(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン硬化物フィルム、その用途、製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240509BHJP
B29C 41/24 20060101ALI20240509BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20240509BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240509BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240509BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240509BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240509BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240509BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240509BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240509BHJP
B29K 83/00 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
C08J5/18 CFH
B29C41/24
B29C41/36
B05D7/24 302Y
B05D1/26 Z
B05D3/00 C
B05D7/00 A
B05D7/24 303A
C08L83/05
C08L83/07
C08K9/06
B29K83:00
(21)【出願番号】P 2020572330
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005725
(87)【国際公開番号】W WO2020166692
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019024428
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘
(72)【発明者】
【氏名】津田 武明
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500382(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211981(WO,A1)
【文献】特開2005-288377(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056965(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/105965(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155131(WO,A1)
【文献】特開2016-113506(JP,A)
【文献】特開2014-116587(JP,A)
【文献】特開2012-115788(JP,A)
【文献】特開2004-122701(JP,A)
【文献】特表2010-532792(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B29C 41/00-41/52
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム表面の算術平均高さ(Sa)が0.50μm未満であり、フィルム中央の平均厚みが1~20μmの範囲にある
オルガノポリシロキサン硬化物フィルムであって、
(A)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物中の炭素-炭素二重結合の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~2.5モルとなる量、および
(C)有効量のヒドロシリル化反応用触媒、
を含有する、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなり、
硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、さらに、
(D1)1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理された、平均BET比表面積が100m
2
/gを超える補強性微粒子またはその複合体
(D2)1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理された、平均BET比表面積が10~100m
2
/gの範囲にある補強性微粒子またはその複合体を含んでなり、かつ、
(D1)成分と(D2)成分の質量比が50:50~99:1の範囲である
オルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
【請求項2】
フィルム中央の平均厚みが1~10μmの範囲である、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
【請求項3】
実質的に、有機溶媒を含まないことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
【請求項4】
前記成分(A)または成分(B)の一部又は全部が高誘電性官能基を有するオルガノポリシロキサンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、請求項
1~3のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
【請求項5】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、無溶剤型または低溶剤型の組成物である、請求項
1~4のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの電子材料または表示装置用部材としての使用。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが、剥離層備えたシート状基材に積層された構造を有する積層体。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを有する、電子部品または表示装置。
【請求項9】
一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を備えることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
【請求項10】
基材が、剥離層を有するフィルム状基材である、請求項
9に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
【請求項11】
基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布した後、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させる工程を備える、請求項
9または請求項
10に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
【請求項12】
少なくとも一対のサポートロール、
当該一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材、
当該基材上に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布するためのスロットダイ、および、
当該スロットダイへの送液手段を備える
スタティックミキサー
を備えることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄く、均一なオルガノポリシロキサン硬化物フィルム、その用途、その製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン骨格を有するオルガノポリシロキサン硬化物は、透明性、電気絶縁性、耐熱性、耐寒性等に優れ、所望によりフルオロアルキル基等の高誘電性官能基を導入することで電気活性を改善することができ、かつフィルム状またはシート状に容易に加工できることから、各種の電気・電子デバイスに用いる接着剤フィルムやアクチュエーター等のトランスデューサーデバイスに用いる電気活性フィルムをはじめ、様々な用途に使用されている。これらのオルガノポリシロキサン硬化物は、その硬化機構により、ヒドロシリル化反応硬化型、縮合反応硬化型、パーオキサイド硬化型などに分類される。室温放置もしくは加熱によって速やかに硬化し、副生成物を発生しないので、ヒドロシリル化反応硬化型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが汎用されている。
【0003】
特に、タッチパネル等の電子材料、表示装置用電子部材、特にセンサー、アクチュエーター等のトランスデューサー材料として、オルガノポリシロキサン硬化物フィルムは高度の均一性に加えて薄膜フィルムとしての成形性が求められる傾向がある。特に、オルガノポリシロキサン硬化物からなり、20μm以下の薄膜フィルムであってその平坦性が優れるものが近年、強く求められている。
【0004】
しかしながら、例えば
図2(参考図)に示すようなスロット塗布方式は、精密フィルム製造に広く使用されているものであるが、工作機械の加工精度の限度の為、バックアップロールの偏芯が2μm程度あり、これに由来して得られるフィルムの膜厚が不均一となる場合がある。当該バックアップロールの偏芯に由来するフィルムの不均一さは、精密級のベアリングを使用しても、ベアリングの不均一精度が加算されるだけで不可避である。ここで、オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの絶縁耐圧性や積層精度の観点から、塗布膜厚の精度は5%以内であることが望ましいが、2μm程度の不均一性が不可避である以上、目的とするフィルムの膜厚が20μmである場合、偏芯およびベアリング精度に由来する膜厚の誤差が2μmの下で、5%以内の膜厚精度を安定的に維持することはその製造上、困難である。
【0005】
一方、塗布液の粘度の低下・湿潤膜厚の増加等の効果により、機械精度の影響を緩和し塗布膜厚精度を向上させる目的で溶剤希釈を用いる製膜方法が知られている。一例として、本件出願人らは、溶剤を含み、粘度およびチクソトロピー性を制御したフィルム形成用硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびそれを硬化させてなるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを提案している(特許文献1)。このような組成物は、薄膜状のオルガノポリシロキサン硬化物を得る上で有用かつ効果的であるが、溶剤希釈により得たフィルム形成用硬化性オルガノポリシロキサン組成物を薄膜フィルムに成型した場合、その希釈に用いる溶剤の選択によっては、残留溶剤、相分離等に由来するフィルムの表面および内部における欠陥が生じる場合があり、精密かつ平坦性に優れ、かつ、目的とするフィルムの膜厚が20μm以下である場合、更なる改善の余地を残している。
【0006】
他方、本件出願人らは、特許文献2において、均一性、フィルムの幅方向への平坦性に優れた高誘電性フィルムの提供、ならびにその用途および製造方法を提案している。しかしながら、当該フィルムは厚みのばらつきやムラを抑制して平坦性に優れたオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを実現する上では有効であるが、50μmの膜厚になると、組成物を安定して塗布することが困難であり、目的とするフィルムの膜厚が20μmである場合には、未だ改善の余地を残している。
【0007】
同様に、特許文献3には、熱可塑性樹脂等のキャリアフィルムからなるウェブをロールを用いて搬送し、当該キャリア上にスロットダイを用いて垂直上から硬化性シリコーンを塗布して薄く、平坦性に優れるシリコーンフィルムが得られることが提案されている。しかしながら、本方法では、目的とするフィルムの膜厚が20μmである場合、前述したバックアップロールの偏芯およびベアリングに由来する機械精度の影響および溶媒使用に伴うフィルムの表面/内部の欠陥の問題を完全に解決するには至らず、未だ改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特願2018-229642(国際特許出願PCT/JP2019/047740号)
【文献】国際公開第2017/183541号
【文献】特表2016-500382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、目標とする膜厚が20μm以下であり、平坦性および均一性に優れるオルガノポリシロキサン硬化物フィルム、その用途および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、本発明者らは、フィルム表面の算術平均高さ(Sa)が0.50μm未満であり、フィルム中央の平均厚みが1~20μmの範囲である、オルガノポリシロキサン硬化物フィルム、および、一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を含むことを特徴とする当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法により上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、
[1]フィルム表面の算術平均高さ(Sa)が0.50μm未満であり、フィルム中央の平均厚みが1~20μmの範囲である、オルガノポリシロキサン硬化物フィルム。なお、フィルムの幅方向について、末端の厚みと中央の厚みの差が5.0%以内であることがより好ましい。
[2]フィルム中央の平均厚みが1~10μmの範囲である、[1]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
[3]実質的に、有機溶媒を含まないことを特徴とする、[1]または[2]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。なお、実質的に有機溶媒を含まないとは、無溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる硬化物フィルムであるか、硬化時に残存する有機溶媒を十分に除去することで、硬化物フィルム全体に対する有機溶剤の含有量が0.1質量%未満であることを意味する。
[4](A)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物中の炭素-炭素二重結合の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~2.5モルとなる量、および
(C)有効量のヒドロシリル化反応用触媒、
を含有する、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる、[1]~[3]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
[5]前記成分(A)または成分(B)の一部又は全部が高誘電性官能基を有するオルガノポリシロキサンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、[4]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
[6]前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、さらに、
(D1)1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理された、平均BET比表面積が100m2/gを超える補強性微粒子またはその複合体
(D2)1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理された、平均BET比表面積が10~100m2/gの範囲にある補強性微粒子またはその複合体を含んでなり、かつ、
(D1)成分と(D2)成分の質量比が50:50~99:1の範囲である、
[4]または[5]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
[7]前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、無溶剤型または低溶剤型の組成物である、[4]~[6]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルム。
【0012】
また、本発明の目的は、以下の発明により達成される。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの電子材料または表示装置用部材としての使用。
[9][1]~[7]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが、剥離層を備えたシート状基材に積層された構造を有する積層体。
[10][1]~[7]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを有する、電子部品または表示装置。
【0013】
さらに、本発明の目的は、上記オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法の発明により達成される。
[11]一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を含むことを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[12]前記基材が、剥離層を有するフィルム状基材である、[11]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[13]前記基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布した後、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させる工程を含む、[11]または[12]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[14]前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物が多成分型組成物であり、スロットダイに送液される前工程として、機械力を用いる攪拌装置によって各成分を混合して硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製する混合工程をさらに含む、[11]~[13]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[15]前記機械力を用いる攪拌装置がスタティックミキサーであり、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製する混合工程と、スロットダイに硬化性オルガノポリシロキサン組成物を送液する工程が連続した工程であることを特徴とする、[14]に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[16]前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物が無溶剤型または低溶剤型の組成物であり、溶媒による希釈工程を含まないことを特徴とする、[11]~[15]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[17]前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、剥離層を有するセパレータの間に挟み混んだ状態で硬化させることを特徴とする、[11]~[16]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法。
[18]少なくとも一対のサポートロール、
前記一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材、
前記基材上に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布するためのスロットダイ、および、
前記スロットダイへの送液手段を備える機械力を用いる攪拌混合装置
を備えることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄膜化が可能であり、かつ、平坦性に優れ、フィルムの表面および内部における欠陥の個数が極めて少なく、印加電圧に対する高い絶縁破壊強度を示すオルガノポリシロキサン硬化物フィルム、その用途および製造方法を提供することができる。特に、一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を備えたオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法により、20μm以下の膜厚でありながら、バックアップロールの偏芯およびベアリングに由来する機械精度の影響および溶媒使用に伴うフィルムの表面/内部の欠陥の問題を実質的に有しない、高精度の薄膜フィルムを提供することができる。
【0015】
当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、取扱作業性および透明性、耐熱性等のシリコーン材料に期待される諸特性に優れ、電子部品等の接着層または誘電層として好適なフィルム乃至シート状部材であり、ゲル、エラストマー、オプティカルボンディング等の機能を有してもよい。さらに好適には、当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、薄膜化および高電圧下における絶縁破壊強度に優れるフィルム乃至シート状部材として、電子材料、タッチパネル等の表示装置用電子部材、アクチュエーター等のトランスデューサー材料としての用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による塗布装置の概略図を示す。
【
図2】比較図として、本発明の製造方法と異なる塗布装置の概略図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による攪拌装置を用いるスロットダイへの送液の概略図を示す。
【
図4-1】実施例1で作製したオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの写真(均質鏡面)を示す。
【
図4-2】比較例1で作製したオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの写真(ストリークあり)を示す。
【
図4-3】実施例2で作製したオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの写真(均質鏡面)を示す。
【
図4-4】実施例3で作製したオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの写真(均質鏡面)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムについて詳細に説明する。
【0018】
[厚み、均一性および平坦性]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、薄膜状であり、フィルムの平均厚みが1~20μmの範囲にあるものであり、平均厚みが1~15μmの範囲にあることが好ましく、平均厚みが1~10μmの範囲にあることがより好ましい。ここで、フィルムの平均厚みは、フィルム中央の厚みの平均値である。好適には、上記のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、均一かつ平坦であり、フィルムの幅方向について、末端の厚みと中央の厚みの差が5.0%以内であり、フィルム中央の厚みの平均値が1~20μmの範囲にあることがより好ましい。フィルムの幅方向とはフィルムの長さ方向と直角方向であり、一般的には、原料となる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を基材上に塗布した方向に対して、平面方向に直角な方向を意味する。なお、フィルムの巻取りが行われる場合には巻き取られる方向が長さ方向であり、フィルムの幅方向は、それに直角の方向である。四辺形または略四辺形のフィルムにおいては、フィルムの幅方向は、長軸方向に直角な方向であり、正方形または略正方形フィルムにあっては、当該正方形フィルム各辺に直角または平行の方向のいずれを幅方向としてもよい。
【0019】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、その表面が平滑かつ平坦であり、表面粗さが極めて小さいことを特徴とする。具体的には、同フィルム表面の表面粗さである算術平均高さ(Sa)の平均値が0.50μm未満であり、Saが0.01μm以上0.50μm未満の範囲、0.05~0.40μmの範囲、0.07~0.35μmの範囲であることが特に好ましい。なお、同フィルム表面の算術平均高さ(Sa)は、レーザー顕微鏡等を用いて測定されるフィルム表面の任意の点について測定される値の平均値であり、各点においてSaが上記の範囲にあることが特に好ましい。また、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを目視で観測した場合、好適には、そのフィルム表面は鏡面状を呈する程度に平滑であることが好ましい。
【0020】
より具体的には、本発明におけるSa測定は、オリンパス社製 波長405nmのレーザー光と対物レンズMPLAPONLEXT 50xを備えたレーザー顕微鏡「LEXT OLS4100」を用いて行った。より具体的には、同レーザー顕微鏡により、測定面であるオルガノポリシロキサン硬化物フィルム上の任意の約1mm×1mmの面領域を測定範囲とし、2領域において測定(n=2)し、その個別の値および平均値をとることで行った。なお、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムにおいては、同フィルム表面の表面粗さである算術平均高さ(Sa)が、n=2の平均値および個別の測定値のいずれについても0.50μm未満であることが好ましく、各Saが上記の範囲内にあることがより好ましい。特に、同フィルム表面の2領域のSaが、共に0.07~0.35μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0021】
また、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、好ましくは、フィルムの幅方向について、末端の厚み(μm)と中央の厚み(μm)の差(絶対値)が5.0%以内であり、4.0%以内であることが好ましく、3.5%以内であることが特に好ましい。なお、当該フィルムは、両端の盛り上がりを含め、実質的に面上に凹凸がない平坦かつ均一な構造であることが好ましく、フィルム幅方向の厚みの最大変位(差)が5.0%以内であることが好ましく、フィルム全体において厚みの最大変位(差)が5.0%以内であって、実質的に凹凸を有しない平坦なフィルムであることが特に好ましい。特に、表面の平滑性に加え、平坦なフィルムであると、単層だけでなく、複数のフィルム層を重ね合わせて均一な厚いフィルム層を形成する際に、フィルム間の凹凸に由来する気泡の巻き込み、変形および欠陥を生じにくいという利点を有する。
【0022】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、一枚あたりの平均厚みが1~20μmの範囲にあるものであるが、複数のフィルムを重ね合わせて20μmを超える積層フィルムを形成し、接着層や誘電層を形成する目的で用いることが可能である。特に、当該フィルムを2層以上積層してなる誘電層を構成する誘電性フィルムは、本発明の範囲に包含される。
【0023】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、上記のとおり、フィルム表面の算術平均高さ(Sa)が0.50μm未満であり、フィルム中央の平均厚みが1~20μmの範囲である、表面が極めて平滑な薄層平坦フィルムである。フィルム表面の算術平均高さ(Sa)が0.50μm未満である場合、目視で観測した場合、そのフィルム表面は鏡面状を呈する程度に平滑であり、公知のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法では、機械精度に由来して実現困難なものであったが、後述する一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を備えることを特徴とする当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法を採用することで、かかるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを容易に得ることができる。さらに、当該製造方法により、溶媒使用に伴うフィルムの表面/内部の欠陥の問題を併せて解消し、薄層平坦かつ高品質なオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを得ることができる。
【0024】
[フィルムの大きさ]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、一定の大きさ(面積)を有することが好ましく、フィルム幅が30mm以上であり、フィルム面積が900mm2以上であることが好ましい。このようなフィルムは、例えば、30mm四方以上のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムである。一方、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、剥離層上であっても原料の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を均一に塗布して硬化させた構造を有してもよいので、長さ方向については、ロール上に巻取りが可能な長さであれば制限なく用いることができる。また、言うまでもなく、当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムは所望の大きさ、形状に切断して用いてもよい。
【0025】
[フィルムの表面/内部の欠陥]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは薄層かつ平坦であるが、好適には、当該フィルムの任意の箇所において同フィルム表面および内部の欠陥を極めて少なくすることができる。特に、本発明の製造方法を採用することにより、実質的に溶剤を使用することなく、20μm以下の厚みを有する平坦なオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを得ることができ、残留溶剤、相分離等に由来するフィルムの表面および内部における欠陥が極めて少ない、高品質かつ高い絶縁破壊強度を有するオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが実現可能である。
【0026】
[フィルムの表面欠陥の個数]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、上記の表面の平滑性に加え、当該フィルムの任意の箇所において同フィルム表面の欠陥のフィルム表面における欠陥が極めて少ないことが好ましい。ここで、フィルム表面の欠陥とは、気泡に由来する空隙(ボイド)や埃、浮遊塵等の付着による同フィルム表面の汚染部位であり、これが多数存在すると、フィルム表面の均一性を損ない、微視的な欠陥を生じるため、特に当該フィルムに高電圧を印加して通電した場合に、当該部位で当該フィルムの絶縁破壊を生じる原因となる。なお、表面欠陥、特に直径数~数十μm程度の微小な空隙は目視確認が困難な場合がある。
【0027】
具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、当該フィルムの任意の箇所において、15mm×15mmを単位面積とする範囲で、光学的手段を用いてその表面欠陥の個数を測定した場合、表面欠陥の個数が0~1個の範囲にあり、0~0.5個の範囲にあることが好ましく、0~0.1個の範囲にあることがより好ましい。表面欠陥の個数が前記の上限を超えると、当該フィルムに高電圧を印加して通電した場合、絶縁破壊が起こりやすくなり、フィルム全体の絶縁破壊強度が著しく低下する。
【0028】
ここで、光学的手段を用いる欠陥個数の測定とは、一定の照度を有する光源から、表面に対して一定の入射角をもって光照射を行い、その反射光をCCDカメラ等の光学的手段で検出し、一定の信号閾値を有するものを表面欠陥としてカウントする手法である。具体的には、当該フィルムから一定の距離(たとえば、50~300mm)の位置に設置した白色LED光源から特定の入射角(たとえば、10~60度)にてフィルム位置での照度が一定となるように照射し、その正反射光(上記の入射角に対応した反射角の反射光)をフィルムからの一定の距離(たとえば、50~400mm)の位置に設置した、走査速度が10m/分時の画素サイズ10μmのCCDカメラにて検出し、検出した信号を走査方向について微分処理を実施し、特定の信号閾値を有する欠陥個数をフィルムロール全体に渡ってカウントし、フィルムの15mm×15mmを単位面積とする範囲当たり欠陥数に換算することができる。たとえば、株式会社フューテック社製MaxEye.Impact(ラインスピード10m/min、分解能0.01mm/scan)を用いて、当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムに対して一定の表面入射角を有する白色LED光源から光照射を行ってその反射光を検出することで、フィルム表面の欠陥数を特定することができる。
【0029】
[フィルムの内部欠陥の個数]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは薄膜状であるため、そのフィルム内部における欠陥の個数も抑制されていることが好ましい。具体的には、当該フィルムの任意の箇所において15mm×15mmを単位面積とする範囲で、光学的手段を用いてその内部欠陥の個数を測定した場合、内部欠陥の個数が0~20個の範囲であり、0~15個の範囲であることが好ましい。内部欠陥の個数が前記の上限を超えると、当該フィルムに高電圧を印加して通電した場合、絶縁破壊が起こりやすくなり、フィルム全体の絶縁破壊強度が著しく低下する。
【0030】
前記のフィルム表面の欠陥同様に、光学的手段を用いる欠陥個数の測定により内部欠陥の個数を特定可能である。この場合、表面欠陥の測定と異なり、一定の照度を有する光源から、フィルム表面下部に対して垂直な光照射を行い、その透過光をCCDカメラ等の光学的手段で検出し、一定の信号閾値を有するものを表面欠陥としてカウントする手法を用いることができる。たとえば、株式会社フューテック社製MaxEye.Impact(ラインスピード10m/min、分解能0.01mm/scan)を用いて、当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの下部から垂直(直上)方向にフィルムを貫通するように白色LED光源から光照射を行ってその透過光を検出することで、フィルム内部の欠陥数を特定することができる。
【0031】
[透明性]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、着色剤や粒子径の大きいフィラー等を配合しない場合には、実質的に透明であり、透明性/視認性の求められる用途における誘電層または接着層として使用することができる。ここで、実質的に透明とは、平均厚み1~20μmのフィルム状の硬化物を形成させた場合、目視で透明であることを意味するものであり、概ね、波長450nmの光の透過率が空気の値を100%とした場合に80%以上である。本発明において、好適なオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは薄膜状かつ高透明であり、平均厚みが1~15μmの範囲にあることが好ましく、平均厚みが1~10μmの範囲にあることがより好ましく、かつ、光透過率が90%以上であるものが特に好ましい。
【0032】
[絶縁破壊強度]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、上記のとおり、その表面および内部に欠陥が極めて少ないため、当該フィルムに高電圧を印加した場合であっても、欠陥であるフィルム内の空隙(ボイド)や塵において過電圧を生じてフィルムの絶縁破壊現象が発生することが抑制され、結果として、高い絶縁破壊強度を実現することができる。なお、本明細書において「絶縁破壊強度」とは、印加された直流又は交流の電圧下における本フィルムの絶縁破壊抵抗性の尺度であり、絶縁破壊前の印加電圧を本フィルムの厚さで割ることで、絶縁破壊強度値又は絶縁破壊電圧値が得られる。すなわち、本発明における絶縁破壊強度は、フィルムの厚さの単位に対する電位差の単位(本発明においては、ボルト/マイクロメーター(V/μm))で測定される。このような絶縁破壊強度は、JIS 2101-82等の標準規格に準拠したプログラムを有する電気絶縁油破壊電圧試験装置(たとえば、総研電気株式会社製 ポルタテスト 100A-2等)により測定可能である。その際、フィルム上の任意の箇所における絶縁破壊強度の測定値のばらつきを避けるため、すくなくとも10点以上のフィルム上の任意の箇所において絶縁破壊強度の測定を行い、その標準偏差値が十分に小さいことが好ましい。
【0033】
具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、室温で測定される絶縁破壊強度が60V/μm~200V/μmの範囲であり、70V/μm~100V/μmの範囲であることがより好ましい。前記のフィルム表面および内部の欠陥の個数が前記上限を超えると、上記の絶縁破壊強度を実現できない場合がある。さらに、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは全体が均一で、微視的な欠陥をほとんど含まないため、絶縁破壊強度の標準偏差値が十分に小さく、0.1~10.0V/μmの範囲であり、0.1~5.0V/μmの範囲であることが好ましい。前記のフィルム表面および内部の欠陥の個数が前記上限を超えると、フィルム表面および内部における欠陥の個数のばらつきも大きくなり、絶縁破壊強度の標準偏差値が、10.0V/μmを超える場合が多くなり、得られるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの信頼性が低下する。
【0034】
[比誘電率]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、任意で、フルオロアルキル基等の高誘電性官能基を導入してもよく、1kHz、25℃におけるフィルム全体の比誘電率を容易に3以上に設計することができる。当該比誘電率は、高誘電性官能基の導入量および高誘電性フィラーの使用等により設計可能であり、比誘電率4以上、5以上、または、6以上のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを比較的容易に得ることができる。
【0035】
[機械的物性]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、薄膜平坦状であり、好適には、微視的な表面および内部の欠陥が少ないことを特徴とするものであり、硬度、引き裂き強度、引っ張り強度等の巨視的な機械的物性は、同様な化学的組成、フィルムの厚さおよび形状で設計されたオルガノポリシロキサン硬化物フィルムに概ね準じる。一例として、オルガノポリシロキサン硬化物は、2.0mm厚のシート状に加熱成形した場合、JIS K 6249に基づいて測定される以下の力学物性を有するように設計可能である。
(1)ヤング率(MPa)は、室温下において、10MPa以下とすることができ、特に好適な範囲は、0.1~2.5MPaである。
(2)引き裂き強さ(N/mm)は、室温下において、1N/mm以上とすることができ、特に好適な範囲は、2N/mm以上である。
(3)引っ張り強さ(MPa)は、室温下において、1MPa以上とすることができ、特に好適な範囲は、2MPa以上である。
(4)破断伸び(%)は、200%以上とすることができ、特に好適な範囲は、200~1000%の範囲である。
【0036】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムをタッチパネル等の電子材料、表示装置用電子部材、特にセンサー等のトランスデューサー材料としての用途に用いる場合には、23℃におけるせん断貯蔵弾性率が103~105Paの範囲にあることが好ましく、1.0×103~5.0×104Paの範囲にあることがより好ましい。
【0037】
その他の機械的物性としては、オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの圧縮残留ひずみ(%)が10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、4%以下であることが特に好ましい。ただし、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムにおいては、圧縮残留ひずみ(%)が3%未満の材料も設計可能である。
【0038】
同様に、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、その圧縮率(%)が15%以上であることが好ましく、18%以上であることがより好ましく、20%以上であることが特に好ましい。
【0039】
[粘着力]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを接着剤または接着層として用いる場合には、オルガノポリシロキサンレジンの使用等により、所望の粘着力を有するように設計してもよい。たとえば、当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムを形成するための硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて厚さ100μmのオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを作成し、その両面にポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ50μm)を貼り合わせた試験片について、23℃、湿度50%の環境で、速度300mm/min、180度の角度で引き剥がした場合、その粘着力が5N/m以上、または10N/m以上に設計することができる。なお、実用上、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを密着させる基材自体に各種処理に基づく粘着力を付与できる場合や接着層として使用しない場合には、実質的に粘着力がなかったり、容易に剥離可能なオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを用いることができることは言うまでもない。
【0040】
[オルガノポリシロキサン硬化物]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を上記の厚みとなるように硬化させてなる。その硬化反応機構は特に限定されるものではないが、例えば、アルケニル基とケイ素原子結合水素原子によるヒドロシリル化反応硬化型;シラノール基および/またはケイ素原子結合アルコキシ基による脱水縮合反応硬化型、脱アルコール縮合反応硬化型;有機過酸化物の使用による過酸化物硬化反応型;およびメルカプト基等に対する高エネルギー線照射によるラジカル反応硬化型等が挙げられ、比較的速やかに全体が硬化し、反応を容易にコントロールできることから、ヒドロシリル化反応硬化型、過酸化物硬化反応型、ラジカル反応硬化型およびこれらの組み合わせであることが望ましい。これらの硬化反応は、加熱、高エネルギー線の照射またはこれらの組み合わせに対して進行する。
【0041】
特に、後述する製造方法を用いることで、フィルムの膜厚が20μm以下であり、5%以内の膜厚精度を有し、好適には、フィルム表面および内部の欠陥が極めて少ないオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが得られることから、本発明において、ヒドロシリル化反応硬化性の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いることが好ましい。
【0042】
好適には、(A)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物中のアルケニル基の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~2.5モルとなる量、および
(C)有効量のヒドロシリル化反応用触媒、
を含有する、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムであり、特に、前記成分(A)が、
(a1)分子鎖末端のみにアルケニル基を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、および、
(a2)分子内に少なくとも1つの分岐シロキサン単位を有し、ビニル(CH2=CH-)基の含有量が1.0~5.0質量%の範囲内にあるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂を含有するオルガノポリシロキサン混合物であることがより好ましい。
【0043】
上記の成分(A)は、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサンであり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;3-アクリロキシプロピル基、4-アクリロキシブチル基等のアクリル含有基;3-メタクリロキシプロピル基、4-メタクリロキシブチル基等のメタクリル含有基から選ばれる硬化反応性基を分子内に含有する、直鎖状、分岐鎖状、環状、または樹脂状(ネットワーク状)のオルガノポリシロキサンが例示される。特に、ビニル基、アリル基またはヘキセニル基から選ばれる炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0044】
成分(A)であるオルガノポリシロキサンは、分子内に炭素-炭素二重結合を有しない一価炭化水素基、水酸基およびアルコキシ基から選ばれる基を含んでもよい。また、一価炭化水素基は、その水素原子の一部がハロゲン原子または水酸基で置換されていてもよい。このような一価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基などのアラルキル基;およびこれらのアリール基またはアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。なお、成分(A)が、水酸基等を含む場合、当該成分は、ヒドロシリル化反応硬化性に加えて、縮合反応性を有する。
【0045】
好適には、成分(A)は、下記の平均組成式:
R1
aR2
bSiO(4-a―b)/2
で表されるオルガノポリシロキサン、またはその混合物であってよい。
式中、R1は、上記の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基であり、
R2は、上記の炭素-炭素二重結合を有しない一価炭化水素基、水酸基およびアルコキシ基から選ばれる基であり、
aおよびbは次の条件:1≦a+b≦3及び0.001≦a/(a+b)≦0.33を満たす数であり、好ましくは、次の条件:1.5≦a+b≦2.5及び0.005≦a/(a+b)≦0.2を満たす数である。これは、a+bが上記範囲の下限以上であると、硬化物の柔軟性が高くなるからであり、一方上記範囲の上限以下であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、a/(a+b)が上記範囲の下限以上であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、一方上記範囲の上限以下であると、硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0046】
本発明にかかる成分(A)は、特に好適には、
(a1)分子鎖末端のみにアルケニル基を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、および、
(a2)分子内に少なくとも1つの分岐シロキサン単位を有し、ビニル(CH2=CH-)基の含有量が1.0~5.0質量%の範囲内にあるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂
を含むオルガノポリシロキサン混合物である。
【0047】
成分(a1)は、その分子鎖末端に
(Alk)R2
2SiO1/2
(式中、Alkは炭素原子数2以上のアルケニル基)で表されるシロキサン単位を有し、その他のシロキサン単位が実質的にR2
2SiO2/2で表されるシロキサン単位のみからなる直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである。なお、R2は前記同様の基を表す。また、成分(a1)のシロキサン重合度は、末端シロキサン単位を含めて、7~1002の範囲であり、102~902の範囲であってよい。このような成分(a1)は特に好適には、分子鎖の両末端が(Alk)R2
2SiO1/2で表されるシロキサン単位で封鎖された、直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0048】
成分(a2)は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂であり、
平均単位式:
(RSiO3/2)o(R2SiO2/2)p(R3SiO1/2)q(SiO4/2)r(XO1/2)s
で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂が例示される。
上式中、Rは、アルケニル基および前記の炭素-炭素二重結合を有しない一価炭化水素基から選ばれる基であり、Xは水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基である。ただし、全てのRのうち、少なくとも、当該オルガノポリシロキサン樹脂中のビニル(CH2=CH-)基の含有量が、1.0~5.0質量%の範囲を満たす範囲においてRはアルケニル基であり、特に、RSiO1/2で表されるシロキサン単位上のRの少なくとも一部はアルケニル基であることが好ましい。
【0049】
上式中、(o+r)は正数であり、pは0又は正数であり、qは0又は正数であり、sは0又は正数であり、かつ、p/(o+r)は0~10の範囲内の数であり、q/(o+r)は0~5の範囲内の数であり、(o+r)/(o+p+q+r)は0.3~0.9の範囲内の数であり、s/(o+p+q+r)は0~0.4の範囲内の数である。
【0050】
成分(a2)として、特に好適には、
{(Alk)R2
2SiO1/2}q1(R2
3SiO1/2)q2(SiO4/2)r
(式中、Alk、R2は前記同様の基であり、q1+q2+rは50~500の範囲の数であり、(q1+q2)/rは0.1~2.0の範囲の数であり、q2は当該オルガノポリシロキサン樹脂中のビニル(CH2=CH-)基の含有量が、1.0~5.0質量%の範囲を満たす範囲の数である)
で表されるアルケニル基含有MQオルガノポリシロキサン樹脂が例示される。
【0051】
これらの分子鎖末端のみにアルケニル基を有する成分(a1)およびオルガノポリシロキサン樹脂であって一定量のアルケニル基を有する成分(a2)を併用することで、組成物全体として硬化性に優れ、かつ、機械的強度および柔軟性に優れる硬化反応物を与え、上記の電子部品等における接着層または誘電層に特に適合したオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを提供することができる。
【0052】
成分(B)は、分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、成分(A)の架橋剤として機能する成分である。
【0053】
このような成分(B)として、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0054】
成分(B)の使用量は、好適には、組成物中の炭素-炭素二重結合1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルの範囲となる量であり、好適には、0.1~5.0モルの範囲となる量であり、特に好適には、0.1~2.5モルの範囲となる量である。成分(B)の使用量が前記下限以下では硬化不良の原因となる場合があり、成分(B)の含有量が前記上限を超えると、硬化物の機械的強度が高くなりすぎ、接着層または誘電層として好適な物性を得られなくなる場合がある。ただし、本発明にかかるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムのガラス等の被着体に対する接着強度の向上等を目的とする場合、成分(A)中の炭素-炭素二重結合1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が20モルを超える範囲で使用することを妨げるものではない。
【0055】
成分(C)は成分(A)および成分(B)のヒドロシリル化反応を促進する触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、イリジウム系触媒、ルテニウム系触媒、および鉄系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が例示され、特に白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。また、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。
【0056】
成分(C)の使用量は、有効量であり、特に制限されるものではないが、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化を促進する量であれば特に限定されない。具体的には、(A)~(C)成分の和(全体を100質量%とする)に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で0.01~1,000ppm、好適には(C)成分中の白金金属原子が、0.1~500ppmの範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、硬化が不十分となる場合があり、上記範囲の上限を超えると、不経済であるほか得られる硬化物の着色等、透明性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0057】
[補強性充填材(D1)、(D2)]
さらに、本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理され、平均BET比表面積が異なる、補強性微粒子またはその複合体を、当該組成物中の、硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和に対して、一定の範囲内で含むことが好ましい。
【0058】
ここで、補強性微粒子は、硬化物の機械的強度の見地から、平均一次粒子径が50nm未満である1種以上の補強性無機微粒子であることが好ましく、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、粉砕シリカ、炭酸カルシウム、珪藻土、微粉砕石英、アルミナ・酸化亜鉛以外の各種金属酸化物粉末、ガラス繊維、炭素繊維等が例示され、これらを後述する1種類以上の有機ケイ素化合物で処理したものが使用される。その形状は、特に限定されるものではなく、粒子状、板状、針状、繊維状等の任意の形状のものを用いることができる。
【0059】
好例としては、機械的強度の向上の観点から、平均一次粒子径が10nm以下であり、部分的に凝集し、そのBET比表面積が、後述するとおり、互いに異なる親水性または疎水性のヒュームドシリカもしくはその金属酸化物複合体が挙げられる。更に、分散性の向上の点から、ヒュームドシリカもしくはその金属酸化物複合体をジシラザンまたは後述するシランカップリング剤で処理したものが好ましい。これら補強性無機粒子は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明において、補強性充填材は、
(D1)1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理された、平均BET比表面積が100m2/gを超える補強性微粒子またはその複合体と
(D2)1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理された、平均BET比表面積が10~100m2/gの範囲にある補強性微粒子またはその複合体を含んでなり、かつ、
(D1)成分と(D2)成分の質量比が50:50~99:1の範囲であり、70:30~97:3の範囲であってよく、70:30~95:5の範囲が好ましい。上記(D1)と(D2)の質量比範囲を外れた場合、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化前粘度が上昇したり、また硬化後の力学強度や絶縁破壊強度が低下する恐れがある。
【0061】
上記の(D1)および(D2)成分である補強性充填材を組成物中に配合することにより、本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなるオルガノポリシロキサン硬化物の力学強度、絶縁破壊強度を増加させることが可能となる。これら充填材の配合量は、(D1)成分と(D2)成分の和として、組成物中の、硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和に対して、10~40質量%の範囲内であり、15~35質量%の範囲であってよく、15~30質量%の範囲が特に好ましい。上記の質量%範囲の上限を超えると、均一かつ薄膜状の塗布が困難となる場合があり、上記の質量%範囲の下限未満では、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化後の物性が不十分となる恐れがある。
【0062】
上記の(D1)および(D2)成分である補強性充填材は、1種類以上の有機ケイ素化合物により表面処理されていることが必要である。有機ケイ素化合物により表面処理は疎水化処理であるが、かかる有機ケイ素化合物により表面処理された充填剤である(D1)成分と(D2)成分を用いると、これらの補強性充填材をオルガノポリシロキサン組成物中に高充填率かつ均一に分散させることができる。また、組成物の粘度の増大が抑制され、成形加工性が向上する。
【0063】
有機ケイ素化合物の例は、シラン、シラザン、シロキサン、又は同様物などの低分子量有機ケイ素化合物、及びポリシロキサン、ポリカルボシロキサン、又は同様物などの有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーである。好ましいシランの例は、いわゆるシランカップリング剤である。このようなシランカップリング剤の代表例としては、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、又は同様物など)、有機官能基含有トリアルコキシシラン(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、又は同様物など)である。好ましいシロキサン及びポリシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジヘキシル-テトラメチルジシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化(single-terminated)ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化ジメチルビニル単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化有機官能基単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル両末端化(doubly terminated)ポリジメチルシロキサン、有機官能基両末端化ポリジメチルシロキサン、又は同様物が挙げられる。シロキサンを使用するとき、シロキサン結合の数nは、好ましくは2~150の範囲である。好ましいシラザンの例は、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジヘキシル-テトラメチルジシラザン、又は同様物である。好ましいポリカルボシロキサンの例は、ポリマー主鎖内にSi-C-C-Si結合を有するポリマーである。
【0064】
本発明における(D1),(D2)成分は、上記の有機ケイ素化合物により表面処理されたものであるが、特に、本発明に関わる(D1)成分と(D2)成分の表面処理に用いる有機ケイ素化合物が、少なくともヘキサメチルジシラザンおよび1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンから選ばれる1種類以上を含有することが最も好ましい。なお、本発明の技術的効果を妨げない範囲で、有機ケイ素化合物以外の表面処理剤を用いる表面処理を併用してもよい。
【0065】
前記表面処理において、充填剤総量に対する表面処理剤の割合は、0.1質量%以上、50質量%以下の範囲が好ましく、0.3質量%以上、40質量%以下の範囲がより好ましい。なお、処理量については、充填剤と表面処理剤の仕込み比であり、処理後に余剰の処理剤を除去することが好ましい。また、必要に応じて処理する際には反応を促進もしくは補助する添加剤等を使用しても問題ない。
【0066】
前記表面処理において、表面処理剤の成分が充填剤表面に化学的もしくは物理的に固定されているかは重要なパラメーターである。たとえば、表面処理剤の固定量は、アルカリ条件下過剰のテトラエトキシシランと充填剤を含めた組成物を反応させ、反応生成物をガスクロマトグラフィーで検出することにより分析できる。
【0067】
上記充填剤表面に固定された表面処理剤の成分量は、充填剤量100質量部に対して、1.0質量部以上、好ましくは3.0質量部以上がよい。中でも本発明に関わる(D1)成分と(D2)成分の表面処理に用いる有機ケイ素化合物が、ヘキサメチルジシラザンおよび1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンを2種使用する場合には、それぞれの充填剤表面上への固定比率を必要に応じて変えることができる。たとえば、本発明においては、上述通り、成分(A)または成分(B)の一部又は全部に、高誘電性官能基は(CpF2p+1)-R- (Rは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、pは1以上8以下の整数である)で表されるフルオロアルキル基を導入することができる。誘電特性、経済性、製造容易性、得られる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の成形加工性の観点からp=1の基、すなわちトリフルオロプロピル基が好ましい基である。その場合、ヘキサメチルジシラザンおよび1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン由来の処理成分の充填剤表面に固定された重量比は0以上10以下であり、好ましくは0以上5以下がよい。この範囲を外れてしまうと、成分(A)または成分(B)と充填剤表面との親和性が悪くなり、加工性や硬化後の物性が低下する恐れがある。
【0068】
[その他の機能性充填材]
本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、上記の(D1)成分および(D2)成分以外の充填材は、所望により用いても、用いなくてもよい。充填剤を用いる場合には無機充填剤及び有機充填剤のいずれか又は両方を用いることができる。用いる充填剤の種類は特に限定されないが、例えば、高誘電性充填剤、導電性充填剤、絶縁性充填剤等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。特に、本発明の組成物には、任意でその透明性、塗工性および取扱作業性を損なわない範囲で、粘度の調整または機能性の付与を目的として、高誘電性充填剤、導電性充填剤、および絶縁性充填剤からなる群から選択される1種以上の充填剤を含有してもよい。
【0069】
充填剤(フィラー)は、1種類または2種類以上であってよく、その形状は、充填剤の粒子径が本発明に係るフィルムの厚さ未満である限り、特に限定されるものではなく、粒子状、板状、針状、繊維状等の任意の形状のものを用いることができる。フィラーの形状が粒子の場合、フィラーの粒子径は特に限定されるものではないが、例えばレーザー光回折法や動的光散乱法で測定した場合、その体積平均粒子径は、例えば、0.001~20μmの範囲とすることができる。また、フィラーの使用目的によって、フィラーの体積平均子粒子径は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、1.0μm以下、或いは、0.001μm以上、0.005μm以上、0.01μm以上とすることができる。フィラーの形状が板状、針状、繊維状等の異方性の場合、フィラーのアスペクト比は1.5以上、5以上、または10以上であることができる。体積平均子粒子径が0.01μm以下で、かつ最大粒子の粒子径が0.02μm以下の微粒子を用いると、実質的に透明性の高い硬化物、とくに接着剤フィルムまたは電気活性フィルムを製造することができる場合がある。
【0070】
その他の機能性充填材として、誘電性無機微粒子、導電性無機微粒子、絶縁性無機微粒子、および熱伝導性無機微粒子が例示される。これらの微粒子から選択される1種以上を本発明の組成物に用いることができる。なお、これらの無機微粒子は、補強性充填材としての機能等、2種類以上の機能を併せ持つ場合がある。
【0071】
好ましい誘電性無機微粒子の例として、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、およびチタン酸バリウムのバリウムおよびチタン部位の一部をカルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、イットリウム、ネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ジルコニウム、または希土類金属で置換した複合金属酸化物からなる群から選択される1種以上の無機微粒子が挙げられ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム、及びチタン酸ストロンチウムがより好ましく、酸化チタン、チタン酸バリウムがさらに好ましい。
【0072】
特に、誘電性無機微粒子は、その少なくとも一部が、室温、1kHzにおける比誘電率が10以上の誘電性無機微粒子であることが特に好ましい。なお、当該無機微粒子の好ましい大きさ(平均一次粒子径)の上限は、20,000nm(20μm)であるが、後述するトランスデューサー用薄膜への加工性を考慮すると、10,000nm(10μm)がより好ましい。当該誘電性無機微粒子の使用により、オルガノポリシロキサン硬化物について、機械特性及び/又は電気的特性、特にその比誘電率をさらに改善できる場合がある。
【0073】
導電性無機微粒子としては、オルガノポリシロキサン硬化物に導電性を付与することができるものであれば特に制限はない。具体的には、導電性カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン(VGCF)等の導電性カーボン;白金、金、銀、銅、ニッケル、錫、亜鉛、鉄、アルミニウム等の金属粉が挙げられ、更に、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫等を被覆した顔料;錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料等が挙げられ、また、これらは、後述する各種表面処理剤で処理したものであってもよい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0074】
さらに、導電性無機微粒子は、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維等の繊維、並びに、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー等の針状の補強材、ガラスビーズ、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト等の無機充填材の表面に金属等の導電性物質を被覆したものでもよい。
【0075】
本発明で使用可能な絶縁性無機微粒子としては、一般に知られる絶縁型無機材料、すなわち、体積抵抗率が1010~1018Ω・cmである無機材料の粒子であれば制限が無く、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状のいずれの形状でも使用することができる。具体的には、セラミックの球状粒子、板状粒子、又はファイバーが挙げられ、アルミナ、酸化鉄、酸化銅、マイカやタルク等の金属シリケート、石英、非晶質シリカ、ガラス等の粒子が好ましい使用例として挙げられる。また、これらを後述する各種表面処理剤で処理したものであってもよい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。絶縁性無機微粒子を組成物中に配合することにより、オルガノポリシロキサン硬化物の力学強度、絶縁破壊強度を増加させることが可能となり、比誘電率の増加も見られる場合がある。
【0076】
これら絶縁性無機粒子の配合量は、その用途に応じ、硬化性オルガノポリシロキサン組成物に対し0.1~20質量%の範囲が好ましく、0.1~5質量%の範囲がより好ましい。配合量が上記の好ましい範囲を外れると、配合による効果が得られない、もしくはオルガノポリシロキサン硬化物の力学強度が低下する場合がある。
【0077】
本発明で使用可能な熱伝導性無機微粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物粒子、および窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等の無機化合物粒子が挙げられ、酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化ケイ素、および窒化ケイ素が好ましい。これら熱伝導性無機微粒子の1種以上を組成物中に配合することにより、オルガノポリシロキサン硬化物の熱伝導率を増加させることが可能となる。
【0078】
これらの無機粒子の平均粒子径の測定は当該分野で通常の測定方法により行うことができる。例えば、平均粒子径が50nm以上、500nm程度以下である場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の顕微鏡観察により粒子径を測定し、平均値を求めることで平均一次粒子径の測定ができる。一方、平均粒子径が500nm程度以上である場合は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置等により平均一次粒子径の値を直接求めることができる。
【0079】
これらの(D1),(D2)成分以外の無機粒子は、表面処理剤により疎水化処理されていてもよい。当該表面処理は、表面処理剤で充填剤を処理(又は被覆処理)することにより行うことができる。疎水化用の表面処理剤としては、有機チタン化合物、有機ケイ素化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物及び有機リン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤が挙げられる。表面処理剤は単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。これらの表面処理剤のうち、有機ケイ素化合物、なかでも、シラザン、シラン類、シロキサン類、ポリシロキサン類が好ましく、シラザン、アルキルトリアルコシキシラン類、片末端トリアルコシキシリルポリジメチルシロキサン類が好ましく使用される。また、その際の処理量等は、(D1),(D2)成分の表面処理で述べた処理方法、処理量等に準じるものである。
【0080】
[溶媒の使用]
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、そのまま硬化反応に供することができるが、一方、該組成物またはその成分の一部(例えば、オルガノポリシロキサンレジン)が固形状である場合や粘ちょう液状である場合には、その混和性および取り扱い性を向上させるため、必要に応じて有機溶媒を使用することもできる。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をフィルム状に塗工する場合、全体粘度が100~50,000mPa・sとなる範囲に、溶媒を用いて粘度調整をしてもよく、溶媒で希釈する場合、上記の(A)~(C)成分の和(100質量部)に対して、0~2000質量部の範囲で用いることができる。すなわち、本発明組成物において、(E)溶媒は、0質量部であってもよく、無溶剤型であることが好ましい。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に、低重合度のポリマーを選択することで、溶媒フリーとする設計が可能であり、硬化して得られるフィルム中にフッ素系溶媒、有機溶媒等が残留せず、環境負荷の問題および電子デバイスへの溶媒の影響を解消できる利点がある。また、(E)溶媒の使用量が、上記の(A)~(C)成分の和(100質量部)に対して、10質量部以下、好適には5質量部以下の低溶剤型の組成物であってもよく、かつ、好ましい。
【0081】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、無溶剤型または低溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなるフィルムであることが特に好ましい。特に、溶剤希釈により得たフィルム形成用硬化性オルガノポリシロキサン組成物を薄膜フィルムに成型した場合、その希釈に用いる溶剤の選択によっては、残留溶剤、相分離等に由来するフィルムの表面および内部における欠陥が生じる場合があるためである。一方、本発明にかかる一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を採用した場合、無溶剤型または低溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて、薄膜状かつ高品質なオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを得ることができる。
【0082】
特に、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、実質的に、有機溶媒を含まないことが好ましく、上記の無溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる硬化物フィルムであるか、低溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて、硬化時に残存する有機溶媒を十分に除去することで、有機溶剤の硬化物フィルム全体に対する含有量が0.1質量%未満であることを意味する。好適には、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、有機溶剤の硬化物フィルム全体に対する含有量が0.01質量%未満であることが好ましく、0.001質量%未満がより好ましく、検出限界以下であることが特に好ましい。
【0083】
任意で使用する有機溶媒としては、組成物中の全構成成分または一部の構成成分を溶解させ得る化合物であれば、その種類は特に限定されず、沸点が80℃以上200℃未満のものが好ましく使用される。
【0084】
好適には、このような有機溶媒は、
(E1)有機系極性溶媒、
(E2)低分子シロキサン系溶媒、および
(E3)ハロゲン系溶媒
から選ばれる1種類以上の有機溶媒またはそれらの混合溶媒であり、沸点が80℃以上200℃未満のものが好ましく使用される。なお、異種または同種の異なる有機溶媒の任意の比率の混合溶媒であってもよい。たとえば、(E1)有機系極性溶媒と(E2)低分子シロキサン系溶媒の混合溶媒であってもよく、(E1)有機系極性溶媒と(E3)ハロゲン系溶媒の混合溶媒であってもよく、(E2)低分子シロキサン系溶媒と(E3)ハロゲン系溶媒の混合溶媒であってもよく、(E1)~(E3)の3種混合溶媒であってもよく、同じ(E2)低分子シロキサン系溶媒である、ヘキサメチルジシロキサンとオクタメチルトリシロキサンの混合溶媒のように、同種の混合溶媒であってもよい。これらの有機溶媒は、硬化反応性オルガノポリシロキサンおよびその変性率に応じて適宜選択することができる。
【0085】
好適には、(E1)有機系極性溶媒が、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、フマル酸ジメチル(DMF)、N-ヘキサアルデヒド、アセトン、ベンズアルデヒド、メチルアセテート、プロピルアセテート、アセトフェノン、酢酸ペンチル、ブチルアルデヒド、エチル酢酸メチル、エチルエーテル、およびテトラヒドロフラン(THF)から選ばれる1種類以上である。
【0086】
同じく、好適には、(E2)低分子シロキサン系溶媒が、ヘキサメチルジシロキサン、テトラヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、2-メチルフェネチルペンタメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、1,3-ジフルオロテトラメチルジシロキサンから選ばれる1種類以上である。
【0087】
同じく、好適には、(E3)ハロゲン系溶媒が、トリフルオロメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルクロロベンゼン、トリフルオロメチルフルオロベンゼン、ハイドロフルオロエーテルから選ばれる1種類以上である。特に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中のフルオロアルキル基含有量が高いほど、上記のハロゲン系溶媒の使用比率を高めることで均一な混和および低粘度化を図れる場合がある。
【0088】
特に好適には、上記の有機溶媒は、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンから選ばれる少なくとも1種の低分子シロキサン系溶媒およびそれらの混合溶媒を含むものであり、これらはOST-10、OST-20およびOST-2の名称で、ダウシリコーンズコーポレーションから市販されている。また、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中のフルオロアルキル基含有量が高い場合には、任意でこれらの低分子シロキサン系溶媒と上記のハロゲン系溶媒を併用することも本発明の好適な形態に包含される。
【0089】
後述する硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤がフルオロアルキル基等に由来するハロゲン原子を実質的に含有しない場合、具体的には、硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤中のハロゲン原子の和が1質量%未満である場合、上記の有機溶媒は、(E1)有機系極性溶媒および(E2)低分子シロキサン系溶媒から選ばれる1種類以上の有機溶媒またはそれらの混合溶媒を含み、(E3)ハロゲン系溶媒を実質的に含まないことが好ましい。特に、硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤が、ジメチルシロキサン単位等のアルキルシロキサン単位を、その全シロキサン単位の50モル%以上、好適には75モル%以上含む場合、上記の有機溶媒は、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンから選ばれる少なくとも1種の低分子シロキサン系溶媒およびそれらの混合溶媒であることが特に好ましい。これは、(E1)有機系極性溶媒および(E2)低分子シロキサン系溶媒から選ばれる1種類以上の有機溶媒またはそれらの混合溶媒が、ハロゲン原子を含まないポリアルキルシロキサンの親和性、相溶性に優れ、均一な組成物を与えるためである。
【0090】
他方、硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤がフルオロアルキル基等に由来するハロゲン原子を含む場合、特に、硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤中のハロゲン原子の和が1質量%以上、好適には3質量%以上、より好適には5質量%以上である場合、有機溶媒として、(E1)有機系極性溶媒および(E3)ハロゲン系溶媒から選ばれる1種類以上の有機溶媒またはそれらの混合溶媒を含むことが特に好ましい。これは、フルオロアルキル基等に由来するハロゲン原子の含有量が高い場合、(E1)有機系極性溶媒および(E3)ハロゲン系溶媒またはそれを含む混合溶媒が硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤との親和性、相溶性に優れ、均一な組成物を与えるためである。一方、フルオロアルキル基等に由来するハロゲン含有量の多い硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化剤について、(D2)低分子シロキサン系溶媒のみを使用した場合、本発明の組成物が十分な塗工性を満たさなくなる場合がある。
【0091】
[全体粘度]
本発明において使用する硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、25℃かつシェアレート10.0(S-1)で測定した全体粘度が、500~500,000mPa・sの範囲であることが好ましく、1,000~300,000mPa・sの範囲が特に好ましい。好ましい粘度範囲に設定する目的で、上記の有機溶媒の使用量を調整することも可能であるが、低溶剤型または溶媒フリー(=無溶剤型)とすることが好ましい。
【0092】
後述する一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を含むオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法を採用する場合、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の全体粘度は、1,000~200,000mPa・sの範囲が好ましく、3,000~175,000mPa・sの範囲がより好ましい。
【0093】
[チキソ比]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、流動性に優れ、チキソトロピックな挙動を示さないことが好ましい。これにより、全体粘度が低く、かつ、均一塗布性に優れる性質が実現可能である。具体的には、当該組成物についてシェアレート0.1(S-1)で測定した組成物全体の粘度とシェアレート10.0(S-1)で測定した組成物全体の粘度の比であるチキソ比が15.0以下であることが好ましく、10.0以下であることが特に好ましい。なお、上記の(E1)~(E3)以外の溶媒を使用したり、ハロゲン含有率の高い硬化性オルガノポリシロキサン組成物について(E2)成分を使用したりすると、組成物全体のチキソ比が前記上限を超えるため、均一な薄層フィルムを形成するための塗布が困難となる場合がある。
【0094】
[固形分量]
本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、上記の粘度範囲および有機溶媒の種類を選択するかぎり、その固形分量は特に制限されるものではないが、実用上十分な厚みを有するオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを実現するため、硬化して不揮発性の固形分であるオルガノポリシロキサン硬化物を形成する成分の含有量(本発明において、単に「固形分」ということがある)が、組成物全体の5~100質量%の範囲であることが好ましく、50~100質量%の範囲、75~100質量%または85~100質量%の範囲であることがより好ましい。
【0095】
[誘電性官能基の導入]
本発明にかかるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムをアクチュエーター等のトランスデューサーに用いる電気活性フィルム(たとえば、誘電性フィルム)として用いる場合、硬化物に高誘電性官能基を導入してもよい。ただし、高誘電性官能基を含まないオルガノポリシロキサン硬化物フィルムであっても、電気活性フィルムとして利用することは可能である。なお、これらの高誘電性官能基の導入および比誘電率の向上については、例えば、本件出願人らの国際公開第2014/105959号等に提案されている。
【0096】
高誘電性官能基の導入は、前記成分(A)または成分(B)の一部又は全部として、高誘電性官能基を有するオルガノポリシロキサンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることや、高誘電性官能基を有する有機添加剤、高誘電性官能基を有する非反応性の有機ケイ素化合物等を前記の硬化性組成物に添加することで行うことができる。硬化性組成物への混和性および硬化物の比誘電率の向上の見地から、前記成分(A)または成分(B)であるオルガノポリシロキサンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、そのケイ素原子上の全ての置換基の10モル%以上、好適には20モル%以上、より好適には、40モル%以上が、高誘電性官能基により置換されていることが好ましい。
【0097】
オルガノポリシロキサン硬化物フィルムに導入される高誘電性官能基の種類は、特に制限されるものではないが、a)3,3,3-トリフルオロプロピル基等に代表されるハロゲン原子及びハロゲン原子含有基、b)シアノプロピル基等に代表される窒素原子含有基、c)カルボニル基等に代表される酸素原子含有基、d)イミダゾール基等の複素環基、e)ボレートエステル基等のホウ素含有基、f)ホスフィン基等のリン含有基、およびg)チオール基等の硫黄含有基が例示され、好適には、フッ素原子を含むハロゲン原子及びハロゲン原子含有基の使用が好ましい。
【0098】
本発明においては、成分(A)または成分(B)の一部又は全部に、高誘電性官能基は(CpF2p+1)-R- (Rは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、pは1以上8以下の整数である)で表されるフルオロアルキル基が導入されていることが好ましい。このようなフルオロアルキル基は、比誘電率に優れた硬化物を与え、かつ、各成分がフッ素原子を有することで各成分の相溶性を改善し、透明性に優れた硬化物を与える。このようなフルオロアルキル基の具体例としては、トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロデシル基である。この中では、誘電特性、経済性、製造容易性、得られる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の成形加工性の観点からp=1の基、すなわちトリフルオロプロピル基が好ましい基である。
【0099】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物には上記の成分の他に、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じてこれら以外の成分を添加配合することができる。他の成分としては、ヒドロシリル化反応抑制剤、離型剤、絶縁性添加剤、接着性向上剤、耐熱性向上剤、充填剤、顔料その他従来公知の各種添加剤が例示される。例えば、全体の粘度調整や、誘電性の向上などの機能性改善を目的として、無機充填剤を配合することもできる。
【0100】
[ヒドロシリル化反応抑制剤]
ヒドロシリル化反応抑制剤は、成分(A)および成分(B)との間で起こる架橋反応を抑制して、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上するために配合するものである。従って、本発明の硬化性組成物にとって、実用上、必然的に配合される成分である。
【0101】
ヒドロシリル化反応抑制剤として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示される。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシクロシロキサン;ベンゾトリアゾールが例示される。
【0102】
ヒドロシリル化反応抑制剤の配合量は、本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上するのに有効な量である。通常、成分(A)100質量部当り0.001~5質量部の範囲内であり、好ましくは0.01~2質量部の範囲内であるが、本成分の種類、白金系触媒の性能と含有量、成分(A)中のアルケニル基量、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子量などに応じて適宜選定するとよい。
【0103】
[その他の任意成分]
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、さらに離型性または絶縁破壊特性の改善のための添加剤、接着性向上剤等を含有することができる。
【0104】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物を薄膜状に硬化して得られるフィルム状またはシート状の硬化物は、接着剤フィルム、トランスデューサーを構成する電気活性フィルム(誘電層または電極層)に好適に利用できるものであるが、薄膜形成時に硬化層の離型性が悪いと、特に高速でオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを製造した場合に、型離れに起因してフィルムが破損する場合がある。また、アクチュエーター、タッチパネル等に用いる誘電層としては、低圧下での感度向上のため、接着性の低減を求められる場合がある。本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、フィルムにダメージを与えることなくフィルムの製造速度を向上させることができ、かつ、その他の離型剤の添加により、さらに粘着性を低減できる場合がある。
【0105】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物に適用可能な離型性向上添加剤(=離型剤)としては、例えば、カルボン酸系離型剤、エステル系離型剤、エーテル系離型剤、ケトン系離型剤、アルコール系離型剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記離型剤としては、ケイ素原子を含まないもの、ケイ素原子を含むもの、又は、これらの混合物を使用することができる。これらの具体例は、例えば、上記の国際公開第2014/105959号において提案されたものと同様である。
【0106】
絶縁破壊特性向上剤は、電気絶縁性向上剤であることが好ましく、アルミニウム又はマグネシウムの水酸化物又は塩、粘土鉱物、及び、これらの混合物、具体的には、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、焼成クレイ、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、及び、これらの混合物からなる群から選択することができる。また、当該絶縁性向上剤は、公知の表面処理方法で処理されていてもよい。これらの具体例は、例えば、上記の国際公開第2014/105959号において提案されたものと同様である。
【0107】
接着性向上剤は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物が硬化途上で接触している基材への接着性向上のためのものである。該組成物の硬化物である誘電層を再剥離しない場合に、有効な添加剤である。接着性向上剤として、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機官能性アルコキシシラン化合物、そのシロキサン誘導体、特にフッ素含有有機基で置換された鎖状または三次元樹脂状のシロキサン誘導体が例示される。特に好適な接着性向上剤として、
(g1) アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物
(g2) 一分子内に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物、
(g3) 一般式:
Ra
nSi(ORb)4-n
(式中、Raは一価のエポキシ基含有有機基であり、Rbは炭素原子数1~6のアルキル基または水素原子である。nは1~3の範囲の数である)
で表されるエポキシ基含有シランまたはその部分加水分解縮合物
(g4) アルコキシシラン(エポキシ基含有有機基を有するものを除く)、またはその部分加水分解縮合物
などから選ばれる1種類または2種類以上が例示される。
【0108】
その他の任意成分として、本発明の技術的効果を損なわない限り、フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、チオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、アンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤;染料、顔料などが例示される。
【0109】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化性オルガノポリシロキサンおよび硬化反応の促進成分、好適には、上記成分(A)~(C)を均一に混合することにより、また、必要に応じてその他任意の成分を添加して、均一に混合することにより調製することができる。各種攪拌機あるいは混練機を用いて、常温で混合すればよいが、混合中に硬化しない成分の組合せであれば、加熱下で混合してもよい。
【0110】
混合中に硬化しなければ、各成分の配合順序は特に制限されるものではない。混合後、直ちに使用しないときは、架橋剤(例えば、成分(B))と硬化反応の促進成分(例えば、成分(C))が同一の容器内に存在しないように複数の容器に分けて保管しておき、使用直前に全容器内の成分を混合してもよい。
【0111】
本発明の、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化反応は、脱水、脱アルコール等の縮合反応に基づく硬化反応においては室温で進行するが、オルガノポリシロキサン硬化物フィルムを工業的生産プロセスで生産する場合、通常、該組成物を加熱あるいは活性エネルギー線にさらすことにより達成される。熱による硬化反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上200℃以下がより好ましく、80℃以上180℃以下がさらに好ましい。また、硬化反応にかける時間は、上記(A)、(B)、(C)成分の構造に依存するが、通常1秒以上3時間以下である。一般的には、90~180℃の範囲内で10秒~30分保持することにより硬化物を得ることができる。なお、フィルムの製造法については後述する。
【0112】
硬化反応に使用され得る活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、及び放射線等が挙げられるが、実用性の点で紫外線が好ましい。紫外線により硬化反応を行なう場合は、使用する紫外線に対して高い活性を有するヒドロシリル化反応用触媒、例えばビス(2,4-ペンタンジオナト)白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、を添加することが望ましい。紫外線発生源としては高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、Xe-Hgランプ、及びディープUVランプ等が好適であり、その際の照射量は、100~8,000mJ/cm2が好ましい。
【0113】
[オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、高平滑、薄膜状かつ平坦性に優れ、好適には、その表面および内部に微小な欠陥を殆ど含まない高精度の機能性フィルムであり、巨視的には実質的に凹凸を有しない平坦な薄膜フィルムである。このようなオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、空気中の浮遊塵等の表面および内部への付着を避けるため、クリーンルームにおいて製造することが好ましい。
【0114】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する基材上に、上述の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をスロットダイを用いて塗布するダイ塗布工程を備えることを特徴とする製造方法により、好適に製造することができる。一例として、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、ヘッド(R2、R=5mm、スリットギャップ250μm、ヒラノテクシード社製)を備えたコーター(型番M200DL、ヒラノテクシード社製)を用いて製造することができる。
【0115】
このとき、サポートロール間のテンション(単位幅あたりの力)は、最大で150kg/250mmであってよく、1~125kg/250mmの範囲が好ましく、5~100kg/250mmの範囲がより好ましく、5~80kg/250mmの範囲が特に好ましい。
【0116】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法は、テンション支持方式により、平行に配置された一対のロール間に支持体となる基材を架け渡して連続走行させ、一対のロール間に且つ支持体となる基材に対向して配置されたスロットダイから、塗布液を基材上に吐出し塗布する。この方式では、一対のロール間に所定の張力を付与して架け渡された支持体にスロットダイの塗布液を吐出するダイ先端を押し付けて支持体を撓ませた状態で、ダイ先端から塗布液が押し出される。ダイ先端から押し出される塗布液の押し出し圧と、ダイ先端が押し付けられて撓むことで支持体に生じた反発力とをバランスさせて、ダイ先端と支持体との間に所定厚の塗布液層を形成することで、薄膜状であっても安定な塗布を実現することができる。
【0117】
この時、支持体となる基材のライン速度(=走行速度)は、特に制限されるものではないが、1m/分以下、あるいは0.1m/分以下に設定可能であり、フィルムの平滑性および硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度等に応じて適宜選択することができる。また、ダイ先端から塗布液を塗布する場合、塗布幅、ライン速度、塗布時間および塗布厚みを乗じることで、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の液状供給量を見積もることが可能である。
【0118】
特に、好適には、本発明にかかるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの製造方法は、実質的に溶剤による希釈を行うことなく、無溶剤型または低溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて、20μm以下の薄膜フィルムを、フィルム表面の算術平均高さ(Sa)が0.50μm未満という極めて高い精度で調製することを可能としたものである。本発明の製造方法は、ウェブ状基材に対して、スロットダイを押し付けて液圧とウェブテンションがバランスをとる事で塗布を行うものであるが、テンションの制御精度・ウェブ走行精度により膜厚精度を制御可能である。ここで、ウェブ状基材の走行精度は一般にモータ回転精度により決定されるものであり、ベクトルインバータモータを使用すれば、その走行精度に基づくブレを1%以下に抑制することが容易に達成可能である。さらに、高精度なテンションフィードバック制御をウェブ状基材に対して行うことで、テンションの変動は一般に2%以下に抑制する事が可能であり、このことから膜厚に関係なく高精度な塗布精度を実現することができる。なお、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の全体粘度の範囲は、前記のとおりである。
【0119】
なお、比較図である
図2のように単一のロールを用いるスロット塗布方式は精密フィルム製造によく使用されるが、工作機械の加工精度の限度の為、バックアップロール偏芯は2μm程度あり、またベアリングは精密級を使用したとしても2μm程度の振れは避ける事が出来ないため、20μmの塗布膜を膜厚偏差5%に維持して製造する事は困難であり、本発明における製造方法として好ましくない。
【0120】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す図は、各部材の構成や配置が理解しやすいように誇張して描かれており、各部材の相対的な大きさや距離は実際の装置と一致していない。
【0121】
図1は、本発明の製造方法を実施するための装置の一実施形態の概略構成を示した断面図である。支持体1の表面に塗布液2として本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物が塗布されて、塗布液による塗布膜3が形成される。支持体1は、可撓性を有する長尺のウェブ状基材(フィルム、シート等)であって、互いに平行に且つ離間して配置された上流側サポートロール41と下流側サポートロール42との間に所定の張力が印加された状態で架け渡されて、矢印30の方向に走行する。
図1は、支持体1の走行方向30と平行な面に沿った断面図である。
【0122】
サポートロール41,42の間に、支持体1に対向してスロットダイ10が配置されている。スロットダイ10は、支持体1に対して、サポートロール41,42が配置された側とは反対側に配置されている。
【0123】
スロットダイ10の構造は特に制限されるものではないが、支持体1の走行方向30の上流側に配置された上流側リップと、下流側に配置された下流側リップとを有し、互いに対向した上流側リップと下流側リップとの間に、相互に連通したスロット及びマニホールドが形成される。スロットダイの内部には、マニホールドに連通する流入口が形成されている。
【0124】
塗布液2である本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、流入口を通過して、スロットダイ内部のマニホールドに圧送される。塗布液2は、マニホールド内に一時的に滞留し支持体1の幅方向(支持体1の長手方向と直交する方向、即ち
図1の紙面に垂直方向)に略均一に分配された後、スロットダイのリップ間のスロットを通過して支持体1に向かって押し出される。
【0125】
ここで、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が多成分型組成物、たとえば、二液を別々に保存しておき、一方が硬化反応性のオルガノポリシロキサンを含む主剤液であり、他方が硬化剤である触媒等を含む触媒液である場合、その硬化時間を削減する手法として、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の遅延剤(ヒドロシリル化反応による硬化系においては、ヒドロシリル化反応抑制剤)を減らすことが考えられるが、送液用のストアタンク、スロットダイ内部で硬化が進行してしまうという弊害を伴う場合がある。
【0126】
そこで
図3のように、主剤液5と触媒液6をスロットダイ10に送液される前工程として、機械力を用いる攪拌装置7によりスロットダイ10の直前で合流させる手法を考案した。主剤液5は送液ライン5L、触媒液6は送液ライン6Lを通じて、攪拌装置7に定速で供給され、一定の比率で均一混合される。本方式により、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の遅延剤の量を変えることなく、硬化速度を2~3倍程度加速することが可能であり、本発明にかかるオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの生産速度向上・品質向上に寄与する事が可能である。ここで攪拌装置7の種類は特に制限されるものではないが、スタティックミキサーの使用が特に好ましい。
【0127】
図1の支持体1上に上記の方法で形成された硬化性オルガノポリシロキサン組成物の塗布膜3を、上述の硬化機構に対応した方法で硬化させることにより、均一かつ平坦な薄膜状のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが支持体1上に形成される。
【0128】
支持体1である基材は、フィルム状基材、テープ状基材、またはシート状基材(以下、「フィルム状基材」という)であり、特に、剥離面を有する平面状の基材であり、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が剥離面上に塗布されることが好ましい。このような基材は、セパレータとして機能するので、基材上に積層された本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、僅かな力で円滑に剥離層から引き離して目的とする電子機器等に付着ないし接着させることができるため、取扱作業性に優れるという利点を有する。
【0129】
基材の種類として、板紙、ダンボール紙、クレーコート紙、ポリオレフィンラミネート紙、特にはポリエチレンラミネート紙、合成樹脂フィルム・シート、天然繊維布、合成繊維布、人工皮革布、金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、PEN等の透明材料が好適である。
【0130】
上記基材はフィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚さは特に制限されないが、通常5~300μm程度である。さらに、支持フィルムと感圧接着層の密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された支持フィルムを用いてもよい。また、フィルム状基材の感圧接着層面と反対面には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止などの処理などの表面処理されたものであってもよい。
【0131】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムが接着剤層(感圧接着剤層を含む)または電気活性フィルム(誘電層等の誘電性フィルム含む)である場合、当該硬化層は、剥離コーティング能を有する剥離層を備えたフィルム基材上に、剥離可能な状態で積層した積層体フィルムとして取り扱うことが好ましい。
【0132】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を基材上に塗布する量は、硬化後のフィルムの平均厚みが1~20μmであることが必要である。なお、任意で、硬化乃至半硬化状態のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムに対して、さらに、圧延加工を行ってもよい。例えば、平均厚みが1~20μmの範囲でロール間の隙間を一定に調整して圧延することで、平坦性に優れ、かつ、上記のフィルム表面およびフィルム内部における欠陥の極めて少ないオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを得ることができる場合がある。
【0133】
また、圧延加工は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を基材上に塗布し、未硬化の状態で行ってもよく、かつ、好ましい。具体的には、原料である硬化性オルガノポリシロキサン組成物を好適には剥離層を備えたシート状基材上に塗布し、ロール圧延等で圧延加工した後に、平滑化および平坦化された硬化性オルガノポリシロキサン組成物を加熱等により硬化させて本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムを得ることができる。
【0134】
このとき、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の平滑/平坦な塗布層を硬化させる条件は特に制限されないが、温風乾燥機等を用いて、90~200℃の範囲、好適には100~150℃の範囲で加熱乾燥させることが好ましい。なお、基材の耐熱性および硬化時間に応じて90℃以下の温度も硬化条件として採用することも可能である。
【0135】
圧延加工前の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の基材への塗工方法、基材等は前記同様であり、前記のプライマー層および平坦化層を有するフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物について、さらにロール圧延等の圧延加工を行ってもよい。
【0136】
[剥離層を有するセパレータ間での硬化を用いた製法]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、上記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の塗布面に対して剥離層を有する基材を適用し、未硬化の塗布面を各々の基材(セパレータ)で挟み込み、物理的に均一化された平坦化層を形成することで、好適に得てもよい。なお、上記の平坦化層の形成にあたっては、剥離層を有するセパレータ間に未硬化の硬化性オルガノポリシロキサン組成物が塗布されてなる積層体を、前記のロール圧延等の公知の圧延方法を用いて圧延加工してもよい。
【0137】
[オルガノポリシロキサン硬化物フィルムの使用]
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、薄膜状かつ平坦性に優れ、かつ、好適には、そのフィルム表面およびフィルム内部に微細な欠陥(気泡に由来する空隙(ボイド)、埃または浮遊塵による汚染部位)が極めて少ないので、当該フィルムに高電圧を印加して通電した場合に当該欠陥における絶縁破壊が発生しにくく、フィルム全体として高い絶縁破壊強度を実現でき、かつ、透明性および平坦性に加えて、所望により接着性/粘着性を実現できる。このため、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、電子材料、表示装置用部材またはトランスデューサー用部材(センサー、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター用を含む)として有用であり、特に接着剤/粘着剤フィルム、電気活性フィルム(高誘電性フィルムを含む)として、電子部品または表示装置の部材として好適に使用可能である。特に、透明な接着剤フィルムまたは電気活性フィルムは、表示パネルまたはディスプレイ用の部材として好適であり、画面を指先等で接触することにより機器、特に電子機器を操作可能な所謂タッチパネル用途に特に有用である。同様に、絶縁破壊強度の高い電気活性フィルムは、単層または積層フィルムの形態としてアクチュエーター等のトランスデューサー用部材に好適であり、高電圧下で起動するアクチュエーター用途に特に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの用途としては、上記に開示した他に何ら制約はなく、テレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車などの計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機、など、文字や記号、画像を表示するための種々のフラットパネルディスプレイ(FPD)に使用することができる。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)などの表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。同様に、本発明のオルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、絶縁破壊強度を含む電気的特性および機械的特性に優れたフィルム状またはシート状部材であり、必要に応じて高い比誘電率および機械的強度(具体的には、引っ張り強度、引き裂き強度、伸び率等)を有する。このため、当該オルガノポリシロキサン硬化物フィルムは、電子材料、表示装置用部材またはトランスデューサー用部材(センサー、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター用を含む)として使用でき、特に、トランスデューサーを構成する電気活性フィルム(誘電層または電極層)として好適に利用できる。その具体的な使用方法は、誘電層または感圧接着層の公知の使用方法を特に制限なく用いることができる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。以下に示す実施例および比較例では下記の化合物を用いた。
【0140】
・成分(a1):両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖、ジメチルシロキサンポリマー(ビニル基含有量:0.24質量%、シロキサン重合度:300)
・成分(a2):両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖、3,3,3-トリフルオロプロピルメチル、ジメチルシロキサンコポリマー(ビニル基含有量:0.26質量%、シロキサン重合度:193)
・成分(b1):両末端トリメチルシロキシ基封鎖、ジメチルシロキシ-メチルヒドロシロキシ-シロキサンコポリマー(ケイ素原子結合水素含有量:0.71質量%)
・成分(b2):両末端ジメチルヒドロシロキシ基封鎖、ジメチルシロキサンポリマー(ケイ素原子結合水含有量:0.02質量%)
・成分(b3):両末端トリメチルシロキシ基封鎖、ジメチルシロキサン・3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(ケイ素原子結合水素の含有量:約0.23質量%)
・成分(b4):両末端ジメチルヒドロシロキシ基封鎖、ジメチルシロキサン・3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー(ケイ素原子結合水素の含有量:約0.014質量%)
・成分(c1):白金-1,3-ジビニル1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンポリマー溶液(白金濃度で約0.6質量%)
・成分(d1):ヘキサメチルジシラザンで処理したヒュームドシリカ(処理前の製品名:アエロジル200、BET比表面積200m2/g)
・成分(d2):ヘキサメチルジシラザンで処理したヒュームドシリカ(処理前の製品名:アエロジル50、BET比表面積50m2/g)
・成分(d3):ヘキサメチルジシラザンと1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンで処理したヒュームドシリカ(処理前の製品名:アエロジル200、BET比表面積200m2/g)
・成分(d4):ヘキサメチルジシラザンと1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンで処理したヒュームドシリカ(処理前の製品名:アエロジル50、BET比表面積50m2/g)
・成分(e1):1-エチニル-1-シクロヘキサノール
・成分(e2):1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニル-シクロテトラシロキサン
【0141】
[硬化前の粘度]
各組成物の硬化前粘度は、粘弾性測定装置(アントンパール社製、型番MCR102)を使用して測定した。直径20mm、2°のコーンプレートを用い、シェアレートを変えて測定を行った。25℃、シェアレート0.1(S-1)および10.0(S-1)で測定した組成物の全体粘度を各々記録した。
【0142】
[表面粗さの評価]
塗工し硬化後のフィルム表面の算術平均高さ(Sa、μm)を測定するために、405 nm波長のレーザー源を備えたOLS4100(オリンパス社製)を用いた。対物レンズ(MPLAPONLEXT 50x)を使用し、各フィルム上任意の約1mm×1mmの面領域を測定範囲とし、2領域において測定した。表1に実施例および比較例の結果を示す。
【0143】
[実施例1]
液状の熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物(SYLGARDTM 184 HS A/Bの混合物、ダウケミカル社製)を用いた。硬化前粘度はシェアレートによらず3.5Pa・sであった。
【0144】
基材(FL1-01、38μm厚、250mm幅、タカラインコーポ社製)上に、SYLGARD
TM 184 HS A/Bの混合物を、ヘッド(R2、R=5mm、スリットギャップ250μm、ヒラノテクシード社製)を備えたコーター(M200DL、ヒラノテクシード社製)を用いて幅200mmで塗布した。その際、ドライヤー出口におけるテンションを0.04kg/mm、ライン速度を1m/min、120℃温風乾燥で硬化した。インラインにて、硬化後の上面に基材(SP-PET、25μm厚、300mm幅、三井化学東セロ社製)を貼り合わせ、最小8μm厚のオルガノポリシロキサン硬化フィルムを作製した。得られたオルガノポリシロキサン硬化フィルム表面は鏡面状態であり、均質性がよいことが確認できた。
図4-1に表面部の写真を示す。
【0145】
[比較例1]
ヘッドをコンマ(商品名、ヒラノテクシード社製)に変更し、基材とのギャップを最小5μmにした以外実施例1と同様にオルガノポリシロキサン硬化フィルムを作製した。得られたオルガノポリシロキサン硬化フィルムの表面は鏡面ではなく、筋(=ストリーク)が確認でき、10μm厚にはコートできなかった。
図4-2に表面部の写真を示す。
【0146】
[実施例2]
液状の硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、上記の成分(a1)を70.58質量%、成分(d1)を22.10質量%、成分(d2)を4.35質量%、成分(b1)を0.99質量%、成分(b2)を3.83質量%、成分(c1)を0.10質量%、成分(e1)を0.04質量%となるように配合し調製した。その際、組成物中のビニル基1モル当たり、成分(b)のケイ素原子結合水素原子(Si-H)が約1.2モルとなる量で用いた。硬化前粘度は0.1(S-1)にて218Pa・sおよび10.0(S-1)にて26Pa・sであった。
【0147】
基材剥離PET(F-1042-50U、50μm厚、125mm幅、RUNDE社製)上に、実施例2の組成物を、ヘッド(R2、ヒラノテクシード社製)を備えたコーター(M200DL、ヒラノテクシード社製)を用いて幅115mmで塗布した。その際、ドライヤー出口におけるテンションを0.12kg/mm、ライン速度を1m/min、125℃温風乾燥で硬化した。インラインにて、硬化後の上面に剥離PET(F-1042-50U、50μm厚、125mm幅、RUNDE社製)を貼り合わせ、10ミクロン厚のオルガノポリシロキサン硬化フィルムを作製した。得られたオルガノポリシロキサン硬化フィルム表面は鏡面状態であり、均質性がよいことが確認できた。
図4-3に表面部の写真を示す。
【0148】
[実施例3]
液状の硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、上記の成分(a2)を68.36質量%、成分(b3)を5.06質量%、成分(b4)を5.06質量%、成分(c1)を0.10質量%、成分(d2)を18.88質量%、成分(d3)を2.34質量%、成分(f)を0.28質量%となるように配合し調製する。その際、組成物中のビニル基1モル当たり、成分(b)のケイ素原子結合水素原子(Si-H)が約1.2モルとなる量で用いた。硬化前粘度は0.1(S-1)にて148Pa・sおよび10.0(S-1)にて16Pa・s(16000mPa・s)であった。
【0149】
実施例3の組成物を用いた以外は実施例2と同様に行うことで、10μm厚の均一なオルガノポリシロキサン硬化フィルムを作製できた。
図4-4に表面部の写真を示す。
【0150】
【0151】
実施例1~3において、ウェブテンションダイ方式を用いることで、膜厚20μm以下、かつ、その表面の算術平均高さ(Sa)が0.5μm以下の均一なオルガノポリシロキサン硬化フィルムを得た。これらは鏡面状の表面を備え、極めて平滑かつ平坦性に優れ、かつその表面欠陥も認められないため、荷電圧に対する高い絶縁破壊強度が期待できる。一方、常法を用いて塗布した比較例1においては、均一なオルガノポリシロキサン硬化フィルムを得ることができなかった。
【符号の説明】
【0152】
1 支持体
2 塗布液
3 塗布膜
30 支持体の走行方向
4 サポートロール(単一)
41 上流側サポートロール
42 下流側サポートロール
5 主剤液
5L 主剤液の送液ライン
6 触媒液
6L 触媒液の送液ライン
7 攪拌装置
10 スロットダイ