(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ブレ補正装置、交換レンズ、撮像装置及び像ブレ補正方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240509BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240509BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20240509BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240509BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240509BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B15/00 Q
G03B17/14
H04N23/55
H04N23/68
(21)【出願番号】P 2021175354
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2018054969の分割
【原出願日】2017-03-31
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 豪
(72)【発明者】
【氏名】小野 佳子
(72)【発明者】
【氏名】三家本 英志
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044876(JP,A)
【文献】特開2010-219821(JP,A)
【文献】特開2013-101320(JP,A)
【文献】特開2012-151910(JP,A)
【文献】特開2011-128536(JP,A)
【文献】特開2015-194712(JP,A)
【文献】特開2016-167801(JP,A)
【文献】特開2012-005112(JP,A)
【文献】特開2016-173517(JP,A)
【文献】特開2007-233166(JP,A)
【文献】特開2017-063340(JP,A)
【文献】国際公開第2008/133356(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G03B 15/00
G03B 17/14
H04N 23/55
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系により形成される被写体像のブレを補正するように光軸と交わる平面内で移動可能なブレ補正素子を備えるブレ補正装置において、
前記ブレ補正装置を備える機器の動きを検出する動き検出部と、
前記被写体像を撮像する撮像素子の撮像面上の位置を示す情報が入力される入力部と、
前記ブレ補正素子を移動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記動きのうちのX軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記位置が前記光学系の光軸から第1距離の位置であると、前記X軸と直交するY軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させ、前記X軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させず、前記位置が前記光学系の光軸から第1距離より離れた第2距離の位置であると、前記Y軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させるとともに、前記X軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させる、ブレ補正装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記動きのうち前記X軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記位置が前記光学系の光軸から前記第1距離の位置であると前記平面内の第1―1方向へ前記ブレ補正素子を駆動させ、前記位置が前記光学系の光軸から前記第2距離の位置であると前記平面内の第2-1方向へ前記ブレ補正素子を駆動し、前記位置が前記光学系の光軸から前記第2距離より離れた第3距離の位置であると前記平面内の第3-1方向へ前記ブレ補正素子を移動させ、
前記第1-1方向と前記第3-1方向とのなす角は、前記第1-1方向と前記第2-1方向とのなす角よりも大きい、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記位置が前記光学系の光軸上以外であると、前記動きのうちの前記X軸周りの回転方向成分の動きに基づいて、
前記Y軸方向の異なる位置へ前記ブレ補正素子を移動させるとともに、前記X軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させる請求項1または2に記載のブレ補正装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記位置が前記光学系の光軸上以外であると、前記動きに前記Y軸周りの回転方向成分が含まれなくても、
前記Y軸方向の異なる位置へ前記ブレ補正素子を移動させるとともに、前記
X軸方向
の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させる請求項1~3のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記光学系の焦点距離が第1値より短いと、前記動きのうちの前記X軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記Y軸方向と前記X軸方向とへ変位するように前記ブレ補正素子を移動させ、前記光学系の焦点距離が第1値より長いと、前記動きのうちの前記X軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記Y軸方向へ変位し前記X軸方向へは変位しないように前記ブレ補正素子を移動させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記位置から光軸上までの距離が所定の値より遠いと、前記動きのうちの前記X軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記Y軸方向と前記X軸方向とへ変位するように前記ブレ補正素子を移動させ、前記位置から光軸上までの距離が前記所定の値以下であると、前記動きのうちの前記X軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記Y軸方向へ変位し前記X軸方向へは変位しないように前記ブレ補正素子を移動させる、請求項1~5のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項7】
前記位置と前記動きとに基づいて、前記動きにより生じ、前記位置における前記被写体像の移動を算出する算出部を備える請求項1~6のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記動きに基づく前記被写体像の移動の算出に、前記光学系の光軸から前記位置までの距離及び前記光学系の焦点距離を用いる請求項7に記載のブレ補正装置。
【請求項9】
前記位置は、前記被写体像の合焦検出に用いられる位置である請求項1~8のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項10】
前記位置は、前記撮像素子上に設定された複数のフォーカスエリアから選択されたフォーカスエリアの位置である請求項1~9のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項11】
前記位置は、前記被写体像の被写体認識情報に基づいて選択された位置である請求項1~10のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項12】
前記ブレ補正素子は、前記被写体像を撮像する撮像素子である、請求項1~11のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項13】
前記ブレ補正素子は、前記光学系の少なくとも一部である、請求項1~11のいずれか一項に記載のブレ補正装置。
【請求項14】
請求項13に記載の前記ブレ補正装置を備え、前記撮像素子を備える撮像装置に取り付け可能な交換レンズであって、
前記交換レンズは、前記位置が前記光学系の光軸と交わる位置であるときの前記動きに基づく前記被写体像の移動と、前記位置が前記光軸と交わる位置以外の位置であるときの前記動きに基づく前記被写体像の移動との比を前記撮像素子から受信する交換レンズ。
【請求項15】
請求項12に記載のブレ補正装置を備える撮像装置。
【請求項16】
光学系により撮像素子上に形成される被写体像の像ブレ補正方法であって、
振れを検出し、
前記被写体を撮像する撮像素子上の位置情報を取得し、
ブレ補正装置を備える機器の動きのうちのX軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、
前記位置情報が示す位置が前記光学系の光軸から第1距離の位置であると、前記X軸方向と直交するY軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させ、前記X軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させず、前記位置情報が示す位置が前記光学系の光軸から第1距離より離れた第2距離の位置であると、前記Y軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させるとともに、前記X軸方向の異なる位置へ前記
ブレ補正素子を移動させる像ブレ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正装置、交換レンズ、撮像装置及び像ブレ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラの振れによる像ブレを抑える技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、画面の中央部における像ブレが補正されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、ブレ補正装置は、光学系により形成される被写体像のブレを補正するように光軸と交わる平面内で移動可能なブレ補正素子を備えるブレ補正装置において、
前記ブレ補正装置を備える機器の動きを検出する動き検出部と、前記被写体像を撮像する撮像素子の撮像面上の位置を示す情報が入力される入力部と、前記ブレ補正素子を移動させる駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記動きのうちのX軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記位置が前記光学系の光軸から第1距離の位置であると、前記X軸と直交するY軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させ、前記X軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させず、前記位置が前記光学系の光軸から第1距離より離れた第2距離の位置であると、前記Y軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させるとともに、前記X軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させる。
第2の態様によれば、交換レンズは、前記ブレ補正装置を備え、前記撮像素子を備える撮像装置に取り付け可能な交換レンズであって、前記交換レンズは、前記位置が前記光学系の光軸と交わる位置であるときの前記動きに基づく前記被写体像の移動と、前記位置が前記光軸と交わる位置以外の位置であるときの前記動きに基づく前記被写体像の移動との比を前記撮像素子から受信する。
第3の態様によれば、撮像装置は、上記のブレ補正装置を備える。
第4の態様によれば、ブレ補正装置は、光学系により形成される被写体像のブレを補正するように光軸と交わる平面内で移動可能なブレ補正素子を備えるブレ補正装置において、
前記ブレ補正装置を備える機器の動きを検出する動き検出部と、
前記被写体像を撮像する撮像素子上の位置を示す情報が入力される入力部と、
前記位置と前記動きとに基づいて、前記ブレ補正素子を移動させる駆動部と、
を備え、前記駆動部は、前記動きがX軸周りの回転方向の動きである場合に、前記位置が前記光学系の光軸から第1距離の位置であると、前記平面内の第1方向へ前記撮像素子を移動させ、前記位置が前記光学系の光軸から第1距離より離れた第2距離の位置であると、第1方向と異なる第2方向へ前記撮像素子を移動させる。
第5の態様によれば、像ブレ補正方法は、光学系により撮像素子上に形成される被写体像の像ブレ補正方法であって、振れを検出し、前記被写体を撮像する撮像素子上の位置情報を取得し、ブレ補正装置を備える機器の動きのうちのX軸回りの回転方向成分の動きに基づいて、前記位置情報が示す位置が前記光学系の光軸から第1距離の位置であると、前記X軸方向と直交するY軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させ、前記X軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させず、前記位置情報が示す位置が前記光学系の光軸から第1距離より離れた第2距離の位置であると、前記Y軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させるとともに、前記X軸方向の異なる位置へ前記撮像素子を移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1の実施の形態によるカメラの要部構成を示す図である。
【
図3】角速度の検出方向と像面における像ブレを説明する模式図である。
【
図5】撮像画面に形成されたフォーカスエリアを例示する図である。
【
図6】複数の候補から1つの代表位置を定める例を説明する図である。
【
図7】第1の実施の形態の変形例2を説明する図である。
【
図8】角速度の検出方向と像面における像ブレを説明する模式図である。
【
図9】歪曲収差が生じている例を説明する図である。
【
図10】第3の実施の形態によるカメラの要部構成を示す図である。
【
図11】交換レンズのブレ補正部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態による像ブレ補正装置を搭載する撮像装置について、図面を参照して説明する。撮像装置の一例として、レンズ交換式のデジタルカメラ(以下、カメラ1と称する)を例示するが、カメラ1は、カメラボディ2にミラー24を備えた一眼レフタイプでも、ミラー24を備えないミラーレスタイプでもよい。
また、カメラ1を、交換レンズ3とカメラボディ2とを一体にしたレンズ一体型として構成してもよい。
さらにまた、撮像装置はカメラ1に限らず、撮像センサを備えたレンズ鏡筒や、撮像機能を備えたスマートフォン等であってもよい。
【0007】
<カメラの要部構成>
図1は、カメラ1の要部構成を示す図である。カメラ1は、カメラボディ2と交換レンズ3とで構成される。交換レンズ3は、不図示のマウント部を介してカメラボディ2に装着される。交換レンズ3がカメラボディ2に装着されると、カメラボディ2と交換レンズ3とが電気的に接続され、カメラボディ2と交換レンズ3との間で通信が可能になる。
なお、カメラボディ2と交換レンズ3との通信を、無線通信によって行ってもよい。
【0008】
図1において、被写体からの光は、Z軸マイナス方向に向かって入射する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面手前方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する上方向をY軸プラス方向とする。以降のいくつかの図においては、
図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
【0009】
<交換レンズ>
交換レンズ3は、撮像光学系(結像光学系)を有し、カメラボディ2に設けられた撮像素子22の撮像面上に被写体像を結像する。撮像光学系は、ズーム光学系31と、フォーカス(焦点調節)光学系32と、ブレ補正光学系33と、絞り34とを含む。交換レンズ3はさらに、ズーム駆動機構35と、フォーカス駆動機構36と、ブレ補正駆動機構37と、絞り駆動機構38と、振れセンサ(動き検出部、振れ検出部)39とを有する。
【0010】
ズーム駆動機構35は、カメラボディ2のCPU21から出力される信号に基づき、ズーム光学系31を光軸L1の方向に進退移動させて撮像光学系の倍率を調節する。CPU21から出力される信号には、ズーム光学系31の移動方向や移動量、移動速度などを示す情報が含まれる。
【0011】
フォーカス駆動機構36は、カメラボディ2のCPU21から出力される信号に基づき、フォーカス光学系32を光軸L1の方向に進退移動させて撮像光学系の焦点調節を行う。焦点調節時にCPU21から出力される信号には、フォーカス光学系32の移動方向や移動量、移動速度などを示す情報が含まれる。
また、絞り駆動機構38は、カメラボディ2のCPU21から出力される信号に基づき、絞り34の開口径を制御する。
【0012】
ブレ補正駆動機構37は、カメラボディ2のCPU21から出力される信号に基づき、光軸L1と交差する平面内で、撮像素子22の撮像面上の被写体像のブレ(像ブレと称する)を打ち消す向きにブレ補正光学系33を進退移動させて像ブレを抑える。CPU21から出力される信号には、ブレ補正光学系33の移動方向や移動量、移動速度などを示す情報が含まれる。
【0013】
振れセンサ39は、手振れ等によってカメラ1が揺動する場合のカメラ1の振れを検出する。振れセンサ39は、角速度センサ39aおよび加速度センサ39bによって構成される。像ブレは、カメラ1の振れによって生じるものとする。
【0014】
角速度センサ39aは、カメラ1の回転運動によって発生する角速度を検出する。角速度センサ39aは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸、Z軸と平行な軸の各軸回りの回転をそれぞれ検出し、検出信号をカメラボディ2のCPU21へ送出する。角速度センサ39aは、ジャイロセンサとも称される。
【0015】
また、加速度センサ39bは、カメラ1の並進運動で発生する加速度を検出する。加速度センサ39bは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸、およびZ軸と平行な軸方向の加速度をそれぞれ検出し、検出信号をカメラボディ2のCPU21へ送出する。加速度センサ39bは、Gセンサとも称される。
本例では、振れセンサ39を交換レンズ3に設ける場合を例示するが、振れセンサ39をカメラボディ2に設けてもよい。また、振れセンサ39をカメラボディ2と交換レンズ3の双方に設けてもよい。
【0016】
<カメラボディ>
カメラボディ2は、CPU21と、撮像素子22と、シャッター23と、ミラー24と、AFセンサ25と、ブレ補正駆動機構26と、信号処理回路27と、メモリ28と、操作部材29と、液晶表示部30とを備える。
【0017】
CPU21は、CPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等により構成され、制御プログラムに基づいてカメラ1の各部を制御する。CPU21は、ブレ補正部(補正量算出部)21aを含む。
【0018】
ブレ補正部21aは、カメラ1の回転運動や、カメラ1の並進移動に伴う像ブレを算出する。CPU21は、ブレ補正部21aによる演算結果に基づいて、ブレ補正駆動機構(ブレ補正駆動部)37によってブレ補正光学系33を移動させたり、ブレ補正駆動機構(ブレ補正駆動部)26によって撮像素子22を移動させたりする。
【0019】
第1の実施の形態では、撮像光学系を構成する交換レンズ3のブレ補正光学系33、または、撮像素子22を移動させることによって像ブレを抑える。このような像ブレの抑制は、像ブレ補正とも称される。像ブレ補正の詳細については後述する。
【0020】
図1の撮像素子22は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサによって構成される。撮像素子22は、撮像光学系を通過した光束を撮像面で受光し、被写体像を光電変換(撮像)する。光電変換により、撮像素子22の撮像面に配置されている複数の画素のそれぞれで、受光量に応じて電荷が生成される。生成された電荷に基づく信号は、撮像素子22から読み出されて信号処理回路27へ送られる。
【0021】
シャッター23は、撮像素子22の露光時間を制御する。なお、撮像素子22の露光時間は、撮像素子22における電荷蓄積時間を制御する方式(いわゆる電子シャッター制御)によっても制御可能に構成されている。シャッター23は、不図示のシャッター駆動部によって開閉駆動される。
【0022】
半透過のクイックリターンミラー(以下ミラーと呼ぶ)24は、不図示のミラー駆動部によって駆動されることにより、ミラー24が光路上に移動したダウン位置(
図1に例示)と、ミラー24が光路外に退避するアップ位置との間を移動する。例えば、レリーズ前は、ダウン位置に移動したミラー24によって被写体光が上方(Y軸プラス方向)に設けられた不図示のファインダー部へと反射される。また、ミラー24を透過した被写体光の一部は、サブミラー24aによって下方(Y軸マイナス方向)へ折り曲げられ、AFセンサ25へ導かれる。
レリーズスイッチ押下直後は、ミラー24がアップ位置へ回動される。これにより、被写体光がシャッター23を介して撮像素子22へ導かれる。
【0023】
AFセンサ25は、交換レンズ3の撮像光学系による焦点調節状態を検出する。CPU21は、AFセンサ25による検出信号を用いて公知の位相差方式の焦点検出演算を行う。CPU21は、この演算によって撮像光学系によるデフォーカス量を求め、デフォーカス量に基づいてフォーカス光学系32の移動量を算出する。CPU21は、算出したフォーカス光学系32の移動量を、移動方向および移動速度とともにフォーカス駆動機構36へ送信する。
【0024】
ブレ補正駆動機構26は、CPU21から出力される信号に基づいて、光軸L1と交差する平面内で像ブレを打ち消す向きに撮像素子22を進退移動させて、撮像素子22の撮像面上の像ブレを抑える。CPU21から出力される信号には、撮像素子22の移動方向や移動量、移動速度などを示す情報が含まれる。
【0025】
信号処理回路27は、撮像素子22から読み出された画像の信号に基づき、被写体像に関する画像データを生成する。また、信号処理回路27は、生成した画像データに対して所定の画像処理を行う。画像処理には、例えば、階調変換処理、色補間処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス処理等の公知の画像処理が含まれる。
【0026】
メモリ28は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)や、フラッシュメモリ等によって構成される。メモリ28には、例えば、振れセンサ39に設定する検出ゲインなどの調整値情報を記録する。メモリ28に対するデータの記録や、メモリ28からのデータの読み出しは、CPU21によって行われる。
【0027】
操作部材29は、レリーズボタン、録画ボタン、ライブビューボタン、各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に応じた操作信号をCPU21へ出力する。
液晶表示部30は、CPU21からの指示により、画像データに基づく画像、シャッター速度、絞り値等の撮影に関する情報、およびメニュー操作画面等を表示する。
【0028】
記録媒体50は、例えば、カメラボディ2に対して着脱可能なメモリカード等により構成される。記録媒体50には、画像データや音声データ等が記録される。記録媒体50に対するデータの記録や、記録媒体50からのデータの読み出しは、CPU21によって行われる。
【0029】
<像ブレ補正>
第1の実施の形態によるカメラ1は、交換レンズ3のブレ補正駆動機構37を作動させて行う像ブレ補正と、カメラボディ2のブレ補正駆動機構26を作動させて行う像ブレ補正とが可能に構成されている。第1の実施の形態では、CPU21が、いずれか一方のブレ補正駆動機構を作動させる。CPU21は、例えば、ブレ補正駆動機構37を備えた交換レンズ3がカメラボディ2に装着された場合は、交換レンズ3のブレ補正駆動機構37を作動させて像ブレ補正を行い、ブレ補正駆動機構37を備えていない交換レンズ3がカメラボディ2に装着された場合は、カメラボディ2のブレ補正駆動機構26を作動させて像ブレ補正を行う。
なお、後述する第3の実施の形態のように、交換レンズ3とカメラボディ2のブレ補正駆動機構を同時に作動させても良い。
【0030】
一般に、カメラ1で発生する像ブレは、カメラ1の回転運動に伴う像ブレ(角度ブレとも称する)と、カメラ1の並進移動に伴う像ブレ(並進ブレとも称する)とに分けられる。ブレ補正部21aは、カメラ1の回転運動による像ブレと、カメラ1の並進移動による像ブレとをそれぞれ算出する。
【0031】
図2は、ブレ補正部21aを説明する図である。ブレ補正部21aは、角度ブレ演算部201と、並進ブレ演算部202と、ブレ補正光学系目標位置演算部(選択部)203とを有する。
角度ブレ演算部201は、角速度センサ39aによるX軸と平行な軸回り(Pitch方向)の検出信号を用いて、回転運動によるY軸方向の像ブレを算出する。また、角度ブレ演算部201は、角速度センサ39aによるY軸と平行な軸回り(Yaw方向)の検出信号を用いて、回転運動によるX軸方向の像ブレを算出する。
【0032】
並進ブレ演算部202は、加速度センサ39bによるX軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるX軸方向の像ブレを算出する。また、並進ブレ演算部202は、加速度センサ39bによるY軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるY軸方向の像ブレを算出する。
【0033】
ブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201によって算出されたX軸方向およびY軸方向の像ブレと、並進ブレ演算部202によって算出されたX軸方向およびY軸方向の像ブレとを軸ごとに足し合わせて、X軸方向およびY軸方向の像ブレを算出する。例えば、ある軸方向について角度ブレ演算部201によって算出された像ブレと並進ブレ演算部202によって算出された像ブレの向きが同じ場合は、足し合わせにより像ブレが大きくなるが、算出された2つの像ブレの向きが異なる場合は、足し合わせにより像ブレが小さくなる。このように、各軸の像ブレの向きにより正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。
【0034】
次に、ブレ補正光学系目標位置演算部203は、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレと、撮影倍率(ズーム光学系31の位置に基づいて算出する)と、カメラ1から被写体80までの距離(フォーカス光学系32の位置に基づいて算出する)とに基づいて、像面(撮像素子22の撮像面)の予め定めた位置における像ブレ量を算出する。
【0035】
ブレ補正光学系目標位置演算部203は、交換レンズ3のブレ補正駆動機構37を作動させて像ブレ補正を行う場合、算出した像ブレ量を打ち消す向きにブレ補正光学系33を移動させるためのブレ補正光学系33の目標位置を演算する。
また、ブレ補正光学系目標位置演算部203は、カメラボディ2のブレ補正駆動機構26を作動させて像ブレ補正を行う場合、算出した像ブレ量を打ち消す向き撮像素子22を移動させるための撮像素子22の目標位置を演算する。
【0036】
そして、ブレ補正光学系目標位置演算部203は、交換レンズ3のブレ補正駆動機構37、または、カメラボディ2のブレ補正駆動機構26に対して目標位置を示す信号を送出する。
なお、ブレ補正光学系目標位置演算部203は、交換レンズ3とカメラボディ2のブレ補正駆動機構に対し、それぞれ目標位置を示す信号を送出することもできる。
また、交換レンズ3のブレ補正駆動機構37は、カメラボディ2から送信された目標位置がブレ補正駆動機構37の可動範囲を超えている場合には、その旨をカメラボディ2のCPU21へ知らせてもよい。これにより、CPU21は、例えば像ブレ補正の許容範囲を超えていることを知らせるアラームを発するなどの対処を行うことが可能になる。
【0037】
<予め定めた位置における像ブレ>
角度ブレ演算部201による像ブレの算出について、さらに詳細に説明する。第1の実施の形態では、角度ブレ演算部201が、カメラ1の回転運動によって起こる像ブレを算出する場合に、像面(撮像素子22の撮像面)における位置を予め定めて、この位置についての像ブレを算出する。このようにする理由は、回転運動の回転角が同じでも、像面の位置によって像ブレが異なるからである。
【0038】
図3は、角速度センサ39aによる角速度の検出方向と、像面70(撮像素子22の撮像面)における像ブレを説明する模式図である。
図3において、像面70と交換レンズ3の光軸L1とが交差する点を座標の原点とし、交換レンズ3の光軸L1をZ軸として、像面70をXY平面として表している。
図3によれば、光軸L1が撮像面の中心と交差する。交換レンズ3および被写体80は、像面70に対してZ軸プラス方向に位置する。角速度センサ39aは、例えば、X軸と平行な軸(small-x軸)周り(Pitch方向)の回転角θを検出する。被写体80が遠方にある場合には、
図3、
図4中の符号fは焦点距離を表す。
【0039】
カメラ1が振れることにより、振れの前に像面70における座標(0,yp)に位置した被写体80の像は、振れの後にY軸マイナス方向に移動する。移動した被写体80の像の位置は、座標(0,yp-Δy2)である。
図4は、
図3の像ブレΔy2を説明する図であり、
図3におけるYZ平面を表している。
【0040】
像ブレΔy2を数式で表すと、次式(1)となる。
Δy2=f×tan(θ+tan
-1(yp/f))-yp …(1)
ただし、Pitch方向の回転角(手振れ角を表し、一般的には0.5度程度である)をθとする。被写体80が遠方にある場合には、
図3、
図4中の符号fは交換レンズ3の焦点距離を表す。
【0041】
上式(1)と比較するため、カメラ1が振れる前に、像面70の中心の座標(0,0)に位置した被写体80の像の像ブレΔy1を説明する。交換レンズ3のPitch方向の回転角は、上記と同じθであるとする。カメラ1が振れることにより、振れの前に像面70における座標(0,0)に位置した被写体80の像は、振れの後にY軸マイナス方向に移動する。移動した被写体80の像の位置は、座標(0,-Δy1)である。
【0042】
像ブレΔy1を数式で表すと、次式(2)となる。
Δy1=f×tanθ …(2)
上式(1)および(2)によれば、焦点距離fがypに比べて十分に大きい場合は、回転角θ(手振れ角度)は一般的に0.5度程度なので、Δy1≒Δy2とみなすことができる。すなわち、像面70における被写体80の像の位置が像面70の中心(本例では原点)にある場合も、中心から離れた位置にある場合も、換言すると、光軸L1からの距離が異なっていても、像ブレは略同じとみなせる。このことは、像面70における位置をどこに定めて像ブレを算出してもよいことを意味する。このため、例えば、像面70の中心において算出した像ブレに基づいて像ブレ補正を行うと、像面70の中心に位置する被写体80の像も、像面70の中心から離れた位置の被写体80の像も、いずれも像ブレを抑制することができる。
【0043】
しかしながら、交換レンズ3が広角レンズである場合のように、焦点距離fがypに比べて十分に大きいといえない場合は、Δy1<Δy2となる。そのため、像面70における位置をいずれかに定めて像ブレを算出することが必要となる。例えば、像面70の中心において算出した像ブレに基づいて像ブレ補正を行うと、像面70の中心に位置する被写体80の像の像ブレを抑制できても、像面70の中心から離れた位置の被写体80の像については、Δy2とΔy1との差に相当する像ブレが抑制できずに残ってしまうからである。Δy2とΔy1との差は、像ブレを算出する位置が像面70の周辺に向かうほど、すなわち、像高が高い位置になるほど大きくなる。
【0044】
<像ブレを算出する位置>
ユーザは、多くの場合において、撮像される被写体80のうち主要被写体の像の像ブレを抑制することを望む。そこで、第1の実施の形態におけるCPU21は、後述するように、像面70において主要被写体の像が存在する可能性が高い位置を定める。そして、角度ブレ演算部201が、CPU21によって定められた位置の像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
CPU21は、像ブレを算出する位置を定めるために、以下の(1)から(3)のいずれかの方法を選択する。CPU21は、像ブレを算出する位置を定めた後に、例えば、構図変更に伴うカメラ1の動き量を検出した場合には、像ブレを算出する位置を設定し直す(更新する)。振れセンサ39は、動き量検出部としても機能する。
【0045】
(1)フォーカスエリアの位置
一つ目は、フォーカスエリアの位置において像ブレを算出する方法である。
図5は、撮像画面90に形成されたフォーカスエリアを例示する図である。フォーカスエリアは、AFセンサ25が焦点調節状態を検出するエリアであり、焦点検出エリア、測距点、オートフォーカス(AF)ポイントとも称される。第1の実施の形態では、撮像画面90の中に予め11ヶ所のフォーカスエリア25P-1~25P-11が設けられている。CPU21は、11ヶ所のフォーカスエリアにおいてデフォーカス量を求めることができる。
なお、フォーカスエリア25P-1~25P-11の数は一例であり、11より多くても少なくても構わない。
【0046】
CPU21は、像面70において像ブレを算出する位置を、選択されたフォーカスエリアに対応する位置に定める。そして、角度ブレ演算部201が、CPU21により定められた位置の像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。像面70において像ブレを算出する位置を、選択されたフォーカスエリアに対応する位置に定めるのは、焦点調節のためのデフォーカス量を求める位置に、主要被写体が存在する可能性が高いためである。
なお、フォーカスエリアの選択は、操作部材29からの操作信号に基づくフォーカスエリアをCPU21が選んでもよいし、カメラ1に近い被写体80に対応するフォーカスエリアをCPU21が選んでもよい。CPU21は、例えばフォーカス光学系32の位置に基づき、カメラ1に近い被写体80に対応するフォーカスエリアを選ぶことができる。
また、CPU21は、被写体80の像のうち、コントラストが高い被写体80に対応するフォーカスエリアを選んでもよく、被写体80の像のうち、輝度値が高い被写体80に対応するフォーカスエリアを選んでもよい。
【0047】
(2)被写体の位置
二つ目は、写り込む物体(被写体80)の位置において像ブレを算出する方法である。CPU21は、例えば、ライブビュー画像に被写体80として写っている物体を公知の物体認識処理によって認識し、ライブビュー画像における物体(被写体80)の位置を主要被写体の位置とする。そして、像面70において像ブレを算出する位置を、主要被写体に対応する位置に定める。角度ブレ演算部201は、CPU21により定められた位置の像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0048】
ライブビュー画像とは、本撮像が行われる前において撮像素子22によって所定の間隔(例えば60fps)で取得されるモニタ用画像である。CPU21は、例えば、操作部材29を構成するライブビューボタンが操作された場合に、ミラー24をアップ位置へ回動させた状態を保ち、撮像素子22によってライブビュー画像の取得を開始させる。CPU21は、ライブビュー画像を液晶表示部30に表示させることもできる。
【0049】
CPU21は、例えば、ライブビュー画像の各フレームに基づいて、主要被写体の位置を逐次更新することで、移動する物体(被写体80)を追尾することもできる。この場合には、角度ブレ演算部201が、CPU21により逐次更新された位置の像ブレを逐次算出することによって、ライブビュー画像を取得する際に、移動する物体(被写体80)に対する像ブレ補正を行う。
また、CPU21は、カメラ1がパンニングされた場合においても、ライブビュー画像の各フレーム内の主要被写体の位置を逐次更新することで、移動する物体(被写体80)を追尾することもできる。
【0050】
CPU21は、例えば、カメラ1が「風景」、「料理」、「花」、「動物」などの撮像シーンモードに設定された場合に二つ目の方法を選択するとともに、物体認識処理を開始するようにしてもよい。また、カメラ1に設定された「風景」、「料理」、「花」、「動物」などの撮像シーンモードによって、物体認識する対象を切り替えてもよい。
【0051】
(3)顔の位置
三つ目は、写り込む顔(被写体80)の位置において像ブレを算出する方法である。CPU21は、例えば、ライブビュー画像に被写体80として写っている顔を公知の顔認識処理によって認識し、ライブビュー画像における顔の位置を主要被写体の位置とする。そして、像面70において像ブレを算出する位置を、主要被写体に対応する位置に定める。角度ブレ演算部201は、CPU21により定められた位置の像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0052】
CPU21は、例えば、操作部材29を構成するライブビューボタンが操作された場合に、ミラー24をアップ位置へ回動させた状態を保ち、撮像素子22によってライブビュー画像の取得を開始させる。
【0053】
CPU21は、上記(2)と同様に、ライブビュー画像の各フレームに基づいて、主要被写体の位置を逐次更新することで、移動する顔(被写体80)を追尾することもできる。角度ブレ演算部201は、CPU21により逐次更新された位置の像ブレを逐次算出することによって、ライブビュー画像を取得する際に、移動する顔(被写体80)に対する像ブレ補正を行う。
【0054】
CPU21は、例えば、カメラ1の撮像シーンモードが「ポートレート」に設定された場合に三つ目の方法を選択するとともに、顔認識処理を開始するようにしてもよい。
【0055】
<像ブレを算出する位置が複数存在する場合>
上記(1)から上記(3)の方法は、いずれも、像面70において像ブレを算出する位置を1つだけ定める場合を例示した。しかしながら、以下のように、複数の位置が像ブレを算出する位置の候補になる場合がある。具体例を挙げると、上記(1)において複数のフォーカスエリアが選ばれた場合、または、上記(2)において複数の物体(被写体80)が認識された場合、または、上記(3)において複数の顔が認識された場合である。このような場合において、CPU21は以下の(4)または(5)の方法を選択する。
【0056】
(4)1つの代表位置を定める
四つ目は、1つの代表位置において像ブレを算出する方法である。
図6は、複数の候補から1つの代表位置を定める例を説明する図である。例えば像面70において、
図5のフォーカスエリア25P-1に対応する位置P-1と、フォーカスエリア25P-2に対応する位置P-2と、フォーカスエリア25P-4に対応する位置P-4との3点が候補になる場合、CPU21は、複数の候補の位置とX軸(
図3)との距離の絶対値、および、複数の候補の位置とY軸(
図3)との距離の絶対値とに基づいて平均となる位置Pを求め、位置Pを代表位置とする。そして、像面70において像ブレを算出する位置を、代表位置Pに定める。このように、像面70の軸(X軸、Y軸)上の距離の絶対値の平均により、代表位置Pを求める。
【0057】
角度ブレ演算部201は、代表位置Pにおいて像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0058】
上記(4)の説明では、複数のフォーカスエリアが選ばれた場合を例示したが、複数の物体(被写体80)が認識された場合や、複数の顔が認識された場合も同様である。例えば、CPU21は、認識した複数の物体の位置や、認識した複数の顔の位置に基づいて、上述したように代表位置Pを定める。角度ブレ演算部201は、CPU21により定められた代表位置Pについて像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0059】
(5)1つの像ブレを求める
五つ目は、複数の像ブレに基づいて1つの像ブレを算出する方法である。
図6の例を参照すると、例えば像面70において、
図5のフォーカスエリア25P-1に対応する位置P-1と、フォーカスエリア25P-2に対応する位置P-2と、フォーカスエリア25P-4に対応する位置P-4との3点が候補である。
【0060】
CPU21は、複数の位置を、それぞれ像面70において像ブレを算出する位置に定める。角度ブレ演算部201は、像面70における位置P-1と、位置P-2と、位置P-4とにおいてそれぞれ像ブレを算出する。角度ブレ演算部201はさらに、算出した複数の像ブレの平均を求め、像ブレの平均値に基づく像ブレ補正を行う。
像ブレの平均値は、例えば単純平均により求めるが、重み付け平均により求めてもよい。
【0061】
上記(5)の説明では、複数のフォーカスエリアが選ばれた場合を例示したが、複数の物体(被写体80)が認識された場合や、複数の顔が認識された場合も同様である。例えば、CPU21は、認識した複数の物体の位置や、認識した複数の顔の位置を、それぞれ像面70において像ブレを算出する位置に定める。角度ブレ演算部201は、像面70における各位置についてそれぞれ像ブレを算出する。角度ブレ演算部201はさらに、算出した複数の像ブレの平均を求め、像ブレの平均値に基づいて像ブレ補正を行う。
なお、(4)の変形例として、複数の被写体から1つの被写体を選択してもよい。例えば、複数の被写体から像ブレが大きい被写体を選択する。または、複数の被写体からカメラ1からの距離が近い像ブレが大きい被写体を選択する。または、複数の被写体から交換レンズ3の光軸L1からの像高が高い被写体を選択する。
【0062】
なお、第1の実施の形態における像ブレ補正は、カメラ1がPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1がYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とを含む。
上述した第1の実施の形態の説明は、カメラ1がPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正について、代表して説明したものである。カメラ1がYaw方向にも回転した場合には、X軸方向に対して上述した補正と同様の補正が必要である。カメラ1がPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1がYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とは、方向が異なる以外は同様であるので、X軸方向の補正の説明については省略する。
【0063】
なお、第1の実施の形態において、並進ブレ演算部202によって算出される像ブレについては像面70(撮像素子22の撮像面)における位置が異なっても略一定として扱う。
第1の実施の形態の概要は、以下の通りである。
角度ブレ演算部201は、像ブレを算出する位置を、像面70におけるいずれかの位置に定めて像ブレを算出する。
並進ブレ演算部202は、像ブレを算出する位置を、例えば像面70の中心に定めて像ブレを算出する。
ブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201で算出された像ブレおよび並進ブレ演算部202によって算出された像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の位置における像ブレ量を算出する。
【0064】
以上説明した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)カメラ1のブレ補正装置は、カメラ1の振れを検出する振れセンサ39と、振れセンサ39の出力に基づき、撮像光学系によって像面70に形成された被写体80の像のブレ量を演算するブレ補正部21aと、像面70における位置を決めるCPU21とを備える。ブレ補正部21aは、CPU21による決定位置と、振れセンサ39によって検出された、例えばY軸方向の振れとに基づいて、Y軸方向の像ブレΔy2を演算する。これにより、CPU21が決定した像面70の位置が、光軸L1と交差する像面70の中央以外の位置である場合にも、適切に像ブレを抑えることができる。とくに、交換レンズ3の焦点距離fが短い場合(もしくは、撮像素子22のサイズと焦点距離fとの関係で、画角が広くなる場合)に好適である。
【0065】
(2)上記(1)のブレ補正装置において、ブレ補正部21aは、像面70において、Y軸方向と交差するX軸方向の軸から上記決定位置までの距離が長いほど大きなブレ量を演算するので、像高が高い位置においても、適切に像ブレを抑えることができる。
【0066】
(3)上記(2)のブレ補正装置において、ブレ補正部21aは、振れセンサ39の出力と、上記距離と、撮像光学系の焦点距離とによりブレ量を演算するので、焦点距離fが異なる交換レンズ3に交換された場合にも、適切に像ブレを抑えることができる。
【0067】
(4)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、像面70において撮像光学系の焦点調節の対象になるフォーカスエリアの位置を上記決定位置とするので、主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0068】
(5)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、被写体像のコントラスト情報に基づいて上記決定位置を決めるので、主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0069】
(6)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、被写体80の像の輝度値情報に基づいて上記決定位置を決めるので、主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0070】
(7)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、被写体80の像に基づく被写体認識情報に基づいて上記決定位置を決めるので、主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0071】
(8)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、被写体80の像に基づく顔認識情報に基づいて上記決定位置を決めるので、主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0072】
(9)上記(4)から(8)のブレ補正装置において、CPU21は、設定されている撮像シーンモードにより上記決定位置を決めるので、主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0073】
(10)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、像面70においてユーザ操作によって指示された位置を上記決定位置とするので、ユーザが望む位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0074】
(11)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、CPU21は、撮影距離情報に基づいて、例えばカメラ1に近い被写体80に対応する位置を上記決定位置とするので、主要被写体に対応する位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0075】
(12)上記(1)から(3)のブレ補正装置において、振れセンサ39の出力に基づき、構図変更による動き量を検出するCPU21を備え、CPU21により上記決定位置が決められた後にCPU21によって動き量が検出された場合、ブレ補正部21bは、動き量に基づいて決定位置を変更した位置に基づき、ブレ量を演算する。これにより、構図変更の後に主要被写体が存在する可能性が高い位置で、適切に像ブレを抑えることができる。
【0076】
(13)上記(4)のブレ補正装置において、CPU21は、撮像光学系の焦点調節の対象になるフォーカスエリアが複数存在する場合に、複数のフォーカスエリアの位置に基づき、像面70の軸(X軸、Y軸)上の距離の絶対値の重心(代表位置P)を上記決定位置とするので、複数のフォーカスエリアの位置での像ブレが同程度になるように、適切に像ブレを抑えることができる。
【0077】
(14)上記(7)のブレ補正装置において、CPU21は、被写体認識情報によって被写体が複数存在する場合に、複数の被写体の位置に基づき、像面70の軸(X軸、Y軸)上の距離の絶対値の重心(代表位置P)を上記決定位置とするので、複数の被写体の位置での像ブレが同程度になるように、適切に像ブレを抑えることができる。
【0078】
(15)上記(8)のブレ補正装置において、CPU21は、顔認識情報によって顔が複数存在する場合に、複数の顔の位置に基づき、像面70の軸(X軸、Y軸)上の距離の絶対値の重心(代表位置P)を上記決定位置とするので、複数の顔の位置での像ブレが同程度になるように、適切に像ブレを抑えることができる。
【0079】
(16)上記(4)のブレ補正装置において、CPU21は、撮像光学系の焦点調節の対象になるフォーカスエリアが複数存在する場合に、複数のフォーカスエリアの位置を上記決定位置とし、ブレ補正部21bは、複数の決定位置に基づいて演算した複数のブレ量の平均値を演算する。これにより、複数のフォーカスエリアの位置での像ブレが同程度になるように、適切に像ブレを抑えることができる。
【0080】
(17)上記(7)のブレ補正装置において、CPU21は、被写体認識情報によって主要被写体が複数存在する場合に、複数の主要被写体の位置を上記決定位置とし、ブレ補正部21bは、複数の決定位置に基づいて演算した複数のブレ量の平均値を演算する。これにより、複数のフォーカスエリアの位置での像ブレが同程度になるように、適切に像ブレを抑えることができる。
【0081】
(18)上記(8)のブレ補正装置において、CPU21は、顔認識情報によって顔が複数存在する場合に、複数の顔の位置を上記決定位置とし、ブレ補正部21bは、複数の決定位置に基づいて演算した複数のブレ量の平均値を演算する。これにより、複数のフォーカスエリアの位置での像ブレが同程度になるように、適切に像ブレを抑えることができる。
【0082】
次のような変形も発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態、あるいは後述する実施の形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
第1の実施の形態では、カメラ1が、交換レンズ3のブレ補正駆動機構37を作動させて行う像ブレ補正を例に説明した。この代わりに、第1の実施の形態の変形例1では、カメラ1が、カメラボディ2のブレ補正駆動機構26を作動させて像ブレ補正を行う。第1の実施の形態の変形例1による像ブレ補正も、第1の実施の形態と同様に行うことができ、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0083】
(変形例2)
第1の実施の形態において説明した上記(3)の三つ目の方法、すなわち、写り込む顔(被写体80)の位置の像ブレを算出する場合において、例えば、顔が画面に大きく写る場合には、CPU21は、上記(5)の五つ目の方法を選択してもよい。
【0084】
図7は、第1の実施の形態の変形例2を説明する図である。
図7を参照して、複数の候補から1つの代表位置を定める例を説明する。
図7によれば、像面70に顔(被写体)が大きく写っている。CPU21は、像面70において、例えば、検出した顔の左端の位置P-aと、右端の位置P-bとの2点を候補位置とする。
【0085】
CPU21は、上記2点の候補位置を、それぞれ像面70において像ブレを算出する位置に定める。角度ブレ演算部201は、像面70における位置P-aと、位置P-bとにおいてそれぞれ像ブレを算出する。角度ブレ演算部201はさらに、算出した複数の像ブレの平均を求め、像ブレの平均値に基づいて像ブレ補正を行う。
像ブレの平均値は、例えば単純平均により求めるが、重み付け平均により求めてもよい。
【0086】
以上説明した第1の実施の形態の変形例2によれば、顔が大きく写る場合において、顔の両端における像ブレが同程度になるように像ブレ補正を行うことができる。これにより、顔の左右で像ブレの大きさが異なる場合に比べて、ユーザから見た違和感を抑えることができる。
【0087】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、検出した角速度の方向と交差する方向(異なる方向)についての像ブレを説明する。
カメラ1は、
図1に例示した一眼レフタイプでも、ミラー24を備えないミラーレスタイプでもよい。
また、カメラ1を、交換レンズ3とカメラボディ2とを一体にしたレンズ一体型として構成してもよい。
さらにまた、撮像装置はカメラ1に限らず、撮像センサを備えたレンズ鏡筒や、撮像機能を備えたスマートフォン等であってもよい。
【0088】
図8は、角速度センサ39aによる角速度の検出方向と、像面70(撮像素子22の撮像面)における像ブレを説明する模式図である。
図8において、像面70と交換レンズ3の光軸L1とが交差する点を座標の原点とし、交換レンズ3の光軸L1をZ軸として、像面70をXY平面として表している。
図8によれば、光軸L1が撮像面の中心と交差する。交換レンズ3および被写体80は、像面70に対してZ軸プラス方向に位置する。角速度センサ39aは、例えば、X軸と平行な軸(small-x軸)周り(Pitch方向)の回転角θを検出する。被写体80が遠方にある場合には、
図3、
図4中の符号fは焦点距離を表す。
【0089】
カメラ1が振れることにより、振れの前に像面70における座標(xp,yp)に位置した被写体80の像は、振れの後にY軸マイナス方向かつX軸プラス方向に移動する。従って、被写体80の像の座標は、(xp+Δx2,yp-Δy2)となる。
【0090】
Y軸方向における像ブレΔy2を表す数式は、第1の実施の形態で説明した場合と同様に、上式(1)である。
一方、X軸方向における像ブレΔx2を数式で表すと、次式(3)となる。
Δx2=f×xp/[(f
2+yp
2)
1/2×cos(θ+tan
-1(yp/f))]-xp …(3)
ただし、Pitch方向の回転角(手振れ角を表し、一般的には0.5度程度である)をθとする。被写体80が遠方にある場合には、
図3、
図4中の符号fは交換レンズ3の焦点距離を表す。
【0091】
上式(1)および(3)によれば、焦点距離fがypに比べて十分に大きい場合は、回転角θ(手振れ角度)は一般的に0.5度程度なので、Δx2≒0とみなすことができる。すなわち、像面70における被写体80の像の位置が像面70の中心(本例では原点)にある場合も、中心から離れた位置にある場合も、換言すると、光軸L1からの距離が異なっていても、Pitch方向に回転角θを検出した場合の像ブレはY軸方向のみを考慮すればよく、X軸方向については無視できる。このため、例えば、像面70の中心において算出した像ブレに基づいてY軸方向に像ブレ補正を行うと、像面70の中心に位置する被写体80の像も、像面70の中心から離れた位置の被写体80の像も、いずれも像ブレを抑制することができる。
【0092】
しかしながら、交換レンズ3が広角レンズである場合のように、焦点距離fがypに比べて十分に大きいといえない場合は、上式(3)によるΔx2≠0となる。そのため、Pitch方向の回転角θを検出した場合において、上式(1)によりY軸方向の像ブレを算出するだけでなく、上式(3)によりX軸方向の像ブレを算出することが必要になる。さもなければ、上式(3)による像ブレΔx2に対応するX軸方向の像ブレが抑制できずに残ってしまうからである。像ブレΔx2は、像ブレを算出する位置が像面70の周辺に向かうほど、すなわち、像高が高い位置になるほど大きくなる。
【0093】
CPU21は、像面70において像ブレを算出する位置を、第1の実施の形態と同様に定める。すなわち、CPU21は、上記(1)の方法から上記(4)の方法のうちのいずれかの方法を選び、像面70において像ブレを算出する位置を定める。そして、角度ブレ演算部201は、CPU21によって定められた位置の像ブレを算出する。ブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201によって算出された像ブレと、並進ブレ演算部202によって算出された像ブレとに基づいて像ブレ量を算出する。
【0094】
なお、第2の実施の形態における像ブレ補正は、カメラ1がPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1がYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とを含む。
上述した第2の実施の形態の説明は、カメラ1がPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正を行う場合に、焦点距離fがypに比べて十分に大きいといえない場合には、X軸方向についても補正する点を述べたものである。
カメラ1がYaw方向に回転した場合には、Y軸方向に対して上述した補正と同様の補正が必要である。すなわち、図面を参照しての説明は省略するが、カメラ1がYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正を行う場合に、焦点距離fがxpに比べて十分に大きいといえない場合には、Y軸方向についても補正する。
また、カメラ1がPitch方向とYaw方向とに回転した場合には、両回転運動によるX軸、Y軸に対する像ブレが同時に起こるので、両回転運動による像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向にそれぞれ正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後の像ブレに基づき、X軸およびY軸方向においてそれぞれ補正する。
【0095】
また、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、並進ブレ演算部202によって算出される像ブレについては像面70(撮像素子22の撮像面)における位置が異なっても略一定として扱う。
第2の実施の形態の概要は以下の通りである。
角度ブレ演算部201は、像ブレを算出する位置を、像面70におけるいずれかの位置に定めて像ブレを算出する。この時、例えばPitch方向の回転角θを検出した場合において、上式(1)によりY軸方向の像ブレを算出するだけでなく、上式(3)によりX軸方向の像ブレも算出する。
並進ブレ演算部202は、像ブレを算出する位置を、例えば像面70の中心に定めて像ブレを算出する。
ブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201で算出された像ブレおよび並進ブレ演算部202によって算出された像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の位置における像ブレ量を算出する。
【0096】
以上説明した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)カメラ1のブレ補正装置は、装置のY軸の方向の振れを検出する振れセンサ39と、振れセンサ39の出力に基づき、撮像光学系によって像面70に形成された被写体80の像のブレ量を演算するブレ補正部21aとを備える。ブレ補正部21aは、Y軸の方向と交差するX軸の方向の像ブレを演算する。これにより、振れを検出したY軸と交差するX軸の方向の像ブレを抑えることができる。
【0097】
(2)上記(1)のブレ補正装置において、ブレ補正部21aは、Y軸の方向の像ブレを演算するので、振れを検出したY軸の方向の像ブレを抑えることができる。
【0098】
(3)上記(1)または(2)のブレ補正装置はさらに、像面70における位置を決定するCPU21を備える。ブレ補正部21aは、CPU21による決定位置と、振れセンサ39によって検出された、Y軸の方向の回転角とに基づいて、X軸の方向、Y軸の方向の像ブレ量を演算する。これにより、CPU21が決定した像面70の位置が、像面70の中央以外の位置である場合にも、適切に像ブレを抑えることができる。とくに、交換レンズ3の焦点距離fが短い場合(もしくは、撮像素子22のサイズと焦点距離fとの関係で、画角が広くなる場合)に好適である。
【0099】
次のような変形も発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態、あるいは後述する実施の形態と組み合わせることも可能である。
(変形例3)
CPU21は、第2の実施の形態において説明した像ブレ補正において、交換レンズ3によって生じている光学的な歪みを考慮した補正を行う。
図9は、交換レンズ3によって歪曲収差(例えば樽型)が生じている例を説明する図である。多数の実線の円は、仮に、交換レンズ3に歪曲収差がないと仮定した場合における被写体80の像を示す。これに対して、多数のハッチング状の円は、交換レンズ3の光学特性に基づく樽型歪曲収差の影響によって歪曲した被写体80の像を示す。
【0100】
一般に、交換レンズ3の歪曲収差は、設計により異なるものの、焦点距離の短い広角レンズにおいて大きいものが多い。このため、
図9に例示したように、撮像光学系の光軸L1から離れる(像面70の中心Oを光軸L1に合わせる場合は、像面70の中心Oから離れる)にしたがって歪量が大きくなる。歪量は、
図9に示した実線の円とハッチング状の円との間の位置ずれとして現れる。
図9の例では、像面70の中心Oからの距離が長い(換言すると、像高が高い)位置において実線の円とハッチング状の円との位置ずれが最も大きくなり、例えば右下位置における位置ずれは、X軸方向にΔx、Y軸方向にΔyである。
【0101】
図8に例示した模式図は、
図9における実線の円のように、撮像光学系による歪曲がないものとして表している。そのため、例えば像面70において像ブレを算出する位置を、像面70の中心Oから離れた位置に定める場合、第2の実施の形態で説明した像ブレ補正をそのまま行うと、歪曲収差が存在する場合には、補正しきれない像ブレが発生する。
【0102】
そこで、第2の実施の形態の変形例3では、歪曲収差が大きい交換レンズ3をカメラボディ2に装着した状態で、第2の実施の形態において説明した像ブレ補正を行う場合には、
図9におけるハッチング状の円のような、撮像光学系による歪曲があるものとして像ブレ補正を行う。
【0103】
図9のハッチング状の円のように、像面70のどの位置で、どの向きに、どの大きさの歪量となるかを示す歪曲収差の情報は、交換レンズ3の設計情報として既知である。このため、カメラボディ2に装着される交換レンズ3の歪曲収差の情報を、予めメモリ28に記録しておく。CPU21は、歪曲収差が大きい交換レンズ3が装着されたことを検出した場合、メモリ28から対応する歪曲収差の情報を読み出して、上述した像ブレを算出する演算に用いる。
【0104】
ブレ補正部21aのブレ補正光学系目標位置演算部203は、X軸およびY軸の各軸について、角度ブレ演算部201によって算出された像ブレ、並進ブレ演算部202によって算出された像ブレ、および、メモリ28から読み出された歪曲収差の情報の向きによって、正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の位置における像ブレ量を算出する。
【0105】
なお、以上の説明では、樽型歪曲収差が生じている例を説明したが、糸巻き型歪曲収差が生じる場合も同様である。
【0106】
以上説明した第2の実施の形態の変形例3によれば、歪曲収差があっても適切に像ブレを補正することができる。
また、交換レンズ3によって生じている光学的な歪み(Distortion)が大きい場合にも、像面70の中央以外の位置において、適切に像ブレを抑えることができる。
【0107】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、カメラボディ2Aに対して交換レンズ3Aが装着される。交換レンズ3Aは、交換レンズ3に比べて、ブレ補正部40が追加されている点において相違する。振れセンサ39からの検出信号は、ブレ補正部40に送出される。
カメラボディ2Aは、カメラボディ2に比べて、振れセンサ(動き検出部、振れ検出部)31が追加されている点において相違する。振れセンサ31からの検出信号は、CPU21(ブレ補正部21a)に送出される。振れセンサ31は、振れセンサ39と同様の機能を備える。
【0108】
第3の実施の形態では、ブレ補正駆動機構37を備えた交換レンズ3Aがカメラボディ2Aに装着された場合において、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させて行う像ブレ補正と、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26を作動させて行う像ブレ補正とを併用する。
一方、ブレ補正駆動機構37を備えていない交換レンズ3Aがカメラボディ2Aに装着された場合には、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26を作動させることにより、第1の実施の形態の変形例1と同様の像ブレ補正を行う。
【0109】
図10は、第3の実施の形態によるカメラ1Aの要部構成を示す図である。カメラ1Aは、カメラボディ2Aと交換レンズ3Aとで構成される。交換レンズ3Aは、不図示のマウント部を介してカメラボディ2Aに装着される。交換レンズ3Aがカメラボディ2Aに装着されると、カメラボディ2Aと交換レンズ3Aとが電気的に接続され、カメラボディ2Aと交換レンズ3Aとの間で通信が可能になる。カメラボディ2Aと交換レンズ3Aとの通信は、無線通信によって行ってもよい。
図10において
図1と同様の構成には、
図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0110】
図11は、交換レンズ3Aのブレ補正部40を説明する図である。ブレ補正部40は、角度ブレ演算部401と、並進ブレ演算部402と、ブレ補正光学系目標位置演算部403とを有する。
角度ブレ演算部401は、角速度センサ39aによるX軸と平行な軸回り(Pitch方向)の検出信号を用いて、回転運動によるY軸方向の像ブレと、必要な場合にはX軸方向の像ブレとを算出する。また、角度ブレ演算部201は、角速度センサ39aによるY軸と平行な軸回り(Yaw方向)の検出信号を用いて、回転運動によるX軸方向の像ブレと、必要な場合にはY軸方向の像ブレとを算出する。
【0111】
並進ブレ演算部402は、加速度センサ39bによるX軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるX軸方向の像ブレを算出する。また、並進ブレ演算部402は、加速度センサ39bによるY軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるY軸方向の像ブレを算出する。
【0112】
ブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401によって算出されたX軸方向およびY軸方向の像ブレと、並進ブレ演算部402によって算出されたX軸方向およびY軸方向の像ブレとを足し合わせて、X軸方向およびY軸方向の像ブレを算出する。
【0113】
また、ブレ補正光学系目標位置演算部403は、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレと、撮影倍率(ズーム光学系31の位置に基づいて算出する)と、カメラ1Aから被写体80までの距離(フォーカス光学系32の位置に基づいて算出する)とに基づいて、像面70の、後述する位置における像ブレ量を算出する。
【0114】
ブレ補正光学系目標位置演算部403は、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させるため、算出した像ブレ量に基づいてブレ補正光学系33の目標位置を演算する。
そして、ブレ補正光学系目標位置演算部403は、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37に対して目標位置を示す信号を送出する。
【0115】
なお、カメラ1Aは、
図10に例示した一眼レフタイプでも、ミラー24を備えないミラーレスタイプでもよい。
また、撮像素子22を進退移動させるブレ補正駆動機構26と、ブレ補正光学系33を進退移動させるブレ補正駆動機構37とを備えるものであれば、交換レンズ3Aとカメラボディ2Aとを一体にしたレンズ一体型のカメラとして構成してもよい。
【0116】
<併用する像ブレ補正>
以下に、交換レンズ3Aによる像ブレ補正と、カメラボディ2Aによる像ブレ補正とを併用する像ブレ補正について説明する。
角度ブレ演算部201による像ブレの演算、および、並進ブレ演算部202による像ブレの演算は、第1の実施の形態や第2の実施の形態の場合と同様である。
ただし、以下の点で第1の実施の形態や第2の実施の形態と相違する。相違点の一つは、交換レンズ3Aによる像ブレ補正では像ブレを算出する位置として像面70の中心を選び、カメラボディ2Aによる像ブレ補正では像ブレを算出する位置として像面70におけるいずれかの位置を選ぶ点である。
相違点のもう一つは、カメラボディ2AのCPU21において決定された分担比率に基づいて、交換レンズ3Aによる像ブレ補正とカメラボディ2Aによる像ブレ補正とを行う点である。分担比率の説明については後述する。
【0117】
<像ブレを算出する位置>
CPU21は、交換レンズ3Aのブレ補正部40が像ブレを算出する位置を、例えば像面70の中心に定め、カメラボディ2Aのブレ補正部21aが像ブレを算出する位置を、像面70におけるいずれかの位置に定める。これにより、交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、像面70の中心位置の像ブレと、CPU21により決定された交換レンズ3Aの分担比率とに基づいて、ブレ補正量(L)を算出する。カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、CPU21によって定められた像面70の中心と異なる位置の像ブレと、CPU21により決定されたカメラボディ2Aの分担比率とに基づいて、ブレ補正量(B)を算出する。
CPU21は、像ブレを算出する位置を像面70の中心と異なる位置に定める場合、第1の実施の形態における(1)から(4)のいずれかの方法によって位置を定める。
【0118】
像ブレを算出する位置が像面70の中心である場合、Y軸方向における像ブレΔy1を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(2)である。
また、像ブレを算出する位置が像面70の中心と異なる位置である場合、Y軸方向における像ブレΔy2を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(1)である。
【0119】
<分担比率>
CPU21は、交換レンズ3Aによる像ブレ補正と、カメラボディ2Aによる像ブレ補正との分担比率を定める。本例のCPU21は、例えば、分担比率を50:50と定める。この比率は、70:30でもよいし、40:60でもよい。
【0120】
交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、CPU21によって定められた分担比率が50:50の場合、次式(4)に示すように、交換レンズ3Aに分担させる像ブレV(L)を求める。右辺において1/2倍するのは、分担比率を50%に定めたことによる。
V(L)=Δy1/2 =f×tanθ/2 …(4)
ただし、Δy1は、像面70の中心におけるY軸方向の像ブレである。また、Pitch方向の回転角(手振れ角を表し、一般的には0.5度程度である)をθとする。被写体80が遠方にある場合には、符号fは交換レンズ3Aの焦点距離を表す。
【0121】
一方、カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、CPU21によって定められた分担比率が50:50の場合、次式(5)に示すように、カメラボディ2Aに分担させる像ブレV(B)を求める。
V(B)=Δy1/2+d =f×tanθ/2+d …(5)
ただし、d=Δy2-Δy1とする。Δy2は、像面70の中心と異なる位置におけるY軸方向の像ブレである。
【0122】
交換レンズ3Aのブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401によって算出された像ブレV(L)と、並進ブレ演算部402によって算出された像ブレとに基づき、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させて行う像ブレ補正における、ブレ補正光学系33の目標位置を演算する。
【0123】
また、カメラボディ2Aのブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201によって算出された像ブレV(B)と、並進ブレ演算部202によって算出された像ブレとに基づき、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26を作動させて行う像ブレ補正における、撮像素子22の目標位置を演算する。
交換レンズ3Aのブレ補正光学系目標位置演算部403はさらに、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37に対して目標位置を示す信号を送出する。また、カメラボディ2Aのブレ補正光学系目標位置演算部203はさらに、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26に対して目標位置を示す信号を送出する。
【0124】
第3の実施の形態では、交換レンズ3Aによる像ブレ補正によって、角度ブレ演算部401が像面70の中心位置において算出した像ブレに基づく像ブレ補正を行う。また、カメラボディ2Aによる像ブレ補正によって、角度ブレ演算部201が像面70の中心と異なる位置において算出した像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0125】
なお、第3の実施の形態における像ブレ補正は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とを含む。
上述した第3の実施の形態の説明は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正について、代表して説明したものである。このため、カメラ1AがYaw方向にも回転した場合には、X軸方向に対して上述した補正と同様の補正が必要である。
カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とは、方向が異なる以外は同様であるので、X軸方向の説明については省略する。
【0126】
また、カメラ1AがPitch方向とYaw方向とに回転した場合には、両回転運動によるX軸、Y軸に対する像ブレが同時に起こるので、両回転運動による像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向にそれぞれ正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後の像ブレに基づき、X軸およびY軸方向においてそれぞれ補正する。
【0127】
なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様に、並進ブレ演算部202、並進ブレ演算部402によって算出される像ブレについては像面70における位置が異なっても略一定として扱う。
第3の実施の形態の概要は、以下の通りである。
交換レンズ3Aのブレ補正部40の角度ブレ演算部401は、像面70の中心位置で、像ブレを算出する。カメラボディ2Aのブレ補正部21aの角度ブレ演算部201は、像面70の中心とは異なる位置で、像ブレを算出する。
交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、交換レンズ3Aに分担(例えば分担比率50%)させる像ブレV(L)を、像面70の中心における像ブレΔy1の1/2とし、カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、カメラボディ2Aに分担させる像ブレV(B)を、V(L)+dとする。dは、像面70の中心とは異なる位置における像ブレΔy2と、上記Δy1との差である。
交換レンズ3Aの並進ブレ演算部402は、交換レンズ3Aに分担(例えば分担比率50%)させる像ブレを、例えば像面70の中心における像ブレの1/2とする。カメラボディ2Aの並進ブレ演算部202は、カメラボディ2Aに分担させる像ブレを、例えば像面70の中心における像ブレの1/2とする。
交換レンズ3Aのブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401で算出された像ブレV(L)および並進ブレ演算部402で算出された像ブレを、それぞれX軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の中心位置における像ブレ量を算出する。
カメラボディ2Aのブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201で算出された像ブレV(B)および並進ブレ演算部202で算出された像ブレを、それぞれX軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の中心とは異なる位置における像ブレ量を算出する。
【0128】
以上説明した第3の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)カメラ1Aのブレ補正装置は、装置の振れを検出する振れセンサ39と、振れセンサ39の出力に基づき、撮像光学系によって像面70に形成された被写体80の像のブレ量を演算するブレ補正部40と、ブレ補正部40の出力に基づいて、ブレ量を抑える向きにブレ補正光学系33を移動するブレ補正駆動機構37と、を交換レンズ3Aに備える。また、装置の振れを検出する振れセンサ31と、振れセンサ31の出力に基づき、撮像光学系によって像面70に形成された被写体80の像のブレ量を演算するブレ補正部21bと、ブレ補正部21aの出力に基づいて、像面70において被写体80の像を撮像する撮像素子22を、ブレ量を抑える向きに移動するブレ補正駆動機構26と、像面70における位置を決めるCPU21と、をカメラボディ2Aに備える。
【0129】
交換レンズ3Aのブレ補正部40は、像面70に予め定められた第1位置(像面70の中心)と振れセンサ39によって検出された振れとに基づく像ブレΔy1を演算する。ブレ補正部40は、交換レンズ3Aに分担(例えば分担比率50%)させる像ブレV(L)を、像ブレΔy1の1/2とする。
カメラボディ2Aのブレ補正部21bは、CPU21により決定された第2位置(中心と異なる位置)と振れセンサ31によって検出された振れとに基づく像ブレΔy2と、像面70に予め定められた第1位置(像面70の中心)と振れセンサ31によって検出された振れとに基づく像ブレΔy1を演算する。ブレ補正部21bはさらに、像ブレΔy2および像ブレΔy1の差dを算出する。角度ブレ演算部201は、カメラボディ2Aに分担させる像ブレV(B)を、V(L)+dとする。
これにより、CPU21決定した位置が像面70の中央以外である場合にも、適切に像ブレを抑えることができる。とくに、交換レンズ3Aの焦点距離fが短い場合(もしくは、撮像素子22のサイズと焦点距離fとの関係で、画角が広くなる場合)に好適である。
【0130】
(2)上記(1)のブレ補正装置において、交換レンズ3Aのブレ補正部40は、ブレ補正駆動機構37に像ブレΔy1の50%を出力し、カメラボディ2Aのブレ補正部21aは、ブレ補正駆動機構26に像ブレΔy1の残り50%と、上記の差dを出力する。ブレ補正駆動機構26およびブレ補正駆動機構37を併用しない場合に比べて、ブレ補正駆動機構26およびブレ補正駆動機構37による移動距離を、それぞれ小さく抑えることができる。
【0131】
なお、CPU21が決定する分担比率を、交換レンズ3Aによる像ブレ補正を100%とし、カメラボディ2Aによる像ブレ補正を0%としてもよい。この場合において、交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、交換レンズ3Aで分担する像ブレV(L)を100%とし、カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、カメラボディ2Aで分担する像ブレV(B)をdとする。dは、像面70の中心とは異なる位置における像ブレΔy2と、像面70の中心における像ブレΔy1との差である。
【0132】
次のような変形も発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態、あるいは後述する実施の形態と組み合わせることも可能である。
(変形例4)
第3の実施の形態の変形例4において、CPU21は、像ブレを算出する位置として、例えば像面70における2つの位置(第1位置、第2位置と称する)を定める。交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、CPU21によって定められた第1位置について像ブレを算出する。カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、CPU21によって定められた第1位置および第2位置について像ブレを算出する。CPU21は、像ブレを算出する第1位置、第2位置を、第1の実施の形態における(1)から(4)のいずれかの方法によって定める。
【0133】
第3の実施の形態の変形例4は、第1位置および第2位置がいずれも像面70の中心と異なる位置である場合を含む点で、第3の実施の形態と相違する。一方、第3の実施の形態の変形例4において、CPU21が、交換レンズ3Aによる像ブレ補正と、カメラボディ2Aによる像ブレ補正との分担比率を定める点は、第3の実施の形態と同様である。
【0134】
像ブレを算出する第1位置または第2位置が、像面70の中心である場合、Y軸方向における像ブレΔy1を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(2)である。
また、像ブレを算出する第1位置、第2位置が像面70の中心と異なる位置である場合、Y軸方向における像ブレΔy2を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(1)である。
【0135】
交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、CPU21によって定められた分担比率が、例えば50:50の場合、次式(6)に示すように、交換レンズ3Aに分担させる像ブレV(L)を求める。右辺において1/2倍するのは、分担比率を50%に定めたことによる。
V(L)=Δy2a/2 …(6)
ただし、Δy2aは、像面70の中心と異なる第1位置におけるY軸方向の像ブレである。
【0136】
また、カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、CPU21によって定められた分担比率が50:50の場合、次式(7)に示すように、カメラボディ2Aに分担させる像ブレV(B)を求める。
V(B)=Δy2a/2+d2 …(7)
ただし、d2=Δy2b-Δy2aとする。Δy2bは、像面70の中心と異なる第2位置におけるY軸方向の像ブレである。
【0137】
交換レンズ3Aのブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401によって算出された像ブレV(L)と、並進ブレ演算部402によって算出された像ブレとに基づき、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させて行う像ブレ補正における、ブレ補正光学系33の目標位置を演算する。
【0138】
また、カメラボディ2Aのブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201によって算出された像ブレV(B)と、並進ブレ演算部202によって算出された像ブレとに基づき、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26を作動させて行う像ブレ補正における、撮像素子22の目標位置を演算する。
交換レンズ3Aのブレ補正光学系目標位置演算部403はさらに、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37に対して目標位置を示す信号を送出する。また、カメラボディ2Aのブレ補正光学系目標位置演算部203はさらに、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26に対して目標位置を示す信号を送出する。
【0139】
第3の実施の形態の変形例4では、交換レンズ3Aによる像ブレ補正によって、角度ブレ演算部401が像面70の第1位置において算出した像ブレに基づく像ブレ補正を行う。また、カメラボディ2Aによる像ブレ補正によって、角度ブレ演算部201が像面70の第2位置において算出した像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0140】
なお、第3の実施の形態の変形例4における像ブレ補正は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とを含む。
上述した第3の実施の形態の変形例4の説明は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正について、代表して説明したものである。このため、カメラ1AがYaw方向にも回転した場合には、X軸方向に対して上述した補正と同様の補正が必要である。
カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とは、方向が異なる以外は同様であるので、X軸方向の説明については省略する。
【0141】
また、カメラ1AがPitch方向とYaw方向とに回転した場合には、両回転運動によるX軸、Y軸に対する像ブレが同時に起こるので、両回転運動による像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向にそれぞれ正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後の像ブレに基づき、X軸およびY軸方向においてそれぞれ補正する。
【0142】
また、第3の実施の形態の変形例4において、第1の実施の形態から第3の実施の形態と同様に、並進ブレ演算部202、並進ブレ演算部402によって算出される像ブレについては像面70(撮像素子22の撮像面)における位置が異なっても略一定として扱う。
第3の実施の形態の変形例4の概要は、以下の通りである。
交換レンズ3Aのブレ補正部40の角度ブレ演算部401は、像面70における第1位置で、像ブレを算出する。カメラボディ2Aのブレ補正部21aの角度ブレ演算部201は、像面70における第2位置で、像ブレを算出する。
交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、交換レンズ3Aに分担(例えば分担比率50%)させる像ブレV(L)を、像面70の第1位置における像ブレΔy2aの1/2とし、カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、カメラボディ2Aに分担させる像ブレV(B)を、V(L)+d2とする。d2は、像面70の第2位置における像ブレΔy2bと、上記Δy2aとの差である。
交換レンズ3Aの並進ブレ演算部402は、交換レンズ3Aに分担(例えば分担比率50%)させる像ブレを、例えば像面70の中心における像ブレの1/2とする。カメラボディ2Aの並進ブレ演算部202は、カメラボディ2Aに分担させる像ブレを、例えば像面70の中心における像ブレの1/2とする。
交換レンズ3Aのブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401で算出された像ブレV(L)および並進ブレ演算部402で算出された像ブレを、それぞれX軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の第1位置における像ブレ量を算出する。
カメラボディ2Aのブレ補正光学系目標位置演算部203は、角度ブレ演算部201で算出された像ブレV(B)および並進ブレ演算部202で算出された像ブレを、それぞれX軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の第2位置における像ブレ量を算出する。
【0143】
以上説明した第3の実施の形態の変形例4によれば、次の作用効果が得られる。
(1)カメラ1Aのブレ補正装置は、装置の振れを検出する振れセンサ39と、振れセンサ39の出力に基づき、撮像光学系によって像面70に形成された被写体80の像のブレ量を演算するブレ補正部40と、ブレ補正部40の出力に基づいて、ブレ量を抑える向きにブレ補正光学系33を移動するブレ補正駆動機構37と、を交換レンズ3Aに備える。また、装置の振れを検出する振れセンサ31と、振れセンサ31の出力に基づき、撮像光学系によって像面70に形成された被写体80の像のブレ量を演算するブレ補正部21aと、ブレ補正部21aの出力に基づいて、像面70において被写体80の像を撮像する撮像素子22を、ブレ量を抑える向きに移動するブレ補正駆動機構26と、像面70における第1位置と第2位置とを決定するCPU21と、をカメラボディ2Aに備える。
【0144】
交換レンズ3Aのブレ補正部40は、第1位置と振れセンサ39によって検出された振れとに基づく像ブレΔy2aを算出する。ブレ補正部40は、交換レンズ3Aに分担(例えば分担比率50%)させる像ブレV(L)を、像ブレΔy2aの1/2とする。
カメラボディ2Aのブレ補正部21aは、第1位置と振れセンサ31によって検出された振れとに基づく像ブレΔy2aと、第2位置と振れセンサ31によって検出された振れとに基づく像ブレΔy2bとを演算する。ブレ補正部21bはさらに、像ブレΔy2aおよび像ブレΔy2bの差d2を算出する。角度ブレ演算部201は、カメラボディ2Aに分担させる像ブレV(B)を、V(L)+d2とする。
これにより、像面70の中央以外にCPU21が決定した第2位置において、適切に像ブレを抑えることができる。とくに、交換レンズ3Aの焦点距離fが短い場合(もしくは、撮像素子22のサイズと焦点距離fとの関係で、画角が広くなる場合)に好適である。
【0145】
(2)上記(1)のブレ補正装置において、交換レンズ3Aのブレ補正部40は、ブレ補正駆動機構37に像ブレΔy2aの50%を出力し、カメラボディ2Aのブレ補正部21bは、ブレ補正駆動機構26にΔy2aの残り50%と、上記の差d2を出力する。ブレ補正駆動機構26およびブレ補正駆動機構37を併用しない場合に比べて、ブレ補正駆動機構26およびブレ補正駆動機構37による移動距離を、それぞれ小さく抑えることができる。
【0146】
なお、CPU21が決定する分担比率を、交換レンズ3Aによる像ブレ補正を100%とし、カメラボディ2Aによる像ブレ補正を0%としてもよい。この場合において、交換レンズ3Aの角度ブレ演算部401は、交換レンズ3Aで分担する像ブレV(L)を100%とし、カメラボディ2Aの角度ブレ演算部201は、カメラボディ2Aで分担する像ブレV(B)をd2とする。d2は、像面70の中心とは異なる第1位置における像ブレΔy2aと、像面70の中心とは異なる第2位置における像ブレΔy2bとの差である。
【0147】
(変形例5)
上式(5)、上式(7)の像ブレV(B)に基づく像ブレ補正演算を交換レンズ3Aのブレ補正部40によって行い、上式(4)、上式(6)の像ブレV(L)に基づくブレ補正演算をカメラボディ2Aのブレ補正部21aによって行ってもよい。第3の実施の形態の変形例5によれば、交換レンズ3Aによる像ブレ補正のために像ブレを算出する像面70の位置と、カメラボディ2Aによる像ブレ補正のために像ブレを算出する像面70の位置とを、第3の実施の形態や第3の実施の形態の変形例4の場合と入れ替えることができる。
【0148】
(変形例6)
上述した第3の実施の形態、第3の実施の形態の変形例4の説明では、第2の実施の形態の内容の説明を省略したが、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正の際に、焦点距離fがypに比べて十分に大きいといえない場合には、X軸方向についても第2の実施の形態と同様の補正を行う。角度ブレ演算部201、および、角度ブレ演算部401は、X軸およびY軸の各軸について、ブレの向きにより正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。
【0149】
また、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正時においても同様である。すなわち、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正の際に、焦点距離fがxpに比べて十分に大きいといえない場合には、Y軸方向についても同様に補正を行う。角度ブレ演算部201、および、角度ブレ演算部401は、X軸およびY軸の各軸について、ブレの向きにより正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。
【0150】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、
図10のカメラ1Aを用いて、専ら交換レンズ3Aによって像ブレ補正を行う。カメラ1Aは、
図10に例示した一眼レフタイプでも、ミラー24を備えないミラーレスタイプでもよい。
また、交換レンズ3Aとカメラボディ2Aとを一体にしたレンズ一体型のカメラとして構成してもよい。
【0151】
<像ブレを算出する位置>
第4の実施の形態におけるカメラボディ2AのCPU21は、例えば、第1の実施の形態における(1)から(4)のいずれかの方法によって、像面70において主要被写体の像が存在する可能性が高い位置を定める。そして、CPU21は、像面70に定めた位置を示す情報を、交換レンズ3Aのブレ補正部40へ送信する。
【0152】
カメラボディ2AのCPU21が、像面70において像ブレを算出する位置の情報をブレ補正部40へ伝えるタイミングは、例えば、CPU21が像面70において像ブレを算出する位置を定めた(新たに定める場合と、更新する場合とを含む)ときである。
CPU21は、カメラボディ2Aおよび交換レンズ3A間の定常的な通信に上記の位置情報を含めたり、カメラボディ2Aから交換レンズ3Aへ像ブレ補正の開始を指示する通信に上記の位置情報を含めたりするなどして、すみやかに位置情報をブレ補正部40に通知する。
【0153】
ブレ補正部40の角度ブレ演算部401は、CPU21から受信した情報が示す位置の像ブレを算出し、この像ブレに基づく像ブレ補正を行う。
【0154】
像ブレを算出する位置が像面70の中心である場合、Y軸方向における像ブレΔy1を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(2)である。
また、像ブレを算出する位置が像面70の中心と異なる位置である場合、Y軸方向における像ブレΔy2を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(1)である。
【0155】
なお、第4の実施の形態における像ブレ補正は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とを含む。
上式(1)および上式(2)は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正について、表したものである。これと同様の補正が、カメラ1AがYaw方向に回転した場合には、X軸方向に対して上述した補正と同様の補正が必要である。
カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とは、方向が異なる以外は同様であるので、X軸方向の補正の説明については省略する。
【0156】
また、カメラ1AがPitch方向とYaw方向とに回転した場合には、両回転運動によるX軸、Y軸に対する像ブレが同時に起こるので、両回転運動による像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向にそれぞれ正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後の像ブレに基づき、X軸およびY軸方向においてそれぞれ補正する。
【0157】
なお、第4の実施の形態において、第3の形態と同様に、並進ブレ演算部402によって算出される像ブレについては像面70(撮像素子22の撮像面)における位置が異なっても略一定として扱う。
第4の実施の形態の概要は、以下の通りである。
交換レンズ3Aのブレ補正部40の角度ブレ演算部401は、像面70において像ブレを算出する位置を、カメラボディ2AのCPU21から通知された位置に定めて像ブレを算出する。
並進ブレ演算部402は、例えば像面70の中心において像ブレを算出する。
ブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401で算出された像ブレおよび並進ブレ演算部402で算出された像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、カメラボディ2AのCPU21から通知された像面70の位置における像ブレ量を算出する。
【0158】
以上説明した第4の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)ブレ補正装置は、交換レンズ3Aによって像面70に形成された被写体像を撮像する撮像素子22と、像面70における位置を決定するCPU21と、CPU21により決定した位置の情報を交換レンズ3Aへ送信するCPU21と、を有するカメラボディ2Aと、ブレ補正するブレ補正光学系33と、カメラボディ2Aから位置の情報を受信するブレ補正部40と、カメラボディ2Aから受信した位置と振れセンサ39で検出した振れとに基づき像ブレΔy2を演算するブレ補正部40と、像ブレΔy2を抑える向きにブレ補正光学系33を移動するブレ補正駆動機構37と、を有する交換レンズ3Aとを備える。これにより、例えば、カメラボディ2AのCPU21が決定した像面70の中央以外の位置において、適切に像ブレを抑えることができる。とくに、交換レンズ3Aの焦点距離fが短い場合(もしくは、撮像素子22のサイズと焦点距離fとの関係で、画角が広くなる場合)に好適である。
【0159】
(2)交換レンズ3Aのブレ補正部40は、振れセンサ39の出力と、交換レンズ3Aの焦点距離fとにより像ブレΔy2を演算する。これにより、像面70の中央以外の位置において適切に像ブレΔy2を算出でき、この像ブレΔy2に基づいて適切に像ブレを抑えることができる。
【0160】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態は、第4の実施の形態と同様に、
図10のカメラ1Aを用いる。
第5の実施の形態による像ブレ補正は、専ら交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させて行うが、カメラボディ2AのCPU21のブレ補正部21aと交換レンズ3Aのブレ補正部40との双方が演算を行う点で、第4の実施の形態と相違する。
カメラ1Aは、
図10に例示した一眼レフタイプでも、ミラー24を備えないミラーレスタイプでもよい。
また、交換レンズ3Aとカメラボディ2Aとを一体にしたレンズ一体型のカメラとして構成してもよい。
【0161】
<像ブレを算出する位置>
カメラボディ2AのCPU21は、例えば、第1の実施の形態における(1)から(4)のいずれかの方法によって、像面70において主要被写体の像が存在する可能性が高い位置を定める。そして、CPU21は、像面70の中心を第1位置とし、上記のように定めた位置を第2位置とする。
【0162】
<カメラボディ側の演算>
CPU21のブレ補正部21aは、像面70の第1位置および第2位置における像ブレを算出する。
具体的には、角度ブレ演算部201により、振れセンサ31の角速度センサからのX軸と平行な軸回り(Pitch方向)の検出信号を用いて、回転運動によるY軸方向の像ブレと、必要な場合にはX軸方向の像ブレとを算出する。また、角度ブレ演算部201により、振れセンサ31の角速度センサからのY軸と平行な軸回り(Yaw方向)の検出信号を用いて、回転運動によるX軸方向の像ブレと、必要な場合にはY軸方向の像ブレとを算出する。
【0163】
像ブレを算出する位置が第1位置の場合、Y軸方向における像ブレΔy1を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(2)である。
また、像ブレを算出する位置が第2位置で、像面70の中心と異なる位置である場合、Y軸方向における像ブレΔy2を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(1)である。
【0164】
第5の実施の形態において、CPU21のブレ補正部21aはさらに、第1位置における像ブレΔy1と、第2位置における像ブレΔy2との比gを次式(8)により算出する。
g=Δy2/Δy1 ……(8)
上記gを、補正係数gと称する。
CPU21は、上記補正係数gを示す情報を、交換レンズ3Aのブレ補正部40へ送信する。CPU21は、Δy2とΔy1との比を示す情報の代わりに、Δy2とΔy1との差を示す情報を交換レンズ3Aのブレ補正部40へ送信してもよい。
【0165】
カメラボディ2AのCPU21が、補正係数gを示す情報をブレ補正部40へ伝えるタイミングは、例えば、CPU21が像面70において像ブレを算出する第1位置および第2位置を定めた(新たに定める場合と、更新する場合とを含む)後、補正係数gを算出したときである。
CPU21は、カメラボディ2Aおよび交換レンズ3A間の定常的な通信に上記の補正係数gの情報を含めたり、カメラボディ2Aから交換レンズ3Aへ像ブレ補正の開始を指示する通信に上記の補正係数gの情報を含めたりするなどして、すみやかに補正係数gの情報をブレ補正部40に通知する。
【0166】
<交換レンズ側の演算>
ブレ補正部40の角度ブレ演算部401は、カメラボディ2Aのブレ補正部21aの角度ブレ演算部201と同様に、角速度センサ39aによるX軸と平行な軸回り(Pitch方向)の検出信号を用いて、回転運動によるY軸方向の像ブレと、必要な場合にはX軸方向の像ブレとを算出する。また、角度ブレ演算部401は、角速度センサ39aによるY軸と平行な軸回り(Yaw方向)の検出信号を用いて、回転運動によるX軸方向の像ブレと、必要な場合にはY軸方向の像ブレとを算出する。
【0167】
<像ブレを算出する位置>
第5の実施の形態におけるブレ補正部40は、カメラボディ2AのCPU21が定める第1位置と同じ位置、本例では像面70の中心における像ブレを算出する。像ブレを算出する位置が像面70の中心であるので、Y軸方向における像ブレΔy1を表す数式は、第1の実施の形態で説明した通り、上式(2)である。
角度ブレ演算部401は、Y軸方向における像ブレΔy1に対し、カメラボディ2Aから受信部により受信した情報に基づく補正係数gを掛けることにより、像面70の第2位置のY軸方向における像ブレΔy2を算出する。
なお、カメラボディ2Aから受信した情報がΔy2とΔy1との差を示す情報である場合、角度ブレ演算部401は、像ブレΔy1に受信した情報を足し合わせることにより、像ブレΔy2を算出する。
【0168】
並進ブレ演算部402は、加速度センサ39bによるX軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるX軸方向の像ブレを算出する。また、並進ブレ演算部402は、加速度センサ39bによるY軸方向の検出信号を用いて、並進運動によるY軸方向の像ブレを算出する。
【0169】
ブレ補正光学系目標位置演算部403は、角度ブレ演算部401によって算出されたX軸方向およびY軸方向の像ブレと、並進ブレ演算部402によって算出されたX軸方向およびY軸方向の像ブレとを足し合わせて、X軸方向およびY軸方向の像ブレを算出する。
【0170】
また、ブレ補正光学系目標位置演算部403は、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレと、撮影倍率(ズーム光学系31の位置に基づいて算出する)と、カメラ1Aから被写体80までの距離(フォーカス光学系32の位置に基づいて算出する)とに基づいて、像面70の第2位置における像ブレ量を算出する。
【0171】
ブレ補正光学系目標位置演算部403は、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させて像ブレ補正を行うため、算出した像ブレ量を打ち消す向きにブレ補正光学系33を移動させるためのブレ補正光学系33の目標位置を演算する。
そして、ブレ補正光学系目標位置演算部403は、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37に対して目標位置を示す信号を送出する。
【0172】
なお、第5の実施の形態における像ブレ補正は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とを含む。
上式(1)および上式(2)は、カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正について、表したものである。これと同様の補正が、カメラ1AがYaw方向に回転した場合には、X軸方向に対して上述した補正と同様の補正が必要である。
カメラ1AがPitch方向に回転した場合におけるY軸方向の補正と、カメラ1AがYaw方向に回転した場合におけるX軸方向の補正とは、方向が異なる以外は同様であるので、X軸方向の補正の説明については省略する。
【0173】
また、カメラ1AがPitch方向とYaw方向とに回転した場合には、両回転運動によるX軸、Y軸に対する像ブレが同時に起こるので、両回転運動による像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向にそれぞれ正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後の像ブレに基づき、X軸およびY軸方向においてそれぞれ補正する。
【0174】
なお、第5の実施の形態において、第4の形態と同様に、並進ブレ演算部402によって算出される像ブレについては像面70(撮像素子22の撮像面)における位置が異なっても略一定として扱う。
第5の実施の形態の概要は、以下の通りである。
カメラボディ2Aのブレ補正部21aの角度ブレ演算部201は、像面70の第1位置(像面70の中心)および第2位置において像ブレΔy1およびΔy2を算出する。
ブレ補正部21aは、第1位置における像ブレΔy1と、第2位置における像ブレΔy2との比である補正係数gを算出し、補正係数gを示す情報を、交換レンズ3Aのブレ補正部40へ送信する。
【0175】
交換レンズ3Aのブレ補正部40の角度ブレ演算部401は、像面70の第1位置(像面70の中心)において像ブレを算出する。角度ブレ演算部401はさらに、第1位置における像ブレに対し、カメラボディ2Aから受信部により受信した情報に基づく補正係数gを掛けることにより、像面70の第2位置における像ブレを算出する。
ブレ補正部40の並進ブレ演算部402は、例えば第1位置において像ブレを算出する。
ブレ補正部40のブレ補正光学系目標位置演算部403は、第2位置における像ブレおよび並進ブレ演算部402で算出された像ブレを、X軸、Y軸の各軸の方向の向きによって正負の符号をつけて足し合わせ演算を行う。そして、足し合わせ後のX軸方向およびY軸方向の像ブレに基づき、像面70の第2位置における像ブレ量を算出する。
【0176】
以上説明した第5の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)ブレ補正装置は、交換レンズ3Aによって像面70に形成された被写体像を撮像する撮像素子22と、像面70における位置を決定するCPU21と、像面70に予め定めた第1位置(像面70の中心)およびCPU21により決定した第2位置と振れセンサ31で検出した振れとに基づき、第1位置(像面70の中心)および第2位置における像ブレΔy1および像ブレΔy2を演算するブレ補正部21aと、像ブレΔy1および像ブレΔy2の比である補正係数gまたは差の情報を交換レンズ3Aへ送信するCPU21と、を有するカメラボディ2Aと、ブレ補正するブレ補正光学系33と、第1位置(像面70の中心)と振れセンサ39で検出した振れとに基づき撮像素子22の第1位置(像面70の中心)における像ブレΔy1を演算するブレ補正部40と、カメラボディ2Aから情報を受信するブレ補正部40と、ブレ補正部40で算出した像ブレΔy1を、受信した情報に基づいて補正し、補正後の像ブレを抑える向きにブレ補正光学系33を移動するブレ補正駆動機構37と、を有する交換レンズ3Aとを備える。これにより、交換レンズ3Aのブレ補正部40は、例えば、カメラボディ2AのCPU21が決定した第2位置において、適切に像ブレを抑えることができる。とくに、交換レンズ3Aの焦点距離fが短い場合(もしくは、撮像素子22のサイズと焦点距離fとの関係で、画角が広くなる場合)に好適である。
【0177】
(2)カメラボディ2Aのブレ補正部21aは、振れセンサ31の出力と、交換レンズ3Aの焦点距離fとにより像ブレΔy1および像ブレΔy2を演算し、交換レンズ3Aのブレ補正部40は、振れセンサ39の出力と、焦点距離fとにより像ブレΔy1を演算する。これにより、交換レンズ3Aのブレ補正部40は、像面70の中央以外の第2位置における像ブレΔy2を適切に算出でき、この像ブレΔy2に基づいて適切に像ブレを抑えることができる。
【0178】
第5の実施の形態と上述した第3の実施の形態の変形例4とを組み合わせてもよい。像ブレ補正を、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26と交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37との双方を作動させて行う点は、第3の実施の形態の変形例4と共通する。また、カメラボディ2AのCPU21のブレ補正部21aと、交換レンズ3Aのブレ補正部40との双方が演算を行う点は、第5の実施の形態と共通する。
【0179】
例えば、カメラボディ2AのCPU21は、交換レンズ3Aのブレ補正部40へ、(a)像面70において像ブレを算出する第1位置の情報と、(b)交換レンズ3Aによる像ブレ補正とカメラボディ2Aによる像ブレ補正との分担比率を示す情報とを送信する。
交換レンズ3Aのブレ補正部40は、像面70の第1位置における像ブレを演算した上で、上式(6)により、交換レンズ3Aで分担する像ブレV(L)を求める。
一方、カメラボディ2Aのブレ補正部21aは、像面70の第1位置における角度ブレと像面70の第2位置における像ブレを演算した上で、上式(7)により、カメラボディ2Aで分担する像ブレV(B)を求める。
【0180】
交換レンズ3Aのブレ補正部40は、算出した像ブレV(L)と、並進ブレ演算部402で算出した像ブレとに基づいてブレ補正光学系33の目標位置を演算することにより、交換レンズ3Aのブレ補正駆動機構37を作動させて像ブレ補正を行う。
また、カメラボディ2Aのブレ補正部21aは、算出した像ブレ(B)と、並進ブレ演算部202で算出した像ブレとに基づいて撮像素子22の目標位置を演算することにより、カメラボディ2Aのブレ補正駆動機構26を作動させて行う像ブレ補正を行う。
【0181】
上述した各実施の形態や、その変形例では、ブレを止めたい位置における像ブレを補正する。そのため、像面70においてCPU21が定めた位置の像ブレを抑える一方で、像面70の他の位置では像ブレが残る場合も想定される。このような場合には、画像処理による画像復元と組み合わせてもよい。CPU21は、信号処理回路27に指示を送り、信号処理回路27によって生成された画像データのうち、上記他の位置に相当するデータに対し、例えばエッジ強調処理を強くかけるなどして像ブレを目立たなくする画像復元処理を実行させる。
【符号の説明】
【0182】
1、1A…カメラ2、2A…カメラボディ3、3A…交換レンズ21…CPU21a、40…ブレ補正部22…撮像素子26,37…ブレ補正駆動機構31,39…振れセンサ33…ブレ補正光学系70…像面80…被写体