(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】センサ装置、センサ付きケーブル及び複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240509BHJP
G01R 1/04 20060101ALI20240509BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01R33/02 U
G01R1/04 G
H01B7/00 306
H01B7/00 310
(21)【出願番号】P 2023042479
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2019071248の分割
【原出願日】2019-04-03
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207402(JP,A)
【文献】特表2008-506890(JP,A)
【文献】特開2008-249369(JP,A)
【文献】特開2005-114489(JP,A)
【文献】特開2012-88182(JP,A)
【文献】特開2017-227560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 19/00
G01R 15/00
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を検出するセンサ装置であって、
第1のセンサから延出された第1の一対の接続端子と、
第2のセンサから延出された第2の一対の接続端子と、
を備え、
前記第1の一対の接続端子のうちのマイナス側である第1のマイナス側接続端子と、前記第2の一対の接続端子のうちのマイナス側である第2のマイナス側接続端子とが互いに電気的に接続されており、
前記第1の一対の接続端子のうちのプラス側である第1のプラス側接続端子と、前記第2のマイナス側接続端子とが互いに隣接するように配置されており、
前記第1のプラス側接続端子を跨いで、前記第1のマイナス側接続端子と前記第2のマイナス側接続端子とを接続するジャンパー部材をさらに備える、
センサ装置。
【請求項2】
前記第1のマイナス側接続端子は、前記第1のプラス側接続端子よりも短く形成されているとともに、
前記第2のマイナス側接続端子は、前記第2の一対の接続端子のうちプラス側である第2のプラス側接続端子よりも短く形成されている、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記ジャンパー部材は、前記第1のマイナス側接続端子と接続する第1の接続部と、前記第2のマイナス側接続端子と接続する第2の接続部と、前記第1の接続部及び前記第2の接続部の間に設けられた略半円筒状の中間部と、を一体に有して構成されており、
前記中間部は、前記第1のマイナス側接続端子及び前記第2のマイナス側接続端子の間に位置する前記第1のプラス側接続端子を跨ぐように配置されている、
請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ装置を備えるセンサ付きケーブルであって、
前記ジャンパー部材に接続される1つの電線を含み、
前記1つの電線は、前記ジャンパー部材のオモテ面に接続されるとともに、前記第1のマイナス側接続端子及び前記第2のマイナス側接続端子は、前記ジャンパー部材のウラ面に接続される、
センサ付きケーブル。
【請求項5】
請求項
4に記載のセンサ装置と接続可能なケーブルであって、
前記1つの電線と、
前記1つの電線よりも大きい外径を有する一対の太径電線と、
を備える、
複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、センサ付きケーブル及び複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冗長化や検出の精度の向上のために複数のセンサ(例えば、磁気センサ)を備えたセンサ付きケーブルが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のセンサ付きケーブルは、ケーブルと、前記ケーブルの端部に設けられた前記センサ部と、を有している。
【0003】
前記センサ部は、前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子、前記磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び前記磁気検出素子と前記信号処理回路とを一括して覆う覆い体を有する板状の検出部を有している複数の磁気センサを備え、前記各検出部は、前記センサ部と前記被検出部材との対向方向に積層されている。
【0004】
また、磁気センサは、検出部と、検出部から延出された一対の接続端子と、を有している。そして、センサ付きケーブルは、複数の磁気センサの一対の接続端子にそれぞれ電気的に接続する複数対の電線を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のセンサ付きケーブルでは、磁気センサを1つ増やすごとにケーブルを2本増やすことが必要となってしまう。そのため、複数のセンサを備える場合、電線の本数の削減が求められる。
【0007】
本発明は、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減できる構造を有するセンサ装置、これら複数のセンサを備えるセンサ付きケーブル及び複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、下記の[1]~[7]のセンサ装置、[8]のセンサ付きケーブル及び[9]の複合ケーブルを提供する。
[1]第1のセンサ(11)から延出された第1の一対の接続端子(111、112)と、第2のセンサ(12)から延出された第2の一対の接続端子(121、122)と、を備え、前記第1の一対の接続端子(111、112)のうちのマイナス側である第1のマイナス側接続端子(112)と、前記第2の一対の接続端子(121、122)のうちのマイナス側である第2のマイナス側接続端子(122)とが互いに電気的に接続されている、センサ装置。
[2]前記第2のセンサ(12)は、前記第1の一対の接続端子(111、112)を含む面内で前記第1のセンサ(11)と対向するように配置されており、前記第1のマイナス側の接続端子(112)と、前記の第2のマイナス側の接続端子(122)とが互いに隣接するように配置されている、前記[1]に記載のセンサ装置。
[3]前記第1のマイナス側接続端子(112)と前記第2のマイナス側接続端子(122)とを電気的に接続する接続部材(13)をさらに備える、前記[2]に記載のセンサ装置。
[4]前記第1の一対の接続端子(111、112)のうちのプラス側である第1のプラス側接続端子(111)と、前記第2のマイナス側接続端子(122)とが互いに隣接するように配置されている、前記[1]に記載のセンサ装置。
[5]前記第1のプラス側接続端子(111)を跨いで、前記第1のマイナス側接続端子(112)と前記第2のマイナス側接続端子(122)とを接続するジャンパー部材(14)をさらに備える、前記[4]に記載のセンサ装置。
[6]前記第2のセンサ(12)は、前記第1のセンサ(11)上に積層されており、前記第1のマイナス側接続端子(112)と、前記第2のマイナス側接続端子(122)とが互いに面接触して一体化されている、前記[1]に記載のセンサ装置。
[7]前記第1の一対の接続端子(111、112)のうちのプラス側である第1のプラス側接続端子(111)と前記第2の一対の接続端子(121、122)のうちのプラス側である第2のプラス側接続端子(121)との間に設けられ、前記第1のプラス側接続端子(111)と前記第2のプラス側接続端子(121)とを電気的に接触させないようにする絶縁部材をさらに備える、前記[6]に記載のセンサ装置。
[8]前記[1]から[7]のいずれか1つに記載のセンサ装置を備えるセンサ付きケーブル(100)であって、前記第1のマイナス側接続端子(112)及び前記第2のマイナス側接続端子(122)に接続する1つの電線を含む、センサ付きケーブル(100)。
[9]前記[1]から[7]のいずれか1つに記載のセンサ装置と接続可能なケーブルであって、前記第1のマイナス側接続端子(112)及び前記第2のマイナス側接続端子(122)に接続する1つの電線と、前記1つの電線よりも大きい外径を有する一対の太径電線と、を備える、複合ケーブル(2)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減することが可能な構造を有するセンサ装置、これら複数のセンサを備えるセンサ付きケーブル及び複合ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るセンサ付きケーブルの構成の一例を模式的に示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの構成の一例を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一変形例に係るセンサ付きケーブルを示す部分概略図である。
【
図4】本発明の一変形例に係るセンサ付きケーブルを示す部分概略図である。
【
図5】本発明の一変形例に係る複合ケーブルの構成を示す概略構成図である。
【
図6】本発明の一変形例に係る複合ケーブルの構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。また、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際のセンサ装置、センサ付きケーブル及び複合ケーブルの寸法比と一致するものではない。
【0012】
また、以下の説明において、「一方」及び「他方」とは、電気的に互いに異なることをいい、例えば、プラス側を「一方の側」というときは、マイナス側を「他方の側」というとともに、マイナス側を「一方の側」というときは、プラス側を「他方の側」ともいう。また、プラス側同士又はマイナス側同士を「同一の側」ともいい、プラス側とマイナス側との関係を互いに「異なる側」ともいう。
【0013】
(センサ付きケーブルの説明)
図1は、本発明の一実施の形態に係るセンサ付きケーブルの構成の一例を模式的に示す側面図である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るセンサ付きケーブル100は、複合ケーブル2と、複合ケーブル2の端部2aに設けられたセンサ部1と、このセンサ部1と複合ケーブル2の端部2aとを一括して被覆する樹脂モールドからなるハウジング3とを有して構成されている。センサ部1は、本発明に係るセンサ装置の一例である。
【0014】
なお、
図1は、
図2に示す複合ケーブル2から一対の第1の電線21を除いた第2~第4の電線22、23、24を抜き出して示すとともに、ハウジング3を断面で示した破断図である。また、
図1に示す複合ケーブル2は、
図2のA-A’断面に対して略垂直な方向から視たものである。
【0015】
(センサ部1)
図1に示すように、センサ部1は、回路パターン(不図示)を備える回路基板10と、回路基板10上に半田付けされた第1のセンサ11及び第2のセンサ12とを備えている。なお、以下では、説明の便宜上、センサ部1が2つのセンサを備える場合を例に挙げて説明するが、センサの数は2つに限定されるものではなく、3つ以上でもよい。なお、第1のセンサ11及び第2のセンサ12は、電流の強弱で信号を伝えるタイプのものである。
【0016】
第1のセンサ11は、第1の検出部110と、この第1の検出部110から延出された第1の一対(2つ)の接続端子111、112とを備えている。第1の一対の接続端子111、112は、それぞれ、プラス側の接続端子(以下、「第1のプラス側接続端子」ともいう。)111と、マイナス側の接続端子(以下、「第1のマイナス側接続端子」ともいう。)112とを含んで構成されている。第1のマイナス側接続端子112は、第1の一方の接続端子の一例である。第1のプラス側接続端子111は、第1の他方の接続端子の一例である。
【0017】
第1の検出部110は、被検出部材としての磁気エンコーダ(不図示)からの磁界を検出する第1の磁気検出素子110aと、この第1の磁気検出素子110aから出力された信号を処理する第1の信号処理回路(不図示)と、を有している。
【0018】
第1のプラス側接続端子111及び第1のマイナス側接続端子112は、それぞれ第1の検出部110の一端110bから延出されており、互いに略平行に形成されている。本実施の形態では、第1のプラス側接続端子111の先端部(第1の検出部110と反対側の端部)111aには、対応する第2の中心導体221(
図2参照)が抵抗溶接により電気的に接続されている。
【0019】
第2のセンサ12は、第2の検出部120と、この第2の検出部120から延出された第2の一対(2つ)の接続端子121、122とを備えている。第2の一対の接続端子121、122は、それぞれ、プラス側の接続端子(以下、「第2のプラス側接続端子」ともいう。)121と、マイナス側の接続端子(以下、「第2のマイナス側接続端子」ともいう。)122とを含んで構成されている。第2のマイナス側接続端子122は、第2の一方の接続端子の一例である。第2のプラス側接続端子121は、第2の他方の接続端子の一例である。
【0020】
第2の検出部120は、第1の検出部110と同様に、磁気エンコーダからの磁界を検出する第2の磁気検出素子120aと、この第2の磁気検出素子120aから出力された信号を処理する第2の信号処理回路(不図示)と、を有している。
【0021】
第2のプラス側接続端子121及び第2のマイナス側接続端子122は、それぞれ第2の検出部120の一端120bから延出されており、互いに略平行に形成されている。また、第2のプラス側接続端子121及び第2のマイナス側接続端子122は、第1のプラス側接続端子111及び第1のマイナス側接続端子112と略平行で、かつ、略同一の方向を向くように配置されている。
【0022】
また、第2のプラス側接続端子121の先端部(第2の検出部120と反対側の端部)121aには、対応する第4の中心導体241(
図2参照)が抵抗溶接により電気的に接続されている。
【0023】
第1のセンサ11及び第2のセンサ12は、互いに略平行である接続端子111~122を含む面(すなわち、回路基板10と平行な面)内で各接続端子111~122と直交する方向において互いに対向するように配置されている。本実施の形態では、第1のセンサ11及び第2のセンサ12は、マイナス側が互いに対向するように配置されている。具体的には、第1のセンサ11及び第2のセンサ12は、第1のマイナス側接続端子112と第2のマイナス側接続端子122とが互いに対向するように配置されている。
【0024】
第1のマイナス側接続端子112と第2のマイナス側接続端子122とは、接続部材13により電気的に接続している。具体的には、第1のマイナス側接続端子112の先端部112a及び第2のマイナス側接続端子122の先端部122aには、接続部材13が抵抗溶接により電気的に接続されている。接続部材13は、例えば、銅、鉄、アルミニウム等の金属により形成される。
【0025】
また、接続部材13には、対応する第3の中心導体231(
図2参照)が抵抗溶接により電気的に接続されている。すなわち、第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122はともに、接続部材13を介して、第3の中心導体231に電気的に接続されている。換言すれば、第3の中心導体231に接続する回路は、第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122に分岐している。
【0026】
以上のような電気的に接続された構成を有することにより、1本の電線(第3の電線23)と接続する、第1の検出部110のマイナス側及び第2の検出部120のマイナス側を、例えば、グランド(GND)として共通化することができる。このようにすれば、第1の検出部110のプラス側及び第2の検出部120のプラス側に流れる電流を計測することより、電線を4本設けることなく、第1の検出部110及び第2の検出部120の信号値をそれぞれ検出することができる。
【0027】
なお、
図1では、説明の便宜上、第1の検出部110及び第2の検出部120を円形として描いたが、実際の第1の検出部110及び第2の120は、例えば、平面視で略長方形(長方形の4つの角部のうち1つが面取りされた形状)の板状に形成されていてもよい。
【0028】
(複合ケーブル2の説明)
次に、本実施の形態に係る複合ケーブル2について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る複合ケーブル2の構成の一例を示す横断面図である。
図2に示すように、複合ケーブル2は、一対(2本)の第1の電線21と、1本の第2の電線22と、1本の多芯電線25と、これら4本の電線21、22、25が撚られてなる集合体27の周囲を覆うテープ部材28と、このテープ部材28の外周に被覆されている外部シース29と、を備えている。
【0029】
多芯電線25は、互いに撚り合わされた第3の電線23及び第4の電線24の外周が内部シース26により被覆されて構成されている。第1の電線は、太径電線の一例である。第2~第4の電線22、23、24は、細径電線の一例である。また、第2~第4の電線22、23、24は、「1つの電線」の一例である。
【0030】
なお、ここでは、複合ケーブル2が合計4本の電線を有している構成を例に挙げて説明するが、電線の本数は、4本に限定されるものではなく、5本以上であってもよい。
【0031】
〔第1の電線21〕
第1の電線21は、例えば、車両の車輪(不図示)等に搭載されたEPB用電気モータ(不図示)に駆動電流を供給するための電源線として用いられる。第1の電線21は、銅等の良導電性の素線が撚り合わされてなる第1の中心導体211の周囲に、例えば、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第1の絶縁体212を被覆して構成される。
【0032】
第1の中心導体211に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合、十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下する虞があり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合、複合ケーブル2の可撓性が低下する虞がある。
【0033】
第1の中心導体211の外径、及び第1の絶縁体212の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。例えば、第1の電線21がEPB用電気モータに駆動電流を供給するための電源線でとして用いられる場合、第1の中心導体211の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定することが好ましい。
【0034】
〔第2の電線22、第3の電線23及び第4の電線24〕
本実施の形態では、第2の電線22、第3の電線23及び第4の電線24は、同一の構成及び形状を有している。そのため、これら第2~第4の電線22~24をまとめて説明する。第2~第4の電線22、23、24は、例えば、車輪等に搭載されたABSセンサ(不図示)用の信号線として用いられる。
【0035】
第2~第4の電線22、23、24は、銅等の良導電性の素線が撚り合わされてなる第2~第4の中心導体221、231、241の周囲に、それぞれ、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第2~第4の絶縁体222、232、242を被覆して構成される。第2~第4の中心導体221、231、241に用いる素線としては、第1の中心導体211に用いる素線と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
【0036】
第2~第4の電線22、23、24の外径は、第1の電線21の外径よりも小さい。換言すれば、第1の電線21の外径は、第2~第4の電線22、23、24の外径よりも大きい。また、第2~第4の電線22、23、24の外径は、同一である。ここで「同一」とは、完全に同じであることのみをいうものではなく、多少の誤差も含む。
【0037】
具体的には、第2~第4の電線22、23、24は、1.0mm以上1.8mm以下の外径を有する。また、第2~第4の中心導体221、231、241は、0.4mm以上1.0mm以下の外径を有する。
【0038】
〔多芯電線25〕
多芯電線25は、第3の電線23及び第4の電線24が互いに接触して撚り合わされた状態、すなわち対撚線を形成した状態で一括して内部シース26に被覆されている。内部シース26は、例えば、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン系の樹脂により形成されている。なお、多芯電線25の外径は、第1の電線21の外径よりも大きい。
【0039】
第3の電線23及び第4の電線24の撚りピッチ(以下、「第1の撚りピッチ」ともいう。)は、第3の電線23及び第4の電線24の外径を考慮し、これら第3の電線23及び第4の電線24に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、第1の撚りピッチを約30mmとしたが、第1の撚りピッチは、この値に限定されるものではない。なお、第1の撚りピッチとは、第3の電線23及び第4の電線24のうち任意の一方の電線が多芯電線25の周方向において同じ位置となる多芯電線25の長手方向に沿った間隔をいう。
【0040】
〔集合体27〕
集合体27とは、2本の第1の電線21と、1本の第2の電線22と、1本の多芯電線25(1本の第3の電線23及び1本の第4の電線)とを撚り合わせて構成した電線の束をいう。本実施の形態では、第2の電線22と、多芯電線25とが、一対の第1の電線21の中心軸O1,O2を通る面を挟んで互いに対向する領域の一方側と他方側とにそれぞれ配置されている。換言すれば、
図2に示す横断面視において、第2の電線22は、一対の第1の電線21の中心(「O1」及び「O2」参照)を結んだ中心線の一方側に配置されており、多芯電線25は、上記中心線の他方側に配置されている。
【0041】
集合体27の外径は、例えば、5mm~9mm程度である。集合体27における2本の第1の電線21、第2の電線22及び多芯電線25の撚りピッチ(以下、「第2の撚りピッチ」ともいう。)は、集合体27の外径を考慮し、これらの電線に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。例えば、第2の撚りピッチは、約50mmに設定してよい。なお、第2の撚りピッチとは、集合体27を構成する任意の電線(第1の電線21、第2の電線22又は多芯電線25)が集合体27の周方向において同じ位置となる集合体27の長手方向に沿った間隔である。
【0042】
〔テープ部材28〕
集合体27の周囲には、テープ部材28が螺旋状に巻き付けられている。テープ部材28は、2本の第1の電線21と、1本の第2の電線22と、1本の多芯電線25とにともに接触している。テープ部材28は、外部シース29が集合体27側に入り込まないようにして複合ケーブル2の加工性を高めるとともに、集合体27と外部シース29との間に配置され、屈曲時に集合体27と外部シース29と間の摩擦を低減する役割を果たす。
【0043】
テープ部材28は、その幅方向(テープ部材28の長手方向及び厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体27に巻き付けられる。テープ部材28が重なり合う幅は、例えば、テープ部材28の幅の1/4以上1/2以下である。
【0044】
テープ部材28の幅は、テープ部材28を巻き付けた際にテープ部材28に皺が寄らない程度の幅とすればよく、集合体27全体の外径が小さくなるほど幅の狭いテープ部材28を用いることが望ましい。具体的には、集合体27の外径が5mm~9mmである場合、テープ部材28の幅は、20mm~50mm程度とすればよい。
【0045】
テープ部材28の巻きピッチ、すなわちテープ部材28が周方向の同じ位置となる長手方向に沿った間隔(例えば幅方向の一端部同士の間隔)は、テープ部材28の幅及び重なり幅(テープ部材28の巻き付け角度)等を考慮して適宜調整してよい。なお、テープ部材28は、集合体27に必ずしも螺旋状に巻き付けなくてもよく、例えば、縦添えで巻き付けてもよい。
【0046】
〔外部シース29〕
テープ部材28の外周には、テープ部材28の周囲を覆う外部シース29が設けられている。外部シース29は、例えば、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン樹脂からなる。
【0047】
〔シールド層〕
第1の電線21の用途等に応じて、テープ部材28と外部シース29との間、あるいは外部シース29の外周にシールド層(不図示)を設けてもよい。シールド層は、例えば、導線を編組して形成される。
【0048】
〔介在〕
第1の電線21及び第2の電線22と間や、第1の電線21と多芯電線25との間に形成された隙間Sに、複合ケーブル2の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在を配置し(図示せず)、これらの介在を第1の電線21と、第2の電線22と多芯電線25と共に撚り合わせることによって集合体27を構成してもよい。複数の介在を設けることにより、集合体27の外周にテープ部材28を巻き付けた際の断面形状をより円形状に近づけることができる。
【0049】
介在としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。なお、介在は、2本の第1の電線21と多芯電線25とで囲まれる谷間Tや、2本の第1の電線21と第2の電線22とで囲まれる谷間Uにさらに配置してもよい。
【0050】
(ハウジング3)
ハウジング3は、センサ部1と複合ケーブル2の端部2aとを一括して覆う、例えば、略円柱状の形状を有する部材である。ハウジング3の形状は、略円形状のものに限定されるものではなく、例えば、直方体状でもよい。ハウジング3としては、例えばPA(ポリアミド)や、ナイロン(登録商標)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等からなるものを用いることができる。また、ハウジング3の外周には、外周を巻き締めて固定する固定部材(不図示)をさらに設けてもよい。
【0051】
<センサ部1の変形例1>
図3は、本発明の一変形例に係るセンサ付きケーブル100を示す部分概略図である。なお、
図3では、複合ケーブル2については、第2~第4の電線22、23、24のみを抜き出して示し、第1の電線21や外部シース29の記載は省略する。また、
図3では、ハウジング3の記載も省略する。
【0052】
図3に示すように、接続部材13に代えて、第1のプラス側接続端子111を跨いで、第1のマイナス側接続端子112と第2のマイナス側接続端子122とを電気的に接続するジャンパー部材14を設けてもよい。
【0053】
この場合、第1のセンサ11と第2のセンサ12とは、互いにプラス側及びマイナス側の向きが揃うように配置してよい。換言すれば、第1のセンサ11と第2のセンサ12とを、互いに略平行する接続端子111~122を含む面(回路基板10と平行な面)内で各接続端子111~122に直交する方向において、プラス側とマイナス側とが互いに交互に並ぶように配置してもよい。なお、本実施の形態では、第1のプラス側接続端子111と第2のマイナス側接続端子122とが互いに隣接するように配置したが、第1のマイナス側接続端子112と第2のプラス側接続端子121とが互いに隣接するように配置してもよい。
【0054】
ジャンパー部材14は、
図3に示すように、例えば、第1のマイナス側接続端子112と接続する第1の接続部141と、第2のマイナス側接続端子122と接続する第2の接続部142と、第1の接続部141及び第2の接続部142の間に設けられた略半円筒状の中間部143とを一体に有して構成されている。中間部143は、第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122の間に位置する第1のプラス側接続端子111を跨ぐように配置される。
【0055】
ジャンパー部材14は、第3の中心導体231と電気的に接続されている。換言すれば、第3の中心導体231は、ジャンパー部材14を介して第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122と電気的に接続している。以上のような構成によっても、第3の中心導体231と接続する回路を第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122とに分岐させることができる。
【0056】
<センサ部1の変形例2>
図4は、本発明の一変形例に係るセンサ部1の構成を示す概略構成図である。なお、
図4では、
図3と同様に、第1の電線21、外部シース29、ハウジング3の記載を省略するとともに、回路基板10の記載をさらに省略する。
【0057】
図4に示すように、第1のセンサ11は、第2のセンサ12上に積層されている。具体的には、第1のセンサ11は、各接続端子111、112、121、122が延出する方向と直交する方向(
図4の図示上下方向。以下、「厚み方向」ともいう。)において、第2のセンサ12上に積層されている。
【0058】
第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122は、互いに面接触している。具体的には、第1のマイナス側接続端子112の下面112cと、第2のマイナス側接続端子122の上面122bとが溶接されることによって、第1のマイナス側接続端子112と第2のマイナス側接続端子122とが一体化している。
【0059】
第1のプラス側接続端子111と第2のプラス側接続端子121との間には、絶縁層15が設けられている。第1のプラス側接続端子111と第2のプラス側接続端子121とが互いに電気的に接触しないようにするためである。具体的には、絶縁層15は、第1のプラス側接続端子111の下面111cと、第2のプラス側接続端子121の上面121bとにそれぞれ接触するように配置されている。絶縁層15は、例えば、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる。絶縁層15は、絶縁部材の一例である。
【0060】
一体化された第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122には、第3の中心導体231が電気的に接続されている。
図4に示す例では、第3の中心導体231が第2のマイナス側接続端子122の下面122cに接触している構成を描いたが、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、第1のマイナス側接続端子112の上面112bや、側面に接触していてもよい。
【0061】
第2の中心導体221は、第1のプラス側接続端子111(例えば、上面111b)と抵抗溶接により電気的に接続している。また、第4の中心導体241は、第2のプラス側接続端子121(例えば、下面121c)と抵抗溶接により電気的に接続している。
【0062】
以上のような構成によっても、第3の中心導体231と接続する回路を第1のマイナス側接続端子112及び第2のマイナス側接続端子122とに分岐させることができる。また、1本の電線(第3の電線23)と接続する第1の検出部110のマイナス側及び第2の検出部120のマイナス側を共通化して、第1の検出部110のプラス側及び第2の検出部120のプラス側に流れる電流を計測することより、第1の検出部110及び第2の検出部120の信号値をそれぞれ検出することができる。
【0063】
上記の例では、第1のセンサ11が第2のセンサ12上に積層された構成を例に挙げて説明したが、第2のセンサ12が第1のセンサ11上に積層されていてもよい。
【0064】
<複合ケーブル2の変形例1>
センサ付きケーブル100に設けられる複合ケーブル2は、上述したセンサ部1に対応する電線、すなわち第1のセンサ11及び第2のセンサ12に接続する3つの電線を備えているものであればよく、
図2に示す構成に限定されるものではない。以下、
図5及び
図6を参照して、複合ケーブル2の変形例について説明する。
【0065】
図5は、本発明の一変形例に係る複合ケーブル2の構成を示す概略構成図である。
図5(a)に示すように、多芯電線25において、必ずしも内部シース26を設けなくてもよい。具体的には、第3の電線23及び第4の電線24が互いに接触して撚り合わされて形成された対撚線の状態で設けられていてもよい。
【0066】
第2の電線22は、必ずしも第3の電線23及び第4の電線24と離間して配置されている構成に限定されるものではなく、例えば、
図5(b)に示すように、第3の電線23及び第4の電線24とに接触して撚り合わされてもよい。
【0067】
具体的には、第2の電線22、第3の電線23及び第4の電線24を互いに撚り合わせた状態で一括して内部シース26に被覆してもよい。このとき、これら第2の電線22、第3の電線23及び第4の電線24を多芯電線25内の周方向に均等に配置してもよい。すなわち、第2の電線22の中心(「O2」参照)と、第3の電線23の中心(「O3」参照)と、第4の電線24の中心(「O4」参照)とをそれぞれ結んで囲まれる形状が略正三角形となるように配置してもよい。
【0068】
<複合ケーブル2の変形例2>
また、
図6(a)に示すように、
図5(b)の構成において、内部シース26を省略してもよい。
【0069】
また、
図6(b)に示すように、多芯電線25において、ダミー線20をさらに設けてもよい。ダミー線20は、例えば、傷がつきにくい樹脂により形成されたものを用いてよい。ダミー線20の直径は、第2~第4の電線22、23、24の直径と略等しい。ダミー線20を設けることで、多芯電線25内の電線の配置のバランスを向上させることができる。また、
図6(c)に示すように、
図6(b)に示す構成から内部シース26を省略してもよい。
【0070】
(実施の形態の作用及び効果)
以上のように、本発明の実施の形態によれば、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減できる構造を有するセンサ装置、これら複数のセンサを備えるセンサ付きケーブル及び複合ケーブルを提供することができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0072】
例えば、上述の実施の形態では、第1のマイナス側接続端子112と第2のマイナス側接続端子122とを接続して電気的に一体化したが、この形態に限られるものではなく、第1のプラス側接続端子111と第2のプラス側接続端子121とを接続して電気的に一体化し、第1のマイナス側接続端子112と第2のマイナス側接続端子122とからそれぞれ信号を測定する構成でもよい。また、複合ケーブル2は、必ずしも一対の第1の電線21を備えなくてもよい。
【0073】
また、上述した実施の形態では、2つのセンサを設ける構成を例に挙げて説明したが、センサの数は、3つ以上でもよい。例えば、センサを3つ設ける場合、特許文献1に記載の構成では、6本の細径電線(第2~第4の電線22~24に相当し得る電線)を必要とするのに対し、本発明によれば、プラス側及びマイナス側のいずれか一方を共通化することにより細径電線を4本に削減できる。
【0074】
同様に、センサを4つ設ける場合、特許文献1に記載の構成では、6本の細径電線を必要とするのに対し、本発明によれば、細径電線を5本に削減できる。以上をまとめると、センサをN個(N=2、・・・の自然数)設ける場合、特許文献1に記載の構成では、2N本の細径電線を必要とするのに対し、本発明によれば、(N+1)本に削減できる。
【0075】
また、3つの以上のセンサを設ける場合、上述した接続部材13、ジャンパー部材14及び積層構造を適宜組み合わせて設けてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1:センサ部、10:回路基板、11:第1のセンサ、110:第1の検出部、110a:第1の磁気検出素子、110b:一端、111:第1のプラス側接続端子、111a:先端部、111b:上面、111c:下面、112:第1のマイナス側接続端子、112a:先端部、112b:上面、112c:下面、12:第2のセンサ、120:第2の検出部、120a:第2の磁気検出素子、120b:一端、121:第2のプラス側接続端子、121a:先端部、121b:上面、121c:下面、122:第2のマイナス側接続端子、122a:先端部、122b:上面、122c:下面、13:接続部材、14:ジャンパー部材、141:第1の接続部、142:第2の接続部、143:中間部、15:絶縁層、2:複合ケーブル、20:ダミー線、21:第1の電線、211:第1の中心導体、212:第1の絶縁体、22:第2の電線、221:第2の中心導体、222:第2の絶縁体、23:第3の電線、231:第3の中心導体、232:第3の絶縁体、24:第4の電線、241:第4の中心導体、242:第4の絶縁体、25:多芯電線、26:内部シース、27:集合体、28:テープ部材、29:外部シース、3:ハウジング、100:センサ付きケーブル