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特許7484711支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法
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  • 特許-支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法 図1
  • 特許-支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240509BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240509BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240509BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K3/46 B
B32B27/20 Z
B32B15/08 J
B32B5/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020518266
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017704
(87)【国際公開番号】W WO2019216247
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018090800
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 喬之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】入野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】手塚 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】松浦 雅晴
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230901(JP,A)
【文献】特開2016-069519(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129655(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016534(WO,A1)
【文献】国際公開第03/006553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の一方の面上に設けられた樹脂組成物層と、を有し、
前記支持体が、前記一方の面上に露出する粒子を有し、該粒子の露出している部分の平均最大高さが1.0μm以下であるもの、又は、前記支持体が、前記一方の面上に露出する粒子を有さないものである支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いて、前記支持体を剥離せずに前記樹脂組成物層を硬化して層間絶縁層を形成し、前記支持体を剥離後の層間絶縁層の表面を酸化剤によって粗化処理する工程を有する、多層プリント配線板の製造方法であって、前記粗化処理後の層間絶縁層の算術平均粗さRaが150~230nmである、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、その厚さが75μm以下である、請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物層が、(a)エポキシ樹脂及び(b)シアネート樹脂を含有する樹脂組成物(1)を含有する層である、請求項1又は2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
樹脂組成物(1)が、さらに、(c)活性エステル硬化剤、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填材からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項3に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記(d)硬化促進剤が、有機リン系化合物である、請求項4に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
樹脂組成物(1)が、(a)エポキシ樹脂、(b)シアネート樹脂、(c)活性エステル硬化剤、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填材を含有し、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対する、(a)エポキシ樹脂の含有量が5~40質量部、(b)シアネート樹脂の含有量が1~20質量部、(c)活性エステル硬化剤の含有量が2~30質量部、(d)硬化促進剤の含有量が0.01~1質量部、(e)無機充填材の含有量が40~85質量部である、請求項4又は5に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
樹脂組成物(1)が、さらに、(f)ジシアンジアミド、(g)フェノキシ樹脂及び(h)シロキサン骨格を有する樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項3~6のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物層が、層間絶縁層用樹脂組成物層と接着補助層とを有し、
前記層間絶縁層用樹脂組成物層が、樹脂組成物(1)を層形成してなる層である、請求項3~7のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記接着補助層が、(i)エポキシ樹脂及び(j)シアネート樹脂を含有する樹脂組成物(2)を層形成してなる層である、請求項8に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項10】
樹脂組成物(2)が、さらに、(k)比表面積が20m/g以上の無機充填材、(m)ポリブタジエン骨格を含有するポリアミド樹脂、及び(n)フェノキシ樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項9に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記支持体の厚さが10~150μm、前記層間絶縁層用樹脂組成物層の厚さが5~50μm、前記接着補助層の厚さが1~10μmである、請求項8~10のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記(b)シアネート樹脂が、1分子中に2個のシアナト基を有するジシアネート化合物のプレポリマーである、請求項3~11のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項13】
前記支持体が、前記一方の面上に露出する粒子を有し、該粒子の露出している部分の平均最大高さが1.0μm以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項14】
前記支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを、前記支持体を剥離しない状態で加熱して、前記樹脂組成物層を熱硬化させる、請求項1~13のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項15】
前記粗化処理後の層間絶縁層が有する算術平均粗さRaが150~230nmである表面に、めっきによる導体層を形成する工程を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、通信機器等に用いられる多層プリント配線板には、小型化、軽量化及び配線の高密度化だけでなく、演算処理速度の高速化の要求が強まっている。これらの要求に合致する多層プリント配線板の製造方法として、例えば、プリプレグ等を絶縁層として用い、必要な部分のみレーザー照射等によって形成したビアホールで接続しながら配線層を形成するビルドアップ方式の多層プリント配線板が主流になりつつある。
【0003】
多層プリント配線板の微細配線化を実現するためには、配線を形成する絶縁層に高い平滑性が求められる。しかし、上記ビアホールを形成する際に、ビアホール周辺の絶縁層表面がレーザーによってダメージを受け、ビアホール周辺の絶縁層表面の凹凸が大きくなり、微細配線化に支障が生じる場合がある。
この問題を解決する方法として、特許文献1には、離型層を有する支持体と有機絶縁樹脂層とからなる接着フィルムをコア基板に積層した後、支持体が付いた状態で熱硬化し、支持体が付いたまま又は支持体を剥離後に、レーザー又はドリルにより穴あけする工法が開示されている。この工法によると、穴あけ加工時に絶縁層の表面に支持体が付いているため、ビアホール周辺へのダメージを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/035071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される工法は、絶縁層として繊維基材を含むプリプレグが用いられるため、絶縁層の平滑性及び薄膜性を向上させるには限界がある。そこで、本発明者等は、繊維基材を含まない樹脂フィルムを支持体付きで硬化させ、必要な加工を施した後、支持体を剥離する方法について検討を行った。この方法によって、従来よりも平滑性及び薄膜性に優れる絶縁層を形成することが可能になったものの、形成された絶縁層の表面に、平面視において、例えば約2μm以上の直径を有する凹み(以下、「粗大凹部」ともいう)が発生することが判明した。図1に、粗大凹部が発生した層間絶縁層の表面SEM写真を示す。図1において、層間絶縁層の表面2に、複数の粗大凹部1が存在することが確認される。このような凹部は微細配線を樹脂表面に形成する場合に、歩留まり低下等の問題に繋がるため、改善が望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、支持体付きで硬化させた場合でも、形成される層間絶縁層の表面における粗大凹部の発生が抑制された支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、該支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いた多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、下記本発明により、当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、次の[1]~[15]を提供する。
[1]支持体と、該支持体の一方の面上に設けられた樹脂組成物層と、を有し、
前記支持体が、前記一方の面上に露出する粒子を有し、該粒子の露出している部分の平均最大高さが1.0μm以下であるもの、又は、前記支持体が、前記一方の面上に露出する粒子を有さないものである、支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[2]前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、その厚さが75μm以下である、上記[1]に記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[3]前記樹脂組成物層が、(a)エポキシ樹脂及び(b)シアネート樹脂を含有する樹脂組成物(1)を含有する層である、上記[1]又は[2]に記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[4]樹脂組成物(1)が、さらに、(c)活性エステル硬化剤、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填材からなる群から選択される1種以上を含有する、上記[3]に記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[5]樹脂組成物(1)が、(a)エポキシ樹脂、(b)シアネート樹脂、(c)活性エステル硬化剤、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填材を含有し、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対する、(a)エポキシ樹脂の含有量が5~40質量部、(b)シアネート樹脂の含有量が1~20質量部、(c)活性エステル硬化剤の含有量が2~30質量部、(d)硬化促進剤の含有量が0.01~1質量部、(e)無機充填材の含有量が40~85質量部である、上記[4]に記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[6]樹脂組成物(1)が、さらに、(f)ジシアンジアミド、(g)フェノキシ樹脂及び(h)シロキサン骨格を有する樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する、上記[3]~[5]のいずれかに記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[7]前記樹脂組成物層が、層間絶縁層用樹脂組成物層と接着補助層とを有し、
前記層間絶縁層用樹脂組成物層が、樹脂組成物(1)を層形成してなる層である、上記[3]~[6]のいずれかに記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[8]前記接着補助層が、(i)エポキシ樹脂及び(j)シアネート樹脂を含有する樹脂組成物(2)を層形成してなる層である、上記[7]に記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[9]樹脂組成物(2)が、さらに、(k)比表面積が20m/g以上の無機充填材、(m)ポリブタジエン骨格を含有するポリアミド樹脂、及び(n)フェノキシ樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する、上記[8]に記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[10]前記支持体の厚さが10~150μm、前記層間絶縁層用樹脂組成物層の厚さが5~50μm、前記接着補助層の厚さが1~10μmである、上記[7]~[9]のいずれかに記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[11]前記支持体を剥離せずに前記樹脂組成物層を硬化して層間絶縁層を形成するために用いられる、上記[1]~[10]のいずれかに記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いて形成される層間絶縁層を有する、多層プリント配線板。
[13]前記層間絶縁層の算術平均粗さRaが、300nm以下である、上記[12]に記載の多層プリント配線板。
[14]上記[1]~[11]のいずれかに記載の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いて層間絶縁層を形成する工程を有する、多層プリント配線板の製造方法。
[15]前記層間絶縁層を形成する工程が、前記支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを、前記支持体を剥離しない状態で加熱して、前記樹脂組成物層を熱硬化させる工程である、上記[14]に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、支持体付きで硬化させた場合でも、形成される層間絶縁層の表面における粗大凹部の発生が抑制された支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム、該支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いた多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】粗大凹部を有する層間絶縁層の表面SEM写真である。
図2】本実施形態の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いて形成された層間絶縁層の表面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書においてはX以上でありY以下である数値範囲(X、Yは実数)を「X~Y」と表すことがある。例えば、「0.1~2」という記載は0.1以上であり2以下である数値範囲を示し、当該数値範囲には0.1、0.34、1.03、2等が含まれる。
本明細書において「層間絶縁層」とは、2層の導体層の間に位置し、当該導体層を絶縁するための層である。本明細書の「層間絶縁層」は、例えば、層間絶縁用樹脂フィルムの硬化物、複合フィルムの硬化物等が挙げられる。なお、本明細書において「層」とは、一部が欠けているもの、ビア又はパターンが形成されているものも含む。
【0011】
[支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム]
本実施形態の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム(以下、単に「支持体付き樹脂フィルム」ともいう)は、支持体と、該支持体の一方の面上に設けられた樹脂組成物層と、を有するものである。
【0012】
<支持体>
本実施形態の支持体付き樹脂フィルムが有する支持体は、樹脂組成物層が設けられる面上に露出する粒子(以下、「露出粒子」ともいう)を有し、該露出粒子の露出している部分の平均最大高さ(以下、「露出部の平均最大高さ」ともいう)が1.0μm以下であるもの、又は、樹脂組成物層が設けられる面上に露出粒子を有さないものである。
支持体を上記構成を有するものとすることで、形成される層間絶縁層の表面における粗大凹部の発生を抑制することができる。これは、粗大凹部の発生は、樹脂フィルムを支持体付きで硬化させる場合に、支持体表面の露出粒子の形状が層間絶縁層の表面に転写されることが原因であり、上記露出部の平均最大高さを1.0μm以下とするか、或いは、露出粒子を有しない支持体を用いることで、上記転写による粗大凹部の発生が抑制されたためと考えられる。
【0013】
上記露出部の平均最大高さは、粗大凹部の発生を抑制する観点から、1.0μm以下であり、0.8μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。また、支持体は、樹脂組成物層が設けられる面上に露出粒子を有さないことが最も好ましい。
上記露出部の平均最大高さは、非接触式の表面粗さ測定装置(例えば、Bruker社製 : Contour GT-X)を用いて測定することが可能であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
なお、支持体の面上に露出する粒子とは、例えば、支持体として用いる有機樹脂フィルムの製造時に滑剤として使用される粒子が挙げられる。該粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン及び有機粒子からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
これらの粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、繊維状等のいずれであってもよい。また、これらの粒子の平均粒径は、例えば、0.1~1μmである。
支持体はこれらの粒子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、含んでいる場合においては、露出部の平均最大高さが1.0μm以下となる状態で含まれるものである。
支持体がこれらの粒子を含みつつ、露出部の平均最大高さを1.0μm以下に調整する方法としては、平均最大高さが1.0μm以下の形状を有する粒子を選択する方法、支持体を2層以上の構成として、樹脂組成物層を設ける面側の層を、上記粒子を添加しない層とする方法などが挙げられる。
なお、支持体の樹脂組成物層が設けられる面と反対側の面は、該面上に露出する粒子を有していてもよく、露出する粒子を有していなくてもよい。
【0015】
支持体の材質は特に限定されないが、有機樹脂フィルムが好ましい。
有機樹脂フィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート、ポリイミドなどが挙げられる。これらの中でも、価格及び取り扱い性の観点から、PETが好ましい。
支持体は、1種の材質からなるものであってもよく、2種以上の材質を組み合わせたものであってもよい。2種以上の材質を組み合わせる場合は、それらを混合してフィルム状にしたものであってもよく、異なる材質からなる層を2層以上有する多層フィルムであってもよい。また、支持体として、金属箔、離型紙等を使用してもよい。
【0016】
支持体の厚さは、通常、10~150μmであり、15~75μmが好ましく、25~50μmがより好ましい。支持体の厚さが上記下限値以上であると、取り扱い性が容易となる。一方、支持体は、通常、最終的に剥離又は除去されるため、省エネ等の観点から上記上限値以下の厚さとすることが好ましい。したがって、取り扱い性、省エネ等の観点からは、支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、その厚さが75μm以下であることが好ましい。
【0017】
支持体には、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、支持体には、支持体付で硬化させた後に支持体を剥離することを容易にするため、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理を施して離型層を形成してもよい。但し、離型層なしで剥離可能な場合は離型層が必ずしも必要となるわけではない。また、離型層の厚みは、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜選択すればよい。
【0018】
<樹脂組成物層>
本実施形態の支持体付き樹脂フィルムが有する樹脂組成物層は、層間絶縁層を形成する樹脂組成物を含有するものであれば特に限定されないが、(a)エポキシ樹脂(以下、「(a)成分」ともいう)及び(b)シアネート樹脂(以下、「(b)成分」ともいう)を含有する樹脂組成物(1)を含有する層であることが好ましい。
【0019】
((a)エポキシ樹脂)
(a)エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましく挙げられる。
(a)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセンノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂を含む)、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、得られる層間絶縁層のリフロー耐熱性が優れる観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
(a)エポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、表面粗さが小さく、めっき法によって形成した導体層との接着強度に優れる層間絶縁層を得る観点から、150~500g/eqが好ましく、150~400g/eqがより好ましく、200~300g/eqがさらに好ましい。エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JISK 7236に規定された方法に従って測定することができる。
【0021】
樹脂組成物(1)中における(a)エポキシ樹脂の含有量は、スミア除去性、誘電正接及び耐熱性の観点から、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、5~40質量部が好ましく、7~30質量部がより好ましく、10~20質量部がさらに好ましい。
ここで、本明細書において、「固形分換算」とは、有機溶媒等の揮発性成分を除いた不揮発分のみを基準とすることを意味する。つまり、固形分換算100質量部とは、不揮発分100質量部相当を意味する。
【0022】
((b)シアネート樹脂)
(b)シアネート樹脂としては、特に限定されないが、1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネート樹脂が好ましく挙げられる。
(b)シアネート樹脂としては、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のビスフェノール型シアネート樹脂;フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物等のジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等のノボラック型シアネート樹脂;α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン;これらのシアネート樹脂のプレポリマー(以下、「シアネートプレポリマー」ともいう)などが挙げられる。
(b)シアネート樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
これらの中でも、入手し易く、得られる層間絶縁層の誘電特性及び耐熱性に優れる観点から、下記一般式(b-1)で表されるシアネート樹脂、下記一般式(b-2)で表されるシアネート樹脂及びこれらのプレポリマーが好ましい。
【0024】
【化1】

(式中、Rb1は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、硫黄原子、下記一般式(b-1-1)又は下記一般式(b-1-2)で表される2価の基を示す。Rb2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0025】
【化2】

(式中、Rb3は、各々独立に、炭素数1~3のアルキレン基を示す。)
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】

(式中、Rb4は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示す。nは1以上の整数を示す。)
【0028】
上記一般式(b-1)中のR1bが示す炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,2-プロピレン基(-C(CH-)等が挙げられる。これらの中でも、表面粗さが小さく、めっき法によって形成した導体層との接着強度に優れる層間絶縁層を得る観点から、メチレン基、2,2-プロピレン基が好ましく、2,2-プロピレン基がより好ましい。上記アルキレン基を置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記一般式(b-1-1)中のRb3が示す炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,2-プロピレン基(-C(CH-)等が挙げられる。これらの中でも、表面粗さが小さく、めっき法によって形成した導体層との接着強度に優れる層間絶縁層を得る観点から、メチレン基、2,2-プロピレン基が好ましく、2,2-プロピレン基がより好ましい。
上記一般式(b-1)中のRb2が示す炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(b-2)中のRb4で表される炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。上記アルキル基を置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
nは、取り扱い性の観点から、1~15の整数が好ましく、1~10の整数がより好ましく、1~5の整数がさらに好ましい。
【0030】
上記シアネートプレポリマーとは、(b)シアネート樹脂同士が環化反応によりトリアジン環を形成したポリマーをいい、主にシアネートエステル化合物の3、5、7、9、11量体等が挙げられる。このシアネートプレポリマーにおいて、シアナト基の転化率は、特に限定されないが、有機溶媒に対する良好な溶解性を得る観点から、30~90質量%が好ましく、35~85質量%がより好ましく、40~80質量%がさらに好ましい。
シアネートプレポリマーとしては、表面粗さが小さく、めっき法によって形成した導体層との接着強度に優れる層間絶縁層を得る観点から、1分子中に2個のシアナト基を有するジシアネート化合物のプレポリマーが好ましく、上記一般式(b-1)で表されるシアネート樹脂のプレポリマーがより好ましく、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンの少なくとも一部がトリアジン化されて3量体となったプレポリマー(下記式(b-3)参照)がさらに好ましい。
【0031】
【化5】
【0032】
シアネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、有機溶媒に対する溶解性及び作業性の観点から、500~100,000が好ましく、2,000~40,000がより好ましく、3,000~30,000がさらに好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であれば、シアネートプレポリマーの結晶化が抑制され、有機溶媒に対する溶解性が良好になる傾向にあり、また、上記上限値以下であれば、粘度の増大が抑制され、作業性に優れる傾向にある。
なお、本明細書中、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0033】
樹脂組成物(1)中における(b)シアネート樹脂の含有量は、得られる層間絶縁層の誘電正接及び耐熱性の観点から、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、3~10質量部がさらに好ましい。
樹脂組成物(1)中における(a)エポキシ樹脂と(b)シアネート樹脂との質量比[(a)/(b)]は、得られる層間絶縁層の誘電正接及び耐熱性の観点から、0.1~6が好ましく、1~5がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
【0034】
樹脂組成物(1)は、さらに、(c)活性エステル硬化剤(以下、「(c)成分」ともいう)、(d)硬化促進剤(以下、「(d)成分」ともいう)及び(e)無機充填材(以下、「(e)成分」ともいう)からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0035】
((c)活性エステル硬化剤)
(c)活性エステル硬化剤は、(a)エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、活性エステルを有するものであれば特に制限はない。
(c)活性エステル硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ類のエステル化合物等、反応性が高いエステル基を有し、(a)エポキシ樹脂の硬化作用を有する化合物が挙げられる。
(c)活性エステル硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(c)活性エステル硬化剤としては、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましく、多価カルボン酸を有する化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がより好ましく、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の分子中に2個以上のエステル基を有する芳香族化合物がさらに好ましい。また、(c)活性エステル硬化剤には、直鎖状又は多分岐状高分子が含まれていてもよい。
上記少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が、脂肪族鎖を含む化合物であれば、(a)エポキシ樹脂及び(b)シアネート樹脂との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば、耐熱性を高くすることができる。特に耐熱性等の観点から、(c)活性エステル硬化剤は、カルボン酸化合物及びチオカルボン酸化合物から選ばれる1種以上と、ヒドロキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる1種以上との縮合反応によって得られるものが好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましい。
【0037】
カルボン酸化合物としては、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
チオカルボン酸化合物としては、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0038】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び溶解性の観点から、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールがより好ましい。
チオール化合物としては、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0039】
(c)活性エステル硬化剤は特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。具体的には、上記したカルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得ることができる。
【0040】
樹脂組成物(1)中における(c)活性エステル硬化剤の含有量は、得られる層間絶縁層の機械特性、硬化時間及び誘電特性の観点から、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、2~30質量部が好ましく、3~20質量部がより好ましく、4~15質量部がさらに好ましい。
【0041】
((d)硬化促進剤)
(d)硬化促進剤としては、特に限定されないが、有機リン系化合物が好ましい。
有機リン系化合物としては、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、リン原子に少なくとも1つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物等が挙げられる。
(d)硬化促進剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらの中でも、リン原子に少なくとも1つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物が好ましく、下記一般式(d-1)で表されるリン原子に1つ以上のアルキル基が結合したホスフィン化合物と、下記一般式(d-2)で表されるキノン化合物との付加反応物であることが好ましい。
【0043】
【化6】

(一般式(d-1)中、Rd1は炭素数1~12のアルキル基を示し、Rd2及びRd3は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を示す。一般式(d-2)中、Rd4~Rd6は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基を示し、Rd4とRd5は互いに結合して環状構造となっていてもよい。)
【0044】
上記一般式(d-1)中のRd1が示す炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基;ベンジル基等のアリール基置換アルキル基;メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基;水酸基置換アルキル基などが挙げられる。
【0045】
上記一般式(d-1)中のRd2及びRd3が示す炭素数1~12の炭化水素基としては、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の脂環式炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記Rd1で表される炭素数1~12のアルキル基と同様の基が挙げられる。
置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、これらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものなどが挙げられる。
置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基;ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシ置換アリール基;フェノキシ基、クレゾキシ基等のアリーロキシ基;フェニルチオ基、トリルチオ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
これら中でも、Rd2及びRd3が示す炭素数1~12の炭化水素基としては、置換又は非置換のアルキル基が好ましい。
【0046】
上記一般式(d-1)で表されるホスフィン化合物としては、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン;シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、オクチルジフェニルホスフィン等のアルキルジフェニルホスフィン;ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン等のジアルキルフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらの中でも、ワニス溶解性の観点から、トリブチルホスフィンが好ましい。
【0047】
上記一般式(d-2)中のRd4~Rd6が示す炭素数1~18の炭化水素基としては、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の脂環式炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらは、上記Rd2及びRd3が示す置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の脂環式炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基と、同じものが挙げられる。
【0048】
上記一般式(d-2)で表されるキノン化合物としては、1,4-ベンゾキノン;2,3-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、メチル-1,4-ベンゾキノン等のアルキル基置換1,4-ベンゾキノン;2,3-ジメトキシ-1,4ベンゾキノン、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、メトキシ-1,4-ベンゾキノン等のアルコキシ基置換1,4-ベンゾキノンなどが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン化合物との反応性の観点から、1,4-ベンゾキノンが好ましい。
【0049】
リン原子に少なくとも1つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物としては、下記一般式(d-3)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化7】

(式中、Rd1~Rd6は、上記一般式(d-1)及び(d-2)におけるRd1~Rd6と同様である。)
【0051】
上記一般式(d-3)で表される化合物の中でも、ホスフィン化合物とキノン化合物との反応性の観点から、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物が好ましい。
【0052】
リン原子に少なくとも1つのアルキル基が結合したホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物は、例えば、原料として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物とを、両者が溶解する有機溶媒中で付加反応させた後、単離する方法により得られる。
【0053】
樹脂組成物(1)中における(d)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、0.01~1質量部が好ましく、0.03~0.5質量部がより好ましく、0.05~0.2質量部がさらに好ましい。(d)成分の含有量が、上記下限値以上であると、十分な硬化速度が得られ、内層パターン上の樹脂層の平坦性、支持体付きで硬化して得られた層間絶縁層の外観に優れる。また、(d)成分の含有量が、上記上限値以下であると、得られる樹脂フィルムのハンドリング及び埋め込み性が優れる。
【0054】
((e)無機充填材)
(e)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、安価である点から、シリカが好ましい。(e)無機充填材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
(e)無機充填材の形状は、特に限定されないが、樹脂組成物(1)の流動性(パターン埋め込み性)の観点から、球状であることが好ましい。
(e)無機充填材の体積平均粒径は、特に限定されないが、良好な回路基板の埋め込み性と層間絶縁信頼性の観点から、0.05~3μmが好ましく、0.2~2μmがより好ましく、0.3~1μmがさらに好ましく、0.4~0.8μmが特に好ましい。なお、(e)無機充填材の体積平均粒径は1種類でもよく、異なる体積平均粒径のものを混合して使用してもよい。
体積平均粒径とは、粒子の全体積を100%として粒径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0056】
(e)無機充填材としては、耐湿性を向上させる観点から、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理された無機充填材を用いてもよい。
シランカップリング剤としては、アミノシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、保存安定性の観点から、ビニルシランカップリング剤で表面処理を施した球状シリカを使用することが好ましい。これらの表面処理を施したシリカは単独品を用いてもよく、異なるシランカップリング剤処理を施したシリカを併用してもよい。
【0057】
樹脂組成物(1)中における(e)無機充填材の含有量は、低熱膨張性、高周波特性及び配線パターンへの埋め込み性の観点から、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、40~85質量部が好ましく、50~80質量部がより好ましく、60~75質量部がさらに好ましい。(e)無機充填材の含有量が、上記下限値以上であると、良好な低熱膨張性及び高周波特性が得られる傾向にあり、上記上限値以下であると、良好な配線パターンへの埋め込み性が得られる傾向にある。
【0058】
樹脂組成物(1)は、さらに、(f)ジシアンジアミド(以下、「(f)成分」ともいう)、(g)フェノキシ樹脂(以下、「(g)成分」ともいう)及び(h)シロキサン骨格を有する樹脂(以下、「(h)シロキサン樹脂」又は「(h)成分」ともいう)からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0059】
((f)ジシアンジアミド)
(f)ジシアンジアミドはエポキシ樹脂の硬化剤として機能し、(f)成分を含有することにより、内層回路パターンと層間絶縁層との接着強度が優れる傾向にある。
樹脂組成物(1)が(f)ジシアンジアミドを含有する場合、(f)ジシアンジアミドの含有量は、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、0.005~1質量部が好ましく、0.01~0.5質量部がより好ましく、0.02~0.1質量部がさらに好ましい。(f)成分の含有量が上記下限値以上であると、内層回路パターンと層間絶縁層との接着強度が優れる傾向にあり、上記上限値以下であると、(f)成分の析出を抑制することができる。
【0060】
((g)フェノキシ樹脂)
樹脂組成物(1)は、(g)フェノキシ樹脂を含有することによって、得られる層間絶縁層と導体層との接着強度が向上する傾向にあり、また、層間絶縁層の表面の粗化形状が小さく、緻密になる傾向にある。また、無電解めっき法を用いて層間絶縁層上に導体層を形成する場合、めっきブリスターの発生が抑制されると共に、層間絶縁層とソルダーレジストとの接着強度が向上する傾向にある。
(g)フェノキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
ここで、「フェノキシ樹脂」とは主鎖が芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルとの重付加構造である高分子の総称であり、本明細書においては、重量平均分子量が、10,000以上のものを指す。なお、主鎖が芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルの重付加構造である高分子がエポキシ基を有する場合、重量平均分子量が10,000以上のものはフェノキシ樹脂と分類し、重量平均分子量が10,000未満のものはエポキシ樹脂(a)と分類する。
(g)フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、有機溶媒への溶解性並びに層間絶縁層の機械的強度及び耐薬品性を向上させる観点から、10,000~100,000が好ましい。(g)フェノキシ樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、導体層のブリスターの発生が抑制される傾向にある。
【0062】
(g)フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールAF骨格、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体骨格から選択される1種類以上の骨格を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、層間絶縁層の耐薬品性を向上させる観点及び粗化、デスミア処理等において、酸化剤によって層間絶縁層に適度な凹凸を付与することを容易とする観点から、ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。(g)フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0063】
樹脂組成物(1)が(g)フェノキシ樹脂を含有する場合、(g)フェノキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、0.2~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましく、1~3質量部がさらに好ましい。(g)成分の含有量が、上記下限値以上であると十分な可撓性が得られ、取り扱い性に優れると共に、めっきにより形成された導体層のピール強度が優れる傾向にあり、上記上限値以下であると、ラミネートの際に十分な流動性が得られ、適切な粗度が得られる傾向にある。
【0064】
((h)シロキサン骨格を有する樹脂)
(h)シロキサン樹脂は、特に限定されないが、ポリシロキサン骨格を有する樹脂であることが好ましい。樹脂組成物(1)が(h)シロキサン樹脂を含有することによって、樹脂組成物(1)をワニス化して、樹脂フィルムを作製する際、接着補助層の上にハジキ、うねり等が発生することなく均一に塗布し易くなる。
(h)シロキサン樹脂としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。
(h)シロキサン樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
樹脂組成物(1)が(h)シロキサン樹脂を含有する場合、(h)シロキサン樹脂の含有量は、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対して、0.005~1質量部が好ましく、0.01~0.5質量部がより好ましく、0.02~0.1質量部がさらに好ましい。(h)成分の含有量が上記下限値以上であると、塗工時にうねり等の発生を抑制し均一に塗布し易くなり、上記上限値以下であると、デスミア後の粗化形状が均質となり、耐熱性も良好となる。
【0066】
(その他の成分)
樹脂組成物(1)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記各成分以外の成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。その他の成分としては、例えば、ビスマレイミド化合物、ビスマレイミド化合物とジアミン化合物、ビスアリルナジド樹脂、ベンゾオキサジン化合物等の樹脂成分;オルベン、ベントン等の増粘剤;イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着付与剤;ゴム粒子;カーボンブラック等の着色剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃剤などが挙げられる。
【0067】
樹脂組成物(1)の組成は、上記の構成に限定されるものではなく、その目的に応じて適宜調整すればよいが、(a)エポキシ樹脂、(b)シアネート樹脂、(c)活性エステル硬化剤、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填材を含有するものであり、樹脂組成物(1)の固形分換算100質量部に対する、(a)エポキシ樹脂の含有量が5~40質量部、(b)シアネート樹脂の含有量が1~20質量部、(c)活性エステル硬化剤の含有量が2~30質量部、(d)硬化促進剤の含有量が0.01~1質量部、(e)無機充填材の含有量が40~85質量部であることが好ましい。
【0068】
(有機溶媒)
樹脂組成物(1)は、取り扱いを容易にする観点及び樹脂フィルムを形成し易くする観点から、有機溶媒を含有させてワニスの状態にしてもよい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒などが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、ケトン系溶媒が好ましく、MEK、メチルイソブチルケトンがより好ましい。
有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
本実施形態の支持体付き樹脂フィルムが有する樹脂組成物層は、上記樹脂組成物(1)のみから構成されるものであってもよいが、層間絶縁層用樹脂組成物層と接着補助層とを有し、層間絶縁層用樹脂組成物層が、樹脂組成物(1)を層形成してなる層であることが好ましい。
樹脂組成物層として、層間絶縁層用樹脂組成物層と接着補助層とを有することにより、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムは、より平滑な層間絶縁層上に高い接着強度を有する導体層を形成することができる。
なお、接着補助層と層間絶縁層用樹脂組成物層との間には、明確な界面が存在せず、例えば、接着補助層の構成成分の一部が層間絶縁層用樹脂組成物層の中に流動した状態であってもよい。
以下、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムが有する樹脂組成物層が、層間絶縁層用樹脂組成物層と接着補助層とを有する場合における好適な態様について説明する。
【0070】
<層間絶縁層用樹脂組成物層>
層間絶縁層用樹脂組成物層は、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムを用いてプリント配線板を製造する場合において、ラミネートの際に回路基板に直に接し、溶融して、配線パターンに流動して回路基板を埋め込む役割を果たす層である。また、回路基板にスルーホール、ビアホール等が存在する場合、それらの中へ流動して、該ホール内を充填する役割を果たす。
層間絶縁層用樹脂組成物層は、樹脂組成物(1)を層形成することにより得られる。
層間絶縁層用樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板に形成される導体層の厚みによって決定すればよいが、プリント配線板を薄型化する観点から、5~50μmが好ましく、10~45μmがより好ましく、20~40μmがさらに好ましい。
【0071】
<接着補助層>
接着補助層は、多層プリント配線板において、多層化された回路パターン同士を絶縁し、かつ平滑でめっきピール強度を高くする役割を果たす層である。
接着補助層の厚さは、平滑な表面を有し、めっき法によって形成した導体層との接着性が高い層間絶縁層を得る観点から、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましく、3~5μmがさらに好ましい。
【0072】
接着補助層は、(i)エポキシ樹脂(以下、「(i)成分」ともいう)及び(j)シアネート樹脂(以下、「(j)成分」ともいう)を含有する樹脂組成物(2)を層形成してなる層であることが好ましい。
【0073】
((i)エポキシ樹脂)
(i)エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、上記(a)エポキシ樹脂と同じものが挙げられる。これらの中でも、得られる層間絶縁層のリフロー耐熱性が優れる観点から、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル骨格を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
ビフェニル骨格を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂とは、分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有するアラルキルノボラック型のエポキシ樹脂をいい、例えば、下記一般式(i-1)で表される構造単位を含むエポキシ樹脂が挙げられる。
【0074】
【化8】

(式中、Ri1は水素原子又はメチル基を示す。)
【0075】
(i)エポキシ樹脂中における一般式(i-1)で表される構造単位の含有量は、デスミア後の表面粗さが小さく、めっき法によって形成した導体層との接着強度に優れる層間絶縁層を得る観点から、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましい。
上記一般式(i-1)で表される構造単位を含むエポキシ樹脂は、同様の観点から、下記一般式(i-2)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0076】
【化9】

(式中、Ri2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、sは1以上の整数を示す。)
【0077】
上記一般式(i-2)中のsは、デスミア後の表面粗さを小さくする観点から、1~20の整数が好ましく、1~10の整数がより好ましく、1~8の整数がさらに好ましい。
【0078】
樹脂組成物(2)中における(i)エポキシ樹脂の含有量は、平滑な表面を有し、導体層との接着性が高い層間絶縁層を得る観点から、樹脂組成物(2)の固形分換算100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、20~50質量部がより好ましく、25~40質量部がさらに好ましい。
【0079】
((j)シアネート樹脂)
(j)シアネート樹脂としては、特に限定されないが、上記(b)シアネート樹脂と同じものが挙げられる。
樹脂組成物(2)中における(j)シアネート樹脂の含有量は、平滑な表面を有し、導体層との接着性が高い層間絶縁層を得る観点から、樹脂組成物(2)の固形分換算100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、20~50質量部がより好ましく、25~40質量部がさらに好ましい。
【0080】
樹脂組成物(2)は、さらに、(k)比表面積が20m/g以上の無機充填材(以下、単に「(k)無機充填材」又は「(k)成分」ともいう)、(m)ポリブタジエン骨格を含有するポリアミド樹脂(以下、「(m)ポリアミド樹脂」又は「(m)成分」ともいう)、及び(n)フェノキシ樹脂(以下、「(n)成分」ともいう)からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0081】
((k)比表面積が20m/g以上の無機充填材)
(k)無機充填材は、樹脂組成物(2)を熱硬化して形成される層間絶縁層をレーザー加工する際に、樹脂の飛散を防止し、レーザー加工の形状を整えることを可能にする観点から重要である。また、層間絶縁層の表面を酸化剤で粗化する際に、適度な粗化面を形成し、めっきによって接着強度に優れる導体層の形成を可能にすることができる。
【0082】
(k)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、安価である点から、シリカが好ましい。(k)無機充填材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
(k)無機充填材は、微細配線を形成する観点から、粒子径が小さいものが好ましい。
(k)無機充填材の比表面積は、適度な粗化面の形成、接着強度に優れる導体層の形成の観点から、20m/g以上であり、60~200m/gが好ましく、90~130m/gがより好ましい。
比表面積は、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法で求めることができる。具体的には、粉体粒子表面に、窒素等の吸着占有面積が既知の分子を液体窒素温度で吸着させ、その吸着量から粉体粒子の比表面積を求めることができる。
【0084】
(k)無機充填材としては、市販品を用いてもよく、ヒュームドシリカである「AEROSIL(アエロジル)(登録商標)R972」(日本アエロジル株式会社製、商品名、比表面積110±20m/g)及び「AEROSIL(アエロジル)(登録商標)R202」(日本アエロジル株式会社製、商品名、比表面積100±20m/g)、コロイダルシリカである「PL-1」(扶桑化学工業株式会社製、商品名、比表面積181m/g)及び「PL-7」(扶桑化学工業株式会社製、商品名、比表面積36m/g)等が挙げられる。これらの中でも、絶縁信頼性及び耐熱性の観点から、(i)エポキシ樹脂中での分散性が良好なものが好ましく、表面を疎水性化処理した日本アエロジル株式会社製の「AEROSIL(アエロジル)(登録商標)R972」(商品名)、同社製「AEROSIL(アエロジル)(登録商標)R202」等が好ましい。
【0085】
樹脂組成物(2)中における(k)無機充填材の含有量は、樹脂組成物(2)の固形分換算100質量部に対して、1~40質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましく、3~25質量部がさらに好ましい。(k)無機充填材の含有量が上記下限値以上であると、レーザー加工の際に樹脂飛散を防止し、層間絶縁層のレーザー加工形状を整えることができる。また、形成される層間絶縁層の表面粗さが適度に大きくなり、高いめっきピール強度を得ることができる。一方、(k)無機充填材の含有量が、上記上限値以下であると、高いめっきピール強度を得ることができる。
【0086】
((m)ポリブタジエン骨格を含有するポリアミド樹脂)
(m)成分は、ポリブタジエン骨格を含有するポリアミド樹脂である。本実施形態において「ポリアミド樹脂」とは、主鎖中にアミド結合(-NHCO-)を有する重合体を意味するものであり、アミド結合とイミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂であってよいが、イミド結合を有さないポリアミド樹脂が好ましい。
(m)ポリアミド樹脂としては、下記一般式(m-1)で表される構造単位、下記一般式(m-2)で表される構造単位及び下記一般式(m-3)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂(以下、「変性ポリアミド樹脂」ともいう)が好ましい。
【0087】
【化10】
【0088】
【化11】
【0089】
【化12】
【0090】
一般式(m-1)~(m-3)中、a、b、c、x、y及びzは、それぞれ平均重合度であって、aは2~10、bは0~3、cは3~30の整数を示し、x=1に対しy+z=2~300((y+z)/x)であり、さらにy=1に対しz≧20(z/y)である。
R、R’及びR’’は、各々独立に、芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンに由来する2価の基であり、R’’’は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は両末端にカルボキシ基を有するオリゴマーに由来する2価の基である。
【0091】
上記変性ポリアミド樹脂の製造に用いられる芳香族ジアミンとしては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノジメチルベンゼン、ジアミノメシチレン、ジアミノニトロベンゼン、ジアミノジアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル、メチレンジアミン、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノフルオレン等が挙げられる。
上記変性ポリアミド樹脂の製造に用いられる脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヒドロキシプロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘプタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノジエチルアミン、ジアミノプロピルアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、アザペンタンジアミン、トリアザウンデカジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
上記変性ポリアミド樹脂の製造に用いられるフェノール性水酸基含有ジカルボン酸としては、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。
上記変性ポリアミド樹脂に用いられるフェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、両末端にカルボキシ基を有するオリゴマー等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、メチレン二安息香酸、チオ二安息香酸、カルボニル二安息香酸、スルホニル安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、ジ(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシりんご酸、(メタ)アクリルアミドコハク酸、(メタ)アクリルアミドりんご酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
(m)ポリアミド樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品の(m)ポリアミド樹脂としては、日本化薬株式会社製のポリアミド樹脂「BPAM-01」、「BPAM-155」(共に商品名)等が挙げられる。「BPAM-155」は、末端にアミノ基を有するゴム変性ポリアミドであり、エポキシ基との反応性を有するため、「BPAM-155」を含有する樹脂組成物(2)から得られる層間絶縁層は、めっき法によって形成した導体層との接着強度により優れ、表面粗さが小さくなる傾向にある。
【0094】
(m)ポリアミド樹脂の数平均分子量は、溶剤への溶解性と、ラミネート後の接着補助層の膜厚保持性の観点から、20,000~30,000が好ましく、22,000~29,000がより好ましく、24,000~28,000がさらに好ましい。
(m)ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、同様の観点から、100,000~140,000が好ましく、103,000~130,000がより好ましく、105,000~120,000がさらに好ましい。
【0095】
樹脂組成物(2)中における(m)ポリアミド樹脂の含有量は、樹脂組成物(2)の固形分換算100質量部に対して、1~15質量部が好ましく、3~12質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。(m)ポリアミド樹脂の含有量が上記下限値以上であると、めっき法によって形成した導体層との接着強度が優れる傾向にあり、上記上限値以下であると、酸化剤により層間絶縁層を粗化処理した際に、層間絶縁層の表面粗さが大きくなることが抑制される傾向にあり、リフロー耐熱性にも優れる傾向にある。
【0096】
((n)フェノキシ樹脂)
(n)フェノキシ樹脂は、特に限定されないが、上記(g)フェノキシ樹脂と同様のものが挙げられる。
樹脂組成物(2)中における(n)フェノキシ樹脂の含有量は、平滑な表面を有し、めっき法によって形成した導体層との接着性が高い層間絶縁層を得る観点、並びにめっきブリスターの発生を抑制する観点から、樹脂組成物(2)の固形分換算100質量部に対して、1~15質量部が好ましく、3~12質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。
【0097】
((o)硬化促進剤)
樹脂組成物(2)は、(o)硬化促進剤(以下、「(o)成分」ともいう)を含有することが好ましい。
(o)硬化促進剤としては、特に限定されないが、上記(d)硬化促進剤と同様のものが挙げられる。
樹脂組成物(2)中における(o)硬化促進剤の含有量は、平滑な表面を有し、めっき法によって形成した導体層との接着性が高い層間絶縁層を得る観点、並びにめっきブリスターの発生を抑制する観点から、樹脂組成物(2)の固形分換算100質量部に対して、0.01~1質量部が好ましく、0.03~0.5質量部がより好ましく、0.05~0.2質量部がさらに好ましい。
【0098】
樹脂組成物(2)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記樹脂組成物(1)が含有していてもよいその他の成分、有機溶媒等を含有していてもよい。
【0099】
<保護フィルム>
本実施形態の支持体付き樹脂フィルムは、樹脂組成物層の支持体とは反対側の面に保護フィルムを有していてもよい。保護フィルムは、樹脂フィルムへの異物等の付着及びキズ付きを防止する目的で使用され、通常、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムをラミネート、熱プレス等で回路基板等に積層する前に剥離される。
保護フィルムとしては、特に限定されないが、支持体と同様の材料を用いることができる。保護フィルムの厚さは、例えば、1~40μmである。
【0100】
<支持体付き樹脂フィルムの製造方法>
支持体付き樹脂フィルムは、例えば、支持体の一方の面上に、層間絶縁層を形成する樹脂組成物を塗布して、樹脂組成物層を形成することで製造することができる。
樹脂組成物の塗布は、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置を用いて行うことができる。塗工装置は目標とする膜厚に応じて適宜選択すればよい。
【0101】
層間絶縁層用樹脂組成物層と接着補助層とを有する支持体付き樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、支持体の一方の面上に、ワニス状の樹脂組成物(2)を塗工した後、加熱、熱風吹き付け等により乾燥して接着補助層を形成した後、該接着補助層の上に、ワニス状の樹脂組成物(1)を塗工した後、乾燥して、層間絶縁層用樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。
別の方法としては、例えば、上述の方法で支持体上に接着補助層を形成し、別途、層間絶縁層用樹脂組成物層を剥離可能なフィルムの上に形成し、支持体上に形成された接着補助層と、フィルム上に形成された層間絶縁層用樹脂組成物層とを、接着補助層が形成された面と層間絶縁層用樹脂組成物層が形成された面とが接するようにラミネートする方法等も挙げられる。この場合、層間絶縁層用樹脂組成物層を剥離可能なフィルムは、樹脂フィルムの保護フィルムとしての役割も果たすことができる。
【0102】
樹脂組成物(1)及び樹脂組成物(2)を塗工した後の乾燥条件は、特に限定されないが、乾燥後の樹脂組成物層中の有機溶媒の含有量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となる条件である。乾燥条件は、ワニス中の有機溶媒の量及び種類によっても異なるが、例えば、30~80質量%の有機溶媒を含むワニスであれば、50~150℃で3~10分間程度乾燥させることが好ましい。
得られる支持体付き樹脂フィルムは、ロール状に巻き取って、保存及び貯蔵することができる。
【0103】
[多層プリント配線板及びその製造方法]
本実施形態の多層プリント配線板は、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムを用いて形成される層間絶縁層を有するものである。
本実施形態の多層プリント配線板の製造方法は、本実施形態の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いて層間絶縁層を形成する工程を有する方法であり、該層間絶縁層を形成する工程が、本実施形態の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを、支持体を剥離しない状態で加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させる工程であることがより好ましい。
具体的には、下記工程(1)~(6)を含む製造方法が挙げられる。
【0104】
(1)本実施形態の支持体付き樹脂フィルムを回路基板の片面又は両面にラミネートする工程[以下、ラミネート工程(1)と称する]。
(2)ラミネートされた樹脂フィルムを熱硬化し、層間絶縁層を形成する工程[以下、絶縁層形成工程(2)と称する]。
(3)層間絶縁層を形成した回路基板に穴あけする工程[以下、穴あけ工程(3)と称する]。
(4)層間絶縁層の表面を酸化剤によって粗化処理する工程[以下、粗化処理工程(4)と称する]。
(5)粗化された層間絶縁層の表面にめっきにより導体層を形成する工程[以下、導体層形成工程(5)と称する]。
(6)導体層に回路形成する工程[以下、回路形成工程(6)と称する]。
【0105】
ラミネート工程(1)は、真空ラミネーターを用いて、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムを回路基板の片面又は両面にラミネートする工程である。真空ラミネーターとしては、市販品の真空ラミネーターを使用することができる。
支持体付き樹脂フィルムに保護フィルムが設けられている場合には、該保護フィルムを除去した後、樹脂組成物層が回路基板と接するように、加圧及び加熱しながら回路基板に圧着してラミネートすることができる。
ラミネートの条件としては、必要に応じて支持体付き樹脂フィルム及び回路基板を予備加熱(プレヒート)してから、圧着温度(ラミネート温度)を60~140℃、圧着圧力を0.1~1.1MPa(9.8×10~107.9×10N/m)、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で実施することができる。なお、ラミネートの方法は、バッチ式であっても、ロールでの連続式であってもよい。
【0106】
絶縁層形成工程(2)では、回路基板にラミネートされた支持体付き樹脂フィルムを支持体を付けたまま加熱し、樹脂組成物層を硬化させて、層間絶縁層を形成する。
加熱硬化の条件は、例えば、150~220℃で20~120分間の範囲で選択され、好ましくは160~200℃で30~120分間の範囲で選択される。また、加熱硬化は2段階に分けてもよく、150℃以下で5~30分間加熱した後、160~200℃で20~120分間の範囲で加熱し、硬化させてもよい。
【0107】
穴あけ工程(3)では、回路基板及び形成された層間絶縁層に、ドリル、レーザー、プラズマ、これらの組み合わせ等の方法により穴あけを行い、ビアホール、スルーホール等を形成する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
なお、支持体はこの工程(3)の前に剥離してもよく、工程(3)の後に剥離してもよい。穴あけ工程(3)の後に支持体を剥離すると、ビアホール周辺の層間絶縁層の平滑性が良好となる傾向にある。
【0108】
粗化処理工程(4)では、層間絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理を行う。また、層間絶縁層及び回路基板にビアホール、スルーホール等が形成されている場合には、これらを形成する際に発生する、所謂「スミア」を、酸化剤によって除去してもよい。粗化処理と、スミアの除去は同時に行うことができる。
酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらの中でも、ビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造における層間絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いることが好ましい。
粗化処理により、層間絶縁層の表面に凹凸のアンカーが形成する。なお、粗化処理後の層間絶縁層の算術平均粗さRaは、優れた導体層との接着強度を得る観点及び微細配線性の観点から、300nm以下が好ましく、100~250nmがより好ましく、150~230nmがさらに好ましい。
【0109】
導体層形成工程(5)では、粗化されて凹凸のアンカーが形成された層間絶縁層の表面に、めっきにより導体層を形成する。
めっき方法としては、無電解めっき法、電解めっき法等が挙げられる。めっき用の金属は、めっきに使用し得る金属であれば特に制限されない。
なお、先に導体層(配線パターン)とは逆パターンのめっきレジストを形成しておき、その後、無電解めっきのみで導体層(配線パターン)を形成する方法を採用することもできる。
導体層の形成後、150~200℃で20~90分間アニール処理を施してもよい。アニール処理を施すことにより、層間絶縁層と導体層との間の接着強度がさらに向上及び安定化する傾向にある。
回路形成工程(6)において、導体層をパターン加工し、回路形成する方法としては、サブトラクティブ法、セミアディティブ法(SAP:SemiAdditive Process)等の公知の方法を利用することができる。
【0110】
このようにして作製された導体層の表面を粗化してもよい。導体層の表面を粗化することにより、導体層に接する樹脂との密着性が向上する傾向にある。導体層を粗化するには、有機酸系マイクロエッチング剤である「CZ-8100」、「CZ-8101」、「CZ-5480」(全てメック株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0111】
本実施形態の多層プリント配線板に用いられる回路基板は、特に限定されないが、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面に、パターン加工された導体層(回路)が形成されたものが挙げられる。
また、導体層と層間絶縁層とが交互に層形成され、片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)を有する多層プリント配線板、上記回路基板の片面又は両面に、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムから形成された層間絶縁層を有し、その片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)を有するもの、本実施形態の支持体付き樹脂フィルムを張り合わせて硬化して形成した硬化物(層構造としては、接着補助層、層間絶縁層用樹脂組成物層、層間絶縁層用樹脂組成物層、接着補助層の順番となる)の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)を有するものなども本実施形態における回路基板に含まれる。
層間絶縁層の回路基板への接着性の観点からは、回路基板の導体層の表面は、黒化処理等により、予め粗化処理が施されていてもよい。
【実施例
【0112】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、支持体の表面における露出粒子の露出部の平均最大高さは、以下の方法により測定した。
【0113】
[露出粒子の露出部の平均最大高さ測定]
支持体の表面における露出粒子の露出部の平均最大高さは、非接触式の表面粗さ測定装置「Contour GT-X」(Bruker社製)を用いて、JIS B0601-1994に準拠して、任意の3箇所について最大高さを求め、これを平均した値とした。
【0114】
[支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムの製造]
(1)支持体の準備
支持体は、表1に示す支持体A1~A3を使用した。
【0115】
【表1】
【0116】
(2)層間絶縁層用樹脂ワニス(樹脂組成物(1))の調製
製造例1
表2に示す各成分とトルエンとを、固形分濃度が70質量%となるように配合した後、樹脂成分が溶解するまで撹拌した。次いで、ビーズミル処理によって分散し、層間絶縁層用樹脂ワニスB1を得た。
【0117】
【表2】
【0118】
表2に示す各成分の詳細について以下に示す。
[(a)成分]
・N673:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名、エポキシ当量:210g/eq、固形分濃度100質量%)
[(b)成分]
・BA230S75:ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザ社製、商品名、固形分濃度75質量%、MEKカット品)
[(c)成分]
・HPC-8000-65T:活性エステル硬化剤(DIC株式会社製、商品名、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、活性エステル当量:223g/eq、固形分濃度65質量%、トルエンカット品)
[(d)成分]
・硬化促進剤1:下記式(d-4)で表されるトリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物(固形分濃度100質量%)
【0119】
【化13】
【0120】
[(e)成分]
・ビニルシラン処理シリカ:ビニルシランカップリング剤処理を施した球状シリカ(体積平均粒径0.5μm、固形分濃度100質量%)
[(f)成分]
・ジシアンジアミド:(固形分濃度100質量%)
[(g)成分]
・YX1256B40:ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名、固形分濃度40質量%、MEKカット品)
[(h)成分]
・BYK330:シロキサン骨格を有する樹脂(ビックケミージャパン株式会社製、商品名、固形分濃度25質量%、キシレンカット品)
【0121】
(3)接着補助層用樹脂ワニス(樹脂組成物(2))の調製
製造例2~5
表3に示す各成分とジメチルアセトアミドとを、固形分濃度が20質量%となるように配合した後、樹脂成分が溶解するまで撹拌し、ビーズミル処理によって分散することによって、接着補助層用樹脂ワニスC1~C4を得た。
【0122】
【表3】
【0123】
表3に示す各成分の詳細について以下に示す。
[(i)成分]
・NC-3000-H:ビフェニルアラルキル構造含有のノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名、固形分濃度100質量%、エポキシ当量:289g/eq)
[(j)成分]
・BA230S75:ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザ社製、商品名、固形分濃度75質量%、MEKカット品)
[(k)成分]
・アエロジルR972:ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名、固形分濃度100質量%、比表面積:100m/g)
[(m)成分]
・BPAM-155:末端にアミノ基を有するゴム変性ポリアミド樹脂(日本化薬株式会社製、商品名、固形分濃度100質量%、数平均分子量:26,000、重量平均分子量:110,000)
[(n)成分]
・YX1256B40:ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名、固形分濃度40質量%、MEKカット品)
[(o)成分]
・硬化促進剤1:上記式(d-4)で表されるトリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物(固形分濃度100質量%)
【0124】
(4)支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムの製造
実施例1
上記で得た接着補助層用樹脂ワニスC1を、支持体A1の一方の面上にダイコーターを用いて塗布し、130℃で2分間乾燥させて、支持体上に厚さが4μmの接着補助層を形成した。次に、形成した接着補助層の面上に、層間絶縁層用樹脂ワニスB1をダイコーターを用いて塗布し、100℃で1.5分間乾燥させることで、厚さが36μmの層間絶縁層用樹脂組成物層を形成した。これにより、支持体、接着補助層、層間絶縁層用樹脂組成物層をこの順で有する支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを得た。
【0125】
実施例2~5、比較例1及び2
接着補助層用樹脂ワニス及び支持体の種類を表4に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを得た。
【0126】
[支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムの評価]
次に、各例で得られた支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム(以下、単に「樹脂フィルム」ともいう)について下記の各種評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0127】
(樹脂表面の粗大凹部の有無)
各例で得られた樹脂フィルムを200mm角に切り出した後、層間絶縁層用樹脂組成物層がプリント配線板の回路面と対向するように配置した後、ラミネートを行った。
なお、プリント配線板は35μm厚の銅層を有する銅張積層板「MCL-E-679FG」(日立化成株式会社製、商品名)に、サブトラクティブ法にて、残銅率0~95%の任意の回路加工が施されたものを使用した。また、ラミネート装置は真空加圧式ラミネーター「MVLP-500/600IIA」(株式会社名機製作所製、商品名)を用いて行い、110℃で30秒間真空引きをした後、0.5MPaで30秒間加圧した。その後、110℃で60秒間、0.5MPaでホットプレスを行った。
次に、室温に冷却後、支持体を付けたまま、130℃で20分間、次いで、180℃で40分間、防爆乾燥機中で硬化を行った後、支持体を剥離して評価基板を作製した。
次に、得られた評価基板をデスミア処理した。デスミア処理は、評価基板を、70℃に加温した膨潤液「スウェリングディップセキュリガントP」に10分間浸漬処理し、次に、80℃に加温した粗化液「コンセントレートコンパクトCP」に10分間浸漬処理し、引き続き、40℃に加温した中和液「リダクションセキュリガントP500」に5分間浸漬処理して中和を行った(各処理液はいずれもアトテックジャパン株式会社製)。
デスミア処理済み評価基板の樹脂表面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク株式会社製SU-3500)を用いて、10mm角の検査範囲において、1,000倍で観察して、粗大凹部の有無を確認した。なお、樹脂表面に、直径が2μm以上の凹部がないものを粗大凹部「無し」、2μm以上の凹部があるものを粗大凹部「有り」とした。なお、図2に、実施例1で得られた層間絶縁層の表面SEM写真を示す。
【0128】
(算術平均粗さ(Ra))
上記で得たデスミア処理済み評価基板の樹脂表面について、非接触式表面粗さ計(Bruker社製、商品名:Contour GT-X)を用いて、任意の3箇所について算術平均粗さ(Ra)を測定し、これらの平均値を求めた。
【0129】
(誘電正接)
各例で得られた樹脂フィルムを190℃で90分間加熱することで熱硬化させた後、支持体を剥離して硬化物を得た。該硬化物を、長さ80mm、幅2mmに切り出したものを試験片として、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製の「HP8362B」を用い、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。
【0130】
(リフロー耐熱性)
以下の手順(1)~(5)でリフロー耐熱性の評価を行った。
(1)回路基板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂の両面銅張積層板(日立化成株式会社製、商品名:MCL-E-700G(R)、銅箔の厚さ12μm、基材厚み0.4mm)の両面に、エッチングにより回路パターンを形成し、さらにメック株式会社製「メックエッチボンドC(登録商標)CZ8101」を用いて粗化処理を行った。さらに、メック株式会社製「メックエッチボンド(登録商標)CL-8301」を用いて防錆処理を行った。これにより、回路基板を作製した。なお、回路パターンの残銅率は80~100%のものを使用した。
(2)樹脂フィルムの積層方法
各例で作製した樹脂フィルムを、層間絶縁層用樹脂組成物層が回路基板の回路面側になるように配置して、バッチ式真空加圧ラミネーター「MVLP-500」(株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、(1)で作製した回路基板の両面に積層した。ラミネートは30秒間減圧して、気圧を15hPa以下とした後、100℃で30秒間、圧力0.5MPaで圧着させることにより行った。
(3)層間絶縁層の形成
(2)で得られた試料を室温に冷却した後、支持体(PETフィルム)を付けたまま、130℃で20分間、次いで、180℃で40分間加熱し、層間絶縁層用樹脂組成物層を硬化させて、層間絶縁層を形成した。その後、形成された層間絶縁層から支持体を剥離した。
(4)デスミア処理方法
(3)で得られた試料を、上記粗大凹部の有無評価で作製した評価基板と同じ方法で、デスミア処理を行った。
(5)無電解めっき及び電気めっき
クリーナーとして「クリーナーセキュリガント902」に60℃で5分間浸漬処理し、次いで、プリディップ液として「プリディップネオガントB」に25℃で2分間、シーダーとして「アクチベーターネオガント834」に40℃で5分間、還元液として「リデューサーネオガントWA」に30℃で5分間、無電解めっきとして「MSK-DK」に30℃で30分間浸漬処理を施し、200~250nmの無電解めっき層を形成した(各処理液はいずれもアトテックジャパン株式会社製)。さらに硫酸銅めっき浴にて、2A/dmの電流密度にて、めっき厚み25~30μmの電気めっき層を形成した。得られた電気めっき後の基板を40mm角に切り出し、評価基板を各10枚作製した。
リフロー装置は、株式会社タムラ製作所製のエアーリフローシステム(型番:TAR-30-366PN)を用い、リフロー装置内を最大で260℃になるように設定したものを用いた。上記で得られた評価基板を、リフロー装置を通過させ、膨れが発生するまでの通過回数を調べ、試料10枚の平均値を平均リフロー通過回数とした。
【0131】
【表4】
【0132】
表4から、実施例1~5で得られた樹脂フィルムにより形成された層間絶縁層は、樹脂表面に粗大凹部が見られず、良好な粗化形状を有しており、誘電正接も小さく、耐熱性についても十分であることが分かった。また、図2に示す実施例1で形成された層間絶縁層の表面SEM写真からも、粗大凹部が発生していないことが分かる。
一方、比較例1及び2で得られた樹脂フィルムにより形成された層間絶縁層は、樹脂表面に粗大凹部が発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムにより、支持体付きで硬化させた場合でも、形成される層間絶縁層の表面における粗大凹部の発生が抑制され、誘電正接が低く、耐熱性に優れるものとなる。そのため、本発明の支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルム及び該支持体付き層間絶縁層用樹脂フィルムを用いた多層プリント配線板は、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ等の電気製品、並びに自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機等の乗り物などに、幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 粗大凹部
2 層間絶縁層の表面
図1
図2