(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/06 20060101AFI20240509BHJP
C09D 179/04 20060101ALI20240509BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240509BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240509BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240509BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G73/06
C09D179/04 Z
C09D4/02
C09D4/00
G02B1/04
H01L21/312 A
(21)【出願番号】P 2020061392
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019068197
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】中家 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 康史
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194926(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/128661(WO,A1)
【文献】特開2015-193768(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094643(WO,A1)
【文献】特開平09-087385(JP,A)
【文献】特開2017-122188(JP,A)
【文献】特開2019-085492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
G02B 1/04
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1
-1)で表される繰り返し単位構造を含み、少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端の少なくとも一部が、フッ素原子含有アリールアミノ基で封止されていることを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化1】
〔式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表
す。〕
【請求項2】
上記フッ素原子含有アリールアミノ基が、式(A3)で示される請求項
1記載のトリアジン環含有重合体。
【化2】
(式中、R
a16は、フッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項3】
上記R
a16が、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基である請求項
2記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項4】
さらに、上記トリアジン環末端の少なくとも一部が、無置換アリールアミノ基で封止されている請求項1~
3のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項5】
上記無置換アリールアミノ基が、式(A11)で示される請求項
4記載のトリアジン環含有重合体。
【化4】
【請求項6】
下記式(B1)で表される繰り返し単位構造を含み、少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端の少なくとも一部が、フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基で封止されていることを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化5】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Arは、
式(B19)で示される。
【化6】
【請求項7】
上記フッ素原子含有アリールアミノ基が、式(B15)で示される請求項
6記載のトリアジン環含有重合体。
【化7】
(式中、R
102は、フッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項8】
上記R
102が、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基である請求項
7記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項9】
上記無置換アリールアミノ基が、式(B18)で示される請求項
6~
8のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【化8】
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体と有機溶媒とを含む膜形成用組成物。
【請求項11】
上記有機溶媒が、グリコールエステル系溶媒、ケトン系溶媒、およびエステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種を含
み、
上記エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチルから選ばれる少なくとも1種である、
請求項
10記載の膜形成用組成物。
【請求項12】
さらに架橋剤を含む請求項
10または
11記載の膜形成用組成物。
【請求項13】
上記架橋剤が、多官能(メタ)アクリル化合物である請求項
12記載の膜形成用組成物。
【請求項14】
請求項
10~
13のいずれか1項記載の膜形成用組成物から得られる薄膜。
【請求項15】
基材と、この基材上に形成された請求項
14記載の薄膜とを備える電子デバイス。
【請求項16】
基材と、この基材上に形成された請求項
14記載の薄膜とを備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機ELディスプレイや有機EL照明)、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、および有機薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスを開発する際に、高機能な高分子材料が要求されるようになってきた。
求められる具体的な特性としては、1)耐熱性、2)透明性、3)高屈折率、4)高溶解性、5)低体積収縮率、6)高温高湿耐性、7)高膜硬度などが挙げられる。
この点に鑑み、本発明者らは、トリアジン環および芳香環を有する繰り返し単位を含む重合体が高屈折率を有し、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成でき、電子デバイスを作製する際の膜形成用組成物として好適であることを既に見出している(特許文献1)。
【0003】
ところで、有機EL照明における、平坦化層や光散乱層などでは、高屈折率材料を有機溶媒に溶かした組成物を用い、塗布法によって薄膜を作製することが一般的であるが、透明導電膜の種類によっては高極性の溶媒を使用することができない場合があった。
また、塗布装置を用いて高屈折ポリマーを含む膜形成用組成物を塗布した後に、装置のライン洗浄溶媒として低極性溶媒等が用いられることがあり、そのような溶媒に対する溶解性が低いポリマーであると、ラインが目詰まりしてしまうという問題が生じることもあった。さらに、上記薄膜は、電子デバイスの使用条件によっては黄変してしまうことがあり、その性能の向上とともに、耐久性についてもさらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高屈折率で透明性に優れた薄膜を形成し得るとともに、低極性溶媒、疎水性溶媒、低沸点溶媒等の各種有機溶媒への溶解性に優れるトリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、フルオレン骨格を含み、かつ少なくとも1つのトリアジン環末端を有するとともに、そのトリアジン環末端の少なくとも一部がフッ素原子含有アリールアミノ基で封止されたトリアジン環含有重合体(第1発明)を用いることで、高屈折率で透明性に優れた薄膜を形成し得るとともに、各種有機溶媒に対する溶解性に優れ、かつ耐黄変性に優れる薄膜を与え得るトリアジン環含有重合体が得られること、ならびに、少なくとも1つのトリアジン環末端を有するとともに、そのトリアジン環末端の少なくとも一部がフッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基で封止されたトリアジン環含有重合体(第2発明)を用いることで、より高屈折率で透明性に優れた薄膜を形成し得るとともに、各種有機溶媒に対する溶解性に優れるトリアジン環含有重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のトリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物を提供する。
1. 下記式(A1)で表される繰り返し単位構造を含み、少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端の少なくとも一部が、フッ素原子含有アリールアミノ基で封止されていることを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化1】
〔式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
R
a1~R
a8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
W
a1は、単結合、CR
a9R
a10(R
a9およびR
a10は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO
2、またはNR
a11(R
a11は、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、
X
a1およびX
a2は、互いに独立して、単結合、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(A2)
【化2】
(式中、R
a12~R
a15は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
Y
a1およびY
a2は、互いに独立して、単結合または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)で示される基を表す。〕
2. 上記R
a1~R
a8およびR
a12~R
a15が、水素原子である1のトリアジン環含有重合体。
3. 上記フッ素原子含有アリールアミノ基が、式(A3)で示される1または2のトリアジン環含有重合体。
【化3】
(式中、R
a16は、フッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基を表す。)
4. 上記R
a16が、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基である3のトリアジン環含有重合体。
5. 上記式(A1)で表される繰り返し単位構造が、式(A1-1)で表される繰り返し単位構造である1~4のいずれかのトリアジン環含有重合体。
【化4】
(式中、RおよびR′は、上記と同じ意味を表す。)
6. さらに、上記トリアジン環末端の少なくとも一部が、無置換アリールアミノ基で封止されている1~5のいずれかのトリアジン環含有重合体。
7. 上記無置換アリールアミノ基が、式(A11)で示される6のトリアジン環含有重合体。
【化5】
8. 下記式(B1)で表される繰り返し単位構造を含み、少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端の少なくとも一部が、フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基で封止されていることを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化6】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Arは、式(B2)~(B13)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【化7】
〔式中、R
1~R
92は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
R
93およびR
94は、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、
W
1およびW
2は、互いに独立して、単結合、CR
95R
96(R
95およびR
96は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO
2、またはNR
97(R
97は、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、
X
1およびX
2は、互いに独立して、単結合、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(B14)
【化8】
(式中、R
98~R
101は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
Y
1およびY
2は、互いに独立して、単結合または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)で示される基を表す。〕
9. 上記R
1~R
92およびR
98~R
101が、水素原子である8のトリアジン環含有重合体。
10. 上記フッ素原子含有アリールアミノ基が、式(B15)で示される8または9のトリアジン環含有重合体。
【化9】
(式中、R
102は、フッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基を表す。)
11. 上記R
102が、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基である10のトリアジン環含有重合体。
12. 上記無置換アリールアミノ基が、式(B18)で示される8~11のいずれかのトリアジン環含有重合体。
【化10】
13. 上記Arが、式(B19)で示される請求項8~12のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【化11】
14. 1~13のいずれかのトリアジン環含有重合体と有機溶媒とを含む膜形成用組成物。
15. 上記有機溶媒が、グリコールエステル系溶媒、ケトン系溶媒、およびエステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種を含む14の膜形成用組成物。
16. さらに架橋剤を含む14または15の膜形成用組成物。
17. 上記架橋剤が、多官能(メタ)アクリル化合物である16の膜形成用組成物。
18. 14~17のいずれかの膜形成用組成物から得られる薄膜。
19. 基材と、この基材上に形成された18の薄膜とを備える電子デバイス。
20. 基材と、この基材上に形成された請求項18記載の薄膜とを備える光学部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高屈折率で透明性に優れた薄膜を形成し得るとともに、低極性溶媒、疎水性溶媒、低沸点溶媒等の各種有機溶媒への溶解性に優れたトリアジン環含有重合体を提供できる。
一般的に、化合物にフッ素原子を導入することで、その屈折率は低下する傾向にあることが知られているが、本発明のトリアジン環含有重合体は、フッ素原子が導入されているにもかかわらず、1.7を超える屈折率を維持している。
このような、本発明のトリアジン環含有重合体を用いることで、低極性溶媒、疎水性溶媒等の溶解力が低い有機溶媒を用いて組成物を調製できるため、高極性溶媒に浸食され易い基材上にも問題なく薄膜を形成することができる。
本発明の膜形成用組成物から作製された薄膜は、高耐熱性、高屈折率、低体積収縮、さらには耐黄変性という特性を発揮し得るため、液晶ディスプレイ、有機EL素子(有機ELディスプレイや有機EL照明)、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)、レンズ、プリズム、カメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置等を作製する際の一部材など、電子デバイスや光学材料の分野に好適に利用できる。
特に、本発明の膜形成用組成物から作製された薄膜は透明性が高く、屈折率も高いため、有機EL照明における平坦化層や光散乱層として使用することで、その光取出し効率(光拡散効率)や耐久性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1-1で得られた高分子化合物[4]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図2】実施例1-2で得られた高分子化合物[6]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図3】実施例1-3で得られた高分子化合物[7]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図4】実施例1-4で得られた高分子化合物[9]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図5】実施例1-5で得られた高分子化合物[10]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図6】比較例1-1で得られた高分子化合物[11]の
1H-NMRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
[第1発明]
第1発明に係るトリアジン環含有重合体は、下記式(A1)で表される繰り返し単位構造を含むものである。
【0011】
【0012】
上記式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表すが、屈折率をより高めるという観点から、ともに水素原子であることが好ましい。
第1発明において、アルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1~20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1~10がより好ましく、1~3がより一層好ましい。また、その構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0013】
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、1-メチル-シクロプロピル、2-メチル-シクロプロピル、n-ペンチル、1-メチル-n-ブチル、2-メチル-n-ブチル、3-メチル-n-ブチル、1,1-ジメチル-n-プロピル、1,2-ジメチル-n-プロピル、2,2-ジメチル-n-プロピル、1-エチル-n-プロピル、シクロペンチル、1-メチル-シクロブチル、2-メチル-シクロブチル、3-メチル-シクロブチル、1,2-ジメチル-シクロプロピル、2,3-ジメチル-シクロプロピル、1-エチル-シクロプロピル、2-エチル-シクロプロピル、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル、2-メチル-n-ペンチル、3-メチル-n-ペンチル、4-メチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-n-ブチル、1,2-ジメチル-n-ブチル、1,3-ジメチル-n-ブチル、2,2-ジメチル-n-ブチル、2,3-ジメチル-n-ブチル、3,3-ジメチル-n-ブチル、1-エチル-n-ブチル、2-エチル-n-ブチル、1,1,2-トリメチル-n-プロピル、1,2,2-トリメチル-n-プロピル、1-エチル-1-メチル-n-プロピル、1-エチル-2-メチル-n-プロピル、シクロヘキシル、1-メチル-シクロペンチル、2-メチル-シクロペンチル、3-メチル-シクロペンチル、1-エチル-シクロブチル、2-エチル-シクロブチル、3-エチル-シクロブチル、1,2-ジメチル-シクロブチル、1,3-ジメチル-シクロブチル、2,2-ジメチル-シクロブチル、2,3-ジメチル-シクロブチル、2,4-ジメチル-シクロブチル、3,3-ジメチル-シクロブチル、1-n-プロピル-シクロプロピル、2-n-プロピル-シクロプロピル、1-イソプロピル-シクロプロピル、2-イソプロピル-シクロプロピル、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0014】
上記アルコキシ基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1~20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1~10がより好ましく、1~3がより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0015】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、1-メチル-n-ブトキシ、2-メチル-n-ブトキシ、3-メチル-n-ブトキシ、1,1-ジメチル-n-プロポキシ、1,2-ジメチル-n-プロポキシ、2,2-ジメチル-n-プロポキシ、1-エチル-n-プロポキシ、n-ヘキシルオキシ、1-メチル-n-ペンチルオキシ、2-メチル-n-ペンチルオキシ、3-メチル-n-ペンチルオキシ、4-メチル-n-ペンチルオキシ、1,1-ジメチル-n-ブトキシ、1,2-ジメチル-n-ブトキシ、1,3-ジメチル-n-ブトキシ、2,2-ジメチル-n-ブトキシ、2,3-ジメチル-n-ブトキシ、3,3-ジメチル-n-ブトキシ、1-エチル-n-ブトキシ、2-エチル-n-ブトキシ、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ、1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が挙げられる。
【0016】
上記アリール基の炭素数としては特に限定されるものではないが、6~40が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数6~16がより好ましく、6~13がより一層好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル、o-クロルフェニル、m-クロルフェニル、p-クロルフェニル、o-フルオロフェニル、p-フルオロフェニル、o-メトキシフェニル、p-メトキシフェニル、p-ニトロフェニル、p-シアノフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、o-ビフェニリル、m-ビフェニリル、p-ビフェニリル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0017】
アラルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、炭素数7~20が好ましく、そのアルキル部分は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
その具体例としては、ベンジル、p-メチルフェニルメチル、m-メチルフェニルメチル、o-エチルフェニルメチル、m-エチルフェニルメチル、p-エチルフェニルメチル、2-プロピルフェニルメチル、4-イソプロピルフェニルメチル、4-イソブチルフェニルメチル、α-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0018】
上記Ra1~Ra8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Wa1は、単結合、CRa9Ra10(Ra9およびRa10は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNRa11(Ra11は、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。
【0019】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
なお、アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
【0020】
炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、上記炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基中の水素原子の少なくとも1つをハロゲン原子で置換したものであり、その具体例としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル、パーフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、パーフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル、パーフルオロペンチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロヘキシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル、およびパーフルオロヘキシル基が挙げられる。
【0021】
また、Xa1およびXa2は、互いに独立して、単結合、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(A2)で示される基を表す。
【0022】
【0023】
上記Ra12~Ra15は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Ya1およびYa2は、互いに独立して、単結合または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。これらハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、Ra1~Ra8およびRa12~Ra15としては、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。また、Wa1、Ya1およびYa2は、いずれも単結合が好ましい。
【0025】
上記式(A1)で表されるトリアジン環含有重合体は、低極性溶剤等の有機溶媒に対するトリアジン環含有重合体の屈折率および耐熱性をより高めることを考慮すると、下記式(A1-1)で表される繰り返し単位構造を有するものが好ましく、下記式(A1-2)で表される繰り返し単位構造を有するものがより好ましく、下記式(A1-3)で表される繰り返し単位構造を有するものがより一層好ましい。
【0026】
【化14】
(式中、RおよびR′は上記と同じ意味を表す。)
【0027】
また、第1発明のトリアジン環含有重合体は、少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端の少なくとも一部が、フッ素原子含有アリールアミノ基で封止されている。
なお、第1発明のトリアジン環含有重合体は、少なくとも1つのトリアジン環末端を有するが、この末端のトリアジン環には、通常、上記フッ素原子含有アリールアミノ基と置換可能なハロゲン原子を2つ有している。そのため、上記フッ素原子含有アリールアミノ基は、1つのトリアジン環末端に対して1つ結合していても、2つ結合していてもよい。
【0028】
アリール基としては、上記と同様のものが挙げられるが、特に、フェニル基が好ましい。
フッ素原子含有基としては、フッ素原子、フルオロアルキル基等のフッ素原子含有炭化水素基などが挙げられるが、フッ素原子、炭素数1~10のフルオロアルキル基が好ましい。
炭素数1~10のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
特に、屈折率を維持しつつトリアジン環含有重合体の低極性溶媒等に対する溶解性を高めることを考慮すると、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基が好ましく、特に、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が最適である。
【0030】
フッ素原子含有基の数は特に限定されるものではなく、アリール基上に置換可能な任意の数とすることができるが、屈折率維持と溶媒に対する溶解性とのバランスを考慮すると、1~4個が好ましく、1~2個がより好ましく、1個がより一層好ましい。
【0031】
好適なフッ素原子含有アリールアミノ基としては、式(A3)で示されるものが挙げられ、特に、アミノ基に対してパラ位にフッ素原子含有基を有する式(A4)またはアミノ基に対してメタ位にフッ素原子含有基を有する式(A5)で示されるものが好ましい。
【0032】
【化15】
(式中、R
a16は、フッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基を表す。)
【0033】
【化16】
(式中、R
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0034】
具体的なフッ素原子含有アリールアミノ基としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【0036】
なお、フッ素原子含有アリールアミノ基は、後述の製造法において、対応するフッ素原子含有アリールアミノ化合物を用いて導入することができる。
フッ素原子含有アリールアミノ化合物の具体例としては、4-フルオロアニリン、4-トリフルオロメチルアニリン、4-ペンタフルオロエチルアニリン、3-フルオロアニリン、3-トリフルオロメチルアニリンおよび3-ペンタフルオロエチルアニリン等が挙げられる。
【0037】
第1発明において、特に好適なトリアジン環含有重合体としては、式(A6)~(A10)で示される繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0038】
【化18】
(式中、R、R′、R
a1~R
a8およびR
a12~R
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0039】
【化19】
(式中、R
a1~R
a8およびR
a12~R
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0040】
【化20】
(式中、R
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0041】
【化21】
(式中、R
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0042】
上記第1発明のトリアジン環含有重合体は、さらにフッ素原子を有しないアリールアミノ化合物を用いて、2種類以上の基で末端封止を行ってもよい。第1発明では、特にトリアジン環末端の少なくとも一部が、無置換アリールアミノ化合物で封止されているものがより好ましい。上記無置換アリールアミノ化合物のアリール基としては上記と同様のものが挙げられ、フェニル基が好ましい。末端封止剤として、フッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物を併用することにより、得られる薄膜の屈折率をさらに高めることができる。
なお、この場合、上記フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基は、同一のトリアジン環末端に結合していてもよく、また、トリアジン環末端が複数ある場合は、それぞれが別のトリアジン環末端に結合していてもよい。
【0043】
具体的な無置換アリールアミノ基としては、下記式(A11)で示されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
【0045】
なお、無置換アリールアミノ基は、後述の製造法において、対応する無置換アリールアミノ化合物を用いて導入することができる。
無置換アリールアミノ化合物の具体例としては、アニリン等が挙げられる。
【0046】
第1発明における重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~500,000が好ましく、500~100,000がより好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、10,000以下がより一層好ましい。
なお、第1発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる重量平均分子量である。
【0047】
第1発明のトリアジン環含有重合体(ハイパーブランチポリマー)は、上述した特許文献1に開示された手法に準じて製造することができる。
例えば、下記スキーム1に示されるように、トリアジン環含有重合体(A8)は、トリアジン化合物(A12)およびアリールジアミノ化合物(A13)を適当な有機溶媒中で反応させた後、末端封止剤であるフッ素原子含有アニリン化合物(A14)と反応させて得ることができる。
【0048】
【化23】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表し、R
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0049】
上記反応において、アリールジアミノ化合物(A13)の仕込み比は、目的とする重合体が得られる限り任意であるが、トリアジン化合物(A12)1当量に対し、アリールジアミノ化合物(A13)0.01~10当量が好ましく、1~5当量がより好ましい。
アリールジアミノ化合物(A13)は、ニートで加えても、有機溶媒に溶かした溶液で加えてもよいが、操作の容易さや反応のコントロールのし易さなどを考慮すると、後者の手法が好適である。
反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、-30~150℃程度が好ましく、-10~100℃がより好ましい。
【0050】
有機溶媒としては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピペリドン、N,N-ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’-テトラメチルマロン酸アミド、N-メチルカプロラクタム、N-アセチルピロリジン、N,N-ジエチルアセトアミド、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロピオン酸アミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルホルムアミド、N,N’-ジメチルプロピレン尿素等のアミド系溶媒、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合系が好ましく、特に、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好適である。
【0051】
また、上記スキーム1の1段階目の反応では、重合時または重合後に通常用いられる種々の塩基を添加してもよい。
この塩基の具体例としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、アンモニア、n-プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-N-メチルピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン等が挙げられる。
塩基の添加量は、トリアジン化合物(A12)1当量に対して1~100当量が好ましく、1~10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
得られる重合体には、原料成分が残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損なわなければ一部の原料が残存していてもよい。
反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0052】
フッ素原子含有アニリン化合物(A14)を用いた末端封止方法としては、公知の方法を採用すればよい。
この場合、末端封止剤の使用量は、重合反応に使われなかった余剰のトリアジン化合物由来のハロゲン原子1当量に対し、0.05~10当量程度が好ましく、0.1~5当量がより好ましく、0.5~2当量がより一層好ましい。
反応溶媒や反応温度としては、上記スキーム1の1段階目の反応で述べたのと同様の条件が挙げられ、また、末端封止剤は、アリールジアミノ化合物(A13)と同時に仕込んでもよい。
【0053】
第1発明において、フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ化合物を用いて末端封止を行った場合の好適なトリアジン環含有重合体としては、下記式(A15)~(A19)で示される繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0054】
【化24】
(式中、R
xは、R
a16または水素原子を表し、R、R′、R
a1~R
a8、R
a12~R
a15およびR
a16は、上記と同じ意味を表す。)
【0055】
【化25】
(式中、R
x、R
a1~R
a8およびR
a12~R
a15は、上記と同じ意味を表す。)
【0056】
【化26】
(式中、R
xは、上記と同じ意味を表す。)
【0057】
【化27】
(式中、R
xは、上記と同じ意味を表す。)
【0058】
上記トリアジン環含有重合体(ハイパーブランチポリマー)は、上記スキーム1に示した手法に準じて製造することができる。
すなわち、トリハロゲン化トリアジン化合物とアリールジアミノ化合物とを有機溶媒中で反応させた後、末端封止剤であるフッ素原子含有アリールアミノ化合物および無置換アリールアミノ化合物と反応させることにより当該トリアジン環含有重合体を得ることができる。
例えば、下記スキーム2に示されるように、トリアジン環含有重合体(A20)は、トリアジン化合物(A12)およびアリールジアミノ化合物(A13)を適当な有機溶媒中で反応させた後、末端封止剤であるフッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物(A21)と反応させて得ることができる。
【0059】
【化28】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表し、R
xは、上記と同じ意味を表す。)
【0060】
上記スキーム2において、1段階目の反応におけるアリールジアミノ化合物(A13)の仕込み比、反応温度、反応に使用する有機溶媒や塩基等の各条件については、上記スキーム1において述べた条件と同様とすることができる。
【0061】
また、フッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物(A21)を用いた末端封止方法としては、公知の方法を採用すればよい。
この場合、末端封止剤の合計使用量は、重合反応に使われなかった余剰のトリアジン化合物由来のハロゲン原子1当量に対し、0.05~10当量程度が好ましく、0.1~5当量がより好ましく、0.5~2当量がより一層好ましい。
反応溶媒や反応温度としては、上記スキーム1の1段階目の反応で述べた条件と同様の条件が挙げられ、また、末端封止剤は、アリールジアミノ化合物(A13)と同時に仕込んでもよい。
【0062】
フッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物の比率は、有機溶媒に対する溶解性と耐黄変性とをバランスよく発揮させる観点から、フッ素原子含有アニリン化合物1モルに対し、無置換アリールアミノ化合物0.5~5.0モルが好ましく、0.9~4.0モルがより好ましく、0.95~3.05モルがより一層好ましい。
【0063】
[第2発明]
第2発明に係るトリアジン環含有重合体は、下記式(B1)で表される繰り返し単位構造を含むものである。
【0064】
【0065】
上記式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表すが、屈折率をより高めるという観点から、ともに水素原子であることが好ましい。
第2発明において、アルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1~20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1~10がより好ましく、1~3がより一層好ましい。また、その構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0066】
アルキル、アルコキシ、アリールおよびアラルキル基の具体例としては、第1発明で例示した基と同様のものが挙げられる。
【0067】
上記Arは、式(B2)~(B13)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0068】
【0069】
上記R1~R92は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、R93およびR94は、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、W1およびW2は、互いに独立して、単結合、CR95R96(R95およびR96は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR97(R97は、水素原子または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。
なお、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
また、X1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(B14)で示される基を表す。
【0070】
【0071】
上記R98~R101は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1~10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。
なお、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルキレン基としては上記と同様のものが挙げられる。
【0072】
これらの中でも、R1~R92およびR98~R101としては、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいハロゲン化アルキル基、または炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。また、W1、W2、Y1およびY2は、いずれも単結合が好ましい。
【0073】
特に、Arとしては、式(B2)、(B5)~(B13)で示される少なくとも1種が好ましく、式(B2)、(B5)、(B7)、(B8)、(B11)~(B13)で示される少なくとも1種がより好ましい。上記式(B2)~(B13)で表されるアリール基の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、下記式中のPhはフェニル基を表す。
【0074】
【0075】
これらの中でも、より高い屈折率のポリマーが得られることから、下記式で示されるアリール基がより好ましい。なお、下記式中のPhはフェニル基を表す。
【0076】
【0077】
特に、トリアジン環含有重合体の屈折率および耐黄変性をより高めることを考慮すると、Arとしては、式(B19)で示されるフルオレン骨格を有する基が好ましい。
【0078】
【化34】
また、第2発明のトリアジン環含有重合体は、少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端の少なくとも一部が、フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基で封止されている。
なお、第2発明のトリアジン環含有重合体は、少なくとも1つのトリアジン環末端を有するが、この末端のトリアジン環には、通常、上記フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基と置換可能なハロゲン原子を2つ有している。そのため、上記フッ素原子含有アリールアミノ基および無置換アリールアミノ基は、同一のトリアジン環末端に結合していてもよく、また、トリアジン環末端が複数ある場合は、それぞれが別の末端のトリアジン環末端に結合していてもよい。
【0079】
これら各種のアリール基としては、上記と同様のものが挙げられるが、特に、フェニル基が好ましい。
フッ素原子含有基としては、上記と同様のものが挙げられるが、フッ素原子、炭素数1~10のフルオロアルキル基が好ましい。特に、屈折率を維持しつつトリアジン環含有重合体の低極性溶媒等に対する溶解性を高めることを考慮すると、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基が好ましく、特に、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が最適である。
【0080】
フッ素原子含有基の数は特に限定されるものではなく、アリール基上に置換可能な任意の数とすることができるが、屈折率維持と溶媒に対する溶解性とのバランスを考慮すると、1~4個が好ましく、1~2個がより好ましく、1個がより一層好ましい。
【0081】
好適なフッ素原子含有アリールアミノ基としては、式(B15)で示されるものが挙げられ、特に、アミノ基に対してパラ位にフッ素原子含有基を有する式(B16)またはアミノ基に対してメタ位にフッ素原子含有基を有する式(B17)で示されるものが好ましい。
【0082】
【化35】
(式中、R
102は、フッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基を表す。)
【0083】
【化36】
(式中、R
102は、上記と同じ意味を表す。)
【0084】
具体的なフッ素原子含有アリールアミノ基としては、第1発明において例示したものと同様のものが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0085】
なお、フッ素原子含有アリールアミノ基は、後述の製造法において、対応するフッ素原子含有アリールアミノ化合物を用いて導入することができる。
フッ素原子含有アリールアミノ化合物の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0086】
具体的な無置換アリールアミノ基としては、下記式(B18)で示されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0087】
【0088】
なお、無置換アリールアミノ基は、後述の製造法において、対応する無置換アリールアミノ化合物を用いて導入することができる。
無置換アリールアミノ化合物の具体例としては、アニリン等が挙げられる。
【0089】
第2発明において、特に好適なトリアジン環含有重合体としては、下記式(B20)~(B24)で示される繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0090】
【化38】
(式中、R
sは、R
102または水素原子を表し、R、R′、R
69~R
76、R
98~R
101およびR
102は、上記と同じ意味を表す。)
【0091】
【化39】
(式中、R
s、R
69~R
76およびR
98~R
101は、上記と同じ意味を表す。)
【0092】
【化40】
(式中、R
sは、上記と同じ意味を表す。)
【0093】
【化41】
(式中、R
sは、上記と同じ意味を表す。)
【0094】
第2発明における重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~500,000が好ましく、500~100,000がより好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、10,000以下がより一層好ましい。
なお、第2発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる重量平均分子量である。
【0095】
第2発明のトリアジン環含有重合体(ハイパーブランチポリマー)は、上述した特許文献1に開示された手法に準じて製造することができる。
すなわち、トリハロゲン化トリアジン化合物とアリールジアミノ化合物とを有機溶媒中で反応させた後、末端封止剤であるフッ素原子含有アリールアミノ化合物および無置換アリールアミノ化合物と反応させることにより第2発明のトリアジン環含有重合体を得ることができる。
例えば、下記スキーム3に示されるように、トリアジン環含有重合体(B22)は、トリアジン化合物(B25)およびアリールジアミノ化合物(B26)を適当な有機溶媒中で反応させた後、末端封止剤であるフッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物(B27)と反応させて得ることができる。
【0096】
【化42】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表し、R
sは、上記と同じ意味を表す。)
【0097】
上記反応において、アリールジアミノ化合物(B26)の仕込み比は、目的とする重合体が得られる限り任意であるが、トリアジン化合物(B25)1当量に対し、アリールジアミノ化合物(B26)0.01~10当量が好ましく、1~5当量がより好ましい。
アリールジアミノ化合物(B26)は、ニートで加えても、有機溶媒に溶かした溶液で加えてもよいが、操作の容易さや反応のコントロールのし易さなどを考慮すると、後者の手法が好適である。
反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、-30~150℃程度が好ましく、-10~100℃がより好ましい。
【0098】
有機溶媒としては、第1発明で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0099】
また、上記スキーム3の1段階目の反応では、重合時または重合後に通常用いられる種々の塩基を添加してもよい。
この塩基の具体例としては、第1発明で例示したものと同様のものが挙げられる。
塩基の添加量は、トリアジン化合物(B25)1当量に対して1~100当量が好ましく、1~10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
得られる重合体には、原料成分が残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損なわなければ一部の原料が残存していてもよい。
反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0100】
フッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物(B27)を用いた末端封止方法としては、公知の方法を採用すればよい。
この場合、末端封止剤の合計使用量は、重合反応に使われなかった余剰のトリアジン化合物由来のハロゲン原子1当量に対し、0.05~10当量程度が好ましく、0.1~5当量がより好ましく、0.5~2当量がより一層好ましい。
反応溶媒や反応温度としては、上記スキーム3の1段階目の反応で述べたのと同様の条件が挙げられ、また、末端封止剤は、アリールジアミノ化合物(B26)と同時に仕込んでもよい。
【0101】
また、フッ素原子含有アニリン化合物および無置換アリールアミノ化合物の比率は、有機溶媒に対する溶解性と耐黄変性とをバランスよく発揮させる観点から、フッ素原子含有アニリン化合物1モルに対し、無置換アリールアミノ化合物0.5~5.0モルが好ましく、0.9~4.0モルがより好ましく、0.95~3.05モルがより一層好ましい。
【0102】
上述した第1発明および第2発明のトリアジン環含有重合体は、膜形成用組成物として好適に用いることができ、この場合、架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、上述したトリアジン環含有重合体と反応し得る置換基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。
そのような化合物としては、メチロール基、メトキシメチル基などの架橋形成置換基を有するメラミン系化合物、置換尿素系化合物、エポキシ基またはオキセタン基などの架橋形成置換基を含有する化合物、ブロック化イソシアナートを含有する化合物、酸無水物を有する化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物、フェノプラスト化合物等が挙げられるが、耐熱性や保存安定性の観点からエポキシ基、ブロックイソシアネート基、(メタ)アクリル基を含有する化合物が好ましく、特に、ブロックイソシアネート基を有する化合物や、開始剤を用いなくとも光硬化可能な組成物を与える多官能エポキシ化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物が好ましい。
なお、これらの化合物は、重合体の末端処理に用いる場合は少なくとも1個の架橋形成置換基を有していればよく、重合体同士の架橋処理に用いる場合は少なくとも2個の架橋形成置換基を有する必要がある。
【0103】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0104】
また、市販品として、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である、YH-434、YH434L(東都化成(株)製)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂である、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、同3000(ダイセル化学工業(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)152、同154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、EOCN-102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート(現、jER)180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)、脂環式エポキシ樹脂である、デナコールEX-252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA-GEIGY A.G製)、アラルダイトCY-182、同CY-192、同CY-184(以上、CIBA-GEIGY A.G製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、エピコート(現、jER)871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX-611、同EX-612、同EX-614、同EX-622、同EX-411、同EX-512、同EX-522、同EX-421、同EX-313、同EX-314、同EX-321(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることもできる。
【0105】
多官能(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、多塩基酸変性アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0106】
また、多官能(メタ)アクリル化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、NKエステルA-200、同A-400、同A-600、同A-1000、同A-9300(イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル))、同A-9300-1CL、同A-TMPT、同UA-53H、同1G、同2G、同3G、同4G、同9G、同14G、同23G、同ABE-300、同A-BPE-4、同A-BPE-6、同A-BPE-10、同A-BPE-20、同A-BPE-30、同BPE-80N、同BPE-100N、同BPE-200、同BPE-500、同BPE-900、同BPE-1300N、同A-GLY-3E、同A-GLY-9E、同A-GLY-20E、同A-TMPT-3EO、同A-TMPT-9EO、同AT-20E、同ATM-4E、同ATM-35E(以上、新中村化学工業(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPEA-12、同PEG400DA、同THE-330、同RP-1040(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM-210、M-350(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同NPGDA、同PET30(以上、日本化薬(株)製)、NKエステル A-DPH、同A-TMPT、同A-DCP、同A-HD-N、同TMPT、同DCP、同NPG、同HD-N(以上、新中村化学工業(株)製)、NKオリゴ U-15HA(新中村化学工業(株)製)、NKポリマー バナレジンGH-1203(新中村化学工業(株)製)、DN-0075(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
上記多塩基酸変性アクリルオリゴマーも市販品として入手が可能であり、その具体例としては、アロニックスM-510,520(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0107】
酸無水物化合物としては、二分子のカルボン酸を脱水縮合させたカルボン酸無水物であれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸等の分子内に1個の酸無水物基を有するもの;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の分子内に2個の酸無水物基を有するもの等が挙げられる。
【0108】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物としては、イソシアネート基(-NCO)が適当な保護基によりブロックされたブロック化イソシアネート基を一分子中2個以上有し、熱硬化の際の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基が樹脂との間で架橋反応を起こすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、下記式で示される基を一分子中2個以上(なお、これらの基は同一のものでも、また各々異なっているものでもよい)有する化合物が挙げられる。
【0109】
【化43】
(式中、R
bはブロック部の有機基を表す。)
【0110】
このような化合物は、例えば、一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を反応させて得ることができる。
一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートや、これらの二量体、三量体、および、これらとジオール類、トリオール類、ジアミン類、またはトリアミン類との反応物などが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-エトキシヘキサノール、2-N,N-ジメチルアミノエタノール、2-エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;フェノール、o-ニトロフェノール、p-クロロフェノール、o-、m-またはp-クレゾール等のフェノール類;ε-カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール等のピラゾール類;ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類などが挙げられる。
【0111】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、B-830、B-815N、B-842N、B-870N、B-874N、B-882N、B-7005、B-7030、B-7075、B-5010(以上、三井化学ポリウレタン(株)製)、デュラネート(登録商標)17B-60PX、同TPA-B80E、同MF-B60X、同MF-K60X、同E402-B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、カレンズMOI-BM(登録商標)(以上、昭和電工(株)製)、BI-7950、BI-7951、BI-7960、BI-7961、BI-7963、BI-7982、BI-7991、BI-7992(Baxenden chemicals LTD社製)等が挙げられる。
【0112】
アミノプラスト化合物としては、メトキシメチレン基を一分子中2個以上有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン CYMEL(登録商標)303、テトラブトキシメチルグリコールウリル 同1170、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン 同1123(以上、日本サイテックインダストリーズ(株)製)等のサイメルシリーズ、メチル化メラミン樹脂であるニカラック(登録商標)MW-30HM、同MW-390、同MW-100LM、同MX-750LM、メチル化尿素樹脂である同MX-270、同MX-280、同MX-290(以上、(株)三和ケミカル製)等のニカラックシリーズ等のメラミン系化合物が挙げられる。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を一分子中2個以上有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、オキセタニル基を含有するOXT-221、OX-SQ-H、OX-SC(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0113】
フェノプラスト化合物は、ヒドロキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で脱水縮合反応により架橋反応が進行するものである。
フェノプラスト化合物としては、例えば、2,6-ジヒドロキシメチル-4-メチルフェノール、2,4-ジヒドロキシメチル-6-メチルフェノール、ビス(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、ビス(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)ホルミルメタン、α,α-ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ホルミルトルエン等が挙げられる。
フェノプラスト化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、26DMPC、46DMOC、DM-BIPC-F、DM-BIOC-F、TM-BIP-A、BISA-F、BI25X-DF、BI25X-TPA(以上、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0114】
これらの中でも、架橋剤配合による屈折率低下を抑制し得るとともに、硬化反応が速やかに進行するという点から、多官能(メタ)アクリル化合物が好適であり、その中でも、トリアジン環含有重合体との相溶性に優れていることから、下記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物がより好ましい。
このような骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、NKエステルA-9300、同A-9300-1CL(いずれも、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0115】
【化44】
(式中、R
111~R
113は、互いに独立して、末端に少なくとも1つの(メタ)アクリル基を有する一価の有機基である。)
【0116】
また、硬化速度をより向上させるとともに、得られる硬化膜の耐溶剤性および耐酸性、耐アルカリ性を高めるという観点から、25℃で液体であり、かつ、その粘度が5,000mPa・s以下、好ましくは1~3,000mPa・s、より好ましくは1~1,000mPa・s、より一層好ましくは1~500mPa・sの多官能(メタ)アクリル化合物(以下、低粘度架橋剤という)を、単独もしくは2種以上組み合わせて、または、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物と組み合わせて用いることが好適である。
このような低粘度架橋剤も市販品として入手可能であり、例えば、上述した多官能(メタ)アクリル化合物のうち、NKエステルA-GLY-3E(85mPa・s,25℃)、同A-GLY-9E(95mPa・s,25℃)、同A-GLY-20E(200mPa・s,25℃)、同A-TMPT-3EO(60mPa・s,25℃)、同A-TMPT-9EO(100mPa・s,25℃)、同ATM-4E(150mPa・s,25℃)、同ATM-35E(350mPa・s,25℃)(以上、新中村化学工業(株)製)等の、(メタ)アクリル基間の鎖長が比較的長い架橋剤が挙げられる。
【0117】
さらに、得られる硬化膜の耐アルカリ性をも向上させることを考慮すると、NKエステルA-GLY-20E(新中村化学工業(株)製)、および同ATM-35E(新中村化学工業(株)製)の少なくとも一方と、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物と組み合わせて用いることが好適である。
【0118】
また、PETやポリオレフィンフィルム等の保護フィルムに本発明のトリアジン環含有重合体からなる薄膜を積層し、保護フィルムを介して光照射する場合、薄膜積層フィルムにおいても酸素阻害を受けることなく良好な硬化性を得ることができる。この場合、保護フィルムは硬化後に剥離する必要があるため、剥離性の良好な薄膜を与える多塩基酸変性アクリルオリゴマーを用いることが好ましい。
【0119】
上述した架橋剤は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。架橋剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して、1~100質量部が好ましいが、溶剤耐性を考慮すると、その下限は、好ましくは2質量部、より好ましくは5質量部であり、さらには、屈折率をコントロールすることを考慮すると、その上限は好ましくは20質量部、より好ましくは15質量部である。
【0120】
本発明の組成物には、それぞれの架橋剤に応じた開始剤を配合することもできる。なお、上述のとおり、架橋剤として多官能エポキシ化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合、開始剤を使用せずとも光硬化が進行して硬化膜を与えるものであるが、その場合に開始剤を使用しても差し支えない。
【0121】
多官能エポキシ化合物を架橋剤として用いる場合には、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
光酸発生剤としては、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩やヨードニウム塩などのオニウム塩誘導体を用いることができる。
その具体例としては、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のジアリールヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4′-ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′-ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、4-[4′-(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル-ジ(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-[4′-(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル-ジ(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0122】
これらのオニウム塩は市販品を用いてもよく、その具体例としては、サンエイドSI-60、SI-80、SI-100、SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-L145、SI-L150、SI-L160、SI-L110、SI-L147(以上、三新化学工業(株)製)、UVI-6950、UVI-6970、UVI-6974、UVI-6990、UVI-6992(以上、ユニオンカーバイド社製)、CPI-100P、CPI-100A、CPI-200K、CPI-200S(以上、サンアプロ(株)製)、アデカオプトマーSP-150、SP-151、SP-170、SP-171(以上、旭電化工業(株)製)、イルガキュア 261(BASF社製)、CI-2481、CI-2624、CI-2639、CI-2064(以上、日本曹達(株)製)、CD-1010、CD-1011、CD-1012(以上、サートマー社製)、DS-100、DS-101、DAM-101、DAM-102、DAM-105、DAM-201、DSM-301、NAI-100、NAI-101、NAI-105、NAI-106、SI-100、SI-101、SI-105、SI-106、PI-105、NDI-105、BENZOIN TOSYLATE、MBZ-101、MBZ-301、PYR-100、PYR-200、DNB-101、NB-101、NB-201、BBI-101、BBI-102、BBI-103、BBI-109(以上、みどり化学(株)製)、PCI-061T、PCI-062T、PCI-020T、PCI-022T(以上、日本化薬(株)製)、IBPF、IBCF(三和ケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0123】
一方、光塩基発生剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、Co-アミン錯体系、オキシムカルボン酸エステル系、カルバミン酸エステル系、四級アンモニウム塩系光塩基発生剤などを用いることができる。
その具体例としては、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2’-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2’,4’-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン等が挙げられる。
また、光塩基発生剤は市販品を用いてもよく、その具体例としては、TPS-OH、NBC-101、ANC-101(いずれも製品名、みどり化学(株)製)等が挙げられる。
【0124】
光酸または塩基発生剤を用いる場合、多官能エポキシ化合物100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1~10質量部の範囲である。
なお、必要に応じてエポキシ樹脂硬化剤を、多官能エポキシ化合物100質量部に対して、1~100質量部の量で配合してもよい。
【0125】
一方、多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合には、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
光ラジカル重合開始剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されている。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、BASF社製 商品名:イルガキュア 127、184、369、379、379EG、651、500、754、819、903、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24-61、OXE01、OXE02、ダロキュア 1116、1173、MBF、BASF社製 商品名:ルシリン TPO、UCB社製 商品名:ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤を用いる場合、多官能(メタ)アクリル化合物100質量部に対して、0.1~200質量部の範囲で使用することが好ましく、1~150質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0126】
さらに、本発明の組成物には、トリアジン環含有重合体と架橋剤との反応を促進させることなどを目的として、分子内に2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物を添加してもよい。
具体的には、下記式で示される多官能チオール化合物が好ましい。
【0127】
【0128】
上記Lは、2~4価の有機基を表すが、2~4価の炭素数2~12の脂肪族基または2~4価のヘテロ環含有基が好ましく、2~4価の炭素数2~8の脂肪族基、または下記式で示されるイソシアヌル酸骨格(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン環)を有する3価の基がより好ましい。
上記nは、Lの価数に対応して2~4の整数を表す。
【0129】
【化46】
(式中、「・」は、酸素原子との結合部を示す。)
【0130】
具体的な化合物としては、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等が挙げられる。
これらの多官能チオール化合物は、市販品として入手することもでき、例えば、カレンズMT-BD1、カレンズMT NR1、カレンズMT PE1、TPMB、TEMB(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
これらの多官能チオール化合物は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0131】
多官能チオール化合物を用いる場合、その添加量としては、得られる薄膜に悪影響を及ぼさない限り特に限定されるものではないが、本発明では、固形分100質量%中に、0.01~10質量%が好ましく、0.03~6質量%がより好ましい。
【0132】
本発明の組成物には、各種溶媒を添加し、トリアジン環含有重合体を溶解させて使用することが好ましい。
溶媒としては、例えば、水、トルエン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1-オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1-メトキシ-2-ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2-メチル-2-ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N-シクロヘキシル-2-ピロリジノン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0133】
上述したとおり、本発明のトリアジン環含有重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れているため、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒にもよく溶解するため、これらの溶媒が必要とされる部位に薄膜を形成する場合に特に適している。
【0134】
この際、組成物中の固形分濃度は、保存安定性に影響を与えない範囲であれば特に限定されず、目的とする膜の厚みに応じて適宜設定すればよい。具体的には、溶解性および保存安定性の観点から、固形分濃度0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.1~40質量%である。
【0135】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、トリアジン環含有重合体、架橋剤および溶媒以外のその他の成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、無機微粒子などの添加剤が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製(旧(株)ジェムコ製))、商品名メガファックF171、F173、R-08、R-30、R-40、F-553、F-554、RS-75、RS-72-K(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK-302、BYK-307、BYK-322、BYK-323、BYK-330、BYK-333、BYK-370、BYK-375、BYK-378(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0136】
これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して0.0001~5質量部が好ましく、0.001~1質量部がより好ましく、0.01~0.5質量部がより一層好ましい。
【0137】
無機微粒子としては、例えば、Be,Al,Si,Ti,V,Fe,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Ta,W,Pb,BiおよびCeからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、硫化物または窒化物が挙げられ、特に、これらの金属酸化物が好適である。なお、無機微粒子は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
金属酸化物の具体例としては、Al2O3、ZnO、TiO2、ZrO2、Fe2O3、Sb2O5、BeO、ZnO、SnO2、CeO2、SiO2、WO3などが挙げられる。
また、複数の金属酸化物を複合酸化物として用いることも有効である。複合酸化物とは、微粒子の製造段階で2種以上の無機酸化物を混合させたものである。例えば、TiO2とZrO2、TiO2とZrO2とSnO2、ZrO2とSnO2との複合酸化物などが挙げられる。
さらに、上記金属の化合物であってもよい。例えば、ZnSb2O6、BaTiO3、SrTiO3、SrSnO3などが挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、さらに上記の酸化物と混合して用いてもよい。
なお、上記その他の成分は、本発明の組成物を調製する際の任意の工程で添加することができる。
【0138】
本発明の膜形成用組成物は、基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱して溶剤を蒸発させた後、加熱または光照射して所望の硬化膜とすることができる。
組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、ジェットディスペンサー法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を採用できる。
【0139】
また、基材としては、シリコン、インジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が成膜されたガラス、金属ナノワイヤ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、プラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材等が挙げられ、可撓性を有するフレキシブル基材を用いることもできる。
焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば110~400℃で行うことができる。
焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。
焼成温度および焼成時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような焼成条件を選択すればよい。
光照射する場合の条件も特に限定されるものではなく、用いるトリアジン環含有重合体および架橋剤に応じて、適宜な照射エネルギーおよび時間を採用すればよい。
【0140】
以上のようにして得られた本発明の薄膜や硬化膜は、高耐熱性、高屈折率、および低体積収縮を達成できるため、液晶ディスプレイ、有機EL素子(有機ELディスプレイや有機EL照明)、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)、レンズ、プリズムカメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置などを作製する際の一部材など、電子デバイスや光学材料分野に好適に利用できる。
特に、本発明の組成物から作製された薄膜や硬化膜は、透明性が高く、屈折率も高いため、有機EL照明の平坦化層や光散乱層として用いた場合に、その光取出し効率(光拡散効率)や耐久性を改善することができる。
【0141】
なお、本発明の組成物を有機EL照明の光散乱層に用いる場合、光拡散剤としては公知の有機無機複合光拡散剤、有機光拡散剤、無機光拡散剤を用いることができ、特に限定されるものではない。これらはそれぞれ単独で用いても、同種の2種以上を組み合わせて用いても、異種の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
有機無機複合光拡散剤としては、メラミン樹脂・シリカ複合粒子等が挙げられる。
有機光拡散剤としては、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、架橋ポリメチルアクリレート粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋スチレンアクリル共重合粒子、メラミン-ホルムアルデヒド粒子、シリコーン樹脂粒子、シリカ・アクリル複合粒子、ナイロン粒子、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド粒子、フッ素樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ポリフェニレンスルフィド樹脂粒子、ポリエーテルスルホン樹脂粒子、ポリアクリロニトリル粒子、ポリウレタン粒子等が挙げられる。
無機光拡散剤としては、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化チタン(TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、シリカ(SiO2)、タルク等が挙げられるが、得られる硬化膜の光拡散性をより高めるという観点から、酸化チタン(TiO2)や凝集シリカ粒子が好ましく、非凝集性の酸化チタン(TiO2)がより好ましい。
これらの光拡散剤は、適宜な表面修飾剤により表面処理したものを用いてもよい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[1H-NMR]
装置:Bruker NMR System AVANCE III HD 500(500MHz)
測定溶媒:DMSO-d6
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0ppm)
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC-8200 GPC
カラム:東ソーTSKgel α-3000+東ソーTSKgel α-4000
カラム温度:40℃
溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF)
検出器:UV(271nm)
検量線:標準ポリスチレン
[エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
[分光測色計]
装置:コニカミノルタ社製 CM-3700A
【0144】
[1]トリアジン環含有重合体の合成
[実施例1-1]高分子化合物[4]の合成
【化47】
【0145】
3,000mL四口フラスコに、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2](264.53g、0.759mol、JFEケミカル(株)製)、およびジメチルアセトアミド2,023g(DMAc、関東化学(株)製)を加え、窒素置換した後、撹拌して9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2]をDMAcに溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](140g、0.759mol、東京化成工業(株)製)をバス温が0℃以上にならないよう確認しながら投入した。30分間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc2,023gを加え、窒素置換後、オイルバスを90~100℃に設定し、内温が70℃±5℃となるよう、5,000mL四口フラスコに滴下した。内温70℃にて1時間撹拌後、4-トリフルオロメチルアニリン[3](366.96g、2.278mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(134.63g、東京化成工業(株)製)を滴下し、30分撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(9,902g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ別し、THF(3,366g)に再溶解させ、その溶液に、酢酸アンモニウム(196g)およびイオン交換水(140g)を加え、30分間撹拌した。撹拌停止後、溶液を分液ロートに移し、有機層と水層に分け、有機層を回収した。回収した有機層をメタノール(1,981g)およびイオン交換水(4,951g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ別し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[4](以下、P-1という)438gを得た。化合物の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図1に示す。
化合物P-1のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,200、多分散度Mw/Mnは2.4であった。
【0146】
[実施例1-2]高分子化合物[6]の合成
【化48】
【0147】
1,000mL四口フラスコに、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2](45.35g、0.130mol、JFEケミカル(株)製)、およびジメチルアセトアミド347g(DMAc、関東化学(株)製)を加え、窒素置換した後、撹拌して9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2]をDMAcに溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](24g、0.130mol、東京化成工業(株)製)をバス温が0℃以上にならないよう確認しながら投入した。30分間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc347gを加え、窒素置換後、オイルバスを90~100℃に設定し、内温が70℃±5℃となるよう、1,000mL四口フラスコに滴下した。内温70℃にて1時間撹拌後、4-トリフルオロメチルアニリン[3](31.45g、0.195mol、東京化成工業(株)製)とアニリン[5](18.18g、0.195mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(23.08g、東京化成工業(株)製)を滴下し、30分撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(1,671g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ別し、THF(572g)に再溶解させ、その溶液に、酢酸アンモニウム(33.4g)およびイオン交換水(23.8g)を加え、30分間撹拌した。撹拌停止後、溶液を分液ロートに移し、有機層と水層に分け、有機層を回収した。回収した有機層をメタノール(334g)およびイオン交換水(836g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ別し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[6](以下、P-2という)69.1gを得た。化合物の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図2に示す。
化合物P-2のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,100、多分散度Mw/Mnは2.6であった。
【0148】
[実施例1-3]高分子化合物[7]の合成
【化49】
【0149】
1,000mL四口フラスコに、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2](45.35g、0.130mol、JFEケミカル(株)製)、およびジメチルアセトアミド347g(DMAc、関東化学(株)製)を加え、窒素置換した後、撹拌して9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2]をDMAcに溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](24g、0.130mol、東京化成工業(株)製)をバス温が0℃以上にならないよう確認しながら投入した。30分間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc347gを加え、窒素置換後、オイルバスを90~100℃に設定し、内温が70℃±5℃となるよう、1,000mL四口フラスコに滴下した。内温70℃にて1時間撹拌後、4-トリフルオロメチルアニリン[3](10.48g、0.065mol、Amino-Chem(HK) Co.,Limited.製)とアニリン[5](18.18g、0.195mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(23.08g、東京化成工業(株)製)を滴下し、30分撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(1,629g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ別し、THF(552g)に再溶解させ、その溶液に、酢酸アンモニウム(32.2g)およびイオン交換水(23.0g)を加え、30分間撹拌した。撹拌停止後、溶液を分液ロートに移し、有機層と水層に分け、有機層を回収した。回収した有機層をメタノール(345g)およびイオン交換水(804g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ別し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[7](以下、P-3という)65.0gを得た。化合物の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図3に示す。
化合物P-3のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,700、多分散度Mw/Mnは2.6であった。
【0150】
[実施例1-4]高分子化合物[9]の合成
【化50】
【0151】
1,000mL四口フラスコに、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2](45.35g、0.130mol、JFEケミカル(株)製)、およびジメチルアセトアミド347g(DMAc、関東化学(株)製)を加え、窒素置換した後、撹拌して9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2]をDMAcに溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](24g、0.130mol、東京化成工業(株)製)をバス温が0℃以上にならないよう確認しながら投入した。30分間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc347gを加え、窒素置換後、オイルバスを90~100℃に設定し、内温が70℃±5℃となるよう、1,000mL四口フラスコに滴下した。内温70℃にて1時間撹拌後、3-トリフルオロメチルアニリン[8](20.97g、0.130mol、東京化成工業(株)製)とアニリン[5](12.12g、0.130mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(23.08g、東京化成工業(株)製)を滴下し、30分撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(1,638g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ別し、THF(506g)に再溶解させ、その溶液に、酢酸アンモニウム(29.5g)およびイオン交換水(21.1g)を加え、30分間撹拌した。撹拌停止後、溶液を分液ロートに移し、有機層と水層に分け、有機層を回収した。回収した有機層をメタノール(345g)およびイオン交換水(804g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ別し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[9](以下、P-4という)69.1gを得た。化合物の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図4に示す。
化合物P-4のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,100、多分散度Mw/Mnは2.6であった。
【0152】
[実施例1-5]高分子化合物[10]の合成
【化51】
【0153】
1,000mL四口フラスコに、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2](37.79g、0.108mol、JFEケミカル(株)製)、およびジメチルアセトアミド289g(DMAc、関東化学(株)製)を加え、窒素置換した後、撹拌して9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2]をDMAcに溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](20g、0.108mol、東京化成工業(株)製)をバス温が0℃以上にならないよう確認しながら投入した。30分間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc289gを加え、窒素置換後、オイルバスを90~100℃に設定し、内温が70℃±5℃となるよう、1,000mL四口フラスコに滴下した。内温70℃にて1時間撹拌後、3-トリフルオロメチルアニリン[8](8.74g、0.054mol、東京化成工業(株)製)とアニリン[5](15.15g、0.163mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(19.23g、東京化成工業(株)製)を滴下し、30分撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(1,358g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ別し、THF(455g)に再溶解させ、その溶液に、酢酸アンモニウム(26.5g)およびイオン交換水(19.0g)を加え、30分間撹拌した。撹拌停止後、溶液を分液ロートに移し、有機層と水層に分け、有機層を回収した。回収した有機層をメタノール(345g)およびイオン交換水(804g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ別し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[10](以下、P-5という)54.5gを得た。化合物の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図5に示す。
化合物P-5のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,100、多分散度Mw/Mnは2.6であった。
【0154】
[比較例1-1]高分子化合物[11]の合成
【化52】
【0155】
1,000mL四口フラスコに、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[3](45.35g、0.130mol、JFEケミカル(株)製)、およびジメチルアセトアミド346.74g(DMAc、関東化学(株)製)を加え、窒素置換した後、撹拌して9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン[2]をDMAcに溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](24.00g、0.130mol、東京化成工業(株)製)をバス温が0℃以上にならないよう確認しながら投入した。30分間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc346.74gを加え、窒素置換後、オイルバスを90~100℃に設定し、内温が85℃±5℃となるよう、1,000mL四口フラスコに滴下した。内温85℃にて1時間撹拌後、アニリン[5](36.36g、0.390mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(23.08g、東京化成工業(株)製)を滴下し、30分撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液を酢酸アンモニウム28.8gを加えたイオン交換水(2,056g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ別し、THF(556g)に再溶解させ、その溶液に、25%アンモニア水(92.6g)、酢酸アンモニウム(46.3g)およびイオン交換水(138.9g)を加え、30分間撹拌した。撹拌停止後、溶液を分液ロートに移し、有機層と水層に分け、有機層を回収した。回収した有機層をメタノール(740g)およびイオン交換水(1,702g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ別し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[11](以下、P-6という)47.4gを得た。化合物の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図6に示す。
化合物P-6のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,050、多分散度Mw/Mnは2.6であった。
【0156】
[2]溶解性の確認
[実施例2-1]
実施例1-1で得られたP-1(2.5g)を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMEと略す)(10.0g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略す)(10.0g)、シクロペンタノン(以下、CPNと略す)(10.0g)にそれぞれ溶解させたところ、いずれの溶媒にも溶解し、均一なワニスが得られた。
[実施例2-2]
溶解させるポリマーをP-2へ変更した以外は、実施例2-1と同様にして、PGME、PGMEA、CPNの溶媒に溶解させたところ、いずれの溶媒にも溶解し、均一なワニスが得られた。
[実施例2-3]
溶解させるポリマーをP-3へ変更した以外は、実施例2-1と同様にして、PGME、PGMEA、CPNの溶媒に溶解させたところ、いずれの溶媒にも溶解し、均一なワニスが得られた。
[実施例2-4]
溶解させるポリマーをP-4へ変更した以外は、実施例2-1と同様にして、PGME、PGMEA、CPNの溶媒に溶解させたところ、いずれの溶媒にも溶解し、均一なワニスが得られた。
[実施例2-5]
溶解させるポリマーをP-5へ変更した以外は、実施例2-1と同様にして、PGME、PGMEA、CPNの溶媒に溶解させたところ、いずれの溶媒にも溶解し、均一なワニスが得られた。
[比較例2-1]
溶解させるポリマーをP-6へ変更した以外は、実施例2-1と同様にして、PGME、PGMEA、CPNの溶媒に溶解させたところ、CPNに溶解し、均一なワニスが得られたが、PGMEおよびPGMEAには溶解しなかった。
【0157】
[3]膜形成用組成物の調製および被膜の作製
[実施例3-1]
実施例1-1で得られたP-1(0.5g)を、CPN(4.5g)に溶かし、均一透明なワニスを調製した(以下、P-1溶液という)。
得られたP-1溶液を、50mm×50mm×0.7tの無アルカリガラス基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、100℃のホットプレートで1分間仮焼成した後、250℃で5分間本焼成して被膜(以下、P-1膜という)を得た。
[実施例3-2]
溶解させるポリマーをP-2へ変更した以外は、実施例3-1と同様にして、被膜(以下、P-2膜という)を得た。
[実施例3-3]
溶解させるポリマーをP-3へ変更した以外は、実施例3-1と同様にして、被膜(以下、P-3膜という)を得た。
[実施例3-4]
溶解させるポリマーをP-4へ変更した以外は、実施例3-1と同様にして、被膜(以下、P-4膜という)を得た。
[実施例3-5]
溶解させるポリマーをP-5へ変更した以外は、実施例3-1と同様にして、被膜(以下、P-5膜という)を得た。
[比較例3-1]
溶解させるポリマーをP-6へ変更した以外は、実施例3-1と同様にして、被膜(以下、P-6膜という)を得た。
【0158】
上記実施例3-1~3-5および比較例3-1で作製した被膜の屈折率および膜厚を表1に示す。
【0159】
【0160】
実施例2-1~2-5、3-1~3-5および比較例2-1、3-1より、実施例1-1~1-5で得られた高分子化合物から作製した薄膜は、有機溶媒への溶解性を向上させつつ、高い屈折率を有していることがわかる。
【0161】
[4]架橋剤添加膜形成用組成物の調製および硬化膜の作製
[実施例4-1]
実施例2-1で調製したP-1のPGMEA溶液(12.49g)に、架橋剤として70質量%PGME溶液のブロックイソシアネート(BI7992、1,500mPa・s、BAXENDEN社製)0.71g、界面活性剤として1質量%PGMEA溶液のメガファックF-563(DIC(株)製)0.12g、並びにPGMEA4.97g、THF1.70gを加えて目視で溶解したことを確認し、固形分15質量%のワニスを調製した(以下、SP-1溶液という)。
このSP-1溶液を50mm×50mm×0.7tの無アルカリガラス基板上に、スピンコーターにて200rpmで5秒間、1,000rpmで30秒間スピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で1分間仮焼成後、250℃で5分間本焼成して硬化膜(以下、SP-1膜という)を得た。
【0162】
[実施例4-2]
溶解させるポリマーをP-2へ変更した以外は、実施例4-1と同様にして、被膜(以下、SP-2膜という)を得た。
【0163】
[実施例4-3]
溶解させるポリマーをP-3へ変更した以外は、実施例4-1と同様にして、被膜(以下、SP-3膜という)を得た。
【0164】
[実施例4-4]
溶解させるポリマーをP-4へ変更した以外は、実施例4-1と同様にして、被膜(以下、SP-4膜という)を得た。
【0165】
[実施例4-5]
溶解させるポリマーをP-5へ変更した以外は、実施例4-1と同様にして、被膜(以下、SP-4膜という)を得た。
【0166】
[比較例4-1]
比較例2-1で調製したP-6のCPN溶液(12.49g)に、架橋剤として70質量%PGME溶液のブロックイソシアネート(BI7992、1,500mPa・s、BAXENDEN社製)0.71g、界面活性剤として1質量%PGMEA溶液のメガファックR-40(DIC(株)製)0.12g、並びにCPN6.67gを加えて目視で溶解したことを確認し、固形分15質量%のワニスを調製した(以下、SP-2溶液という)。
このSP-2溶液を50mm×50mm×0.7tの無アルカリガラス基板上に、スピンコーターにて200rpmで5秒間、1,000rpmで30秒間スピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で1分間仮焼成後、250℃で5分間本焼成して硬化膜(以下、SP-6膜という)を得た。
【0167】
上記で得られた硬化膜については、屈折率、膜厚およびb*を測定し、さらに以下の手順により硬化膜の耐黄変性を確認した。なお、上記b*は、分光測色計により測定されるL*a*b*表色系におけるb*の値を表す。
【0168】
[耐黄変性]
耐黄変性は、得られた硬化膜について、250℃で180分間のアニーリングを行った後、屈折率、膜厚およびb*を測定し、アニーリング前の結果と比較することにより行った。耐黄変性は、特にb*の値の増加量により確認することができ、この値の増加量が少ないほど耐黄変性が高いと評価することができる。結果を表2および表3に示す。
【0169】
【0170】
【0171】
表2および表3より、実施例の硬化膜は、高い屈折率を維持しつつ、耐黄変性に優れていることがわかる。