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特許7485336MSX-2 mRNA発現促進剤、まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】MSX-2 mRNA発現促進剤、まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240509BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240509BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20240509BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/28
A61Q7/00
A61Q19/00
A61P17/14
A61P17/16
A61P43/00 111
A61P43/00 107
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020065710
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021161079
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 弘恭
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0125484(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104546635(CN,A)
【文献】登録実用新案第3188871(JP,U)
【文献】特開2009-256270(JP,A)
【文献】特開平04-036221(JP,A)
【文献】特開2005-120000(JP,A)
【文献】特表2019-507187(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098302(WO,A1)
【文献】Eyelash Serum, MINTEL GNPD [ONLINE], 2015.06,[検索日 2023.11.16],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.3271897)
【文献】Advanced Eyelash Conditioner, MINTEL GNPD [ONLINE], 2015.02,[検索日 2023.11.16],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.2959999)
【文献】Extreme PM Lash & Brow Enhancing Treatment, MINTEL GNPD [ONLINE], 2011.04,[検索日 2023.11.16],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.1539151)
【文献】Eyelash Essence EX, MINTEL GNPD [ONLINE], 2019.06,[検索日 2023.11.16],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.6655349)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 1/00-43/00
Mintel GNPD
CAplus(STN)
BIOSIS(STN)
MEDLINE(STN)
EMBASE(STN)
KOSMET(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウキンセンカ抽出物(ただし、トウキンセンカの発酵蒸留物及び発酵組成物を除く。)を含有するMSX-2(Muscle Segment homeobox 2) mRNA発現促進剤であって、
前記トウキンセンカ抽出物が、トウキンセンカの花部の、水、親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒による抽出物であり、
表皮角化細胞におけるMSX-2 mRNA発現促進用であることを特徴とするMSX-2 mRNA発現促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のMSX-2 mRNA発現促進剤を含有することを特徴とするまつ毛の育毛剤。
【請求項3】
請求項1に記載のMSX-2 mRNA発現促進剤を含有することを特徴とするまつ毛の育毛用外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Muscle Segment homeobox 2(MSX-2) mRNA発現促進剤、まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物、並びにフィラグリン mRNA発現促進剤、ヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤、保湿剤、及び保湿用外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
まつ毛の解剖学的な特徴として、まつ毛の毛包は眼瞼部に1.5mm程度の深さまで入り込んでいるが、毛髪や体毛で見られる立毛筋は存在せず、眼輪筋とまつ毛筋に囲まれた密な結合組織の三角地帯内に固定されていることが挙げられる。まつ毛の毛周期に関しては、成長期が約2か月、成長期毛率は約18%あるいは40%で、年齢、性別で異なるとの報告がある。
【0003】
アイメイクの流行に伴い、まつ毛を長く太く、上向きに見せるためにマスカラ等のアイメイクアップ化粧品の使用率が高まっている一方、マスカラ等の使用によるダメージが指摘されており、健やかなまつ毛を保つためのまつ毛ケアの必要性が挙げられている。
【0004】
日本人のまつ毛の長さは白人と大きな差がなく、外観の印象の差は瞼の構造の違いに起因すると考えられており、また、日本人のまつ毛は成長速度が速く、成長期間が短い傾向が認められ、まつ毛の長さには成長期間の長さが大きく影響するとの報告がある。
【0005】
まつ毛の育毛に関与する因子として、転写調節因子のMSX-2が知られている。上皮系細胞であるまつ毛の毛包細胞では、毛成長に関わるとされる様々な成長因子(FGF-7、ECGF、VEGF、LEF1)及び転写調節因子(MSX-2)の発現が認められており、実際にまつ毛の育毛作用が認められたステビオシドには、まつ毛毛包細胞におけるMSX-2発現亢進作用が認められていることから、MSX-2が育毛に関与することが示唆されている(例えば、非特許文献1参照)。よって、上皮系細胞のMSX-2のmRNA発現を促進することはまつ毛の育毛につながると考えられる。
【0006】
フィラグリンは、皮膚の構成成分であり、皮膚におけるバリア機能に関与し、アレルゲン、毒素、感染性生物の侵入を防ぐ機能を有していると考えられている。フィラグリンの遺伝子の変異等による機能の低下は、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患の発症リスクと関連し、さらに重篤な場合は尋常性魚鱗癬等の皮膚疾患につながることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
一方、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors;NMF)の主成分であるアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが角質層内で分解されて産生される。このフィラグリンは、角質層直下の顆粒層に存在する表皮ケラチノサイトでプロフィラグリンとして発現する。その後、直ちにリン酸化し、ケラトヒアリン顆粒に蓄積され、脱リン酸、加水分解を経てフィラグリンへと分解され、角質層に移行して、ケラチンフィラメントの凝集効率を高め、角質細胞の内部構築に関与することが知られている(例えば、非特許文献3参照)。近年、このフィラグリンが、皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、及び乾燥等の条件によってフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが知られている(例えば、非特許文献4参照)。
【0008】
したがって、表皮ケラチノサイトにおいて、プロフィラグリンの発現を促進することにより、アトピー性皮膚炎(湿疹、皮膚の炎症、皮膚のかゆみ等)、アレルギー、喘息等を包含するアトピー性疾患を予防・治療又は改善できると考えられる。また、プロフィラグリンの発現を促進し、それにより角質層内のアミノ酸量を増大させることで、角質層の水分環境を本質的に改善できることが期待される。従来、プロフィラグリンmRNA発現促進作用を有するものとして、ガイヨウ抽出物(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
【0009】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、線維芽細胞並びにこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては線維芽細胞の増殖は活発であり、線維芽細胞、細胞外マトリックス成分等の皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0010】
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の産生量が減少するとともに、分解や変質を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が生じるため、肌は張りや艶を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下等には、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等のマトリックス成分の減少・変性等が関与している。したがって、ヒアルロン酸等の産生を促進することは、皮膚の老化を予防、治療又は改善する上で重要である。
【0011】
前述した細胞外マトリックス成分のうち、ヒアルロン酸は、ムコ多糖の一種であり、細胞間の間隙に充填されることにより細胞を保持する機能を有し、さらに細胞間隙への水分の保持、組織への潤滑性や柔軟性の付与、機械的障害等の外力に対する抵抗等、数多くの機能を有している。ヒアルロン酸の産生を促進することができれば、皮膚の荒れ、しわ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下及び保湿機能の低下等といった皮膚の老化症状を予防、治療又は改善できると考えられる。また、表皮のヒアルロン酸の産生促進に関与するヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)の発現を促進することで、皮膚の老化を予防、治療又は改善することができるものと考えられる。
【0012】
さらに、ヒアルロン酸は、皮膚組織の他にも、軟骨、関節液、臍帯、眼硝子体、その他の結合組織に存在する。このうち、関節液に含まれるヒアルロン酸は、関節軟骨の表面を覆い、ヒアルロン酸が有する潤滑機能、軟骨に対する被覆・保護機能等により、関節の円滑な作動に役立っている。一方、慢性関節リウマチ等の関節炎において、関節液におけるヒアルロン酸の濃度が低下していることが知られている。したがって、ヒアルロン酸の産生を促進することで、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、又は骨関節炎等の関節炎を予防又は治療することができると考えられる。さらに、創傷又は熱傷の治癒過程において、肉芽(組織)が形成するが、肉芽中にヒアルロン酸が著しく増加することが知られている。そのため、ヒアルロン酸の産生を促進することで、創傷又は熱傷の治癒を促進することができると考えられる。ヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、クスノハガシワからの抽出物(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0013】
しかしながら、より優れたMSX-2発現促進作用を有し、かつ安全性が高く、まつ毛の育毛作用に優れた新たな素材、並びにより優れたフィラグリン発現促進作用及び優れたヒアルロン酸合成酵素3発現促進作用の少なくともいずれかを有し、かつ安全性が高く、保湿作用に優れた新たな素材に対する要望は依然として強く、その速やかな開発が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2012-219047号公報
【文献】特開2003-146837号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】「日本香粧品学会誌」,2007年,Vo3l.3,p.143-147
【文献】“Nat Genet.”,2006年,Vol.38,No.4,p.441-446
【文献】「フレグランスジャーナル臨時増刊」,2000年,Vol.17,p.14-19
【文献】“Arch. Dermatol. Res.”,1996年,Vol.288,p.442-446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたMSX-2 mRNA発現促進作用を有し、かつ安全性が高いMSX-2 mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたまつ毛の育毛作用を有し、かつ安全性が高いまつ毛の育毛剤又はまつ毛の育毛用外用剤組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたフィラグリン mRNA発現促進作用を有し、かつ安全性が高いフィラグリン mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用を有し、かつ安全性が高いヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた保湿作用を有し、かつ安全性が高い保湿剤又は保湿用外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、トウキンセンカ抽出物が、優れたMSX-2 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用を有し、まつ毛の育毛や保湿に有用であることを知見し、本発明を完成したものである。
【0018】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> トウキンセンカ抽出物を含有することを特徴とするMSX-2(Muscle Segment homeobox 2) mRNA発現促進剤である。
<2> 前記<1>に記載のMSX-2 mRNA発現促進剤を含有することを特徴とするまつ毛の育毛剤である。
<3> 前記<1>に記載のMSX-2 mRNA発現促進剤を含有することを特徴とするまつ毛の育毛用外用剤組成物である。
<4> トウキンセンカ抽出物を含有することを特徴とするフィラグリン mRNA発現促進剤である。
<5> トウキンセンカ抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤である。
<6> 前記<4>に記載のフィラグリン mRNA発現促進剤、及び前記<5>に記載のヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする保湿剤である。
<7> 前記<4>に記載のフィラグリン mRNA発現促進剤、及び前記<5>に記載のヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする保湿用外用剤組成物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のMSX-2 mRNA発現促進剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたMSX-2 mRNA発現促進作用を有し、安全性の高いMSX-2 mRNA発現促進剤を提供することができる。
本発明のまつ毛の育毛剤又はまつ毛の育毛用外用剤組成物によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたまつ毛の育毛作用を有し、安全性の高いまつ毛の育毛剤又はまつ毛の育毛用外用剤組成物を提供することができる。
本発明のフィラグリン mRNA発現促進剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたフィラグリン mRNA発現促進作用を有し、安全性の高いフィラグリン mRNA発現促進剤を提供することができる。
本発明のヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用を有し、安全性の高いヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤を提供することができる。
本発明の保湿剤又は保湿用外用剤組成物によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた保湿作用を有し、安全性の高い保湿剤又は保湿用外用剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤)
本発明のMSX-2(Muscle Segment homeobox 2) mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤は、トウキンセンカ抽出物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0021】
前記トウキンセンカ抽出物が含有する、MSX-2 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを発揮する物質の詳細については不明であるが、前記トウキンセンカ抽出物がこのような優れた作用を有し、MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0022】
<トウキンセンカ抽出物>
トウキンセンカ(学名:Calendula officinalis)は、キク科の植物であり、ヨーロッパ原産の植物で、日本各地で栽培されておりこれらの地域から容易に入手可能である。
【0023】
前記トウキンセンカ抽出物は、抽出原料として使用する抽出部位から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0024】
前記トウキンセンカの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、根部、地上部又はこれらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、花部が好ましい。
前記トウキンセンカの抽出原料の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
前記トウキンセンカ抽出部位の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供する方法などが挙げられる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0026】
前記トウキンセンカ抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法により容易に得ることができる。前記トウキンセンカ抽出物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出液そのもの、抽出液の希釈液、抽出液の濃縮液、これらの乾燥物、粗精製物、精製物などが挙げられる。
【0027】
前記抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出する方法などが挙げられ、より具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前記トウキンセンカの前記抽出部位を投入し、必要に応じて適宜撹拌しながら、例えば、30分間~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより抽出液を得る方法などが挙げられる。前記抽出液は、更に、抽出溶媒を留去し、乾燥してもよい。
また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0028】
前記トウキンセンカの抽出における条件(抽出時間及び抽出温度)、抽出溶媒及び抽出溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
前記抽出溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0030】
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水などの他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水なども含まれる。前記水は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記混合溶媒における前記水に対する前記親水性溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低級アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~90質量部、低級脂肪族ケトンを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~40質量部、多価アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~90質量部添加することが好ましい。
【0033】
前記抽出溶媒の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
【0034】
得られた前記トウキンセンカ抽出物は、前記トウキンセンカ抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
【0035】
前記トウキンセンカ抽出物の精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液-液分配抽出、各種クロマトグラフィー、膜分離などの精製方法が挙げられる。
【0036】
得られた前記トウキンセンカ抽出物は、そのままでも前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤のいずれかとして使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
【0037】
前記トウキンセンカ抽出物の前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤における含有量としては、特に制限はなく、前記抽出物の生理活性等によって適宜調整することができる。前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤は、前記トウキンセンカ抽出物のみからなるものであってもよい。
【0038】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記その他の成分の前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
<用途>
前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
前記MSX-2 mRNA発現促進剤は、優れたMSX-2 mRNA発現促進作用を有し、安全性が高いので、例えば、まつ毛の育毛剤やまつ毛の育毛用外用剤組成物の有効成分として好適に用いることができる。
前記フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤は、優れたフィラグリン mRNA発現促進作用又は優れたヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用を有し、安全性が高いので、例えば、保湿剤や保湿用外用剤組成物の有効成分として好適に用いることができる。
【0041】
本発明のMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0042】
前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などの用法が挙げられる。これらの中でも外用が好ましい。
【0043】
前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;化粧水、乳液、クリーム、軟膏、美容液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、ファンデーション、入浴剤、石鹸、ボディーソープ、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、ポマード、シャンプー、リンス、コンディショナー等の外用剤などが挙げられる。
前記各剤型のMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0044】
前記MSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の使用量、使用期間等の使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
また、本発明のMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤は、MSX-2 mRNA発現促進作用、フィラグリン mRNA発現促進作用、又はヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることができる。
【0046】
(まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物)
本発明のまつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、本発明のMSX-2 mRNA発現促進剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0047】
前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、MSX-2 mRNA発現促進作用を有する。
本発明において、「まつ毛の育毛」とは、まつ毛の発毛、成長又は正常さを促すことに加え、まつ毛の長さ、太さが増すこと、まつ毛にハリやコシが出ることなどを含む概念である。
【0048】
<MSX-2 mRNA発現促進剤>
前記MSX-2 mRNA発現促進剤は、上述した本発明のMSX-2 mRNA発現促進剤である。
【0049】
前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物における前記MSX-2 mRNA発現促進剤の含有量としては、特に制限はなく、まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物の形態や前記トウキンセンカ抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、前記トウキンセンカ抽出物に換算して、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.0001質量%~10質量%がより好ましい。前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、前記MSX-2 mRNA発現促進剤のみからなるものであってもよい。
【0050】
<その他の成分>
前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、上記したMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の項目に記載したものや、通常化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分などが挙げられる。前記通常化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分としては、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記その他の成分の前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
<用途>
前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
本発明のまつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、日常的に使用することが可能であり、有効成分であるトウキンセンカ抽出物の働きによって、まつ毛の育毛作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができる。
【0053】
本発明のまつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0054】
前記まつ毛の育毛剤の用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などの用法が挙げられる。これらの中でも外用が好ましい。
前記まつ毛の育毛用外用剤組成物は、外用で用いられる。
【0055】
前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物の剤型及びその製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記したMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【0056】
前記まつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物の使用量、使用期間等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0057】
上述したように、本発明のまつ毛の育毛剤及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、優れたまつ毛の育毛作用を有する。したがって、本発明は、個体に前記まつ毛の育毛剤又はまつ毛の育毛用外用剤組成物を投与することを特徴とする、まつ毛の育毛方法にも関する。
【0058】
また、本発明のまつ毛の育毛剤、及びまつ毛の育毛用外用剤組成物は、まつ毛の育毛の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることができる。
【0059】
(保湿剤、及び保湿用外用剤組成物)
本発明の保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、本発明のフィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0060】
前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、フィラグリン mRNA発現促進作用、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを有する。
【0061】
<フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の少なくともいずれか>
前記フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤は、上述した本発明のフィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤である。
【0062】
前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物における前記フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の少なくともいずれかの合計含有量としては、特に制限はなく、保湿剤、及び保湿用外用剤組成物の形態や前記トウキンセンカ抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、前記トウキンセンカ抽出物に換算して、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.0001質量%~10質量%がより好ましい。前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、前記フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の少なくともいずれかのみからなるものであってもよい。また、前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、前記フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤のいずれか一方を含む態様であってもよいし、両者を含む態様であってもよい。
【0063】
<その他の成分>
前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、上記したMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の項目に記載したものや、通常化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分などが挙げられる。前記通常化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分としては、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記その他の成分の前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0065】
<用途>
前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
本発明の保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、日常的に使用することが可能であり、有効成分であるトウキンセンカ抽出物の働きによって、保湿作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができる。
【0066】
本発明の保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0067】
前記保湿剤の用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などの用法が挙げられる。これらの中でも外用が好ましい。
前記保湿用外用剤組成物は、外用で用いられる。
【0068】
前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物の剤型及びその製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記したMSX-2 mRNA発現促進剤、フィラグリン mRNA発現促進剤、及びヒアルロン酸合成酵素3 mRNA発現促進剤の項目に記載したものと同様とすることができる。
【0069】
前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物の使用量、使用期間等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0070】
上述したように、本発明の保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、優れた保湿作用を有する。したがって、本発明は、個体に前記保湿剤、及び保湿用外用剤組成物を投与することを特徴とする、保湿方法にも関する。
【0071】
また、本発明の保湿剤、及び保湿用外用剤組成物は、保湿の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることができる。
【実施例
【0072】
以下、本発明の試験例、配合例を説明するが、本発明は、これらの試験例、配合例に何ら限定されるものではない。
【0073】
以下の試験例、配合例では、トウキンセンカ抽出物として、丸善製薬株式会社製の製品名「トウキンセンカ抽出液BG-J」(抽出部位:花部、抽出溶媒:水と1,3-ブチレングリコールの混合溶媒)を用いた。
【0074】
(試験例1:MSX-2 mRNA発現促進作用試験)
前記トウキンセンカ抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、MSX-2(Muscle Segment homeobox 2) mRNA発現促進作用を試験した。
【0075】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。KGMを用いて35mmシャーレに30×10cells/2mLずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。
24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は下記表1を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.no.311-07361)にてトータルRNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、MSX-2及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。MSX-2のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し算出した。
また、被験試料無添加の場合についても同様にして試験を行った。
MSX-2 mRNA発現促進率の計算方法は以下の通りである。
MSX-2 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果から、トウキンセンカ抽出物は、優れたMSX-2 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0078】
(試験例2:FLG mRNA発現促進作用試験)
前記トウキンセンカ抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、FLG(フィラグリン) mRNA発現促進作用を試験した。
【0079】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。KGMを用いて35mmシャーレに30×10cells/2mLずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。
24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は下記表2を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.no.311-07361)にてトータルRNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、FLG及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。FLGのmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し算出した。
また、被験試料無添加の場合についても同様にして試験を行った。
FLG mRNA発現促進率の計算方法は以下の通りである。
FLG mRNA発現促進率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0080】
【表2】
【0081】
表2の結果から、トウキンセンカ抽出物は、優れたFLG mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0082】
(試験例3:HAS3 mRNA発現促進作用試験)
前記トウキンセンカ抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、HAS3(ヒアルロン酸合成酵素3) mRNA発現促進作用を試験した。
【0083】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。KGMを用いて35mmシャーレに30×10cells/2mLずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。
24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は下記表3を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.no.311-07361)にてトータルRNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、HAS3及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(TaKaRa)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。HAS3のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し算出した。
また、被験試料無添加の場合についても同様にして試験を行った。
HAS3 mRNA発現促進率の計算方法は以下の通りである。
HAS3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時の補正値
B:被験試料無添加時の補正値
【0084】
【表3】
【0085】
表3の結果から、トウキンセンカ抽出物は、優れたHAS3 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0086】
(配合例1)
下記組成のまつ毛用美容液を常法により製造した。
・ トウキンセンカ抽出物 0.05質量%
・ 1,3ブチレングリコール 15.0質量%
・ アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.5質量%
・ 水酸化ナトリウム 0.1質量%
・ ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
・ フェノキシエタノール 0.5質量%
・ EDTA-4Na 0.05質量%
・ 精製水 残量
【0087】
(配合例2)
下記組成のクリームを常法により製造した。
・ トウキンセンカ抽出物 0.05質量%
・ クジンエキス 0.1質量%
・ オウゴンエキス 0.1質量%
・ 流動パラフィン 5.0質量%
・ サラシミツロウ 4.0質量%
・ スクワラン 10.0質量%
・ セタノール 3.0質量%
・ ラノリン 2.0質量%
・ ステアリン酸 1.0質量%
・ オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5質量%
・ モノステアリン酸グリセリル 3.0質量%
・ 油溶性甘草エキス 0.1質量%
・ 1,3-ブチレングリコール 6.0質量%
・ パラオキシ安息香酸メチル 1.5質量%
・ 香料 0.1質量%
・ 精製水 残量