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特許7484523マルチビーム描画方法及びマルチビーム描画装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】マルチビーム描画方法及びマルチビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240509BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240509BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20240509BHJP
   H01J 37/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
H01L21/30 541D
H01L21/30 541E
G03F7/20 504
H01J37/305 B
H01J37/04 A
H01J37/04 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020122963
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2021022731
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2019137074
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖雄
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225357(JP,A)
【文献】特開2015-037104(JP,A)
【文献】特開2018-006604(JP,A)
【文献】特開2016-086103(JP,A)
【文献】特開2019-029575(JP,A)
【文献】特開2017-073461(JP,A)
【文献】特開2016-103557(JP,A)
【文献】特開2013-074088(JP,A)
【文献】特開平10-064799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0218879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 27/00
37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に進行するステージに載置された基板上に定義した画素毎にマルチビームの各ビームを照射してパターンを形成するマルチビーム描画方法であって、
少なくとも前記所定方向に前記マルチビームのアレイを分割した複数のサブアレイ毎の前記各ビームの位置ずれ量より前記サブアレイ毎の前記パターンの位置補正量を取得し、
前記位置補正量に基づき前記サブアレイ毎に描画される前記パターンの位置をシフトするための、前記各画素に照射される前記各ビームの照射量を算出し、
算出された前記照射量で、2以上の前記サブアレイのそれぞれ少なくとも一部を用いて多重描画を行うことを特徴とするマルチビーム描画方法。
【請求項2】
前記サブアレイ毎の前記位置補正量に基づき、複数の前記サブアレイ毎に、前記パターンの描画データ上の位置又は前記描画データから照射量を算出する処理の基準位置をシフトすることで前記描画データ上の位置がシフトした前記パターンに対応する画素に照射される前記各ビームの照射量を算出することを特徴とする請求項1記載のマルチビーム描画方法。
【請求項3】
複数の前記サブアレイのそれぞれに対応する前記パターンの面積密度分布を求め、
前記面積密度分布を、前記位置補正量に基づきシフトし、前記パターンに対応する画素に照射される前記各ビームの照射量を算出することを特徴とする請求項1記載のマルチビーム描画方法。
【請求項4】
複数の前記サブアレイのそれぞれに対応する前記パターンの面積密度分布を求め、
前記面積密度分布より前記サブアレイ毎の照射量分布を求め、
前記照射量分布を前記位置補正量に基づきシフトし、前記各ビームの照射量を算出することを特徴とする請求項1記載のマルチビーム描画方法。
【請求項5】
前記位置補正量は、前記サブアレイ内で前記所定方向に垂直な方向の位置に依存して変化する関数を用いて求められることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチビーム描画方法。
【請求項6】
前記位置補正量は、前記サブアレイ内で一様とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム描画方法。
【請求項7】
前記サブアレイ内の前記各ビームの位置ずれ量分布と、前記サブアレイ毎の前記位置補正量の差分から、位置補正残り分布を求め、
前記位置補正残り分布に基づき隣接ビーム間で前記照射量を変調することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマルチビーム描画方法。
【請求項8】
前記複数のサブアレイは、前記所定方向の幅が均等であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチビーム描画方法。
【請求項9】
前記マルチビームのアレイにおいて、前記所定方向の両端側に位置するサブアレイの前記所定方向の幅は、中央部のサブアレイの前記所定方向の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチビーム描画方法。
【請求項10】
前記所定方向に並ぶ前記マルチビームのアレイの一部を用いて、前記画素を照射することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム描画方法。
【請求項11】
所定方向に進行するステージに載置された基板上に定義した画素毎にマルチビームの各ビームを照射してパターンを形成するマルチビーム描画装置であって、
前記マルチビームのアレイを少なくとも所定方向に分割した複数のサブアレイ毎の前記各ビームの位置ずれ量より前記サブアレイ毎の前記パターンの位置補正量を求める位置補正部と、
前記サブアレイ毎に、描画される前記パターンの位置をシフトするための、前記各ビームの照射量を算出する照射量算出部と、
マルチビームの各ビームが、算出された前記照射量となるように制御する照射量制御部と、
制御された前記照射量により2以上の前記サブアレイのそれぞれ少なくとも一部を用いて前記基板上に多重描画を行う描画部と、
を備えるマルチビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム描画方法及びマルチビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、ガラス基板上の遮光膜等に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンの作成には、電子ビーム描画装置によってレジストパターンを形成する、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
マルチビームを使った描画装置は、1本の電子ビームで描画する場合に比べて、一度に多くのビームを照射できるので、スループットを大幅に向上させることができる。マルチビーム描画装置の一形態であるブランキングアパーチャアレイを使ったマルチビーム描画装置では、例えば、1つの電子銃から放出された電子ビームを複数の開口を持った成形アパーチャアレイに通してマルチビーム(複数の電子ビーム)を形成する。マルチビームは、ブランキングアパーチャアレイのそれぞれ対応するブランカ内を通過する。ブランキングアパーチャアレイは、ビームを個別に偏向するための電極対を有し、電極対の間にビーム通過用の開口が形成されている。電極対(ブランカ)を同電位に制御するか、又は異なる電位に制御することで、通過する電子ビームのブランキング偏向を行う。ブランカによって偏向された電子ビームは遮蔽され、偏向されなかった電子ビームは基板上に照射される。基板上には一定のピッチで画素が定義されており、この画素をマルチビームで露光することでパターンを描画する。
【0004】
マルチビーム描画では、電子光学系のレンズの歪みなどによって照射位置がずれるビームが生じ得るが、多数のマルチビームに個別の偏向機構を設けて位置ずれを個別に補正することは技術的に困難である。ビーム毎に照射量を変調することで、位置ずれしたビームで照射した場合でも、レジストに与えるドーズ分布にビーム位置ずれの影響が現れないようにすることが可能である。この方法を隣接画素間での照射量変調と呼ぶ。この技術は、例えば特開2016-119423号公報に開示されている。
【0005】
しかし、このような隣接画素間での照射量変調を用いると、画素の照射量の最大値が増加してマルチビームの照射動作のサイクルが長くなることになり、描画スループットを劣化させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-119423号公報
【文献】特開2016-063149号公報
【文献】特開2018-078251号公報
【文献】特開2004-303794号公報
【文献】米国特許第8222621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、描画スループットの劣化を防止しつつ、描画精度を向上させるマルチビーム描画方法及びマルチビーム描画装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるマルチビーム描画方法は、所定方向に進行するステージに載置された基板上に定義した画素毎にマルチビームの各ビームを照射してパターンを形成するマルチビーム描画方法であって、少なくとも前記所定方向に前記マルチビームのアレイを分割した複数のサブアレイ毎の前記各ビームの位置ずれ量より前記サブアレイ毎の前記パターンの位置補正量を取得し、前記位置補正量に基づき前記サブアレイ毎に描画される前記パターンの位置をシフトするための、前記各画素に照射される前記各ビームの照射量を算出し、算出された前記照射量で、2以上の前記サブアレイのそれぞれ少なくとも一部を用いて多重描画を行うものである。
【0009】
本発明の一態様によるマルチビーム描画装置は、所定方向に進行するステージに載置された基板上に定義した画素毎にマルチビームの各ビームを照射してパターンを形成するマルチビーム描画装置であって、前記マルチビームのアレイを少なくとも所定方向に分割した複数のサブアレイ毎の前記各ビームの位置ずれ量より前記サブアレイ毎の前記パターンの位置補正量を求める位置補正部と、前記サブアレイ毎に、描画される前記パターンの位置をシフトするための、前記各ビームの照射量を算出する照射量算出部と、マルチビームの各ビームが、算出された前記照射量となるように制御する照射量制御部と、制御された前記照射量により2以上の前記サブアレイのそれぞれ少なくとも一部を用いて前記基板上に多重描画を行う描画部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、描画スループットの劣化を防止しつつ、描画精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態によるマルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
図2】成形アパーチャ部材の平面図である。
図3】(a)(b)は描画動作の一例を説明する図である。
図4】描画動作の一例を説明する図である。
図5】描画動作の一例を説明する図である。
図6】描画動作の一例を説明する図である。
図7】ビームアレイ内の各ビームのビーム位置の例を示す図である。
図8】ビームアレイ内のビーム位置ずれ量を示すグラフである。
図9】分割領域内のビーム位置ずれ量を示すグラフである。
図10】パターンシフトの例を示す図である。
図11】同実施形態に係る描画方法を説明する図である。
図12】別の実施形態によるマルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
図13】別の実施形態に係る描画方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等の荷電粒子ビームやレーザ光を用いたビームでもよい。
【0013】
図1は、実施の形態に係る描画装置の概略構成図である。図1に示すように、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャ部材203、ブランキングプレート204、縮小レンズ205、制限アパーチャ部材206、対物レンズ207、偏向器208、及び、検出器211が配置されている。
【0014】
描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画対象の基板101が配置される。基板101の上面には荷電粒子ビームで照射されるレジストが塗布されており、基板101は、例えば、マスクとして加工される基板(マスクブランクス)や、半導体装置として加工される半導体基板(シリコンウェハ)である。また、基板101は、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスであってもよい。
【0015】
XYステージ105上には、マーク106、及びステージの位置測定用のミラー210が配置される。
【0016】
制御部160は、制御計算機110、偏向制御回路130、検出回路132、ステージ位置検出器139、及び記憶部140,142,144を有している。記憶部140には、描画データが外部から入力され、格納されている。
【0017】
制御計算機110は、ビーム位置測定部111、分割部112、位置ずれ量平均値算出部113、位置補正部114、照射量算出部115、データ処理部116、及び描画制御部117を有する。制御計算機110の各部は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。
【0018】
ステージ位置検出器139は、レーザを照射し、ミラー210からの反射光を受光し、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を検出する。
【0019】
図2は、成形アパーチャ部材203の構成を示す概念図である。図2に示すように、成形アパーチャ部材203には、縦(y方向)m行×横(x方向)n列(m,n≧2)の開口22が所定の配列ピッチで形成されている。各開口22は、例えば、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。各開口22は、略同一の径の円形であっても構わない。
【0020】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により例えばほぼ垂直に成形アパーチャ部材203全体を照明する。電子ビーム200は、すべての開口22が含まれる領域を照明する。電子ビーム200の一部が、成形アパーチャ部材203の複数の開口22を通過し、残りのビームが成形アパーチャ部材で止められる。電子ビーム200が、成形アパーチャ部材203の複数の開口22を通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a~20eが形成される。
【0021】
照射量制御部であるブランキングプレート204には、成形アパーチャ部材203の各開口22の配置位置に合わせてビームの通過孔が形成されている。各通過孔には、対となる2つの電極の組(ブランカ)が、それぞれ配置される。各通過孔を通過する電子ビームは、ブランカに印加される電圧によってビームオンまたはビームオフの状態にビーム毎独立に制御される。ビームオンの場合、ブランカの対向する電極は同電位に制御され、ブランカはビームを偏向しない。ビームオフの場合、ブランカの対向する電極は互いに異なる電位に制御され、ブランカはビームを偏向する。このように、複数のブランカが、成形アパーチャ部材203の複数の開口22を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行うことによりビームオフ状態に制御する。
【0022】
ブランキングプレート204を通過したマルチビーム20a~20eは、縮小レンズ205によって縮小される。
【0023】
ここで、ビームオフ状態に制御されるビームはブランキングプレート204のブランカによって偏向され、制限アパーチャ部材206の開口の外を通る軌道を通るため、制限アパーチャ部材206によって遮蔽される。一方、ビームオン状態に制御されるビームは、ブランカによって偏向されないので、制限アパーチャ部材206の開口を通過する。このとき、理想的には同一の点を通過する。この点が制限アパーチャ部材206の中心の開口内に位置するように図示しないアライメントコイルでビームの軌道を調整しておく。このようにブランキングプレート204のブランキング制御により、ビームのオン/オフが制御される。すなわち、ブランキングプレート204により照射時間が制御されることにより、照射量が制御される。
【0024】
制限アパーチャ部材206は、複数のブランカによってビームoffの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームonになってからビームoffになるまでに形成された、制限アパーチャ部材206を通過したビームにより1回分のショットのマルチビームが形成される。
【0025】
制限アパーチャ部材206を通過したマルチビームは、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率で基板101に投影される。偏向器208によってマルチビーム全体が同方向にまとめて偏向され、基板101上の所望の位置に照射される。
【0026】
XYステージ105が連続移動している場合、ビームの基板101上の照射位置がXYステージ105の移動に追従するように、ビームの軌道が偏向器208によって制御される。照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャ部材203の複数の開口の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで基板101上に並ぶことになる。例えば、描画装置100は、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、不要なビームはブランキング制御によりビームoffに制御される。
【0027】
図3は、実施形態における描画動作を説明するための概念図である。図3に示すように、基板101の描画領域30は、例えば、y方向(第1方向)に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域34に分割される。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域34の左端に一回のマルチビームの照射で照射可能な照射領域35が位置するように調整し、描画が開始される。
【0028】
第1番目のストライプ領域34を描画する際には、XYステージ105を-x方向に移動させることにより、相対的に+x方向へと描画を進めていく。XYステージ105は所定の速度で連続移動させる。第1番目のストライプ領域34の描画終了後、ステージ位置を-y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域34の右端に照射領域35が位置するように調整する。続いて、図3(b)に示すように、XYステージ105を+x方向に移動させることにより、-x方向に向かって描画を行う。
【0029】
第3番目のストライプ領域34では、+x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域34では、-x方向に向かって描画する。交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。同じ方向に向かって各ストライプ領域34を描画してもよい。
【0030】
各ストライプ領域34には図示しない画素が定義されており、マルチビームを用いて各画素を同じ回数露光することにより、各ストライプ領域を描画する。各ストライプ領域34を描画する際、x方向に向かってXYステージ105が連続移動するのと並行して、偏向器208でビーム位置を制御して基板101上の画素を照射する。このとき、偏向器208は、1回の照射と次の回の照射の間に照射画素の切り替えを行う偏向動作と、照射中に基板101上のビーム位置が固定されるようにステージ移動に合わせた連続的な偏向動作を行う。
【0031】
図4図6ではx方向に4個のマルチビームがビームサイズの4倍の間隔で配列している例を示す。さらにy方向に4行または異なる行数のマルチビームが存在していてもよいが、各行のマルチビームはビームピッチ幅の高さの領域を描画するので、複数行からなるマルチビームの各行の描画動作の例として、ある行のビームと、これらが照射すべき画素が図4図6に示されている。
【0032】
図4の例では、y方向に4画素からなる1列を照射した後ビームを+x方向に移動して別の列に移動する工程の繰り返しが示されている。図では、ビームピッチ幅の領域で画素のグループが区切られているが、ビームが別の列に移る際、別のピッチ幅の領域にビームが移動している。ここで左から3つ目までのピッチ幅の領域は一部の画素しか照射されないが、それより右のピッチ幅の領域はすべての画素が照射される。つまり、照射開始直後は、ビームピッチ領域3個分は不完全な照射になるので、実際の描画領域がこの部分に入らないよう、あらかじめ描画領域より左側の領域から描画動作を開始する。
【0033】
図4の例では画素はy方向に順次照射されるが、これに限られるものではない。例えば図5に示すようにx方向に順次照射することも可能である。それ以外の順序で順次照射することも可能である。
【0034】
x方向に並ぶビームの一部だけを使用して全ての画素を照射することも可能である。一例を図6に示す。ここでは、2列を照射した後別のビームピッチ幅の領域を繰り返す動作を行うことにより、2個のビームc、dですべての画素を照射している。このとき、別の2個のビームa,bによる照射を、ビームc、dによる照射と並行して行うことができる。この場合、ステージ進行方向に対して上流側にあるビームa,bで照射した画素を、ビームc、dで照射することにより、すべての画素が2回ずつ照射されることになる。換言すると、ビームアレイをx方向に2分割して制御することにより、全ての画素が2回照射される。一般には、ビームアレイをN分割して制御することにより、全ての画素がN回またはN回以上照射される。
【0035】
描画処理を行う際、設定されたショット位置、つまり各ビームが対応する画素の位置に各ビームが照射されることが理想的であるが、電子光学系のレンズの歪みなどにより各ショットのビーム照射位置が設定されたショット位置からずれてしまう。図7に、基板101に照射されるビームアレイ全面における各ビームの位置ずれ量のX座標、Y座標についての分布の例を示す。図7ではマルチビームアレイ内の代表点として32×32点を配置し、各位置でのビームの位置ずれ量を示している。ビームアレイ中心では位置ずれ量が小さいが、ビームアレイ周辺では位置ずれ量が増加している。さらにビームアレイ内での位置ずれ量の範囲分布をY座標(Yindex:1~32)毎にまとめると、図8に示すようなものとなる。x方向の符号付き位置ずれ量の最大値をxmax、最小値をxmin、y方向の符号付き位置ずれ量の最大値をymax、最小値をyminとしている。
【0036】
図8に示すように、ビームアレイ全面でみると、y方向中央部分(Yindexが15~17あたり)ではビーム位置ずれ量のばらつき(xmaxとxminとの差、ymaxとyminとの差)がやや小さくなるものの、いずれのY座標でもビームアレイ左端と右端の位置ずれ量が大きい部分の値が含まれるため、Y座標毎のビーム位置ずれ量の範囲は、ビームアレイ全体での位置ずれの範囲に対して極端に小さいという訳ではない。
【0037】
図7の例では、ビームの位置ずれは少なくともx方向に系統的に緩やかに変化しているので、図9に示すように、ビームアレイBAをx方向(第2方向)に向かって所定の幅で複数の領域、例えば8個の領域R1~R8に等分割した場合、各分割領域でのY座標毎のビーム位置ずれの分布幅は、アレイ全体でのY座標毎のビーム位置ずれの分布幅よりも小さくなる。この傾向は、ビーム位置ずれ量が大きいビームアレイ上下に対応するY座標でも成り立っている。
【0038】
本実施形態では、レンズの歪みによるビーム位置ずれ分布など、ビームアレイ面内で緩やかに変化する位置ずれ分布がある場合に、ビームアレイの一部の領域でのビーム位置ずれ量の範囲はビームアレイ全体でのビーム位置ずれ量の範囲より小さくなる傾向を利用して、ビームアレイの一部の領域内でのビーム位置ずれ量の補正を、その領域内での平均的な位置ずれ量で一様に置き換え、換言すればビームアレイの一部の領域は一様な位置ずれ量を持っていると近似して、その平均的な位置ずれ量を補正量としてビームの位置ずれ補正を行う。
【0039】
さらに、ビームアレイを分割した領域(サブアレイ)のビーム位置ずれ量を、その領域のビームが描画する描画データに記載されるパターンの位置をシフトすることにより補正する。つまり、描画データ上のパターン位置を、ビームの位置ずれ量と逆方向に同じ量の位置補正量でシフトした後、かかる描画データを用いて、位置ずれしたビームで描画すれば、描画パターンの位置が設計値に近くなるように補正できる。或いは、描画データから照射量を算出する処理の基準位置を位置補正量で逆方向にシフトしてもよい。
【0040】
例えば、図10に示すように、描画データ上の位置(x0、y0)を持つパターンP0は、領域R1のビーム位置ずれ量及び位置ずれ方向に応じて描画データ上のパターン位置を(x1、y1)にシフトして、領域R1のビームで描画される。また、このパターンP0は、領域R2のビーム位置ずれ量及び位置ずれ方向に応じて描画データ上のパターン位置を(x2、y2)にシフトして、領域R2のビームで描画される。同様に、図示は省略するが、パターンP0は、領域R3~R7のそれぞれのビーム位置ずれ量及び位置ずれ方向に応じて描画データ上のパターン位置をシフトして、領域R3~R7のビームで描画される。さらに、パターンP0は、領域R8のビーム位置ずれ量及び位置ずれ方向に応じて描画データ上のパターン位置を(x8、y8)にシフトして、領域R8のビームで描画される。
【0041】
ステージがX方向に移動してビームアレイがステージ上の位置(x0、y0)を通過する間に、この位置は領域R1~R8のビームで多重照射される。つまり、パターンP0は、ビームアレイの領域分割数と同じ数の多重度で多重描画される。また、ステージ速度を遅くすることにより、各領域、例えば領域R1の右半分と左半分のビームでそれぞれ1回の照射を行う描画も可能である。この場合パターンP0は、ビームアレイの領域分割数の2倍の数の多重度で多重描画される。一般には、パターンP0は、ビームアレイの領域分割数と同じかそれ以上の数の多重度で多重描画される。
【0042】
次に、本実施形態に係る描画方法を図11に示すフローチャートに沿って説明する。
【0043】
まず、マルチビームの各ビームのショット位置の位置ずれ量を測定する(ステップS1)。例えば、マルチビームの一部をグループ化して、XYステージ105に設けられたマーク106をスキャンし、マーク106で反射された電子を検出器211で検出する。検出回路132は、検出器211で検出された電子量を制御計算機110へ通知する。ビーム位置測定部111は、検出された電子量からスキャン波形を取得し、XYステージ105の位置を基準に、グループ化したビームの位置を算出する。XYステージ105の位置は、ステージ位置検出器139により検出されている。
【0044】
マルチビームの別のビームをグループ化し、同様の手法でビームの位置を算出する。これを繰り返すことで、グループ化したビーム毎にビーム位置を求めることができる。算出されたビーム位置と、理想位置との差分が、位置ずれ量となる。取得された位置ずれデータ(位置ずれ量のマップ)は記憶部142に格納される。
【0045】
グループ化したビームグループの領域内でのビーム位置ずれ量の範囲が、ビームアレイ全体でのビーム位置ずれ量の範囲に比べて十分小さくなるように、グループ化するビーム領域の大きさを選択することが必要である。つまり、ビームアレイ内の位置ずれ量の変化が緩やかであれば大き目のビームグループ領域を用いることが可能だが、前記位置ずれ量の変化が急峻であれば十分小さいグループ領域を用いることが必要である。グループ化したビーム毎に位置ずれ量を求めた後、この位置ずれ量を各グループ化したビームの領域の中心での位置ずれ量と定義してビームアレイ内の位置ずれ量の分布を表現し、これを補間して、各ビーム位置での位置ずれ量を算出する。
【0046】
分割部112が、ビームアレイをx方向(描画進行方向)に向かって均等な幅で複数の領域(サブアレイ)に分割する(ステップS2)。例えば、図9に示すように、ビームアレイを8個の領域R1~R8に分割する。
【0047】
位置ずれ量平均値算出部113が、各分割領域について、間隔Δyのy座標毎に、各分割領域内のX位置についての位置ずれ量の平均値Xa,Yaを算出する(ステップS3)。間隔Δyは、Y座標依存の位置ずれ量の変化が描画に要求されるパターン寸法精度および位置精度より十分小さくなるように選択する。例えば、寸法精度および位置精度の要求精度が1.0nmである場合、Y座標依存の位置ずれ量の変化が0.1nmであるように間隔Δyを設定すると好適である。例えば、位置ずれ量のY座標についての変化率がY座標1umあたり0.2nmである場合、Δyは0.5umに設定すればよい。Xaはx方向の位置ずれ量の領域内のX位置についての平均値、Yaはy方向の位置ずれ量の領域内のY位置についての平均値である。例えば、領域R1~R8のそれぞれについて、間隔Δyのy座標毎の位置ずれ量の平均値Xa,Yaが算出される。
【0048】
位置補正部114が、y座標についての関数ΔX(y)、ΔY(y)を算出する(ステップS4)。この関数ΔX(y)、ΔY(y)は、位置補正量を表す関数となる。具体的には、関数ΔX(y)、ΔY(y)は、平均値Xa,Yaの正負を反転した値をy座標について補間してy座標の関数としたものである。関数ΔX(y)、ΔY(y)は、ビームアレイを分割した領域毎に算出される。図9の例では、領域R1~R8のそれぞれについて、関数ΔX(y)、ΔY(y)が算出される。関数データは記憶部144に格納される。
【0049】
位置補正部114が、記憶部140から描画データを読み出し、描画データに定義されたパターンの位置を関数ΔX(y)、ΔY(y)の値だけシフトする(ステップS5)。描画パターンのY方向の寸法が大きい場合、例えば前記Δyより大きい場合は、パターンをΔyの幅で分割して分割したパターン毎に、分割パターンの座標x、yに対応するΔX(y)、ΔY(y)の値でシフトを行う。このようにパターンがy方向についてΔyより小さく分割されていれば、パターンの内部での位置ずれ量は略同一とみなせるので、パターンの位置x、yをパターンの中心の位置として定義していても、ほかの位置、例えばパターンの左下の位置として定義していても、描画精度上の差はなく、パターン位置の定義の仕方が描画精度の劣化を起こすことはない。
【0050】
位置補正部114が位置ずれ量より求められた位置補正量に基づきパターンをシフトし、照射量算出部115が、各ストライプ領域34を所定のサイズでメッシュ状に分割する。このとき、パターンとメッシュの相対位置をシフトさせればよく、メッシュをシフトしてもよい。なお、このとき基板上に定義した画素の位置はサブアレイ毎にはシフトしない。分割した各メッシュに重なるパターンのパターン面積密度ρとそのマップである面積密度マップ(面積密度分布)を算出する。このとき、メッシュサイズは、例えば、マルチビームのビーム1本のx方向およびy方向についてのサイズの平均値である。照射量算出部115が、パターン面積密度マップから各画素に照射されるビームの照射量ρD0を算出する。例えばパターン面積密度ρに基準照射量D0を乗じて、各画素に照射されるビームの照射量を算出する(ステップS6)。照射量算出部115は、この照射量をさらに変調してもよい。例えば近接効果を補正するための補正係数を乗じた値を照射量としてもよい。照射量算出部115は、ストライプ単位で画素毎の照射量を定義した照射量マップを作成する。
【0051】
なお、メッシュとパターンの相対位置をシフトせずに面積密度マップを作製した後、位置補正量に基づき面積密度マップをシフトして、照射量マップを作成してもよい。或いは、面積密度マップから照射量マップを作成した後、位置補正量に基づき照射量マップをシフトしてもよい。或いは、描画データが面積密度マップで定義されている場合、面積密度マップから照射量マップを作成した後、位置補正量に基づき照射量マップをシフトしてもよい。或いは、パターン位置、面積密度マップ、照射量マップの2つ以上のシフトの組み合わせで位置補正を行ってもよい。このとき、描画データに定義されたパターンのパターン面積密度ρを用いて面積密度マップを作成してもよい。
【0052】
ステップS5のパターンのシフト及びステップS6の各画素の照射量の算出は、ビームアレイの分割領域毎に行われる。例えば、領域R1の関数ΔX(y)、ΔY(y)を用いてパターンをシフトし、R1についての各画素の照射量をストライプ単位で算出して、領域R1のビーム用の照射量マップが作成される。同様にして、領域R2~R8のそれぞれのビーム用の照射量マップがストライプ単位で作成される。つまり、各ストライプ領域34のそれぞれについて、R1~R8に対応するストライプ単位の照射量マップが作成される。
【0053】
データ処理部116は、照射量を照射時間に変換し、描画シーケンスに沿ったショット順に並び替える。照射時間は、例えば前記メッシュ毎の照射量をビームの電流密度で割った値として求められる。この処理で得られるのはストライプ単位の照射時間マップであるので、このマップのメッシュから1回のマルチビームのショットで照射されるメッシュの組みを選択して、1回のショットの照射時間配列データを作成する。並び替えられた照射時間配列データは、偏向制御回路130へ出力される。
【0054】
偏向制御回路130は、照射時間配列データを各ブランカの制御回路へ出力する。描画制御部117は描画部150を制御し、上述した描画処理を実行させる(ステップS7)。例えば、領域R1のビームに対応するブランカの制御回路には、領域R1用の照射量マップに基づく照射時間配列データが入力される。他の領域R2~R8についても同様である。
【0055】
このように、本実施形態によれば、ビームアレイをx方向に向かって所定の均等幅で複数の領域に分割し、各分割領域においてビームの位置ずれ量の範囲はビームアレイ全体でのビーム位置ずれ量の範囲より小さくなる傾向を利用して、各分割領域について、位置ずれ量の平均値を示す関数を算出する。そして、描画データに定義されたパターンの位置を、この関数で算出した値だけシフトしておくことで、位置ずれしたビームで描画したパターンの描画位置を設計値に近くなるように補正できる。また、ビームアレイの領域分割数と同じ数(又はそれ以上の数)の多重度で多重描画を行う。
【0056】
ビームの位置ずれ補正をパターンシフトで行うが、このとき画素の照射量の最大値はほぼ変化しないため、描画スループットの劣化を防止しつつ、描画精度を向上させることができる。パターンシフトの際、パターンまたはパターンを分割した分割パターンが重なる場合、重なりが発生する位置で前記パターン面積密度ρが増加するが、隣接するパターンまたは分割パターンでの位置ずれ量の差は十分小さいので重なりの量は小さく、重なりによるビームの照射時間の増加量は微小であり、これによる描画スループットの劣化も微小である。
【0057】
上記実施形態では、隣接画素間での照射量変調を行わずにビームの位置ずれ補正を行っていたが、パターンシフトと隣接画素間での照射量変調を組み合わせて、ビームの位置ずれ補正を行ってもよい。この場合、制御計算機110は、図12に示すように、差分算出部120をさらに有する。パターンシフトと隣接画素間での照射量変調を組み合わせてビームの位置ずれ補正を行う描画方法を、図13に示すフローチャートに沿って説明する。
【0058】
ショット位置の位置ずれ量の測定(ステップS11)及び領域分割(ステップS12)は、図11のステップS1及びS2と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0059】
位置ずれ量平均値算出部113が、各分割領域について、前記間隔Δyのy座標毎に、各分割領域内のX位置についての位置ずれ量XA,YAの平均値を算出する(ステップS13)。
【0060】
差分算出部120が、各ビームの位置ずれ量と、対応する各分割領域のy座標の位置ずれ量XA,YAの平均値との差分X´,Y´を算出する(ステップS14)。つまり、位置x、yにあるビームが分割領域R2に属する場合、分割領域R2での位置yでの位置ずれ量XA,YAと、当該ビームの位置ずれ量のx成分、y成分との差分からX´,Y´を算出する。
【0061】
位置補正部114が、記憶部140から描画データを読み出し、描画データに定義されたパターンの位置を-XA,-YAだけシフトする(ステップS15)。
【0062】
照射量算出部115が、各ストライプ領域34を所定のサイズ(例えば1本のビームのサイズ)でメッシュ状に分割し、分割した各画素に配置されるパターンのパターン面積密度ρを算出する。照射量算出部115が、パターン面積密度ρに基準照射量Dを乗じて、各画素に照射されるビームの照射量ρDを算出する。また、照射量算出部115は、各ビームについて算出した上記の差分X´,Y´に基づいて、各画素の照射量ρDに対し、隣接画素間での照射量変調を行い、補正照射量Dを算出する(ステップS16)。照射量算出部115は、ストライプ単位で画素毎の補正照射量Dを定義した照射量マップを作成する。
【0063】
なお、このとき、描画データに定義されたパターンのパターン面積密度ρを算出して面積密度マップを作成した後、面積密度マップをシフトして、照射量マップを作成してもよい。或いは、描画データに定義されたパターンのパターン面積密度ρから照射量マップを作成した後、照射量マップをシフトしてもよい。
【0064】
ステップS15のパターンのシフト及びステップS16の各画素の照射量の算出・変調は、ビームアレイの分割領域毎に行われる。これにより、例えば、領域R1~R8のそれぞれのビーム用の照射量マップが作成される。
【0065】
データ処理部116は、照射量を照射時間に変換し、描画シーケンスに沿ったショット順に並び替える。並び替えられた照射時間配列データは、偏向制御回路130へ出力される。
【0066】
偏向制御回路130は、照射時間配列データを各ブランカへ出力する。描画制御部117は描画部150を制御し、上述した描画処理を実行させる(ステップS17)。
【0067】
このように、パターンシフトと照射量変調を組み合わせることで、描画精度をさらに向上させることができる。上記実施形態のように照射量の変調を行わない場合よりも描画時間は長くなるが、照射量の変調のみでビームの位置ずれ補正を行う従来の手法よりもビーム1本あたりの最大照射量を抑えることができるため、描画時間を短縮できる。
【0068】
上記実施形態では、ビームアレイの分割幅(領域R1~R8の幅)を同じとする例について説明したが、分割領域毎に幅が異なっていてもよい。例えば、ビームアレイのx方向両端側の分割領域の幅を、中央部の分割領域の幅よりも小さくしてもよい。中央部は、分割領域を広くしても、位置ずれ量のばらつきが小さいためである。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 描画装置
110 制御計算機
111 ビーム位置測定部
112 分割部
113 位置ずれ量平均値算出部
114 位置補正部
115 照射量算出部
116 データ処理部
117 描画制御部
150 描画部
160 制御部
図1
図2
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