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特許7484926ポリイミド前駆体、樹脂組成物、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
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  • 特許-ポリイミド前駆体、樹脂組成物、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体、樹脂組成物、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/12 20060101AFI20240509BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20240509BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240509BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20240509BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240509BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240509BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20240509BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240509BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G73/12
C08F290/14
C08F2/50
G03F7/037 501
G03F7/038 504
C09D4/02
C09D179/08 A
H01L21/90 S
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021550963
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2019039543
(87)【国際公開番号】W WO2021070232
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永見 直斗
(72)【発明者】
【氏名】松川 大作
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 伸行
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 篤太郎
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139028(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044874(WO,A1)
【文献】特開平09-090630(JP,A)
【文献】特開2001-254014(JP,A)
【文献】特開2013-117669(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061727(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/133182(WO,A1)
【文献】特開2007-099842(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108384002(CN,A)
【文献】特開平07-173287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
G03F 7/037
G03F 7/038
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する、ポリイミド前駆体。
【化28】
(式(1)中、Xは1以上の芳香族基を有する4価の基である。Xが下記式(11)で表される基である場合、Zはカルボニル基以外の2価の基である。
【化29】
は下記式(21)~(22)又は(24)で表される2価の基からなる群から選択される1種以上の基を連結してなる2価の基である。
【化30】
(式(21)中、R11は、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を有する炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。nは0~4の整数である。
式(22)中、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を有する炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。
式(24)中、X11は、酸素原子又は硫黄原子である。)
に含まれる式(21)で表される2価の基の数をe、式(22)で表される2価の基の数をf、式(24)で表される2価の基の数をhとしたときに、e≧3、f≧2、h≧0であり、e+f+h≧5である。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。R及びRの少なくとも一方が式(2)で表される1価の基である。
【化31】
(式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、mは1~10の整数である。)
-COOR基と-CO-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR基と-CONH-基とは互いにオルト位置にある。)
【請求項2】
がさらに前記式(24)で表される2価の基を含む、請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項3】
前記式(1)において、h≧2である、請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体。
【請求項4】
前記式(1)において、e≧4である、請求項1~3のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【請求項5】
前記式(21)において、n=0である、請求項1~4のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【請求項6】
前記式(22)において、R12及びR13が、それぞれ独立に、メチル基又はトリフルオロメチル基である、請求項1~5のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【請求項7】
前記式(24)において、X11が酸素原子である、請求項1~6のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【請求項8】
が、下記式(31)で表される2価の基を含む、請求項1~7のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【化32】
(式(31)中、R11、n、R12、及びR13は、前記式(21)及び(22)で定義した通りである。)
【請求項9】
が、下記式で表される2価の基のいずれかを含む、請求項1~8のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【化33】
【請求項10】
が、下記式で表される4価の基のいずれかである、請求項1~9のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【化34】
(式中、Z及びZは、それぞれ独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合である。Zは、カルボニル基以外の2価の基である。)
【請求項11】
が、エーテル結合(-O-)又はスルフィド結合(-S-)を含む、請求項10に記載のポリイミド前駆体。
【請求項12】
が、芳香族炭化水素基を有する2価の基を含む、請求項10又は11に記載のポリイミド前駆体。
【請求項13】
が、-O-Ar-O-、-S-Ar-S-、又は-COO-Ar-OOC-(Arは、ベンゼン環を含む2価の基、ナフタレン環を含む2価の基、又はアントラセン環を含む2価の基である。)で表される2価の基を含む、請求項10~12のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のポリイミド前駆体を含む樹脂組成物。
【請求項15】
(A)請求項1~13のいずれかに記載のポリイミド前駆体と、
(B)重合性モノマーと、
(C)光重合開始剤と、
を含む感光性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項17】
前記加熱処理の温度が200℃以下である請求項16に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項18】
請求項15に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項19】
パターン硬化膜である請求項18に記載の硬化膜。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項21】
請求項20に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体、樹脂組成物、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドが用いられている。(例えば、特許文献1参照)。
近年、電子機器の高性能化やネットワーク技術の飛躍的な進歩に伴い、データ伝送の大容量化、高速化が急速に進み、取り扱われる信号周波数が高周波数化する傾向にある。一般的に周波数が高くなるほど信号の伝送性が損なわれるため、低伝送損失材料の要求が高まっている。しかしながら、特許文献1等に記載の従来のポリイミドでは、そのような要求に十分に応えることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-337652号公報
【文献】国際公開第2018/179382号
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、高周波数帯域においても伝送損失が低い材料を提供可能なポリイミド前駆体を提供することである。
【0005】
本発明者らは、ポリイミド前駆体の構造と極性との関係に着目して鋭意検討を行った結果、特定の構造を有する構造単位を採用することで、高周波数帯域においても低い伝送損失を実現できることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下のポリイミド前駆体等が提供される。
1.下記式(1)で表される構造単位を有する、ポリイミド前駆体。
【化1】
(式(1)中、Xは1以上の芳香族基を有する4価の基である。Xが下記式(11)で表される基である場合、Zはカルボニル基以外の2価の基である。
【化2】
は下記式(21)~(24)で表される2価の基からなる群から選択される1種以上の基を連結してなる2価の基である。
【化3】
(式(21)中、R11は、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を有する炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。nは0~4の整数である。
式(22)中、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を有する炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。
式(23)中、Cyは、炭素数3~10の環状脂肪族炭化水素基である。
式(24)中、X11は、酸素原子又は硫黄原子である。)
に含まれる式(21)で表される2価の基の数をe、式(22)で表される2価の基の数をf、式(23)で表される2価の基の数をg、式(24)で表される2価の基の数をhとしたときに、e≧1、f≧0、g≧0、h≧0であり、e+f+g+h≧4である。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。
【化4】
(式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、mは1~10の整数である。)
-COOR基と-CO-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR基と-CONH-基とは互いにオルト位置にある。)
2.Yが前記式(21)で表される2価の基と、前記式(22)で表される2価の基とを含む、1に記載のポリイミド前駆体。
3.Yが前記式(21)で表される2価の基と、前記式(24)で表される2価の基とを含む、1又は2に記載のポリイミド前駆体。
4.Yが前記式(21)で表される2価の基と、前記式(22)で表される2価の基と、前記式(24)で表される2価の基とを含む、1~3のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
5.前記式(1)において、e≧3である、1~4のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
6.前記式(1)において、e≧3であり、f≧2である、1~5のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
7.前記式(1)において、e≧3であり、h≧2である、1~6のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
8.前記式(1)において、e≧4である、1~7のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
9.前記式(1)において、e+f+g+h≧5である、1~8のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
10.前記式(21)において、n=0である、1~9のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
11.前記式(22)において、R12及びR13が、それぞれ独立に、メチル基又はトリフルオロメチル基である、1~10のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
12.前記式(24)において、X11が酸素原子である、1~11のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
13.Yが、下記式(31)又は(32)で表される2価の基を含む、1~12のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【化5】
(式(31)、(32)中、R11、n、R12、R13及びX11は、前記式(21)、(22)及び(24)で定義した通りである。)
14.Yが、下記式で表される2価の基のいずれかを含む、1~13のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【化6】
15.Xが、下記式で表される4価の基のいずれかである、1~14のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
【化7】
(式中、Z及びZは、それぞれ独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合である。Zは、カルボニル基以外の2価の基である。)
16.Zが、エーテル結合(-O-)又はスルフィド結合(-S-)を含む、1~15のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
17.Zが、芳香族炭化水素基を有する2価の基を含む、1~16のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
18.Zが、-O-Ar-O-、-S-Ar-S-、又は-COO-Ar-OOC-(Arは、ベンゼン環を含む2価の基、ナフタレン環を含む2価の基、又はアントラセン環を含む2価の基である。)で表される2価の基を含む、1~17のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
19.前記式(1)において、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である、1~18のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
20.前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が式(2)で表される1価の基である、1~18のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
21.1~20のいずれかに記載のポリイミド前駆体を含む樹脂組成物。
22.(A)1~20のいずれかに記載のポリイミド前駆体と、
(B)重合性モノマーと、
(C)光重合開始剤と、
を含む感光性樹脂組成物。
23.22に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
24.前記加熱処理の温度が200℃以下である23に記載のパターン硬化膜の製造方法。
25.22に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
26.パターン硬化膜である25に記載の硬化膜。
27.25又は26に記載の硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
28.27に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【0006】
本発明によれば、高周波数帯域においても伝送損失が低い材料を提供可能なポリイミド前駆体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明のポリイミド前駆体、樹脂組成物、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書における「(メタ)アクリル基」とは、「アクリル基」及び「メタクリル基」を意味する。
【0010】
[ポリイミド前駆体]
本発明のポリイミド前駆体は、式(1)で表される構造単位を有する。
【化8】
(式(1)中、Xは1以上の芳香族基を有する4価の基である。Xが下記式(11)で表される基である場合、Zはカルボニル基以外の2価の基である。
【化9】
は下記式(21)~(24)で表される2価の基からなる群から選択される1種以上の基を連結してなる2価の基である。
【化10】
(式(21)中、R11は、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を有する炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。nは0~4の整数である。
式(22)中、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を有する炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。
式(23)中、Cyは、炭素数3~10の環状脂肪族炭化水素基である。
式(24)中、X11は、酸素原子又は硫黄原子である。)
に含まれる式(21)で表される2価の基の数をe、式(22)で表される2価の基の数をf、式(23)で表される2価の基の数をg、式(24)で表される2価の基の数をhとしたときに、e≧1、f≧0、g≧0、h≧0であり、e+f+g+h≧4である。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。
【化11】
(式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、mは1~10の整数である。)
-COOR基と-CO-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR基と-CONH-基とは互いにオルト位置にある。)
【0011】
上記Yとして用いる式(21)~(24)の2価の基は、いずれもポリイミド前駆体の主鎖の極性を低く抑えることができる。また、そのような部分構造をY中に一定以上の長さで連続的に導入することで(e+f+g+h≧4)、高極性のイミド環の分布密度が低く抑えられたポリイミドを得ることができる。本発明のポリイミド前駆体は、上記作用が相まって、高周波数帯域においても低い伝送損失を示す材料を提供することが可能である。具体的には、本発明のポリイミド前駆体を用いれば、高周波数帯域(例えば、10GHz以上)においても低い比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を示す樹脂材料が形成できる。
【0012】
式(1)において、Yは式(21)~(24)のうち、式(21)で表される2価の基を含み、その他、式(22)~(24)で表される2価の基のうちいずれを含んでもよい。
は、式(21)で表される2価の基と、式(22)で表される2価の基とを含んでもよいし、式(21)で表される2価の基と、式(24)で表される2価の基とを含んでもよいし、式(21)で表される2価の基と、式(22)で表される2価の基と、式(24)で表される2価の基とを含んでもよい。
【0013】
に含まれる式(21)で表される2価の基の数eは、例えば、1以上、2以上又は3以上であり、また、10以下、又は8以下であり得る。eは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る。
eは好ましくは3以上であり、4以上としてもよい。
【0014】
の式(21)で表される2価の基は、n=0(即ち、無置換のフェニレン基)であることが好ましい。
【0015】
の式(22)で表される2価の基において、R12及びR13は、それぞれ独立に、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
に含まれる式(22)で表される2価の基の数fは、例えば、0以上、1以上、2以上又は3以上であり、また、10以下、又は8以下であり得る。fは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る。
【0016】
の式(23)で表される2価の基において、Cyは、炭素数3~8の2価のシクロアルカンであることが好ましく、炭素数3~6の2価のシクロアルカンであることがより好ましい。
に含まれる式(23)で表される2価の基の数gは、例えば、0以上、1以上、2以上又は3以上であり、また、10以下、又は8以下であり得る。gは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る。
【0017】
の式(24)で表される2価の基において、X11は酸素原子であることが好ましい。
に含まれる式(24)で表される2価の基の数hは、例えば、0以上、1以上、2以上又は3以上であり、また、10以下、又は8以下であり得る。hは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る。
【0018】
において、式(21)で表される2価の基と、式(22)で表される2価の基とが含まれる場合、eを3以上、かつfを2以上としてもよい。
において、式(21)で表される2価の基と、式(24)で表される2価の基とが含まれる場合、eを3以上、かつhを2以上としてもよい。
【0019】
式(1)において、e、f、g及びhの合計(e+f+g+h)は5以上又は6以上としてもよい。e+f+g+hの上限は特にないが、例えば、感光特性の観点から20以下が好ましく、15以下がさらに好ましい。
【0020】
は、好ましくは下記式(31)又は(32)で表される2価の基を含む。
【化12】
(式(31)、(32)中、R11、n、R12、R13及びX11は、式(21)、(22)及び(24)で定義した通りである。)
【0021】
は、下記式(33)で表される2価の基を含んでもよい。
【化13】
(式(33)中、R11、n、R12、R13及びX11は、式(21)、(22)及び(24)で定義した通りである。)
【0022】
は、前記式(32)で表される2価の基を2つ以上含んでもよい。
は、下記式(34)又は(35)で表される2価の基を含んでもよい。
【化14】
(式(34)、(35)中、R11、n、R12、R13及びX11は、式(21)、(22)及び(24)で定義した通りである。)
【0023】
は、好ましくは下記式で表される2価の基のいずれかを含むか、又は、下記式で表される2価の基のいずれかである。
【化15】
【0024】
式(1)のXの1以上(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)の芳香族基を有する4価の基において、芳香族基は、芳香族炭化水素基(炭素数は例えば6~20)でもよく、芳香族複素環式基(原子数は例えば5~20)でもよい。芳香族炭化水素基が好ましい。
【0025】
式(1)のXの芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環から形成される2~4価(2価、3価又は4価)の基、ナフタレンから形成される2~4価の基、ペリレンから形成される2~4価の基等が挙げられる。
【0026】
は、好ましくは下記式で表される4価の基のいずれかである。
【化16】
式中、Z及びZは、それぞれ独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合である。Zは、カルボニル基以外の2価の基である。
【0027】
及びZの2価の基は、-O-、-S-、メチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、又はジフルオロメチレン基であることが好ましく、-O-がより好ましい。
【0028】
一実施形態において、Zは、エーテル結合(-O-)又はスルフィド結合(-S-)を含む。
他の一実施形態において、Zは、芳香族炭化水素から形成される2価の基を含むことが好ましく、ベンゼン環から形成される2価の基、ナフタレン環から形成される2価の基及びアントラセン環からから形成される2価の基からなる群から選択される1以上を含むことが好ましい。
【0029】
の2価の基としては、例えば、-O-Ar-O-、-S-Ar-S-、-COO-Ar-OOC-等が挙げられる。ここで、Arは、ベンゼン環から形成される2価の基、ナフタレン環から形成される2価の基又はアントラセン環からから形成される2価の基である。
【0030】
は、カルボニル基ではないが、他の2価の基と共にカルボニル基を含んでもよい。Zがカルボニル基である場合は伝送損失に劣る。Zがカルボニル基ではないこと、又はカルボニル基を含まないことによって、伝送損失が改善される。また、Zがカルボニル基と他の2価の基とを含む場合も、伝送損失が改善される。このような作用が発揮される理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推定される。即ち、ポリイミド前駆体をイミド化(閉環反応)して得られるポリイミドにおいて、カルボニル基及びイミド環は主鎖の極性を高めるため、伝送損失を低下させる原因になる。このとき、Zがカルボニル基ではないこと、又はカルボニル基を含まないことによって、主鎖の極性が低下し、伝送損失が改善される。また、Zがカルボニル基と他の2価の基とを含む場合は、他の2価の基の分だけ主鎖が長くなることによってイミド環の分布密度を低下できるため、伝送損失が改善される。
【0031】
一実施形態において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。当該実施形態は、式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を、非感光性樹脂組成物用のポリイミド前駆体として用いる場合に好適であり、この場合、R及びRとして、式(2)で表される基を含む必要は必ずしもない。
【0032】
他の一実施形態において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方は式(2)で表される1価の基である。当該実施形態は、式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を、感光性樹脂組成物用のポリイミド前駆体として用いる場合に好適であり、この場合、R及びRの両方が式(2)で表される1価の基であることがより好ましい。
【0033】
及びRの炭素数1~4(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0034】
式(2)のR~Rの炭素数1~3(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基等が挙げられる。メチル基が好ましい。
【0035】
式(1)で表される構造単位の含有量は、(A)成分の全構成単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0036】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、例えば、下記式(22)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記式(23)で表されるジアミノ化合物とを、N-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」という。)等の有機溶剤中にて反応させて得られるポリアミド酸である。また、かかるポリアミド酸に下記式(24)で表される化合物を加え、有機溶剤中で反応させて全体的又は部分的に式(2)に対応するエステル基を導入して得られる、エステル化されたポリアミド酸であり得る。
【化17】
(式(22)中、Xは式(1)で定義した通りである。式(23)中、Yは式(1)で定義した通りである。式(24)中、R~R及びmは式(2)で定義した通りである。)
【0037】
式(22)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び式(23)で表されるジアミノ化合物は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0038】
式(1)で表される構造単位の含有量は、ポリアミド前駆体の全構成単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0039】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を、感光性樹脂組成物用のポリイミド前駆体として用いる場合、ポリイミド前駆体中の全カルボキシ基及び全カルボキシエステルに対して、式(2)で表される基でエステル化されたカルボキシ基の割合が、50モル%以上であることが好ましく、60~100モル%がより好ましく、70~90モル%がより好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0040】
(A)成分の分子量に特に制限はないが、重量平均分子量で10,000~50,000であることが好ましく、15,000~45,000であることがより好ましく、18,000~40,000であることがさらに好ましい。
(A)成分の重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0041】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)は、上述した本発明のポリアミド前駆体を含む。
樹脂組成物としては、非感光性樹脂組成物及び感光性樹脂組成物が挙げられる。感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物及びネガ型感光性樹脂組成物のいずれであってもよい。
本発明の樹脂組成物は、電子部品用材料として好適に使用できる。
【0042】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した本発明のポリアミド前駆体(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)重合性モノマー(以下、「(B)成分」ともいう。)、及び(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)を含有し、他の成分も含有し得る。以下、(A)成分以外の各成分について説明する。
【0043】
((B)成分:重合性モノマー)
(B)成分は、(A)成分と架橋し、又は(B)成分同士が重合して架橋ネットワークを形成する。(B)成分は、重合性の不飽和二重結合を含む基を有することが好ましく、架橋密度向上、光感度向上、及び現像後のパターンの膨潤の抑制のため、2~4(好ましくは2又は3)の重合性の不飽和二重結合を含む基を有することが好ましい。当該基は、好ましくは、光重合開始剤により重合可能である観点から(メタ)アクリル基又はアリル基である。
【0044】
(B)成分としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、メタクリロイルオキシエチルイソシアヌレート等が挙げられ、この中でも、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートが好ましい。
【0045】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1~50質量部が好ましい。硬化物の疎水性向上の観点から、より好ましくは3~45質量部、さらに好ましくは5~40質量部である。
上記範囲内である場合、実用的なレリ-フパターンが得られやすく、未露光部の現像後残滓を抑制しやすい。
【0046】
((C)成分:光重合開始剤)
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体;2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、下記式で表される化合物等のオキシムエステル類等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。光感度の点で、オキシムエステル類が好ましい。
【化18】
【0047】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~5質量部である。上記範囲内の場合、光架橋が膜厚方向で均一となりやすく、実用的なレリ-フパターンを得やすくなる。
【0048】
(溶剤)
溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3-メチルメトキシプロピオネート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、N-ジメチルモルホリン等が挙げられ、通常、他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。
この中でも、各成分の溶解性と感光性樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
【0049】
溶剤の含有量は、特に限定されないが、一般的に、(A)成分100質量部に対して、50~1000質量部である。
【0050】
(他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、カップリング剤(接着助剤)、界面活性剤又はレベリング剤、防錆剤、及び重合禁止剤等を含有してもよい。
【0051】
(カップリング剤)
カップリング剤は、通常、現像後の加熱処理において、(A)成分と反応して架橋する、又は加熱処理する工程においてカップリング剤自身が重合する。これにより、得られる硬化物と基板との接着性をより向上させることができる。
【0052】
好ましいシランカップリング剤としては、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有する化合物が挙げられる。これにより、200℃以下の低温下で硬化を行った場合も基板との接着性をさらに高めることができる。
低温での硬化を行った際の接着性の発現に優れるため、下記式(61)で表される化合物がより好ましい。
【化19】
(式(61)中、R61及びR62は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。jは1~10の整数であり、kは1~3の整数である。)
【0053】
式(61)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2-ウレイドエチルトリメトキシシラン、2-ウレイドエチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4-ウレイドブチルトリメトキシシラン、4-ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3-ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0054】
シランカップリング剤として、ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤、及び分子内にウレア結合を有するシランカップリング剤を併用すると、さらに低温硬化時の硬化物の基板への接着性を向上することができる。
【0055】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n-プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n-ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert-ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n-プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n-ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert-ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn-プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n-ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert-ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n-プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n-ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert-ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4-ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン、及び下記式(62)で表わされる化合物等が挙げられる。中でも、特に、基板との接着性をより向上させるため、式(62)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化20】
(式(62)中、R63はヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基であり、R64及びR65は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。oは1~10の整数であり、pは1~3の整数である。)
【0057】
式(62)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤は、さらに、窒素原子を有する基を含むことが好ましく、さらにアミノ基又はアミド結合を有するシランカップリング剤が好ましい。
さらにアミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-グリシドキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
アミド結合を有するシランカップリング剤としては、下記式(63)で表される化合物等が挙げられる。
66-(CH-CO-NH-(CH-Si(OR67 (63)
(式(63)中、R66はヒドロキシ基又はグリシジル基であり、q及びrは、それぞれ独立に、1~3の整数であり、R67はメチル基、エチル基又はプロピル基である。)
【0060】
シランカップリング剤を用いる場合、シランカップリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0061】
(界面活性剤又はレベリング剤)
硬化性樹脂組成物は、界面活性剤又はレベリング剤を含むことで、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)及び現像性を向上させることができる。
【0062】
界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファックF171」、「F173」、「R-08」(以上、DIC株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0063】
界面活性剤又はレベリング剤を含む場合、界面活性剤又はレベリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。
【0064】
(防錆剤)
硬化性樹脂組成物は、防錆剤を含むことで、銅及び銅合金の腐食の抑制や変色の防止ができる。
防錆剤としては、例えば、トリアゾール誘導体及びテトラゾール誘導体等が挙げられる。
【0065】
防錆剤を用いる場合、防錆剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらに好ましい。
【0066】
(重合禁止剤)
硬化性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することで、良好な保存安定性を確保することができる。
重合禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤、ラジカル重合抑制剤等が挙げられる。
【0067】
重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、2,5-トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類等が挙げられる。
【0068】
重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量としては、感光性樹脂組成物の保存安定性及び得られる硬化物の耐熱性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましく、0.05~5質量部がさらに好ましい。
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物は、本質的に、(A)~(C)成分、並びに任意に溶剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、防錆剤、及び重合禁止剤からなってもよく、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
本発明の感光性樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、(A)~(C)成分、又は、(A)~(C)成分並びに任意に溶剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、防錆剤、及び重合禁止剤であってもよい。
【0070】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の樹脂組成物の硬化することで得ることができる。本発明の硬化物は、パターン硬化膜として用いてもよく、パターンがない硬化膜として用いてもよい。本発明の硬化膜の膜厚は、5~20μmが好ましい。
【0071】
[パターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜の製造方法では、上述の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。これにより、パターン硬化膜を得ることができる。
【0072】
パターンがない硬化物を製造する方法は、例えば、上述の感光性樹脂膜を形成する工程と加熱処理する工程とを備える。さらに、露光する工程を備えてもよい。
【0073】
基板としては、ガラス基板、Si基板(シリコンウエハ)等の半導体基板、TiO基板、SiO基板等の金属酸化物絶縁体基板、窒化ケイ素基板、銅基板、銅合金基板等が挙げられる。
【0074】
塗布方法に特に制限はないが、スピナー等を用いて行うことができる。
【0075】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
乾燥温度は90~150℃が好ましく、溶解コントラスト確保の観点から、90~120℃がより好ましい。
乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましい。
乾燥は、2回以上行ってもよい。
これにより、上述の感光性樹脂組成物を膜状に形成した感光性樹脂膜を得ることができる。
【0076】
感光性樹脂膜の膜厚は、5~100μmが好ましく、6~50μmがより好ましく、7~30μmがさらに好ましい。
【0077】
パターン露光は、例えばフォトマスクを介して所定のパターンに露光する。
照射する活性光線は、i線、広帯域(BB)等の紫外線、可視光線、放射線等が挙げられるが、i線であることが好ましい。
露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0078】
現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
現像液として用いる有機溶剤は、現像液としては、感光性樹脂膜の良溶媒を単独で、又は良溶媒と貧溶媒を適宜混合して用いることができる。
良溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ガンマブチロラクトン、α-アセチル-ガンマブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
貧溶媒としては、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び水等が挙げられる。
【0079】
現像液に界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0080】
現像時間は、例えば感光性樹脂膜を浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍とすることができる。
現像時間は、用いる(A)成分によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間より好ましく、生産性の観点からは、20秒間~5分間がさらに好ましい。
【0081】
現像後、リンス液により洗浄を行ってもよい。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を単独又は適宜混合して用いてもよく、また段階的に組み合わせて用いてもよい。
【0082】
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化物を得ることができる。
(A)成分のポリイミド前駆体が、加熱処理工程によって、閉環反応を起こし、通常対応するポリイミドとなる。
【0083】
加熱処理の温度は、250℃以下が好ましく、120~250℃がより好ましく、200℃以下又は140~200℃がさらに好ましい。
上記範囲内であることにより、基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0084】
加熱処理の時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。上記範囲内であることにより、架橋反応又は閉環反応を充分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0085】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0086】
[層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜、電子部品]
本発明の硬化物は、パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜等からなる群から選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス、積層デバイス(マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ等)等の電子部品等を製造することができる。
【0087】
本発明の電子部品である半導体装置の製造工程の一例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品である多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。
図1において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成される。その後、前記半導体基板1上に層間絶縁膜4が形成される。
【0088】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光樹脂層5が、層間絶縁膜4上に形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる。
【0089】
窓6Aが露出した層間絶縁膜4は、選択的にエッチングされ、窓6Bが設けられる。
次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5を腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が除去される。
【0090】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成し、第1導体層3との電気的接続を行う。
3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。
【0091】
次に、上述の感光性樹脂組成物を用いて、パターン露光により窓6Cを開口し、表面保護膜8を形成する。表面保護膜8は、第2導体層7を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
尚、前記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【実施例
【0092】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0093】
[重量平均分子量の測定又は推定]
下記の合成実施例及び合成比較例で得られたポリイミド前駆体について、下記の方法で重量平均分子量の測定又は推定を行った。
(重量平均分子量の推定)
重量平均分子量の推定値は、ポリイミド前駆体の合成時における原料アミン成分と原料酸成分の仕込みモル比、各分子量、合成方法及び合成条件に基づいて推定した。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(測定値)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により、以下の条件で求める。
【0094】
0.5mgのポリイミド前駆体A1に対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C-R4A Chromatopac
測定条件:カラムGelpack GL-S300MDT-5×2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/L)、HPO(0.06mol/L)
流速:1.0mL/分、検出器:UV270nm
【0095】
下記の合成実施例及び合成比較例で用いた材料を以下に示す。
【化21】
【化22】
【0096】
合成実施例1(ポリイミド前駆体A1の合成)
3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)5.00gをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)64.0gに溶解した。2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)6.29gを添加した後、室温(23℃、以下同じ)で3時間撹拌してポリイミド前駆体A1を得た。A1の重量平均分子量(推定値)は75,000であった。
【0097】
合成実施例2(ポリイミド前駆体A2の合成)
ODPA5.00gをNMP58.2gに溶解した。1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)―2-プロピル]ベンゼン(Bisaniline P)5.27gを添加した後、室温で3時間撹拌してポリイミド前駆体A2を得た。ポリイミド前駆体A2の重量平均分子量(推定値)は75,000であった。
【0098】
合成実施例3(ポリイミド前駆体A3の合成)
ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン(TAHQ)5.00gをNMP 52.4gに溶解した。BAPP 4.25gを添加した後、室温で3時間撹拌してポリイミド前駆体A3を得た。また、ポリイミド前駆体A3の重量平均分子量(推定値)は75,000であった。
【0099】
合成実施例4(ポリイミド前駆体A4の合成)
TAHQ 5.00gをNMP 58.8gに溶解した。2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(6F-BAPP)5.37gを添加した後、室温で5時間撹拌してポリイミド前駆体A4を得た。また、ポリイミド前駆体A4の重量平均分子量(推定値)は75,000であった。
【0100】
合成実施例5(ポリイミド前駆体A5の合成)
TAHQ 5.00gをNMP 50.0gに溶解した。4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)3.82gを添加した後、室温で5時間撹拌してポリイミド前駆体A5を得た。ポリイミド前駆体A5の重量平均分子量(推定値)は75,000であった。
【0101】
合成比較例1(ポリイミド前駆体A6の合成)
BAPP 12.1gと、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(LP-7100)0.08gをNMP 90gに溶解した。その後、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)10.00gを加え、60分間撹拌してポリイミド前駆体A6を得た。ポリイミド前駆体A6の重量平均分子量(実測値)を合成実施例1に記載の方法で測定したところ、95,000であった。
【0102】
合成比較例2(ポリイミド前駆体A7の合成)
1,3-フェニレンジアミン(MPD)1.51gと4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)3.42gをNMP 60gに溶解した。その後、BTDA 10.00gを加え、60分間撹拌してポリイミド前駆体A7を得た。ポリイミド前駆体A7の重量平均分子量(実測値)を合成実施例1に記載の方法で測定したところ、53,000であった。
【0103】
合成比較例3(ポリイミド前駆体A8の合成)
4,4’-オキシジアニリン(ODA)13.00gと、4,4’-ジアミノ-3-カルボキサミド-ジフェニルエーテル(DDEC)0.88gと、LP-7100 0.90gをNMP 140gに溶解した。その後、ピロメリット酸無水物(PMDA)7.88gと、BTDA 11.64gを加え、60分間撹拌し、ポリイミド前駆体A8を得た。ポリイミド前駆体A8の重量平均分子量(実測値)を合成実施例1に記載の方法で測定したところ、108,000であった。
【0104】
合成比較例4(ポリイミド前駆体A9の合成)
PMDA 5.00gをNMP 41.7gに溶解した。1,4-フェニレンジアミン(PPD)2.35gを添加した後、室温で3時間撹拌してポリイミド前駆体A9を得た。ポリイミド前駆体A9の重量平均分子量(推定値)は75,000であった。
【0105】
合成比較例5(ポリイミド前駆体A10の合成)
4,4’-ビフタル酸無水物(S-BPDA)5.00gをNMP 38.2gに溶解した。PPD 1.75gを添加した後、室温で3時間撹拌してポリイミド前駆体A10を得た。ポリイミド前駆体A10の重量平均分子量(測定値)を合成実施例1に記載の方法で測定したところ、52,000であった。
【0106】
合成実施例6(ポリイミド前駆体A11の合成)
ODPA 47.08g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)5.54gと1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.24gをNMP 380gに溶解し、30℃で1時間撹拌した。BAPP 53.04gをNMP 145gに溶解した溶液を加えた後、30℃で3時間撹拌した。その後室温下で一晩撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液に無水トリフルオロ酢酸を59.70g加え、45℃で3時間撹拌し、HEMA 40.37g及びベンゾキノン0.08gを加え45℃で20時間撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体A11を得た。ポリイミド前駆体A11の重量平均分子量(測定値)を合成実施例1に記載の方法で測定したところ、29,692であった。
【0107】
[エステル化率の測定]
ポリイミド前駆体A11のエステル化率(ODPAのカルボキシ基のHEMAとの反応率)を、以下の条件でNMR測定を行い、算出した。エステル化率は、全カルボキシ基及び全カルボキシエステルに対し56モル%又は68モル%であった(残部はカルボキシ基であった)。
測定機器:ブルカー・バイオスピン社製 AV400M
磁場強度:400MHz
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
溶剤:ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0108】
合成実施例7(ポリイミド前駆体A12の合成)
ODPA 46.53g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)5.46gと1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.24gをNMP501.68gに溶解し、30℃で1時間撹拌した。Bisaniline P 38.76gを加えた後、30℃で3時間撹拌した。その後室温下で一晩撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液に無水トリフルオロ酢酸を58.91g加え、45℃で3時間撹拌し、HEMA39.81g及びベンゾキノン0.09gを加え45℃で20時間撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体A12を得た。ポリイミド前駆体A12の重量平均分子量(測定値)は24,800であった。ポリイミド前駆体A12のエステル化率を合成実施例6と同じ方法で測定したところ、53モル%であった。
【0109】
合成実施例8(ポリイミド前駆体A13の合成)
ODPA 23.54g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)2.77gと1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.12gをNMP 250.00gに溶解し、30℃で1時間撹拌した。1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(Bisaniline M)22.21gをNMP 108.75gに溶解した溶液を加えた後、30℃で3時間撹拌した。その後室温下で一晩撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液に無水トリフルオロ酢酸を29.86g加え、45℃で3時間撹拌し、HEMA20.19g及びベンゾキノン0.04gを加え45℃で20時間撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体A13を得た。ポリイミド前駆体A13の重量平均分子量(測定値)は23,500であった。ポリイミド前駆体A13のエステル化率を合成実施例6と同じ方法で測定したところ、73モル%であった。
【0110】
合成比較例6(ポリイミド前駆体A14の合成)
ODPA 47.08g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)5.56gと1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.24gをNMP 380.00gに溶解し、30℃で1時間撹拌した。m-トリジン(DMAP)27.44gをNMP 145.00gに溶解した溶液を加えた後、30℃で3時間撹拌した。その後室温下で一晩撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液に無水トリフルオロ酢酸を59.71g加え、45℃で3時間撹拌し、HEMA40.37g及びベンゾキノン0.08gを加え45℃で20時間撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体A14を得た。ポリイミド前駆体A14の重量平均分子量(測定値)を合成実施例1に記載の方法で測定したところ、27,000であった。ポリイミド前駆体A14のエステル化率を合成実施例6と同じ方法で測定したところ、81モル%であった。
【0111】
ポリイミド前駆体A1~A10は、非感光性樹脂組成物の樹脂材料として使用することができ、ポリイミド前駆体A11~A14は、感光性樹脂組成物の樹脂材料として使用することができる。
【0112】
以下の実施例及び比較例で用いた各成分を以下に示す。
【0113】
((A)成分:ポリイミド前駆体)
・ポリイミド前駆体A1~A14:合成実施例及び合成比較例で得られたポリイミド前駆体A1~A14
【0114】
((B)成分:重合性モノマー)
・「TEGDMA」(新中村化学工業株式会社製、トリエチレングリコールジメタクリラート、下記式で表される化合物)
【化23】
【0115】
((C)成分:光重合開始剤)
・「IRGACURE OXE 02」(BASFジャパン株式会社製、下記式で表される化合物)
【化24】
・「G-1820(PDO)」(Lambson社製、下記式で表される化合物)
【化25】
【0116】
(溶剤)
・NMP
【0117】
(他の成分:増感剤)
・「EMK」(Aldrich社製、下記式で表される化合物、Etはエチル基を表す)
【化26】
【0118】
(他の成分:防錆剤)
・「BT」(ベンゾトリアゾール、下記式で表される化合物、城北化学工業株式会社製)
【化27】
【0119】
(他の成分:接着助剤)
・「UCT-801」(3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、United Chemical Technologies社製)
【0120】
(他の成分:重合禁止剤)
・「Taobn」(1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]-ノナ-2-エン-N,N-ジクソイド、Hampford Research社製)
【0121】
実施例1~5及び比較例1~5
合成実施例1~5及び合成比較例1~5における合成完了時の溶液(非感光性樹脂組成物)を以下の各工程で用いた。
【0122】
[硬化膜の作成、比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定]
得られた樹脂組成物をウエハ(アドバンテック社製)上に塗布し、乾燥して樹脂膜を形成した。次いで、樹脂膜を表1に示す硬化温度で加熱することで硬化して硬化膜を作製した。硬化時間は、硬化温度が200℃、230℃、250℃又は320℃の場合は2時間とし、硬化温度が375℃の場合は1時間とした。
次いで、ウエハに成膜した硬化膜(フィルム)を、カッターを用いて所定の大きさで方形状に切り込みを入れた後、ウエハから硬化膜を剥離して測定用サンプルとした。切り出した硬化膜のサイズは、測定周波数が5GHz又は10GHzの場合は6cm×10cmの方形状に切り出し、20GHzの場合は3cm×7cmの方形状に切り出した。測定用サンプルの膜厚は表1に示す通りである。
【0123】
得られた測定用サンプルを用いて、以下の測定方法により比誘電率Dk及び誘電正接Dfを測定した。結果を表1に示す。
(比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定方法)
得られた測定用サンプルを、アジレント・テクノロジー株式会社製「SPDR誘電体共振器」にセットし、測定器にはAgilent Technologies社製ベクトル型ネットワークアナライザE8364Bを、測定プログラムにはCPMA-V2をそれぞれ使用し、SPDR法(スプリットポスト誘電体共振器法)によって、周波数5GHz、10GHz及び20GHzにおいて、比誘電率Dk及び誘電正接Dfを測定した。なお、測定温度は25℃とした。表1に示す比誘電率Dk及び誘電正接Dfは、3回の測定により得られた測定値の平均値である。
【0124】
【表1】
【0125】
表1より、実施例1~5で得られた硬化膜は、比較例1~5で得られた硬化膜よりも5GHz、10GHz及び20GHzの各周波数においてDkとDfが低く、高周波数帯域においても小さい伝送損失を実現できることが分かる。当該効果は、硬化条件(硬化時間及び硬化温度)が同じである実施例と比較例を比較した場合により明確となる。
【0126】
実施例6~14及び比較例6
[感光性樹脂組成物の調製]
表2に示す成分及び配合量にて、実施例6~14及び比較例6の感光性樹脂組成物を調製した。表2における配合量は、100質量部の(A)成分に対する各成分の質量部である。
【0127】
【表2】
【0128】
[パターン硬化膜の作成、比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定]
得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例1~5及び比較例1~5と同じ方法で比誘電率Dk及び誘電正接Dfを測定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0129】
表3より、実施例6~14で得られた硬化膜は、比較例6で得られた硬化膜よりも5GHz、10GHz及び20GHzの各周波数においてDkとDfが低く、高周波数帯域においても小さい伝送損失を実現できることが分かる。当該効果は、硬化条件(硬化時間及び硬化温度)が同じである実施例と比較例を比較した場合により明確となる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等に用いることができ、本発明の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜は、電子部品等に用いることができる。
【0131】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献の内容を全て援用する。
図1