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特許7484709重合性液晶化合物、重合性液晶組成物、高分子、光学フィルム、光学異方体、偏光板、表示装置、並びに、反射防止フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】重合性液晶化合物、重合性液晶組成物、高分子、光学フィルム、光学異方体、偏光板、表示装置、並びに、反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/82 20060101AFI20240509BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240509BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240509BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20240509BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C07D277/82 CSP
G02B1/11
G02B5/30
C08F20/36
C08F20/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020516352
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2019017082
(87)【国際公開番号】W WO2019208516
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018086162
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭
(72)【発明者】
【氏名】奥山 久美
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025793(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088749(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098988(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104317(WO,A1)
【文献】特開2016-128403(JP,A)
【文献】REGISTRY FILE (STN),2016年08月15日,RN 1973393-05-3, [online], retrieved on 1 Jul. 2019
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
G02B
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される重合性液晶化合物。
【化1】
〔式(I)中、
Arは、下記式(II-1)~(II-3)の何れかで表され、D以外の置換基を1つ以上有していてもよい。
【化2】
(式(II-1)~(II-3)中、Dは、-C(Q)=N-N(Ay)Ax、または、-C(Q)=N-N=C(Ay)Axを表す。
Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、
Axは、下記構造式で表されるいずれかの基であり、
【化3】
〔各式中、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。〕
Ayは、水素原子、または、炭素数1~20のアルキル基を表し、
ただし、*は、ZまたはZと結合する位置を表す。)
およびZは、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、または、-O-C(=O)-を表す。
およびAは、それぞれ独立して、ビニレン基を表す
およびBは、それぞれ独立して、炭素数2~20の芳香族基を表す。
~Yは、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、または、-O-C(=O)-を表す。
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR13-C(=O)-、-C(=O)-NR13-、-O-C(=O)-O-、-NR13-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR13-、または、-NR13-C(=O)-NR14-を表す。ここで、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
およびGは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基を表す。
およびPは、それぞれ独立して、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基(R31は、水素原子、メチル基、または塩素原子を表す。)、ビニル基、ビニルエーテル基、p-スチルベン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1~4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基またはチオイソシアネート基を表す。
pおよびqは、それぞれ独立して、1~2の整数を表す。〕
【請求項2】
請求項1に記載の重合性液晶化合物を含む、重合性液晶組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の重合性液晶化合物を重合して得られる、高分子。
【請求項4】
請求項3に記載の高分子を構成材料とする、光学フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の高分子を構成材料とする層を有する、光学異方体。
【請求項6】
請求項5に記載の光学異方体および偏光フィルムを含む、偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の偏光板を備える、表示装置。
【請求項8】
請求項6に記載の偏光板を含む、反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有する光学フィルムおよび光学異方体を形成可能であり、且つ、単独で液晶性を示す重合性液晶化合物に関するものである。
また、本発明は、上記重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物に関するものである。
また、本発明は、上記重合性液晶化合物を重合して得られる高分子に関するものである。
さらに、本発明は、上記重合性液晶化合物を使用して調製された光学フィルムおよび光学異方体、並びに、当該光学異方体を用いた偏光板、表示装置、および反射防止フィルムに関するものである。
なお、本明細書において、「液晶性を示す」とは、「液晶相を有する」ことを意味する。液晶相の具体例としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置等の各種装置において用いられている位相差板には、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板や直線偏光の偏光振動面を90度変換する1/2波長板等がある。これらの位相差板は、ある特定の単色光に対しては正確に光線波長の1/4λあるいは1/2λの位相差を与えることが可能なものである。
しかしながら、従来の位相差板には、位相差板を通過して出力される偏光が有色の偏光に変換されてしまうという問題があった。これは、位相差板を構成する材料が位相差について波長分散性を有し、可視光域の光線が混在する合成波である白色光に対しては各波長の偏光状態に分布が生じることから、入力光を全ての波長領域において正確な1/4λあるいは1/2λの位相差の偏光に調整することが不可能であることに起因する。
このような問題を解決するため、広い波長域の光に対して均一な位相差を与え得る広帯域位相差板、いわゆる逆波長分散性を有する位相差板が種々検討されている。
【0003】
一方、モバイルパソコン、携帯電話等携帯型の情報端末の高機能化および普及に伴い、フラットパネル表示装置の厚みを極力薄く抑えることが求められてきている。その結果、構成部材である位相差板の薄層化も求められている。
薄層化の方法としては、低分子重合性化合物を含有する重合性組成物をフィルム基材に塗布して光学フィルムを形成することにより位相差板を作製する方法が、近年では最も有効な方法とされている。そのため、優れた逆波長分散性を有する光学フィルムを形成可能な重合性化合物またはそれを用いた重合性組成物の開発が多く行われている。
【0004】
具体的には、広い波長域において一様の偏光変換が可能な偏光板、位相差板等の光学フィルムの製造に使用される重合性化合物が提供されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/025793号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、従来の重合性化合物は、単独では、液晶性を示すものではなかった。液晶性を得るために他の化合物を加える必要があるが、最終的に得られる光学フィルムは、加えた材料の光学特性をも加味されたものとなってしまう問題があった。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有する光学フィルムおよび光学異方体を形成可能であり、且つ、単独で液晶性を示す重合性液晶化合物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記重合性液晶化合物を重合して得られる高分子を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記重合性液晶化合物を使用して調製された光学フィルムおよび光学異方体、並びに、当該光学異方体を用いた偏光板、表示装置および反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記式(I)で示される所定の重合性液晶化合物を使用すれば、広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有する光学フィルムおよび光学異方体を形成可能であり、且つ、重合性液晶化合物が単独で液晶性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記に示す重合性液晶化合物、重合性液晶組成物、高分子、光学フィルム、光学異方体、偏光板、表示装置、並びに、反射防止フィルムが提供される。
【0009】
〔1〕 下記式(I)で示される重合性液晶化合物。
【化1】
〔式(I)中、
Arは、下記式(II-1)~(II-3)の何れかで表され、D以外の置換基を1つ以上有していてもよい。
【化2】
(式(II-1)~(II-3)中、Dは、-C(Q)=N-N(Ay)Ax、-C(Q)=N-N=C(Ay)Ax、または、-C(Q)=N-N=Azを表す。
Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、
Axは、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する有機基を表し、
Ayは、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表し、
Azは、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する有機基を表す。ここで、Azは、C(Ay)Axである場合を除くものとする。
ただし、*は、ZまたはZと結合する位置を表す。)
およびZは、それぞれ独立して、化学的な単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR11-C(=O)-、-C(=O)-NR11-、*-CH-O-、*-CH-CH-O-、*-CH-C(=O)-O-、*-CH-O-C(=O)-、*-CH-CH-C(=O)-O-、*-CH-CH-O-C(=O)-、*-CH=CH-C(=O)-O-、*-CH=CH-O-C(=O)-、*-CH=N-、*-C(CH)=N-、-N=N-を表す。ここで、*はArと結合する位置を表し、R11は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
およびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基を表す。前記鎖状脂肪族基には、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR12-C(=O)-、-C(=O)-NR12-、-NR12-、または、-C(=O)-が介在していてもよい。ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R12は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。ただし、Aの、Zに結合する炭素原子およびYもしくはYに結合する炭素原子、並びに、Aの、Zに結合する炭素原子およびYもしくはYに結合する炭素原子が、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR12-C(=O)-、-C(=O)-NR12-、-NR12-、または、-C(=O)-に置換されることはない。
およびBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR13-C(=O)-、-C(=O)-NR13-、-O-C(=O)-O-、-NR13-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR13-、または、-NR13-C(=O)-NR14-を表す。ここで、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
およびGは、それぞれ独立して、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、および、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-または-C(=O)-に置換された基のいずれかの有機基である。なお、GおよびGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、GおよびGの両末端のメチレン基(-CH-)が、-O-または-C(=O)-に置換されることはない。
およびPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。
pおよびqは、それぞれ独立して、0~2の整数を表す。〕
【0010】
〔2〕 前記〔1〕に記載の重合性液晶化合物を含む、重合性組成物。
【0011】
〔3〕 前記〔1〕に記載の重合性液晶化合物を重合して得られる、高分子。
【0012】
〔4〕 前記〔3〕に記載の高分子を構成材料とする、光学フィルム。
【0013】
〔5〕 前記〔3〕に記載の高分子を構成材料とする層を有する、光学異方体。
【0014】
〔6〕 前記〔5〕に記載の光学異方体および偏光フィルムを含む、偏光板。
【0015】
〔7〕 前記〔6〕に記載の偏光板を備える、表示装置。
【0016】
〔8〕 前記〔6〕に記載の偏光板を含む、反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有する光学フィルムおよび光学異方体を形成可能であり、且つ、単独で液晶性を示す重合性液晶化合物が提供される。
また、本発明によれば、上記重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記重合性液晶化合物を重合して得られる高分子が提供される。
さらに、本発明によれば、上記重合性液晶化合物を使用して調製された光学フィルムおよび光学異方体、並びに、当該光学異方体を用いた偏光板、表示装置および反射防止フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、または、置換基を有する」の意味である。また、一般式中に含まれるアルキル基や芳香族炭化水素環基等の有機基が置換基を有する場合、当該置換基を有する有機基の炭素数には、置換基の炭素数を含まないものとする。例えば、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基が置換基を有する場合、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の炭素数には、このような置換基の炭素数を含まないものとする。一方、「Ar中の環構造に含まれるπ電子の数」および「Fy中の環構造に含まれるπ電子の数」には、置換基に含まれている環構造のπ電子も含まれるものとする。さらに、本発明において、「アルキル基」とは、鎖状(直鎖状または分岐状)の飽和炭化水素基を意味し、「アルキル基」には、環状の飽和炭化水素基である、「シクロアルキル基」は含まれないものとする。
【0019】
ここで、本発明の重合性液晶化合物、重合性液晶組成物は、特に限定されることなく、例えば本発明の高分子を調製する際に用いることができる。
更に、本発明の高分子は、特に限定されることなく、例えば本発明の光学フィルムの構成材料および本発明の光学異方体が有する層の構成材料として用いることができる。また、本発明の光学異方体は、特に限定されることなく、例えば本発明の偏光板の作製に用いることができる。更に、本発明の偏光板は、特に限定されることなく、例えば本発明の表示装置および反射防止フィルムの作製に用いることができる。
また、本発明の重合性液晶化合物の中間体(化合物)は、特に限定されることなく、例えば本発明の重合性液晶化合物を調製する際に用いることができる。
【0020】
(1)重合性液晶化合物
本発明の重合性液晶化合物は、下記式(I)で示される化合物(以下、「重合性液晶化合物(I)」ということがある。)であり、後述する高分子、光学フィルムおよび光学異方体を調製する際に有利に用いることができる。
【化3】
【0021】
<Ar>
ここで、式(I)中、Arは下記式(II-1)~(II-3)の何れかで表され、D以外の置換基を1つ以上有していてもよい。Ar中の環構造に含まれるπ電子の総数は、10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、60以下であることが好ましく、48以下であることが好ましく、36以下であることが特に好ましい。ここで、「Ar中の環構造に含まれるπ電子の総数」とは、Ar中に含まれている環構造が1つである場合は、その1つの環構造に含まれるπ電子の数を意味し、Ar中に環構造が複数含まれている場合は、その複数の環構造のπ電子の総数を意味する。
【化4】
(上記式(II-1)~(II-3)中、*は、ZあるいはZと結合することを表し、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。)
【0022】
<<D>>
Dは、-C(Q)=N-N(Ay)Ax、-C(Q)=N-N=C(Ay)Ax、または、-C(Q)=N-N=Azを表す。
【0023】
D以外の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~6のアルキル基、1個以上の水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素数1~6のチオアルキル基、炭素数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基、などが挙げられる。
【0024】
-Q-
Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、などが挙げられる。
【0025】
-Ay-
Ayは、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。
Ayの置換基を有していてもよい1~30の有機基の具体例としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く)、置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数2~30の芳香族複素環基、-Gy-Yy-Fy、-SO、-C(=O)-R、または、-CS-NH-R、などが挙げられる。
これらの中でも、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く)、置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数2~30の芳香族複素環基、または、-Gy-Yy-Fyが好ましく、
置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く)、または、-Gy-Yy-Fyが特に好ましい。
【0026】
--前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」--
前記「置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基」における「炭素数1~20のアルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基、などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が好ましい。
「置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基」の炭素数は、1~12であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。
【0027】
前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等の、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基(チエニル基)、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、CHCF等の1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;水酸基;-SO;-SR;-SRで置換された炭素数1~12のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、炭素数2~18の芳香族複素環基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキルオキシ基、炭素数2~12の環状エーテル基、炭素数6~14のアリールオキシ基が好ましく、フッ素原子、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基がより好ましい。
なおここで、Rは、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数1~6のアルキル基若しくは炭素数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基を表す。
前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
--前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」--
前記「置換基を有してもよい炭素数2~20のアルケニル基」における「炭素数2~20のアルケニル基」の具体例としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が好ましい。
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」の炭素数は、2~12であることが好ましい。
【0029】
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」における置換基の具体例は、前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の具体例と同じである。
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
--前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキニル基」--
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキニル基」における「炭素数2~20のアルキニル基」の具体例としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基、などが挙げられる。これらの中でも、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基が好ましい。
【0031】
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキニル基」における置換基の具体例は、前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の具体例と同じである。
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキニル基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
--前記「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」--
前記「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」における「炭素数3~12のシクロアルキル基」の具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、などが挙げられる。これらの中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0033】
前記「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」における置換基の具体例は、前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の具体例と同じである。
前記「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
--前記「置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」--
前記「置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」における「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」の具体例としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0035】
前記「置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の1個以上の水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基が好ましい。
なおここで、RおよびRは、それぞれ、前記同じ意味を表す。
前記「置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
--前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の芳香族複素環基」--
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の芳香族複素環基」における「炭素数2~30の芳香族複素環基」の具体例としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基、などが挙げられる。これらの中でも、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基等の「単環の芳香族複素環基」;ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等の「縮合環の芳香族複素環基」;などが好ましい。
【0037】
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の芳香族複素環基」における置換基の具体例は、前記「置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」における置換基の具体例と同じである。
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の芳香族複素環基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
--R--
は、前述したように、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数1~6のアルキル基若しくは炭素数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基を表す。
「炭素数1~6のアルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
「炭素数1~6のアルコキシ基」の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブ卜キシ基、t-ブトキシ基、nーペンチルオキシ基、nーへキシルオキシ基、などが挙げられる。
「炭素数6~18の芳香族炭化水素環基」の具体例としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
の具体例としては、フェニル基、トリル基が好ましい。
【0039】
--R--
は、前述したように、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基を表す。
【0040】
---Rとしての「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」---
としての「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における「炭素数1~20のアルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基、などが挙げられる。
としての「置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基」の炭素数は、1~12であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。
【0041】
としての「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等の、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基が好ましい。
としての「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
---Rとしての「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」---
としての「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」における「炭素数2~20のアルキニル基」の具体例は、前記Ayにおける「炭素数2~20のアルキニル基」の具体例と同じであり、その好適例も前記Ayにおける「炭素数2~20のアルキニル基」の好適例と同じである。
【0043】
としての「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」における置換基の具体例は、前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基」における置換基の具体例と同じである。
としての「置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
---Rとしての「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」---
としての「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」における「炭素数3~12のシクロアルキル基」の具体例は、前記Ayにおける「炭素数3~12のシクロアルキル基」の具体例と同じであり、その好適例もAyにおける「炭素数3~12のシクロアルキル基」の好適例と同じである。
【0045】
としての「置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;が好ましい。
【0046】
---Rとしての「置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基」---
としての「置換基を有してもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基」における「炭素数6~18の芳香族炭化水素環基」の具体例としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0047】
としての「置換基を有してもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のアルキル基;-OCF;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;などが挙げられる。
これらの中でも、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のアルキル基;および-OCF;からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基が好ましい。
としての「置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
--Gy--
Gyは、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の脂肪族炭化水素基、および、(ii)置換基を有していてもよい炭素数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-NR21-、または、-C(=O)-に置換された基のいずれかの有機基である。ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R21は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
【0049】
Gyとしての「(i)置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の脂肪族炭化水素基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等の、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、CHCF等の1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のアルキル基;水酸基などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、フッ素原子、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基がより好ましい。
Gyとしての「(i)置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の脂肪族炭化水素基」における置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。複数の置換基を有する場合、それらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
Gyとしての「(ii)置換基を有していてもよい炭素数3~30の2価の脂肪族炭化水素基」における置換基の具体例、好適例、および数としては、それぞれ、Gyとしての「(i)置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の脂肪族炭化水素基」における置換基の具体例、好適例、および数と同様である。
【0051】
--Yy--
Yyは、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-NR22-、-NR22-C(=O)-O-、-N=N-、または、-C≡C-を表す。ここで、R22は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。これらの中でも、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、が好ましい。
【0052】
--Fy--
Fyは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。
有機基の炭素数としては、2以上30以下であることが好ましく、7以上30以下であることがより好ましく、8以上30以下であることがさらにより好ましく、10以上30以下であることが特に好ましい。
【0053】
Fyの「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基」の「炭素数」は、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基」自体の炭素数を意味し、置換基の炭素原子を含まない。
【0054】
Fyは、(i)「少なくとも一つの水素原子が芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基で置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基」、または、(ii)「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」であることが好ましい。
Fyが、複数の芳香族炭化水素環および/または複数の芳香族複素環を有する場合は、それぞれが同じであっても異なっていてもよい。
【0055】
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における「芳香族炭化水素環」の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。
【0056】
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における「芳香族複素環」の具体例としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジン環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環、キサンテン環等の炭素数2~30の芳香複素環;などが挙げられる。
【0057】
前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の1個以上の水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;などが挙げられる。Rは、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。
なお、Fyは、上述した置換基から選ばれる複数の置換基を有していてもよい。Fyが複数の置換基を有する場合、置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0058】
Fyとしての「(i)少なくとも一つの水素原子が芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基で置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基」における「炭素数1~18のアルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、などが挙げられる。
【0059】
Fyとしての「(i)少なくとも一つの水素原子が芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基で置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基」における「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、「炭素数1~18のアルキル基」の炭素原子に直接結合していてもよいし、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR23-C(=O)-、-C(=O)-NR23等の連結基を介して炭素数1~18のアルキル基の炭素原子に結合していてもよい。ここで、R23は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
即ち、芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基としては、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基のような、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する基」、「置換されていてもよい芳香族炭化水素環基」、「置換されていてもよい芳香族複素環基」、「連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基」、「連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基」も含まれる。
【0060】
前記「置換されていてもよい芳香族炭化水素環基」における「芳香族炭化水素環基」の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオレニル基等の炭素数6~30の芳香族炭化水素環基;などが挙げられる。
【0061】
前記「置換されていてもよい芳香族炭化水素環基」における置換基の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
【0062】
前記「置換されていてもよい芳香族複素環基」における「芳香族複素環基」の具体例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ペンゾピラノニル基等の炭素数2~30の芳香族複素環基;などが挙げられる。
【0063】
前記「置換されていてもよい芳香族複素環基」における「置換基」の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
【0064】
前記「連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基」および/または前記「連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基」の具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、などが挙げられる。
【0065】
前記「連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基」および前記「連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基」が有し得る「置換基」の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
【0066】
Fyとしての「(i)少なくとも一つの水素原子が芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基で置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基」の好ましい具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される構造が挙げられる。
但し、本発明は、以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式(3-1)~(3-11)中、「*」はYyと結合する位置を表し、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。なお、下記式(3-1)~(3-11)で表される基は置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
【化5】
【0067】
Fyとしての「(i)芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基で置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基」における「炭素数1~18のアルキル基」は、1以上の置換基を有していてもよい。「炭素数1~18のアルキル基」が複数の置換基を有する場合は、この「複数の置換基」は互いに同一でも相異なっていてもよい。その置換基の具体例としては、前記「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
【0068】
Fyとしての「(ii)芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」としては、例えば、(ii-1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素数6~30の炭化水素環基、(ii-2)炭素数6~18の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の複素環基、などが好適に挙げられる。
【0069】
前記「(ii-1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素数6~30の炭化水素環基」における「炭化水素環基」の具体例としては、例えば、フェニル基(炭素数6)、ナフチル基(炭素数10)、アントラセニル基(炭素数14)、フェナントレニル基(炭素数14)、ピレニル基(炭素数16)、フルオレニル基(炭素数13)等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;インダニル基(炭素数9);1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素数10);1,4-ジヒドロナフチル基(炭素数10);などが挙げられる。
【0070】
前記「(ii-1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素数6~30の炭化水素環基」の具体例としては、例えば、下記式(1-1)~(1-21)で表される構造の基が挙げられる。
下記式(1-1)~(1-21)で表される構造の基は置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
なお、下記式(1-1)~(1-21)中、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびるYyとの結合手を表す。
【化6】
【化7】
【0071】
前記「(ii-2)炭素数6~18の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の複素環基」における「複素環基」としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ペンゾピラノニル基等の炭素数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;テトラヒドロフラニル基;などが挙げられる。
【0072】
前記「(ii-2)炭素数6~18の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の複素環基」の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される構造の基が挙げられる。
下記式(2-1)~(2-51)で表される構造の基は置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
なお、下記式(2-1)~(2-51)中、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびるYyとの結合手を表す。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
〔各式中、Xは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表し、
YおよびZは、それぞれ独立して、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表し、
Eは、-NR-、酸素原子または硫黄原子を表す。
ここで、Rは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO-は、それぞれ隣接しないものとする。)〕
【0073】
前記「(ii)芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」は、1以上の置換基を有していてもよい。複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。その置換基の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。
【0074】
Arが(II-1)である場合、Fyは、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される構造の基であることが好ましく、下記式(ii-1)~(ii-20)のいずれかで表される構造の基であることが特に好ましい。
Arが(II-2)または(II-3)で表される構造の基である場合、Fyは、下記(i-1)~(i-13)のいずれかで表される構造の基であることが好ましく、下記式(ii-1)~(ii-26)のいずれかで表される構造の基であることが特に好ましい。なお、下記式(i-1)~(i-13)及び下記式(ii-1)~(ii-26)のいずれかで表される構造の基は置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、前記「「置換基を有していてもよい炭素数2~30の環状基」における置換基の具体例」と同じである。また、式(i-4)、(ii-6)および(ii-7)中、Yは、前記と同じ意味を表す。また、下記式(i-1)~(i-13)及び下記式(ii-1)~(ii-26)中、「*」はYyと結合する位置を表し、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0075】
Arが(II-1)である場合、Fy中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。Arが(II-2)または(II-3)で表される構造の基である場合、Fy中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0076】
-Ax-
Axは、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する有機基を表す。
【0077】
Axは、下記(1)~(5)の何れかであることが好ましい。
(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基
(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基
(3)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数1~12のアルキル基
(4)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルケニル基
(5)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルキニル基
【0078】
-Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」-
Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」における「炭素数6~40の炭化水素環基」の具体例としては、例えば、下記構造式で表される基、などが挙げられる。下記構造式で表される基は、置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、後述する「Axが有する置換基の具体例」と同じである。
【化17】
【化18】
【0079】
Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の1個以上の水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。ここで、RおよびRは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。
これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、および炭素数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの置換基が好ましい。
【0080】
Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」における「炭素数6~30の芳香族炭化水素環」の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環などが挙げられる。
【0081】
-Axとしての「(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基」-
Axとしての「(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基」の具体例としては、例えば、下記構造式で表される基、などが挙げられる。下記構造式で表される基は、置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、後述する「Axが有する置換基の具体例」と同じである。
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0082】
〔各式中、Rは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基を表し、また、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。〕
【0083】
Axとしての「(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基」の置換基の具体例としては、「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の具体例と同じであり、その好適例も「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の好適例と同じである。
【0084】
Axとしての「(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基」における「炭素数6~30の芳香族炭化水素環」の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環などが挙げられる。
【0085】
Axとしての「(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基」における「炭素数2~30の芳香族複素環」の具体例としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環などが挙げられる。
【0086】
-Axとしての「(3)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数1~12のアルキル基」-
Axとしての「(3)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数1~12のアルキル基」における「炭素数1~12のアルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、などが挙げられる。
【0087】
Axとしての「(3)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数1~12のアルキル基」の置換基の具体例としては、Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の具体例と同じであり、その好適例もAxとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の好適例と同じである。
【0088】
Axとしての「(3)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数1~12のアルキル基」における「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」の具体例としては、前記Ayでの「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」の具体例と同じものが挙げられる。
【0089】
Axとしての「(3)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数1~12のアルキル基」における「炭素数2~30の芳香族複素環基」の具体例としては、前記Ayでの「炭素数2~30の芳香族複素環基」の具体例と同じものが挙げられる。
【0090】
-Axとしての「(4)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルケニル基」-
Axとしての「(4)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルケニル基」における「炭素数2~12のアルケニル基」の具体例としては、例えば、ビニル基、アリル基、などが挙げられる。
【0091】
Axとしての「(4)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルケニル基」の置換基の具体例としては、Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の具体例と同じであり、その好適例もAxとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の好適例と同じである。
【0092】
Axとしての「(4)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルケニル基」における「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」の具体例としては、前記Ayでの「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」の具体例と同じものが挙げられる。
【0093】
Axとしての「(4)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルケニル基」における「炭素数2~30の芳香族複素環基」の具体例としては、前記Ayでの「炭素数2~30の芳香族複素環基」の具体例と同じものが挙げられる。
【0094】
-Axとしての「(5)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルキニル基」-
Axとしての「(5)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルキニル基」の具体例としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、などが挙げられる。
【0095】
Axとしての「(5)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルキニル基」の置換基の具体例としては、Axとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基と同じであり、その好適例もAxとしての「(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基」の置換基の好適例と同じである。
【0096】
Axとしての「(5)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルキニル基」における「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、前記Ayでの「炭素数6~30の芳香族炭化水素環基」の具体例と同じものが挙げられる。
【0097】
Axとしての「(5)炭素数6~30の芳香族炭化水素環基および炭素数2~30の芳香族複素環基の少なくとも1つで置換された、炭素数2~12のアルキニル基」における「炭素数2~30の芳香族複素環基」としては、前記Ayでの「炭素数2~30の芳香族複素環基」の具体例と同じものが挙げられる。
【0098】
Axは、下記構造式で表される基のいずれかであることが好ましい。下記構造式で表される基は、置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、後述する「Axが有する置換基の具体例」と同じである。
【化27】
〔各式中、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。〕
【0099】
また、Axは、下記構造式で表される基のいずれかであることがより好ましい。
【化28】
【0100】
さらに、Axは、下記構造式で表される基のいずれかであることが特に好ましい。
【化29】
【0101】
Axは、置換基を有していてもよい。「Axが有する置換基の具体例」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の1個以上の水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;などが挙げられる。ここで、R及びRは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。
これらの中でも、ハロゲン原子;シアノ基;炭素数1~6のアルキル基;および炭素数1~6のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基が好ましい。
【0102】
-Az-
Azは、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する有機基を表す。ここで、Azは、C(Ay)Axである場合を除くものとする。
【0103】
Azは、下記(1)および(2)のいずれかであることが好ましい。
(1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素数6~40の炭化水素環基;
(2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~40の複素環基。
【0104】
Azは、下記構造式で表される基のいずれかであることがより好ましい。
【化30】
〔各式中、Rは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基を表す。〕
【0105】
Arは、好ましくは、下記式(III-1)~(III-6)の何れかで表され、より好ましくは、下記式(III-1)、下記式(III-2)、下記式(III-4)、または下記式(III-5)で表され、特に好ましくは、下記式(III-1)または下記式(III-4)で表される。ここで、置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基を有していてもよい。
【化31】
(上記式(III-1)~(III-6)中、Ax、Ay、AzおよびQは、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じであり、*は、ZあるいはZと結合することを表す。)
【0106】
<Z,Z
およびZは、それぞれ独立して、化学的な単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR11-C(=O)-、-C(=O)-NR11-、*-CH-O-、*-CH-CH-O-、*-CH-C(=O)-O-、*-CH-O-C(=O)-、*-CH-CH-C(=O)-O-、*-CH-CH-O-C(=O)-、*-CH=CH-C(=O)-O-、*-CH=CH-O-C(=O)-、*-CH=N-、*-C(CH)=N-、-N=N-を表す。ここで、*はArと結合する位置を表し、R11は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
これらの中でも、ZおよびZは、それぞれ独立して、化学的な単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、*-CH-O-、*-CH-CH-O-、*-CH-C(=O)-O-、*-CH-O-C(=O)-、*-CH-CH-C(=O)-O-、または*-CH-CH-O-C(=O)-であることが好ましく、化学的な単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、*-CH-O-、*-CH-C(=O)-O-、または*-CH-O-C(=O)-であることがより好ましく、化学的な単結合、-O-、-C(=O)-O-、または-O-C(=O)-であることが最も好ましい。
【0107】
<A,A
およびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基を表す。前記鎖状脂肪族基には、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR12-C(=O)-、-C(=O)-NR12-、-NR12-、または、-C(=O)-が介在していてもよい。ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R12は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。ただし、Aの、Zに結合する炭素原子およびYもしくはYに結合する炭素原子、並びに、Aの、Zに結合する炭素原子およびYもしくはYに結合する炭素原子が、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR12-C(=O)-、-C(=O)-NR12-、-NR12-、または、-C(=O)-に置換されることはない。
【0108】
前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基」における「炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基」の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、卜リメチレン基、プロピレン基、テ卜ラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔-(CH10-〕等の、炭素数1~20のアルキレン基;ビニレン基、1ーメチルビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1ーペンテニレン基、2-ペンテニレン基等の、炭素数2~20のアルケニレン基;1,3-ペンタジエニル基、1,3-ヘキサジエニル基等の炭素数2~20の共役ジエンを有する基、等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2~20の二価の飽和鎖状脂肪族基、炭素数2~20の二価の不飽和鎖状脂肪族基が好ましく、炭素数3~20の二価の飽和鎖状脂肪族基、炭素数2~20の二価の不飽和鎖状脂肪族基が更に好ましく、炭素数2~20の二価の不飽和鎖状脂肪族基が特に好ましく、ビニレン基、プロぺニレン基、ブテニレン基が最も好ましい。
また、前記「炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基」には、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR12-C(=O)-、-C(=O)-NR12-、-NR12-、または、-C(=O)-が介在していてもよい(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R12は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、水素原子またはメチル基であることが好ましい。前記「炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基」に介在する基としては、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-が好ましい。
これらの基が介在する「炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基」の具体例としては、-CH-CH-O-CH-CH-、-CH-CH-S-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-CH-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-CH-、-CH-O-C(=O)-O-CH-CH-、-CH-CH-NR12-C(=O)-、-CH-CH-C(=O)-NR12-CH-、-CH-NR12-CH-CH-、-CH-C(=O)-CH-、などが挙げられる。
【0109】
前記「置換基を有していてもよい炭素数1~20の二価の鎖状脂肪族基」における置換基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブ卜キシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0110】
<B,B
およびBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、置換基を有していてもよい炭素数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素数2~20の芳香族基が好ましい。
【0111】
前記「置換基を有していてもよい環状脂肪族基」における「環状脂肪族基」の具体例としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、シクロヘプタン-1,4-ジイル、シクロオクタン-1,5-ジイル等の炭素数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル等の炭素数5~20のビシクロアルカンジイル基;などが挙げられる。これらの中でも、環状脂肪族基としては、炭素数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。前記「環状脂肪族基」は、トランス体であっても、シス体であっても、或いは、シス体とトランス体の混合物であってもよいが、トランス体がより好ましい。
【0112】
前記「置換基を有していてもよい芳香族基」における「芳香族基」の具体例としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル、チオフェン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピラジン-2,5-ジイル等の、炭素数2~20の芳香族複素環基;などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0113】
前記「置換基を有していてもよい環状脂肪族基」および前記「置換基を有していてもよい芳香族基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、などが挙げられる。
前記環状脂肪族基および前記芳香族基は、上述した置換基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。なお、置換基を複数有する場合は、各置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0114】
<Y~Y
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR13-C(=O)-、-C(=O)-NR13-、-O-C(=O)-O-、-NR13-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR13-、または、-NR13-C(=O)-NR14-を表す。ここで、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
これらの中でも、Y~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-O-、または-O-C(=O)-であることが好ましく、-O-、-C(=O)-O-、または-O-C(=O)-であることがより好ましい。
【0115】
<G,G
およびGは、それぞれ独立して、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、および、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-または-C(=O)-に置換された基のいずれかの有機基である。なお、GおよびGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、GおよびGの両末端のメチレン基(-CH-)が、-O-または-C(=O)-に置換されることはない。
【0116】
前記「炭素数1~20の脂肪族炭化水素基」および前記「炭素数3~20の脂肪族炭化水素基」の具体例としては、それぞれ、炭素数1~20のアルキレン基、および、炭素数3~20のアルキレン基が挙げられる。
これらの中でも、n-ブチレン基、n-へキシレン基、n-オクチレン基、n-デカメチレン基〔-(CH10-〕、が好ましい。
【0117】
<P,P
およびPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。
前記重合性基の具体例としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のCH=CR31-C(=O)-O-で表される基(R31は、水素原子、メチル基、または塩素原子を表す。)、ビニル基、ビニルエーテル基、p-スチルベン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1~4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基またはチオイソシアネート基などが挙げられる。これらの中でも、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH=CH-C(=O)-O-で表される基(アクリロイルオキシ基)、CH=C(CH)-C(=O)-O-で表される基(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0118】
<p,q>
pおよびqは、それぞれ独立して、0~2の整数を表す。
これらの中でも、pおよびqは、それぞれ独立して、1であることが好ましい。
pおよびqの両方が1である場合、前述した式(I)中のBおよびBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族基であることがより好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
【0119】
また、重合性化合物(I)は、特に限定されるものではないが、Arを中心とした対称構造を有する(即ち、ZとZ、AとA、YとY、BとB、nとm、YとY、GとG、PとPが、それぞれ同一である(Arを中心として対称である))ことが好ましい。
【0120】
上述した重合性液晶化合物(I)は、既知の合成反応を組み合わせて合成することができる。即ち、様々な文献(例えば、国際公開第2012/141245号、国際公開第2012/147904号、国際公開第2014/010325号、国際公開第2013/046781号、国際公開第2014/061709号、国際公開第2014/126113号、国際公開第2015/064698号、国際公開第2015-140302号、国際公開第2015/129654号、国際公開第2015/141784号、国際公開第2016/159193号、国際公開第2012/169424号、国際公開第2012/176679号、国際公開第2015/122385号等に記載の方法を参照して合成できる。
【0121】
(2)重合性液晶組成物
上記重合性液晶組成物は、少なくとも重合性液晶化合物(I)と、重合開始剤とを含有する。
なお、上記重合性液晶組成物は、後述するように、本発明の高分子、光学フィルム、光学異方体の製造原料として有用である。そして、本発明の重合性液晶組成物によれば、広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有する光学フィルム等を良好に製造することができる。
【0122】
ここで、重合開始剤は、重合性液晶組成物に含まれている重合性液晶化合物(I)の重合反応をより効率的に行う観点から配合される。
そして、用いる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0123】
ラジカル重合開始剤としては、加熱することにより、重合性液晶化合物の重合を開始し得る活性種が発生する化合物である熱ラジカル発生剤;や、可視光線、紫外線(i線など)、遠紫外線、電子線、X線等の露光光の露光により、重合性液晶化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤;のいずれも使用可能であるが、光ラジカル発生剤を使用するのが好適である。
【0124】
光ラジカル発生剤としては、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、露光によって活性ラジカルまたは活性酸、あるいは活性ラジカルと活性酸の両方を発生する成分である。光ラジカル発生剤は、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0125】
アセトフェノン系化合物の具体例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシル・フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)等を挙げることができる。
【0126】
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0127】
なお、本発明においては、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)としてビイミダゾール系化合物を用いる場合、水素供与体を併用することが、感度をさらに改良することができる点で好ましい。
ここで、「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、下記で定義するメルカプタン系化合物、アミン系化合物等が好ましい。
【0128】
メルカプタン系化合物の具体例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-2,5-ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。アミン系化合物としては、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジエチルアミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノベンゾニトリル等を挙げることができる。
【0129】
トリアジン系化合物の具体例としては、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル基を有するトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0130】
O-アシルオキシム系化合物の具体例としては、1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-ヘプタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-〔4-(ベンゾイル)フェニル〕-オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-[9-エチル-6-(3-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9H-カルバゾール-3-イル)-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等を挙げることができる。
【0131】
また、光ラジカル発生剤として、市販品をそのまま用いることもできる。具体例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、商品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、商品名:Irgacure907、および、商品名:IrgacureOXE02、並びに、ADEKA社製の、商品名:アデカアークルズN1919T等が挙げられる。
【0132】
前記アニオン重合開始剤としては、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩またはモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0133】
また、前記カチオン重合開始剤としては、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩または芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
【0134】
これらの重合開始剤は一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0135】
なお、上記重合性液晶組成物において、重合開始剤の配合割合は、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部である。
【0136】
また、上記重合性液晶組成物には、表面張力を調整するために、界面活性剤を配合するのが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いればよく、例えば、含フッ素基、親水性基、および親油性基含有オリゴマーであるノニオン系界面活性剤、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S242、S243、S386、S611、S651など)、DIC社製のメガファックシリーズ(F251、F554、F556、F562、RS-75、RS-76-Eなど)、ネオス社製のフタージェントシリーズ(FTX601AD、FTX602A、FTX601ADH2、FTX650Aなど)等が挙げられる。また、これらの界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ここで、上記重合性液晶組成物において、界面活性剤の配合割合は、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、0.01~10質量部、好ましくは0.01~2質量部である。
【0137】
更に、上記重合性液晶組成物には、重合性液晶化合物、重合開始剤、界面活性剤の他、本発明の効果に影響が出ない範囲で、他の成分が更に含まれていてもよい。他の成分としては、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等が挙げられる。
また、他の成分としては、他の共重合可能な単量体も挙げられる。具体的には、特に限定されるものではなく、例えば、4-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸-4’-メトキシフェニル、4-(6-メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸ビフェニル、4-(2-アクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸-4’-シアノビフェニル、4-(2-メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸-4’-シアノビフェニル、4-(2-メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸-3’,4’-ジフルオロフェニル、4-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸ナフチル、4-アクリロイルオキシ-4’-デシルビフェニル、4-アクリロイルオキシ-4’-シアノビフェニル、4-(2-アクリロイルオキシエチルオキシ)-4’-シアノビフェニル、4-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)-4’-メトキシビフェニル、4-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)-4’-(4’’-フルオロベンジルオキシ)-ビフェニル、4-アクリロイルオキシ-4’-プロピルシクロヘキシルフェニル、4-メタクリロイル-4’-ブチルビシクロヘキシル、4-アクリロイル-4’-アミルトラン、4-アクリロイル-4’-(3,4-ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル、4-(2-アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4-アミルフェニル)、4-(2-アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4-(4’-プロピルシクロヘキシル)フェニル)、商品名「LC-242」(BASF社製)、トランス-1,4-ビス[4-[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]フェニル]シクロヘキサンジカルボキシレート、並びに、特開2007-002208号公報、特開2009-173893号公報、特開2009-274984号公報、特開2010-030979号公報、特開2010-031223号公報、特開2011-006360号公報および特開2010-24438号公報、国際公開第2012/141245号、国際公開第2012/147904号、国際公開第2012/169424号、国際公開第2012/76679号、国際公開第2013/180217号、国際公開第2014/010325号、国際公開第2014/061709号、国際公開第2014/065176号、国際公開第2014/126113号、国際公開第2015/025793号、国際公開第2015/064698号、国際公開第2015/122384号、国際公開第2015/122385号に開示されている化合物等の共重合可能な単量体が挙げられる。
これらの他の成分の配合割合は、重合性液晶化合物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、0.005~50質量部である。
【0138】
上記重合性液晶組成物は、通常、重合性液晶化合物、重合開始剤、および、所望により配合される他の成分等の所定量を、適当な有機溶媒に混合・溶解させることにより、調製することができる。
【0139】
用いる有機溶媒としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン等のエーテル類;等が挙げられる。
【0140】
(3)高分子
本発明の高分子は、上述した重合性液晶化合物(I)または上述した重合性液晶組成物を重合して得られるものである。
ここで、「重合」とは、通常の重合反応のほか、架橋反応を含む広い意味での化学反応を意味するものとする。
そして、本発明の高分子は、通常、重合性液晶化合物(I)に由来する単量体単位(例えば、繰り返し単位(I)’)を有している。
以下に、一例として、PおよびPとしてCH=CR31-C(=O)-O-で表される重合性基を有する重合性化合物(I)を用いた場合の繰り返し単位(I)’の構造を示す。
【化32】
〔式(I)’中のAr、Y~Y、A、A、B、B、G、G、p、およびqは、前記と同じ意味であり、その好適例も同じである。R31は、水素原子、メチル基、または、塩素原子であり、中でも、水素原子またはメチル基であることが好ましい。〕
【0141】
なお、本発明の高分子は、上述した重合性液晶化合物(I)、または、上述した重合性液晶組成物を用いて調製しているので、光学フィルム等の構成材料として良好に用いることができる。
【0142】
また、本発明の高分子は、特に限定されることなく、フィルム状、粉体状、粉体が集合した層状などの用途に応じた任意の形状にして使用することができる。
具体的には、高分子のフィルムは、後述する光学フィルムおよび光学異方体の構成材料として良好に用いることができ、高分子の粉は、塗料、偽造防止物品、セキュリティ物品等に利用することができ、高分子の粉よりなる層は、光学異方体の構成材料として良好に用いることができる。
【0143】
そして、本発明の高分子は、具体的には、(α)適当な有機溶媒の存在下、上述した重合性液晶化合物(I)、または、上述した重合性液晶組成物の重合反応を行った後、目的とする高分子を単離し、得られる高分子を適当な有機溶媒に溶解して溶液を調製し、この溶液を適当な基板上に塗工して得られた塗膜を乾燥後、所望により加熱することにより得る方法、(β)上述した重合性液晶化合物(I)、または、上述した重合性液晶組成物を有機溶媒に溶解し、この溶液を、公知の塗工法により基板上に塗布した後、脱溶媒し、次いで加熱または活性エネルギー線を照射することにより重合反応を行う方法等により好適に製造することができる。なお、上述した重合性液晶化合物(I)を単独で重合してもよい。
【0144】
前記(α)の方法において重合反応に用いる有機溶媒としては、不活性なものであれば、特に制限されない。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;等が挙げられる。
これらの中でも、取り扱い性に優れる観点から、沸点が60~250℃のものが好ましく、60~150℃のものがより好ましい。
【0145】
また、前記(α)の方法において、単離した高分子を溶解するための有機溶媒、および、前記(β)の方法で用いる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン(N-メチル-2-ピロリドン)等の非プロトン性極性溶剤;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易な点から、溶媒の沸点が60~200℃のものが好ましい。これらの溶剤は単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
前記(α)および(β)の方法において用いる基板としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質のものを使用することができる。例えば、有機材料としては、ポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、および、アペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン等が挙げられ、無機材料としては、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
また、用いる基板は、単層のものであっても、積層体であってもよい。
基板としては、有機材料からなる基板が好ましく、有機材料をフィルム状にした樹脂フィルムが更に好ましい。
なお、基板としては、後述する光学異方体の作製に用いられる基板等も挙げられる。
【0147】
また、(α)の方法において高分子の溶液を基板に塗布する方法、および、(β)の方法において重合反応用の溶液を基板に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、キャップコーティング法等を用いることができる。
【0148】
更に、前記(α)および(β)の方法における乾燥または脱溶媒の方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等を用いることができる。
乾燥温度は、溶媒を脱溶媒することができれば、特に制限はないが、下限温度に関しては、一定の温度を安定的に得られるという観点から、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。
乾燥温度の上限温度に関しては、基板に悪影響を与えない範囲という観点から、200℃以下であることが好ましく、195℃以下であることがより好ましい。
【0149】
また、上述した重合性液晶化合物(I)または上述した重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。
紫外線等の光を照射する温度は、液晶相を維持できる温度であれば、特に制限はないが、下限温度に関しては、光重合を安定的に進行させることができるという観点から、15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。
紫外線等の光を照射する温度の上限温度に関しては、基板に悪影響を与えない範囲という観点から、200℃以下であることが好ましく、195℃以下であることがより好ましい。
【0150】
ここで、光の照射時の温度は、100℃以下とすることが好ましい。光照射強度は、通常、1W/m~10kW/mの範囲、好ましくは5W/m~2kW/mの範囲である。紫外線の照射量は、好ましくは0.1mJ/cm以上、より好ましくは0.5mJ/cm以上であり、好ましくは5000mJ/cm以下、より好ましくは4000mJ/cm以下である。
【0151】
上述のようにして得られた高分子は、基板から転写して使用することも、基板から剥離して単体で使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学フィルム等の構成材料等として使用することもできる。
また、基板から剥離した高分子は、既知の方法で粉砕して粉体状にしてから使用することもできる。
【0152】
以上のようにして得られる本発明の高分子の数平均分子量は、好ましくは500~500,000、更に好ましくは5,000~300,000である。該数平均分子量がかかる範囲にあれば、高い硬度が得られ、取り扱い性にも優れるため望ましい。高分子の数平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0153】
そして、本発明の高分子によれば、広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有する光学フィルム等を得ることができる。
【0154】
(4)光学フィルム
本発明の光学フィルムは、本発明の高分子および/又は重合性液晶化合物を用いて形成され、光学的な機能を有する層を含む。光学的な機能とは、単なる透過、反射、屈折、複屈折などを意味する。そして、本発明の光学フィルムは、本発明の高分子を光学的な機能を有する層の主たる構成材料とする光学フィルムであるか、或いは、光学的な機能を有する層が本発明の重合性液晶化合物を含有する光学フィルムでありうる。好ましくは、本発明の高分子を構成材料とする光学フィルムは、光学的な機能を有する層の全構成成分を100質量%とした場合に本発明の高分子の占有割合が50質量%超である。また、好ましくは、本発明の重合性液晶化合物を含む光学フィルムは、光学的な機能を有する層の全構成成分を100質量%とした場合に、本発明の重合性液晶化合物を0.01質量%以上含有する。
【0155】
ここで、本発明の光学フィルムは、配向膜を有していてもよい配向基板上に形成されたままの形態(配向基板/(配向膜)/光学フィルム)、配向基板とは異なる透明基板フィルム等に光学フィルムを転写した形態(透明基板フィルム/光学フィルム)、または、光学フィルムに自己支持性がある場合には光学フィルム単層形態(光学フィルム)のいずれの形態であってもよい。
なお、配向膜および配向基板としては、後述する光学異方体と同じ基板および配向膜を用いることができる。
【0156】
そして、本発明の光学フィルムは、(A)本発明の重合性液晶化合物を含む溶液、または、重合性液晶組成物の溶液を配向基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、熱処理(液晶の配向)、並びに、光照射および/または加熱処理(重合)を行う方法や、(B)本発明の重合性液晶化合物、または重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子の溶液を配向基板上に塗布し、任意に得られた塗膜を乾燥する方法や、(C)本発明の重合性液晶化合物および樹脂を含む溶液を配向基板上に塗布し、得られた塗膜を乾燥する方法により製造することができる。
【0157】
本発明の光学フィルムは、光学異方体、液晶表示素子用配向膜、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等に用いることができる。
【0158】
なお、本発明の光学フィルムは、Mueller Matrix Polarimeter Axoscanで測定した波長400nm~800nmにおける位相差から求められる。下記α値およびβ値が所定の範囲内にあることが好ましい。具体的には、α値は、0.70~0.99であることが好ましく、0.75~0.90であることがより好ましい。また、β値は、1.00~1.25であることが好ましく、1.01~1.20であることがより好ましい。
α=(450nmにおける位相差)/(550nmにおける位相差)
β=(650nmにおける位相差)/(550nmにおける位相差)
【0159】
(5)光学異方体
本発明の光学異方体は、本発明の高分子を構成材料とする層を有する。
本発明の光学異方体は、例えば、基板上に配向膜を形成し、該配向膜上に、さらに、本発明の高分子からなる層(液晶層)を形成することによって、得ることができる。なお、本発明の光学異方体は、基板上に本発明の高分子からなる層(液晶層)を直接形成したものであってもよいし、本発明の高分子からなる層(液晶層)のみからなるものであってもよい。
なお、高分子からなる層は、フィルム状の高分子からなるものであってもよいし、粉体状の高分子の集合体であってもよい。
【0160】
ここで、配向膜は、重合性液晶化合物を面内で一方向に配向規制するために基板の表面に形成される。
配向膜は、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリマーを含有する溶液(配向膜用組成物)を基板上に膜状に塗布し、乾燥させ、そして一方向にラビング処理等することで、得ることができる。
配向膜の厚さは0.001~5μmであることが好ましく、0.001~1.0μmであることがさらに好ましい。
【0161】
ラビング処理の方法は、特に制限されないが、例えばナイロン等の合成繊維、木綿等の天然繊維からなる布やフェルトを巻き付けたロールで一定方向に配向膜を擦る方法が挙げられる。ラビング処理した時に発生する微粉末(異物)を除去して配向膜の表面を清浄な状態とするために、ラビング処理後に配向膜をイソプロピルアルコール等によって洗浄することが好ましい。
また、ラビング処理する方法以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、面内で一方向に配向規制する機能を持たせることができる。
【0162】
配向膜を形成する基板としては、ガラス基板、合成樹脂フィルムからなる基板等が挙げられる。前記合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、および、脂環式オレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0163】
脂環式オレフィンポリマーとしては、特開平05-310845号公報、米国特許第5179171号明細書に記載されている環状オレフィンランダム多元共重合体、特開平05-97978号公報、米国特許第5202388号明細書に記載されている水素添加重合体、特開平11-124429号公報(国際公開99/20676号)に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体およびその水素添加物等が挙げられる。
【0164】
本発明において、配向膜上に本発明の高分子からなる液晶層を形成する方法としては、前記本発明の高分子の項で記載したのと同じ方法(前記(α)および(β))が挙げられる。
得られる液晶層の厚みは、特に制限はないが、通常1~10μmである。
【0165】
なお、本発明の光学異方体の一種としては、特に限定されることなく、位相差板、視野角拡大板等が挙げられる。
【0166】
なお、本発明の光学異方体は、Mueller Matrix Polarimeter Axoscanで測定した波長400nm~800nmにおける位相差から求められる。下記α値およびβ値が所定の範囲内にあることが好ましい。具体的には、α値は、0.70~0.99であることが好ましく、0.75~0.90であることがより好ましい。また、β値は、1.00~1.25であることが好ましく、1.01~1.25であることがより好ましい。
α=(450nmにおける位相差)/(550nmにおける位相差)
β=(650nmにおける位相差)/(550nmにおける位相差)
【0167】
(6)偏光板等
本発明の偏光板は、本発明の光学異方体および偏光フィルムを含むものである。
本発明の偏光板の具体例としては、偏光フィルム上に、直接またはその他の層(ガラス板等)を介して、本発明の光学異方体が積層されてなるものが挙げられる。
【0168】
偏光フィルムの製造方法は特に限定されない。PVA系の偏光フィルムを製造する方法としては、PVA系フィルムにヨウ素イオンを吸着させた後に一軸に延伸する方法、PVA系フィルムを一軸に延伸した後にヨウ素イオンを吸着させる方法、PVA系フィルムへのヨウ素イオン吸着と一軸延伸とを同時に行う方法、PVA系フィルムを二色性染料で染色した後に一軸に延伸する方法、PVA系フィルムを一軸に延伸した後に二色性染料で染色する方法、PVA系フィルムへの二色性染料での染色と一軸延伸とを同時に行う方法が挙げられる。また、ポリエン系の偏光フィルムを製造する方法としては、PVA系フィルムを一軸に延伸した後に脱水触媒存在下で加熱・脱水する方法、ポリ塩化ビニル系フィルムを一軸に延伸した後に脱塩酸触媒存在下で加熱・脱水する方法などの公知の方法が挙げられる。
【0169】
本発明の偏光板においては、偏光フィルムと本発明の光学異方体とが、接着剤(粘着剤を含む)からなる接着層を介して接していてもよい。接着層の平均厚みは、通常0.01μm~30μm、好ましくは0.1μm~15μmである。前記接着層は、JIS K7113による引張破壊強度が40MPa以下となる層であることが好ましい。
【0170】
接着層を構成する接着剤としては、アクリル接着剤、ウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ポリオレフィ系接着剤、変性ポリオレフィン接着剤、ポリビニルアルキルエーテル接着剤、ゴム接着剤、塩化ビニル・酢酸ビニル接着剤、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS共重合体)接着剤、その水素添加物(SEBS共重合体)接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびエチレン-スチレン共重合体などのエチレン接着剤、並びに、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン・アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル接着剤などが挙げられる。
【0171】
本発明の偏光板は、本発明の光学異方体を用いていることから、逆波長分散性を有しながら、光学特性の面内均一性に優れるものである。
【0172】
また、本発明の偏光板を用いることにより、パネルを備える表示装置、反射防止フィルムを好適に製造することができる。前記パネルとしては、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネルが挙げられる。前記表示装置としては、偏光板と液晶パネルとを備えるフラットパネル表示装置、液晶パネルと有機エレクトロルミネッセンスパネルとを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置が挙げられる。
【0173】
(7)化合物(中間体)
本発明の重合性液晶化合物および該重合性液晶化合物の調製に使用し得る中間体は、国際公開第2012/141245号、国際公開第2012/147904号、国際公開第2014/010325号、国際公開第2013/046781号、国際公開第2014/126113号、国際公開第2015/025793号、特開2015-140302号公報、国際公開第2015/129654号、国際公開第2015/141784号、国際公開第2016/159193号を参考に合成することができる。
【0174】
本発明の重合性液晶化合物の調製に使用し得る中間体の構造は、例えば、下記一般式(X-1)で表される。
【化33】
〔一般式(X-1)中、P、G、Y、B、Y、A、pは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も、それぞれ、前記P、G、Y、B、Y、A、pの好適例と同じであり、FGは水酸基またはカルボキシル基を表す。〕
【0175】
また、本願明細書の実施例にて用いられている中間体C,Dの構造を示す下記一般式(X)は、以下の方法(i),(ii),(iii)で合成が可能である。
【化34】
[一般式(X)中、Pは前記P、Pと同じ意味を表し、その好適例も前記P、Pの好適例と同じであり、Gは前記G、Gと同じ意味を表し、その好適例も前記G、Gの好適例と同じであり、Bは前記B、Bと同じ意味を表し、その好適例も前記B、Bの好適例と同じであり、Yは前記Y、Yと同じ意味を表し、その好適例も前記Y、Yの好適例と同じであり、Aは前記A、Aと同じ意味を表し、その好適例も前記A、Aの好適例と同じである。]
【0176】
(i)酸ハライド、混合酸無水物によるエステル化反応
【化35】
[式中、P、G、B、Y、Aは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じであり、Lは、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、またはトルエンスルホニルオキシ基を表す。]
【0177】
一般式(X1)で表される化合物(以下、「化合物(X1)」とする)と、一般式(X2)で表される化合物(以下、「化合物(X2)」とする)とを塩基存在下にて反応させて、一般式(X)で表される化合物(以下、「化合物(X)」とする)を得ることができる。
【0178】
化合物(X1)の使用量は、化合物(X2)の使用量を基準として、通常、0.1モル当量以上であり、0.5モル当量以上であることが好ましく、0.8モル当量以上であることがより好ましく、また、通常、1.5モル当量以下であり、1.3モル当量以下であることがより好ましい。
【0179】
使用する塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の3級アミン類;などが挙げられる。
使用する塩基の使用量は、化合物(X2)の使用量を基準として、通常0.1モル当量以上であり、0.5モル当量以上であることが好ましく、0.8モル当量以上であることがより好ましく、また、通常、1.5モル当量以下であり、1.3モル当量以下であることが好ましい。
【0180】
(ii)縮合剤を用いるエステル化反応
【化36】
[式中、P、G、B、Y、Aは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。]
【0181】
水酸基を有する化合物(X1)と、ジカルボン酸とを脱水縮合剤を用いて反応させて、化合物(X)を得ることができる。
【0182】
化合物(X1)の使用量は、ジカルボン酸の使用量を基準として、通常、0.1モル当量以上であり、0.5モル当量以上であることが好ましく、0.8モル当量以上であることがより好ましく、また、通常、1.5モル当量以下であり、1.3モル当量以下であることが好ましい。
【0183】
使用する縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の脱水縮合剤;などが挙げられる。
使用する縮合剤の使用量は、ジカルボン酸の使用量を基準として、通常、0.1モル当量以上であり、0.5モル当量以上であることが好ましく、0.8モル当量以上であることがより好ましく、また、通常、1.5モル当量以下であり、1.3モル当量以下であることが好ましい。またここで、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の活性化剤を併用することもできる。
【0184】
(iii)酸無水物を用いるエステル化反応
【化37】
[式中、P、G、B、Y、Aは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。]
【0185】
水酸基を有する化合物(X1)と、NaH等の強塩基とを反応させた後、酸無水物を反応させて、化合物(X)を得ることができる。
【0186】
NaH等の強塩基の使用量は、化合物(X1)の使用量を基準として、通常、0.5モル当量以上であり、0.8モル当量以上であることが好ましく、また、通常、3モル当量以下であり、1.5モル当量以下であることが好ましく、1.3モル当量以下であることがより好ましい。またここで、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の活性化剤を併用することもできる。
【0187】
本願明細書の実施例にて用いられている中間体B,Eの構造を示す下記一般式(Y)は、例えば、以下の方法により合成が可能である。
HO-Ar-OH・・・一般式(Y)
式中、Arは、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。
【0188】
一般式(Y1)~(Y3)で表される化合物(以下、それぞれ、「化合物(Y1)~(Y3)」とする)のいずれかと、一般式(Y4)~(Y6)で表される化合物(以下、それぞれ、「化合物(Y4)~(Y6)」とする)のいずれかとを反応させて、一般式(Y)で表される化合物(以下、「一般式(Y)」とする)を得ることができる。
【化38】
上記式(Y1)~(Y3)中、環内部からのびる「-」は、環の任意の位置からのびる結合手を表す。
【0189】
N-N(Ay)Ax・・・一般式(Y4)
N-N=C(Ay)Ax・・・一般式(Y5)
N-N=Az・・・一般式(Y6)
上記式(Y4)~(Y6)中、Ax、Ay、Azは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。
【0190】
上述したように得られた化合物(X)と化合物(Y)を反応させて、下記式(I)’’で示される化合物が得られる。
【化39】
式(I)’’中、Ar、A、A、B、B、Y、Y、Y、Y、G、G、P、P、p、qは、それぞれ、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。
【実施例
【0191】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0192】
(合成例1)重合性液晶化合物1の合成
【化40】
【0193】
ステップ1:中間体Aの合成
【化41】
【0194】
中間体Aを、特開2016-190818号公報を参考にして合成した。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0195】
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.60(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.53(dd,1H,J= 1.0Hz,8.0Hz)、7.27(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)、7.06(ddd,1H,J=1.0Hz,8. 0Hz,8.0Hz)、4.22(s,2H)、3.74(t,2H,J=7.5Hz)、1.69-1.76(m,2H)、1.29-1.42(m,6H)、0.89(t,3H,J=7.0Hz)。
【0196】
ステップ2:中間体Bの合成
【化42】
【0197】
温度計を備えた3ロ反応器において、窒素気流中、前記ステップ1で合成した中間体A:3.61g(14.48mmol)および2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド:2.00g(14.48mmol)を、メタノール:40mLに溶解させた。この溶液に、(±)-10-カンファ一スルホン酸:0.336g (1.45mmol)を加え、全容を50℃で1時間撹拌した。反応終了後、生じた固体をろ過によって取得し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥させることで黄色固体として中間体Bを4.22g得た。収率は78.9%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0198】
H-NMR(500MHz,DMSO-d,TMS,δppm):9.38(s,1H)、8.97(s,1H)、8.14(s,1H)、7.83(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.60(dd,1H,J=0.5Hz,8.0Hz)、7.33(ddd,1H,J=0.5Hz,8.0Hz,8.0Hz)、7.14-7.18(m,2H)、6.75(d,1H,J=8.5Hz)、6.70(dd,1H,J=3.0Hz,8.5Hz)、4.32(t,2H,7.5Hz)、1.67(tt,2H,J=7.0Hz、7.5Hz)、1.24-1.40(m,6H)、0.86(t,3H,J=7.5Hz)。
【0199】
ステップ3:中間体Cの合成
【化43】
【0200】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、フマリルクロリド:12.00g(78.45mmol)およびクロロホルム:120mLを入れ、均一な溶液とした。そこへ、4-(6-アクリロイルオキシ-ヘクス-1-イルオキシ)フェノール(DKSH社製):10.37g(39.23mmol)を加えた。次いで、トリエチルアミン:8.73g(86.30mmol)を加え、1時間攪拌した。反応終了後、反応液に0.5N塩酸水溶液:500mLを加え、クロロホルム:500mLで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1(容積比))により精製することで、中間体Cを黄色固体として4.01g得た。収率は28.2%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0201】
H-NMR(500MHz,DMSO-d,TMS,δppm):13.35(s,1H)、7.10-7.14(m,2H)、6.94-6.98(m,2H)、6.85-6.91(m,2H)、6.32(dd,1H,J=1.5Hz,17.0Hz)、6.17(dd,1H,J=10.5Hz,17.0Hz)、5.93(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.11(t,2H,J=6.5Hz)、3.96(t,2H,J=6.5Hz)、1.72(tt,2H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.64(tt,2H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.36-1.47(m,4H)。
【0202】
ステップ4:重合性液晶化合物1の合成
【化44】
【0203】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記ステップ2で合成した中間体B:2.50g(6.77mmol)およびN-メチル-2-ピロリドン:100mLを入れ、均一な溶液とした。そこへ、前記ステップ3で合成した中間体C:13.49g(37.21mmol)を加えた。次いで、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン:0.909g(7.44mmol)を加えた。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:8.56g(44.66mmol)を、反応液内温を20℃~30℃に保持しながら、5分間かけて加えた後、全容を25℃でさらに3時間攪拌した。反応終了後、反応液に飽和食塩水:500mLを加え、酢酸エチル:500mLで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(THF:クロロホルム=1:20(容積比))により精製することで、重合性液晶化合物1を黄色固体として3.24g得た。収率は45.3%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0204】
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.86(d,1H,J=2.5Hz)、7.66-7.68(m,3H)、7.22-7.36(m,7H)、7.16(dd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz)、7.05-7.18(m,4H)、6.90-6.94(m,4H)、6.41(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.83(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.31(t,2H,J=7.5Hz)、4.18(t,4H,J=6.5Hz)、3.968(t,2H,J=6.5Hz)、3.966(t,2H,J=6.5Hz)、1.81(tt,4H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.70-1.75(m,6H)、1.28-1.56(m,14H)、0.86(t,3H,J=7.0Hz)。
【0205】
(合成例2)重合性液晶化合物2の合成
【化45】
【0206】
ステップ1:中間体Dの合成
【化46】
【0207】
中間体Dを、国際公開第2014/010325号を参考にして合成した。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0208】
H-NMR(500MHz,DMSO-d,TMS,δppm):7.66(dd、1H、J=1.0Hz、8.0Hz)、7.36(dd、1H、J=1.0Hz、8.0Hz)、7.20(dt、1H、J=1.0Hz、7.5Hz)、6.99(dt、1H、J=1.0Hz,7.5Hz)、5.40(s、2H)、3.31(s、3H)。
【0209】
ステップ2:中間体Eの合成
【化47】
【0210】
温度計を備えた3つロ反応器において、窒素気流中、前記ステップ1で合成した中間体D:2.60g(14.48mmol)および2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド:2.00g(14.48mmol)を、メタノール:40mLに溶解させた。この溶液に、(±)-10-カンファ一スルホン酸:0.336g(1.45mmol)を加え、全容を50℃で1時間撹拌した。反応終了後、生じた固体をろ過によって取得し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥させることで黄色固体として中間体Eを3.26g得た。収率は75.2%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0211】
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):9.76(s,1H)、7.77(s,1H)、7.68-7.70(m,2H)、7.37(ddd,1H,J=1.0Hz、7.5Hz、8.5Hz)、7.18-7.24(m,2H)、6.94(d,1H,J=9.0Hz)、6.82(dd,1H,J=3.0Hz,9.0Hz)、6.78(d,1H,J=3.0Hz)、3.81(d,3H,J=0.5Hz)。
【0212】
ステップ3:重合性液晶化合物2の合成
【化48】
【0213】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記ステップ2で合成した中間体E:2.50g(8.35mmol)およびN-メチル-2-ピロリドン:100mLを入れ、均一な溶液とした。そこへ、前記合成例1のステップ3で合成した中間体C:16.65g(45.93mmol)を加えた。次いで、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン:1.12g(9.19mmol)を加えた。次いで、1-エチル-3-(3―ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:10.57g(55.12mmol)を、反応液内温を20℃~30℃に保持しながら、5分間かけて加えた後、全容を25℃でさらに3時間攪拌した。反応終了後、反応液に飽和食塩水:500mLを加え、酢酸エチル:500mLで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(THF:クロロホルム=1:20(容積比))により精製することで、重合性液晶化合物2を黄色固体として2.22g得た。収率は26.9%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0214】
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.87(d,1H,2.5Hz)、7.66-7.68(m,3H)、7.23-7.36(m,7H)、7.16-7.20(m,1H)、7.05-7.11(m,4H)、6.90-6.94(m,4H)、6.43(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.83(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.18(t,4H,J=6.5Hz)、3.968(t,2H,J=6.5Hz)、3.966(t,2H,J=6.5Hz)、3.76(s,3H)、1.81(tt,4H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.72(tt,4H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.43-1.56(m,8H)。
【0215】
(合成例3)重合性液晶化合物3の合成
【化49】
【0216】
ステップ1:中間体Fの合成
【化50】
【0217】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、水素化ナトリウム(油性):4.1g(水素化ナトリウム純分として2.67g(55.58mmol))およびTHF:75mLを入れ、均一な溶液とした。そこへ、4-(6-アクリロイルオキシ-ヘクス-1-イルオキシ)フェノール(DKSH社製):13.35g(50.53mmol)をTHF:75mLに溶解させ、溶液として加えた。次いで、無水マレイン酸:5.00g(50.53mmol)を加えたのち、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン:6.79g(55.58mmol)を加え、3時間攪拌した。反応終了後、反応液に0.2N塩酸水溶液:500mLを加え、酢酸エチル:500mLで抽出した。その後、有機層を飽和食塩水:500mLで洗浄した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:THF=8:2(容積比))により精製することで、中間体Fを黄色固体として5.85g得た。収率は32.0%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0218】
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.13(d,1H,J=16.0Hz)、7.02-7.08(m,3H)、6.88-6.92(m,2H)、6.41(dd,1H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.12(dd,1H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.82(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.18(t,2H,6.5Hz)、3.95(t,2H,6.5Hz)、1.80(tt,2H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.72(tt,2H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.42-1.55(m,4H)。
【0219】
ステップ2:重合性液晶化合物3の合成
【化51】
【0220】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記合成例1のステップ2で合成した中間体B:2.50g(6.77mmol)およびN-メチル-2-ピロリドン:100mLを入れ、均一な溶液とした。そこへ、前記ステップ1で合成した中間体F:13.49g(37.21mmol)を加えた。次いで、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン:0.909g(7.44mmol)を加えた。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:8.56g(44.66mmol)を、反応液内温を20℃~30℃に保持しながら、5分間かけて加えた後、全容を25℃でさらに3時間攪拌した。反応終了後、反応液に飽和食塩水:500mLを加え、酢酸エチル:500mLで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(THF:クロロホルム=1:20(容積比))により精製することで、重合性液晶化合物3を黄色固体として3.53g得た。収率は49.3%であった。
目的物の構造はH-NMRで同定した。
【0221】
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.86(d,1H,J=2.5Hz)、7.66-7.68(m,3H)、7.23-7.36(m,7H)、7.15-7.18(m,1H)、7.05-7.18(m,4H)、6.90-6.94(m,4H)、6.41(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.83(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.31(t,2H)、4.18(t,4H)、3.969(t,2H)、3.966(t,2H)、1.81(tt,4H,J=6.5Hz,7.0Hz)、1.70-1.75(m,6H)、1.26-1.56(m,14H)、0.86(t,3H,7.0Hz)。
【0222】
<相転移温度の測定>
重合性液晶化合物1~3のぞれぞれを5mg計量し、固体状態のまま、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板(E.H.C.Co.,Ltd.製、商品名:配向処理ガラス基板)2枚に挟んだ。この基板をホットプレート上に載せ、50℃から200℃まで昇温した後、再び50℃まで降温した。昇温、降温する際の組織構造の変化を偏向光学顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE LV100POL型)で観察した。
【0223】
測定した相転移温度を下記表1に示す。
表1中、「C」はCrystal、「N」はNematic、「I」はIsotropicをそれぞれ表す。ここで、Crystalとは、試験化合物が固相にあることを、Nematicとは、試験化合物がネマチック液晶相にあることを、Isotropicとは、試験化合物が等方性液体相にあることを、それぞれ示す。
表1より、重合性液晶化合物1~3が液晶性を示すことが分かる。
【0224】
【表1】
【0225】
<重合性液晶組成物の調製>
(実施例1~3)
合成例1~3で得た重合性液晶化合物1~3のそれぞれを2.0gと、光重合開始剤としてのアデカアークルズN1919T(ADEKA社製)86mgと、界面活性剤としてのメガファックF-562(DIC株式会社製)を1質量%含むシクロペンタノンおよび1,3-ジオキソランの混合溶媒(混合比(質量比):シクロペンタノン/1,3-ジオキソラン=4/6)600mgとを、別途調製した、1,3-ジオキソラン4.1gおよびシクロペンタノン2.74gの混合溶媒に溶解させた。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性液晶組成物1~3をそれぞれ得た。
【0226】
<光学特性の評価>
(i)重合性組成物による液晶層の形成
ラビング処理されたポリイミド配向膜の付与された透明ガラス基板(商品名:配向処理ガラス基板;E.H.C.Co.,Ltd.製)に、上述のようにして得られた重合性組成物1~3のそれぞれを#6のバーコーターを使用して塗布し、塗膜を得た。得られた塗膜を、下記表2に示す温度で1分間乾燥した後、表2に示す温度で1分間配向処理し、液晶層を形成した。
(ii)光学異方体の形成
上記(i)で作製した液晶層のそれぞれを塗布面側から2000mJ/cmの紫外線を表2に示す露光温度にて照射して重合させ、波長分散測定用の試料である透明ガラス基板付光学異方体をそれぞれ得た。ここで、光学異方体(液晶性高分子膜)の膜厚は、それぞれの透明ガラス基板付光学異方体に針で傷をつけ、その段差を表面形状測定装置DEKTAKI50型(株式会社アルバック製)で測定して計測した。結果を表2に示す。
(iii)位相差の測定
上記(ii)で得られた試料のそれぞれにつき、波長400nmから800nm間の位相差を、Mueller Matrix Polarimeter Axoscan(Axometrics社製)を用いて測定した。波長550nmにおける位相差を表2に示す。
(iv)波長分散の評価
測定した位相差を用いて以下のように算出される波長分散比α,βの値から波長分散を評価した。結果を表2に示す。
α=(450nmにおける位相差値)/(550nmにおける位相差値)
β=(650nmにおける位相差値)/(550nmにおける位相差値)
(v)550nmにおけるΔnの計算
550nmにおけるΔnをそれぞれ下記の式より算出した。結果を表2に示す。
Δn=(550nmにおける位相差値;nm)/(光学異方体の膜厚;μm)/1000
【0227】
【表2】
【0228】
広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を示す場合、αは1より小となり、βは1より大となる。表2より、実施例1~3の重合性液晶化合物1~3から製造される光学異方体は、いずれも広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を有していることが分かる。