(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法、紫外線発光素子用基板の製造方法及び紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20240509BHJP
【FI】
H01L33/32
(21)【出願番号】P 2021034203
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】土屋 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅人
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-243968(JP,A)
【文献】特開2006-210660(JP,A)
【文献】特開2011-233861(JP,A)
【文献】特表2019-527477(JP,A)
【文献】特表2018-522426(JP,A)
【文献】特開2013-247362(JP,A)
【文献】特表2013-542608(JP,A)
【文献】特開2012-142385(JP,A)
【文献】特開2012-129438(JP,A)
【文献】特開2010-182936(JP,A)
【文献】特開2008-300562(JP,A)
【文献】特開2008-010766(JP,A)
【文献】特表2001-501778(JP,A)
【文献】国際公開第2016/007582(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0127353(US,A1)
【文献】特許第7368336(JP,B2)
【文献】特許第7319227(JP,B2)
【文献】特開2022-012558(JP,A)
【文献】特開2021-195299(JP,A)
【文献】川崎宏治、外2名,“深紫外窒化物系発光デバイス”,光学,2006年05月,第35巻,第5号,p.246-253
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
C23C 16/00 - 16/56
C30B 1/00 - 35/00
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板を準備する工程と、
前記支持基板の前記窒化ガリウムからなる前記表面に接合層を形成する工程と、
前記接合層上にAl
xGa
1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶を貼り合わせて種結晶層を有する貼り合わせ基板を形成する工程と、
前記貼り合わせ基板の前記種結晶層上に、少なくとも、Al
yGa
1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層と、AlGaN系活性層と、Al
zGa
1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層を含む紫外発光素子層をエピタキシャル成長させる工程とを有
し、
前記支持基板を、GaN層を備えたサファイヤ基板、GaN層を備えたSiC基板、GaN層を備えたSi基板、表面がGaN単結晶からなる材料であるエンジニアリング基板のいずれかとすることを特徴とする紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記貼り合わせ基板を形成する工程では、Al
xGa
1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶自立基板又はAl
xGa
1-xN(0.5<x≦1.0)エピタキシャル基板にイオン注入を行うことで内部に脆弱層を形成した後、前記支持基板と貼り合わせ、前記脆弱層で剥離することにより前記種結晶層を形成することを特徴とする請求項1に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記第一導電型クラッド層を成長する前に、前記種結晶層上にHVPE法によりエピタキシャル層を成長させる工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記紫外発光素子層側に紫外光に対して透明な恒久支持基板を接合する工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記紫外発光素子層側にHVPE法によりエピタキシャル層を成長させる工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法により得た紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハに対し、窒化ガリウムに吸収されるレーザー光を前記紫外発光素子層側から照射して、前記支持基板を分離して紫外線発光素子用基板を得ることを特徴とする紫外線発光素子用基板の製造方法。
【請求項7】
少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板と、前記支持基板の前記窒化ガリウムからなる前記表面上の接合層と、前記接合層上のAl
xGa
1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶層を含む貼り合わせ基板と、
前記貼り合わせ基板の前記種結晶層上の紫外発光素子層であって、少なくともAl
yGa
1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層と、AlGaN系活性層と、Al
zGa
1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層を含む紫外発光素子層を備え
、
前記支持基板は、GaN層を備えたサファイヤ基板、GaN層を備えたSiC基板、GaN層を備えたSi基板、表面がGaN単結晶からなる材料であるエンジニアリング基板のいずれかであることを特徴とする紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ。
【請求項8】
前記種結晶層が、波長230nmの光の光透過率が70%以上のものであることを特徴とする請求項
7に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ。
【請求項9】
前記AlGaN系活性層は、多重量子井戸(MQW)構造であり、Al、Ga、N以外の構成元素としてInを含み、前記Inの割合が1%未満のものであることを特徴とする請求項7
又は請求項
8のいずれか一項に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ。
【請求項10】
前記AlGaN系活性層は、25℃、0.2A/mm
2の電流注入時に発光するスペクトルのλ
pが290nmより短波長のものであることを特徴とする請求項7から請求項
9のいずれか一項に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ。
【請求項11】
前記紫外発光素子層側に紫外光に対して透明な恒久支持基板を備えることを特徴とする請求項7から請求項
10のいずれか一項に記載の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法、紫外線発光素子用基板の製造方法、紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ及び紫外線発光素子用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物系半導体材料を活用した深紫外線用発光ダイオードは、殺菌用光源として水銀レス、長寿命、コンパクト化、軽量化、省エネ等の観点から、近年、市場拡大が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-100528号公報
【文献】特開2020-35829号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】光学 246(2) 「深紫外窒化物系発光デバイス」川崎宏治
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれらの深紫外線用発光ダイオード用エピタキシャル基板は、サファイヤやSiCといった格子定数の異なる材料基板上に形成されている。その場合、格子ミスマッチによる欠陥が発生し、内部量子効率を落としエネルギー変換効率が低下する傾向にある。また、250nmより短波長の場合、その影響がさらに著しくなる。さらに、格子定数の比較的近いGaN単結晶自立基板はそのバンドギャップから光吸収基板となり外部量子効率を低下させる。AlN単結晶自立基板は非常に高品質なエピタキシャル用の基板として有望であるが製造が難しく、非常に高価な材料である。そのため、高出力、高効率の殺菌用深紫外発光ダイオードの普及に問題があった。
【0006】
安価で高品質な深紫外用発光ダイオードを作製するため、特許文献1には、セラミックスからなる基板上にAlN種結晶を貼り合わせた基板が開示されており、このような基板の上に深紫外用発光ダイオードを作製することができる。しかしながら、セラミックス基板のリフトオフが困難なためデバイス工程も含めてコストが高くなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、GaNを用いたLEDのレーザーリフトオフ技術が開示されているが、この方法ではサファイヤのように成長したエピタキシャル層よりもバンドギャップの大きい、つまり透明且つ自立性のある基板上への成長が大前提となり、エピタキシャルの結晶性が悪くなるサファイヤ基板や高価なAlNといった高価な基板に制約されるという問題があった。
【0008】
非特許文献1には、サファイヤ基板上にGaNをエピタキシャル成長させて、その上に紫外発光ダイオードを形成して、レーザーリフトオフする方法が開示されている。しかしながら、エピタキシャル成長でGaN層及び紫外発光ダイオードを作製すると格子定数差、熱膨張係数差に起因する貫通転位の発生により、発光効率が低下する問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、安価で高品質な、特に深紫外線領域(UVC;200~290nm)に適した紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板を準備する工程と、前記支持基板の前記窒化ガリウムからなる前記表面に接合層を形成する工程と、前記接合層上にAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶を貼り合わせて種結晶層を有する貼り合わせ基板を形成する工程と、前記貼り合わせ基板の前記種結晶層上に、少なくとも、AlyGa1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層と、AlGaN系活性層と、AlzGa1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層を含む紫外発光素子層をエピタキシャル成長させる工程とを有する紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0011】
このような紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法によれば、簡便なエピタキシャル成長で、転位密度が少なく高品質なエピタキシャルウェーハを低コストで得ることができ、エピタキシャル工程の生産性を向上させることができる。
【0012】
このとき、前記貼り合わせ基板を形成する工程では、AlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶自立基板又はAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)エピタキシャル基板にイオン注入を行うことで内部に脆弱層を形成した後、前記支持基板と貼り合わせ、前記脆弱層で剥離することにより前記種結晶層を形成する紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法とすることができる。
【0013】
このようにイオン注入を行うことで、比較的簡単に薄い種結晶層を貼り合わせることができる。また、種結晶層形成時に剥離したAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶自立基板やエピタキシャル基板は、回収して再研磨することにより、高価な化合物半導体単結晶基板を再利用できるため、低コスト化に寄与できる。
【0014】
このとき、前記第一導電型クラッド層を成長する前に、前記種結晶層上にHVPE法によりエピタキシャル層を成長させる工程を有する紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法とすることができる。
【0015】
これにより、エピタキシャル層が厚くなり、紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ全体を厚くすることができ、支持基板を剥離してもハンドリングが容易となる。
【0016】
このとき、前記紫外発光素子層側に紫外光に対して透明な恒久支持基板を接合する工程又は、前記紫外発光素子層側にHVPE法によりエピタキシャル層を成長させる工程を有する紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法とすることができる。
【0017】
これにより、紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ全体を厚くすることができ、ハンドリングが容易となる。
【0018】
このとき、上記の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法により得た紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハに対し、窒化ガリウムに吸収されるレーザー光を前記紫外発光素子層側から照射して、前記支持基板を分離して紫外線発光素子用基板を得る紫外線発光素子用基板の製造方法とすることができる。
【0019】
これにより、レーザーリフトオフを利用して支持基板を剥離できるので、デバイス工程を低コスト化することができる。また、支持基板を回収して、再研磨することにより、高価な化合物半導体単結晶基板を再利用できるので、深紫外線領域の発光ダイオード用エピタキシャル基板を安価に製造することができる。分離した支持基板は再利用可能となるため、より一層の低コスト化が可能となる。
【0020】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板と、前記支持基板の前記窒化ガリウムからなる前記表面上の接合層と、前記接合層上のAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶層を含む貼り合わせ基板と、前記貼り合わせ基板の前記種結晶層上の紫外発光素子層であって、少なくともAlyGa1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層と、AlGaN系活性層と、AlzGa1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層を含む紫外発光素子層を備える紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハを提供する。
【0021】
このような紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハは、転位密度が少なく高品質かつ安価なエピタキシャルウェーハである。また、このような紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハであれば、窒化ガリウムに吸収されるレーザーをエピタキシャル層側から照射することにより、種結晶層と種結晶層上のエピタキシャル層から支持基板を簡単に分離することができ、支持基板を再利用できるため経済的なものとなる。
【0022】
このとき、前記支持基板が、GaN自立基板、GaN層を備えたサファイヤ基板、GaN層を備えたSiC基板、GaN層を備えたSi基板、表面がGaN単結晶からなる材料であるエンジニアリング基板のいずれかからなるものである紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとすることができる。
【0023】
このとき、前記種結晶層が、波長230nmの光の光透過率が70%以上のものである紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとすることができる。
【0024】
これにより、発光効率の高い深紫外線発光素子とすることができる。
【0025】
このとき、前記AlGaN系活性層は、多重量子井戸(MQW)構造であり、Al、Ga、N以外の構成元素としてInを含み、前記Inの割合が1%未満のものである紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとすることができる。
【0026】
また、前記AlGaN系活性層は、25℃、0.2A/mm2の電流注入時に発光するスペクトルのλpが290nmより短波長のものである紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとすることができる。
【0027】
これにより、殺菌用光源として高品質な深紫外線発光素子とすることができる。
【0028】
このとき、前記紫外発光素子層側に紫外光に対して透明な恒久支持基板を備える紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとすることができる。
【0029】
これにより、エピタキシャルウェーハを厚くすることができハンドリングが容易なものとなる。
【0030】
このとき、上記の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハにおける前記支持基板が分離除去されたものである紫外線発光素子用基板とすることができる。
【0031】
これにより、分離除去された支持基板は再利用が可能となり、よりコスト低減に寄与できる安価なものとなる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法によれば、高品質な紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハを低コストで得ることが可能となる。本発明の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハによれば、安価で高品質なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法の概略フロー図を示す。
【
図2】本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの一例を示す。
【
図3】本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
上述のように、深紫外線領域(UVC;200~290nm)の発光ダイオード用に好適な、安価で高品質な紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ及びその製造方法が求められていた。
【0036】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板を準備する工程と、前記支持基板の前記窒化ガリウムからなる前記表面に接合層を形成する工程と、前記接合層上にAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶を貼り合わせて種結晶層を有する貼り合わせ基板を形成する工程と、前記貼り合わせ基板の前記種結晶層上に、少なくとも、AlyGa1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層と、AlGaN系活性層と、AlzGa1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層を含む紫外発光素子層をエピタキシャル成長させる工程とを有する紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法により、高品質な紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハを低コストで得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0037】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板と、前記支持基板の前記窒化ガリウムからなる前記表面上の接合層と、前記接合層上のAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶層を含む貼り合わせ基板と、前記貼り合わせ基板の前記種結晶層上の紫外発光素子層であって、少なくともAlyGa1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層と、AlGaN系活性層と、AlzGa1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層を含む紫外発光素子層を備える紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハにより、安価で高品質な紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとなることを見出し、本発明を完成した。
【0038】
以下、図面を参照して説明する。
【0039】
[紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ]
図2,3に、本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの一例を示す。
図2に示されるように、本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ100Aは、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板1と、支持基板1の窒化ガリウムからなる表面の上の接合層2と、接合層2上のAl
xGa
1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶層3を含む貼り合わせ基板4と、貼り合わせ基板4の種結晶層3の上の紫外発光素子層5を備えている。
図2の例では、紫外発光素子層5の詳細は省略してある。紫外発光素子層5は、
図3に示すように少なくともAl
yGa
1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層6と、AlGaN系活性層7と、Al
zGa
1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層8を含んでいる。
【0040】
また、後述するように、支持基板1を分離除去したものが、本発明に係る紫外線発光素子用基板である。分離除去された支持基板1は、再利用が可能となるため、より一層の低コスト化に寄与できるものとなる。
【0041】
まず、貼り合わせ基板4について説明する。支持基板1は、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなるものであれば特に限定されない。特に、1000℃を超える高温での処理において、溶融、剥離、破損しない耐熱性を有している基板を用いることができる。例えば、窒化ガリウム単結晶自立基板、GaN on サファイヤ基板、GaN on SiC基板、GaN on Si基板、GaNを主成分とする材料をセラミックスに貼り合わせたエンジニアリング基板を用いることができる。
【0042】
接合層2は、支持基板1と種結晶層3とを接合するための層である。例えば、SiO2などの透明接合層や、支持基板表面のGaNをプラズマやアルゴンイオンエッチングによって、活性化して得られるアモルファス層を接合層2とすることができる。このとき、種結晶層3側のAlGaN表面にも、プラズマやアルゴンイオンエッチングによって、活性化して得られるアモルファス層を設けてもよい。種結晶層3は、AlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる層である。
【0043】
次に、紫外発光素子層5の構成について、
図3を参照しながら詳細に説明する。なお、
図3の紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ100Bの例では、貼り合わせ基板4の詳細は省略してある。紫外発光素子層5は、少なくともAl
yGa
1-yN(0.5<y≦1.0)からなる第一導電型クラッド層6と、AlGaN系活性層7と、Al
zGa
1-zN(0.5<z≦1.0)からなる第二導電型クラッド層8を含んでいる。
【0044】
第一導電型クラッド層6はAlGaN系活性層7へ電子を供給するためのものであり、特に膜厚は限定されないが、例えば2.5μmとすることができる。AlGaN系活性層7は、特に限定されないが、例えば井戸層9と障壁層10が交互に積層された多重量子井戸構造(MQW)を有するものが好ましい。第二導電型クラッド層8は、AlGaN系活性層7へ正孔を供給するためのものである。
【0045】
さらに、電極との接触抵抗を低減するため、p型AlGaNからなるコンタクト層11を設けることもできる。この場合、第二導電型クラッド層8の導電型に合わせて、P/Nを逆転した層配置でもよい。
【0046】
なお、貼り合わせ基板4の種結晶層3の上には厚膜のエピタキシャル層を設けてもよい。また、この厚膜のエピタキシャル層に代えて、紫外発光素子層5の上に厚膜のエピタキシャル層や紫外光に対して透明な恒久支持基板を設けてもよい。このように厚膜のエピタキシャル層や恒久支持基板を設けると、紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハとして一定の厚さが確保できるため、支持基板1を分離除去した場合でもハンドリングが容易なものとなる。
【0047】
また、貼り合わせ基板4上にホモエピタキシャル層12を設けてもよい。ホモエピタキシャル層12は結晶品質を向上させるためのものであり、例えば、100nm~300μmの範囲で設定することができる。ホモエピタキシャル層12は、デバイスの設計により省略することもできる。
【0048】
[紫外線発光素子用基板]
本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハから支持基板を分離除去したものが、本発明に係る紫外線発光素子用基板となる。
【0049】
[紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハの製造方法]
図1に、本発明に係る紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ及び紫外線発光素子用基板の製造方法の概略フロー図を示す。
【0050】
(貼り合わせ基板の形成)
まず、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板を準備する(S1)。次に、支持基板の窒化ガリウムからなる表面に接合層を形成する(S2)。接合層の形成方法は特に限定されないが、例えばSiO2などの透明接合層を成膜する方法が挙げられる。あるいは、GaN表面をプラズマやアルゴンイオンエッチングによって、活性化してアモルファス層を形成する方法が挙げられる。このとき、種結晶層側のAlGaNの表面も同様にしてアモルファス層を形成することが好ましい。
【0051】
接合層上にAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶を貼り合わせて種結晶層を有する貼り合わせ基板を形成する(S3)。貼り合わせ基板は、接合層を形成した支持基板と種結晶を貼り合わせることで作製する。このとき、例えば、加圧、加熱する方法で接合することができる。
【0052】
また、AlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶層は、AlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶自立基板、あるいはAlxGa1-xNエピタキシャル基板にイオン注入を行い、脆弱層を形成しておき、支持基板と貼り合わせた後に剥離することによって作製することができるが、この方法に限定されない。このようにして、少なくとも一方の表面が窒化ガリウムからなる支持基板と、支持基板の窒化ガリウムからなる表面上の接合層と、接合層上のAlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶層を含む貼り合わせ基板を得ることができる。
【0053】
(反応炉への導入)
貼り合わせ基板をMOVPE装置の反応炉内に導入する。貼り合わせ基板を反応炉に導入する前に、薬品によりクリーニングを行うことが好ましい。貼り合わせ基板を反応炉内に導入後、窒素などの高純度不活性ガスで炉内を満たして、炉内のガスを排気する。
【0054】
(貼り合わせ基板表面のクリーニング)
まず、貼り合わせ基板を反応炉内で加熱して、基板の表面をクリーニングすることが好ましい。クリーニングを行う温度は、貼り合わせ基板表面の温度で1000℃から1200℃の間とすることができるが、特に1050℃でクリーニングを行うことで清浄な表面を得ることができる。クリーニングは、炉内の圧力が減圧された後に実施することが好ましく、炉内圧力は30mbar(30×102Pa)から200mbar(200×102Pa)の間とすることができる。反応炉内には、水素、窒素、アンモニアなどからなる混合ガスを供給した状態で10分程度クリーニングを行う。これらの条件は一例であり、特に限定されるものではない。
【0055】
(厚膜エピタキシャル層の成長)
種結晶層上には、第一導電型クラッド層を成長する前にHVPE法により厚膜のエピタキシャル層を成長させてもよい(S4)。
【0056】
(ホモエピタキシャル層の成長)
また、第一導電型クラッド層を成長する前にホモエピタキシャル層を形成する(S5)ことも好ましい。この工程では、規定の炉内圧力及び基板温度において、原料であるAl、Ga、N源となるガスを導入することによって、貼り合わせ基板上に、AlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)をエピタキシャル成長させる。この工程では、例えば炉内圧力は50mbar(50×102Pa)、基板温度1120℃で成長させることができる。Al源としてはトリメチルアルミニウム(TMAl)、Ga源としてはトリメチルガリウム(TMGa)、N源としてはアンモニア(NH3)を用いることができる。また、所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl、TMGaの流量を設定する。TMAl、TMGa、NH3のキャリアガスは例えば水素を使用することができる。これらの条件は一例であり、特に限定されるものではない。
【0057】
(紫外発光素子層の成長)
次に、種結晶層上に(ホモエピタキシャル層を形成した場合にはホモエピタキシャル層の上に)、紫外発光素子層をエピタキシャル成長により形成する(S6)。例えば、以下のようにして紫外発光素子層を形成することができる。
【0058】
(第一導電型クラッド層の成長)
この工程は、種結晶層上に第一導電型クラッド層を成長する工程である。この工程では、反応炉内を規定の炉内圧力、基板温度に保持した後、原料のTMAl、TMGa、NH3及びn型導電性にするための不純物ガスを、炉内に供給して第一導電型クラッド層を成長する。第一導電型クラッド層は、AlyGa1-yN(0.5<y≦1.0)で表される組成で自由に作製することができる。
【0059】
この工程の規定の炉内圧力は例えば75mbar(75×102Pa)、基板温度は1100℃とすることができる。所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl、TMGaの流量を設定する。
【0060】
n型導電性にするための不純物ガスは、モノシラン(SiH4)を用いることができる。原料ガスを輸送するためのキャリアガスは、水素を用いることができる。不純物ガスとして、テトラエチルシランを用いてもよい。
【0061】
(AlGaN系活性層の成長)
この工程は、第一導電型クラッド層の上にAlGaN系活性層を成長する工程である。この工程では、反応炉内を規定の炉内圧力、基板温度に保持した後、原料のTMAl、TMGa、NH3を炉内に供給してAlGaN系活性層を成長する。AlGaN系活性層は、一例として障壁層Al0.75Ga0.25N、井戸層Al0.6Ga0.4Nとすることができる。また、この工程の規定の炉内圧力は例えば75mbar(75×102Pa)、基板温度は1100℃とすることができる。各層で所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl、TMGaの流量を設定する。これらの値は、一例であり特に限定されるものではない。
【0062】
(第二導電型クラッド層の成長)
この工程は、AlGaN系活性層の上に第二導電型クラッド層を成長する工程である。この工程では、反応炉内を規定の炉内圧力、基板温度に保持した後、原料のTMAl、TMGa、NH3、及びp型導電性にするための不純物原料を、炉内に供給して第二導電型クラッド層を成長する。第二導電型クラッド層は、AlzGa1-zN(0.5<z≦1.0)で表される組成で自由に作製することができる。また、組成を変えて複数層形成されてもよい。
【0063】
この工程の規定の炉内圧力は例えば75mbar(75×102Pa)、基板温度は1100℃とすることができる。所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl、TMGaの流量を設定する。これらの値は、一例であり特に限定されるものではない。p型導電性にするための不純物原料は、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いることができる。原料ガスを輸送するためのキャリアガスは、水素とすることができる。
【0064】
(p型AlGaNコンタクト層の成長)
この工程は、第二導電型クラッド層の上にp型AlGaNコンタクト層を成長する工程である。この工程では、反応炉内を規定の炉内圧力、基板温度に保持した後、原料のTMAl、TMGa、NH3、及びp型導電性にするための不純物原料を、炉内に供給してp型AlGaNコンタクト層を成長する。この工程の規定の炉内圧力は例えば75mbar(75×102Pa)、基板温度は1100℃とすることができる。これらの値は、一例であり特に限定されるものではない。p型導電性にするための不純物原料は、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いることができる。原料ガスを輸送するためのキャリアガスは、水素とすることができる。
【0065】
(活性化アニール工程)
この工程では、加熱炉内で所定の温度、時間でウェーハをアニールすることで、第二導電型クラッド層、p型AlGaNコンタクト層のp型不純物を活性化させる。加熱炉内での活性化は、例えば750℃、10分とすることができる。
【0066】
(厚膜エピタキシャル層等の形成)
紫外発光素子層の上には、紫外光に対して透明な恒久支持基板を接合(S7)してもよい。また、HVPE法により厚膜のエピタキシャル層を成長させてもよい(S8)。
【0067】
(レーザーによるエピタキシャル層の剥離)
例えば、深紫外発光ダイオードなどの紫外線発光素子用基板を作製するために、エピタキシャル層、種結晶を透過し、且つGaNに吸収されるレーザー光を第二導電型クラッド層側(紫外発光素子層側)から照射して、種結晶層と種結晶上のエピタキシャル層から前記の支持基板を分離する(S9)。照射したレーザー光は支持基板表面の窒化ガリウムで吸収され、発生した熱により支持基板が剥離し、分離される。
【0068】
(種基板、支持基板の再生)
貼り合わせ基板の作製時(S3)に、AlxGa1-xN(0.5<x≦1.0)単結晶からなる種結晶を貼り合わせ、種結晶層を剥離して残った単結晶及び剥離された支持基板を再生して使用することにより、高価な化合物半導体基板を再利用できるので、低コスト化することができる。
【0069】
本発明に係る製造方法により、特に深紫外線領域の発光ダイオードに適した紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ及び紫外線発光素子用基板を作製することで、簡便なエピタキシャル成長で、転位密度が少なく高品質な基板を得ることができ、エピタキシャル工程の生産性を向上させることができる。また、レーザーリフトオフを利用して基板を剥離できるので、デバイス工程を低コスト化することができる。また、AlN単結晶基板や窒化ガリウム基板を回収して、再研磨することにより、高価な化合物半導体単結晶基板を再利用できるので、深紫外線領域の発光ダイオードなどの紫外線発光素子用基板を安価に製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
(実施例1)
窒化ガリウム自立基板上に、SiO2からなる接合層を2μm成長し、AlN単結晶からなる種結晶を貼り合わせた基板を準備した。予め、AlN単結晶の窒素面からイオン注入によって、脆弱層を形成して、接合、剥離することによって、前記接合層上に200nmの厚さのAlN単結晶層を形成した。その後、剥離されて残ったAlN単結晶層の表面を研磨し残存した脆弱層を取り除いて良好な種結晶層表面を得た。なお、剥離後のAlN単結晶は、回収し、再研磨して種結晶層形成用基板として再利用した。
【0071】
上記のようにして得た貼り合わせ基板上に、HVPE法でAlNを150μm成長し、成長後の基板を取り出した。AlN成長後の基板についてXRDロッキングカーブ測定を行ったところ、AlN(0002) 42arcsec、AlN(10-12) 91arcsecであり、結晶性が良好なテンプレートが得られていることが分かった。
【0072】
次に、テンプレート上にMOVPE法で、n型Al0.95Ga0.05Nを2.5μm成長した。その上に、3層の障壁層(Al0.75Ga0.25N)、井戸層(Al0.6Ga0.4N)からなる量子井戸構造を形成した。その後、p型Al0.95Ga0.05N層とp型AlGaNコンタクト層を形成した。p型AlGaNコンタクト層を形成後、MOVPE炉内を窒素雰囲気にして、750℃で10分間、活性化アニールを行った。
【0073】
p型AlGaNコンタクト層側から308nmの波長のレーザーを入射することによって、窒化ガリウム自立基板の表面でレーザーを吸収させて、発生した熱により窒化ガリウム自立基板と、エピタキシャル層、種結晶層、接合層を剥離した。
【0074】
窒化ガリウム自立基板剥離後のエピタキシャル層、種結晶層、接合層からなる基板を溶液によりエッチングすることで、接合層であるSiO2と窒化ガリウム、Gaの残渣を除去して、深紫外発光ダイオードに好適なエピタキシャル基板が得られた。なお、剥離後の窒化ガリウム単結晶は回収し、再研磨して支持基板として再利用した。
【0075】
(実施例2)
窒化ガリウム(GaN)自立基板上に、常温接合によってAlN単結晶からなる種結晶を貼り合わせた基板を準備した。すなわち、AlN単結晶の窒素面からイオン注入によって、脆弱層を形成した後、AlN単結晶、GaN自立基板表面をアルゴンイオンエッチングによって、活性化してアモルファス層(接合層)を形成し、加圧する方法で接合し、AlN単結晶を脆弱層で剥離して貼り合わせ基板を得た。なお、剥離後のAlN単結晶は、回収し、再研磨して種結晶層形成用基板として再利用した。
【0076】
上述の貼り合わせ基板上にMOVPE法を用いてn型Al0.95Ga0.05Nを2.5μm成長した。その上に、3層の障壁層(Al0.75Ga0.25N)、井戸層(Al0.6Ga0.4N)からなる量子井戸構造を形成した。その後、p型Al0.95Ga0.05N層とp型AlGaNコンタクト層を形成した。p型AlGaNコンタクト層を形成後、MOVPE炉内を窒素雰囲気にして、750℃で10分間、活性化アニールを行った。
【0077】
エピタキシャル成長後の基板に接合層としてSiO2を成膜し、同様にSiO2を成膜したサファイヤ基板と貼り合わせた。
【0078】
サファイヤ基板の裏面から308nmの波長のレーザーを入射することによって、窒化ガリウム自立基板の表面でレーザーを吸収させて、発生した熱により窒化ガリウム自立基板と、サファイヤ基板、接合層、エピタキシャル層、種結晶層を剥離して、深紫外発光ダイオードに好適なエピタキシャル基板が得られた。なお、剥離後の窒化ガリウム単結晶は回収し、再研磨して支持基板として再利用した。
【0079】
(実施例3)
活性化アニール工程まで、実施例2と同様の手順で、エピタキシャルウェーハを作製した。前記ウェーハのp型AlGaNコンタクト層上にHVPE法を用いて、AlGaNを150μm成長した。AlGaN層は、前記p型AlGaNコンタクト層と格子整合させるため、AlGaNコンタクト層と同じAl組成で作製した。
【0080】
前記基板のp型AlGaNコンタクト層側から308nmの波長のレーザーを入射することによって、窒化ガリウム自立基板の表面でレーザーを吸収させて、発生した熱により窒化ガリウム自立基板と、エピタキシャル層、種結晶層、接合層を剥離し、深紫外発光ダイオードに好適なエピタキシャル基板が得られた。なお、剥離後の窒化ガリウム単結晶は回収し、再研磨して支持基板として再利用した。
【0081】
(比較例1)
サファイヤ基板をMOVPE装置の反応炉内に導入し、1030℃に加熱して水素を供給した状態で10分間クリーニングを行った。規定の炉内圧力及び基板温度において、原料であるAl、Ga、N源となるガスを導入することによって、サファイヤ基板上に、エピタキシャル層の結晶性を改善するためのバッファー層を3μm成長した。第一導電型クラッド層を成長する工程~活性化アニール工程は、実施例1の方法と同じ製造方法で、深紫外線領域の発光ダイオード用エピタキシャル基板を作製した。
【0082】
実施例1-3と比較例1で作製された深紫外発光ダイオード用エピタキシャル基板について、XRDロッキングカーブ測定を行った結果を表1に示す。表1に示すとおり、実施例の深紫外発光ダイオード用エピタキシャル基板のAlN(0002)のXRDロッキングカーブのFWHMが35~60arcsecであるのに対して、比較例のFWHMは562arcsecであり、実施例は比較例1に比べて結晶性の良いエピタキシャル基板を得ることができた。
【0083】
【0084】
(比較例2)
比較例1の方法から、バッファー層を成長する工程を、500℃で低温GaNを成長した後、1100℃に昇温してGaN層を100nm成長する方法に変更して、レーザーリフトオフの剥離層をエピタキシャル成長で作製する深紫外線領域の発光ダイオード用エピタキシャル基板を作製した。エピタキシャル基板をMOVPE装置から取り出したところ、エピタキシャル層に全面クラックが発生していた。また、貫通転位密度を比較したところ、実施例の方法では、3~7×104cm-1であったのに対して、比較例2の方法では、2×108cm-1であり、貫通転位密度が著しく増加した。
【0085】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、結晶性の良いエピタキシャル基板を低コストで得ることができた。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0087】
1…支持基板、 2…接合層、 3…種結晶層、 4…貼り合わせ基板、
5…紫外発光素子層、 6…第一導電型クラッド層、 7…AlGaN系活性層、
8…第二導電型クラッド層、 9…井戸層、 10…障壁層、 11…コンタクト層、
12…ホモエピタキシャル層、
100A、100B…紫外線発光素子用エピタキシャルウェーハ。