(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240509BHJP
C08G 77/04 20060101ALI20240509BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240509BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240509BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240509BHJP
H01B 3/46 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L83/07
C08G77/04
C08L83/05
C09D7/65
C09D183/04
H01B3/46 C
(21)【出願番号】P 2019182976
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018203774
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】大川 直
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108288(JP,A)
【文献】特開2009-079163(JP,A)
【文献】特開2010-254927(JP,A)
【文献】特開2007-091935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G
C09D
H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子当たり平均して少なくとも3個の珪素結合水素原子を有する、
粘度が25℃において5mPa.sである直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B
)アルケニル基を有するかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン、及び
(C1)ヒドロシリル化反応触媒
を含有してなり、成分(A)と成分(B)の質量比が(50~99):(50~1)(成分(A):成分(B))であり、成分(A)と成分(B)が有する硬化反応性基が成分(A)と成分(B)が架橋することができるように選択されていて、成分(A)と成分(B)がヒドロシリル化反応によって架橋し、硬化後の硬化物の比誘電率が2.8未満である、
組成物全体の粘度が25℃において5~9mPa.sの範囲である硬化性組成物。
【請求項2】
成分(B)のかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンが、1分子当たり平均して珪素原子の数が8~20であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したポリスチレン換算における数平均分子量が500~3,000の範囲であり、分子量分散度(M
w/M
n)が1.0~1.5である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1
~2のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含むコーティング剤。
【請求項4】
請求項1
~2のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物を絶縁性コーティング層として使用する方法。
【請求項5】
請求項1
~2のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物からなる層を含むタッチパネル又はタッチパネル以外の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化反応性オルガノシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサン、任意選択により硬化反応性基を有していてもよいかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン、並びに前記硬化性オルガノシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンを硬化させるための硬化剤を含む硬化性組成物、特にそれから得られる硬化物が低い比誘電率を有する硬化性シリコーン組成物に関する。本発明の硬化性シリコーン組成物は、比誘電率が低く3.0未満であり、電子デバイス及び電気デバイスのための絶縁材料として、特にコーティング剤として用いるための材料として適している。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂はその高い耐熱性及び優れた化学安定性により、これまでにも電子デバイス及び電気デバイスのためのコーティング剤、ポッティング剤、及び絶縁材料等として用いられてきている。シリコーン樹脂のなかで、T単位(RSiO3/2、Rは一般にアルキル基、アリール基等を表す)からなるシルセスキオキサンを一成分として含む硬化性シリコーン組成物についてもこれまでに報告されている。
【0003】
国際公開第2015/064310号には、重合性基を2つ以上有するシルセスキオキサン化合物、及び末端に重合性基を2つ以上有するシリコーン化合物をそれぞれ特定の割合で含み、かつ光重合開始剤及び溶剤を含有する光硬化性シリコーン組成物と、この組成物を所定のパターンが転写された膜を形成するためのインプリント材料として用いることが記載されている。
【0004】
特開2009-155442号公報には、1分子中に脂肪族不飽和結合を2個以上有する籠型シルセスキオキサンと、1分子中にSiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有するエチレン性不飽和化合物を含み、ヒドロシリル化反応及びラジカル重合反応によって硬化可能なレンズ用樹脂組成物が記載されている。
【0005】
特開2007-332211号公報には、シルセスキオキサン骨格を繰り返し単位として有する化合物と、3,4-エポキシシクロヘキシルなどの基を有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体と、硬化剤とを含む熱硬化性重合体組成物と、この組成物を電気・電子部品の絶縁材料等として用いることが記載されている。同公報に記載された硬化性組成物は、エポキシ基とポリアミン硬化剤との反応による架橋反応によって硬化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/064310号
【文献】特開2009-155442号公報
【文献】特開2007-332211号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 522 (2017) 66-73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり、ポリシルセスキオキサン、特にかご状ポリシルセスキオキサンを用いた硬化性組成物はこれまでにもいくつか知られているが、硬化物が低い比誘電率を有するとともに、基材に塗布するための優れた作業性、特に低粘度を備えた硬化性シリコーン組成物が今なお求められている。本発明は、硬化して得られる生成物が低い比誘電率を有するとともに、基材に塗布するときに優れた作業性を併せもつ新規な硬化性組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、架橋可能な基を有するオルガノシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンが架橋し硬化して得られるマトリクス中にかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンを組み込むことによって、得られる硬化物が低い比誘電率を有することができ、さらにこの硬化性組成物は粘度が低く、基材へ塗布する場合の作業性に優れていることを発見して完成したものである。
【0010】
本明細書において、オルガノ(ポリ)シロキサンの用語は、オルガノシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンの意味で用い、オルガノシロキサンのみ、オルガノポリシロキサンのみ、及びオルガノシロキサンとオルガノポリシロキサンの組み合わせの全てを包含し、そのいずれか一つでもよいことを意味するものとして使用する。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、
(A)1種以上の硬化反応性オルガノ(ポリ)シロキサン、
(B)任意選択により硬化反応性基を有していてもよい、かご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン、及び
(C)前記硬化反応性オルガノ(ポリ)シロキサンのための硬化剤
を含有してなることを特徴とする。
【0012】
成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応が、ヒドロシリル化反応、加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応、ラジカル重合反応、及びオルガノ(ポリ)シロキサンの過酸化物架橋反応から選択される1種の反応又は2種以上の反応の組み合わせであることが好ましい。
【0013】
成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応である場合には硬化剤がヒドロシリル化反応触媒を含み、前記成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応が加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応である場合には硬化剤が縮合反応触媒を含み、前記成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がラジカル反応である場合には硬化剤がラジカル開始剤を含み、前記成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がオルガノ(ポリ)シロキサンの過酸化物架橋反応である場合には硬化剤が有機過酸化物を含むことが好ましい。
【0014】
成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応であることが好ましい。
【0015】
あるいは、成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応が加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応であることが好ましい。
【0016】
一つの態様では、成分(B)が硬化反応性基を有し、成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応であり、成分(A)がアルケニル基含有基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン、又はSiH基含有オルガノ(ポリ)シロキサン、もしくはこれらの組み合わせであり、成分(B)がSiH基を有するかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン、又はアルケニル基を有するかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンであり、成分(A)と成分(B)が有する硬化反応性基が成分(A)と成分(B)が架橋することができるように選択されていて成分(A)と成分(B)がヒドロシリル化反応によって架橋することができ、硬化剤がヒドロシリル化反応触媒を含むことが好ましい。
【0017】
一つの態様では、成分(A)として、紫外線硬化性官能基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンをさらに含み、成分(A)の硬化反応が、ヒドロシリル化反応、加水分解性シリル基及び/又は珪素結合水酸基の縮合反応、ラジカル重合反応、及び/又はオルガノ(ポリ)シロキサンの過酸化物架橋反応に加えて、エネルギー線照射による架橋反応によっても行われることが好ましい。
【0018】
一つの態様では、上記硬化性組成物の硬化反応がヒドロシリル化反応とエネルギー線照射による架橋反応の組み合わせによって行われる。
【0019】
一つの態様では、上記硬化性組成物は、硬化反応を促進するためのエネルギー線、例えば紫外線又は電子線を外から加えることなく、常温又は加熱によって硬化可能である。
【0020】
上記成分(B)については、(B)のかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンが下記平均単位式(1):
(R9SiO3/2)p(R10SiO3/2)q(O1/2Ra)r (2)
(式中、R9はそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された一価炭化水素基であり;R10は硬化反応性基であり;Raはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数5~20のシクロアルキル基であり;p、q、及びrはそれぞれの単位の数を表し、q及びrはいずれか又は両方が0であってもよい)
で表されるものであることが好ましい。
【0021】
上記式(2)において、R9がそれぞれ独立に炭素数2~20の非置換又はフッ素で置換されたアルキル基であることが好ましい。
【0022】
上記式(2)において、R10がそれぞれ独立に炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましい。R9がそれぞれ独立に炭素数2~20の非置換又はフッ素で置換されたアルキル基であり、かつR10がそれぞれ独立に炭素数2~20のアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0023】
上記式(2)において、qが0であり、式(2)のポリシルセスキオキサンが、珪素原子に結合した硬化反応性基R10を有しないことが好ましい。
【0024】
成分(B)のかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンが、1分子当たり平均して珪素原子の数が8~20であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したポリスチレン換算における数平均分子量が500~3,000の範囲であり、分子量分散度(Mw/Mn)が1.0~1.5であることが好ましい。
【0025】
上記硬化性組成物において、成分(A)と成分(B)の質量比が(1~99):(99~1)(成分(A):成分(B))であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の硬化性組成物は、その粘度が25℃において5~1,000mPa.sの範囲であり、硬化後の硬化物の比誘電率が3.0、特に2.8未満であることが好ましい。
【0027】
本発明の上記硬化性組成物はコーティング剤として有用である。したがって、本発明はまた、上記の硬化性組成物を含むコーティング剤も提供する。
【0028】
本発明は上記硬化性組成物から得られる硬化物を、絶縁性コーティング層として使用する方法も提供する。
【0029】
本発明は、本発明の上記硬化性組成物を硬化して得られる硬化物からなる層を含むタッチパネル又はタッチパネル以外の表示装置も提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の硬化性組成物は、基材に塗布する際に良好な作業性をもたらす適度な粘度と、それから得られる硬化物が低い比誘電率を有することから、低い誘電率を有する材料を用いる任意の分野において、低誘電率層を含む物品、特に電子デバイスのための低誘電率材料、特に絶縁層のための材料、特にコーティング材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の構成についてさらに詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は以下の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む。成分(C)は成分(A)、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び(B)の硬化反応性基の硬化反応を起こさせる又は促進させるための化合物である。また、本発明の硬化性組成物には、組成物の粘度を低下させるために、所望により有機溶媒を添加してもよいが、有機溶媒の量は組成物全体の質量の10%未満であることが好ましく、さらに好ましくは、本発明の組成物は実質的に有機溶媒を含まない。本発明の硬化性組成物の特徴の一つは、その組成物から得られる硬化物が低い比誘電率を有することである。本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の比誘電率が低くなる理由は必ずしも明確ではないが、成分(A)、又は成分(A)及び(B)が架橋し、硬化して形成されるマトリクス中に分散したかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン(成分(B))がナノスケールの空孔を有することによって、硬化物中にナノスケールの空孔が導入され、これによって比誘電率が低くなるものと推定している。本発明の硬化性組成物は、その硬化物の低い比誘電率及び良好な作業性を生かして、絶縁性コーティング剤、特に、電子デバイス及び電気デバイス、例えば、タッチパネル、ディスプレイなどの表示装置及びその部材、あるいは半導体装置中の絶縁層を形成するためのコーティング剤として有用である。
【0032】
以下の記載において、化合物の粘度は25℃において回転粘度計によって測定した値(単位はmPa・s)である。また、化合物の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したポリスチレン換算における値である。また、比誘電率は、容量法(コンデンサ法)によって23℃にて測定した値である。
【0033】
〔成分(A):硬化反応性オルガノ(ポリ)シロキサン〕
成分(A)として用いる硬化反応性オルガノ(ポリ)シロキサンは、架橋可能な基又は架橋可能な硬化反応性基を有し、成分(A)の硬化反応性基間の反応により、又は成分(B)が硬化反応性基を有し、その硬化反応性基が成分(A)の硬化反応性基と硬化反応をすることができる場合には、成分(A)の硬化反応性基間の反応により又は成分(A)の硬化反応性基と成分(B)の硬化反応性基の間の反応により組成物全体が硬化できるものであればよく、その目的が達成できる限りその化学構造は特に限定されない。本明細書において用いる「硬化反応性基」の用語は、組成物の硬化反応を生じうる架橋可能な基あるいは架橋性基と一般に認識される反応性の比較的高い官能基、例えば、ヒドロシリル化反応におけるアルケニル基とSiH基、ラジカル反応における炭素-炭素二重結合などと、通常は組成物の硬化反応を生じさせるほどには活性な架橋反応性基とは認識されない基であるが、活性な硬化剤、例えば有機過酸化物による水素の引き抜きなどによって分子同士を架橋することができる基(例えば、有機過酸化物を用いて架橋するときのオルガノ(ポリ)シロキサンの珪素原子に結合したメチル基の水素原子)の両方を含む。
【0034】
成分(A)の硬化反応性基としては、ヒドロシリル化反応性基、ラジカル反応性基、縮合反応性基、過酸化物架橋反応、及びエネルギー線の照射によって反応しうる基等から選択される任意の硬化反応性基を用いることが好ましく、特に、硬化反応性基としては、炭素-炭素二重結合を有するヒドロシリル化反応性基又はラジカル反応性基;珪素原子結合水素基(Si-H)を有するヒドロシリル化反応性基;水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、及びオキシモキシ基から選ばれる縮合反応性基;エネルギー線の照射によって架橋反応しうる光反応性基、例えば、光ラジカル重合性基及び光カチオン重合性基から選択される基;有機過酸化物などによる水素原子の引き抜きによって架橋反応をしうる、珪素原子に結合した炭化水素基、例えばメチル基;又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本発明において用いる成分(A)は、1種の硬化反応性基を分子内に含むオルガノ(ポリ)シロキサンであってもよく、2種類以上の異なる硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサンであってもよく、硬化反応性基の種類/硬化反応性基の結合部位/硬化反応性基の含有量/及びシロキサン骨格のいずれかにおいて互いに異なる2種以上のオルガノ(ポリ)シロキサンの混合物であってもよい。
【0035】
成分(A)の好ましい例としては、
(i)ヒドロシリル化反応に関与しうる、炭素-炭素二重結合を含む基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン(A1)及び珪素原子結合水素(Si-H)を有するオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサン(A2)から選択される一種、又は(A1)と(A2)の組み合わせ、
(ii)縮合反応に関与しうる加水分解縮合性シリル基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン、
(iii)ラジカル重合反応に関与しうるラジカル重合反応性基を含む基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン(但し(v)の場合を除く)、
(iv)過酸化物架橋反応に関与しうる硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン、及び
(v)一般には化学線(actinic ray)ともよばれるエネルギー線、例えば紫外線又は電子線の照射による架橋反応に関与しうる硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン
が挙げられる。
【0036】
成分(A)として、上記(i)~(v)、特に(i)~(iv)の1種のみを用いること、あるいは(i)~(v)のそれぞれの組の中で2種以上、特に(i)~(iv)の組の中の1種以上と(v)のオルガノ(ポリ)シロキサンを組み合わせ用いることができ、すなわち成分(A)が有する硬化反応性基としては1種類の硬化反応に関与するもののみを用いること、又は2種類以上の異なる硬化反応性基を組み合わせて用いることもできる。そのような組み合わせの好ましい例として、(i)~(iv)のうちの1種以上と(v)の組み合わせが挙げられるがこれに限定されない。
【0037】
(i)ヒドロシリル化反応によって硬化可能な成分(A)
成分(A)が、ヒドロシリル化反応に関与する硬化反応性基を有し、ヒドロシリル化反応によって硬化可能なオルガノ(ポリ)シロキサンである場合、成分(A)は以下の成分(A1)及び(A2)から選択される一種、又は(A1)と(A2)の両方を含む。
(A1)炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン、
(A2)硬化反応性基として珪素原子結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサン。
硬化性組成物が成分(A)として成分(A1)又は(A2)のいずれか一方のみを含む場合には、成分(B)として、成分(A)との間でヒドロシリル化反応を起こすことができる炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基又は珪素原子結合水素原子(Si-H)を有するポリシルセスキオキサンを用いる。それにより硬化性組成物全体が硬化することができる。
【0038】
成分(A1)は、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンであり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、及び4-ビニルフェニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;3-アクリロキシプロピル基及び4-アクリロキシブチル基等のアクリル含有基;3-メタクリロキシプロピル基及び4-メタクリロキシブチル基等のメタクリル含有基からなる群から選ばれる硬化反応性基を分子内に含有する、直鎖状、分岐鎖状、環状、又は樹脂状(ネットワーク状)のオルガノ(ポリ)シロキサンであることが好ましい。特に、ビニル基、アリル基、又はヘキセニル基から選ばれる炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンが成分(A1)として好ましい。
【0039】
成分(A1)であるオルガノ(ポリ)シロキサンは、炭素-炭素二重結合を含む基に加えて、分子内に炭素-炭素二重結合を有しない一価炭化水素基、水酸基、及びアルコキシ基からなる群から選択される基を含んでもよい。また、一価炭化水素基は、その水素原子の一部がハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい。このような一価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基などのアラルキル基;及びこれらのアリール基又はアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。なお、成分(A1)が、水酸基及び/又はアルコキシ基などの縮合性官能基を含む場合、成分(A1)は、ヒドロシリル化反応硬化性に加えて、縮合反応性を有する。
【0040】
好適には、成分(A1)は、下記の平均組成式:
R11
aR12
bSiO(4-a―b)/2
で表されるオルガノ(ポリ)シロキサン、又はその2種以上の混合物であってよい。
式中、R11は、上記の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基であり、
R12は、上記の炭素-炭素二重結合を有しない一価炭化水素基、水酸基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる基であり、
a及びbは次の条件:1≦a+b≦3及び0.001≦a/(a+b)≦0.33を満たす数であり、好ましくは、次の条件:1.5≦a+b≦2.5及び0.005≦a/(a+b)≦0.5を満たす数である。これは、a+bが上記範囲の下限以上であると、硬化物の柔軟性が高くなるからであり、一方上記範囲の上限以下であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、a/(a+b)が上記範囲の下限以上であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、一方上記範囲の上限以下であると、硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0041】
本発明の硬化性組成物において、特に好適には、成分(A1)は、
(A1-1)分子鎖末端のみにアルケニル基を有する直鎖状のオルガノ(ポリ)シロキサン、及び、
(A1-2)ビニル(CH2=CH-)基の含有量が1.0~32.0質量%の範囲内にあるアルケニル基を1分子当たり平均して3個以上含有するオルガノポリシロキサン
から選ばれる1種類以上を含むものであり、成分(A1-1)及び成分(A1-2)を共に含むものであってもよい。
【0042】
成分(A1-1)は、その分子鎖末端に
(Alk)R12
2SiO1/2
(式中、Alkは炭素原子数2以上のアルケニル基であり、R12は上で定義したとおりである。)
で表されるシロキサン単位を有し、その他のシロキサン単位が実質的にR12
2SiO2/2で表されるシロキサン単位のみからなる直鎖状のオルガノ(ポリ)シロキサンである。なお、R12は上で定義した基を表す。また、成分(A1-1)のシロキサン重合度は、末端シロキサン単位を含めて、5~1000の範囲であることが好ましい。このような成分(A1-1)は特に好適には、分子鎖の両末端が(Alk)R12
2SiO1/2で表されるシロキサン単位で封鎖された、直鎖状のオルガノ(ポリ)シロキサンである。
【0043】
成分(A1-2)は、アルケニル基を1分子当たり平均して3個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、
平均単位式:
(R21SiO3/2)o(R22
2SiO2/2)p(R23
3SiO1/2)q(SiO4/2)r(XO1/2)s
で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂であることが好ましい。
上式中、R21、R22、及びR23は、アルケニル基及び上述した炭素-炭素二重結合を有しない一価炭化水素基から選ばれる基であり、Xは水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基である。ただし、全ての珪素原子上の置換基のうち、少なくとも、当該オルガノポリシロキサン中のビニル(CH2=CH-)基の含有量が、1.0~32.0質量%の範囲を満たす範囲になるようにR21、R22、及びR23の一部はアルケニル基であり、特に、R23
3SiO1/2で表されるシロキサン単位上のR23の少なくとも一部はアルケニル基であることが好ましい。
【0044】
上記式中、(o+r)は正数であり、pは0又は正数であり、qは0又は正数であり、sは0又は正数であり、かつ、p/(o+r)は0~10の範囲内の数であり、q/(o+r)は0~5の範囲内の数であり、(o+r)/(o+p+q+r)は0.3~0.9の範囲内の数であり、s/(o+p+q+r)は0~0.4の範囲内の数であることが好ましい。
【0045】
成分(A1-2)として、特に好適には、
{(Alk)R23
2SiO1/2}q1(R23
3SiO1/2)q2(SiO4/2)r
(式中、Alk、R23は上で定義した基であり、q1+q2+rは5~500の範囲の数であり、(q1+q2)/rは0.1~4.0の範囲の数であり、q2は当該オルガノポリシロキサン樹脂中のビニル(CH2=CH-)基の含有量が、1.0~32.0質量%の範囲を満たす範囲の数である)
で表されるアルケニル基含有MQオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0046】
これらの分子鎖末端のみにアルケニル基を有する成分(A1-1)及びアルケニル基を3個以上含有し、ビニル(CH2=CH-)基の含有量が1.0質量%以上のオルガノポリシロキサン成分(A1-2)は、それぞれ単独で用いることも出来るが、これらを併用することで、組成物全体として速硬化性/速乾性に優れ、かつ、機械的強度及び柔軟性に優れる硬化反応物が得られる場合がある。
【0047】
珪素原子結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサン(A2)は、好適には、分子内に少なくとも2つの珪素原子結合水素原子を有し、炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有する成分(A1)及び/又は炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有する成分(B)の架橋剤として機能する成分である。本発明において、成分(B)が前記のアルケニル基等の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有する場合、成分(A2)を使用することで、成分(B)を含めた組成物全体をヒドロシリル化反応により、硬化することができ、かつ、このような態様は好ましい。炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有する成分(B)を用いる場合、上記の成分(A1)の使用は任意であり、すなわちそのような成分(B)に加えて成分(A1)を用いても、成分(A1)を用いなくてもよい。
【0048】
このような成分(A2)の例として、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、テトラキス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、及びこれらから選択される2種以上の混合物が挙げられる。
【0049】
本発明の硬化性組成物において、成分(A2)は、
(A2-1)分子鎖末端のみに珪素結合水素原子を有する直鎖状のオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサンを含み、かつ任意選択により場合によっては
(A2-2)分子内に少なくとも3個の珪素結合水素原子を有する直鎖状又は樹脂状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含んでいることが好ましい。
【0050】
成分(A2-1)は分子鎖末端のみに珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサンであり、上記成分(A1)とのヒドロシリル化反応において、鎖延長剤として機能し、硬化反応物の柔軟性を高める成分である。このような成分(A2-1)は、好適には直鎖状のオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサンであり、特に好ましいものとして以下の構造式で表されるものを挙げることができ、これらから選択される1種又は2種以上の混合物を用いることが好ましい。
HMe2SiO(Ph2SiO)m1SiMe2H
HMe2SiO(Me2SiO)m1SiMe2H
HMe2SiO(MePhSiO)m1SiMe2H
HMe2SiO(Me2SiO)m1(MePhSiO)n1SiMe2H
HMe2SiO(Me2SiO)m1(Ph2SiO)n1SiMe2H
HMePhSiO(Ph2SiO)m1SiMePhH
HMePhSiO(Me2SiO)m1SiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m1(MePhSiO)n1SiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m1(Me2SiO)n1SiMePhH
上記各式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、m1は1~100の数であり、n1は1~50の数である。
【0051】
上記成分(A2-2)は、一分子当たり平均して少なくとも3個の珪素結合水素原子を有する直鎖状又は樹脂状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、上記の成分(A2-1)と併用することで、本組成物に迅速な硬化性を付与することができる成分である。
【0052】
成分(A2-2)として用いる直鎖状のオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサンの例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体を挙げることができる。
【0053】
成分(A2-2)として用いる樹脂状のオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサンの例としては、少なくともSiO4/2単位(Q単位)及びR31SiO3/2単位(T単位)からなる群から選ばれる分岐シロキサン単位を含んでなり、R31
3SiO1/2単位(M単位)、R31
2HSiO1/2単位(MH単位)、および任意でR31
2SiO2/2単位(D単位)、R31HSiO1/2単位(DH単位)を含んで成る、MHMQ型、MHQ型、MHMT型、MHT型、MHMQT型、MHQT型、MHMDQ型、MHMDDHQ型、MHDQ型、MHDDHQ型、MHMDT型、MHMDDHT型、MHDT型、MHDDHT型、MHMDQT型、MHMDDHQT型、MHDQT型、MHDDHQT型から選ばれる1種類以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を挙げることができる。
なお、上記各式中、R31は独立にメチル基又はフェニル基である。
【0054】
本発明の硬化性組成物において、成分(A2)の含有量は、組成物中の、好適には、成分(A1)中の炭素-炭素二重結合1モルに対して、成分(A2)中の珪素結合水素原子が0.1~10モルの範囲となる量であり、好適には、0.2~5.0モルの範囲となる量であり、特に好適には、0.5~2.0モルの範囲となる量である。成分(A2)が有する珪素結合水素原子の量が前述した範囲の下限以下である場合には、硬化性組成物の硬化が不良となる場合があり、成分(A2)が有する珪素結合水素原子の量が前述した範囲の上限を超えると、組成物が硬化して得られる硬化物が硬くなりすぎるもしくは、残存する(A2)が硬化物から相分離するため、弾性体又はゲル状の硬化生成物を得ようとする場合には好ましくない。
【0055】
本発明の硬化性組成物において、成分(B)として炭素-炭素二重結合を硬化反応性基として有するポリシルセスキオキサンを用いる場合には、成分(A2)の含有量は、好適には、組成物中の成分(A1)及び成分(B)中の合計の炭素-炭素二重結合1モルに対して、成分(A2)中の珪素結合水素原子が0.1~10モルの範囲となる量であり、好適には、0.2~5.0モルの範囲となる量であり、特に好適には、0.5~2.0モルの範囲となる量である。また、成分(B)としてケイ素結合水素原子を硬化反応性基として有するポリシルセスキオキサンを用いる場合には、成分(A2)の含有量は、好適には、組成物中の、成分(A1)中の合計の炭素-炭素二重結合1モルに対して、成分(A2)及び成分(B)中の合計の珪素結合水素原子が0.1~10モルの範囲となる量であり、好適には、0.2~5.0モルの範囲となる量であり、特に好適には、0.5~2.0モルの範囲となる量である。
【0056】
(ii)加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応によって硬化可能な成分(A)
上記(i)のヒドロシリル化反応によって硬化可能な成分(A)に代えて、あるいはそれと組み合わせて、成分(A)として加水分解性シリル基及び/又は珪素結合水酸基の縮合反応によって硬化可能な成分(A3)を用いることができる。すなわち成分(A)の一部又は全部が、(A3)前記の縮合反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンであってもよく、特に、縮合反応性基を分子鎖末端のみに有する1種類又は2種類以上のオルガノ(ポリ)シロキサン又はその組み合わせからなるオルガノ(ポリ)シロキサン(A3-1)であってよい。前記の縮合反応性基は、縮合反応により、又は加水分解及び縮合反応によって、オルガノ(ポリ)シロキサンの分子鎖を架橋することができる基であればよく、その種類は特に限定されないが、好ましい縮合反応性基としては、オルガノ(ポリ)シロキサン中の珪素原子に結合した水酸基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、2-プロぺニルオキシ基)、アシロキシ基(例えば、アセチルオキシ基)、及びケトキシム基(例えば、メチルエチルケトキシム基)から選ばれる基又はそれらから選択される2種以上の基の組み合わせを挙げることができる。加水分解性シリル基の縮合反応によって硬化可能なオルガノ(ポリ)シロキサンは当分野で周知であり、当業者であれば本発明の目的に合わせて、オルガノポリシロキサンの重合度等を調節することによって適切な粘度とし、かつ縮合反応性基の種類及び1分子当たりの数を適切に調節して本発明の成分(A)として用いることができる。オルガノ(ポリ)シロキサンが有する前記の縮合反応性基以外の珪素原子結合基は、炭素数1~20の一価炭化水素基であることが好ましく、特にメチル基及び/又はフェニル基であることが好ましい。
【0057】
(iii)硬化反応性基としてラジカル重合反応性基を含む基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン成分(A)
上記(i)のヒドロシリル化反応によって硬化可能な成分(A)に代えて、あるいはそれと組み合わせて、成分(A)としてラジカル重合反応性基を含む基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを用いることができる。すなわち成分(A)の一部又は全部が、(A4)ラジカル重合性基を含む基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンであってよく、特に、ラジカル重合性基を分子鎖末端のみに有する1種類又は2種類以上のオルガノ(ポリ)シロキサン又はその組み合わせからなるオルガノ(ポリ)シロキサン(A4-1)であってよい。前記のラジカル重合反応性基は、ラジカル反応により重合可能な有機基として知られている任意の官能基であり、ラジカル反応によってオルガノ(ポリ)シロキサンの分子鎖を架橋することによって本発明の組成物を硬化させることができる任意のラジカル重合反応性基であってよい。本発明に用いることができるラジカル重合反応性基としては、例えば、アクリルオキシ又はメタクリルオキシ基含有基、例えば、アクリルオキシプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、末端アルケニル基、例えば、スチリル基、アリルフェニル基を挙げることができる。特に、ラジカル重合に対する反応性が高いことから、アクリルオキシプロピル基が好ましい。当業者であれば本発明の目的に合わせて、オルガノ(ポリ)シロキサンの重合度等を調節することによって適切な粘度とし、かつラジカル重合反応性基の種類及び1分子当たりの数を適切に調節して本発明の成分(A)として用いることができる。オルガノ(ポリ)シロキサンが有する前記のラジカル重合性反応性基以外の珪素原子結合基は、炭素数1~20の一価炭化水素基であることが好ましく、特にメチル基及び/又はフェニル基であることが好ましい。
【0058】
また、ラジカル重合反応と付加反応を併用する態様として、上述したラジカル重合反応性基としてアクリルオキシプロピル基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンと、SH基、例えばメルカプトプロピル基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを併用することもできる。
【0059】
(iv)過酸化物架橋によって分子間の架橋反応を起こして硬化することができる硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン成分(A)
上記(i)のヒドロシリル化反応によって硬化可能な成分(A)に代えて、あるいはそれと組み合わせて、成分(A)として過酸化物架橋によって分子間の架橋反応を起こして硬化することができる硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを用いることができる。すなわち成分(A)の一部又は全部が、(A5)過酸化物架橋によって分子間の架橋反応を起こして硬化することができる硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンであってよい。過酸化物架橋によって分子間の架橋が可能な硬化反応性基には、オルガノ(ポリ)シロキサンの珪素原子に結合したメチル基などの一価の飽和炭化水素基も含まれるが、上述したアルケニル基を有する成分(A1-1)及び/又は成分(A1-2)を用いることが過酸化物架橋に対する反応性が高くなることから好ましい。当業者は、成分(A1-1)及び/又は成分(A1-2)のアルケニル基の含有量を、過酸化物架橋に適した量に調節して用いることができる。
【0060】
(v)硬化反応性基として紫外線硬化性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン成分(A)
上記(i)のヒドロシリル化反応によって硬化可能な成分(A)に代えて、好ましくはそれと組み合わせて、成分(A)として紫外線硬化性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを用いることができる。すなわち成分(A)の一部又は全部、好ましくは一部が、(A6)紫外線硬化性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンであってよい。「紫外線硬化性基」は、紫外線照射によって本発明の硬化性組成物を硬化させうる官能基の意味であるが、この官能基は紫外線以外にも電子線などのエネルギー線によって反応させることができ、紫外線硬化性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンの硬化は、紫外線に限らず所望の硬化反応を起こさせることができる条件で行うことができ、それも本発明の範囲内である。
【0061】
(A6)紫外線硬化性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンは、一分子あたり平均して2個以上の紫外線硬化性基を有するものであり、この目的を達成できる限りその分子構造は任意のものであることができる。一般には、成分(A6)のオルガノ(ポリ)シロキサンは、下記式(1):
【化1】
で表すことができる。
【0062】
式(1)中、全てのR1~R8基のうち、一分子当たり平均して2つ以上は紫外線硬化性基である。紫外線硬化性基は、光開始剤の存在下又は不存在下で、紫外線の照射によって互いの間に結合を生じることができる有機基である。紫外線硬化性基の例として、ラジカル反応性基及びカチオン反応性基を挙げることができる。ラジカル反応性基はラジカル反応機構によって新たな結合、特にラジカル反応性基どうしの間の結合を形成しうる官能基であれば特に限定されない。例えば、単独で使用することが出来る基としては、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基及びこれらいずれかの基を含有する有機基を挙げることができる。また、組み合わせて使用する官能基としては、アルケニル基とSH基の併用が挙げられる。具体例としては、アクリルオキシプロピル、メタクリルオキシプロピル、アクリルアミドプロピル、メタクリルアミドプロピル、及び3-(N-マレイミド)プロピルなどの基がラジカル重合性基として単独で使用でき、一方、ビニル基とメルカプトプロピル基を組み合わせて使用することも例示できる。カチオン重合性基としては、ビニルエーテル基、エポキシ基含有基、オキセタン基含有基などの基、例えば、CH2=CH-O-(CH2)n-(nは3~20の整数である)、グリシジルオキシ-(CH2)n-(nは3~20の整数である)、3,4-エポキシシクロヘキシル-(CH2)n-(nは2~20の整数であるなどの基が挙げられる。
紫外線硬化性基としては、エポキシ基含有基及びマレイミド基含有基から選択される1種以上の基であることが特に好ましい。特に好ましい基として、エポキシシクロヘキシルエチル基、特に3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、3-(N-マレイミド)プロピル基を挙げることができる。
【0063】
式(1)中、紫外線硬化性基以外のR1からR8はそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数が1~20の非置換又はフッ素で置換されたアルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、及びアリール基から選択される基である。前記のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、オクチルなどの基が挙げられるが、メチル基が特に好ましい。前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。前記アリールアルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル基などが挙げられる。前記アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。フッ素で置換された一価炭化水素基の例としては、3,3,3-トリフルオロプロピルが挙げられる。ただし、フッ素で置換された一価炭化水素基は硬化物の比誘電率を上昇させるため、本発明の目的上、成分(A)に含まれないことが好ましい。
【0064】
成分(A)である式(1)のオルガノ(ポリ)シロキサンが有する紫外線硬化性基の数は、特に限定されないが、全体として一分子当たり平均して2~4、好ましくは2~3、特に好ましくは2である。
【0065】
特に、式(1)中のR1~R3のうち1つと、R6~R8のうち1つが紫外線硬化性基であることが好ましい。さらに、式(1)中のR1~R3のうち一つと、R6~R8のうち一つのみが紫外線硬化性基であることが特に好ましい。
【0066】
式(1)のnは、式(1)で表されるオルガノ(ポリ)シロキサンの25℃における粘度が1~10000mPa・sとなる値であることが好ましく、1~2000mPa・sとなる値であることがさらに好ましく、1~1000mPa・sとなる値であることが特に好ましい。当業者であれば、式(1)のオルガノ(ポリ)シロキサンの粘度が前述の粘度範囲となるように、nの値を過度の試行錯誤を必要とすることなく容易に決定することができる。しかし、一般には、式(1)の化合物が所望の粘度となるように、nの数は0~500であることが好ましく、0~100の範囲がより好ましい。
【0067】
式(1)のオルガノ(ポリ)シロキサンは、1種で、又は2種以上の混合物として用いることができる。2種以上のオルガノ(ポリ)シロキサンを混合物として用いる場合、その混合物の25℃における粘度が1~10000mPa・sとなる値であることが好ましく、1~2000mPa・sであることがさらに好ましく、1~1000mPa・sであることが特に好ましい
【0068】
〔成分(B):かご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン〕
成分(B)として用いるかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンは、下記平均単位式(2)
(R9SiO3/2)p(R10SiO3/2)q (O1/2Ra)r (2)
で表されるT単位のみからなるポリシルセスキオキサンのうち、特にかご状分子構造を有するものである。かご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンは、いわゆる多面体クラスター構造又はそれに近い構造を有し、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane)ともよばれる。
【0069】
式(2)中、R9は非硬化反応性基であり、それぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された一価炭化水素基であり、好ましくは非置換又はフッ素で置換された、炭素原子数が1~20のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数7~20のアリールアルキル、及び炭素数6~20のアリール基から選択される基である。前記のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、及びテトラデシルなどの基が挙げられる。前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。前記アリールアルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル基などが挙げられる。前記アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。特に好ましい一価炭化水素基は、炭素数が2~20のアルキル基、であり、特に、ヘキシル、オクチル、及びデシル基が好ましい。フッ素化された一価炭化水素基の例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシルが挙げられ、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の比誘電率を低くするためには、本発明に用いるポリシルセスキオキサンは分子の対称性が高いものが好ましく、したがって、式(2)のR9の全てが同じ基である場合が好ましい。これは、式(2)の化合物に関して、官能基の種類又は分子内の配置により、対称性であるか、または対称性が高い分子設計を行うことにより、分子内の分極率を抑制することが、得られる硬化物の比誘電率を低減する上で有利であるからである。成分(B)は、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の比誘電率を低下させる成分である。
【0070】
式(2)中、R10は硬化反応性基であり、成分(B)における任意の官能基である。すなわち、式(2)で表される化合物として、R10が存在するもの、及びR10が存在しないもののいずれも本発明の成分(B)として用いることができる。好適な硬化反応性基の例としては、前記の成分(A)の硬化反応性基として適用可能な官能基を挙げることができる。具体例としては、(a)ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、4-ビニルフェニル基、3-アクリロキシプロピル基、及び3-メタクリロキシプロピル基等の炭素-炭素二重結合を含む基、(b)珪素原子結合水素原子(Si-H)及びSi-H基を含有する基、(c)珪素原子に結合した水酸基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、2-プロぺニルオキシ基)、アシロキシ基(例えば、アセチルオキシ基)、及びケトキシム基等の縮合反応性基、(d)アクリルオキシプロピル、メタクリルオキシプロピル、アクリルアミドプロピル、メタクリルアミドプロピル、及び3-(N-マレイミド)プロピル、CH2=CH-O-(CH2)n-(nは3~20の整数である)、3,4-エポキシシクロヘキシル-(CH2)n-(nは2~20の整数である)、グリシジルオキシ-(CH2)n-(nは3~20の整数である)等の紫外線硬化性基、(e)アクリルオキシプロピル基、スチリル基等のラジカル重合性基、及び(f)過酸化物架橋によって分子間の架橋反応を起こすことができる基、例えばアルケニル基が挙げられる。
【0071】
式(2)中、R9はそれぞれ独立に炭素数2~20の非置換又はフッ素で置換されたアルキル基であることが好ましい。また、R10はそれぞれ独立に炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましい。また、R9及びR10が前述の要件を両方ともみたしていることがさらに好ましい。これらは、特に成分(A)の硬化反応がヒドロシリル化反応である場合に当てはまる。
【0072】
本発明の一つの態様では、式(2)で表されるポリシルセスキオキサンは、硬化反応性基を有しない。したがって、その場合には、本発明の組成物は、成分(A)の硬化反応性基と成分(C)の硬化剤の作用のみによって硬化する。式(2)の化合物が硬化反応性基を有する場合には、成分(A)のオルガノ(ポリ)シロキサンが有する硬化反応性基の種類と、成分(B)のポリシルセスキオキサンが有する硬化反応性基の種類に応じて、成分(A)同士が相互に硬化反応をし、それとは独立に成分(B)同士が相互に硬化反応をする場合と、成分(A)及び成分(B)が互いに一緒に硬化反応をする場合の両方がありえ、本発明は、全ての可能な組み合わせを含む。
【0073】
式(2)において、(O1/2Ra)rは、R9SiO3/2単位及びR10SiO3/2単位からなるかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンを形成したときの、一部の縮合反応が完結せずに残存するSi-OH又はSi-O-アルキル基、Si-Oシクロアルキル基を表す。すなわち、Raはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~20、好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、又はイソプロピル基、あるいは炭素数5~20のシクロアルキル基、例えば、シクロペンチル又はシクロヘキシル基を表す。
【0074】
式(2)のポリシルセスキオキサン中の全ての縮合性反応基が互いに結合してSi-O-Siを形成している場合には、式(2)においてrは0(ゼロ)である。このような場合を完全かご状構造という。また、rが0でない場合には、式(2)のポリシルセスキオキサンにおいて全ての縮合性反応基が互いに結合してSi-O-Siを形成してはおらず、一部はSiORbとなっている。このような場合を部分開裂構造という。このようにポリシルセスキオキサンのかご状分子構造には、完全かご状構造と、部分開裂構造のものが知られており、本発明の式(2)のポリシルセスキオキサンとしてはいずれを用いることもできる。しかし、本発明の式(2)のポリシルセスキオキサンは、完全かご状構造(すなわち式(2)においてr=0)又はそれに近い構造のもの(例えば、p+qに対してrが20%以下、好ましくは10%以下)であることが好ましく、完全かご状構造を有するものであることが特に好ましい。ポリシルセスキオキサンの完全かご状構造及び部分開裂構造については、例えば特表2010-515778号公報の段落[0047]~[0049]に具体例が示されており、本発明のかご状ポリシルセスキオキサンも同様の化学構造を有するものであってよい。
【0075】
式(2)においてp及びqは、式(2)のポリシルセスキオキサンがかご状分子構造をとることができる限り、任意の数であってよく、特定の値に限定されない。しかし、式(2)のp及びqの値はその合計が、一般には6~20であり、好ましくは8~20であり、さらに好ましくは8~14、特に好ましくは、8、10、又は12である。あるいは式(2)のポリシルセスキオキサンは、p及びqの合計が異なる2種以上のポリシルセスキオキサンを任意に組み合わせた混合物であることができる。例えば、本発明のポリシルセスキオキサンは、p及びqの合計が8、10、又は12のかご状分子構造のポリシルセスキオキサンの混合物であってもよい。
【0076】
さらに、上記式(2)中、qは0(ゼロ)であってもよい。その場合は、(B)成分のポリシルセスキオキサンは、珪素原子に結合した硬化反応性基を有しない。したがって、そのような(B)成分を用いた組成物を硬化させた場合、硬化条件下において、成分(B)である式(2)で表されるポリシルセスキオキサンと成分(A)の硬化反応性オルガノ(ポリ)シロキサンとの間の硬化反応性基同士による結合は原則として形成されない。しかし、そのような結合が形成されないとしても、成分(A)のオルガノ(ポリ)シロキサンと式(2)で表されるポリシルセスキオキサンの相容性が良好であることにより、成分(A)が硬化して形成されるマトリクス中に、式(2)で表されるポリシルセスキオキサンが分離することなく均一に分散した形態の、均一性の高い硬化物が得られる。式(2)中のqが0(ゼロ)である態様は、本発明の硬化性組成物の好ましい一つの態様である。
【0077】
したがって、本発明の一つの好ましい態様では、式(2)のポリシルセスキオキサンは、上記式(2)においてq=0の場合に該当する下記式(2a):
(R9SiO3/2)p(O1/2Ra)r (2a)
で表される。式(2a)中、R9は、上記式(2)に対して定義したとおりであり、pは一般に6~20であり、好ましくは8~20であり、さらに好ましくは8~14、特に好ましくは、8、10、又は12であり、あるいは式(2a)の化合物はそれらを任意に組み合わせた混合物であることができる。式(2a)中のRaは、式(2)に対して定義した通りである。式(2a)において、rは0であるか又は好ましくはp+rの20%以下、さら好ましくはp+rの10%以下、特に好ましくはp+rの5%以下の値である。rの値がpに対して十分小さい場合には、式(2a)のポリシルセスキオキサンのかご状構造部分が明確な空孔部分を有することができ、そのことが、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の比誘電率を低くするために有効であると考えられる。
【0078】
上記式(2)のポリシルセスキオキサンは、上述したとおり、p及びqの合計値、又はqが0の場合はpの値が異なる重合度の違うポリシルセスキオキサンの混合物であってもよい。その場合、式(2)のp及びqの合計、すなわち珪素原子の数は平均で8~20であり、ポリシルセスキオキサンの数平均分子量が500~3,000の範囲であり、分子量分散度(Mw/Mn、ここでMwは重量平均分子量を、Mnは数平均分子量を表す)が1.0~1.5であることが好ましく、1.0~1.4であることがさらに好ましい。Mw/Mnの値が1に近いほど、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の比誘電率を低くするために有利である。ここでのポリシルセスキオキサンの重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したポリスチレン換算における重量平均分子量および数平均分子量によって測定した値である。
【0079】
〔成分(C):硬化剤〕
成分(C)の硬化剤は、成分(A)のオルガノ(ポリ)シロキサンが有する硬化反応性基が関与する硬化反応を起こさせる又は促進させるため、あるいは成分(B)が硬化反応性基を有する場合には、成分(A)及び成分(B)の硬化反応性基が関与する硬化反応を起こさせ又は促進させて、本発明の組成物を硬化させるために必要とされる化合物であり、用いた成分(A)又は成分(A)及び(B)が有する硬化反応性基の反応の種類に応じて適切な化合物を用いることが好ましい。硬化反応性基の反応の種類に応じて適した硬化剤を以下に説明する。
【0080】
(1) 硬化反応性基がヒドロシリル化反応によって反応をする場合
成分(A)及び/又は成分(B)が全体として、硬化反応性基としてヒドロシリル化反応しうる基を有する場合には、硬化剤としてヒドロシリル化反応触媒(C1)を用いることが好ましい。
そのような場合としては、
(i)成分(A)として、上述したアルケニル基を有する成分(A1-1)及び成分(A1-2)から選ばれる1種類または2種類以上の成分と、珪素原子結合水素原子(Si-H)を有する成分(A2)を用いた場合、
(ii)上記(i)に加えて、成分(B)が硬化反応性基として炭素-炭素二重結合を含む基、及び/又は成分(B)が硬化性反応基として珪素原子結合水素原子(Si-H)又はSi-H基を有する基を有する場合、
(iii)成分(A)が硬化性反応基として炭素-炭素二重結合を含む基を有し、成分(B)が硬化性反応基としてSi-H基又はSi-H基を有する基を有する場合、
が挙げられるが、(i)及び(ii)が好ましい。(ii)の場合、成分(A)同士、成分(B)同士、及び成分(A)と(B)の間のヒドロシリル化反応が起こりうる。
【0081】
(C1)ヒドロシリル化反応触媒は、本発明の用途においては、
(C1-1)紫外線などの高エネルギー線の照射なしで、組成物中で触媒活性を示す第一のヒドロシリル化反応触媒、及び/又は
(C1-2)紫外線などの高エネルギー線の照射がないと活性を示さないが、高エネルギー線の照射により組成物中で触媒活性を示す第二のヒドロシリル化反応触媒
を含むことが好ましく、成分(C1-1)と成分(C1-2)の質量比が100/0~0/100の範囲であるものが好ましい。
【0082】
ここで、高エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線が挙げられ、これらのうちでも紫外線が触媒活性化の効率の点から好ましい。また、照射量は、高エネルギー線活性型触媒の種類により異なるが、紫外線の場合は、波長365nmでの積算照射量が100mJ/cm2~10J/cm2の範囲内であることが好ましい。
【0083】
成分(C1-1)は、高エネルギー線の照射なしで、本発明の硬化性組成物中で触媒活性を示す第一のヒドロシリル化触媒である。当該成分は、硬化性組成物がヒドロシリル化反応抑制剤を含まない、あるいは、硬化性組成物がヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいてもその量が少量である場合に、硬化性組成物に望ましい硬化プロファイルを与えるヒドロシリル化反応用触媒であり、例として白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、イリジウム系触媒、ルテニウム系触媒、及び鉄系触媒が挙げられ、白金系触媒が好ましい。白金系触媒としては、例えば、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が挙げられ、特に白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例として挙げられる。特に、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが、それを含む白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから好ましい。また、白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーから選択される化合物を添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを白金錯体に添加することが好ましい。
【0084】
成分(C1-1)は、高エネルギー線の照射なしで活性を示す触媒であるが、その中でも比較的低温でも活性を示すものが好ましい。具体的には、0~200℃の温度範囲において組成物中で触媒活性を示し、ヒドロシリル化反応を促進する。成分(C1-1)の含有量は、触媒の種類及び組成物の種類によって異なるが、通常は組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で0.01~50ppmの範囲内となる量であり、特に白金のアルケニルシロキサン錯体(C1-1-1)を用いて、硬化性組成物の白金含有量が好ましくは1.5~30ppmの範囲内となる量とすることが、良好な硬化速度を達成できるので特に好ましい。成分(C1-1)の添加量が少なすぎると、組成物の硬化が遅くなり、成分(C1-1)の添加量が多すぎると、可使時間が短すぎて実用上の不都合を生じるほか、不経済である。触媒の添加量を緒節することによって、硬化性組成物の硬化速度を所望の速度に調節することができる。
【0085】
成分(C1-2)は、高エネルギー線の照射がないと触媒活性を示さないが、紫外線などの高エネルギー線の照射により本発明の硬化性組成物中で触媒活性を示す第二のヒドロシリル化触媒であり、いわゆる高エネルギー線活性化触媒又は光活性化触媒と呼ばれるものである。
【0086】
成分(C1-2)の具体例としては、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルエチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルアセチル白金(IV)、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルシクロペンタジエニル白金(IV)、(1,5-シクロオクタジエン)ジメチル白金(II),(1,5-シクロオクタジエン)ジフェニル白金(II),(1,5-シクロオクタジエン)ジクロロ白金(II),(2,5-ノルボルナジエン)ジメチル白金(II),(2,5-ノルボルナジエン)ジクロロ白金(II),トリメチル(アセチルアセトナト)白金(IV)、トリメチル(3,5-ヘプタンジオネート)白金(IV)、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金(IV)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へキサンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へプタンジオナト)白金(II)、ビス(3,5-ヘプタンジオナト)白金(II)、ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)白金(II)、ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)白金(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)白金(II)が挙げられる。これらのなかでも(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)とビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)が汎用性と入手の容易さの点から好ましい。
【0087】
成分(C1-2)は、単独で用いる場合、高エネルギーの積算照射量により、その触媒活性を制御することが可能であり、可使時間の調節の面から優位性がある。一方、成分(C1-2)を成分(C1-1)と併用する場合、(C1-1)によって得た反応物に、高エネルギー線の照射により二次硬化性(以下、「光硬化性」ということがある)を付与することができるほか、上記成分(C1-1)の存在下で同時に高エネルギー線の照射を行うことで、十分な光照射を行えない部位においてもその硬化反応が補助的に進行し、非流動性の反応物について、さらなる硬化反応を進行させることができるほか、(C1-1)単独に比較してさらなる速硬化性/速乾性を達成できる場合がある。成分(C1-2)を用いる場合、その使用量は、硬化性組成物の硬化速度を所望の程度まで高めるために十分な量であり、好ましくは、硬化性組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で1~50ppmの範囲内となる量であり、好ましくは、5~50ppmの範囲内となる量である。
【0088】
成分(C1-2)である紫外線などの高エネルギー線によって活性化される触媒又は光活性化触媒であるヒドロシリル化触媒を含む場合、本発明の硬化性組成物は、組成物を調製した直後に高エネルギー線を照射した場合、25℃で少なくとも20分以内に非流動性の反応物を形成する特徴をさらに有するように設計することができる。なお、本発明の組成物において紫外線などの高エネルギー線を照射するタイミング及び照射量は任意であり、硬化性組成物の使用時に、硬化性組成物を基材等に適用した直後に高エネルギー線を照射してもよく、一定時間後に補助的に高エネルギー線を照射してもよい。また、実用的な照射量及び上記の特性を規定するための照射量は上記のとおりであるが、実際の使用において適切な照射量を採用すればよく、上述した照射量に限定されるものではない。
【0089】
本発明の硬化性組成物がヒドロシリル化反応によって硬化するものである場合、上述したヒドロシリル化触媒とともに、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいても、含まなくてもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は、通常、組成物のポットライフを向上させ、安定した組成物を得るために硬化性組成物中に添加されるが、本発明の硬化性組成物においては、硬化性組成物の硬化時間が遅くならないようにするためにヒドロシリル化反応抑制剤を添加しなくてもよい。ただし、硬化性組成物の可使時間を長くするために、ヒドロシリル化反応抑制剤を組成物に添加してもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は当分野で公知であり、具体例として、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(1,1-ジメチル-2-プロピンオキシ)シラン、およびメチルビニルビス(1,1-ジメチル-2-プロピンオキシ)シラン等のアルキンオキシシラン、ならびにトリアリルイソシアヌレート系化合物が挙げられる。
このヒドロシリル化反応抑制剤の硬化性組成物中の含有量は特に限定されず、成分(A)~成分(C)の合計100質量部に対して、0.0001~5質量部の範囲内、0.01~5質量部の範囲内、あるいは、0.01~3質量部の範囲内であることが好ましい。ただし、本発明の組成物を加熱及び/又は高エネルギー線照射することなく室温で放置して硬化ないし半硬化させる場合には、ヒドロシリル化反応抑制剤を含まなくてもよく、かつ、硬化反応の見地からヒドロシリル化反応抑制剤を含まないことが好ましい。
【0090】
(2) 成分(A)が加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応によって硬化する場合
本発明の硬化性組成物において、成分(A)が有する硬化反応性基が加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基であって、加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応によって組成物が硬化する場合、成分(C)の硬化剤として加水分解性シリル基のための加水分解及び縮合反応触媒(C2)を用いることができる。このような縮合反応触媒は当分野で公知であり、任意の1種以上を選択して用いることができる。縮合反応触媒の例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;及び、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物を挙げることができる。有機錫化合物及び有機チタン化合物からなる群から選択される化合物を成分(C)として用いることが好ましい。
【0091】
縮合反応触媒(C2)の使用量は、硬化性組成物を硬化させたときに所望する硬化プロファイルが得られる量であることが好ましい。
【0092】
(3) 成分(A)がラジカル重合反応によって硬化する場合
本発明の硬化性組成物において、成分(A)が有する硬化反応性基がラジカル重合性基であり、組成物がラジカル重合反応によって硬化する場合、成分(C)の硬化剤としては、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤として知られている、熱によってフリーラジカルが発生するタイプの開始剤、及び/又は光ラジカル重合開始剤として知られている光照射によってフリーラジカルが発生するタイプの開始剤を用いることができる。
【0093】
熱ラジカル重合開始剤の例として、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、及びジクミルペルオキシドなどの、アゾ化合物及び過酸化物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
光ラジカル重合開始剤及び増感剤については後述する。
【0095】
(4) 成分(A)が過酸化物架橋反応によって硬化する場合
本発明の硬化性組成物において、成分(A)が有する硬化反応性基が、過酸化物、特に有機過酸化物によって架橋されうる基であり、その架橋反応によって組成物が硬化される場合、成分(C)の硬化剤としては、有機過酸化物、特にアシル系の有機過酸化物とアルキル系の有機過酸化物を用いることが好ましい。有機過酸化物の例として、ジベンゾイルパーオキサイド、4,4’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、3,3’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’,4,4’-テトラクロロジベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイドを挙げることができる。
【0096】
(5)成分(A)として紫外線硬化性官能基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを含む場合
本発明の硬化性組成物において、成分(A)が、硬化反応性基として紫外線硬化性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを含む場合に、成分(A)の硬化反応性基が光カチオン重合性官能基である場合には、成分(C)の硬化剤として光カチオン重合性開始剤を用いることが好ましい。また、成分(A)が有する硬化反応性基が光ラジカル重合性基である場合には、成分(C)の硬化剤として光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。さらに、これらの光重合開始剤には任意選択により増感剤を組み合わせて用いることができる。紫外線硬化性官能基を電子線照射によって架橋させる場合には、光重合開始剤は通常不要である。
【0097】
(5-1)光カチオン重合開始剤
本発明の組成物に用いる光カチオン重合開始剤は、当技術分野で公知のものから任意に選択して用いることができ、特に特定のものに限定されない。光カチオン重合開始剤には、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩などの強酸発生化合物が知られており、これらを用いることができる。光カチオン重合開始剤の例として、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、シクロプロピルジフェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジメチルフェナシルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロメタンスルホネート、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-ニトロベンゼンジアゾニウム テトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムブロマイド、トリ-p-トリルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリ-p-トリルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム トリフラート、トリフェニルスルホニウム トリフラート、ジフェニルヨードニウム ナイトレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム パーフルオロ-1-ブタンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム トリフラート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホナート、N-ヒドロキシナフタルイミド トリフラート、p-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウム p-トルエンスルホネート、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム トリフラート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム トリフラート、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド ペルフルオロ-1-ブタンスルホナート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム トリフラート、及び4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム トリエチルトリフルオロホスフェートなどが挙げられるがこれらに限定されない。光カチオン重合開始剤として、上記化合物のほかにも、Omnicat 250、Omnicat 270(以上、IGM Resins B.V.社)、及びIrgacure 290(BASF社)などの市販されている光開始剤を挙げることができる。
【0098】
本発明の組成物に添加する光カチオン重合開始剤の量は、目的とする光硬化反応が起こる限り、特に限定されないが、一般的には、本発明の組成物中の光カチオン重合性官能基の総量100質量部に対して、0.1~50質量部、好ましくは、0.5~20質量部の範囲で用いられる。あるいは本発明の(A)成分及び(B)成分の合計量に対して0.1~3質量%、特に0.2~1質量%の量で、光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。
【0099】
(5-2)光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤は、大きく分けて光開裂型と水素引き抜き型のものが知られているが、本発明の組成物に用いる光ラジカル重合開始剤は、当技術分野で公知のものから任意に選択して用いることができ、特に特定のものに限定されない。光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン、p-アニシル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、メチル2-ベンゾイルベンゾエート、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、(±)-カンファーキノン、2-クロロチオキサントン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、リチウム フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィナート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、光ラジカル重合開始剤として上記化合物の他に、Omnirad 651, 184, 1173, 2959, 127, 907, 369, 369E, 及び379EG(アルキルフェノン系光重合開始剤、IGM Resins B.V.社)、Omnirad TPO H, TPO-L, 及び819(アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、IGM RESINS B.V.社)、Omnirad MBF及び754(分子内水素引き抜き型光重合開始剤、IGM Resins B.V.社)、Irgacure OXE01及びOXE02(オキシムエステル系非解重合開始剤、BASF社)などの開始剤を挙げることができる。
【0100】
本発明の組成物に添加する光ラジカル重合開始剤の量は、目的とする光重合反応あるいは光硬化反応が起こる限り、特に限定されないが、一般的には、本発明の組成物の総質量に対して0.01~5質量%、好ましくは0.05~1質量%の量で用いられる。
【0101】
また、上記光カチオン重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤と組み合わせて光増感剤を用いることもできる。増感剤の使用は、重合反応の光量子効率を高めることができ、光開始剤のみを用いた場合と比べて、より長波長の光を重合反応に利用できるようになるために、組成物のコーティング厚さが比較的厚い場合、又は比較的長波長のLED光源を使用する場合に特に有効であることが知られている。増感剤としては、アントラセン系化合物、フェノチアジン系化合物、ペリレン系化合物、シアニン系化合物、メロシアニン系化合物、クマリン系化合物、ベンジリデンケトン系化合物、(チオ)キサンテンあるいは(チオ)キサントン系化合物、例えば、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、スクアリウム系化合物、(チア)ピリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物などが知られており、これらに限らず任意の光増感剤を本発明の硬化性組成物に用いることができる。
【0102】
上述した硬化剤(C)は、成分(A)が有する硬化反応性基の種類に応じて、その種類に対応した硬化剤を1つ又は2つ以上組み合わせて用いることができる。例えば、成分(A)がヒドロシリル化反応によって架橋しうる官能基と、縮合反応によって架橋しうる反応基の両方を硬化反応性基として含む場合、硬化剤としてヒドロシリル化触媒と縮合触媒を併用することができる。また、成分(A)が硬化反応性基として、ヒドロシリル化反応によって架橋しうる官能基と、紫外線硬化性基であるカチオン重合性基を含む場合、硬化剤として、ヒドロシリル化触媒と光カチオン重合開始剤の組み合わせを用いることができる。このように、成分(A)が有する硬化性基あるいは硬化反応性官能基に応じて、それらが架橋して組成物が硬化するために有効な硬化剤を単独で又は2種以上の硬化剤を組み合わせて用いることができる。
【0103】
上記の点は、成分(B)として、硬化反応性基を有するポリシルセスキオキサンを用いた場合も同様であって、成分(B)が有する硬化反応性基が関与する硬化反応を促進させることができる硬化剤を用いることができる。この場合、成分(B)が有する硬化反応性基の反応が、成分(A)が有する硬化反応性基の反応と同じ種類の反応である場合は、成分(A)の硬化反応性基の反応のための硬化剤(C)がそのまま成分(B)硬化反応性基のための硬化剤(C)として機能しうる。一方、成分(B)の硬化反応性基の反応が、成分(A)の硬化反応性基の反応とは異なる種類の反応であって、成分(A)のための硬化剤(C)が成分(B)の硬化反応性基のための硬化剤(C)として有効でない場合は、成分(A)のための硬化剤に加えて、成分(B)のための硬化剤を用いることができる。
【0104】
〔成分(A)、又は成分(A)及び成分(B)の硬化反応の組み合わせ〕
本発明の硬化性組成物では、大きく分けて、成分(A)のみが硬化反応性基を有する場合と、成分(A)及び成分(B)がともに硬化反応性基を有する場合がある。さらに、各成分が有する硬化反応性基の種類は1種又は2種以上であることができる。さらに、成分(A)又は成分(A)及び(B)が有する硬化反応性基が、1種の反応に関与する硬化性反応基であっても、2種以上の反応に関与しうる異なる官能基の組み合わせであってもよい。したがって、成分(A)が有する硬化反応性基が関与する硬化反応と、成分(B)が有していてもよい硬化反応性基が関与する硬化反応の種類は上述したものの中から1種又は2種以上の硬化反応を任意に組み合わせたものであることができる。具体的には、成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応として、以下の反応の1種又は2種以上を組み合わせることが好ましい。
(i)ヒドロシリル化反応
(ii)加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応
(iii)ラジカル重合反応、及び
(iv)過酸化物架橋反応。
さらに、上記の1種又は2種の硬化反応の組み合わせに、
(v)紫外線硬化反応
に関与する硬化反応性基をさらに組み合わせることができる。
また、成分(A)同士の硬化反応と、成分(A)と成分(B)の間での硬化反応を別の種類の硬化反応として、成分(A)と成分(B)がそれぞれ独立に硬化反応をするように分子設計してもよい。
【0105】
したがって、本発明の硬化性組成物の成分(A)又は成分(A)及び(B)が有する硬化反応性基が関与する硬化反応は、例えば、上記(i)~(iv)のいずれか1種類、(i)と(ii)、(i)と(iii)、(i)と(iv)、(ii)と(iii)、(ii)と(iv)、 及び(iii)と(iv)のそれぞれ2種類の硬化反応の組み合わせが挙げられるが、その他に3又は4種の硬化反応を任意に組み合わせてもよい。さらに、これらのそれぞれの硬化反応又はその組み合わせにさらに紫外線硬化反応(v)を組み合わせることができる。
【0106】
すなわち、本発明の1つの態様による硬化性組成物は、成分(A)として、上述した(i)~(iv)の1種又は2種以上の硬化反応に関与する1種又は2種以上の硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンに加えて、紫外線硬化性官能基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンをさらに含み、ヒドロシリル化反応、加水分解性シリル基及び/又は珪素結合水酸基の縮合反応、ラジカル重合反応、及び/又はオルガノ(ポリ)シロキサンの過酸化物架橋反応に加えて、エネルギー線照射による架橋反応によって硬化させることができるものである。(i)~(iv)の硬化反応のうちの1種以上とエネルギー線照射による架橋反応を組み合わせる態様のなかでは、特に、ヒドロシリル化反応(i)とエネルギー線照射による架橋反応を組み合わせることが好ましい。
【0107】
一般には、成分(B)が硬化反応性基を有する場合には、成分(A)が有する硬化反応性基との間で、硬化反応、例えば架橋反応を起こすことができるように、成分(A)が有する硬化反応性基と成分(B)が有する硬化反応性基が同じ硬化反応に関与するように各硬化反応性基を選択することが好ましい。それによって、成分(A)と成分(B)が化学結合によって結合した形態の硬化物を得ることができる。具体的には硬化反応としてヒドロシリル化反応を用いる場合、成分(A)は珪素原子結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェン(ポリ)シロキサンと、炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを含み、成分(B)として炭素‐炭素二重結合又はSi-H、特に炭素-炭素二重結合を硬化反応性基として有する成分(B)を用いることができ、それは本発明の特に好ましい態様である。また、成分(A)が有する硬化反応性基が加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応に関与する基である場合には、成分(B)として加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応に関与する基を有するかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンを用いることによって、成分(A)と成分(B)を化学結合で結合させることができる。
【0108】
また、本発明の硬化性組成物には、成分(A)が有する硬化反応性基が関与する硬化反応だけでは成分(A)単独で硬化物を形成することはできないが、成分(A)と硬化反応性基を有する成分(B)との全体の硬化反応によって、硬化性組成物が硬化して硬化物を形成する態様も含まれる。すなわち、成分(A)が単独で架橋反応物である硬化物を形成しない場合には、成分(B)と成分(A)との硬化反応により、組成物全体が硬化物を形成することが必要である。
【0109】
本発明の組成物には、成分(A)又は成分(A)及び(B)が関与する硬化反応に応じて、その反応のための硬化剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。すなわち、成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応である場合には硬化剤がヒドロシリル化反応触媒を含むことが好ましい。成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応が加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応である場合には硬化剤が縮合反応触媒を含むことが好ましい。成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がラジカル反応である場合には硬化剤がラジカル開始剤を含むことが好ましい。成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がオルガノ(ポリ)シロキサンの過酸化物架橋反応である場合には硬化剤が有機過酸化物を含むことが好ましい。また、成分(A)が関与する硬化反応、又は成分(B)が硬化反応性基を有する場合には成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応が紫外線硬化反応である場合には硬化剤が光開始剤を含むことが好ましい。上述したように、1つの硬化性組成物において2種以上の硬化反応を組み合わせて用いることができるので、その場合には、硬化剤も硬化反応に応じて必要な硬化剤を2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0110】
本発明の硬化性組成物として特に好ましい成分(A)及び成分(B)の組み合わせは以下のものである。
(i)成分(A)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応であり、成分(A)が上記成分(A1)、好ましくは上記成分(A1-1)及び/又は成分(A1-2)と、成分(A2)、好ましくは上記成分(A2-1)又は成分(A2-1)と(A2-2)の組み合わせを含み、成分(B)は硬化反応性基を有していない。
(ii)成分(A)及び(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応であり、成分(A)が上記成分(A1)、好ましくは上記成分(A1-1)及び/又は成分(A1-2)と、成分(A2)、好ましくは上記成分(A2-1)又は成分(A2-1)と(A2-2)の組み合わせを含み、成分(B)が、ヒドロシリル化反応に関与しうる炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有する。
(iii)成分(A)及び(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応であり、成分(A)が上記成分(A1)、好ましくは上記成分(A1-1)及び/又は成分(A1-2)と、成分(A2)、好ましくは上記成分(A2-1)又は成分(A2-1)と(A2-2)の組み合わせを含み、成分(B)が、珪素原子結合水素原子(Si-H)又はSi-Hを含む硬化反応性基を有する。
(iv)上記(i)~(iii)のいずれかに加えて、成分(A)として、紫外線硬化性官能基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンをさらに含む。
【0111】
上記(ii)及び(iii)の態様による硬化性組成物として、成分(B)が硬化反応性基を有し、成分(A)及び成分(B)が関与する硬化反応がヒドロシリル化反応であり、成分(A)がアルケニル基含有基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン、又はSiH基含有オルガノ(ポリ)シロキサン、もしくはこれらの組み合わせであり、成分(B)がSiH基を有するかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサン、又はアルケニル基を有するかご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンであり、成分(A)と成分(B)が有する硬化反応性基が成分(A)と成分(B)が架橋することができるように選択されていて成分(A)と成分(B)がヒドロシリル化反応によって架橋することができ、硬化剤がヒドロシリル化反応触媒を含む硬化性組成物を挙げることができる。
【0112】
本発明の硬化性組成物は、上述した硬化剤の効果により、常温(特に室温、例えば5~30℃)又は加熱条件下(例えば、30℃より高く200℃以下)で硬化することができる。その場合、硬化反応を促進させるためのエネルギー線を硬化性組成物に外から照射する必要はないが、成分(A)及び/又は成分(B)が紫外線硬化性官能基を有する成分を含む場合には、エネルギー線を照射してもよい。
【0113】
〔成分(A)及び(B)の割合、成分(C)の量、及び組成物の粘度〕
成分(A)及び硬化反応性基を有する成分(B)は、上述したとおり、ヒドロシリル化反応、加水分解性シリル基及び/又は珪素原子結合水酸基の縮合反応、及びオルガノ(ポリ)シロキサンの過酸化物架橋反応から選択される1種の反応又は2種以上の反応の組み合わせによって硬化反応を起こすことができるように選択された硬化反応性基を有し、成分(A)は1種のオルガノ(ポリ)シロキサン又は2種以上のオルガノ(ポリ)シロキサンの組み合わせ、すなわち混合物であってよく、成分(B)も1種であるか、2種以上のシルセスキオキサンの混合物であってよい。さらに上記の硬化システムに加えて、成分(A)又は成分(B)の硬化反応性基として、紫外線硬化性官能基を用いてもよい。本発明の硬化性組成物に含まれる成分(A)の量は、組成物全体の40質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。また、組成物中の成分(A)と成分(B)の比は、質量比で、成分(A):成分(B)が(1~99):(99~1)であり、好ましくは(25~99):(75~1)、さらに好ましくは(50~99):(50~1)である。すなわち、本発明の組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計に占める成分(A)の割合は、1質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。成分(B)の量は、本発明の組成物が所望の特性を示す限り特に限定されないが、一般に、組成物全体の60質量%以下、好ましくは50質量%以下であり、かつ組成物全体の7%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
【0114】
本発明の組成物から得られる硬化物は、硬化反応性基を有する成分のオルガノ(ポリ)シロキサンの構造、鎖長、架橋密度、及び架橋反応部位の選択により、硬化物に所望する硬度、引き裂き強さ、引っ張り強度、切断時伸び等を含む粘弾性、粘着力、硬化反応速度等を付与するように設計可能である。たとえば、分子鎖末端反応性のポリマーを選択すること、分子鎖側鎖反応性のポリマーを選択すること、樹脂状又は分岐鎖状のポリマーを選択すること等により、当該硬化物の用途に応じた物理的性質が得られるように分子設計することが可能であり、そのようないずれの硬化物も、本願発明の範囲に包含される。さらに、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物の形状は特に制限されず、薄膜状のコーティング層であってもよく、シート状等の成型物であってもよい。また本発明の組成物を未硬化の状態で、物品の特定の部位に注入した後に硬化させて充填物を形成させてもよく、本発明の組成物を積層体又は表示装置等のシール材、中間層として使用してもよい。
【0115】
また、本発明の組成物から得られる硬化物は、実質的に透明であり、部材間の接着又は固定に用いることが可能であるので、光学的に透明な接着剤(OCA)又は光学透明樹脂(OCR)として用いることができる。さらに、本発明の組成物からは、硬度の高い樹脂状硬化物だけでなく、柔軟なエラストマー状硬化物又はゲル状硬化物を形成することも可能であるので、その低い比誘電率が求められる光学部材、電子部材、電子材料の保護材、機能性エラストマー、機能性ゲル等に使用してもよい。また、後述する添加剤等の使用により、硬化物にさらなる機能を付与してもよい。
【0116】
本発明の組成物から得られる硬化物は、比誘電率が低いという特徴を備えており、したがって本発明の組成物は、コーティング剤又はポッティング剤、特に、電子デバイス及び電気デバイスのための絶縁性コーティング剤又はポッティング剤として用いるのに適している。
【0117】
本発明の組成物をコーティング剤として用いる場合に、組成物を基材に適用するために適した流動性及び作業性を備えているためには、組成物全体の粘度が25℃において好ましくは1~5000mPa・s、さらに好ましくは5~1000mPa・s、特に好ましくは5~500mPa・sである。組成物全体の粘度を所望の粘度に調整するためには、組成物全体の粘度が所望する粘度になるような粘度を有するオルガノ(ポリ)シロキサンを成分(A)として用いることが好ましい。そのためには、成分(A)のオルガノ(ポリ)シロキサンの分子量を適宜調整して、その粘度を適切に調節することができる。
【0118】
本発明の組成物の粘度を調節するために、希釈剤として有機溶媒を用いることもできる。有機溶媒としては、上記成分(A)及び成分(B)を溶解して均一な溶液を形成できる有機溶媒であればよく、特定の有機溶媒に限定されない。用いることができる有機溶媒としては、特に常圧での沸点が200℃以下の、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、及び炭化水素系溶媒を挙げることができる。特に、沸点が60℃以上、200℃以下のものが好ましい。具体的な有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸2-メトキシエチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-プロピルオキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシエタノール、1,2-ジエトキシエタン、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、フェネトール、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソアミルメチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、n-オクタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、及びこれらから選択される2種以上の混合溶媒を挙げることできる。しかし、本発明の硬化性オルガノ(ポリ)シロキサン組成物は、有機溶媒を全く含まないか、たとえ有機溶媒を含んでいたとしてもその量が組成物全体の10%以下、さらには5%以下、特に1%以下であることが好ましい。本発明の組成物は、有機溶媒を含んでいてもその量が組成物全体の1%以下であるか、あるいは有機溶媒を全く含まないことが特に好ましい。本発明の組成物は、上述したとおり、成分(A)の粘度を調節することによって、組成物全体が有機溶媒を用いなくてもコーティング剤として基材に容易に適用することができる粘度を実現できる。
【0119】
必要な場合には本発明の硬化性組成物の粘度の調整、及び組成物の塗布性を改善する見地から、常圧での沸点が200℃より高い不揮発性又は揮発性の低い低分子化合物を添加してもよく、かつ好ましい。このような低分子化合物は分子量が500以下かつ不揮発性又は低揮発性であり、上記有機溶媒とは異なるものであって、沸点が200℃を超え、低誘電性を維持できるように対称性の分子構造を有することが好ましいが、これに限定されるものではない。また、この低分子化合物は、硬化性官能基を有する化合物であってもよく、例えば、上記成分(A)の硬化反応性基と反応しうる官能基を有する反応性希釈剤であってもよい。不揮発性又は低揮発性低分子化合物の例として、具体的には、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセンなどが挙げられ、テトラデカン、テトラデセンが好ましい。その配合量は、硬化性組成物の粘度の調整に必要な量であり、組成物全体の10%以下、さらには5%以下であってよい。
【0120】
〔添加剤〕
本発明の硬化性組成物には上述した成分に加えて、硬化性組成物又はそれから得られる硬化物の特性を向上させるための添加剤を用いることができる。
【0121】
接着性付与剤
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物から得られる硬化物あるいは硬化途中の硬化性組成物とそれが接触している基材との間の接着性や密着性を向上させるために接着促進剤を添加することが好ましい。この接着促進剤としては、硬化性シリコーン組成物に添加し得る公知のものを用いることができる。本発明の硬化性組成物がヒドロシリル化反応を利用して硬化するものである場合には、ヒドロシリル化反応によって硬化する硬化性シリコーン組成物に添加し得る公知の接着促進剤を用いることが好ましい。
【0122】
このような接着促進剤としては、トリアルコキシシロキシ基(例えば、トリメトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基)もしくはトリアルコキシシリルアルキル基(例えば、トリメトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルエチル基)と、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)を有するオルガノシラン、またはケイ素原子数4~20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシロキシ基もしくはトリアルコキシシリルアルキル基とメタクリロキシアルキル基(例えば、3-メタクリロキシプロピル基)を有するオルガノシラン、またはケイ素原子数4~20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシロキシ基もしくはトリアルコキシシリルアルキル基とエポキシ基結合アルキル基(例えば、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基)を有するオルガノシランまたはケイ素原子数4~20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシリル基(例えば、トリメトキシリル基、トリエトキシシリル基)を2個以上有する有機化合物;アミノアルキルトリアルコキシシランとエポキシ基結合アルキルトリアルコキシシランの反応物、エポキシ基含有エチルポリシリケートが挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,3-ビス[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランと3-アミノプロピルトリエトキシシランの反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの縮合反応物、及びトリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0123】
このような接着促進剤の硬化性組成物中の含有量は特に限定されないが、組成物の硬化特性が望ましい範囲にあり、また硬化物の変色を促進しないことから、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲内、あるいは、0.01~5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0124】
その他の添加剤
本発明の硬化性組成物には、上述した成分の他に所望によりその他の添加剤を添加してもよい。用いることができる添加剤としては、成分(A)及び(B)以外のオルガノポリシロキサン;レベリング剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;重合禁止剤;フィラー(補強性フィラー、絶縁性フィラー、及び熱伝導性フィラー等の機能性フィラー)として、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛などの無機充填材、ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;蛍光体;耐熱剤;染料;顔料;難燃性付与剤;及び溶剤等などが挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、適切な添加剤を本発明の組成物に添加することができる。また、本発明の組成物には必要に応じて、特にポッティング剤又はシール材として用いる場合には、チキソ性付与剤を添加してもよい。
【0125】
〔本発明の組成物の硬化物の誘電率〕
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物は低い誘電率を有することができ、その比誘電率は23℃での測定値として2.8未満、好ましくは2.7未満であることができる。
【0126】
〔用途〕
本発明の組成物は、それから得られる硬化物の比誘電率が低いという特性を利用して、絶縁材料として用いることができる。具体的には、本発明の組成物は、様々な物品、特に電子デバイス及び電気デバイスを構成する絶縁層を形成するための材料として特に有用である。本発明の組成物は、基材上に塗布して、組成物を硬化させて絶縁層を形成することができる。その場合、本発明の組成物を基材に塗布するときにパターン形成を行い、その後組成物を硬化させることによって所望するパターンの絶縁層を形成することもできる。
【0127】
本発明の硬化性組成物は、タッチパネル、及びディスプレイなどの表示装置の絶縁層を形成するための材料、あるいは電子部品及び光学部品のためのポッティング剤又はシール材として用いるのに適している。この場合、絶縁層は、必要に応じて上述したように所望する任意のパターンを形成してもよい。したがって、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる絶縁層を含むタッチパネル及びディスプレイなどの表示装置も本発明の一つの態様である。
【0128】
また、本発明の硬化性組成物を用いて、物品をコーティングした後に硬化させて、絶縁性のコーティング層(絶縁膜)を形成することができる。したがって、本発明の組成物は絶縁性コーティング剤として用いることができる。また、本発明の硬化性組成物を硬化させて形成した硬化物を絶縁性コーティング層として使用することもできる。
【0129】
本発明の硬化性組成物から形成される絶縁膜は様々な用途に用いることができる。特に電子デバイスの構成部材として、あるいは電子デバイスを製造する工程で用いる材料として用いることができる。電子デバイスには、半導体装置、磁気記録ヘッドなどの電子機器が含まれる。例えば、本発明の硬化性組成物は、半導体装置、例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、及びマルチチップモジュール多層配線板の絶縁皮膜、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜、LSIにおけるパッシベーション膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、光学装置用の表面保護膜として用いることができる。
【0130】
また、本発明の紫外線硬化性組成物はコーティング剤として用いるほかに、ポッティング剤又はシール剤、特に、電子デバイス及び電気デバイスのための絶縁性ポッティング剤又はシール剤として用いるのに適している。
【0131】
以下で実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0132】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物、およびその硬化物を実施例により詳細に説明する。なお、以下の式中、Me及びViは、それぞれメチル基及びビニル基を表す。また、実施例、比較例中の物性測定及び評価は次のようにして行った。
【0133】
[オルガノポリシロキサン及び硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度]
回転粘度計(トキメック株式会社製のE型粘度計VISCONIC EMD)を使用して、25℃における粘度(mPa・s)を測定した。
【0134】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の調製]
下記表1に記載した量の各材料をプラスチック製容器に入れ、プラネタリーミキサーを使用して良く混合して、硬化性オルガノポリシロキサン組成物とした。
【0135】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化]
表面がITOで被覆されたガラス基板(50×50mm2;厚さ0.75mm)の一部をポリイミドテープでマスクした。この基板上に、約0.5mLの硬化性オルガノポリシロキサン組成物をたらし、スピンコーター(ミカサ株式会社製;1H-360S)にてコーティングを作製した。その際、硬化後のコーティング層の厚さが10~20μmになるように、スピンコーターの回転速度を調節した。得られたコーティングを70℃で30分間加熱し、オルガノポリシロキサン硬化物薄膜を作製した。
【0136】
[オルガノポリシロキサン硬化物薄膜の比誘電率]
作製した硬化物薄膜上にアルミニウム電極を真空蒸着法で作製した。マスクしたポリイミドテープを剥がした上で、キーサイトテクノロジー製4294Aプレシジョンインピーダンス・アナライザにて室温(23℃)、100KHzにおける静電容量を測定した。測定した静電容量の値と、別途測定した硬化物薄膜の厚さ、電極面積の値を用いて、比誘電率を算出した。
【0137】
〔かご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンの調製:製造例-1〕
内容積500mLの三つ口フラスコにヘキセニルトリメトキシシラン75.1g、テトラヒドロフラン350mLを投入し、均一溶液とし、この溶液に水酸化カリウム0.20g、水10.1gからなる水溶液をゆっくり添加した。攪拌下75℃にて6時間加熱還流した。冷却後、混合物を中和し、揮発成分を減圧下除去することにより、かご状分子構造を有するヘキセニル置換ポリシルセスキオキサンを調製した。単離収率は98%であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で分析した結果、このポリシルセスキオキサンの、ポリスチレン換算におけるMwは、1790であり、Mnは、1720であり、Mw/Mnは1.04であった。また、ケイ素29核磁気共鳴(29Si-NMR)法で分析した結果、このポリシルセスキオキサンの全シロキサン構造単位における部分開裂構造単位の割合は7モル%であった。
【0138】
〔かご状分子構造を有するポリシルセスキオキサンの調製:製造例-2〕
ヘキセニルトリメトキシシラン75.1gの代わりに、ヘキシルトリメトキシシラン58.0g、ヘキセニルトリメトキシシラン19.2gの混合物を用い、水酸化カリウム0.20gの代わりに50質量%の水酸化セシウム水溶液0.89gを用い、さらに、水の量を10.3gにした以外は製造例―1と同様に反応を行い、かご状分子構造を有するヘキシルおよびヘキセニル置換ポリシルセスキオキサンを調製した。単離収率は97%であった。同様にGPC法で分析した結果、このポリシルセスキオキサンの、ポリスチレン換算におけるMwは、1820であり、Mnは、1690であり、Mw/Mnは1.08であった。また、29Si-NMR法で分析した結果、このポリシルセスキオキサンの全シロキサン構造単位における部分開裂構造単位の割合は7モル%であった。
【0139】
[実施例及び比較例]
下記の成分を用いて、表1に示す組成(質量部)の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。(A1)(Me2ViSiO1/2)単位、(Me2SiO2/2)単位、及び(SiO4/2)単位からなり、ビニル基含有量が0.93質量%であり、粘度が200mPa・sであるビニル基含有オルガノポリシロキサン
(A2)(Me3SiO1/2)単位、(Me2SiO2/2)単位、および(MeHSiO2/2)単位からなり、水素含有量が0.77質量%であり、粘度が5mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A3)(Me2ViSiO1/2)単位および(SiO4/2)単位からなり、ビニル基含有量が3.4質量%であるシリコーンレジン70質量%と(Me2ViSiO1/2)単位および(Me2SiO2/2)単位からなり、ビニル基含有量が1.53質量%であり、粘度が60mPa・sであるビニル基末端オルガノポリシロキサン30質量%からなるシリコーンレジンポリシロキサンマスターバッチ
(A4)(Me2ViSiO1/2)単位および(Me2SiO2/2)単位からなり、ビニル基含有量が0.09質量%であり、粘度が39,000mPa・sであるビニル基末端オルガノポリシロキサン68質量%とヒュームドシリカ32質量%からなるシリカポリシロキサンマスターバッチ
(A5)(Me2ViSiO1/2)単位、および(Me2SiO2/2)単位からなり、ビニル基含有量が0.22質量%であり、粘度が2,000mPa・sであるビニル基末端オルガノポリシロキサン
(A6)(Me2HSiO1/2)単位および(SiO4/2)単位からなり、ケイ素結合水素基含有量が0.96質量%であるオルガノポリシロキサン
(A7)(Me2HSiO1/2)単位および(Me2SiO2/2)単位からなり、ケイ素結合水素基含有量が0.125質量%であるオルガノポリシロキサン
(B1)上記製造例-1で調製したヘキセニル置換ポリシルセスキオキサン
(B2)上記製造例-2で調製したヘキシルおよびヘキセニル置換ポリシルセスキオキサン
(C)白金含有量が0.7質量%である、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の両末端ジメチルビニル封鎖ポリジメチルシロキサン溶液。
(D)1-エチニルシクロヘキサン-1-オール。
【0140】
【0141】
実施例の結果から、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、有機溶媒を含まないにも関わらず、その粘度が十分低く、コーティング用途に好適である。また、それから得られる硬化物の比誘電率は極めて低いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の硬化性組成物は、上述した用途、特に、タッチパネル、及びディスプレイなどの表示装置の絶縁層を形成するための材料として特に適している。