IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-試料容器ホルダ 図1
  • 特許-試料容器ホルダ 図2
  • 特許-試料容器ホルダ 図3
  • 特許-試料容器ホルダ 図4
  • 特許-試料容器ホルダ 図5
  • 特許-試料容器ホルダ 図6
  • 特許-試料容器ホルダ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】試料容器ホルダ
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/20025 20180101AFI20240509BHJP
【FI】
G01N23/20025
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020136132
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2021039099
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019154865
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 勝史
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019885(JP,A)
【文献】特開2004-251664(JP,A)
【文献】特開2004-037345(JP,A)
【文献】特表2019-528452(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106932419(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 1/00 - G01N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が充填される管状容器をX線回折装置の試料装着部に取り付けるための試料容器ホルダであって、
前記管状容器を保持する第1ホルダと、
前記第1ホルダに取り付けられ、前記第1ホルダを支持する第2ホルダと、を備え、
前記第1ホルダと前記第2ホルダとは、前記第2ホルダが筒状であって、前記第2ホルダの内部に前記第1ホルダを内挿させて軸方向にスライドできるように構成され、
前記第1ホルダは、当該第1ホルダを前記第2ホルダの軸方向にスライドさせるためのガイドを表面に備え、
前記第2ホルダは、軸方向に向かって一部または全長にわたって切り欠いて形成される、前記ガイドをスライドさせるためのガイド用スリットを備える、
試料容器ホルダ。
【請求項2】
前記第2ホルダは、筒状の本体部分に厚さ方向に貫通するネジ孔を備え、
前記ネジ孔にネジを挿入して前記第1ホルダに押し当てることで前記第1ホルダの前記第2ホルダの前記軸方向へのスライドを制止する、
請求項に記載の試料容器ホルダ。
【請求項3】
前記第2ホルダは、前記ガイド用スリットから前記軸方向に垂直な周方向に向かって一部を切り欠いて形成される制止用スリットを備え、
前記制止用スリットは、前記制止用スリットに前記ガイドを移動させたときに、前記第1ホルダの前記第2ホルダの前記軸方向へのスライドを制止する、
請求項に記載の試料容器ホルダ。
【請求項4】
前記第1ホルダは、前記管状容器を挿入させて支持する挿入孔を有し、
前記挿入孔は、径が深さ方向に向かって狭くなるテーパ形状を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の試料容器ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
X線回折装置は、X線源から放射されたX線を試料に照射したとき、試料から反射または透過してくる回折X線を検出して、試料の結晶構造等を分析するための分析装置であり、各種物質の非破壊分析に広く用いられている。
【0003】
粉末試料のX線回折測定においては、試料量が十分にある場合、平板のガラスなどのホルダの中央にある凹み部に粉末試料を入れ、ガラス平板を使って余分な試料を掻き取るという作業を、粉末試料の高さがガラスホルダの基準面と同じ高さとなるまで繰り返し行うことになる。ガラスホルダの基準面と粉末試料の高さを一致させることは回折ピークの角度ズレを防止する点で重要である。
【0004】
ただし、この方法では、余分な粉末試料を擦り切るためにガラス板に加える力加減で粉末粒子がある結晶方位に揃ってしまうことがある。そのような粉末試料をX線回折測定すると一部の回折ピークの強度が強く検出されるなど粒子配向の影響が生じてしまう。この場合、定性分析の際、参照する結晶構造データベース(ICDD)に登録されている回折ピークの強度比が変わり、試料本来の結晶構造解析、定量分析に誤差が生じてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、粉末試料の調製時の粒子配向の問題を回避するため、粉末試料を例えばガラス製のキャピラリに充填し、無配向でX線回折測定する方法が提案されている(例えば特許文献1や2を参照)。
【0006】
具体的には、特許文献1に示すように、片端部が封止されたガラス製のキャピラリに微量の粉末試料を導入した後、キャピラリに振動を与え、粉末試料を充填し、キャピラリを適宜の長さに切断する。次に、キャピラリを切断して得られる管状容器を金属製の試料容器ホルダに支持固定する。そして、試料容器ホルダをマウント治具(例えばゴニオメータヘッなど)に装着し、このマウント治具をX線回折装置のゴニオメータの試料装着部に配置して測定を行う。
【0007】
粉末試料をキャピラリに充填してX線回折測定を行う方法には、粉末試料を無配向で測定できるだけでなく、粉末試料が極微量であっても十分な精度で測定を行えるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-291817号公報
【文献】特許第6001067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
キャピラリを用いたX線回折測定では、透過法により測定を行うのが一般的である。透過法では、キャピラリを切断して得られる管状容器を、その長手方向の中心線を回転軸として回転させながらX線照射を行い、検出器を走査しながら粉末試料を透過した回折X線を検出する。
【0010】
管状容器をX線回折装置に導入する際、粉末試料の充填部分がX線照射領域に位置するよう試料装着部に取り付ける必要がある。一般に、試料装着部からX線照射領域までの距離は決まっているため、その距離に応じて管状容器が所定の長さとなるようキャピラリを切断する必要がある。
【0011】
しかし、キャピラリを所定の位置で切断できず、得られる管状容器の長さがばらつくことがある。管状容器が所定の長さとならないと、粉末試料の充填部分がX線照射領域から外れてしまうことがある。また特に、粉末試料が少量である場合、充填部分が短くなるため、充填部分がX線照射領域からより外れやすくなる。
【0012】
X線回折装置においては、管状容器を角度調整できるものの、回転軸に沿った方向へ移動できないため、充填部分がX線照射領域から外れてしまう場合は、粉末試料のキャピラリへの充填やキャピラリの切断、角度調整などの一連の工程を繰り返すこととなり、測定効率が悪くなることがある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、X線回折測定の精度と測定効率とを向上させる技術を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、
試料が充填される管状容器をX線回折装置の試料装着部に取り付けるための試料容器ホルダであって、
前記管状容器を保持する第1ホルダと、
前記第1ホルダに取り付けられ、前記第1ホルダを支持する第2ホルダと、を備え、
前記第1ホルダと前記第2ホルダとは、一方のホルダが筒状であって、その内部に他方のホルダを内挿させて軸方向にスライドできるように構成される、
試料容器ホルダが提供される。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様の試料容器ホルダにおいて、
前記第1ホルダと前記第2ホルダとは、前記第2ホルダが筒状であって、前記第2ホルダの内部に前記第1ホルダを内挿できるように構成され、
前記第1ホルダは、当該第1ホルダを前記第2ホルダの軸方向にスライドさせるためのガイドを表面に備え、
前記第2ホルダは、軸方向に向かって一部または全長にわたって切り欠いて形成される、前記ガイドをスライドさせるためのガイド用スリットを備える。
【0016】
本発明の第3の態様は、第2の態様の試料容器ホルダにおいて、
前記第2ホルダは、筒状の本体部分に厚さ方向に貫通するネジ孔を備え、
前記ネジ孔にネジを挿入して前記第1ホルダに押し当てることで前記第1ホルダの前記第2ホルダの前記軸方向へのスライドを制止する。
【0017】
本発明の第4の態様は、第2の態様の試料容器ホルダにおいて、
前記第2ホルダは、前記ガイド用スリットから前記軸方向に垂直な周方向に向かって一部を切り欠いて形成される制止用スリットを備え、
前記制止用スリットは、前記制止用スリットに前記ガイドを移動させたときに、前記第1ホルダの前記第2ホルダの前記軸方向へのスライドを制止する。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1の態様の試料容器ホルダにおいて、
前記第1ホルダと前記第2ホルダとは、一方のホルダが雄ネジ構造を有し、他方のホルダが雌ネジ構造を有するように構成され、前記第1ホルダまたは前記第2ホルダを回転させることにより前記第1ホルダまたは前記第2ホルダを前記軸方向へスライドできるように構成される。
【0019】
本発明の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれかの試料容器ホルダにおいて、
前記第1ホルダは、前記管状容器を挿入させて支持する挿入孔を有し、
前記挿入孔は、径が深さ方向に向かって狭くなるテーパ形状を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、X線回折測定の精度と測定効率とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる試料容器ホルダの概略図であって、(a)は側面図、(b)は上面図である。
図2図2は、第1ホルダの概略図であって、(a)は上面図、(b)は(a)におけるA-A´の断面図である。
図3図3は、第2ホルダの概略図であって、(a)は上面図、(b)は(a)におけるB-B´の断面視図である。
図4図4は、試料容器ホルダを試料装着部に取り付けたときの概略図を示す。
図5図5は、試料容器ホルダを試料装着部に取り付けたときの概略図を示す。
図6図6は、本発明の他の実施形態にかかる試料容器ホルダの側面図である。
図7図7(a)は、キャピラリの斜視図であり、(b)は、管状容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
(管状容器)
まず、試料容器ホルダに支持固定される管状容器について図7を用いて説明する。図7の(a)はキャピラリの斜視図であり、(b)は管状容器の斜視図である。
【0024】
管状容器30は、キャピラリ20を切断して得られるものである。キャピラリ20は、例えば石英ガラス、リンデマンガラス、ボロシリケートガラス、ソーダガラスなどの材料から形成され、X線回折装置で微小量の粉末試料を測定するために使用される試料容器である。具体的には、図7(a)に示すように、キャピラリ20は、粉末試料を充填するための一端が閉じた管状部21と、管状部21の他端の開口に接続され、管状部21に粉末試料を導入するための外側に向かって拡径する漏斗状部22とを備えて構成される。管状容器30は、キャピラリ20の管状部21へ漏斗状部22を介して粉末試料を導入して充填した後、図7(a)の点線に示すように漏斗状部22を切断することで得られ、図7(b)に示すように、主に管状部21で構成される。
【0025】
(試料容器ホルダ)
次に、試料容器ホルダについて図1~3を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る試料容器ホルダの概略図であり、(a)は側面図、(b)は上面図である。図2は、第1ホルダの概略図であり、(a)は上面図、(b)は(a)におけるA-A´の断面図である。図3は、第2ホルダの概略図であり、(a)は上面図、(b)は(a)におけるB-B´の断面を矢印方向に見たときの断面視図である。
【0026】
試料容器ホルダ1は、管状容器30をX線回折装置に取り付けるためのものである。本実施形態の試料容器ホルダ1は、図1(a)に示すように、第1ホルダ11と、第2ホルダ12とを備えて構成される。
【0027】
第1ホルダ11は、管状容器30を保持できるように構成される。本実施形態では、第1ホルダ11は、中空部を有する筒状体からなる。第1ホルダ11の一端には、管状容器30を軸方向に向かって挿入する挿入孔15があり、挿入孔15に管状容器30を粉末試料の充填部分が突出するように差し込むことで、管状容器30を保持させることができる。
【0028】
第2ホルダ12は、第1ホルダ11に取り付けられ、第1ホルダ11を支持する。また、第2ホルダ12は、例えばゴニオメータヘッド等に取り付けられて、X線回折装置のゴニオメータに取り付けられる。
【0029】
第1ホルダ11と第2ホルダ12とは、一方のホルダが筒状であって、その内部に他方のホルダを内挿させて軸方向にスライドできるように構成される。本実施形態では、第2ホルダ12が筒状で、その内部に第1ホルダ11を内挿できるように構成されている。これにより、第2ホルダ12に対して第1ホルダ11をスライドさせて、第1ホルダ11の一部を第2ホルダ12の内側に収容したり、第2ホルダ12から第1ホルダ11を引き出したりすることで、試料容器ホルダ1の全長を調整することができる。
【0030】
第1ホルダ11および第2ホルダ12の軸方向の長さは、試料容器ホルダ1を用いて管状容器30をX線回折装置に導入したときに粉末試料の充填部分がX線照射領域に配置できれば特に限定されない。例えば、試料容器ホルダ1の全長を10mm~35mmの範囲内で調整できるような長さであればよい。
【0031】
第1ホルダ11と第2ホルダ12とは、一方のホルダに他方のホルダを内挿できればよいが、各ホルダが同軸的に配置され、それぞれの中心軸が一致することが好ましい。中心軸を一致させる観点からは、筒状の一方のホルダの内径は、内挿させる他方のホルダの外径と略同一であるとよい。
【0032】
また、第1ホルダ11は、第1ホルダ11を第2ホルダ12に対してスライドさせるためのガイド13を備え、第2ホルダ12は、ガイド13がスライドできるようなガイド用スリット14を備えることが好ましい。このような構成によれば、ガイド13をガイド用スリット14に沿ってスライドさせることで、第1ホルダ11を第2ホルダ12に対して容易にスライドさせることができる。なお、図1(a)および(b)では、ガイド13の形状はピン状となっているが、この形状は例えば指やピンセット等で掴めるような形状であれば特に限定されない。また、ガイド用スリット14は、図1(a)では、第2ホルダ12において軸方向に向かって全長にわたり切り欠いて形成されているが、一方の端部から軸方向に向かって一部に切り欠いて形成されていてもよい。ガイド用スリット14の長さは、ホルダをスライドさせる距離に応じて適宜変更するとよい。
【0033】
第1ホルダ11と第2ホルダ12との固定は、特に限定されない。例えば図1(a)に示すように、第2ホルダ12に筒状の本体部分に厚さ方向に貫通するネジ孔16を設けることが好ましい。このようなネジ孔16によれば、ネジ孔16にネジを挿入して第1ホルダ11に押し当てることで第1ホルダ11が第2ホルダ12に対してスライドしないよう固定することができる。
【0034】
また、第1ホルダ11の挿入孔15は、径が深さ方向に向かって狭くなるテーパ形状であることが好ましい。挿入孔15をテーパ形状とすることにより、管状容器30を第1ホルダ11に差し込みやすくなり、作業性を向上させることができる。
【0035】
なお、第1ホルダ11および第2ホルダ12の材質は、特に限定されず、例えば金属、プラスチックなど所望の強度が得られるものを用いることができる。この中でも、比重が高く、加工精度が高いことから金属が好ましい。
【0036】
(X線回折測定方法)
続いて、上述した試料容器ホルダ1を用いてX線回折測定を行う方法について図を用いて説明する。図4は、試料容器ホルダを試料装着部に取り付けたときの概略図を示す。
【0037】
まず、キャピラリ20に粉末試料を充填して漏斗状部22を切断し、管状容器30を準備する。具体的には、キャピラリ20の漏斗状部22から粉末試料を少量ずつ添加し、キャピラリ20をタッピングすることで粉末試料を管状部21へ導入する。この操作を、粉末試料が管状部21において所定の位置となるまで、繰り返し行う。そして、粉末試料が所定位置まで充填された後、漏斗状部22と管状部21との間を切断する。例えば図7(a)に示す点線部分を切断することで、粉末試料が充填された管状容器30を準備する。なお、管状容器30の開口部分は封止してもよい。
【0038】
次に、図4に示すように、管状容器30を第1ホルダ11の挿入孔15に差し込み、粉末試料の充填部分31が挿入孔15から突出するように管状容器30を保持する。管状容器30を安定して固定させる観点からは、管状容器30と挿入孔15の周縁部とを固着材32で固着させることが好ましい。固着材32としては、例えばワックス(ろう)、接着剤、粘土および熱収縮チューブのいずれかを用いることができる。ワックス(ろう)および粘土としては、取り扱いが容易なことから、手で触れたときに軟化変形できるような物を用いるとよい。熱収縮チューブとしては、その材質は特に限定されず、管状容器30の耐熱性に応じて適宜選択するとよい。熱収縮チューブを用いる場合は、熱収縮チューブを細い筒状に成形して管状容器30と挿入孔15の周縁部との間に設けた後に加熱するとよい。
【0039】
次に、管状容器30を保持した第1ホルダ11を筒状の第2ホルダ12に内挿させる。このとき、第1ホルダ11に設けられるガイド13が第2ホルダ12のガイド用スリット14に入るように第1ホルダ11を第2ホルダ12に内挿させる。第1ホルダ11を第2ホルダ12に取り付けることで、各ホルダを軸方向にスライド可能な試料容器ホルダ1を構成することができる。なお、第1ホルダ11に第2ホルダ12を取り付けた段階では各ホルダは固定せず、後工程で長さを調整した後に固定を行う。
【0040】
次に、管状容器30を保持した試料容器ホルダ1を、例えば図4に示すように、ゴニオメータヘッド40に配置する。ゴニオメータヘッド40は、X線回折装置におけるゴニオメータの試料装着部50に取り付けられ、X線回折装置内に測定試料を導入するためのものである。続いて、ガイド13をガイド用スリット14に沿って移動させることで、管状容器30における粉末試料の充填部分31がX線照射領域に位置するように第1ホルダ11をスライドさせて、試料装着部50から充填部分31までの長さLを調整する。例えば、管状容器30の長さが短い場合であれば、試料容器ホルダ1を引き伸ばし、逆に管状容器30が長い場合であれば、試料容器ホルダ1を縮めるといったように、試料容器ホルダ1を伸縮させて、充填部分31をX線照射領域に配置させる。なお、第1ホルダ11がX線照射領域に侵入してしまうと、X線が減衰したり、第1ホルダ11に由来する回折X線が検出されたりするので、第1ホルダ11はその挿入孔15側の端部がX線照射領域にかからないようスライドさせるとよい。
【0041】
次に、試料容器ホルダ1とゴニオメータヘッド40とを固定する。本実施形態では、ゴニオメータヘッド40に設けられる貫通孔41と、筒状の第2ホルダ12に設けられるネジ孔16との位置を合わせ、そこにネジ(図示略)を挿入して第1ホルダ11に押し当てる。これにより、ゴニオメータヘッド40に試料容器ホルダ1を固定するとともに、第1ホルダ11と第2ホルダ12とを固定してスライドを制止することができる。
【0042】
次に、管状容器30の回転軸が偏心しないように管状容器30の角度調整を行う。具体的には、ゴニオメータヘッド40に取り付けられる軸調整機構(図示略)を使用して、管状容器30を回転軸に対して偏心しないよう管状容器30の角度を調整する。角度調整後、管状容器30を取り付けたゴニオメータヘッド40をX線回折装置におけるゴニオメータの試料装着部50に取り付ける。なお、角度調整は、ゴニオメータにゴニオメータヘッド40を取り付けた後に行ってもよい。また必要に応じて、管状容器30を回転軸に対して水平な方向(x軸またはy軸)に移動させてもよい。
【0043】
最後に、管状容器30を回転させながら表面にX線を照射し、透過する回折X線を検出することで、管状容器30に充填される粉末試料の情報を取得することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の試料容器ホルダ1によれば、第1ホルダ11と第2ホルダ12とをスライドさせることで、試料容器ホルダ1の長さを適宜変更することができる。そのため、キャピラリ20を切断したときに得られる管状容器30の長さにかかわらず、その長さに応じて試料容器ホルダ1を引き伸ばしたり縮めたりすることで、管状容器30の粉末試料の充填部分31をX線照射領域に好適に配置させることができる。また、粉末試料が少量で、管状容器30に充填したときの充填部分31が短い場合であっても、試料容器ホルダ1を伸縮させることで充填部分31をX線照射領域に好適に配置させることができる。したがって、キャピラリ20を適切な長さに切断できない場合や粉末試料が少なく充填部分31が短い場合であっても、高い測定精度を実現できるとともに、粉末試料の充填をやり直す必要がないので、測定効率を高めることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0046】
上述した実施形態では、第2ホルダ12のネジ孔16とゴニオメータヘッド40の貫通孔41とを合わせてねじ止めすることにより、試料容器ホルダ1をゴニオメータヘッド40に固定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、ゴニオメータヘッド40の内部に固定材42を配置して、試料容器ホルダ1をゴニオメータヘッド40に固定させてもよい。この固定材42としては、磁石、ワックス(ろう)、テープ、接着剤のいずれかを用いることができる。固定材42として磁石を用いる場合は、第1ホルダ11を非磁性材料で、第2ホルダ12を磁性材料でそれぞれ構成するとよい。磁石固定の場合、試料容器ホルダ1を容易に脱着できるので、作業効率をより高めることができる。なお、第1ホルダ11と第2ホルダ12とは、長さを調節した後に上述した固着材を用いて固定するとよい。
【0047】
上述した実施形態では、第1ホルダ11と第2ホルダ12との固定をネジ止めで行う場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、第2ホルダ12に、ガイド用スリット14から軸方向に垂直な周方向に向かって一部を切り欠いて形成される制止用スリット17を、軸方向に所定の間隔をあけて複数設けることが好ましい。制止用スリット17によれば、制止用スリット17にガイド13が位置するよう第1ホルダ11を移動させることで、第1ホルダ11が第2ホルダ12に対してスライドしないよう固定することができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、第2ホルダ12が筒状で、その内部に第1ホルダ11を内挿させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、第1ホルダ11が筒状で、その内部に第2ホルダ12を内挿させるように構成してもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、第1ホルダ11にガイド13を、第2ホルダ12にガイド用スリット14をそれぞれ設け、ガイド13をガイド用スリット14に沿って移動させることで第1ホルダ11をスライドさせる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1ホルダ11および第2ホルダ12を、一方のホルダが雄ネジ構造を、他方のホルダが雌ネジ構造を有し、いずれか一方を回転させることで軸方向にスライドできるように構成してもよい。
【0050】
具体的には、第2ホルダ12が、筒状で、その内周面にネジ山を備えるメネジ構造を有し、第1ホルダ11が外周面にネジ山を備えるオネジ構造を有する、もしくは、第1ホルダ11が、筒状で、その内周面にネジ山を備えるメネジ構造を有し、第2ホルダ12が外周面にネジ山を備えるオネジ構造を有するように構成するとよい。このように各ホルダをネジ構造とすることで、軸方向でのスライドを制御しやすくなるため、試料容器ホルダ1の長さを微調整することができる。しかも、第1ホルダ11と第2ホルダ12との固定も兼ねることができるので、作業効率をより高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 試料容器ホルダ
11 第1ホルダ
12 第2ホルダ
13 ガイド
14 ガイド用スリット
15 挿入孔
16 ネジ孔
17 制止用スリット
20 キャピラリ
21 管状部
22 漏斗状部
30 管状容器
31 充填部分
32 固着材
40 ゴニオメータヘッド
41 貫通孔
42 固定材
50 試料装着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7