【0038】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0039】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0040】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0041】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0042】
インクの静的表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以上56.6mN/m以下が好ましく、40mN/m以上50mN/m以下がより好ましい。
インクのバブルライフタイム15ms時の動的表面張力としては、吐出ヘッドからの吐出安定性の観点から、40mN/m以上60mN/m以下が好ましく、45mN/m以上55mN/m以下がより好ましい。
なお、バブルライムタイム15ms時の動的表面張力と静的表面張力を比較した際、バブルライムタイム15ms時の動的表面張力の値の方が大きく、その差が5mN/m以上であることで、高濃度化と吐出安定性をより高いレベルで両立することができる。本発明のインクは、上記のように静的表面張力が小さいため、炭酸カルシウムが含まれていないメディアであってもインクが浸透するメディアであれば高画像濃度の画像を形成することができる。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0043】
水と、インクに含まれる有機溶剤のうち最も含有率が高い有機溶剤との混合溶液の経過時間40秒後の超音波相対強度が45%以上であるインクを用いると、より高い画像濃度が得られ好ましい。超音波相対強度が45%以上とすることで、記録媒体への浸透性が高い溶剤成分と共に着色剤成分も記録媒体内へ浸透して画像濃度が下がることが回避され、より高い画像濃度が得られるものと考えられる。
超音波相対強度の測定手順は以下の通りである。
水と、インクに含まれる有機溶剤のうち最も含有率が高い有機溶剤を粘度8.0±0.4mPa・sの範囲内になるように混合し、混合溶液を調整する。なお、最も含有率が高い有機溶剤を複数含む場合は、これら複数の有機溶剤をインクと同じ混合率となるように水と混合して、粘度8.0±0.4mPa・sの範囲内になるように混合し、混合溶液を調整する。
混合した溶液を温湿度23℃50%RHの測定環境で、浸透性評価装置(三洋貿易社製 動的浸透性評価装置 PDA.C02)に記録媒体としてNBSリコー社製 マイペーパーをセットし、前記混合溶液に40秒浸漬させて超音波相対強度(浸透性)を測定する。
【0044】
本発明の印刷方法は、上記で説明した本発明のインクを用いてインクジェット記録方法により印刷を行う印刷方法である。
本発明の印刷方法の一態様によれば、印刷した際の界面の展開面積比が0.03以下である印刷を行うことで、印刷面が平滑な印刷物を得ることができ好ましい。展開面積比を測定する際は、記録媒体として桜井株式会社製 ポスターペーパーmaxを用い、インク滴量を9plとして、1ドットが独立するようにドット間隔を調整した画像を形成した印刷物を用いて測定する。
本発明の印刷方法の別の態様によれば、印刷後の山頂点の算術平均曲率が1,200以下である印刷を行うことで、印刷面が平滑な印刷物を得ることができ好ましい。算術平均曲率を測定する際は、記録媒体として桜井株式会社製 ポスターペーパーmaxを用い、インク滴量を9plとして、1ドットが独立するようにドット間隔を調整した画像を形成した印刷物を用いて測定する。
本発明の印刷方法の更に別の態様によれば、印刷後のドット内の最高高さと最低高さの差が0.5μm以下である印刷を行うことで、印刷面が平滑な印刷物を得ることができ好ましい。最高高さと最低高さの差を測定する際は、記録媒体として桜井株式会社製 ポスターペーパーmaxを用い、インク滴量を9plとして、1ドットが独立するようにドット間隔を調整した画像を形成した印刷物を用いて測定する。
【0045】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0046】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された印刷領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0047】
<記録媒体>
印刷に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0048】
<印刷物>
本発明のインク印刷物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット印刷装置及びインクジェット印刷方法により印刷して印刷物とすることができる。
【0049】
<印刷装置、印刷方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種印刷装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、印刷装置、印刷方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この印刷装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
印刷装置、印刷方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、印刷装置、印刷方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、印刷装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この印刷装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の印刷装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
印刷装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。印刷装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0050】
この印刷装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット印刷方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット印刷方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0051】
本発明の印刷装置は、前記インクを吐出するノズル、前記ノズルに連通する複数の個別液室、前記インクを個別液室に流出入させる循環流路を備えた吐出ヘッドと、前記インクを前記個別液室から流出する負圧を発生する圧力発生手段とを有することが好ましい。
本発明の印刷装置は、インクと、該インクを吐出する吐出ヘッドとを含むものである。前記インクとしては、上述の本発明のインクを用いる。
前記吐出ヘッドは、インクを吐出する複数のノズルと、前記ノズルに通じる個別液室と、前記個別液室にインクを供給する共通液室と、前記個別液室に通じる循環流路と、前記個別液室のインクに圧力を付与する圧力発生手段とを備え、更に必要に応じてその他の手段を有する。
前記吐出ヘッドは、前記循環流路からインクを前記個別液室に流入させ、前記個別液室から前記循環流路に流出させ、インクを流動させる。少なくともインクを吐出する前に、前記吐出ヘッド内のインクを流動させることにより、インク中の顔料が沈降するような分離状態を抑制することができる。
また、前記吐出ヘッドには、前記個別液室に前記循環流路を介してインクを供給するインク供給部が接続されていることが好ましい。前記印刷装置が循環手段を有する場合には、前記循環流路を前記インク供給部と接続することにより、前記吐出ヘッドと前記インク供給部との間でインクを循環させることが好ましい。このようにすると、前記循環流路からの流出による廃インクの量を低減できる点で有利である。
【0052】
また、本発明の用語における、画像形成、印刷、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0053】
本発明は下記(1)のインクに係るものであるが、下記(2)~(19)を実施形態として含む。
(1)ホスホン酸基を含む顔料と、有機溶剤と、水とを含有するインクであって、
前記有機溶剤の1種が沸点200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上であり、
前記インクの静的表面張力が35.0mN/m以上56.5mN/m以下であり、
更にフッ素化合物を含有することを特徴とするインク。
(2)前記フッ素化合物が、下記構造式1及び/又は2に記載のフッ素化合物である上記(1)に記載のインク。
【化4】
(3)インク中の前記フッ素化合物の含有量が0.001質量%以上0.03質量%以下である上記(1)または(2)に記載のインク。
(4)前記ホスホン酸基を含む顔料のカウンターイオンがナトリウムまたはトリエタノールアミンである上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
(5)沸点が200℃以上で、かつ温湿度23℃80%RHにおける飽和水分量が16.9mg/m以上の前記有機溶剤が、インクに含まれる有機溶剤全量に対して80質量%以上である上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のインク。
(6)前記インクに含まれる前記有機溶剤の混合溶剤のSP値が14.2(cal/cm0.5以上である上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のインク。
(7)更に前記顔料の一部または全てをスチレンアクリル樹脂で覆った顔料を含む上記(1)~(6)のいずれか1項に記載のインク。
(8)前記インク中の前記顔料に対する前記スチレンアクリル樹脂の比率が10質量%以上40質量%以下である上記(1)~(7)のいずれか1項に記載のインク。
(9)更に下記構造式3に記載のポリエーテルウレタン樹脂粒子を含む上記(1)~(8)のいずれか1項に記載のインク。
【化5】
(10)前記ポリエーテルウレタン樹脂粒子の酸価が48(KOHmg/g)以上80(KOHmg/g)以下である上記(9)に記載のインク。
(11)更に蛍光増白剤を含有する上記(1)~(10)のいずれか1項に記載のインク。
(12)前記蛍光増白剤がベンゾオキサゾール系蛍光増白剤、またはクマリン系蛍光増白剤である上記(11)に記載のインク。
(13)静的表面張力とバブルライフタイム15msにおける動的表面張力の差が5mN/m以上で、かつバブルライフタイプ15msにおける動的表面張力の値の方が大きい上記(1)~(12)のいずれか1項に記載のインク。
(14)前記水と、前記インクに含まれる前記有機溶剤のうち最も含有率が高い有機溶剤との混合溶液の経過時間40秒後の超音波相対強度が45%以上である上記(1)~(13)のいずれか1項に記載のインク。ただし、超音波相対強度は以下の条件で測定したものをいうものとする。
混合溶液粘度:8.0±0.4mPa・s
記録媒体:NBSリコー社製 マイペーパー
測定環境:温湿度23℃50%RH
測定装置:三洋貿易社製 動的浸透性測定装置 PDA.C02
(15)上記(1)~(14)のいずれか1項に記載のインクを用いてインクジェット記録方法により印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
(16)以下条件で印刷した際の界面の展開面積比が0.03以下である、上記(15)に記載の印刷方法。
インク滴量:9pl
記録媒体 :桜井株式会社製 ポスターペーパーmax
(17)以下条件で印刷した際の山頂点の算術平均曲率が1,200以下である、上記(15)に記載の印刷方法。
インク滴量:9pl
記録媒体 :桜井株式会社製 ポスターペーパーmax
(18)以下条件で印刷した際のドット内の最高高さと最低高さの差が0.5μm以下である、上記(15)に記載の印刷方法。
インク滴量:9pl
記録媒体 :桜井株式会社製 ポスターペーパーmax
(19)インクを吐出する吐出ヘッド、およびインクを含む印刷装置において、前記インクは上記(1)~(14)のいずれか1項に記載のインクであり、前記吐出ヘッドは前記インクを吐出する複数のノズルと、前記ノズルに通じる個別液室と、前記個別液室に前記インクを供給する共通液室と、前記個別液室に通じる循環流路と、前記循環流路に通じる循環共通液室と、前記個別液室の前記インクに圧力を付与する圧力発生手段とを備える吐出ヘッドであることを特徴とする、印刷装置。
【実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」である。
また、特に記載が無い場合、調製、評価等は、23℃、湿度50%RHの条件下で行った。
【0055】
(実施例)
<共重合体の合成>
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えたフラスコに、エタノール500gと、1-メタクリロキシエタン-1,1-ジホスホン酸30g、ダイアセトンアクリルアミド10g、1-ビニルナフタレン60g、アゾビスイソブチロニトリル4gを仕込み、65℃に昇温した。次いで、窒素気流化で10時間重合反応させた後、反応系から仕込んだ溶媒の半量程度を留去し、アセトン中に混合物を注入して共重合体を析出させ、更に乾燥して共重合体を得た。
得られた共重合体を水で希釈しながら、100%酸中和を達成できるように、水酸化ナトリウムを加え、固形物濃度が10%になるように水で濃度調整した。このようにして、ホスホン酸基が100%中和された共重合体Aを合成した。
上記と同製法で、水酸化ナトリウムをトリエタノールアミンに変更して得られた固形物濃度10%のものを共重合体Bとした。
上記と同製法で、1-メタクリロキシエタン-1,1-ジホスホン酸をピロール-2-カルボン酸に変更して得られた固形物濃度10%のものを共重合体Cとした。
【0056】
<顔料分散体の調整>
下記処方の材料をプレミックスし、混合スラリーを作製した。これをディスクタイプのメディアミル(アシザワファインテック社製 DMR型)により、0.05mmジルコニアビーズ、充填率55%を用いて、周速10m/s、液温10℃で3分間循環分散し、次いで遠心分離機(久保田商事社製 Model-7700)で粗大粒子を遠心分離し、顔料濃度15%の顔料分散体Aを得た。
・カーボンブラック(Degussa社製 NIPEX160) 150g
・共重合体A 50g
・蒸留水 800g
上記と同製法で共重合体Aを共重合体Bに変更して得られた顔料濃度15%のものを顔料分散体Bとした。
上記と同製法で共重合体Aを共重合体Cに変更して得られた顔料濃度15%のものを顔料分散体Cとした。
【0057】
<スチレン-アクリル系樹脂被覆顔料分散体の調整>
スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12g、ポリエチレングリコールメタクリレート4g、スチレンマクロマー4g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次いで、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.2g、ヒドロキシエチルメタクリレート60g、スチレンマクロマー36g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、固形分濃度50%のポリマー溶液を800g得た。
次いで、ポリマー溶液25g、カーボンブラック(Cabot Corporation社製 Black Pearls 1000)50g、1mol/lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルで混練した。得られたペーストを純水200gに入れて十分に攪拌した後、エバポレータでメチルエチルケトンを除去し、平均孔径5μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧ろ過した後、固形分濃度が20%になるように水分量を調整し、固形分濃度20%のスチレン-アクリル系樹脂被覆顔料分散体を得た。これを顔料分散体Dとした。
【0058】
<インクの調製>
まず、下記表1-1~表1-3に示す有機溶剤、界面活性剤、蛍光増白剤、その他添加剤(消泡剤、蛍光増白増強剤、pH調整剤、防腐防黴剤)、及びイオン交換水を混合した後1時間攪拌した。
次に樹脂粒子を加えて更に1時間攪拌して均一に混合した。その後、各種顔料分散体を加えて更に1時間攪拌して均一に混合した。この混合物を平均孔径0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧ろ過し、粗大粒子やゴミを除去してインクを得た。
【0059】
【表1-1】
【0060】
【表1-2】
【0061】
【表1-3】
【0062】
<顔料分散体>
顔料分散体としては、上記のようにして作製した以下の顔料分散体A~Dを用いた。
・顔料分散体A(官能基=ホスホン酸、カウンターイオン=ナトリウム)
・顔料分散体B(官能基=ホスホン酸、カウンターイオン=トリエタノールアミン)
・顔料分散体C(官能基=カルボン酸、カウンターイオン=ナトリウム)
・顔料分散体D(スチレン-アクリル系樹脂被覆顔料)
【0063】
<有機溶剤>
有機溶剤としては、以下の有機溶剤A~Dを用いた。
・有機溶剤A(阪本薬品社製 グリセリン)
※沸点=290.0℃、温湿度23℃80%RH時の飽和水分量=20.7mg/m、SP値=17.4(cal/cm0.5
・有機溶剤B(川原油化社製 1,3-プロパンジオール)
※沸点=214.4℃、温湿度23℃80%RH時の飽和水分量=22.4mg/m、SP値=15.5(cal/cm0.5
・有機溶剤C(東京化成工業社製 1,3-ブタンジオール)
※沸点=204.0℃、温湿度23℃80%RH時の飽和水分量=16.9mg/m、SP値=14.2(cal/cm0.5
・有機溶剤D(東京化成工業社製 1,2-ブタンジオール)
※沸点=194.0℃、温湿度23℃80%RH時の飽和水分量=11.1mg/m、SP値=13.1(cal/cm0.5
【0064】
<樹脂粒子>
樹脂粒子としては、以下のポリエーテルウレタン樹脂粒子A、Bおよびアクリル樹脂粒子を用いた。
・ポリエーテルウレタン樹脂粒子A(三井化学社製 タケラック W5661)
※上記構造式3で表される化合物
※酸価=48(KOHmg/g)
・ポリエーテルウレタン樹脂粒子B(三井化学社製 タケラック W932)
※上記構造式3で表される化合物
※酸価=80(KOHmg/g)
・アクリル樹脂粒子(楠本化成社製 NeoCryl A-1125)
※酸価=157(KOHmg/g)
【0065】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、以下のフッ素系界面活性剤A~Cおよびシリコーン系界面活性剤を用いた。
・フッ素系界面活性剤A(ダイキン社製 ユニダイン DSN-403N)
※上記構造式1で表される化合物
・フッ素系界面活性剤B(Dupont社製 Zonyl FS3100)
※上記構造式2で表される化合物
・フッ素系界面活性剤C(OMNOVA社製 PF656)
※下記構造式4で表される化合物
【0066】
【化6】
※式中、Rfは=Cを表し、n=6である。
・シリコーン系界面活性剤(信越シリコーン社製 KF-640)
【0067】
<蛍光増白剤>
蛍光増白剤としては、以下のベンゾオキサゾール系蛍光増白剤およびクマリン系蛍光増白剤を用いた。
・ベンゾオキサゾール系蛍光増白剤(日本化学工業社製 Nikkafluor OB)
※上記一般式1で表される化合物
・クマリン系蛍光増白剤(日本化学工業社製 Nikkafluor MCT)
※上記一般式2で表される化合物
【0068】
<蛍光増白増強剤>
蛍光増白増強剤としては、以下のものを用いた。
・サンノプコ社製 オプティアクト I-10
【0069】
<消泡剤>
消泡剤としては、以下のものを用いた。
・日信化学工業社製 サーフィノール MD-20
【0070】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、以下のものを用いた。
・東京化成工業社製 2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール
【0071】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、以下のものを用いた。
・アビシア社製 LV(S)
【0072】
[評価]
上記のようにして作製した各インクを以下のようにして評価した。
【0073】
<インクの表面張力測定方法>
インクの表面張力を静的表面張力計(協和界面化学社製 DY-300)及び動的表面張力計(SITA社製 ダイノテスター)を用いて測定した。なお、動的表面張力はバブルライフタイム15msの値を使用した。
【0074】
<インクの浸透性評価方法>
水と、インクに含まれる有機溶剤のうち最も含有率が高い有機溶剤とを粘度8.0±0.4mPa・sの範囲内になるように混合し、混合溶液を浸透性評価装置(三洋貿易社製 動的浸透性評価装置 PDA.C02)を用いて記録媒体(NBSリコー社製 マイペーパー)への浸透性(超音波相対強度)を測定した。なお、記録媒体を混合溶液に浸漬させる時間は40秒とし、測定環境は温湿度23℃50%RHとした。
なお、記録媒体への浸透性が高いと溶剤成分と一緒に着色剤成分も記録媒体内へ浸透してしまうため、画像濃度が低く出てしまう。このため本発明のインクは、緩浸透性のインクとすることで画像濃度を高くしており、浸透性(超音波相対強度)の値は45%以上であることが好ましい。
【0075】
<印刷方法1>
インクを画像形成装置(リコー社製:IPSiO GXe5500)により記録媒体(桜井社製 ポスターペーパーMAX)へ、印刷解像度:600×300dpi、滴サイズ:9plで印刷し、室温にて一昼夜乾燥させたものを印刷サンプル1とした。なお、印刷チャートは1ドットが独立するようにドット間隔を調整した画像を使用した。
【0076】
<印刷方法2>
インクを画像形成装置(リコー社製:IPSiO GXe5500)により記録媒体(NBSリコー社製 マイペーパー)へ、印刷解像度:600×600dpiで印刷し、室温にて一昼夜乾燥させたものを印刷サンプル2とした。なお、印刷チャートは2cm四方のベタ画像を使用した。
【0077】
<界面の展開面積比(Sdr)測定方法>
印刷サンプル1のドット画像から画像測定装置(KEYENCE社製 VK-150)を使用して界面の展開面積比を測定した。なお、測定は5点で実施し、その平均値を使用した。
界面の展開面積比は面粗さのパラメータの1つであり、値が小さいほど平滑であることを示している。本発明の印刷方法の一態様では、界面の展開面積比は0.03以下である。
【0078】
<山頂点の算術平均曲率(Spc)測定方法>
印刷サンプル1のドット画像から画像測定装置(KEYENCE社製 VK-150)を使用して山頂点の算術平均曲率を測定した。なお、測定は5点で実施し、その平均値を使用した。
山頂点の算術平均曲率は面粗さのパラメータの1つであり、値が小さいほど平滑であることを示している。本発明の印刷方法の一態様では、山頂点の算術平均曲率は1,200以下である。
【0079】
<ドット内の高低差測定方法>
印刷サンプル1のドット画像から画像測定装置(KEYENCE社製 VK-150)を使用してドット内の最大高さと最低高さを測定した。なお、測定は5点で実施し、その平均値を使用した。
ドット内の高低差が小さいほど平滑である。本発明の印刷方法の一態様では、ドットの高低差は0.5μm以下である。
【0080】
<画像濃度測定方法>
印刷サンプル2のベタ画像から画像測定装置(X-Rite社製 Exact)を使用してベタ画像内の画像濃度を測定した。
【0081】
<保存安定性評価方法>
インクを密閉容器(アズワン社製 アイボーイ)に入れて70℃の恒温槽(ESPEC社製 PR-3J)に14日間保存した。保存前後の粘度を粘度計(東機産業社製 RE-85L)にて測定し、下記評価基準にて判定を行った。なお、粘度の変化率が初期粘度±10%未満であれば実使用可能なレベルである。
〇:粘度変化率:0~±5%未満
△:粘度変化率:±5%以上~±10%未満
×:粘度変化率:±10%以上
【0082】
<吐出安定性の測定方法1>
インクを画像形成装置(リコー社製 IPSiO GXe5500)により、10cm四方のベタ画像を印字解像度600×600dpi、インクの付着量0.8mg/cmで100枚印字させた後のノズル抜け数を目視にて確認し、下記評価基準にて判定を行った。なお、ノズル抜けが生じたノズル数が5個以下であれば実施可能なレベルである。
◎:ノズル抜けが生じたノズル数 : 0個
○:ノズル抜けが生じたノズル数 : 2個以下
△:ノズル抜けが生じたノズル数 : 3個以上5個以下
×:ノズル抜けが生じたノズル数 : 6個以上
【0083】
<吐出安定性の測定方法2>
上記の「吐出安定性の測定方法1」において用いた画像形成装置(リコー社製 IPSiO GXe5500)にインク循環機構を有する吐出ヘッドを搭載した改造機を用いて、以下のようにインクの吐出安定性の評価を実施した。インク収容部にインクを充填し、温度:35℃、湿度:30%RHの環境下にて24時間放置した。放置中は1時間に1回、2分間循環を動作させた。
放置後、印字前の1分間循環機構を動作させた。温度:35℃、湿度:30%RHの環境下にて、記録媒体(リコー社製 My Paper)上にノズルチェックパターンを印刷して、全ノズル320に対してインクが吐出された吐出ノズル数を確認し、以下の基準で評価を実施した。判定が△以上であることが実使用上望ましい。
◎:ノズル抜けが生じたノズル数 : 0個
○:ノズル抜けが生じたノズル数 : 2個以下
△:ノズル抜けが生じたノズル数 : 3個以上5個以下
×:ノズル抜けが生じたノズル数 : 6個以上
【0084】
それぞれの評価結果を下記表2-1~表2-3に示す。
【0085】
【表2-1】
【0086】
【表2-2】
【0087】
【表2-3】
【0088】
表2-1~表2-3の評価結果から明らかなように、実施例のインクはいずれも高い画像濃度が得られている。
【符号の説明】
【0089】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【文献】特開2017-001392号公報
【文献】特開2017-132973号公報
【文献】特許6051805号公報
図1
図2