(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】高活性複合金属シアン化物化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/10 20060101AFI20240509BHJP
B01J 23/00 20060101ALI20240509BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20240509BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G65/10
B01J23/00 Z
B01J31/02 Z
C08G65/28
(21)【出願番号】P 2020570491
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2019064762
(87)【国際公開番号】W WO2019243067
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-03
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-エリク・ダムケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・クライン
(72)【発明者】
【氏名】マリオン・マルクヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】エステバン・メヒア
(72)【発明者】
【氏名】ウド・クラグル
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008002091(DE,A1)
【文献】特表2016-509577(JP,A)
【文献】特表2001-524945(JP,A)
【文献】特公昭51-016611(JP,B1)
【文献】特開2022-057634(JP,A)
【文献】米国特許第06348565(US,B1)
【文献】特表2006-505673(JP,A)
【文献】特開平06-041293(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0117600(KR,A)
【文献】特表2004-530667(JP,A)
【文献】特開平7-278275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
〔式中、
[DMCC]は、複合金属シアン化物(DMC)化合物、少なくとも1つの有機錯化剤および金属塩を含む複合金属シアン化物錯体を示し;
Suppは疎水性担持材料を示し;および
bは、[DMCC]およびSuppの総重量に基づく、前記担持材料の平均重量比率を表し、それは1重量%≦b≦99重量%の範囲であって、
前記疎水性担持材料は、明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって決定される、少なくとも30体積%のメタノール湿潤性値を特徴とする疎水性材料から選択され
、
前記疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物、疎水性に変性された炭酸カルシウムおよびクレイからなる群から選択される〕
を有する担持触媒。
【請求項2】
前記複合金
属シアン化物錯体[DMCC
]は、一般式(II-A):
【化2】
または
一般式(II):
【化3】
〔式中、
M
1は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり;
M
2は、Fe、Co、Mn、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
M
3は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
Xはアニオンであり;
Lは有機錯化剤であり;
L
1およびL
2は互いに異なり、それぞれ第1および第2の有機錯化剤を表し;
d、e、fおよびgはそれぞれ>0である整数であるが、錯体M
1
d[M
2(CN)
e]
f
*xM
3(X)
gが電気的に中性になるような値を有し;
0.1≦x≦5;
0.1≦y≦1;
0.0001≦ω≦6;
0.0001≦z≦1;および
0.0001≦a≦5である〕
のいずれかによって表される、請求項1に記載の担持触媒。
【請求項3】
前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、式(II-A)で表され、さらに以下の条件:
i)M
1はM
3と同一である;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)Lは、脂肪族C
1-C
24アルコール、モノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサン、フラン、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される;
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項2に記載の担持触媒。
【請求項4】
前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、式(II)で表され、さらに以下の条件:
i)M
1はM
3と同一である;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)L
1およびL
2は、脂肪族C
1-C
24アルコール、モノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサン、フラン、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から独立して選択される;
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項2に記載の担持触媒。
【請求項5】
i)M
1はM
3と同一で、Znであり;M
2はCoである;および
ii)Xはハライドである、
請求項2~4のいずれかに記載の担持触媒。
【請求項6】
前記疎水性担持材料(Supp)は、明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって測定される、30~80体積%のメタノール湿潤性値によって特徴付けられる、請求項1~5のいずれかに記載の担持触媒。
【請求項7】
前記疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性されたシリカ、または疎水性に変性された炭酸カルシウムから選択される、請求項1~
6のいずれかに記載の担持触媒。
【請求項8】
前記疎水性担持材料(Supp)は、疎水性ヒュームドシリカ、および疎水性に変性された炭酸カルシウムからなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の担持触媒。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の式(I)の担持触媒を製造するための方法であって、前記方法は
i)水性媒体中で
a)少なくとも1つの錯化剤;
b)疎水性担持体(Supp);
c)一般式(IIa):
【化4】
[式中、M
1はZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、Xはアニオンであり、dおよびgは>0である整数であって、塩M
1
dX
gが電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの塩;および
d)一般式(IIb):
【化5】
[式中、M
3はアルカリ金属イオンであり、M
2はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、h、eおよびfは>0である整数であって、錯体M
3
h[M
2(CN)
e]
fが電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの錯体;
を混合する工程;
ii)得られた触媒を水溶液で洗浄する工程;
iii)洗浄した触媒を乾燥させる工程;
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれかに記載の式(I)の担持触媒を製造するための方法であって、前記方法は
i)水性媒体中で
a)少なくとも1つの錯化剤;
c)一般式(IIa):
【化6】
[式中、M
1はZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、Xはアニオンであり、dおよびgは>0である整数であって、塩M
1
dX
gが電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの塩;および
d)一般式(IIb):
【化7】
[式中、M
3はアルカリ金属イオンであり、M
2はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、h、eおよびfは>0である整数であって、錯体M
3
h[M
2(CN)
e]
fが電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの錯体
を混合する工程;
ii)得られた触媒を水溶液で洗浄する工程;
iii)洗浄した触媒を乾燥させる工程;
[ここで、b)疎水性担持体(Supp)は、洗浄工程ii)の前もしくは最中に、または乾燥工程iii)の後に添加される]
を含む、方法。
【請求項11】
少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合、または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合における、請求項1~
8のいずれかに記載の担持触媒、または請求項
9もしくは
10に記載の方法に従って得られる担持触媒の使用。
【請求項12】
官能化ポリマーまたはコポリマーを製造するための方法であって、前記方法は
a)開始剤を提供する工程であって、前記開始剤は、エポキシド化合物によるアルコキシル化が可能な活性水素含有化合物を含むか、またはそれからなる、工程;
b)請求項1~
8のいずれかに記載の担持触媒、または請求項
9もしくは
10に記載の方法に従って得られる担持触媒を提供する工程;および
前記開始剤および前記担持触媒の存在下で、少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合、または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合を実施する工程
を含む、方法。
【請求項13】
活性水素反応性化合物に基づくコーティング、シーラントまたは接着剤組成物のための反応性成分としての、請求項
12に記載の方法によって得られる官能化ポリマーまたはコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの合成における触媒としての有用性を有する複合金属シアン化物(DMC)化合物に関する。より具体的には、本発明は、疎水性担持材料上に提供される複合金属シアン化物(DMC)化合物に関し、この担持化合物は、エポキシドモノマーの開環重合のための触媒として有効である。
【背景技術】
【0002】
一般にヘキサシアノコバルト酸亜鉛(Zn3[Co(CN)6]2)を含む複合金属シアン化物(DMC)化合物は、とりわけ、ポリエーテルを製造するためのエポキシドの開環重合のための触媒として当技術分野で知られている。塩基性触媒を使用して得られるポリマーと比較して、DMC触媒は、狭い分子量分布、大きい平均モル質量、およびポリマー鎖の末端での二重結合の数が非常に少ないことを特徴とするポリエーテルを提供する。さらに、DMC触媒を使用して、前記エポキシドをCO2、および他の適切なコモノマー、例えばオキセタン、環状カーボネート、環状無水物およびラクトンなどと重合させてもよい。
【0003】
当技術分野で知られているように、所与の複合金属シアン化物(DMC)錯体の活性は、その固体構造における欠陥の存在に依存している。錯化剤の非存在下で調製された複合金属シアン化物化合物は、結晶性が高く、エポキシド重合に対して不活性である傾向がある。逆に、適切な錯化剤(通常はエーテルまたは脂肪族アルコール)の存在下で調製されたDMC錯体は、結晶性の高いDMC化合物と、よりアモルファスな成分の混合物として特徴付けられ、このような錯体はエポキシドの重合に活発な触媒作用を及ぼすことができる。
【0004】
もちろん、DMC触媒、それらの用途、およびそれらに関連する活性を扱った特許文献においていくつかの報告がある。例えば、以下を参照できる:米国特許第3,278,457号(Milgrom et al.);米国特許第3,278,458号(Robert);米国特許第3,278,459号(Johnston);米国特許第3,427,256号(Milgrom);米国特許第3,427,334号(Belner);米国特許第3,427,335号(Herold);および米国特許第5,470,813号(Le-Khac)。
【0005】
上記の文書に加えて、多くの引用文献が、DMC触媒の残留物を、前記触媒で製造されたポリエーテルポリオールなどのポリマーから効果的に除去する必要性に焦点を合わせてきた。この点に関しては、以下に言及されている:米国特許第4,355,188号;米国特許第4,721,818号;米国特許第4,877,906号;米国特許第4,987,271号;および米国特許第5,010,047号。これらの引用文献に記載されているプロセスは、触媒残留物の除去に効果的であるが、一般に、追加の試薬の使用と比較的複雑な操作が必要である。
【0006】
米国特許第4,843,054号(Harper)は、プロピレンオキシドの重合に適した濾過可能なDMC触媒の調製を提案している。このために、塩化亜鉛とヘキサシアノコバルト酸カリウムの反応を、水-ジグリム混合物中で、アルミナ;シリカゲル;ケイ酸アルミニウム;ケイ酸マグネシウム;珪藻土;パーライト;カーボンブラック;およびカーボンからなる群から選択される不活性濾過補助剤の存在下で実施する。
【0007】
国際公開第2001090219号(Dow Global Technologies Inc.)には、アルキレンオキシド重合触媒としての有用性を有し、重合生成物から容易に分離してリサイクルし得る、担持複合金属シアン化物錯体の調製が記載されている。前記活性触媒は、シラン官能性錯化剤を含むことを特徴とする。
【0008】
国際公開第1999044739号(BASF AG)は、アルキレンオキシドの触媒による開環重合を介して、末端不飽和度が低いポリエーテルアルコールを調製するための複合金属シアン化物触媒に関する。複合金属シアン化物(DMC)は、酸化アルミニウムを含む固体の不活性な非発泡担持体に適用されるか、組み込まれるか、または成形されることを特徴とする。
【0009】
中国特許第101003622号(Zhang, X. et al.)にも、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛とSiO2またはTiO2との共沈によって調製された濾過可能なDMC触媒について記載されており、オルトシリケートまたはチタネートエステルは、それぞれ、前記担持酸化物材料の前駆体として使用される。
【0010】
濾過性とは別に、DMC触媒の合成における固体担持体の利用のさらなる利点は、その凝集を制限することによって、分散した触媒活性粒子の安定化によるそれらの長期的な性能の向上である。さらに、担持体は、DMC触媒相の量の削減を可能にし、それにより、混合物中の高価な遷移金属の量を削減できる。
【0011】
Muller et al.(Green. Chem. 2012, 14, 1168)は共沈により、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛とSiO2の一連のハイブリッドゾル-ゲルDMC触媒を調製した。著者らは、触媒の活性と選択性が合成混合物のpHに強く依存することを示した。同じグループはその後に、ナノ粒子のTiO2に担持されたDMC触媒を報告し、この触媒では、その担持体が触媒のルイス酸性度およびそれに付随する活性を高めた(Eur. J. Inorg. Chemistry, 2016, 1944)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第3,278,457号
【文献】米国特許第3,278,458号
【文献】米国特許第3,278,459号
【文献】米国特許第3,427,256号
【文献】米国特許第3,427,334号
【文献】米国特許第3,427,335号
【文献】米国特許第5,470,813号
【文献】米国特許第4,355,188号
【文献】米国特許第4,721,818号
【文献】米国特許第4,877,906号
【文献】米国特許第4,987,271号
【文献】米国特許第5,010,047号
【文献】米国特許第4,843,054号
【文献】国際公開第2001/090219号
【文献】国際公開第1999/044739号
【文献】中国特許第101003622号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Green. Chem. 2012, 14, 1168
【文献】Eur. J. Inorg. Chemistry, 2016, 1944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の先行技術を認める一方で、エポキシドの重合を効率的に触媒でき、それによりエポキシド系ポリマーを製造するための制御可能で費用効果の高い方法を可能にする、DMC触媒の継続的な必要性が考えられる。したがって、本発明の目的は、エポキシドおよび場合により他のモノマーのホモおよび/またはコポリマーの製造において、速い反応速度(k’)で効果的な反応制御を可能にする担持触媒系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、一般式(I):
【化1】
〔式中、
[DMCC]は、複合金属シアン化物(DMC)化合物、少なくとも1つの有機錯化剤および金属塩を含む複合金属シアン化物錯体を示し;
Suppは疎水性担持材料を示し;および
bは、[DMCC]およびSuppの総重量に基づく、前記担持材料の平均重量比率を表し、好ましくは1重量%≦b≦99重量%の範囲、より好ましくは10重量%≦b≦70重量%の範囲であって、
前記疎水性担持材料は、明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって決定される、少なくとも30体積%のメタノール湿潤性値を特徴とする疎水性材料;炭素質無機固体材料;または炭素と等電子的である無機固体材料からなる群から選択される〕
を有する担持触媒が提供される。
【0016】
好ましくは、前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、一般式(II-A):
【化2】
または一般式(II):
【化3】
[式中、
M
1は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり;
M
2は、Fe、Co、Mn、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
M
3は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
Xはアニオンであり;
Lは有機錯化剤であり;
L
1とL
2は互いに異なり、それぞれ第1および第2の有機錯化剤を表し;
d、e、fおよびgはそれぞれ>0の整数であるが、錯体M
1
d[M
2(CN)
e]
f
*xM
3(X)
gが電気的に中性になるような値であり;
0.1≦x≦5;
0.1≦y≦1;
0.0001≦ω≦6;
0.0001≦z≦1;および
0.0001≦a≦5である]
のいずれかで表される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、上記の式(I)および添付の特許請求の範囲で定義される担持触媒を製造するための方法が提供され、前記方法は、少なくとも1つの有機錯化剤;前記疎水性担持体(Supp);および少なくとも1つの複合金属シアン化物化合物を混合することを含む。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、本明細書の上記および添付の特許請求の範囲で定義される担持触媒の、i)少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合;または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合における使用が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、官能化ポリマーまたはコポリマーを製造するための方法が提供され、前記方法は、
a)開始剤を提供する工程であって、前記開始剤は、エポキシド化合物によるアルコキシル化が可能な活性水素含有化合物を含むか、またはそれからなる、工程
b)本明細書の上記および添付の特許請求の範囲で定義される担持触媒を提供する工程;および
前記開始剤および前記担持触媒の存在下で、少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合、または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合を実施する工程を含む。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、活性水素反応性化合物に基づくコーティング、シーラントまたは接着剤組成物のための反応性成分として、本明細書の上記および添付の特許請求の範囲で定義される方法によって得られる官能化ポリマーまたはコポリマーの使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数形の指示対象を含む。
【0022】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含まれる(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」、「含む(containing)」または「含む(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、特定されていない構成、要素またはメソッド工程を除外しない。
【0023】
量、濃度、寸法および他のパラメータが範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値および限界値の形式で表される場合、得られた範囲が文脈において明確に言及されているかどうかに関係なく、任意の上限または好ましい値を任意の下限または好ましい値と組み合わせることによって得られる任意の範囲も具体的に開示されると理解されるべきである。
【0024】
「好ましい(preferred)」および「好ましい(preferably)」という用語は、本明細書では、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を指すために頻繁に使用される。しかしながら、1つまたは複数の好ましい(preferable)または好ましい(preferred)実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0025】
本明細書で使用される場合、室温は23℃プラスマイナス2℃である。
【0026】
本明細書に記載されている分子量は、特に明記されていない限り、数平均分子量(Mn)を指す。すべての分子量データは、特に明記されていない限り、40℃でDIN 55672-1:2007-08に従ってポリスチレン標準に対して校正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって得られた値を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「多分散度指数(polydispersity index)」は、所与のポリマーサンプル中の分子量の分布の尺度を指す。多分散度指数は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ることによって計算される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「当量(eq.)」という用語は、化学表記では通常通り、反応中に存在する反応性基の相対数に関連し、「ミリ当量」(meq)という用語は、化学当量の1000分の1(10-3)である。
【0029】
本明細書で使用される「当量(equivalent weight)」という用語は、関連する官能基の数で割った分子量を指す。したがって、「エポキシ当量」(EEW)とは、1当量のエポキシを含む樹脂の、グラム単位の重量を意味する。
【0030】
特に明記しない限り、本明細書に記載されているヒドロキシル(OH)値は、Deutsche(DGF)Einheitsmethoden zur Untersuchung von Fetten, Fettprodukten, Tensiden und verwandten Stoffen(Gesamtinhaltsverzeichnis 2016)C-V 17b(53)に従って決定される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ハライド(halide)」という用語は、フルオライド(fluoride)、クロライド(chloride)、ブロミド(bromide)またはヨージド(iodide)アニオンを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「C1-C8アルキル」基は、1~8個の炭素原子を含む一価基を指し、それはアルカンの基であり、直鎖および分岐有機基を含む。アルキル基の例には、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および2-エチルヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。本発明において、そのようなアルキル基は、非置換であってよいか、またはハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシなどの1つまたは複数の置換基で置換されてよい。上記の例示的な炭化水素基のハロゲン化誘導体は、特に、適切な置換アルキル基の例として言及され得る。しかしながら、一般に、1~6個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C1-C6アルキル)、例えば、1~4個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C1-C4アルキル)が好ましいことに留意すべきである。
【0033】
本明細書で使用される場合、「C2-C12アルケニル」基は、2~12個の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族炭素基を指す。前述のアルキル基と同様に、アルケニル基は、直鎖または分枝状であり得、場合により置換されてよい。「アルケニル」という用語は、当業者によって理解されるように、「シス」および「トランス」配置、または「E」および「Z」配置を有する基も包含する。しかしながら、一般に、2~10(C2-10)または2~8(C2-8)個の炭素原子を含む非置換のアルケニル基が好ましいことに留意すべきである。C2-C12アルケニル基の例には、2-ブテニル;4-メチルブテニル;1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-ヘプテニル、1-オクテニルおよびn-ドデセニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
「C3-C10シクロアルキル」という用語は、3~10個の炭素原子を有する飽和、単環式、二環式または三環式炭化水素基を意味すると理解される。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;およびノルボルナンが含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分の一部として(「アラルキル基」中のように)使用される「C6-C18アリール」基は、単環式環系が芳香族であるか、または二環式あるいは三環式環系の環の少なくとも1つは芳香族である、任意に置換された単環式、二環式および三環式環系を指す。二環式および三環式環系には、ベンゾ縮合した2~3員の炭素環式環が含まれる。例示的なアリール基には、フェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;およびアントラセニルが含まれる。フェニル基が好ましいことが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」基は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。アラルキル基の例はベンジルである。
【0037】
「重合条件」という用語は、モノマーを結合させて(combine)ポリマーにするために必要な反応条件を意味し、本発明の文脈において、開環したアルキレンオキシドが互いに結合してポリエーテルポリマーを形成するために必要な条件を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「開環重合」という用語は、環状化合物(モノマー)が開いて直鎖ポリマーを形成する重合を意味する。本文脈での参照は、とりわけ以下であり得る:i) Duda, A. et al. Thermodynamics and Kinetics of Ring-Opening Polymerization in Handbook of Ring-Opening Polymerization, Wiley-VCH, Weinheim, Germany, (2009) page 8;ii) Choijnowski, J. et al. Kinetically controlled ring-opening polymerization, J. Inorg. Organomet. Polym. (1991) 1, pages 299-323;およびiii) Nuyken et al. Ring-Opening Polymerization-An Introductory Review Polymers 2013, 5, 361-403。
【0039】
本明細書で使用される場合、「触媒量」という用語は、反応物に対して触媒の準化学量論量を意味する
【0040】
「複合金属シアン化物(DMC)化合物」という用語は、シアン化物アニオンと2つの異なる金属カチオンとを含む無機化合物としての標準的な意味に従って使用される。完全を期すために、2つの金属カチオンは、金属自体またはそれらの酸化数のいずれかに基づいて互いに異なる。
【0041】
複合金属シアン化物触媒錯体およびそのような錯体を調製し得る方法は、当技術分野で知られている。読者の注意は、例えば以下に向けられ得る:米国特許出願公開第2008/0167502号(BASF);米国特許出願公開第2003/0158449号(Bayer);米国特許第2003/0069389号(Shell);米国特許出願公開第2004/0220430号(Repsol Quimica);米国特許出願公開第2005/0065383号(Dow);国際公開第2012/136657号(Henkel AG&Co. KGgA);欧州特許出願公開第0894108号(Arco);米国特許第5,767,323号(Yiannakis et al.)および米国特許第5,536,883号(Arco)。式(I)の複合金属シアン化物(DMC)触媒錯体に関して、特に、国際公開第2012/136658号(Henkel AG&Co. KGgA)の開示、および特にその2頁、最終段落から6頁、第1段落への節は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
複合金属シアン化物触媒錯体がアルコール(A)を含むこれらの実施形態において、そのアルコール用語は、そのプロトン化および脱プロトン化(アルコラート)形態の両方を包含することを意図している。
【0043】
前記複合金属シアン化物触媒錯体に関して、「カルボキシレート」という用語は、-COO-部分を指す。適切なカルボキシレートアニオンは、脂肪族または芳香族であり得、典型的には1~24個、好ましくは2~18個、より好ましくは2~12個の炭素原子を含み得る。脂肪族カルボキシレートアニオンの例には、ホルメート;アセテート;プロピオネート;ブチレート;2-エチルヘキサノエート;n-オクトエート;およびデカノエートが含まれるが、これらに限定されない。芳香族カルボキシレートの例には、ベンゾエート;アルキル置換ベンゾエート;ハロ置換ベンゾエート;4-シアノベンゾエート;4-トリフルオロメチルベンゾエート;サリチレート;3,5-ジ-t-ブチルサリチレート;およびサブサリチレート(subsalicylate)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
前記複合金属シアン化物触媒錯体に関して本明細書でさらに使用されるように、「有機錯化剤」[式(II)および(II-A)において(L、L1、L2)として示される]は、電子供与体として機能する官能基を有しており、それゆえに金属中心原子または中心イオンの配位部位を占めることができる有機化合物であると理解される。本明細書において、有機錯化剤として適切な化合物は、好ましくは、水に対して特定の溶解性も示す。
【0045】
本発明の適切な有機錯化剤(該当する場合はL、L1およびL2として示される)は、モノメリック、オリゴメリック、またはポリメリック化合物であってよく、広く以下を含んでよい:アルコール、特に脂肪族C1~C24アルコールならびにポリアルキレングリコールホモポリマーおよびコポリマー;アルデヒド;ケトン;エーテル、例えばモノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサンおよびフラン;エステル;アミド;ウレア誘導体;ニトリル;スルフィド;および上記の化合物の2つ以上の混合物。
【0046】
例示的な実施形態において、式(II)および(II-A)の各有機錯化剤(L、L1、L2)は、脂肪族C1~C24アルコール、例えばエタノール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール;モノグリム;ジグリム;1,4-ジオキサン;フラン;ポリアルキレングリコールホモポリマーおよびコポリマー;ポリカーボネート;ポリアルキレングリコールソルビタンエステル;ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル;ポリアクリルアミド;ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸);ポリアクリル酸;ポリ(アクリルアミド-co-マレイン酸);ポリアクリロニトリル;ポリアルキルアクリレート;ポリアルキルメタクリレート;ポリビニルメチルエーテル;ポリビニルエチルエーテル;ポリビニルアセテート;ポリビニルアルコール;ポリ-N-ビニルピロリドン;ポリ(N-ビニルピロリドン-co-アクリル酸);ポリビニルメチルケトン;ポリ(4-ビニルフェノール);ポリ(アクリル酸-co-スチレン);オキサゾリンポリマー;ポリアルキレンイミン;マレイン酸および無水マレイン酸共重合体;ヒドロキシエチルセルロース;ポリアセテート;イオン性の表面および界面活性化合物;多価アルコールのカルボン酸エステルおよびグリコシドからなる群から独立して選択してよい。
【0047】
「ポリアルキレングリコール」という用語は、アルキレン基が望ましくは2~7個の炭素原子を含むポリアルキレングリコール基を指す。したがって、いくつかの実施形態において、ポリアルキレングリコールポリマーは、以下の一般式H-O-(RO)x-H[Rは、直鎖または分岐C2~C7アルキルであり、xは2~1000の範囲の正の整数である]のポリマーを含むことができる。重要なことに、ポリアルキレングリコールポリマーは、ホモポリマー、またはホモポリマーの混合物もしくは組み合わせの形態であるか、またはブロックもしくはランダムコポリマーなどのコポリマー、またはそのようなコポリマーの組み合わせの混合物を含むことができるか、またはホモポリマーとコポリマーの混合物もしくは組み合わせを含むことができる。
【0048】
前記複合金属シアン化物触媒錯体に関連して使用される「イオン性表面または界面活性化合物」という用語は、とりわけ以下を参照することによって証明され得るように、当技術分野で確立されている:Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版(1994) Vol. A25、pp.747-817;Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版(1997) Vol. 23、pp.477-541、John Wiley&Sons、New York;Tensid-Taschenbuch、第2版(1982)、H. Stache(ed)、Carl Hanser Verlag、Munich;およびSurfactant Science Series、Vol. 1-74(1967-1998) M. J. Schick(Ed.)、Marcel Decker、New York。そのようなイオン性表面または界面活性化合物の例は、界面活性剤、石鹸、乳化剤、洗剤および分散剤の群に見出され得る。
【0049】
本発明による複合金属シアン化物触媒錯体は、結晶性、部分的に結晶性、またはアモルファスであってよく、結晶化度は、従来粉末X線回折法によって分析される。さらに、複合金属シアン化物触媒錯体の組成は、従来、ガスクロマトグラフィー;元素分析;熱重量分析;または、その部分(L、L1、L2)を抽出的に除去した後の重量分析によって、分析され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「シリカ」は、任意のタイプのシリカ、ケイ酸またはケイ酸誘導体を指すことを意図している。この用語は、特に沈降シリカ、結晶性シリカ、コロイダルシリカ、シリカキセロゲル、シリカエアロゲルおよびヒュームドシリカを含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「炭素質材料」という用語は、その起源または製造方法に関係なく、任意のタイプの石炭または炭素同素体を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「等電子材料」という用語は、原子、分子、ラジカル、イオンなどの2つ以上の化学種から構成され、同じ数の価電子および同じ構造を有する一方で、それらを構成する原子が異なる原料を指す。
【0053】
本明細書で言及される場合、「メタノール湿潤性値」は、担持材料の100パーセントを湿潤させるために必要なメタノールの濃度(メタノール/水混合物中のメタノールの体積%)、すなわち100パーセント湿潤した状態(懸濁したものが0パーセント、沈殿したものが100パーセント[0 percent suspended and 100 percent in the sediment])を生み出すのに必要なメタノールの量を指す。表面が非加水分解性有機分子で変性されたヒュームド酸化物などの疎水性担持材料は、水で湿潤させることはできない。しかし、これらの材料は、メタノール/水の混合物を使用して湿潤させることができる。このような混合物中のメタノールの含有量(体積%)は、疎水性の程度の尺度である。メタノール湿潤性値は、本明細書に記載のメタノール湿潤性試験に従って測定される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」という用語は、ASTM D1993-91に従うBrunauer、EmmettおよびTeller(BET)法を指す。本発明の担持材料に適用可能な場合、ここでのBET表面積は、Micromeritics TriStar 3000(登録商標)機器で行われた窒素収着等温線測定からの5つの相対圧力点をフィッティングすることによって決定した。FlowPrep-060(登録商標)stationは、分析用のサンプルを準備するために、熱と連続ガスフローを提供した。窒素収着の前に、担持材料(無機酸化物)サンプルを、窒素気流(P5グレード)中で160℃の温度に最低1時間加熱することによって乾燥させた。
【0055】
本明細書で使用される「ルイス酸」という用語は、第2の分子またはイオンからの2つの電子と共有結合を形成することによって、別の分子またはイオンと結合できる任意の分子またはイオン(しばしば求電子剤と呼ばれる)を意味し、したがって、ルイス酸は電子受容体である。本発明の重合プロセスで使用するための好ましいルイス酸は、「非プロトン性」であるとして特徴付けられ、それらは、プロトン(H+)の供給源として機能できないルイス酸である。本発明の目的のために特に好ましいルイス酸には、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ホウ素、鉄、チタン、スズ、クロム、マグネシウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウムおよび亜鉛からなる群から選択される元素のハライドが含まれる。
【0056】
本発明の単独重合および共重合プロセスにおいて、(非プロトン性)ルイス酸の量は、所与の温度で時間単位当たりに反応するエポキシドの重量によって測定される、複合金属シアン化物錯体触媒の活性が、ルイス酸の非存在下での同じ条件下での触媒活性と比較して20%を超えて減少しないように調整すべきである。この点に関して、ルイス酸:[DMCC]重量比が約0.1~1.0の範囲で使用することがしばしば有利となる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「エポキシド」という用語は、少なくとも1つの環状エーテル基の存在を特徴とする化合物を意味し、すなわちエーテル酸素原子が2つの隣接する炭素原子に結合し、それによって環状構造を形成するものである。この用語は、モノエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物(2つ以上のエポキシド基を有する)、およびエポキシド末端プレポリマーを包含することを意図している。「モノエポキシド化合物」という用語は、1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ポリエポキシド化合物」という用語は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ジエポキシド化合物」という用語は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。
【0058】
エポキシドは非置換であってもよいが、不活性に置換されていてもよい。例示的な不活性置換基には、塩素、臭素、フッ素およびフェニルが含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル基を含む任意の化合物を指す。したがって、この用語は、ジオール、トリオール、および4つ以上の-OH基を含む化合物を包含する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、少なくとも2つの-N=C=O官能基、例えば2~5または2~4の-N=C=O官能基を含む化合物を意味する。適切なポリイソシアネートには、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式イソシアネート、それらの二量体および三量体、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0061】
脂肪族および脂環式ポリイソシアネートは、直鎖で連結された、または環化された6~100個の炭素原子を含むことができ、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する。適切な脂肪族イソシアネートの例には、直鎖イソシアネート、例えばエチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)-カーボネートおよびビス(イソシアナトエチル)エーテルなどが含まれるが、これらに限定されない。例示的な脂環式ポリイソシアネートには、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、1-メチル-2,4-ジイソシアナト-シクロヘキサン、m-またはp-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI、p-TMXDI)およびダイマー脂肪酸ジイソシアネートが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、本明細書では、イソシアネート基が単核または多核芳香族炭化水素基の環に直接結合している有機イソシアネートを説明するために使用される。次に、単核または多核芳香族炭化水素基は、共役二重結合の本質的に平面の環状炭化水素部分を意味し、これは、単一の環であってよく、または複数の縮合(condensed)(融合(fused))または共有結合した環を含んでよい。芳香族という用語には、アルキルアリールも含まれる。通常、炭化水素(主)鎖には、1サイクルに5、6、7または8個の主鎖原子が含まれる。そのような平面環状炭化水素部分の例には、シクロペンタジエニル、フェニル、ナフタレニル-、[10]アヌレニル-(1,3,5,7,9-シクロデカペンタエニル-)、[12]アヌレニル-、[8]アヌレニル-、フェナレン(ペリナフテン)、1,9-ジヒドロピレン、クリセン(1,2-ベンゾフェナントレン)が含まれるがこれらに限定されない。アルキルアリール部分の例は、ベンジル、フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-ナフチルプロピル、2-ナフチルプロピル、3-ナフチルプロピルおよび3-ナフチルブチルである。
【0063】
例示的な芳香族ポリイソシアネートには、以下が含まれるがこれらに限定されない:異性体的に純粋な形態の、またはいくつかの異性体の混合物としてのトルエンジイソシアネート(TDI)のすべての異性体;ナフタレン1,5-ジイソシアネート;ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI);ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートと2,4’異性体の混合物またはそれらの高官能性オリゴマーとの混合物(いわゆる粗MDI);キシリレンジイソシアネート(XDI);ジフェニル-ジメチルメタン4,4’-ジイソシアネート;ジ-およびテトラアルキル-ジフェニルメタンジイソシアネート;ジベンジル4,4’-ジイソシアネート;フェニレン1,3-ジイソシアネート;およびフェニレン1,4-ジイソシアネート。
【0064】
「ポリイソシアネート」という用語は、前述の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式イソシアネートとポリオールとの部分反応によって形成され、イソシアネート官能性オリゴマーを与えるプレポリマーを包含することを意図し、これらのオリゴマーは単独でまたは遊離イソシアネートと組み合わせて使用してよいことに留意すべきである。
【0065】
「無水」という用語は、本明細書において、適用可能な反応混合物または成分が、混合物または成分の重量に基づいて、0.25重量%未満の水を含む意味であることを意図している。「本質的に溶媒を含まない」という用語は、関連する組成物が0.25重量%未満の溶媒を含むことを意味するものとして同様に解釈されるべきである。
【0066】
発明の詳細な説明
本発明の担持触媒は、式(I):
【化4】
〔式中、
[DMCC]は、複合金属シアン化物(DMC)化合物、少なくとも1つの有機錯化剤および金属塩を含む複合金属シアン化物錯体を示し;
Suppは疎水性担持材料を示し;および
bは、[DMCC]およびSuppの総重量に基づく、前記担持材料の平均重量比率を表し、好ましくは1重量%≦b≦99重量%の範囲、より好ましくは10重量%≦b≦70重量%の範囲であって
前記疎水性担持材料は、明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって決定される、少なくとも30体積%のメタノール湿潤性値を特徴とする疎水性材料;炭素質無機固体材料;または炭素と等電子的である無機固体材料からなる群から選択される〕
に従って最も広く定義され得る。
【0067】
疎水性担持材料の平均重量比率は、[DMCC]およびSuppの総重量に基づいて、好ましくは1重量%≦b≦99重量%の範囲、より好ましくは10重量%≦b≦70重量%の範囲である。特に好ましい実施形態において、担持材料の平均比率は、[DMCC]およびSuppの総重量に基づいて、20重量%≦b≦70重量%の範囲、より好ましくは30重量%≦b≦70重量%の範囲である。
【0068】
疎水性の担持材料を使用することにより、より高い触媒活性を達成できる。
【0069】
予備的な実施形態において、前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、一般式(II-A):
【化5】
〔式中、
M
1は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり;
M
2は、Fe、Co、Mn、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
M
3は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
Xはアニオンであり;
Lは有機錯化剤であり;
d、e、fおよびgはそれぞれ>0である整数であるが、錯体M
1
d[M
2(CN)
e]
f
*xM
3(X)
gが電気的に中性になるような値を有し;
0.1≦x≦5;
0.1≦y≦1;および
0.0001≦ω≦6;である〕
によって表される。
【0070】
さらなる実施形態において、前述の複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、一般式(II):
【化6】
〔式中、
M
1は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり;
M
2は、Fe、Co、Mn、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
M
3は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
Xはアニオンであり;
L
1およびL
2は互いに異なり、それぞれ第1および第2の有機錯化剤を表し;
d、e、fおよびgはそれぞれ>0である整数であるが、錯体M
1
d[M
2(CN)
e]
f
*xM
3(X)
gが電気的に中性になるような値を有し;
0.1≦x≦5;
0.1≦y≦1;
0.0001≦ω≦6;
0.0001≦z≦1;および
0.0001≦a≦5である〕
によって表される。
【0071】
完全を期すために、前記第1(L1)および第2(L2)の有機錯化剤は互いに異なる。
【0072】
一般式(II)および(II-A)において、x、y、ω、zおよびaは、(単一の)錯体M1
d[M2(CN)e]fに基づいて、特定の成分の平均モル比率を表すものとして理解される。一方、整数d、e、fおよびgは化学量論的な意味を有し、これは錯体M1
d[M2(CN)e]f
*M3(X)gに限定され、この錯体内の完全な電荷バランスを表す。
【0073】
一般式(II)および(II-A)中のXは、好ましくは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、ハイドロゲンサルフェート、カーボネート、ハイドロゲンカーボネート、シアニド、チオシアニド、イソシアネート、シアネート、カルボキシレート、ニトレート(nitrate)、ニトライト(nitrite)、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである。
【0074】
前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]が式(II-A)で表され、さらに以下の条件のうちの少なくとも1つを満たす実施形態について、良好な結果が得られた:
i)M1はM3と等しい;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)Lは、脂肪族C1-C24アルコール、モノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサン、フラン、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0075】
同様に、式(II)の前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]が以下の条件のうちの少なくとも1つを満たすその実施形態について、良好な結果が得られた:
i)M1はM3と等しい;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)L1およびL2は、脂肪族C1-C24アルコール、モノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサン、フラン、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から独立して選択される。
【0076】
完全を期すために、式(II)および(II-A)に適用されるこれらの条件i)~iii)は、相互に排他的ではなく、本発明で使用するための複合金属シアン化物触媒はこれらの条件の任意の順列を満たしてよい。特に、複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、前述の条件i)~iii)のうちの2つ、または望ましくは3つを満たしてよい。
【0077】
これらの実施形態のアルコール(L、L1、L2)は、飽和または不飽和アルコールのいずれかであってよく、後者の「不飽和アルコール」という用語は:1つまたは複数の二重結合;1つまたは複数の三重結合;または二重結合と三重結合の組み合わせを有するアルコールを包含する。本明細書において、アルコール(L、L1、L2)は、望ましくは2~12個の炭素原子、より特には2~10個の炭素原子を含む。
【0078】
ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマーは、望ましくは500~2000の重量平均分子量(Mw)によって特徴付けられる。この分子量制限の代替または補足的特徴として、前記ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマーは、望ましくは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックまたはランダムコポリマーのいずれかであるべきであり、例示的な市販のブロックコポリマーには、BASFによってPluronics(登録商標)の商品名で製造されるものが含まれる。
【0079】
好ましい定義された条件に従って、式(II-A)の例示的な複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、以下の条件のうちの少なくとも1つを満たし得る:
i)M1はM3と等しい;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)Lは、エタノール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-オクタノール、n-デカノール、n-ドデカノール、2-オクチルドデカノール、ウンデセン-1-オール、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物(ここで、前記ポリプロピレングリコールホモまたはコポリマーは、500~2000の重量平均分子量(Mw)を特徴とする)からなる群から選択される。
【0080】
好ましい定義された条件に従って、式(II)の例示的な複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、以下の条件のうちの少なくとも1つを満たし得る:
i)M1はM3と等しい;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)L1およびL2は、エタノール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-オクタノール、n-デカノール、n-ドデカノール、2-オクチルドデカノール、ウンデセン-1-オール、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物(ここで、前記ポリプロピレングリコールホモまたはコポリマーは、500~2000の重量平均分子量(Mw)を特徴とする)からなる群から選択される。
【0081】
式(II-A)の複合金属シアン化物錯体[DMCC]については、特に好ましい態様も認められ、それは(iii)Lは、tert-ブチルアルコールまたは500~2000の重量平均分子量(Mw)を有するポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、より好ましくはtert-ブチルアルコールである。追加的にまたは独立して、以下の条件の少なくとも1つを満たす式(II-A)の複合金属シアン化物錯体が好ましいことも認められ得る:i)M1はM3と等しく、Znであり;M2はCoである:およびii)Xはハライドである。
【0082】
式(II)の複合金属シアン化物錯体[DMCC]についても、特に好ましい態様が認められ、それは(iii)L1は、tert-ブチルアルコールであり;L2は、n-オクタノール、n-デカノール、n-ドデカノール、2-オクチルドデカノール、ウンデセン-1-オール、または500~2000の重量平均分子量(Mw)を有するポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマーである。追加的にまたは独立して、以下の条件の少なくとも1つを満たす式(II)の複合金属シアン化物錯体が好ましいことも認められ得る:i)M1はM3と等しく、Znであり;M2はCoである:およびii)Xはハライドである。
【0083】
本明細書の上記のように、本発明の触媒は、疎水性担持材料(Supp)を含む。疎水性担持材料は、以下からなる群から選択される:
-本明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって決定される、少なくとも30体積%、好ましくは30~80体積%、より好ましくは30~70体積%のメタノール湿潤性値を特徴とする疎水性担持材料;
-炭素質無機固体材料、好ましくは活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンもしくはグラフェン;または
-炭素と等電子的である無機固体材料、好ましくは窒化ホウ素。
【0084】
好ましい実施形態によれば、少なくとも30体積%、好ましくは30~80体積%、より好ましくは30~70体積%のメタノール湿潤性値を特徴とする疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物、疎水性に変性された炭酸カルシウム、およびクレイからなる群から選択される。
【0085】
疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物には、酸化ケイ素もしくは水酸化ケイ素、酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、酸化チタンもしくは水酸化チタン、酸化ジルコニウムもしくは水酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムもしくは水酸化マグネシウム、またはそれらの混合酸化物もしくは水酸化物、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特に、疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物は、疎水性に変性されたシリカ、水酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、二酸化チタン、チタニウムシリケート、二酸化ジルコニウム、ジルコニウムシリケート、またはマグネシウムシリケートから選択される。より好ましくは、前記疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物は、疎水性シリカを含むかまたはそれからなり、より特には、疎水性ヒュームドシリカまたは沈殿ナノスケールシリカ、最も好ましくは疎水性ヒュームドシリカを含むかまたはそれからなる。
【0086】
前記疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物は、50~1000m2/g、好ましくは100~600m2/g、より好ましくは100~400m2/gのBET表面積を有し得る。
【0087】
疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物は、好ましくは当技術分野で知られている方法を使用して、1つまたは複数の疎水性基で官能化することによって得ることができ、この点に関して、とりわけ米国特許第6,344,240号が参照され得る。疎水性基を形成するために、例えばシラン、好ましくはオルガノシラザン、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDZ);オルガノシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6);オルガノハロシラン、例えばトリメチルクロロシラン(TMCS);アルコキシシラン、例えばジメトキシジメチルシラン;または油脂化学誘導体、例えば好ましくは12~22個の炭素原子を有する脂肪酸、および好ましくは12~22個の炭素原子を有する脂肪アルコールなどを含む、任意の適切な試薬を使用することができる。好ましくは、無機酸化物および/または水酸化物上に形成される疎水性基は、オルガノシロキサンである。さらに、疎水性基は、酸素原子を介して無機酸化物および/または水酸化物に好ましくは結合している。
【0088】
以下の市販の疎水性に変性された無機酸化物が特に有用であり得る:Cabot Corporation (Mass., USA)から入手可能な処理されたヒュームドシリカ製品CAB-O-SIL(登録商標)TS-530、CAB-O-SIL(登録商標)TS-610、およびCAB-O-SIL(登録商標)TS-720;HDK(登録商標)H20(Wacker Chemie AGから入手可能);およびAerosil(登録商標)R104(Evonik Industriesから入手可能)。
【0089】
本発明の別の好ましい実施形態において、疎水性担持材料(Supp)は、炭素質無機固体材料、好ましくは活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、もしくはグラフェン、または炭素と等電子的である無機固体材料、好ましくは窒化ホウ素から選択される。
【0090】
好ましい実施形態において、疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性されたシリカ、好ましくは疎水性ヒュームドシリカ、疎水性に変性された炭酸カルシウム、活性炭、カーボンブラック、およびグラフェンからなる群から選択される。
【0091】
好ましい実施形態において、本発明の触媒組成物は、100gの非担持錯体あたり少なくとも25g、好ましくは少なくとも50g、より好ましくは少なくとも100gの疎水性担持材料を含む。さらに、好ましい実施形態において、触媒組成物は、100gの非担持複錯体あたり最大5000g、より一般的には最大4000g、または3000gの疎水性担持材料を含む。例えば、触媒組成物は、100gの非担持錯体あたり100~1000gまたは250~750gの疎水性担持材料を実行可能に含み得る。
【0092】
概して、上記の式(I)の担持触媒は、少なくとも1つの有機錯化剤;前記疎水性担持体(Supp);および、少なくとも1つの複合金属シアン化物化合物を混合することによって得られるか(is obtainable)、または得られる(is obtained)。
【0093】
本発明による担持触媒は、光散乱法によって決定される、300nm~2500nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは700nm~1650nm、特に800nm~1500nmの平均粒子径を有し得る。触媒粒子のサイズ分布は、DIN ISO13321に準拠した、ZetasizerNano ZS90(MALVERN Instruments Ltd., UK)を使用した光子相関分光法によって測定される。光子相関分光法(PCS)は、平均流体力学的粒子径および分布の幅の尺度としての多分散性指数を決定するために使用される動的散乱光法である。PCSサイズ測定のキャリブレーションは、Duke Scientific Corp., USAのNanosphere(登録商標)size standardsを使用して、指定された手順に従ってDIN EN ISO13485によって実行する。触媒粒子の体積平均粒子径は、光散乱法によってメタノールに分散した触媒粒子を測定することによって得られた値に基づく。
【0094】
より具体的には、本明細書で定義される式(I)の担持触媒を製造するための方法は、
i)水性媒体中で以下を混合する工程
a)少なくとも1つの錯化剤、すなわち錯化剤(L)または該当する場合、少なくとも2つの有機錯化剤(L
1、L
2);
b)疎水性担持体(Supp);
c)一般式(IIa):
【化7】
[式中、M
1はZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、Xはアニオン、好ましくはハライドであり、dおよびgは>0の整数であり、塩M
1
dX
gが電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの塩;および
d)一般式(IIb):
【化8】
[式中、M
3はアルカリ金属イオン、好ましくはカリウムであり、M
2はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、h、eおよびfは>0の整数であり、錯体M
3
h[M
2(CN)
e]
fが電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの錯体;
ii)得られた触媒を水溶液で洗浄する工程
iii)洗浄した触媒を乾燥させる工程
を含む。
【0095】
混合操作により、沈殿した[DMCC]触媒錯体を含む水性懸濁液が得られる。次に、懸濁液を固液分離に供し、得られた固体を少なくとも1つの精製工程に供してよい。
【0096】
この方法の重要な実施形態において、M3はカリウムであり、Xはハライドである。さらに、混合される式(IIa)の塩の総モル量は、式(IIb)の錯体の総モル量を超えることが好ましく、式(IIb)の錯体のモル量に基づいて、少なくとも40モル%または少なくとも50モル%の化学量論的に過剰である式(IIa)の塩が望ましいと言及され得る。
【0097】
この方法の文脈において、混合という用語が何を意味するのかを制限する特別な意図はなく、与えられた原料[a)~d)]が、互いに化学反応を受けることができるように、または互いに物理的な相互作用を開始することができるように接触させる、任意の手段を包含することを意図している。望ましくは、混合は、例えば激しい撹拌、ローターステーターミキサー、または1つもしくは複数のフラットジェットノズル、レボノズル(Levos nozzles)、ボッシュノズル(Bosch nozzles)などを介した分散によって生まれる、高剪断力下で実行されることになる。しかしながら、採用された特定の混合方法は、混合操作中の泡形成を抑制すべきである。
【0098】
その混合操作において、有機錯化剤(L、L1、L2)は、金属塩(IIa)の水溶液内に添加されてよい;金属シアン化物塩(IIb)の水溶液内に添加されてよい;および/または[DMCC]触媒錯体の沈殿後に懸濁液に直接添加されてよいと考えられる。
【0099】
混合工程後、担持触媒は、遠心分離、ろ過または類似の既知の技術によって懸濁液から分離される。そのように単離された触媒は、選択された有機錯化剤の水溶液で少なくとも1回洗浄され、水溶性副生成物を除去し、または各洗浄工程は、触媒の再懸濁およびその固体の新たな単離(例えばろ過または遠心分離によって)を実行可能に含むことができる。各水性洗浄液中の有機錯化剤の量は、水性洗浄液の総重量に基づいて、全体として40~80重量%になるべきである。
【0100】
水性洗浄工程に続いて、単離された触媒は、任意選択で、前記有機錯化剤を含む非水性洗浄溶液で処理されてよい。次に、洗浄された触媒を、場合により粉砕された後、20~100℃の温度で、および例えば0.1~1013mbarの減圧下で乾燥する。
【0101】
本発明の別の実施形態によれば、担持触媒を製造するための方法は、i)水性媒体中でa)少なくとも1つの錯化剤、すなわち錯化剤(L)または該当する場合,少なくとも2つの有機錯化剤(L1、L2);c)本明細書で定義される一般式M1
dXg(IIa)の少なくとも1つの塩;およびd)本明細書で定義される一般式M3
h[M2(CN)e]f(IIb)の少なくとも1つの錯体を混合する工程、ii)得られた触媒を水溶液で洗浄する工程、iii)洗浄された触媒を乾燥する工程を含み、ここで、b)前記疎水性担持体(Supp)は、精製中または精製後、例えば、洗浄工程ii)の前もしくは最中、または乾燥工程iii)の後、好ましくは乾燥工程iii)の後に、得られた触媒に添加される。洗浄工程中に疎水性担持体(Supp)を添加する場合、得られた担持触媒を、例えば噴霧乾燥またはベルト乾燥により、20~100℃の温度で乾燥させる。乾燥工程後に疎水性担持体(Supp)を添加する場合、乾燥したDMCCと疎水性担持体(Supp)との混合物を、ペブルミル、コロイドミル、またはモルターグラインダなどの従来の粉砕機を用いて摩擦力下で注意深く粉砕する。
【0102】
上記のように、本発明は、上記で定義された担持複合金属シアン化物錯体の、エポキシドモノマーの重合のための触媒としての使用も伴う。完全を期すために、この重合は以下を含むことを意図している:エポキシドモノマーの単独重合;少なくとも2つの異なるエポキシドモノマーの共重合;および少なくとも1つのエポキシドモノマーと非エポキシド、環状モノマーおよび/または二酸化炭素との共重合。それにより、上記で定義された担持複合金属シアン化物触媒は、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエーテル-ポリカーボネートの効率的で経済的な合成を可能にする。
【0103】
これらの列挙された使用の特定の実施形態において、官能化ポリマーまたはコポリマーを製造するための方法が提供され、前記方法は、以下を含む:
a)開始剤を提供する工程であって、前記開始剤は、エポキシド化合物によるアルコキシル化が可能な活性水素含有化合物を含むか、またはそれからなる、工程;
b)上記および添付の特許請求の範囲で定義されている担持触媒を提供する工程;および、
前記開始剤および前記担持触媒の存在下で、少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合、または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合を実施する工程。
【0104】
前述の重合プロセスのいずれにおいても、使用される担持触媒錯体の量は、合理的な重合速度を提供するのに十分でなければならないが、そのような触媒は高価であり、それらを少量使用すると、生成物から触媒残留物を除去する必要がなくなることに留意されたい。本発明を限定することを意図するものではないが、担持触媒錯体[DMCC]の量が、ホモまたはコポリマー生成物の重量に基づいて、10ppm~5000ppm、特に50~500ppmである場合に、効果的な重合が行われる。
【0105】
本発明の重合プロセスを限定することを意図するものではないが、例示的なモノエポキシドモノマーには、以下が含まれる:アルキレンオキシド;エポキシ置換脂環式炭化水素、例えばシクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノキシド、(+)-シス-リモネンオキシド、(+)-シス、トランス-リモネンオキシド、(-)-シス、トランス-リモネンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシドおよびα-ピネンオキシド;エポキシ置換芳香族炭化水素;一価アルコールまたはフェノールのモノエポキシ置換アルキルエーテル、例えば脂肪族、脂環式および芳香族アルコールのグリシジルエーテル;モノカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル、例えば脂肪族、脂環式および芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステル;他のカルボキシ基がアルカノールでエステル化されている、ポリカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;エポキシ置換モノカルボン酸のアルキルおよびアルケニルエステル;他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化されている多価アルコールのエポキシアルキルエーテル;および他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化されている、多価アルコールおよびエポキシモノカルボン酸のモノエステル。
【0106】
例として、以下のグリシジルエーテルが、本発明での使用に特に適切なモノエポキシドモノマーであると言及され得る:メチルグリシジルエーテル;エチルグリシジルエーテル;プロピルグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル;ペンチルグリシジルエーテル;ヘキシルグリシジルエーテル;シクロヘキシルグリシジルエーテル;オクチルグリシジルエーテル;2-エチルヘキシルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;ベンジルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル;1-ナフチルグリシジルエーテル;2-ナフチルグリシジルエーテル;2-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-ブロモフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリクロロフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリブロモフェニルグリシジルエーテル;ペンタフルオロフェニルグリシジルエーテル;o-クレシルグリシジルエーテル;m-クレシルグリシジルエーテル;およびp-クレシルグリシジルエーテル。
【0107】
重要な実施形態において、モノエポキシドモノマーは、本明細書の以下の式(III):
【化9】
[式中、R
2、R
3、R
4およびR
5は同じでも異なっていてもよく、水素、ハロゲン原子、C
1-C
8アルキル基、C
3-C
10シクロアルキル基、C
2-C
12アルケニル、C
6-C
18アリール基またはC
7-C
18アラルキル基から独立して選択される(ただし、R
3およびR
4の少なくとも1つは水素ではない)]
に準ずる。
R
2、R
3およびR
5は水素であり、R
4はフェニル基またはC
1-C
8アルキル基のいずれか、より好ましくはC
1-C
4アルキル基であることが好ましい。
【0108】
この実施形態を考慮して、例示的なモノエポキシドには以下が含まれる:エチレンオキシド;1,2-プロピレンオキシド(プロピレンオキシド);1,2-ブチレンオキシド;シス-2,3-エポキシブタン;トランス-2,3-エポキシブタン;1,2-エポキシペンタン;1,2-エポキシヘキサン;1,2-ヘプチレンオキシド;デセンオキシド;ブタジエンオキシド;イソプレンオキシド;およびスチレンオキシド。
【0109】
本発明において、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノエポキシドモノマーを使用することが好ましい:エチレンオキシド;プロピレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;(+)-シス-リモネンオキシド;(+)-シス、トランス-リモネンオキシド;(-)-シス、トランス-リモネンオキシド;シクロオクテンオキシド;およびシクロドデカンオキシド。プロピレンオキシドがモノマーとして使用される場合が特に好ましく、特に好ましいこの陳述は、重合に供されるエポキシドモノマーの1つまたは唯一のエポキシドモノマーのいずれかである前記プロピレンオキシドを包含することを意図している。
【0110】
この場合も本発明の重合プロセスを限定することを意図するものではないが、適切なポリエポキシドモノマーは、液体、固体、または溶媒中の溶液であってよい。さらに、そのようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば、120~320g/eqのエポキシ当量を有するべきである。一般に、エポキシ当量が500未満または400未満のジエポキシド化合物が好ましく、その製造において、低分子量エポキシ樹脂は精製中により限定されたプロセスを必要とするため、主にコストの観点からである。
【0111】
本発明において重合され得るポリエポキシド化合物のタイプまたは群の例として、以下が言及され得る:多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;およびエポキシ化ポリエチレン性(epoxidized polyethylenically)不飽和炭化水素、エステル、エーテルおよびアミド。
【0112】
適切なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族、または脂環式であってよく、それ自体、二価フェノールおよび二価アルコールから誘導され得る。そのようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは以下である:脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオールおよびシクロヘキサンジオール;ビスフェノールAに基づくジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ジグリシジルo-フタレート、ジグリシジルイソフタレートおよびジグリシジルテレフタレート;ポリアルキレングリコールに基づくジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;およびポリカーボネートジオールに基づくグリシジルエーテル。言及され得る他の適切なジエポキシドには、以下も含まれる:二重不飽和脂肪酸C1-C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;およびリモネンジエポキシド。
【0113】
さらなる例示的なポリエポキシ化合物には:グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;およびソルビトールポリグリシジルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
非常に好ましいポリエポキシド化合物の例には、以下が含まれる:ビスフェノールAエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)331およびDER(登録商標)383;ビスフェノールFエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)354;ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂ブレンド、例えばDER(登録商標)353;脂肪族グリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)736;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)732;固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)661およびDER(登録商標)664UE;ビスフェノールA固体エポキシ樹脂の溶液、例えばDER(登録商標)671-X75;エポキシノボラック樹脂、例えばDEN(登録商標)438;臭素化エポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)542;ヒマシ油トリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-35H;ポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-38;およびソルビトールグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-60。
【0115】
好ましい実施形態を表すものではないが、本発明は、エポキシドモノマーが、オキセタン;環状カーボネート;環状無水物;およびラクトンからなる群から選択される1つまたは複数の環状モノマーと共重合されることを排除しない。以下の引用の開示は、適切な環状カーボネート官能性化合物を開示するのに有益であり得る:米国特許第3,535,342号;米国特許第4,835,289号;米国特許第4,892,954号;英国特許番号GB-A-1,485,925号;および欧州特許出願公開第0119840号。しかしながら、そのような環状コモノマーは、モノマーの総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満または5重量%未満を構成すべきである。
【0116】
重合プロセス
米国特許第5,777,177号および第5,689,012号に記載されている、重合のバッチ式または連続式のいずれかの実行を排除する意図は確かにないが、重合反応はセミバッチプロセスとして最も適切に実行される。
【0117】
重合反応は、以下に記載する圧力および温度に適したいかなるタイプの容器で実施できる。好ましいセミバッチプロセスにおいて、容器は、反応中に少なくともエポキシドモノマーを導入できる1つまたは複数の入口を有するべきである。ポリプロピレングリコールまたはジプロピレングリコールなどのスターターをエポキシドモノマーと同時に連続的に添加する、改良されたセミバッチプロセス、いわゆるスターターの連続添加(continuous addition of starter)(CAOS)システムを使用できる。あまり望ましくない連続プロセスにおいて、反応容器は、部分的に重合した反応混合物の一部を取り出すことができる少なくとも1つの出口を含むべきである。それはそれとして、連続またはセミバッチ操作のための例示的な容器には、管形反応器(tubular reactors);ループ反応器(loop reactors);および連続撹拌槽型反応器(continuous stirred tank reactors)(CTSR)が含まれるが、これらに限定されない。もちろん、どの反応器も、重合混合物の温度を所望の範囲内に維持できるように、熱を提供または除去するための手段を備えるべきであり、そのような手段を制限する意図はないが、その例には、熱流体のジャケット(jacketing for thermal fluids)ならびに内部および/または外部ヒーターが含まれる。
【0118】
重合プロセスの開始時に、担持触媒、開始剤、および場合によりルイス酸が反応容器に投入される。当技術分野で知られているように、開始剤は、前記担持触媒の存在下でエポキシドによるアルコキシル化が可能な活性水素含有化合物であり、開始剤は、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエーテル-ポリカーボネート生成物の所望の官能性および分子量に基づいて選択される。慣例的に、開始剤は、その性質がオリゴメリックまたはポリメリックであり、100~10000の範囲の数平均分子量(Mn)および2~8の官能性(分子あたりの活性水素の数)を有する。ジオールおよびより高官能性のポリオールは開始剤としての使用に特に好ましい。
【0119】
好ましいセミバッチプロセスにおいて、担持触媒錯体は、エポキシドモノマーの非存在下で、50~220℃の温度、例えば75~180℃で、予備加熱工程を受けてよい。その予備加熱工程は、不活性雰囲気中で行われ、通常(必ずしもそうである必要はないが)、大気圧未満の圧力下で行われる。さらに、予備加熱は、通常少なくとも10分間行われ、その説明の目的では、10~30分の期間が言及され得る。
【0120】
この予備加熱の後、容器の温度は、必要に応じて重合温度に調整され、エポキシドモノマーの一部および該当する場合は二酸化炭素の一部が導入される。担持触媒錯体[DMCC]が活性化されると(通常、反応器内圧の低下によって示される)、以下で説明する重合条件下で、さらにモノマーが反応器に供給される。
【0121】
追加の担持触媒は、モノマー、二酸化炭素または反応物の添加の過程で確実に添加され得るが、セミバッチプロセスでは、プロセスの開始時に全量の触媒を添加することが一般的である。さらに、開始(触媒活性化)中にルイス酸が存在することが非常に望ましいが、開始後にルイス酸を添加することも考えられる。ルイス酸の追加分は、重合が進行するにつれて、すなわちエポキシドの添加中に導入されてもよい。
【0122】
記載された合成工程で得られたホモまたはコポリマー生成物は、一般に、前記生成物の重量に基づいて、全量で最大1重量%までの未反応エポキシドモノマー;有機不純物;および水を含むことになる。揮発性不純物および水分は、(コ)ポリマー生成物からフラッシュ(flashed)または除去する必要がある。(コ)ポリマー生成物にはルイス酸および触媒残留物も含まれているが、これらの残留物は生成物に残すのが一般的である(特に、比較的低いレベルで存在する場合、多くの最終用途でポリマーの性能を妨げるとは予想されないため)一方で、それとは逆に必要に応じて、当技術分野で知られている分離および精製方法を使用してそれらを除去してよく、この点に関して、吸着、イオン交換、抽出、再沈殿、蒸発およびクロマトグラフィーが言及され得る。(必要に応じて精製された)反応生成物を生成時に保管することが意図されている場合、ポリマーは気密および防湿シールのある容器に配置すべきである。
【0123】
CO2なしのエポキシドの重合
エポキシドモノマーの単独重合、2つ以上のエポキシドモノマーの共重合、およびエポキシドモノマーとさらなる環状モノマーとの共重合は、開始化合物の意図的な含有を除いて、無水条件下で、および活性水素原子を有する化合物の非存在下で実施すべきである。反応容器に不活性で乾燥したガス状ブランケットを設けることにより、大気中の湿気への暴露を回避し得る。乾燥窒素、ヘリウムおよびアルゴンをブランケットガスとして使用してよいが、一般的な窒素ガスをブランケットとして使用する場合は、そのような窒素は水分を引き込みやすいために十分に乾燥しない可能性があるため、注意が必要であり、前記窒素は、本明細書において、使用する前に追加の乾燥工程を必要とし得る。
【0124】
重合温度は、典型的には少なくとも40℃、好ましくは少なくとも60℃である。反応温度は200℃以上であってよいが、とりわけ、実行可能な反応圧力を維持するため;揮発性不純物または他の副生成物の形成を最小限に抑えるため、および触媒を失活させるまたは分解することなく、適切な触媒活性を維持するために、温度が190℃または180℃を超えないことが好ましい。
【0125】
プロセス圧力は重要ではなく、そのため、重合反応は、大気圧未満、大気圧、または超大気圧で実行できるが、大気圧またはわずかに大気圧を超える圧力が好ましい。
【0126】
エポキシドモノマー、および場合により使用される任意のさらなる環状モノマーは、モノマーで反応器を所定の内部反応器圧力まで連続的に加圧することによって、要求に応じて反応容器に供給できる。エポキシド供給段階の間、セミバッチ反応器内の未反応エポキシドの濃度は、重合混合物の重量に基づいて、0.01~10重量%または0.1~5重量%のレベルに維持されることが望ましい。次に、エポキシド供給は、目標生成物の分子量を達成するのに十分な量が導入されるまで続けられる。エポキシド供給が完了した後、反応混合物を重合温度に維持して、残りのモノマーの消費を促進してよい。
【0127】
CO2とエポキシドの重合
エポキシドとの共重合に供される二酸化炭素は、ガス状の形態で反応容器に導入される。加えて、共重合反応は、容器から酸素を排除するために、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そのため、二酸化炭素は、反応容器内で窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスと共存する。反応容器内の二酸化炭素の分圧は、一般に0.1~6MPaであるが、好ましくは1.0~3.0MPaである。この分圧は、一般に1:0.1~1:10、またはより好ましい実施形態において1:0.5~1:3.0のエポキシドモノマーと二酸化炭素のモル比に等しくあるべきである。1:1.0~1:2.0の望ましいモル比に留意されたい。
【0128】
前記少なくとも1つのエポキシドモノマーと二酸化炭素との共重合反応は、慣習的に不活性液体有機溶媒の存在下で実施される。共重合に適した不活性溶媒は、エステル;ケトン;ハロゲン化炭化水素;アルカン;アルケン;および芳香族炭化水素からなる群から選択される有機溶媒である。例示的な溶媒は、塩化メチレン、トリクロロエチレン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、酢酸メトキシブチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロベンゼン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、グリコールジアセテート、n-ヘプタン、ヘキサン、イソブチルアセテート、イソオクタン、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランまたはテトラクロロエチレン、または上記の2つ以上の溶媒の混合物である。
【0129】
エポキシドモノマーと二酸化炭素との前記共重合において、助触媒の使用は排除されず、そのような助触媒は、一般に、共重合体生成物の重量に基づいて、最大1000ppmの量で使用してよい。本発明を限定することを意図するものではないが、適切な助触媒には、硫黄および/または1つもしくは複数の活性水素原子を含む少なくとも1つの化合物が含まれ得る。単独でまたは組み合わせて使用してよい、例示的な助触媒として、水;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムまたはカドミウムのハライド、ニトレート、サルフェート、ピロフォスフェート、フォスフェート、カーボネート、ボレートまたはアセテートから選択される結晶水を含む塩;無機酸、例えば硫化水素および多硫化水素;モノオールまたはポリオール、例えばメタノール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトール;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンおよびアセチルアセトン;アルデヒド、例えばアセトアルデヒドおよびプロピオンアルデヒド;有機酸、例えばシュウ酸およびイソフタル酸;ポリアミン、例えばピペラジン、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン;一級モノアミン、例えばエチルアミン、プロピルアミンおよびアニリン;アンモニア;ヒドラジン;エステルまたはアミド、例えばマロン酸ジメチルおよびアセトアミド;ニトリル化合物、例えばアセトニトリルおよびプロピオニトリル;活性水素を含むニトロ化合物、例えばニトロメタンおよびニトロエタン;およびフェノール化合物、例えばレゾルシン、ヒドロキノン、アミノフェノールおよびノボラック樹脂などが挙げられ得る。
【0130】
重合温度は、通常、0~60℃の範囲、例えば20~40℃の範囲である。したがって、室温での実施は除外されない。(交互の)共重合反応は、エポキシドモノマーが完全に消費されるまで、または反応の十分な進行が2~20時間後に確立されるまで継続できる。その後、二酸化炭素ガスを除去することにより、および/または適切な反応停止剤を用いて、反応を停止させてよい。当業者である読者は、ポリカーボネートの重合反応を停止するための従来の試薬を選択できるが、この点に関して、メタノール、水および塩酸などの活性プロトンを有する化合物について言及され得る。
【0131】
ホモポリマーおよびコポリマーの組成および用途
重要な例として、上記の方法は、モノオールまたはポリオール開始剤、特に100~10000の数平均分子量(Mn)および2~8の官能基価(分子当たりの活性水素の数)を有するポリオール開始剤の選択を通じて、ヒドロキシル官能化ポリマーまたはコポリマーを生成し得る。しかしながら、その正確な官能化に関係なく、この方法に由来する官能化ポリマーまたはコポリマーは、活性水素反応性化合物に基づくコーティング、シーラントまたは接着剤組成物の反応性成分として使用してよい。
【0132】
上記の重合プロセスで得られたホモポリマーまたはコポリマーは、1000~60000g/mol、好ましくは2000~40000g/molの数平均分子量(Mn)を有し得る。さらに、コポリマーは、1.0~1.5の範囲、好ましくは1.0~1.2の範囲の多分散指数(PDI)によって特徴付けられ得る。
【0133】
ヒドロキシル官能性開始剤が使用される場合、本発明のプロセスの操作によって生成されるポリエーテルポリオールは、2~8、特に2~4の公称官能性;最大0.025meq/g、好ましくは最大0.020meq/gの不飽和度;および10~80mgKOH/gのヒドロキシル数の少なくとも1つによって特徴付けられ得る。
【0134】
本発明の官能化ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエーテル-ポリカーボネートポリマーそれ自体に、コーティング組成物、シーラント組成物または接着剤組成物(例えば感圧性接着剤組成物)などの硬化性、架橋性、またはその他の反応性成分としての有用性を見出すことができると予想される。特に、ヒドロキシル官能化ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエーテル-ポリカーボネートポリマーは、好ましくはイソシアネート基、シアノ基、メラミン基、エポキシ基、アクリレート基、メタクリレート基、エステル基、カーボネート基、シクロカーボネート基、カルボキシル基または無水物基から選択される、少なくとも1つのヒドロキシル基反応性官能基を有する少なくとも1つの化合物をさらに含む組成物の1つの成分を構成してよい。
【0135】
本発明の例示的な実施形態において、成分(I)および成分(II)を含む2成分(2K)ポリウレタン組成物が提供され、ここで、成分(I)はポリイソシアネートを含み、成分(II)は上記のプロセスに従って得られたヒドロキシル官能性ポリマーを含む。組成物は、成分(I)のイソシアネート基(NCO)と成分(II)のヒドロキシル基(OH)のモル比が0.8:1~2.5:1、好ましくは1.3:1~1.8:1の範囲にある点でさらに特徴づけることができる。
【0136】
本発明で得られるホモまたはコポリマーを含むコーティング、シーラントまたは接着剤組成物などの組成物は、典型的には、これらの組成物に改善された特性を与えることができる補助剤および添加剤をさらに含む。例えば、補助剤および添加剤は、改善された弾性特性;改善された弾性回復;より長い有効化処理時間(longer enabled processing time);より速い硬化時間;およびより低い残留タックのうちの1つまたは複数を付与し得る。そのような補助剤および添加剤には、触媒、可塑剤、安定剤、抗酸化剤、充填剤、反応性希釈剤、乾燥剤、接着促進剤およびUV安定剤、殺菌剤、難燃剤、レオロジー補助剤、着色顔料または着色ペースト、および/または場合により、少量の溶剤が含まれる。
【0137】
本発明の目的のための「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、したがってその加工性を促進する物質である。本明細書において、可塑剤は、組成物の総重量に基づいて、最大40重量%または最大20重量%を構成でき、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS);ジウレタン;単官能性の直鎖または分岐C4-C16アルコールのエーテル、例えばCetiol OE(Cognis Deutschland GmbH、Dusseldorfから入手可能);アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸エステルおよびクエン酸のエステル;ニトロセルロースおよびポリ酢酸ビニルに基づくエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基を有するまたはエポキシ化された脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;エポキシ化可塑剤;ポリエーテル可塑剤、例えばエンドキャップされたポリエチレンまたはポリプロピレングリコール;ポリスチレン;炭化水素可塑剤;塩素化パラフィン;およびそれらの混合物からなる群から選択される。原則、可塑剤としてフタル酸エステルを使用できるが、これらは毒性の可能性があるため好ましくないことに留意されたい。可塑剤は、1つまたは複数のポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むか、またはそれからなることが好ましい。
【0138】
本発明の目的のための「安定剤」は、抗酸化剤、UV安定剤または加水分解安定剤として理解されるべきである。本明細書において、安定剤は組成物の総重量に基づいて、全体として最大10重量%または最大5重量%を構成し得る。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な商業的例には、立体障害フェノールおよび/またはチオエーテルおよび/または置換ベンゾトリアゾールおよび/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)タイプのアミンが含まれる。本発明の文脈において、シリル基を有し、架橋または硬化時に最終生成物に組み込まれるUV安定剤を使用することが好ましく、製品Lowilite(登録商標) 75、Lowilite(登録商標) 77(Great Lakes、USA)は、この目的に特に適している。ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾエート、シアノアクリレート、アクリレート、立体障害フェノール、リンおよび/または硫黄も加えることができる。
【0139】
前述のように、本発明による組成物は、さらに充填剤を含むことができる。ここで適切なものは、例えば、チョーク、石灰粉末、沈降および/または焼成ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、アルミナ、粘土、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、ガラス粉末、およびその他の粉砕鉱物物質である。有機充填剤、特にカーボンブラック、グラファイト、木質繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木材チップ、刻んだわら、もみ殻、すりつぶしたクルミの殻、および他の刻んだ繊維も使用できる。ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維またはポリエチレン繊維などの短繊維も加えることができる。アルミニウム粉末も同様に充填剤として適している。
【0140】
焼成および/または沈降ケイ酸は、有利には、10~90m2/gのBET表面積を有する。それらを使用するとき、本発明による組成物の粘度のさらなる増加を引き起こさないが、硬化した組成物の強化に寄与する。
【0141】
同様に、有利には100~250m2/g、特に110~170m2/gの、より大きいBET表面積を有する焼成および/または沈降ケイ酸を充填剤として使用することが考えられ、より大きなBET表面積のため、硬化組成物を強化する効果は、より少ないケイ酸の重量比で達成される。
【0142】
鉱物シェルまたはプラスチックシェルを有する中空球も充填剤として適している。これらは、例えばGlassBubbles(登録商標)の商品名で商業的に入手可能な中空ガラス球であり得る。Expancel(登録商標)またはDualite(登録商標)などのプラスチック系中空球を使用でき、欧州特許第0520426号に記載されている。これらは無機または有機物質で構成されており、それぞれの直径は1mm以下、好ましくは500μm以下である。
【0143】
組成物にチキソトロピーを与える充填剤は、多くの用途に好ましい場合がある。そのような充填剤は、レオロジー補助剤としても記載され、例えば硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVCなどの膨潤性プラスチックである。
【0144】
本発明の組成物中に存在する充填剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~80重量%、より好ましくは5~60重量%である。硬化性組成物の所望の粘度は、通常、添加される充填剤の総量で決定し、チューブなどの適切な分配装置から容易に押し出すために、硬化性組成物は、3000~150,000、好ましくは40,000~80,000mPas、または50,000~60,000mPasの粘度を有すべきであることが提案される。
【0145】
適切な顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄またはカーボンブラックである。
【0146】
貯蔵寿命をさらに延ばすために、乾燥剤を使用することで、水分浸透に関して本発明の組成物をさらに安定化することがしばしば推奨される。反応性希釈剤を使用することにより、特定の用途のために、本発明による接着剤またはシーラント組成物の粘度を低下させる必要性も時折存在する。存在する反応性希釈剤の総量は、通常、組成物の総重量に基づいて、最大15重量%、好ましくは1~5重量%である。
【0147】
本開示の様々な特徴および開示は添付の図面に示され、以下の実施例に記載されており、これらの実施例は代表的なものであり、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【
図1】本明細書に添付されている
図1は、以下の実施例Aに従って調製された担持触媒の高角度環状暗視野(HAADF)透過型電子顕微鏡組織(TEM)である。TEMを準備するために、触媒の固体サンプルを前処理なしで、穴の開いた炭素担持Cuグリッド(メッシュ300)に配置し、顕微鏡に移した。TEM測定は、収差補正されたJEM-ARM200F(JEOL、校正器:CEOS)を使用して200kVで実行した。顕微鏡には、JED-2300(JEOL)エネルギー分散型X線分光計(EDXS)および化学分析用のDualEELSを備えたEnfinum ER(GATAN)が備わっている。収差補正STEMイメージング(HAADF)は、以下の条件下で実行した:約0.1nmのスポットサイズ;30-36°の収束角;および90-170mradのコレクションセミアングル。
【
図2】本明細書に添付されている
図2は、
図1の拡張インサートである。
【
図3】
図3は、
図2の強調表示された領域[001]の対応するエネルギー分散型X線スペクトル(EDXS)である。
【
図4】
図4は、
図2の強調表示された領域[002]の対応するエネルギー分散型X線スペクトル(EDXS)である。
【
図5】
図5は、
図2の強調表示された領域[003]の対応するエネルギー分散型X線スペクトル(EDXS)である。
【
図6】
図6は、
図2の強調表示された領域[004]の対応するエネルギー分散型X線スペクトル(EDXS)である。
【
図7】
図7は、
図2の強調表示された領域[005]の対応するエネルギー分散型X線スペクトル(EDXS)である。
【
図8】
図8は、実施例Aで得られた触媒系の一次速度定数と実施例JおよびKの触媒系の一次速度定数との比較を示す。速度定数は、プロピレンオキシド(PO)の消費のオンラインモニタリングによって決定された。
【実施例】
【0149】
DMC触媒の調製
以下の市販製品が実施例で利用された:
i)Eutanol(登録商標)Gは、BASF SEから入手可能な中程度の広がりのエモリエントである。この製品のヒドロキシル価は175-190mgKOH/g、屈折率(20℃)は1.4535-1.4555、密度(20℃)は0.835-0.845g/cm3である。
ii)Aerosil(登録商標)R104は、Evonik Industriesから入手可能な疎水性ヒュームドシリカである。
iii)Aerosil(登録商標)150は、Evonik Industriesから入手可能な親水性ヒュームドシリカである。
iv)HDK(登録商標)H20は、Wacker Chemie AGから入手可能な疎水性ヒュームドシリカである。
v)HDK(登録商標)N20は、Wacker Chemie AGから入手可能な親水性ヒュームドシリカである。
vi)Carbital 110Sは、Imerysから入手可能な脂肪酸でコーティングされた微粉砕炭酸カルシウムである。
vii)Carbital 110は、Imerysから入手可能な微粉砕炭酸カルシウムである。
viii)Hakuenka(登録商標)CCR-Sは、Shiraishi Omya GmbHから入手可能な脂肪酸でコーティングされた沈降炭酸カルシウムである。
【0150】
以下の表1に記載されている材料のメタノール湿潤性値(体積%)は、Evonik IndustriesがAerosil(登録商標)製品の疎水性を決定するために使用する分析試験方法である、次のメタノール湿潤性試験によって測定された(2014年8月のhttp://www.aerosil.com/product/aerosil/en/services/downloads/Pages/test-methods.aspx)。
【0151】
メタノール湿潤性試験
手順:最初に、少なくとも4本の透明な遠心チューブ(各80ml)に1.2g(±0.005g)のサンプルを量り取る。48.0mlの特定のメタノール/水混合物(5パーセント間隔で10体積パーセント~90体積パーセントのメタノール)を、各秤量された部分に加える。チューブを閉じて、手で10秒間、水平シェーカー、レベル12(Rutteltisch F. Gerhardt LS10)で30秒間振とうした。続いて、サンプルを実験室用遠心分離機で23℃、5分間、2500/分で遠心分離する。評価は、5分間の再調整後に行う。
【0152】
評価:各サンプル(担持材料)のメタノール湿潤性値は、メタノール/水混合物中のメタノールの最低パーセンテージ(体積%)によって定義され、これは、すべての担持材料の定量的な濡れ性を示しており、担持物質の100%が沈降した(溶液中または溶液の表面に担持物質がない)ことを意味する。メタノールの最低パーセンテージは、体積%単位のメタノール湿潤性値を定義および定量化する。
【0153】
【0154】
例A:150mlの蒸留水中の3g(9mmol)のヘキサシアノコバルト酸カリウムの溶液に、10mlのtert-ブチルアルコール、0.1gのEutanol(登録商標)Gおよび3gのAerosil(登録商標)R104を激しく撹拌(20000rpm)しながら加えた。直後に、100mlの蒸留水および20mlのtert-ブチルアルコール中の20g(147mmol)の塩化亜鉛の溶液を、激しく撹拌(20000rpm)しながらAerosil混合物に加えた。撹拌の強さを下げた(8000rpm)が、20分間続けた。得られた固体を遠心分離により単離した。次に、固体を、50mlのtert-ブチルアルコール、50mlの蒸留水および0.1gのEutanol(登録商標)Gの混合物と共に20分間撹拌し(10,000rpm)、再び遠心分離によって単離した。得られた固体を、75mlのtert-ブチルアルコールおよび0.01gのEutanol(登録商標)Gの混合物と共に20分間再度撹拌し(8000rpm)、遠心分離によって単離した。その後、得られた固体を100mlのtert-ブチルアルコールおよび0.05gのEutanol(登録商標)Gの溶液と共に20分間再び撹拌した(8000rpm)。濾過後、触媒を真空下、50℃で恒量まで乾燥した。
【0155】
例B:最後の洗浄工程でAerosil(登録商標)R104を加えたことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0156】
例C:Aerosil(登録商標)R104をEutanol(登録商標)Gなしで使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0157】
例D:Aerosil(登録商標)R104の代わりにAerosil(登録商標)150を使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0158】
例E:Aerosil(登録商標)R104の代わりにHDK(登録商標)H20を使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0159】
例F:Aerosil(登録商標)R104の代わりにHDK(登録商標)N20を使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0160】
例G:Aerosil(登録商標)R104の代わりにCarbital 110Sを使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0161】
例H:Aerosil(登録商標)R104の代わりにCarbital 110を使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0162】
例I:Aerosil(登録商標)R104の代わりにHakuenka(登録商標)CCR-Sを使用したことを除いて、例Aで説明したものと同じ手順を使用した。
【0163】
例J:シリカ系化合物を含まないEutanol(登録商標)Gを使用するDMC触媒を調製した。1.5gのヘキサシアノコバルト酸カリウムをビーカー内の50mlの蒸留水に溶解した。0.35mmolのEutanol(登録商標)Gおよび5mlのtert-ブチルアルコールの溶液をそこへ加える(溶液1)。10gの塩化亜鉛を50mlの蒸留水および10mlのtert-ブチルアルコールに溶解する(溶液2)。溶液1および2を、混合のための分散システムを使用して組み合わせた。20分間撹拌した後、混合物を遠心分離した。次に、固体を、50mlのtert-ブチルアルコール、50mlの蒸留水および0.1gのEutanol(登録商標)Gの混合物と共に20分間撹拌し(10,000rpm)、再び遠心分離によって単離した。得られた固体を、75mlのtert-ブチルアルコールおよび0.01gのEutanol(登録商標)Gの混合物と共に20分間再度撹拌し(8000rpm)、遠心分離によって単離した。その後、得られた固体を、100mlのtert-ブチルアルコールおよび0.05gのEutanol(登録商標)Gの溶液と共に20分間再び撹拌した(8000rpm)。濾過後、固体ケーキを100%tert-ブチルアルコール洗浄溶液に再懸濁し、20分間ホモジナイズし、遠心分離した。得られた沈殿物を50℃の真空下で恒量になるまで乾燥した。
【0164】
例K:欧州特許出願公開第0700949号の例1によるDMC触媒。8.0gのヘキサシアノコバルト酸カリウムをビーカー内の140mLの脱イオン水に溶解した(溶液1)。25gの塩化亜鉛25gを第2のビーカー中の40mlの脱イオン水に溶解した(溶液2)。第3のビーカーには溶液3:脱イオン水(200mL)、tert-ブチルアルコール(2mL)およびポリオール(4000mol.wt.のポリ(オキシプロピレン)ジオール2g)の混合物が含まれている。溶液1および2は分散機を使用して一緒に混合した。直ちに、溶液4[tert-ブチルアルコールおよび脱イオン水の50/50(体積)混合物(合計200ml)]をヘキサシアノコバルト酸亜鉛混合物に加え、生成物を10分間撹拌した。溶液3(ポリオール/水/tert-ブチルアルコール混合物)をヘキサシアノコバルト酸亜鉛の水性スラリーに加え、生成物を3分間撹拌した(700rpm)。混合物を遠心分離して固形物を単離した。固形ケーキを、tert-ブチルアルコール(140ml)、脱イオン水(60ml)および追加の4000mol.wt.ポリ(オキシプロピレン)ジオール(2.0g)中で再スラリー化し、混合物を10分間ホモジナイズし、上記のように遠心分離した。固形ケーキをtert-ブチルアルコール(200ml)および追加の4000mol.wt.ポリ(オキシプロピレン)ジオール(1.0g)中で再スラリー化し、10分間ホモジナイズし、遠心分離した。得られた固体触媒を真空下、50℃で恒量まで乾燥した。乾燥した粉末状の触媒の収量は12.02gであった。
【0165】
例L:Aerosil(登録商標)R104の代わりに、Sigma-Aldrichからの活性炭粉末(製品番号05105)(Cas番号7440-44-0)を使用したことを除いて、例Aに記載されたものと同じ手順を使用した。
【0166】
プロポキシル化反応の一般的な方法
a)100mlスチールオートクレーブでのPPG(Mw 3400g/mol)の合成
27gのポリプロピレングリコールジオール(Mw 2000g/mol)を、0.015gの選択された(DMC)触媒と共に100mlの撹拌オートクレーブに入れた。混合物を減圧下(<10mbar)、105℃で1時間撹拌して、水分および揮発性汚染物質を除去した。その後、アルゴン雰囲気中、120℃に加熱しながら撹拌した。この温度に達した後、全内圧が4.5barに上昇するまで、プロピレンオキシド(0.1mol)を一度に加えた。温度の上昇と反応器圧力の加速された低下がすぐに認められ、触媒の活性化が示された。圧力が0.5barに達するまで、反応器をさらに撹拌した。
【0167】
b)1Lスチール製オートクレーブでのPPG(12000g/mol)の合成
83gのプロピレングリコールジオール(Mw 2000g/mol)を、0.015gの選択した(DMC)触媒(所望の生成物の重量に基づいて30ppm)とともに1Lのスチール製オートクレーブに入れた。混合物を減圧下(<10mbar)、105℃で1時間撹拌して、水分および揮発性汚染物質を除去した。その後、アルゴン雰囲気中、120℃に加熱しながら撹拌した。この温度および0.5barの初期圧力に達した後、反応の開始を誘導するために10gのプロピレンオキシド(PO)を投与した。内圧は2.8barに上昇した。しかしながら、触媒が活性化されたことを示す、反応器内での加速された圧力降下が観察された場合にのみ、さらなるプロピレンオキシドを添加し、残りのプロピレンオキシド(420g)を連続的に添加した。
【0168】
すべてのプロピレンオキシドを添加し、120℃で1時間後反応させた後、揮発性成分を90℃で減圧下(<10mbar)で蒸留除去し、混合物を室温まで冷却した。
【0169】
プロポキシル化反応は、時間/変換曲線、具体的にはプロピレンオキシド消費量[g]対反応時間[分]によってフォローした。誘導時間(tinduction)は、接線の遮断点から、時間/変換曲線の最も急な点への曲線の延長されたベースラインで決定された。表2は、上記のプロポキシル化反応に従う触媒およびそれと共に得られるポリエーテルジオールを特徴付ける。
【0170】
【0171】
触媒活性の決定
上記の重合プロセスでは、伝播反応は:
【数1】
[ここで、P
*は反応性ポリマー鎖;nはモノマー単位の数;POはプロピレンオキシド分子;およびk
prはプロポキシル化反応の速度定数を表す]
の形式である。
【0172】
反応速度式
【数2】
を考慮し、およびイモータル重合では鎖末端の数(nP
*)が一定のままであることも考慮すると、反応速度式を統合して
【数3】
となる。
【0173】
その後、伝播反応は疑似一次として扱われる。
【0174】
速度定数を決定するために、不連続供給法が使用され、アンカーアジテーターを備えた2リットルのステンレススチールオートクレーブ反応器にPOを段階的に添加する際に、プロピレンオキシド(PO)の消費をin situ赤外線(IR)プローブでモニターした。
【0175】
例1に記載されたものと同様の手順で、はじめに166gのポリプロピレングリコール開始剤を、評価する5ppmの触媒と反応器内で混合した。反応器を125℃まで加熱し、反応を開始するために20.8g(25ml)のPOを加えた。急激な圧力低下が発生した後、POの段階的添加を開始した(10%PO、1.7ml、30ml/分)。各添加後、POの濃度は、1次反応速度の予想される指数関数的減少を示した。
【0176】
触媒活性にとって重要なプロポキシル化時間は、触媒活性化(誘導期間の終わり)とプロピレンオキシド添加の終わりとの間の期間に対応する。総反応時間は、誘導時間およびプロポキシル化時間の合計である。
【0177】
各供給工程後の速度定数(k’/[P
*])を計算し、連鎖成長の結果としてのヒドロキシル鎖末端の希釈時の速度定数の変化を
図8に示す。第1のPO投与後の評価された触媒の速度定数の比較も以下の表3に示されている。
【0178】
【0179】
前述の説明および例を考慮して、当技術分野の当業者には、特許請求の範囲から逸脱することなく、その同等の修正を行うことができることが明らかであろう。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1] 一般式(I):
【化1】
〔式中、
[DMCC]は、複合金属シアン化物(DMC)化合物、少なくとも1つの有機錯化剤および金属塩を含む複合金属シアン化物錯体を示し;
Suppは疎水性担持材料を示し;および
bは、[DMCC]およびSuppの総重量に基づく、前記担持材料の平均重量比率を表し、好ましくは1重量%≦b≦99重量%の範囲、より好ましくは10重量%≦b≦70重量%の範囲であって、
前記疎水性担持材料は、明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって決定される、少なくとも30体積%のメタノール湿潤性値を特徴とする疎水性材料;炭素質無機固体材料;または炭素と等電子的である無機固体材料からなる群から選択される〕
を有する担持触媒。
[2] 前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、一般式(II-A):
【化2】
または
一般式(II):
【化3】
〔式中、
M
1
は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり;
M
2
は、Fe、Co、Mn、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
M
3
は、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり;
Xはアニオンであり;
Lは有機錯化剤であり;
L
1
およびL
2
は互いに異なり、それぞれ第1および第2の有機錯化剤を表し;
d、e、fおよびgはそれぞれ>0である整数であるが、錯体M
1
d
[M
2
(CN)
e
]
f
*
xM
3
(X)
g
が電気的に中性になるような値を有し;
0.1≦x≦5;
0.1≦y≦1;
0.0001≦ω≦6;
0.0001≦z≦1;および
0.0001≦a≦5である〕
のいずれかによって表される、[1]に記載の担持触媒。
[3] 前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、式(II-A)で表され、さらに以下の条件:
i)M
1
はM
3
と同一である;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)Lは、脂肪族C
1
-C
24
アルコール、モノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサン、フラン、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される;
のうちの少なくとも1つを満たす、[2]に記載の担持触媒。
[4] 前記複合金属シアン化物錯体[DMCC]は、式(II)で表され、さらに以下の条件:
i)M
1
はM
3
と同一である;
ii)Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、カーボネート、シアニド、チオシアニド、カルボキシレート、ニトレート、ボレートおよびアンチモナイトからなる群から選択されるアニオンである;および
iii)L
1
およびL
2
は、脂肪族C
1
-C
24
アルコール、モノグリム、ジグリム、1,4-ジオキサン、フラン、ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から独立して選択される;
のうちの少なくとも1つを満たす、[2]に記載の担持触媒。
[5] i)M
1
はM
3
と同一で、Znであり;M
2
はCoである;および
ii)Xはハライドである、
[2]~[4]のいずれかに記載の担持触媒。
[6] 前記疎水性担持材料(Supp)は、明細書に記載のメタノール湿潤性試験によって測定される、30~80体積%、好ましくは30~70体積%のメタノール湿潤性値によって特徴付けられる、[1]~[5]のいずれかに記載の担持触媒。
[7] 前記疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性された無機酸化物または水酸化物、疎水性に変性された炭酸カルシウムおよびクレイからなる群から選択される、[1]~[6]のいずれかに記載の担持触媒。
[8] 前記疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性されたシリカ、好ましくは疎水性ヒュームドシリカ、または疎水性に変性された炭酸カルシウムから選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の担持触媒。
[9] 前記疎水性担持材料(Supp)は、炭素質無機固体材料、好ましくは活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンもしくはグラフェン、または炭素と等電子的である無機固体材料、好ましくは窒化ホウ素から選択される、[1]~[5]のいずれかに記載の担持触媒。
[10] 前記疎水性担持材料(Supp)は、疎水性に変性されたシリカ、好ましくは疎水性ヒュームドシリカ、疎水性に変性された炭酸カルシウム、活性炭、カーボンブラックおよびグラフェンからなる群から選択される、[1]~[5]のいずれかに記載の担持触媒。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の式(I)の担持触媒を製造するための方法であって、前記方法は
i)水性媒体中で
a)少なくとも1つの錯化剤;
b)疎水性担持体(Supp);
c)一般式(IIa):
【化4】
[式中、M
1
はZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、Xはアニオン、好ましくはハライドであり、dおよびgは>0である整数であって、塩M
1
d
X
g
が電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの塩;および
d)一般式(IIb):
【化5】
[式中、M
3
はアルカリ金属イオン、好ましくはカリウムであり、M
2
はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、h、eおよびfは>0である整数であって、錯体M
3
h
[M
2
(CN)
e
]
f
が電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの錯体;
を混合する工程;
ii)得られた触媒を水溶液で洗浄する工程;
iii)洗浄した触媒を乾燥させる工程;
を含む、方法。
[12] [1]~[10]のいずれかに記載の式(I)の担持触媒を製造するための方法であって、前記方法は
i)水性媒体中で
a)少なくとも1つの錯化剤;
c)一般式(IIa):
【化6】
[式中、M
1
はZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、Xはアニオン、好ましくはハライドであり、dおよびgは>0である整数であって、塩M
1
d
X
g
が電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの塩;および
d)一般式(IIb):
【化7】
[式中、M
3
はアルカリ金属イオン、好ましくはカリウムであり、M
2
はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、h、eおよびfは>0である整数であって、錯体M
3
h
[M
2
(CN)
e
]
f
が電気的に中性であるような値である]
の少なくとも1つの錯体
を混合する工程;
ii)得られた触媒を水溶液で洗浄する工程;
iii)洗浄した触媒を乾燥させる工程;
[ここで、b)疎水性担持体(Supp)は、洗浄工程ii)の前もしくは最中に、または乾燥工程iii)の後に添加される]
を含む、方法。
[13] 少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合、または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合における、[1]~[10]のいずれかに記載の担持触媒、または[11]もしくは[12]に記載の方法に従って得られる担持触媒の使用。
[14] 官能化ポリマーまたはコポリマーを製造するための方法であって、前記方法は
a)開始剤を提供する工程であって、前記開始剤は、エポキシド化合物によるアルコキシル化が可能な活性水素含有化合物を含むか、またはそれからなる、工程;
b)[1]~[10]のいずれかに記載の担持触媒、または[11]もしくは[12]に記載の方法に従って得られる担持触媒を提供する工程;および
前記開始剤および前記担持触媒の存在下で、少なくとも1つのエポキシドモノマーの開環重合、または二酸化炭素と少なくとも1つのエポキシドモノマーとの共重合を実施する工程
を含む、方法。
[15] 活性水素反応性化合物に基づくコーティング、シーラントまたは接着剤組成物のための反応性成分としての、[14]に記載の方法によって得られる官能化ポリマーまたはコポリマーの使用。